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長命時代における老人対策の落し穴 : 精神的孤立の発生に何をしなければならないか

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長野大学紀要 第14巻第3号 263-281頁 1992

長命時代 における老人対策の落 し穴

― 精 神 的 孤 立 の 発 生 に 何 を し な け れ ば な ら な い か ―

The Pitfall of Welfare Policy for the Elderly

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― H o w s h o u l d W e C o p e w i t h t h e O c c u r r e n c e o f S o c i a l I s o l a t i o n ? ―

長 命 時 代 に問 わ れ る 「老 い

」 への対応

1

.

「長生 き」は当 た り前の時代がや って きた 厚生省が発表 した平成3年の簡易生命表による と、 日本人の平均寿命 は前年 と比べて男が0.19歳 延びて76,11歳、女が0.21歳延 びて82.11歳 と、そ れぞれ世 界最高 を維持 していることが明 らかにな った。厚生省に よると、今後 も平均寿命が下が る 要素はないため、当分 、世界最長寿は揺 るぎそ う にない とい う。簡易生命表は平成3年の死亡状況 をもとに年齢別 にあ と平均何年生 きられるか とい う平均余命 を計算 した もので、毎年の人口動態統 計に基づ いて計算され るが、この うち、零歳の平 均余命 を 「平均寿命」 と呼んでいる。 日本人の平均寿命は、明治、大正 にかけては男 女 とも42-43歳で推移 し、昭和10-11年になって 男女 とも45歳 を超え、戦 後初めて生命表が作 られ た22年 になって ようや く男50.06歳、女53.96歳 と 50歳 を超 えた。「人生 わずか50年」といっていた時 代 である。それが、昭和30年には男女 とも60歳 を 超え、40年には女が、そ して50年には男も70歳 を 超え、ついに60年には女が80.48歳 となって、「人 生80年時代」が到来 したのである。 この平均寿命の延 びは、平均余命の延 びに もつ なが り、た とえば65歳の平均余命は昭和22年 に男 てlo.16歳、女 で12.22歳 であった ものが、平成3 年にはそれぞれ6歳∼ 8歳延びて16.31歳、20.20 歳 と、長生 きすればす るほど平均寿命 をはるかに 超えた年 月を生 きるこ とになる。そ して、平成3年

Kiyoko Hagiwara

にすでに85歳の人の平均余命は男4.89歳、女6.05 歳 と、男女 とも90歳前後 まで生 きる可能性がある ことになる。 さらに、生命表上 、特定年齢 まで生 きる者の割合 をみ ると、昭和30年 当時、80歳 まで 生 きる人の割合は、男が20%、女は32%であった ものが、過去35年間に男女 とも二倍以上に増加 し てそれぞれ48%、69%となっている。また、平成 3年 に誕生 した男の半数 は79.29歳、女 の半 数 は 85.06歳 まで生 きると推定 されている。 まさに「長 生 き」は当た り前の時代がや って きたのである。 2.増 えつづ け る一人 暮 ら し老人、 夫婦 の み世 帯 わが国の総世帯数は平成2年、4,027万3子世帯 で、この うち65歳以上の高齢者のいる世帯は1,081 万6子世帯 となってお り、全世帯の26.9% (昭和 50年:21.7%)を占め増加 の一途 をたどっている。 この65歳以上の高齢者がいる世帯 を世帯類型別に み ると、子供、孫 と同居す る三世代世帯は427万 世帯で全世帯の10.6%、夫婦のみの世帯は231万 4千世帯 (全世帯の) 5.7%)、 また、一人暮 らし老 人 (単独世帯)は161万3千人 (全世帯の4.0%) である。 これ を年次推移でみ ると、三世代世帯が 減少 している一万、単独世帯 と夫婦のみの世帯が 大幅 な増加傾向を示 している (図1参照)0 この ように、高齢者単独世帯 と、夫婦二人暮 ら しで少な くとも一方が高齢者の世帯の合計は、全 世帯のほ

ぼ 1

割 を占め、三世代同居世帯の割合に 追い付 く勢いにある。 しか し、傾 向 としては、前 -32

(2)

-図1 世帯構造別にみた65歳以上の者のいる世帯の構成割合の推移

7 %(' (夫婦のみ世帯 )

(夫婦 .ミ警 ≡=niRnf#', 'その竿 世帯 ) 昭和50 55 60 62 63

2 (資料) 厚生省統計情報部、60年以前は 「厚生行政基礎調査」、62年以降は 「匡卜民生活基碇調査」、 厚生 省老人福祉振興課他監修 r老 人福祉のてぴ き

(

3年度版 )、P.9より。 者 の世帯 を形成す る高齢者が増 え、後者の三世代 同居世帯 は減少す るであろ うか ら、社会 的に も個 人的に も長 い老後へ の対応が新 たな段階に入った といえる。 3. 問 われ る 「老 い」 への対 応 長 い老後へ の新 たな段 階 とは、いいか えれば老 人 とは何か、老 い とは何か を再検討す るこ とにつ なが る。平成

3

6

月、総務庁 は長寿社会対策閣 僚会議 と閣議 で 「長寿社会対策の動向 と今 後の課 題 と展望」 を報告 したが 、それに よる と

、6

0

歳以 上 の高齢者の うち、経済的に困っていない人が8 割 と欧米並みに豊かになっているのに対 し、孤独 に対す る不安 を感 じている高齢者が ア メリカ

3

5.

9

% 、イギ リス

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0.

9

%

に対 して、 日本は

6

3

%

とずば ぬけて高 い事実 を明 らかに し、このため各省庁 が 高齢者 との交 流 を拡大す る政策 を推進す るこ とが 重要 だ としてい る。 また、平成元年6月に京都 で開かれたWHOフ ォー ラム 「長 命か ら長寿へ」において も、心 と身 体 の健康や心 の問題、死 をみつめて生 きることの 重要性が医療 関係者か ら提 出されていた。 この よ うに、長命 ない しは長寿が当た り前 になった段階 においては、精神 と身体 、あるいは心 と体 の問題 を、同時に捉 えなければな らない時代 に入 った と いえる。 この ような考 え方が重視 されは じめた背景には、 「老 人」や 「老 い」 を捉 える視 点や方法 として、 従来の心 と体 、精神 と身体 、個 人 と集団、経済 と 社会 、生 と死 、病気 と健康 、 自立 と依存 、施 設 と 在宅 、主観 と客観等 といった二分法的な ものの考 え方や 、これ らの軸 での分析 では現実の姿 を捉え きれない とい う反省がある。 では、「老い」 とは何 か 。 この問いに簡単に答 え られ るはず もない。に も拘 らず 「老い」 を取 り 上 げたのは、老いてい くこ と、老いてい く過程、 つ ま り、エ イジング (Aging)の先 に死 が ある人 問 を、単 に研究対象 として、あ るいは、制 度政策 の対象 として、その一部 を切 り取 った り、あるい は見 えている部分 を 「ニー ド」に した り、「クライ エ ン ト」にす るといった寸断化 、部分化す るこ と に よってその人たちの求めているものに応 えられ るだ ろ うか 、 とい う疑問が生 じたか らで あ る。 こ の疑問 を解 く鍵のひ とつは、作家の富岡 多恵子氏 が漫画家の 「長谷川町子 さんの死 の姿勢 に思 う

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265 長野大学紀要 第14巻第3号 1992 とい う文章の中で、「老 い」 と 「病 い」 の違 い に つ いて触れた中にあ るように思 われ る (朝 日新聞 夕刊 8月20日)。つ ま り、「人間に とって『老い』 は不安 であ り、『病気』 も不安 であるが 、『老い』 はすす む一方 でその先に死があ り、治 る見込みの ない、つ ま り引 き帰す見込みのない不安 であるの に比べ 、F病気』は引 き帰す見込みの残 された不安 である。すすみゆ く 『老い』 を自覚 して耐 えるよ り 『病 気』だ と決めて もらった方が楽である。」、

『老 い』 とい うのは、 - ・緩慢 に朽 ちてい くこ とであ る。 この 『朽 ちてい く』過程は、 ・- 最 初 に もいったように、引 き帰す見込みが ない。『入 院 ・手術』には 『退院』があ り得 るが 『朽 ちてい く』果 てには 『死』 しかない」 と。 ここでは、富岡多恵子氏の説にな らい 「老い」 を 「緩慢 に朽 ちてい く過程」の人間 として、ゆえ に 「死」へ の 「不安」 を抱 きなが ら生 きている生 活者 として捉 えた時、従来の老人対策は 「老 い

の観点か ら積極 的に対応 をして きただろ うか。以 下 、超高齢者の生活実態 を調査 に よ り明 らかに し なが ら、今 日の老 人対策 を検討 し、最後に、「老い」 とともに生 きる生活者に対 して抜本的に どう考 え た らいいか を提 出 したい。

