第45回群馬脳腫瘍研究会
日 時:2010年 7月 10日 (土) 場 所:前橋商工会議所 代 表:好本 裕平(群馬大院・医・脳神経外科学) 当番世話人:藤巻 広也(前橋赤十字病院 脳神経外科)一般演題>
座長 藤巻 広也(前橋赤十字病院 脳神経外科) 1.乳児水頭症で発症,キアリ奇形を伴わない脊髄空洞 症に合併した脊髄悪性腫瘍の一男児例 富田 庸介,黒崎みのり,田中 志岳 甲賀 英明 ( 立藤岡病院 脳神経外科) 田村 勝 (同 外来センター) 吉田 孝友 (同 病理) 中里 洋一 (群馬大院・医・病態病理学) 横井 太郎 (東京慈恵会医科大学 小児科学講座) 阿部 俊昭 (同 脳神経外科) 【症 例】 初診時 5ヶ月の男児. 【主 訴】 首の座り不 良, 頭囲拡大. 【初診経過】 2003年 5月在胎 40週 3日 で正常 , 体重 3606g, 身長 52cm, 頭位 35cm. 3ヶ月ま では発育発達は正常, 四ヶ月より首の座り不良, 頭囲拡 大, 近 医 CT で 水 頭 症 を 指 摘 さ れ 当 院 へ 紹 介 と な る. 【初診時所見】 2003年 10月初診時 (5ヶ月) 頭囲 49cm, 体重 9800g,身長 72cm,あやしても笑わない.視線が合わ ない.多動.落陽現象著明,大泉門緊張拡大,頭部 CT で第 三脳室以上の著明な脳室拡大 (Evans index=56%) が見 られ, 第四脳室の拡大はない. キアリ奇形, 脳梁欠損等の 他奇形なし. 【水頭症治療経過】 2003年 10月 VPシャ ント術施行. 水頭症症状は改善. Spinal MRI で, C2-C6 に syrinxを認めた. 症状として右片麻痺があったが, 歩 行可能, 頸髄空洞症の影響と えていた. 【脊髄病変の 悪化】 フォローアップ の 頸 髄 MRI で syrinxの 増 大 を 認め, 右片麻痺悪化傾向. キアリ奇形を伴わない脊髄空 洞症として 2006年 10月 (3歳 5ヶ月) に慈恵医大阿部教 授に紹介. 【慈恵会医大における治療】 一年間経過観 察後増大傾向で 髄にまで拡大. この時点の診断では Magendie孔の閉塞による脊髄空洞症が 髄にまで伸展 しているため大孔減圧術+第四脳室くも膜下腔シャント 術を 2008年 2月 (4歳 9ヶ月) に予定された. 手術所見 で, 膨隆した. 髄頸髄移行部を開放すると黄色調の液 体が流出, 単純な脊髄空洞症ではないと判断, 組織の生 検を行った. 慈恵医大における病理組織診断は atypical etraventricular neurocytomaであった.若年のため放射線 治療は避け, 類似組織とのことで PAV療法が選択され た. PAV療法 5コースで脊髄病変は縮小. 【播種性脳内 病変の出現】 しかし,2009 年 10月 (6歳 5ヶ月)の MRI で左側頭葉内にリング状造影される直径 4 cmほどの脳 腫瘍が認められ, 左側頭腫瘍の摘出を 11月に行った. そ の後テモダゾロマイドの外来内服治療を行っている. 症 状はつかまり立ち可能, 右片麻痺, 現在 7歳 2ヶ月. 【病 理 所 見(中 里 教 授)】 両 腫 瘍 の 形 態 は 同 一. GFAP (+/−), S-100 (+), Oligo-2 (+), vimentin (+), keratin (−), synaptophysin (+), NFP (−), chrimogranin (−), p53 (+), MIB-1 indexは脊髄腫瘍 10.3%, 左側頭葉腫瘍 42.0%, 壊死, 血管内皮肥厚を伴い, 免疫組織結果を合わ せ供覧する. 【問題点】 キアリ奇形を伴わない頸髄空 洞症と えられたこと. 病理学的所見について供覧する. 2.診断治療に苦慮した幼児後頭蓋窩腫瘍の一例 神徳 亮介,藤巻 広也,藍原 正憲 宮城島孝昭,嶋口 英俊,朝倉 宮崎 瑞穂(前橋赤十字病院 脳神経外科) 横尾 英明,中里 洋一 (群馬大院・医・病態病理学) 【症 例】 2歳の女児. 嘔吐, 右顔面神経麻痺症状あり受 診.MRI では右後頭蓋窩に 55×50×35mm大の不規則に 造影される病変を認めた. 摘出術中所見は性状の異なる 部 が混在し境界不明瞭であった. 病理学的には脳実質 内にて境界不明瞭に増殖する多角形ないし多極性の細胞 と, 細胞間に線維性基質を伴って増殖する紡錘形の細胞 が認められ, それぞれグリア系および間葉系 化を示し ていると えられた. 両成 ともに MIB-1標識率は約 30%で, WHO GradeⅢ相当であった. 後療法として PE 療 法, 計 45Gyの 拡 大 局 所 割 照 射 を 施 行 し た. 【 察】 病理学的にはグリア系および間葉系への 化を示 73 Kitakanto Med J 2011;61:73∼75す腫瘍細胞の起源が共通なものであるのか否かが本例の 問題点である. 具体的には, ①上衣腫に肉腫様 化を 伴ったもの, ②上衣腫と髄膜腫が合併したもの, などが えられるが結論を得ていない. 両説について若干の文 献的 察を加えて検討する. 