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IRUCAA@TDC : 審美補綴を考慮して支台歯形成と補綴装置の選択を行った一症例

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Title

審美補綴を考慮して支台歯形成と補綴装置の選択を行っ

た一症例

Author(s)

神田, 雄平; 佐藤, 亨; 久永, 竜一; 野本, 俊太郎; 四

ツ谷, 護

Journal

歯科学報, 119(3): 209-220

URL

http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.119.209

Right

Description

(2)

抄録:歯冠破折を起こした歯に対し,オールセラ ミッククラウンおよび陶材焼付冠にて補綴処置を 行った結果,審美的に患者満足が得られ,咬合状態 の安定が図られた症例について報告する。患者は67 歳の女性。メインテナンスを希望し来院した。初診 時には口腔内所見に異常がないため,歯周基本治療 後リコールとした。初診時より半年後#24 #45に 歯冠破折を認めた。#24 #45ともに生活反応を認 めたが全部被覆冠による補綴治療を行うこととし た。患者は審美的な補綴治療を希望したため,#24 には二ケイ酸リチウムによるオールセラミッククラ ウン,#47は歯冠高径が低くクリアランスの確保が 困難なため,#45陶材焼付冠#47には全部金属冠に よるブリッジを作製した。補綴治療後3か月ごとの リコールを行い装着後3年間補綴装置に異常なく咬 合を保つことができた。 緒 言 歯冠補綴装置の中でも,オールセラミッククラウ ンは天然歯に似た色調と透明感を持ち修復物の着色 や変色が起こりにくいなど審美的な補綴装置として 非常に優れており,また口腔内で化学的に安定であ り生体親和性が良いなどの利点がある。 近年の日本における調査では,セラミック分野の 歯冠補綴装置は陶材焼付冠からオールセラミックク ラウンへの移行が顕著となり,セラミック修復によ る審美的な歯冠補綴の割合が増加している1) 。アメ リカにおける調査では,単冠修復に選択される材料 は前歯部では二ケイ酸リチウムを,臼歯部ではジル コニアセラミックスが選ばれ,金属を使用した陶材 焼付冠の症例数は急激に減少してきている2) 。 しかし,メタルセラミック修復がすべての点で オールセラミッククラウンに劣っているというわけ ではない。CAD/CAM で作製したオールセラミッ ククラウンの適合は,鋳造で作成したメタルクラウ ンの適合よりも劣っており,グルーブやホールなど の補助的保持形態は作成が困難である3) 。また, オールセラミッククラウンではろう着ができないた め多数歯のブリッジを行う際には,より支台歯の精 密な印象と支台歯間の正確な位置の採得が必要であ る。 今回,歯冠破折を起こした歯に対し,オールセラ ミッククラウンおよび陶材焼付ブリッジで補綴処置 を行った結果,審美的に患者満足が得られ,咬合状 態の安定が図られた症例について報告する。 症 例 患者:67歳の女性 初診:2014年9月 主訴:左上の奥歯を咬むと痛い。 口腔内既往歴:2001年に東京歯科大学水道橋病院 に来院した。#36の根管治療を行うも保存不可のた め抜歯を行った。その後#36 37欠損にパーシャル デンチャーを作製するも義歯に違和感を覚えたた め,# 36の延長ブリッジを装着した。また, 2003年に#46が歯根破折を生じ抜歯となり# 46 のインレーブリッジを装着した。しかし,2007年同 部のインレーブリッジが脱離し再度インレーブリッ ジにて補綴治療を行った。2010年より#24 25に食 キーワード:オールセラミッククラウン,陶材焼付冠,審 美補綴 東京歯科大学クラウンブリッジ補綴学講座 (2019年1月13日受付,2019年5月27日受理) http : //doi.org/10.15041/tdcgakuho.119.209 連絡先:〒101‐0061 東京都千代田区神田三崎町2−9−18 東京歯科大学クラウンブリッジ補綴学講座 神田雄平