Ⅰ 超高齢者の生活実態

一地 方 小 都 市 居 住 者 へ の 面 接 調 査 か ら -従来 、老 人一般 ない しは要援護老人 としての一 人暮 らし、老人夫婦 、あるいは寝 た き り老 人、痴 呆症老 人 といった調査 は しば しば行 われて きたが、 いわゆ る老 人対策の対象 として把握 されて こなか 繰 った後期高齢者 、なかで も西欧諸 国で問題になっ ている80ない し85歳以上 の超高齢者の生活実態は ほ とん ど取 り上 げ られていない。 そこで、筆者 たちは、大都会や都市部 よ り高齢 化の進 んでいる地方の小都市 ・農村地域 に住む88 歳以上の在宅長寿者 を対象に、「地域 で長生 きす る こ と」の意味 、つ ま り、彼 らが どんな状態 で どん な生活 をしているか を明 らか にす るために面接調 査 を行 った(注1)。その結果 を検討 してみ よう。 ただ し、今 回の調査 は残念なが らサ ンプル数 が十 分大 き くないために、ケースス タデ ィ的な性格の 結果 であるこ とを予めお断わ りしたい。 調査 は、長 野県御代 田町お よび小諸市 に住む88 歳以上の長寿者の生活 とサー ビスの実態 を面接調 査 し、調査結果に基づ いて在宅長寿者の社会的ニ ー ズの内容 を分析 した。御代 田町お よび小諸市の 各地域全体 の産業経済は、農業か ら製造業へ 、そ してサー ビス業- と比重 を移 し、現在農業人 口比 率 は御代 田町22.2%、小諸市18.6% と低 くなって いる。 御代 田町調査は、人 口1万2千 人の同町に居住 す る88歳以上 の老 人47人すべ て を調査対象 とし、 集計対象28ケース (有効 回収率59.6%)を得 、小 諸市調査 は、人 口約

4

4

千 人の同市に居住す る 88歳以上 の老 人246人の うち、居住地特性 (農村地 域、商業地、住宅地 )に応 じて104人 を調査の客 体 とし、集計対象74ケース (有効 回収率71.2%) を得た。調査期 間は、御代 田町調査が平成3年11 月22-24日、小諸市調査が同年 11月29-12月 1日 であった。調査 回答者は老人本 人お よび主 に世話 をしている人であ る。なお、集 計区分の内訳は、 表

1

の通 りである。 また、調査対象の抽 出にあた っては、両地域 ともに平成3年10月25日現在の住 民基本台帳 よ り88歳以上の住民一 覧 (ただ し、老 人ホーム入居者 は除いた)を使用 した。

1

.調 査 結果 の概 要 今 回の主 な調査項 目は、老人の属性 、世帯の状 況、世話の状況、保健 ・福祉サー ビスの状 況、老 人の 日常生活、茶 のみ友達 の有無 、に加 えて、い 表1 集 計 区 分 の 内 訳 回 答 調 査 不

合 計 入院中 転 出 不 在 拒 否 死 亡 その他 御 代 田 町 調 査 59.6 12ー8 - 2.1 14.9 8.5 2.1 100% (N-47) -

3

4

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-くつ か の フ リー ・ア ンサ ーか ら成 って い るが 、量 表2で あ る。以下 、必要 に応 じて本表 を参 照 して 的 に把 握 が可能 な項 目の結果 を一 覧表 に したのが いただ きたい。 表2 御代 田町、小諸市 長寿者調査結果の概要 御代 田町 (N-28) 小諸市 (N-74) 1.調査対象者の概要 ① 性 別 男 女 (卦 平均年齢 ③ 健康状態 大 変 よ い 普 通

い 35.7% (10) 64.3% (18) 89.96歳 (28) 35.7% 42.9% 17.9% 病気で長 く寝ている 3.6% ④ 公的年金受給状況 老齢福祉年金 57.1% 国 民 年 金 28.6% 厚 生 年 金 3.6% 恩給 ・遺族扶助料 10.7% 受給 していない 3.6% ⑤ 障害者手帳の有無 あ り 3.6% な し 96.4% (む通院状況 通 院 中 46.4% 往診 して もらっている 10.7% 通院 ・往診なし 42.9% (訂 居住歴 昭和19年以前 昭和20-29年 昭和30-39年 昭和40-49年 昭和50-59年 昭和60年以降 (釘 婚姻状況 未 婚 57.1% 7.1% 10.7% 7.1% 10.7% 7.1% 3.6% 既 婚 (配偶者がいる) 10.7% 離婚- 生別 0.0% 死 別 85.7% (卦 最近1カ月の同居家族以外の人 との交流状況 (訪問 ・電話含む) 1回 もなかった 1-2回あった 3回以上あった。 そ の 他 42.9% 7.1% 42.9% 7.1% 32.4% (24) 67.6% (50) 90.73歳 (74) 33.8% 40.5% 16.2% 9.5% 62.2% 24.3% 5.4% 4.1% 5.4% 4.1% 95.9% 37.8% 21.6% 40.5% 75.7% 10.8% 4.1% 5.4% 2.7% 1.4% 0.0% 13.5% 0.0% 86.5% 20.3% 25.7% 50.0% 4.1%

(5)

267 長野大学紀要 第14巻第3号 1992 2.世帯の概要 (彰 家族構成 ひ と りぐらし 老 人夫婦世 帯 孫 までの3世 代 同居 息子夫婦 ・娘夫婦 との同居 独 身の子 との同居 4世 代同居 そ の 他 ② 1世帯 当た り平均 家族 数 (卦 配偶者の平均年齢 (彰 農協加 入状況 加 入 してい る 加 入 していない 7.1% 3.6% 42.9% 32.1% 3.6% 7.1% 3.6% 4.04人 82.3歳 (3人) 85.7% 14.3% 3.世話の状況 ① 主 な世話人 (ひ と りぐらし及び 「世 話 して いない」 を除 く) 1)性 別 男 女 2)老人 との続柄 妻 娘 嫁 (卦 世 話 に要 す る時間 毎 日ほ とん どつ きっき り 毎 日半 日以上 毎 日2-3時間 週 に1-2回 必要 な ときに手 を貸す程度 「世 話 していない」 等 (N-25) 12.0% 88.0% 12.0% 12.0% 64.0% 4.0% 4.0% 16.0% 0.0% 68.0% 8.0% ③ 世 話 に要 す る費用 費用 はかか らない 76.0% 1万 円∼2万5千 円未満 2万5千 円∼5万 円未満 5万 円以上 不 明 4.保健 ・福祉 サ ー ビスの状況 ① サ ー ビス を知 ってい る割合 1)ホー ム- ルパー 2)デイ ・サー ビス 3)訪問看護 4)短期保護 5)入浴サー ビス 6)給食サー ビス (勤 サ - ビス認知経路 : 16.0% 8.0% 0.00/. 0.0% 85.7% 64.3% 75.0% 46.4% 82.1% 60.7% 隣 人 ・友 人、TV等 、市広報 -3 6-12.2% 5.4% 32.4% 27.0% 8.1% 13.5% 1.4% 3.77人 84.0歳 (10人) 71.6% 28.4% (N-61) 19.7% 80.3% 6.6% 13.1% 60.6% 8.2% 8.2% 14.8% 1.6% 47.5% 19.7% 75.4% 16.4% 3.3% 3.2% 1.6% 90.5% 63.5% 78.4% 58.1% 85.1% 75.7% TV等 、市広報 、隣 人 ・友 人

(6)

(釘 サ ー ビス利用経験 1)ホー ム- ルパ1 2)デ イ ・サー ビス 3)訪 問看護 4)短期 保護 5)入浴サー ビス 6)給 食サー ビス (N-28) 1ケー ス 2ケー ス 1ケー ス 1ケー ス 3ケー ス 2ケー ス (N-74) 3ケー ス 2ケー ス 7ケー ス 3ケー ス 0ケー ス 2ケー ス (む サ ー ビス未利用理 由 : 「必要が なか ったか ら」が両地域 とも7-9割 を占め た。 5.老人の 日常生活 (本人回答) (N-28) (D 新 聞 ・雑誌 を読 む 1)毎 日読 む 53.6% 2) とき どき読 む 7.1% 3)た まに読 む 3.6% 4)読 まない 35.7% ② 自分 で 日記やハ ガ辛 を書 いてい る 1)は い 21.4% 2) いい え (書け ない) 78.6% (勤 茶 の み友達 や立 ち話 しをす る友達 の有無 1)い る 32.1% 2)い ない 67.9% 6.英 のみ等の友達 の有無 に関す る特徴 (御 代 田町及 び小諸 市の計 N-93) (N-65) 50.8% 1.6% 7.9% 39.7% 34.9% 65.1% 50.8% 49.2% 茶 のみ等 の友達 い る (45.2%) い ない (54.8%) (D 性 別 男 女 (む 配偶 者の有無別 あ り な し (釘 家族構成別 ひ とり ぐらし 老人夫婦世 帯 孫 までの3世 代同居 40.6% 47.5% 36.4% 46.3% 36.4% 20.4% 53.3% 息子夫婦 ・娘夫婦 との同居 50.0% 独 身の子 との同居 4世 代 同居等 ⑥ 身体状 況別 自立 、準 自立 要援護 、要 介護 ⑤ 地域 (小諸市のみ)別 住宅地 ・商業地 農村的地域 57.1% 25.0% 47.1% 39.1% 42.9% 54.5% ⑥ 同居 家族 以外 との交流状況別 * (N-88) この 1ヵ月に0-2回程度 28.2% 3回以上 あった 65.3% 59

.

4

%

52.5% 63.6% 53.7% 63.6% 80.0% 46.7% 50.0% 42.9% 75.0% 52.9% 60.9% 57.1% 45.5% 71.8% 34.7%

*

p

<.

01

(7)

269 長野大学紀要 第14巻第 3号 1992 超高齢者 と健康 まず、米寿 を過 ぎて在宅で生活 をしている高齢 者は、一体健康 なのか 、病気なのか、あるいは雇 た きりなのか 、痴呆症 なのか 、を問 うことか ら始 め よ

う。

平均年齢お よそ90歳の御代 田町お よび小諸市の 老人の うち、「普通」以上の健康状態にあるとの答 えは全体 で

8

割弱 にのぼ り、「病気で長 く寝てい る」は御代 田町でわずか3%、小諸市で 9%にす ぎなか った。 しか し、た とえ健康状態が 「普通」 以上 であって も 「通 院中」 と 「往診 して もらって いる」 を併せ ると全体 で6割弱。その傷病名 をみ ると、本調査において用意 した14種類の選択肢に 入 らない傷病名か、あ るいは老衰 、健康管理 のた め といった傷病 として分類 しに くい回答の 「その 他」が全体の3割弱 を占め、ついで 「高血圧」が

1-2

割、「限疾患」、「リューマチ」等に数パーセ ン トみ られた。 今 回の調査では、ほかに体の状態 をたずねた。 まった く人手 を必要 としない状態のひ とか ら、重 介護の老人まで様々であったが、「起 きては来 るが あま り動かない」、「寝 た り起 きた り」、「ほ とん ど 雇たきり」、「寝たき り」、「まった くの寝た きり

のいわゆる 「要介護老 人」は御代 田町で25%、小 諸市で29.7%である。残 り7割以上の老人は向 こ う三軒両隣 りや 自分 の庭先程度な ら出歩 くことが 出来 る状態 にあると答 えているものの、 6割弱が 医療機関にかか っている実態か らす ると、病気ゆ えに医療機関 を必要 とするとい うよ り、高齢ゆえ に医療機関 との係わ りが持たれているといえよう。 家族 と世帯 家族の定義には、相互扶助の原初的形態 とか、 人類再生産の基礎 的単位等さまざまあるが、広辞 苑によると、「家族 とは夫婦の配偶関係や親子 ・兄 弟な どの血縁関係に よって結ばれた親族関係 を基 礎に して成立す る小集 団」であ り、人口学の観点 か らは、「住居 と生計 を共にす る複数の人々の集団 で、血縁、養子又は結婚によって特定の親族関係 にある構成員か らのみ成 り立つ」もの とされ る(注 2)。いずれの定義 も家族 とは、親族関係 を基礎 に 成 り立つ小集団 といえる。他方、世帯 とは、国勢 調査の定義によると 「住居 と生計 をともに してい る人の集 まり、または一戸 をか まえて住んでいる 単身者」 を普通世帯 と呼び、「普通世帯 を構成す る 人以外の人またはその集 まり」 を準世帯 と呼んで いる。この ように、家族 と世帯は よ く似ているが、 世帯は一人で も世帯であ り得 るし、特定の親族関 係にない人で も住居 と生計 をともにすれば世帯 を 構成す ることになる。 しか し、近年の結婚 に よら ない同棲や、夫婦が別 々に住みなが らの「通い婚」、 同性同士の生活等、家族の形態は多様化 している 一方で、住居 をともに したいわゆる伝統的な家族 で も親世代 と子世代 において、あるいは親子の間 で、生計は一部に しろ全部に しろ別々 とい う家族 も増加 している。 そこで、今 日では、厳密 な意味で家族 ない しは 世帯 と捉えることは難 しい。 ここでは、さしあた り住居 をともにす る親族関係 を家族 または世帯 と 捉えて、老人の実態 をみ ることにす る。 まず婚姻状況 をみ ると、さすがに

8

8

歳以上の高 齢になると夫婦 ともに健在でいる割合は

1

割弱に 過 ぎず、全体 の8割6分はすでに配偶者 と死別 し ている。 また、都市部 と異な り、今 回の調査対象 地城は どちらか といえば農村的な小都市であるこ とも手伝 って (因みに対象世帯の農協加 入率 は御 代 田町で86%、小諸市で72%)、未婚者は御代 田町 に

1

人いただけである。欧米諸 国の老人デー タを み ると、高齢になって も未婚か あるいは離婚 ・生 別による単身者 もかな りの数 に上 っていることか ら、わが国において もこれ らの単身世帯は今後、 増えることはあって も減 ることはないであろう。 つ ぎに家族構成 をみ ると、孫 まで含んだ三世代 同居が御代 田町で43%、小諸市 で32%、息子夫婦 ・ 娘夫婦のみ と同居 している二世代世帯が御代 田町 で32%、小諸市で27%、さらに、ひ孫 まで一緒の 四世代同居が

1

割前後、その他 に独身の子 とのみ 同居が4- 8% を数 え、これ らの数字 を加 えると 8- 9割の高齢者が子供世代 と同居 していること がわか った。 このように、子 との同居世帯 を構成 している高 齢者が多いこともあって、一世帯あた り平均家族 数は御代 田町で4.04人、小諸市 で3.77人 と、平成 4年 3月31日現在の住民基本台帳に基づ く長野県 の一世帯あた り人数3.24人よ りかな り大 きい。 38

(8)

-世 話 の状 況 超 高 齢世 代 とな る と、病 気 では ないが何 らか の 形 で医療機 関 との関係 を持 って いた り、足腰 は弱 りなが らも 「寝 た き り」 では なか った り、同 じこ とを何 度 も聞 い た り、夜 家族 を起 こす とい って も、 「痴 呆 症 」とは 言 い切 れず 、高 齢 ゆ えの ノーマ ル な 行動 と思 え る老 人が 多 くな る。 したが って、超 高 齢 世代 にお い て は、一般 的 な 「病 気」 とか 「濠 た き り」、「痴 呆 」 とい う概 念 では捉 え きれ ない状 態 が 当た り前 にな ってい る。 この よ うな状態 に対 し て 、治療 や ケア あ るいは介護 、介助 、世 話 とい っ た考 え方 や 方法 を一律 に 当て はめ る こ とは 、 きわ め て実 状 か ら遠 ざか るこ とにな りか ね ない。 た と えば 「宴 た き り」 の概 念 ひ とつ取 って も暖 味 であ り (表3、表 4)、それ故 、結 果 としての雇 た き り 老 人の割 合 は施 設 の老 人で 日本 は欧 米 の数 倍 か ら 10倍 以上 にのぼ る可能性があ る とみ られてい る(表 5)。 もち ろん 、ここに示 した潅 た き り老 人比率 の 表3 日本 における寝たきりの定義 寝 た き り 者 の 定 義 調 査 方 法 厚生省統計情報部 病気(老衰 を含む)、けが等で 日常生 層化無作為抽出法によ 「昭和59年厚生行政基礎調査

活のほ とん どを渡ている状態に.ある る世帯調査 で調査員に 昭和59年6月7日調査 者 をいう○ よる訪問面接調査 厚生省統計情報部 要介護者で、病気 (老衰 を含む)や 同 上 「匡Ⅰ民生活基礎調査

けが等で 日常生活 をほ とん ど雇てい 昭和61年 る状態が6カ月以上続いている者 東 京 都 日常生活動作能力 を総合的に判断 し 住民基本台帳か ら無作 「東京都社会福祉基礎調査

たか らだの状況によるo 為抽出し、調査員によ 昭和60年7月10日 る訪問面接調査 -大阪府医師会 .大阪大学医学部公衆 「厚生行政基礎調査」に同 じで、期間 大阪府医師会加入全医 衛生学教室 の制限なLo 療機関の患者 (40歳以 「雇た きり者の診療 .疾病 .介護の 上 )を対象に直接郵送 実態に関す る研究」昭和昭和6601年年73月月29日-8月31日 方式 全 日本民主医療機関連合会 1. 6カ月以上続けて澄込んでいる 加盟院所が各々の地域 「ひ とり暮 らし .潅たきり老人 (トイレだけに起 きる人を含む)o を設定 し、地域諸 団体 実態調査

2. 3カ月-6カ月

(〟

) 協力による面接調査 昭和56年4月∼57年3月 4.33. 15.上あまり積極的に動かない (は常時敷いてあ り食事 に起 きる)ら離れていることは多い)漬込む程ではないがカ月以上寝た り起 きた り (カ月-3カ月

、3(oカ月以〟床か床) 新潟県民生部 老衰及び心身の疾病 .障害の為に概 悉皆調査 .面接調査 「昭和58年度雇たきり老人 ね3カ月以上臥床 し、 日常生活困難 実態調査

であ り介助 を必要 とす る状態であ り、 (注 )介護手当支給のための 「去たきり老人」の認定条件は、東京都の場合「65歳以上の老人で、常時臥床の状態または これに準ずる状態にあるため介護を必要とする者であって、その状態が6カ月以上継続し、なお継続すると認められ る者」 (出所) 厚生省老人保健課監修 r宜たきりゼロをめざして)中央法規出版、平成元年12月、P.6より。

(9)