臨床報告

審美補綴を考慮して支台歯形成と補綴装置の選択を行った一症例

神田雄平

佐藤 亨

久永竜一

野本俊太郎

四ツ谷 護

209 ― 45 ―

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事時の違和感を生じ経過観察を行っていたが,違和 感は消失ししばらくの期間未来院となった。 全身的既往歴:特記事項なし 1.現病歴(図1,2) 2014年9月 再度#24の咬合時痛を主訴に東京歯 科水道橋病院,補綴科に来院した。2014年9月 # 24の咬合時痛は,アマルガム充塡部の咬合調整によ り消失したため経過観察を行っていた。初診時の口 腔内診査,エックス線写真では#24 #45ともに破 折線は認められなかった。口腔内の診査により患者 には①# 46 のインレーブリッジは脱離の危険が あること,②# 36ブリッジは#46ポンティック の形態が大きく支台歯に負担が大きいため骨吸収が 生じる可能性があること,③#27が挺出しており将 来的に咬合平面の乱れによる咀嚼障害が生じる可能 図1 初診時の口腔内写真 図2 初診時のエックス線写真 210 神田,他:審美補綴を行った一症例 ― 46 ―

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性があること,を説明した。患者は積極的な治療を 希望しなかったため,経過観察を行うこととした。 2.現症(図3,4) 2015年4月 歯が欠けたと来院し#45の咬合面頰 側のインレーとの境界部に象牙質に到達する破折を 確認した(図3)。自発痛,打診痛は認めなかった。 また,来院1週間後に#24の舌側歯質がアマルガム 充塡部より破折し,歯が大きくかけたと訴えてきた (図4)。自発痛,打診痛は認めなかった。 3.検査結果 歯冠破折を生じた#24 #45ともに歯周組織検査 結果で,プロービングデプス3mm 以下であり出血 を認めなかったが歯髄電気診に生活反応を認めた。 齲 検知液(カリエスチェック 日本歯科薬品)にて 齲 を認めないことを確認した。#45はデンタル エックス線写真では明らかな骨吸収は認められず, カリエス像,根尖部透過像を認めなかった。患者満 足度を示すフェイススケールは15/20であった4) 。 4.診断 上顎左側第一小臼歯の歯冠破折,および下顎右側 第一小臼歯の歯冠破折による審美障害・咀嚼障害 5.治療内容と経過 1)治療方針および計画 患者は以前より,# 46 のメタルインレーブ リッジの金属がみえるため審美不良を訴えていた。 また#24に関しても笑うと見える部位であり,今後 の治療では審美を考慮した治療をしてほしいとの希 望があった。 ⑴ #45 46 47について #45の破折による歯冠修復治療は難しいため,最 初にブリッジ除去を行い再補綴することとした。 治療プランとして①#45 47を支台歯とした全部 被覆冠ブリッジ ②#45 47 クラウン #46インプ ラント ③#45 47 クラウン #46部分床義歯を説 明したところ,①の全部被覆冠ブリッジによる治療 を希望した。患者は白い材料での治療を希望した。 #45は歯質の量が十分であったため,金属による部 分被覆冠ブリッジの作製が可能であったが,審美性 を配慮し全部被覆冠によって補綴することとした。 また,クラウン除去後#47は歯冠高径が低くクリア ランスが得られないため保持溝を付与する必要が あった。CAD/CAM を用いると複雑な形態は再現 できないため,全部金属冠での補綴とした。#47を 全部金属冠で補綴することを決定したため# 陶材 図3 #45 歯冠破折時の口腔内写真(左),エックス線写真(右) a b 図4 #44 a.舌側咬頭破折時の口腔内写真,b.破折片・脱離したアマルガムの写真 歯科学報 Vol.119,No.3(2019) 211 ― 47 ―