271 長野大学 紀要 第14巻第3号 1992 表4 寝たきり概念の整理 と比較 英語での表現 日 本 で の 用 語 ADL (移 動 ) 寝たきりの概念 行 動 状 況 介護状況 日常生活支障なし 完全 自立 唆味な概念 としての寝たきり様態 としての雇たきり 一部介助 House-bound gロ(N⊂)ヨ一ヨ1).・.一

屋 内 歩 行 可 Chair-bound ベ ッド上で体 を起こせ る 全面介助 (出所)表3に同じoP.8より。 表5 在宅及び施設で寝たきり状態にある老人比率の国際比較 調 査 年 日1987本 (デンマー クホ/レヾツタ市)1989 イギ リス(全国) スウェーデン(全国) アメリカ(全国) 在宅居住者 (65歳以上)を100として (1) (2) (3) 不明 不明

・家にこもりきり (・常に寝たきりただ し、常に寝たきり(Bed-bound)(Bed-Housbound)を含むe-bound) 4.0.16 0.1 8.0.02

長期ケア施設入所者100として (65歳)以上 を (6) (2) 不明 (4) (5)

・ベ ッ ド上 で体 を起 こせ る(Chair-bound)

・常に雇たきり(Bed-bound) 25.33.84 4.5 61.4.28 40.6.58

(資料) (1)東京都調査 (2)ホルペ ック市調査 (3)GeneralHouseholdSuⅣey (4)スウェー デ ン全施 設

(5)TheNationalNursingHomeSuⅣey(6)老人の専門医療 を考 える含及び東京都調査 よ り推計

(7)長期 入院者及び待暮 入所率 (出所)表3に同じoP.14よりO 差 は、単 に 、定義 の違 いか らのみ由来 してい るの ではな く、雇 た き りに させ ない考 え方や政策方針 、 サー ビスの あ り方 お よび老 人 自身の生 き方 に よっ て も異な って くるこ とは当然 であ る。 そ こで、厚生省 は、平成5年 4月よ り施行 され る老 人保健福祉計画 の策定上 、重要 な前提 とな る 「要援護老 人」の捉 えか た として、① 雇 た き り老 人、 ②痴呆性 老 人、③虚 弱老 人の三種類 を区別 した(表 6)。具体 的には、「ランクB(寝 た き り相 当)」 と 「ラン クC (寝 た き り)」が 「雇 た き り老人」 であ り、「ラン ク

A

」お よび 「ラン ク

J

」 を「虚 弱老 人」 と判定す るよ うにガイ ドライ ンを設けた。 なお、 「痴 呆性 老人」につ いては、老 人保 健福祉 計画研究 班 ・痴呆性 老人調査 ・ニー ズ検討 部会 に よって、 別途 把握方法が取 りま とめ られて い る とい う。 さて 、上記の 「要援護老 人」 の 区別 に よる と、 われわれが実施 した調査 の対 象老 人の 多 くは 「虚 弱老 人」 といえ よ う。 ただ し、厚 生 省に よる と、 -

(10)

40-表6 障害老人の 日常生活 自立度 (寝たきり度)判定基準 生 活 自 立 ランク

J

何 らかの障害等を有するが、 日常生活はほぼ 自立 してお り独力で外出する1 交通機関等 を利用 して外出す る 2 隣近所へなら外出す る 準寝たきり ランクA 屋内での生活は概ね 自立 しているが、介助なしには外出しない1 介助により外出し、 日中はほ とんどベ ッ ドか ら配れて生活する 2 外出の頻度が少な く、 日中も嘉た り起きた りの生活をしている 雇 た き り ランク

B

屋内での生活は何 らかの介助 を要 し、 日中もベ ッド上での生活が主体であるが 座位を保つ 1 車椅子に移乗 し、食事、排他はベ ッ ドか ら敗れて行 う 2

介助により

車椅子に

乗する

ランク

C

1日中ベ ッド上で過 ごし、排推、食事、着香において介助 を要する1 自力で宴がえりをうつ 期 間 ランクA、B、Cに該当す るものについては、いつか らその状態に至 ったか 年 月頃より (継続期間 年 ヵ月間) ・判定にあたっては補装具や 自助具等の器具 を使用 した状態であって も差 し支えない。 「虚 弱老 人」の把握 は各市町村におけ るデ イサー ビ スセ ンター の利用者 (寝 た き り老人お よび痴呆性 老 人 を除 く)等 の実状 をふ まえて行 うよ う指導 さ れている。 では 、今 回の調査結果か ら世 話 の状 況 をみ る と (一 人暮 らしと 「世 話 していない」 を除 く)、主 に世 話 を してい る人は女性 が8- 9割 を占 め 、在宅 の寝 た き り老 人や痴呆性老 人の介護者 と 同 じような傾 向 にあ る。 ところが 、世 話 人 と老 人 との続柄 を在宅 寝 た き り老人のそれ と比較 してみ る と(表 7)、寝 た き り老 人の介護者 は 「子 の配偶 者」 の割合が最 も高 く、つ いで 「配偶者」、「子」 とつづ いて い るのに対 して、今 回の調査 では、「嫁」、 「子 」、「妻」 の順序 であ る。 しか も、「嫁」 の割合 が圧倒 的 に高 く、「妻」 ない しは 「配偶者」の割合 が極 めて低 いのが特徴 であ る(表2参 照 )。超高齢 者の場合 、配偶 者 と死別 してい る割合 は、「宴 た き り老 人」 よ りも高 いのであ ろ う。 したが って超高 齢者 の世 話 は、年齢 的に異世代 の 「嫁」 な い しは 「子」 に依 存せ ざるを得 ないのが現実 であ る。 ここにい う超高齢者 の 多 くは、「要援護 老 人」の なか の 「虚 弱老 人」 であるため 、「寝 た き り老 人」 よ りもケア とい う直接 的 な身辺介護 は必要 としな い。 しか し、注意 しなが ら常 に見守 って い る状態 、 つ ま り 「眼 をかけて も手 をかけ るな」 とい うアテ ンデ イングな状態は 日常 的に求め られて い る。 こ の点が 「雇 た き り老 人」 に対す る介護 とは異なろ う。 そこで、「世 話 に どれ くらい の時間 が かか る か」 をたずねた ところ、「必要 な ときに手 を貸す程 度 」の割合 は5- 7割 と高 く、他方 、「毎 日ほ とん どつ きっき り

「毎 日半 日以上

「毎 日2- 3時間

を合 わせ た 「毎 日の世話」 を必要 とす る割合 は3 割 前後 と少 ない。世 話 の内容 も、入浴 、排 浬、着 表7 ねたきり老人 (在宅)の主たる介護者の割合 総 数 同 居 配偶者 配偶者 その他 別居の親族等 (資料) 厚生省統計情報部 「平成元年国民生活基礎調査」 (出所 ) 図1に同じ。P.21より。

(11)

273 長野大学紀要 第14巻 第3号 1992 替え、食事、寝返 りといったADL(日常生活動作 能力)に係わる介護 よ り、同居家族の家事援助 と 区別の しに くい 「食事 の した くや後片付け

「掃 除 や洗濯

「話 し相手

「日常の買物

「年金の受け取 り」等 、広い意味のIADL( 日常生活手段能力)-の援助が大部分 を占めていた。 したがって、老人 の世話 をす る上で特別に費用は 「かか らない」 と 答えた人が7割5分に達 し、「寝たきり老人」の介 護に比べて出費 とい う形での経済的負担は軽い と いえよう。 しか し、た とえ具体的な 「世話」 とい う形 を とらない として も、超高齢者か らまった く 自由 というわけにはいかない介護者に とって、精 神的、時間的拘束はやは り厳 しい ものがあるとい える。 保健 ・福祉サー ビスの利用状況 では、「虚弱老人」 と保健 ・福祉サー ビスの関係 をみることにす る。主に世話 をしている人に回答 を求めたが、ホーム-ルパーや入浴サー ビスを「知 っている」割合は

8-9

割 と高かったが、短期保 護 (シ ョー トステイ)やデイサー ビスは5-6割 と相対的に低か った。 また、これ らのサー ビスを 利用 したか どうか をたずねた ところ、「ホームヘル パー」は御代 田町でわずかの1ケース、小諸市で は3ケースに止 まった。家族 との同居が、サー ビ スを受 ける側 も提供す る側 もその必要性 を気付か せ ていない と思われる。 先の厚生省ガイ ドラインによる要援護老人の把 握方法では、「虚弱老人」はデイサー ビスセ ンター の利用者等か ら現況把握す る指針が出されたが、 今 回の調査ではデイサー ビスの利用経験者は御代 田町、小諸市 ともに2ケースずつに過 ぎなか った。 デイサー ビスは在宅の虚弱 (障害 )老人を週 1-2度、 もよ りのデイサー ビスセ ンターに通所 させ 、 入浴、食事 、 日常生活動作訓練 、生活指導、家族 介護者教室等の総合的なサー ビスを行 うものだが、 た とえ送迎サー ビスがあった として も、ちょっと したこ とで心身の安定 を欠 く超高齢者に とって、 外出は必ず しも容易ではないだろう。 また、デイ サー ビスのサー ビス内容 も、在宅の超高齢者に と って魅力のあるものか どうかが問われているとい えよう。 もちろん、サー ビスの利用経験は、身近 にサー ビスが用意 されていることが前提であるが、 同時に、利用 しやすいシステムになっているか ど うか も重要 である。た とえば、小諸市の介護者は 御代田町に比べて保健 ・福祉サー ビスを知 ってい る割合が高か ったが、小諸市ではサー ビス一覧 を わか りやすい冊子 に して市内全戸配布 していたこ ともサー ビスの周知率 に影響 していた。因みに、 サー ビスをどの ように知 ったか を聞いた ところ、 御代 田町では隣人 ・友人 ・知 人か らの「くち コ ミ」 が多 く、ついで、テレビ等の 「マ スコ ミ」、「市の 広報」の順 であった。他方、小諸市では、「マスコ ミ」が 多 く、「市の広報」、「くち コ ミ」と続いた。 訪問看護サー ビスの利用者は、小諸市調査 では7 ケース と御代 田町の