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焼付金属冠#46陶材焼付ポンティック# 全部金属 冠のブリッジにより補綴することとした。上顎のク ラウンを再作製することも提案したが,同意は得ら れなかった。 ⑵ #24歯質破折について 生活反応が認められたが,舌側の歯質は乏しくコ ンポジットレジン修復や部分被覆冠による修復は困 難と判断,頰側歯質の量は十分に確保できると判断 したため,コンポジットレジンにて支台築造を行い 全部被覆冠とすることとした。治療プランとして① 全部金属冠②レジンジャケットクラウン③オールセ ラミッククラウンを説明したところ③オールセラ ミッククラウンによる治療を希望した。オールセラ ミッククラウンは,モノリシックレストレーション とベニアリングレストレーションの二種類がある。 本症例では咬合の維持を必要とするため,モノリ シックレストレーションを選択した。また,モノリ シックレストレーションに使用する材料は二ケイ酸 リチウムとジルコニアが使用されているが,審美性 を考慮し透明性の高い二ケイ酸リチウムを選択し た。 2)治療内容 ⑴ # 46 陶材焼付ブリッジ(図5,6) ブリッジの除去をカーバイドバーにて行った。# にインレー窩洞を覆うようにワンステップ型のボ ンディング材(クリアフィルボンド SE ONE クラ a b c 図5 # 45 a.支台歯形成時の口腔内写真,b.作業用模型の写真, c.シェードセレクション時の口腔内写真 212 神田,他:審美補綴を行った一症例 ― 48 ―

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レ)にて前処理後,支台築造用コンポジットレジン (クリアフィル DC コ ア オ ー ト ミ ッ ク ONE ク ラ レ)にて支台築造を行った。# 頰側ディープシャ ンファー,舌側シャンファーとし# は全周シャン ファーとした支台歯形成を行った。# の歯冠高径 は近心で3mm,遠心で1mm であったため,咬合 面にホールを付与した支台歯形態とした。咬合時の クリアランスは# で2mm,# で1mm であっ た。テンポラリークラウンを装着し,2週間脱離が 生じないことを確認し個人トレーと付加型シリコー ン 印 象 材(Imprint3 3M ESPE)を 用 い て ダ ブ ル ミックス印象法にて精密印象を行った。ラボにて作 業用模型を作製後,# 陶材焼付冠,#46陶材焼付 ポンティック,# 全部金属冠にてブリッジを作製 することとし,陶材焼付用合金によってメタルフ レームと全部金属冠をワンピースキャストにて作製 した。ブリッジの#45 #46をビスケットベイクま で作製後口腔内にて試適を行った。適合状態の確 認,隣接面コンタクト,咬合調整を行った。ラボに てグレージングを行い口腔内で再度隣接面コンタク ト,咬合の調整を行い装着した。 装着には,セルフアドヒーシブ型レジンセメント (リライエックスユニセム 3M ESPE)にて装着し た。装着時にはポンティック下部のセメント除去の ためフロスを巻いた状態で行い,タックキュア後セ メント除去を行った。メインテナンスにむけポン a b c 図6 # 45 a.ビスケットベイク時の写真,b.試適時の口腔内写真, c.グレージング・研磨後写真 歯科学報 Vol.119,No.3(2019) 213 ― 49 ―

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ティック下部にはプラークが停滞しやすいことを十 分に説明し,スーパーフロスを用いて補助的に清掃 を行うことを心掛けるよう指導した。 ⑵ #24二ケイ酸リチウムを用いたオールセラミッ ククラウン(図7,8) 舌側歯質破折部の形態修正を行い,コンポジット レジンにて支台築造を行うこととした。支台築造に は,ラバーダムを行うことが困難なため簡易防湿に より行った。歯肉圧排糸(シュアーコード #000 ヨ シダ)と口腔内局所止血剤(歯科用 TD ゼット液 東 洋製薬化成)にて機械的および薬剤的歯肉圧排後, 支台歯にはワンステップ型のボンディング材(クリ アフィルボンド SE ONE クラレ)にて前処理後, 支台築造用コンポジットレジン(クリアフィル DC コアオートミック ONE クラレ)を築盛した。当日 は仮形成を行った後テンポラリークラウンを作製, 仮着した。支台歯形成は機械的および薬剤的歯肉圧 排後,全周ディープシャンファー,クリアランス量 2mm にて形成したが舌側の歯質は少なくレジンが フィニッシュラインにならないように形成した。テ ンポラリークラウンを修正,個人トレー作製用の概 形印象採得を行った。模型上にて作製した個人ト レーと,付加型シリコーン印象材(Imprint3 3M ESPE)を用いてダブルミックス印象法にて精密印 象を行った。 ラボにて二ケイ酸リチウム(e­max CAD イボク ラビバデント)を用いてクラウンを作製後,ステイ ニング,グレージングを行う前にビスケットベイク の状態のクラウンを作製し,口腔内にて試適を行っ た。試適時に隣接面コンタクトの調整を行いマージ ンの適合性,審美的な形態の確認を行った後咬合調 整を行い試適終了とした。その後ステイニング,グ レージングを行い口腔内で隣接面コンタクト,咬合 の調整を行った後,装着した。装着には,接着性レ ジンセメント(レジセム 松風)にて行った。支台築 造の前処理にはシランカップリング剤(ポーセレン プライマー 松風),支台歯にはワンステップ型のボ ンディング材(プライマー AB 松風)を用いた。ク ラウンの被着面にはリン酸(正リン酸)にて清掃を 行った後,シランカップリング剤(ポーセレンプラ イマー 松風)を塗布した。前処理後,レジンセメン トを塗布し圧接,タックキュアを3秒間頰舌側に 行った後,余剰セメント除去し再度光照射を行っ た。 a b 図7 #44 a.支台歯形成・シェードセレクション時の口腔内写真,b.作業用模型の写真 214 神田,他:審美補綴を行った一症例 ― 50 ―