1

ケースに比べて多か ったが、 この利用数の違いは、雇たきり老人の多少に依 る とい うよ り、小諸市内にある農協立の総合病 院が 入院 ・退院 ・訪問の継続看護 に力 を入れているこ とが数字に現 われた といえよう。 以上 、保健 ・福祉サー ビスの利用状況 をみ る限 り、家族 と同居 している超高齢の 「虚弱老人」は、 現行の在宅保健 ・福祉サー ビスが提供す るサー ビ スの対象にはな りに くい側面 を持 っているといえ る。そのことが、サー ビスの利用率 を低めている と同時に、現行のサー ビスが対象に している 「ニ ー ド」それ 自体 、超高齢者の問題 を的確に把握 し ているか どうか疑問である。 茶のみ友達の有無 最後に、老人本人に 「茶のみ友達や立 ち話 しを す る友達の有無」についてたずねた。 回答率 は、御代 田町の老人が100%、小諸市の老 人が88%であった。回答不能者の多 くは、「耳が違 いか ら」、「いま眠っているか ら」、「寝たきりだか ら」、「ぼけているか ら」 といった家族の言葉で、 老人本人 と直接話 しをす るこ とがで きなか ったケ ースである。では、茶 のみ友達や立 ち話 しをす る 友達の有無についてみてみ よう。茶のみ等の友達 が 「いる」 と答えた老人は、御代 田町調査 で32%、 小諸市調査 で51%、逆に 「いない」が前者で68%、 後者で49%であった。全体 としては、超高齢者の 半数以上に、茶のみ友達が 「いない」 とい う回答 を得た。つ ぎに、御代 田町調査 と小諸市調査 を合 わせ で性別 、配偶者の有無別 、家族構成別 、身体 状況別 、地域別 、同居家族以外 との交流状況別に -4

(12)

2-茶のみ友達等の有無 をみたのが表2の6である。 表 をみればわか る通 り、男に比べて女の方が、配 偶者のある老人よ り無い老人の方が、また、ひ と りぐらし、老人夫婦世帯 よ り子供 と同居 している 老人の方が、要援護老人よ りも自立状態にある老 人の方が、住宅地 ・商業地 よ り農村 的地域の方が、 そ して、同居家族以外 との交流頻度が低いよ りも 高い方が、比率 の上では茶のみ等の友達が「いる」 割合が高か った。ただ し、統計的に有意差の認め られた項 目は、同居家族以外 との交流状況のみで あった。 今 回の調査 において、高齢者本人に質問す る内 容 として何 よ りも注意 をした点は、答えやすい内 容 にす ることであった。そのために茶のみ友達等 が 「いる」か 「いない」か を開いてみた。質問の ね らいは、茶のみ友達等の有無によって地域で長 生 きす るこ との意味、つ ま り家族以外の人間関係、 社会関係が長生 きす ることによって どうなること なのか を明 らかにす ることにあった。数量的な結 果は、すでにみたように半数以上の老人に、茶の み等の友達 はいなか った。 しか し、この設問に関 してはイエスか ノーの数量的回答以外に、高齢者 の生の声が面接者 を通 じて明 らかになった。すな わち、茶のみ等の友達がなぜ 「いない」か とい う 理 由が語 られたのである。語 られた理由のい くつ か を記す と、「兄弟は行 き来 しているが、まわ りの 人達はみんな死んでしまっている」、「みんな死ん で しまった。自分 だけが長生 きしちゃっている」、 「亡 くなって しまっているか らいない」、「隣に同世 代の人がいたが、2年前に亡 くなった」、「5年前 まではいた」、「周 りの人が どん どん亡 くなってき ているので、以前に比べてず っと少な くなってき ている」、「もとはた くさんいたが、今 はみんな病 人みたいな もの」、「老人会の役員 をしていたが、 みんな先に行 ってしまった」、「以前は近所に友達 がいたが、みんな死んでしまった」

、「

2

0

歳か らの 友人が7-8人いたが、みんな死んで しまった」、 「前の家 と隣に友達がいる。で も、周 りの人が どん どん死んでい くか ら取 り残 される」

、「

1

0年前に近 所の人が亡 くなってか らいな くなった」、「友達が

2

年前に亡 くなったのでいまはいない」、「以前は 同年輩の友達がいたが、亡 くなって しまった」、 「みんなが雇 たきりになっていな くなっ

1

=

、「近所 のお年寄 りで仲良 しは死んで しまった」、「以前に はいたが、その人 も弱 くなったため会えない」等、 超高齢ゆえに友達 を失 った理由ばか りである。 2.調 査結果 か らみ た超 高齢 者 ・虚 弱老 人の 実態 一精神 的孤立 の発生 今 回の調査結果か らどんなことがいえるだろう か。 1)老人 と世話の状況 について まず、簡単に調査結果 をまとめ ると、在宅老人 の8割弱は普通以上の健康状態にあ り、子供 との 同居率 は8-9割に達 していた。 また、「毎 日なん らかの世話が必要」 と答えた人は2-3割 、残 り は 「必要 な ときに手 を貸す程度」であった。保健 ・ 福祉サー ビスの利用状況では、ホーム-ルパーは 8- 9割 の家族に知 られていたが、利用者はわず か1-3ケースに止まっていた。そこで、サ ー ビ スを知 っていなが らなぜサー ビスを利用 しないの か を聞いた ところ、「必要がなか ったか ら」 と 「面 倒 をみ るのは 自分 (家族 )の責任 と思 っているか ら」が 多数 を占めていた。 以上の結果か ら、超高齢者が地域で普通以上の 健康状態で生活をし続け られる背景には、同居 、 別居 を問わずに、根強い家族 ・親族による介護 と 情報のネ ッ トワー クが機能 していたか らである。 2)茶のみ等の友達の有無 について 今 回の調査か ら、地域で年 を取 ってい く過程の 問題 として、病気や介護 とは異なる「精神 的孤立」 とい う社会的ニーズが浮 き彫 りになった。この「精 神的孤立」は、茶のみ友達等の有無 をたずねた回 答に示 されている通 り、親密 な家族や親族 とい う 狭い人間関係だけでは癒せ ない精神的な 「さみ し さ」 を指 している。この 「さみ しさ」は、単に、 主観的な 「孤独」の問題 とは異な り、長 寿化 して い く過程 で多 くの老人が経験す る客観的問題であ る。つ ま り、長寿化す るとい うことは、家族 を母 体 に して、 自分の個人的な人間関係が縮小す るこ とであ り、最終的には家族の中で しか 自分の存在 が認め られな くなるところに 「精神的孤 独」が発 生す るメカニズムである。さらに言い換 えるな ら、

(13)

2

7

5

長野大学紀要 第14巻 第3号 1992 年 を取 ることは、この ような当た り前の事実 を受 け入れることである。 しか し、超高齢者に とって、 この事実は一つの苦痛 に近い ものである。友達 あ るいは幼 な じみは、人間にとってある意味で利害 関係の少ない 「心の拠 り所」 といえる。これ らの 人々が、あたか も歯の抜けてい くように E]の前か ら消えてい くこ とは 「心の支え」が無 くなるに等 しい場合 もあろう。あ るいは、生 きる意欲 を失 う ケース もあろう。た とえば、「友達はみんな死 んで しまって、 自分だけが長生 きしちゃっている」 と 答えた93歳のお婆さんは、「長生 きしず ぎて困って いる。早 く死んで しまいたい」 と筆者に もらして いた。 また、「近所のお年寄 りで仲良 しは死んで し まった」 と答えた90歳 のお婆さんは、ひ孫 までい る 4世代同居の世帯 であるが、今 、一番困ってい るこ とは「何 もできないのに長生 きしていること」 と答え、「一 日も早 く決 まりがつ きたい」と訴 えた。 か らだは思 うように動 かな くなった り、家族の役 に も立たない と感 じた りし始めた時、高齢者は、 死への恐怖 とともに生 きる意欲 を無 くすか もしれ ない。そんな時、友達や幼な じみがいれば 「精神 的孤立」 を避け るこ とが出来 るであろう。 しか し、 その友達が、同世代 で\ある限 り早晩別れなければ ならず、 したが って 「精神的孤立」の問題は未解 決の ままにある。 今後、このような長 寿の先に開いている 「穴

をどうや って埋めてい くか、大 きな課題である。 しか し、現行の在宅老 人対策では、この ようなニ ー ドに対 して、対象規定において も、また、方法 において もほ とん ど対応できない といえる。つ ま り、従来の寝たきり老 人、痴呆性老人等 といった 老 人対 象規定や 、 カネ 、ヒ ト、モ ノあるいは医 療 、相談、情報等の方法では、長寿ゆえに発生す る 「精神的孤立」 とい う社会的ニー ズに対応でき ないであろ う。老人対 策について、今 こそ根本的 な問い直 しが求め られ ている。 長生 きす るこ とに よる 「精神的孤立」の発生。 このあまりに もあた り前の事実の発見 こそ、今 回 の調査におけるささや かな収穫である。 ⅠⅠⅠ 孤 立 と孤 独 の 問 題 に老 人 対 策 は

どう対応 して きたか

1.孤立 と孤 独の 関係

-P

.タウ ンゼ ン トの研 究 -P.タウンゼ ン トは老人の家族生活 を実証的に調 査研究 し、今 日、老人は考 えられているほ ど家族 との関係において孤立化 していない と同時に、家 族相互の助け合 いが行われている事実 を明 らかに した

(

P.