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3)術後の経過と機能評価(図9−13) 装着後3か月に一度のメインテナンスを行い現在 3年が経過している。装着後3か月と3年を比較し た。口腔内写真より両補綴治療部位の歯肉退縮は生 じておらず色調の変化もなかった。歯周組織検査の 結果,プロービングデプスは3mm 以下であり,数 歯から軽度出血を認めたが異常は認められなかっ た。エックス線写真より補綴部位にマージン不適 合,明らかな骨吸収は認められなかった。フェイス スケールではともに1/20であり3年後のリコール 時も変化なく患者満足度の維持ができた。装着後3 か月と3年の咬合の変化を診査する目的で,シリ コーンゴムを用いた咬合接触検査(ブルーシリコー ン バイトアイ BE-1 ジーシー)を行った。#37MT および#36ポンティックの小さい頰舌的歯冠幅径の ため左右的なバランスは E であったが,咬合接触 面積は左右ともに軽度な減少であった。 考 察 1.歯冠破折について AAE(アメリカ歯内療法学会)のガイドラインで は,咬頭破折は垂直性歯牙破折の一つとして分類 され破折線は辺縁隆線から始まり,頰側溝や舌側溝 を 含 み 歯 頸 側1/3に 及 ぶ と さ れ て い る5) 。Van Nieuwenhuysen らは,アマルガム修復について患 者428名を対象に17年間追跡した6) 。その結果,平均 a b c 図8 #44 a.ビスケットベイク時の写真,b.試適時の口腔内写真, c.ステイニング グレージング時の写真 歯科学報 Vol.119,No.3(2019) 215 ― 51 ―

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生存率12.5年であり主な再修復の原因は修復物の破 折,二次齲 ,咬頭破折とあげている。また,咬頭 破折は大臼歯よりも小臼歯で多いことを報告した。 市丸らは患者32名を対象に,39歯を対象としの生 活歯に生じた亀裂・破折について調査した7) 。その 結果,亀裂・破折と診断された歯の10.3%がアマル ガム修復であったと報告している。本症例の#24の 破折は咬合面にアマルガム修復がされており,以前 より疼痛や違和感を訴えていた。近遠心的に舌側咬 頭を含み破折していたため,上記のことを考慮する とアマルガムに咬合力が加わることによって咬頭破 折が生じたのではないかと考えられる。しかし,# 45においてはインレー周辺の歯質の破折を認めた。 Silvestri は,インレーの窩洞形成は水平方向の咀嚼 図9 補綴装置 Set3か月後の口腔内写真 図10 補綴装置 Set3か月後のエックス線写真 216 神田,他:審美補綴を行った一症例 ― 52 ―

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力により内部剪断応力は引張応力が発生し,歯根破 折を招くとしている8) 。もし,インレーへの咀嚼力 が原因で破折が生じたのであれば,もっと重篤な破 折が生じていたと推察される。Abou-Rass らは, 残存歯質の量の減少により咬合力が原因で破折リス クが高まる9)としており,本症例は齲 除去時もし くはインレーの窩洞形成時に,破折部の歯質が菲薄 した状態でインレーを作製したため破折が生じたの ではないかと推察した。 2.支台築造について 生活歯においても広範囲の実質欠損の大きい症例 に対して,コンポジットレジンを用い支台築造を行 うことが増えている。坪田らは支台築造の統計的調 図11 補綴装置 set3年後の口腔内写真 図12 補綴装置 set3年後のエックス線写真 歯科学報 Vol.119,No.3(2019) 217 ― 53 ―

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査を行い,生活歯の支台築造はすべてコンポジット レジンで行われていることを報告した10) 。コンポ ジットレジンによる支台築造は,辺縁封鎖性や機械 的強度の高さから有効である報告している。さら に,これらレジン築造体と修復物との接着にレジン セメントを用いることにより,修復物と支台歯とが 一体化し,耐久性のある修復物が得られるとも言わ れている11)。本症例でも,築造体の強度やオールセ ラミッククラウンと支台歯の一体化を行うことを目 的としてコンポジットレジンによる支台築造を行っ た。 3.補綴装置の選択について 古くから審美修復には陶材焼付冠が用いられてき た。しかし,金属アレルギーの観点や前装材のチッ ピングの問題12) ,メタルカラーの影響による歯周組 織の審美性の低下13) などにより近年オールセラミッ ククラウンが作製される頻度が増えている。しか し,すべての症例でオールセラミッククラウンを使 用できるわけではない。CAD/CAM を用いて作製 するオールセラミッククラウンはスキャニングでき ないため,補助的保持形態を付与することができな い3) 。よって鋳造によってクラウンを作製すること とした。また,臼歯部陶材焼付冠は2mm のクリア ランスが必要であり14) ,陶材部の厚みが確保できな い場合はチッピングを生じる。本症例の#47のクリ アランスは1mm の確保ですら困難であり,#47は 審美的要件が低いためには全部金属冠を用いたブ リッジとした。 オールセラミッククラウンは,単一の材料で修復 するモノリシックレストレーション,またはフレー ム材料にポーセレンを前装するベニアリングレスト レーションの二種類がある。しかし,ベニアリング レストレーションは前装材料のチッピング,破折や 前装するポーセレンの対合歯摩耗の問題により,咬 合の維持を必要とする臼歯部ではモノリシックレス トレーションによる修復が注目されている15) 。モノ リシックレストレーションには主にガラスセラミッ クスである二ケイ酸リチウム,金属酸化物であるジ ルコニアが主に使用されている。ジルコニアに比べ 二ケイ酸リチウムは透光性が高く,ステイニングパ ウダーによるステイニングにより色調を再現でき る16) 。その反面,機械的強さはジルコニアに比べる と弱く17) ,高い表面粗さによりエナメル質の摩耗量 も大きくなってしまう18) 。しかし,本症例では第一 小臼歯であり微笑時にクラウンが見えるため審美性 に注意が必要な点,残存歯数が確保でき咬合が安定 しているため,強度を必要としない点で二ケイ酸リ チウムを選択した。 4.支台歯形態について 軸面の高さが低い支台歯において,補助的保持形 態を付与することで脱離に対し抵抗することはよく 知られている。4mm の高さが得られない臼歯部 は,近遠心的なグルーブを付与する補助的保持形態 が必要であると報告している19) 。しかしながら,実 a b 図13 咬合接触検査の結果 a.3か月リコール時,b.3年リコール時 218 神田,他:審美補綴を行った一症例 ― 54 ―