タウンゼ ン ト「老人の家族生活

1

9

5

7

年 )0 「今 日、過去におけるよ りも老人は孤立化 している と考 えられ ることが多い。 これは、真実であろう か。そ うではない と思わせ るものがある。この問 題は重要 である。そして、これに答えることが、 老後の社会的、また医療上の需要 、さらに経済的 需要 に対応す る方法 を、よ り以上 に明 らかにす る のではないであろうか」。タウンゼ ン トは、このよ うな問題意識の基に、ロン ドン市 内のベスナル ・ グl)- ン地区の200名の老人を無作為に抽出し、 徹底的に面接 して調査 を行 った。その結果、老人 は、彼 ら自身の家庭で彼 らのみで暮 らしたい と思 っているが、子供 たちや他の親族 たちの近 くを望 んでいる。そして、家庭の一員であ りたい とい う 老人の額い と、既婚の子供 と同居す るよ りも近 く に住みたい とい う老人の願いが、実際に果たされ ていた事実 を明 らかに した。 また、家族 との関係 をみ ると、多 くの親族が近 くに住 んでいるし、 と くに多 くの子供 たちは、定期的に また頻繁 に老人 と会 っていた とい うのである。 しか し、ご く少数 の老人は、子供 たち全部か ら孤立 していた。 孤立は、お もに親族の欠如によるばか りではな く、退職や老衰 によって も生 じるが、タウンゼ ン トは、孤立 と孤独は異なるものだ と両者 を区別 し た。つ ま り、社会的に孤立 させ られるとい うこと は、家族や地域社会 とわずか しか接触 しないこと であるが、孤独は、た とえ多 くの人に囲まれてい て も、愛す る誰か を失 えば、人は孤独 を感 じる。 したが って、孤立 している人が必ず しも孤独 とは か ぎらない。一方は客観的であ り、 もう一方は主 観的であるとい うのである。そ して調査の結果わ か ったこ とは、社会的に孤立 をさせ られている人 は、たいていひ とり暮 らし、年齢が平均以上 、子 - 44

(14)

-供や親族が近所に住んでいない、退職 していて、 かつ虚弱であった。 しか し社会的に孤立 させ る要 素はたったの一つ ではな く、これ らの要素がい く つ も組み合わ さっていた という。 さらに次のこ と が明確にされた。孤立 している人々は、病院、老 人ホーム、 自治体の家事援助サー ビス といった国 家の福祉サー ビスを必要以上に要求 している。こ のことか ら、孤立は、病 院、施設等に入る主 な理 由 となってい る とい う。すなわち、娘 と同居 して いた り、女性 の親族が老人の近 くに住んでいる場 合 には、保健や福祉についてのサー ビスをほ とん ど要求 しない とい う事実 を調査の結果か ら引き出 したのである。 一方、孤独の原因はどのように説明されている か。 タウンゼ ン トは、個 人的面接報告書 を調べ た ところ、非常 に とか、 ときどき孤独だ と云 った人 はたいていの場合、最近愛す る人 (夫な り、妻な り子供たち) と死別 していたことを明 らかに した。 また、配偶者の死んだ後す ぐに、子供や孫たち と 別居 したばか りの老人 も孤独感 を訴えていた。 老人の孤独は、人の健康や精神全体に影響 を与 え、退職 したばか りの人や、最近配偶者 をな くし た人などは生 きる意欲が減って早 く衰 えるという こともあって、社会的孤立 よ りも一段 と重大なこ とが理解 で きた とい う。そして、タウンゼ ン トは、 孤立 と孤独の問題 を分析 した結論 として、この 2 着は関連 してい るけれ ども、「老後の孤独の基礎 と なっている原因は、孤立 とい うよ りは、む しろ心 細 さである」(注3) と。 以上、P.タウンゼ ン トは、客観的な社会的孤立 と主観的な孤独 を区別 しなが ら、老後の社会問題 は家族 との結びつ きいかんによって変化、決定 し やすいため老人 を家族集団か ら分醒できない部分 として取 り扱 うべ きだとした。 タウンゼ ン トの研 究による 「老人の生活」の調査対象は

6

0

歳以上 と 若 く、本稿 で問題に している超高齢者ではないこ ともあって、老 人になってい く過程においては友 人、隣人等 との関係は,それほ ど老人に とって永 続的な ものではない と結論 した。 しか し、超高齢 者に関す る我々の調査結果によると、長生 きす る ことによって、茶のみ友達がひ とり欠け、ふた り 欠けす るこ と自体生 きる意欲 を失 うケース もみ ら れたことは、長寿 とい う客観的な状況が精神的な 「さみ しさ」を生 じるとともに 「生 き続ける」上で の 「さみ しさ」 を生んでい くのであ り、我 々はこ のメカニ ズムを 「精神的孤立」 と表現 したのであ る。つ ま り、「精神的孤立」は、タウンゼ ン トの区 別に よる孤立-客観、孤独-主観ではあらわ しに くく、それは、超高齢者になってい く過程 におい て避け られない社会的ニー ズと捉えた。それゆえ、 「社会的孤立」には社会的な対応が求め られ ると考 えるのである。 2.W HO報告書 と社 会 的孤 独 WHOは、「経済的視座か らみた高齢者介護のあ り方

(

1

9

8

6

年 )とい う報告書 をまとめた。 この報 告書 を翻訳紹介 した小原亜生氏によると、「本報告 書は、序の部分 を除いて、費用対効果分析法によ る介護類型の考察 とそれに基づ く政策提言にかか わる本文部分 (節-部 ) と本報告書の とりまとめ に参加協力 した11ヵ寓において実施 された個別の 費用対効果研究の要約集部分 (第二部 )の二つの 主要部分か らなる総ペー ジ数

1

7

4

ペー ジの大作で ある」(注

4

)0 本報告書の 目次 をみ ると、第一部第三章 「それ ぞれの調査研究の結論」部分の第二節に、「社会的 隔敵 と孤独感の除去」 とい う見出 しがあ る。見出 しに治 って本文 をみ ると、社会的孤独が 費用対効 果の研究に意味 を持つのは次の2点につ いてであ る、 とい う。以下 、少々長 く●なるが引用 しよう。 「第

1

は、高齢者の生活環境、特に一人暮 らしの 影響の検証である。一人暮 らしの高齢者 は、不 自 由さが増大す るにつれ、その不 自由 さの代イ賞を保 健や社会サー ビスに依存す るようになる。 さらに 一人暮 らしの高齢者は、急な病気や事故 の ときに 助けて くれる人が近 くにいない といった こ とか ら 安全性に も欠けている。このため、一人暮 らしの 高齢者に対す る介護費用は、夫婦世帯 またはその 他の世帯 と比べて施設介護の場合の費用 に最 も近 くなっている。 第2は、孤独な高齢者が在宅介護か ら施 設介護 へ と移行す る数 を算定す る方法である。 フランスの調査研究では、施設介護 を受 けてい る者の うち90%が独身者か未亡人であっ たのに対 し、在宅介護 を受けている者の43%は夫 婦者であ

(15)