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際の臨床上は臼歯部での視野が不良であり,切削器 具の挿入方向が制限されるため使用頻度は低いこと が報告されている20) 。本症例でも遠心部の歯冠高径 は1mm 程度しかなく,最後方歯の遠心では形成が 困難であり,適切な形態を付与することが困難で あった。清水らは咬合面に保持孔を形成すること に,歯冠補綴物の保持力が向上することを報告して いる21) 。よって本症例も#47に直径1mm,深さ1 mm の保持溝を付与することで脱離に抵抗すること とした。 CAD/CAM を用いた補綴装置の支台歯形成の注 意点はスキャニングしやすい,加工しやすい形態を 付与すべき点である3) 。スキャンニングしやすい支 台歯形態とは,単純かつ丸みを帯びアンダーカット がないことである。一般的なレーザーを使用したス キャナーでは,マージン形態をショルダーで形成し てしまうと二次反射が生じ正確な計測ができない。 そのため,丸みを帯びたディープシャンファーでの 形成が推奨される。また,加工しやすい支台歯形態 とは切縁や咬合面が丸みを帯びた形態となっている ことである。加工は主にミリングマシンを用いる。 その際,ミリングに用いたバーの直径よりも細い部 位はバーが入らず不適合となってしまう。本症例も #24の支台歯形成において,辺縁形態をディープ シャンファー,咬合面に丸みを帯びさせ凹凸のない スムースな面と明確なフィニッシュラインをもった 形成とした。 5.補綴装置装着後の経過について 田中らはシリコーンゴムを用いた咬合接触検査 が,咬頭嵌合位の再現にもっともすぐれた検査法で あると報告している22) 。現在装着中の補綴装置の摩 耗状態を把握するため,本症例では3か月経過時と 3年経過時の咬合接触状態を確認した。咬合接触面 積は,軽度の増加をしていたが異常ではないと判断 した。ジルコニアに比べると二ケイ酸リチウムや長 石系陶材は,対合歯エナメル質の摩耗は高いと報告 している18,23) 。現在の状態は軽度の摩耗が生じてい るが問題ないと判断できる。しかし,今後摩耗に よって咬合が変化する可能性は高いと思われるた め,引き続き咬合接触検査を行い場合によっては咬 合調整,補綴装置の再作製が必要であると思われ る。 装着したクラウンに,審美性の低下や歯肉退縮に よる象牙質の露出はみられなかった。竹林らはクラ ウ ン の2年 生 存 率 は95.0%,5年,10年 後 は87.3 %,64.3%でありクラウンの喪失は4年までの喪失 原因に差はないが,4年から14年では齲 と歯周病 に割合が大きくなると報告している24)。現在,患者 のモチベーションが高く,口腔内の清掃状態は良好 であり,2次カリエスや歯周病に罹患する可能性は 低いと考えられる。しかし,3年を経過した今後の 罹患率の上昇が予測されるため,メインテナンス時 のさらなる注意が必要であると推察される。 結 論 歯冠破折を起こした歯に対してオールセラミック クラウン,陶材焼付ブリッジを選択し,支台歯形態 に考慮して補綴治療を行ったことで患者の QOL が 改善し,審美障害と咀嚼障害を改善した。 著者の利益相反:開示すべき利益相反はない。 文 献 1)飛田 滋,大沼誉英,河野正司:各種歯科技工装置の製 作状況に関する実態調査−平成20年度から平成22年度まで の統計調査−.明倫紀要,15:65−69,2012.

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歯科学報 Vol.119,No.3(2019) 219

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A case report of tooth preparation and prosthesis selection for esthetic prosthodontic treatment

Yuuhei KANDA,Toru SATO,Yuichi HISANAGA

Shuntaro NOMOTO,Mamoru YOTSUYA

Department of Fixed protsthodontics, Tokyo Dental College Key words : all ceramic crown, porcelain fused crown, Aesthetic prosthesis

We report a case where aesthetic satisfaction was obtained and the occlusion state was stabilized as a re-sult of prosthodontic treatment with the all ceramic crown and porcelain fused crown for the tooth which caused the coronal fracture.A 67 - year - old female patient wished for maintenance and came to the hos-pital.Because there was no abnormality in the intraoral finding at the time of the first visit,we recalled after the periodontal basic treatment.Six months after the first visit,I recognized a dental crown fracture at #24 #45.Both #24 and #45 acknowledged living responses,but decided to perform prosthetic treat-ment with full covered crown.Patient wanted aesthetic prosthetic treattreat-ment.In #24,an all ceramic crown with lithium disilicate was prepared.Since #47 has a low crown diameter and difficulty in ensuring clearance,bridge made of full metal crown was made on #45 porcelain fused crown #47.I recalled every 3 months after prosthodontic treatment and was able to keep occlusion abnormally in the prosthetic

device for 3 years after wearing. (The Shikwa Gakuho,119:209−220,2019)

220 神田,他:審美補綴を行った一症例

参照

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