277 長野大学紀要 第14巻 第3号 1992 った。ベ ル ギーにおいて も同様の傾向が示 されて いた」 と。 社会的孤独が費用対効果の視点か ら研究 された 結果 、出された政策提言は 「依存の予防」 とい う 表題の もとに検討 されている。高齢者の依存度の 増大 を予 防す る方法には、経済的状態の改善 、適 切 な住宅 の確保 、お よび高齢者の社会的統合 の促 進があるが、社会 的孤独は社会的統合の促進の項 において論 じられている。すなわち、 「現在の ところ、交流 と昼 食を目的 とした クラブ や デイセ ンターや友愛訪問 といった孤独 を解消す るこ とをね らい とした特定のサー ビスはあるが、 地域社会 の活動全般への よ り一層の参加 の促進 を ね らい とした計画 はない。 孤独 は、単 に社会的交流 を増 して もいや されな い。それは、会 いたい と思 い、関係 を持 ちたい と 思 う人 と会 うことであって、いろいろな人 と出会 う施設の提供 は十分な解決ではない。今後、さら に費用対効果分析の評価のため 、一層の試み を必 要 とす る分野であ る」(下線は萩原)0 本報告書では、み られ るように、社会 的孤独 の 問題が経済効率 との関係 で検討 され、その上 で「依 存の予防」 を図 るために 「社会的統合の促進」 と い う政策 目標が重視 されている。 しか し、介護 に 係 わる費用 と効果 の問題 を検討す る場合 、依存度 の高 い人々は在宅 ではや っていけない し、また、 介護水準が低 いために介護 費用が低 くなっている 時には費用 と効果の関係 を検証す るのは困難 であ る、 とい う。 さらに、介護 の方法について も、「問 題が生ず るのは、それぞれの介護方式が政策の さ まざまな側面 で矛盾す る結果 を生ず る場合 であ る。 た とえば、在宅介護は、高齢者の 自立 を維持 させ るけれ ども孤独 の状態に置 くこ とになる。それに 対 して、老人ホー ムへ の入所は社会的孤立は滅ず るけれ ども自立性 をそこないが ちである」。したが って、いろいろな政策が 目標 を達成す るに際 して 異なる結果 を生ず るな らば、「さまざまな側面にお け る結果の どの ような組み合 わせ がす ぐれてい る か検討す る必要が ある」。 この ように、介護類型 と費用対効果の分析 をす るには、基本的かつ根源的な問題 を克服 しなけれ ばな らないが、本稿 の問題意識に照 らして この「報 告 書」 を読みなお してみ ると、 きわめて重要 な指 摘がなされている。それは、上記の引用部分 で筆 者が下線 を引いたか所 である。先 の

P.

タウンゼ ン トの研究 もそ うであったが 、社会 的孤立、ない し は社会的孤独 に対 しては、経済効率 の点か ら依存 性 の予防 を図 る社会的統合 の促進 とい う政策 目標 が掲 げ られ る。具体 的には、 タウンゼ ン トの場合 には、「家族の協力の維持」 とい うこ とで、家族 の ための住宅政策や 、親族への さまざまな援助 、 さ らに、親族が もっ と楽に面会が で きた り、呼べ ば す ぐに来 られた り、 もっ と多 くの在宅サー ビスが 受け られ るようにす る方向が指摘 されていた。一 方、W HOの報告書では、依存性 の予 防に対す る 社会的統合の促進策は、現在の ところ 「昼 食 を目 的 とした クラブやデ イセ ンターや 友愛訪問」が、 「孤 独 を解 消す るこ とをね らい とした特定のサー ビス」 である。 しか し、上記引用文 に下線 を引い た ように、「孤独」は、単 に社会 的交流 を増 した り、 いろいろな人 と出会 う施 設 を提供 すればいやせ る とい うものではない。肝腎な こ とは、「会いたい と 思い、関係 を持 ちたい と思 う人 と会 うことであ る」 と。つ ま り、現在の 「特定のサー ビス」では、「孤 独」はいや されないこ とにな る。 3. わが 国の老 人対 策 の 落 し穴 り 老人福祉法の考 え方 と対象 昭和

3

8

年 に制定 された老人福祉 法の制定経緯 を み ると(注5)、そこでの老人観は、「老人が一般 国 民に比 して特殊 な身体的、精神的- ンデ ィキャッ プに起因す る弱者であるこ と」、「その過去 におい て社会 に貢献 して きた ものであ るこ と」と、「弱者」 お よび 「社会的貢献者」 の二点 に着 目して法律が 構成 されている。 この ような老 人 を社会的に保護 し、優遇す るこ とを立法の基本的な 目的に老人福 祉施策が講 じられて きたわけだが 、その場合 、施 策の程度は一般 国民に対す る各般 の施策 との均衡 を失 しない程度に、老 人の 「- ンデ ィキャ ップの 補

」と、「社会- の貢献者」 に対 して優遇す るこ とになった。 この- ンデ ィキャ ップの補項 を考 え る場合 、すべ ての老人に共通 の一般的- ンデ ィキ ャ ップ (た とえば、一般的老衰 、これに伴 う稼得 能力の減退等 )に対す る施策 と、一部の老人に生 ず る特殊の- ンデ ィキャ ップ (た とえば、身寄 り -4

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6-が ない とか、常 時介護 を要す る等 )のそれ を区別 し、前者には画一 的な所得保障 と所得保障に よる よ りもサー ビスの提供に よる方が効果的な ものに つ いては健康 診査 、老人 クラブの奨励、老人福祉 セ ンターの利用等が考 えられた。他方、後者の-ンデ ィキャップに対 しては、老人ホーム、老 人養 護委託 、老人家庭奉仕員の派遣等の個別的サー ビ スが具体 的に規定 されたのである。 この ような老 人福祉法の構成 に よって、今 日の老 人福祉対策は、 在宅福祉対策 と施 設福祉対策に二大別 され、さら に前者の在宅福祉対策は要援護老人対策 と社会活 動促進対策に分かれて各種の個別対策に到 ってい る。 ここで付け加 えておかなければな らないこ とは、 老 人 自身 をどうみ るか とい う老人観 につ いてであ る。前述 の保護 、優遇策の対象 としての 「弱者」 と 「社会的貢献者」にプ ラス して、老人福祉法で は、老人 自身に対 して もその知識 と経験 を社会に 役立たせ るこ とを期待 している (老 人福祉法第三 負 )。そのために、老人は希望 と能力に応 じて適 当 な仕事 に従事す る機会や その他の社会的活動 に参 加 す る機会が与 えられ るべ きだ とす る。 これ を、 「老後の役割」的観点 とす ると、森幹郎氏は、かつ ての老人福祉専 門官の経験 を振 り返 って、これ ら 三つの老 人観の うち、老人 を弱者 とす る考 え方は 今 も変わ っていないが、老人は社会 に貢献 した も のだか ら、健全 で安 らか な生活が保障 されなけれ ばな らない とい う社会貢献論の考 え方は、その後 の研究に よって過 ちであった と訂正 されている。 そ して、第三 の、老後 も役割 をもって積極的に人 生 を生 きる生 き方が老人福祉法の中で期待 されて いる点につ いて、森氏は、「老後 も積極的な社会生 活 を送 るべ きである とい う考 え方は、その後、こ れ を老人福祉行政 の原則 とす るのほおか しい と思 うようにな った。 とい うのは、人が 、老後 どの よ うに生 きるか、それは、その人に とって固有の権 利 であ り、他 人が とやか く口を差 し挟む ことでは ない。ま してや 、法律 で云々す ることではない と思 うようになったか らである」。そ して、「もし

、行

政や法律 に言えること、できることがある とした ら、それ は、老 人が生 きたいように生 きられ るよ う政策対応 し、余計 な干渉 な ど一切 しない とい う こ とだけ であろ う」(注6) と。 ここで森氏は、単 に老 人観 とい う表現 を使 わず、後期老年層 、いわ ゆる 「オール ドオール ド」の老人観 を 「老 い観」 と捉 えて議論 している点は注 目に値す る。本稿 に おけ る超高齢者の問題は、 まさにわれわれの 「老 い」 を視 る眼、「老 い」を捉 える際の 「老い観」が 問われているのである。その場合 、老後の生 き方 につ いて、他 人や法律 で とやか く云々すべ きでは ない とい う指摘 は、今後の老 人福祉対策 を考 えて い く上 で決 して見過 ごしてはな らない主張 である。 さて、老 人福祉法の構成 とそれに伴 う対策の枠 組み を見 る限 り、超高齢者が直面 している問題は、 一般 的- ンデ ィキャ ップの対象 とも言い切 れず、 か といって、特殊な- ンデ ィキャップの対 象 とも 言えない。元気だけれ ど虚弱、虚弱だが宴 た きり で も痴呆 で もない。 また、一 人暮 らし、老 人夫婦 世帯 で もない。 したが って、在宅福祉サー ビスの 三本柱 と称 して提供 されているホームヘ ルプ、デ イサー ビス、シ ョー トステイ といった、いわゆる 要援護老人対策の枠組みに入 りに くい対象 といえ る. それゆえ、実際に も、保健 ・福祉サー ビスを 利用 している者の割合が きわめて低か ったのであ る。 もちろん、これ らのサー ビスの利用率 の低 さ は、「ニー ド」が無か った とい うこ ともあ るであろ うし、あ るいは、サー ビスの絶対量の不 足か ら利 用に結 び付か なか った とも考 え られ る。 しか し、 た また ま長生 きできた とい う時代 ではな く、多 く の人が長生 きす る時代 に入 った今 、超高齢者の問 題は これ まで経験 してこなか った といえ る。その 意味 では、これか らの老人問題 を視 野に入れた老 人福祉対策のあ り方について、「老い観」 お よび対 策の枠組み、サー ビスの内容 を含めて、総合的か つ抜本的な見直 しを行 うべ き時期 ではないだろ う か。 2)サ ー ビスの 「定形化」 とサー ビスの「提供

の限界 本稿 で取 り上 げている 「精神的孤立」 とい う超 高齢者に とって避 け られない事態へ の対 応 は、老 人 クラフや デイセ ンター 、友愛訪問 とい った孤独 を解消す るこ とをね らい とした「特定 のサ ー ビス

を 「定形化」 させ 、いろいろ取 り揃 えた として、 果 た して老人 自身が本 当に望 んでいるサ ー ビスに なるだろ うか。た とえば、現在の老人 クラブ、デ

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279 長野大学紀要 第14巻 第 3号 1992 イサー ビスセ ンター、友愛訪問等のサー ビス を取 ってみれば よい。 これ らは、W HOの 「報告書

にい う社会的統合策である。 しか し、老 人に向か って、これが 「孤立」 を予防 します 、これが 「生 きが い」 を高め ます 、 と 「提供」す るサー ビスが、 本 当に老 人に望 まれた ものにな るだろ うか。そこ で、ふ たたびWHOの 「報告書」 に戻 りたい。「報 告書」 では、「孤独」は、会 いたい と思 い関係 を持 ちたい と思 う人 と会 っては じめていや され るので あって、単に社会的交流 を増や した り、いろいろ な人 と出会 う施設 を提供す るだけでは不十分 であ ると。た とえそれ らのサー ビスが依存性 を予防す るために社会的統合 の促進 を期待 した として もで あるO これ ら従来型の、上か ら 「提供」す るサー ビスでは、す でに限界が きてい るといえよう。 た とえば、デ ンマー クや スウェーデ ンでは、貧 困対策か ら、量的拡大に よる国民的規模 の福祉 、 つ ま り平等化政策の段階 を経て、い まや 第三段階 の福祉が模索 されている(注 7)。それは、第二段 階の 「量の福祉」か ら 「質の福祉」-の移行 の段 階である。当然、対象の把握の し方 と援助の方法 が違 って こなければな らない。第二段階では、福 祉の対象 を集 団 として把握 し、それに対 して カネ、 ヒ ト、モ ノの量の充足 を図 るこ とが政策 目標 であ った。 しか し、今 日では、これ らの 目標 と手段 が 現実 に合 わな くなって きたの である。そこで、現 在、これ らの国では、多様化 ・高度化す る個 人の 生活様式 と思考に即応 で きる制度の柔軟性が求め られている。 ひるが えって、わが国の福祉段 階 をみ ると、第 一段階が未解決の まま第二段階が展望 され、同時 に人々は第三段階の福祉 を求めてい る。超高齢者 に対す る対応は まさに この第三段階の福祉 といっ て よい。第三段階の福祉 を言い直す な ら、次の よ うにいえるであろ う。つ ま り、サー ビス を受 けて 「よか った」とい う満足感の基準 は個 々違 うが、そ の違 いを考慮に入れたサ ポー トを公的に準備 しな ければな らない とい うこ とであ る。 この解釈が的 外れ とはいえない例 として、平成4年 9月11日の 朝 日新聞 、夕刊 の記事 をみてみ よう。「無駄 目立 ち ます、福祉サー ビスーふ ろに入 らぬ入浴器具 、見 知 らぬ人が家に次々-」 とい う見出 しで、「い らな い物 まで くれた

「他人に家の中 を踏み荒 らされた くない」 -こんな理由か ら、せ っか くの福祉サー ビス制度が有効 活用 されないケー スの 多いことが、 首都 圏のお年寄 り112人に対す る面接調査 で明 ら か になった とい うのであ る。調査 の結果 、福祉サ ー ビスが無駄になった り、本人が いやが っている ケー スが続 出 した とい うのである。典 型例 をみ る と、足が動 かず完全ねた き りの女性(83)。娘夫婦 と暮 らす。訪問看護や訪 問 リ- ビ リのア ドバ イス を受 け、座 った姿勢 で浴 び るこ とので きる 「シャ ワーチェアー」 を申請 した。受 け取 ってみ る と、 ユニ ッ トバ スの ドアか ら入 らない。「小型 もない し、 一度給付 した もの だか ら」 と、区役所 は返却の 申 し出 を拒み 、捨 て る訳に もいかず 、室内に飾 って ある、 と。 もうひ とつ事例 を紹介す る と、耳 と足 の不 自由な女性(74)。夫(77)は入院中。訪 問看護 のほか 、洗濯や掃除の家事援助サ ー ビス を受けて いるが、担当者が毎 回の ように変 わる。「絶 えず知 らない人間が家に入って くるのは たまらない」 と 不信感 を募 らせ ている。 上 に引用 した記事 は何 を語 って いるだろ うか。 これが 「サー ビス」であ る、 とお仕着せ られた り、 「提供」されて も、少 しも喜ばれな い。要す るに、 老 人 自身が必要 な ときに必要 なサ ー ビスを選べ な い ところに問題がある。人々は、時代 の流れの中 で、だれ もが長寿になる可能性 を持 ち始め た現在、 第三段階の福祉 を求めつつ あ る といえる。現行の 老 人対策は、その兆 しを取 り込め ないまま

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0ヵ 年戦略」に引 き継がれてい くところに大 きな落 し 穴が ある。

い ま こ そ 求 め られ る 「生 き る こ と

」を

トー タ ル に 捉 え る視 点 と方 法 「精神的孤立」に対 して、われわれは何 をしなけ ればな らないか。 これ まで、88歳以上の長寿者の 生活実態 とサー ビスの利用状況 を手がか りに、老 人対策の考 え方 を検討 して きた。 その結果か ら、 い くつかの答えを引 き出 したい。 第 1は、潜在的ニー ドを発見す ることである。 見えているニー ドに対応 した り、老人 とはこうだ と決め付けたサー ビス をい くら用意 して も、多 く の人に利用 され る ものにはな りに くい。つ ま り、 -

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48-サー ビスを 「提供」す るのではな く、居なが らに して満足の得 られ るサー ビスが「選べ る」か どう かが、利用す る側 に とって大事 なのである。た と えば、社会的統合策 としての友愛訪問や老人 クラ ブ を提供するだけでは、WHOの 「報告書」で指 摘 されたように、「孤独」の特性に応 えた ものには ならない。い ま、 しなければな らないことは、「潜 在的ニー ド」の発見である。それは、老人 自身が 望んでいるこ とを発見 し、実現することである。 つ ま り、老人 自身の 「ぱ くぜん とした望み」 を形 にす ること。老人が どういう考 え方 をしているか を理解 して予測す ることである。 第

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は、デザ イン的視点の重視である。老人の 側か らす ると、経済中心、カネが全て とい う考 え 方 よ り、「安心 して長生 きできる環境」 こそ欲 して いるものであろう。この ような環境は、「生 きるこ と

「生 きつづけ ること」 を トー タルに捉える視点 と方法か らしか生 まれないだろう。そのためには、 道具 としての福祉政策や制度が、人間 を トー タル に捉 えた適切 なテサ インの もとに創 られ、それ ら を使 うことに よってわれわれの生活の質 を変 えて い くような ものでなければならない。 第3に、年 齢 と場の移動 に見合 った福祉の発想 と方法が必要である。従来、福祉の領域ではサー ビスの提供拠点が点の状態でバ ラバ ラに設置 され ていた。この反省 として近年 、ようや く連携 ない しはネ ッ トワー クの考 え方が重視 されるようにな り、いわゆる、点か ら線への福祉が注 目され、さ らに、地域の人々をも含んだ面への広が りが方向 付け られて きた。 しか し、これ までの検討か ら引 き出される結論 として、点か ら線へ 、線か ら面へ の福祉 は基本的には 「与 える福祉」、「提供す る福 祉」の域 を超えるもの とは成 り得ない。そ うであ る限 り、超高齢者に とって避け られない 「精神的 孤立」 といった社会的ニー ドに対応できないので はないか と思われる。では、 どうす るか。 ここで は、従来の流れ とは逆の発想 を提案 したい。つ ま り今後は、「面」か ら 「線」へ、「線」か ら 「点」 -の発想の重視 である。その根拠は、年齢 と所属 場所の移動 とい うライフコースの考 え方にある。 つ まり、図

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に示 した通 り、人生の うちで人々は 三度家族 を重視す る時期があ り、逆に、三度 、家 族 よ りも年齢、世代に応 じた場に所属す る という 考 えである。「家族重視」の時期は、親に養育 され る 「乳幼児期」、結婚等による 「家族創設期」、子 供が巣立ち夫婦の生活に入る 「老年期」である。 図2 年齢 と 「場」の移動関係

図 1 世帯構造別にみた 65 歳以上の者のいる世帯の構成割合の推移 「7%((' 夫婦のみ世帯 )「( 夫婦 . ミ 警 ≡ = n i R n f # ' , 'その竿 世帯 ) 昭和 5 0 5 5 6 0 6 2 6 3 平 成 元 2 ( 資料) 厚生省統計情報部 、6 0 年以前は 「 厚生行政基礎調査 」、6 2 年以降は 「匡卜 民生活基碇調査」、 厚生 省老人福祉振興課他監修 r 老 人福祉のてぴ き 」 ( 平 成3 年度版 ) 、P
表 6 障害老人の 日常生活 自立度 ( 寝たきり度)判定基準 生 活 自 立 ランク J 何 らかの障害等を有するが、 日常生活はほぼ 自立 してお り独力で外出する1交通機関等 を利用 して外出す る 2 隣近所へなら外出す る 準寝たきり ランク A 屋内での生活は概ね 自立 しているが、介助なしには外出しない 1 介助により外出し、 日中はほ とんどベ ッ ドか ら配れて生活する 2 外出の頻度が少な く、 日中も嘉た り起きた りの生活をしている 雇 た き り ランク B 屋内での生活は何 らか

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