3.20年の経過で再発した anaplastic astrocytomaの 一例 岡野美津子,塚田 晃裕,塚原 隆司 (北信 合病院 脳神経外科) 【目 的】 放射線壊死巣に対する経過観察中に再発が確 認 さ れ, 早 期 に 摘 出 手 術 を 施 行 し え た anaplastic astrocytomaの一例を経験したので報告する. 【症 例】 59 歳男性,1990年 11月 Jacsonian seizureで発症し,1991 年 3月に frontoparietal内側面の Gd (+) lesionに対し 腫瘍摘出術を施行 (病理診断 : Anaplastic Astrocytoma Gr 3)した.後療法として放射線療法 (拡大局所 60Gy)及 び化学療法 (CDDP+MCNU 4クール) 施行. 2009 年 8 月 MRI で腫瘍摘出部に一致して淡い Gd (+) lesionが 出現した. 同部は FDG-PET で核種の集積を認めず, radiation necrosisと診断し, ステロイド内服治療を継続 していたが, 2010年 1月の MRI で Gd増強効果の亢進 と perifocal edemaの進行を認め, FDG-PET で核種の集 積を強く認めるようになった. Gliomaの再発と診断し, 同年 2月腫瘍摘出術を施行した. 病理診断にて Secon-dary glioblastoma (MIB-1 24.9%) と診断された. 4.HIV抗体検査が頭蓋内占拠性病変の診断に有用で あった1症例 川島 隆弘,大谷 敏幸,笹口 修男 栗原 秀行(独立行政法人 国立病院機構 高崎 合医療センター 脳神経外科) 合田 (同 合診療科) 症例は 56歳男性, 来院 1か月前より頭痛, 疲労感あり, しばしばおかしな言動を認めていた. 家族の勧めで 4月 1日, 近医受診, 精査加療目的に入院. 入院時より 38℃台 の発熱を認めた. 意識障害も出現し, 造影 MRI にて多発 性頭蓋内占拠性病変を指摘され 4月 9 日当院脳神経外科 紹介受診. 入院時 JCS20程度の意識障害, 左片麻痺を認 めた.入院時スクリーニング検査で HIV陽性が判明した ため, 頭蓋内病変の確定診断をつけるため 4月 12日定 位的脳生検術施行. 病理で虫体は確認されなかったが, 壊死性脳炎の所見あり, トキソプラズマ脳症の診断でサ ルファ剤の投与が開始され, 意識障害, 麻痺の改善, 病変 の縮小がみられた. HIV感染症は本邦ではまだ日常診療で出会う機会は 多くないが, 当院では, 手術目的の入院時スクリーニン グ検査としてほぼ全例に抗体検査を実施しており, 来院 後早期に診断の確定, および治療方針の決定に結びつき 有用であった. 5.術前診断,術中診断,病理診断において解離を認め た3症例 清水 暢裕,橋本 幸治,八木 貴 八木 伸一,井上 洋,卯木 次郎 清水 庸夫 (関東脳神経外科病院 脳神経外科) 当院では脳腫瘍性症例に対しては全例に術前 MRI (T1,T1(E),T2,FLAIR,DWI,MRS),CT を行っている. しかしながらこれらの情報を統合しても, 診断に苦慮す る症例が少なからず存在し, 術前診断, 術中診断, 病理診 断の解離が認められる事がある. 当院で行った脳腫瘍症例において術前, 術中, 病理診 断において解離を認めた 3症例を提示し検討した. 症例 1 60歳女性 左前頭葉腫瘍 症例 2 26歳女性 右前頭葉腫瘍 症例 3 55歳男性 右側頭葉腫瘍 6.頸静脈孔内の摘出に苦慮した髄膜腫の一例 田中 志岳,富田 庸介,黒崎みのり 甲賀 英明 ( 立藤岡 合病院 脳神経外科) 【症 例】 41歳女性. 無症候性左小脳橋角部髄膜腫. 【病 歴】 2004年 MRI にて左小脳橋角部腫瘍ありとの 記載. 2009 年 3月人間ドックにて病巣指摘され, 10月当 科受診.[腫瘍径 21.5×14.5×19.5mm]本人の手術希望強 く, 2010年 1月 21日治療目的に入院. 【治 療】 2010 年 1月 26日 Lt. lateral suboccipital approachにて摘出 術施行 (顔面神経モニターを行い, 内視鏡 (Free Hand) にて観察を行い, 顕微鏡下に可及的に摘出). 【所 見】 性状は軽度の出血性を示す Pinkish Grayで Softな腫瘍. 発生母地は内耳道と頸静脈孔の中間点. 内耳道内には伸 展しておらず CNVII-VIII とは 離可能. CNXI とは軽 度の癒着はあったものの剥離可能. 頸静脈孔では 膜の 肥 厚 と 一 部 腫 瘍 の 伸 展 が あった. 【組 織】 Menin-gothelial Menigioma: MIB-1 index 1.8% 【経 過】 術後の神経脱落症状なく 2月 4日独歩自宅退院. 本症例 は若く, 全摘 (Simpson GradeⅠ orⅡ) をすべきもので ある. 顕微鏡下には GradeⅡと言ってもよいような顕微 鏡所見ではあるが, 内視鏡で観察すると頸静脈孔に一部 膜肥厚像と腫瘍成 と思われる所見があり, 焼 をし たものの摘出ではない為 GradeⅣの摘出とした. このよ うな場合どのように処置するのが最善の策なのか諸先輩 から御意見を伺いたく症例を提示する. 第 45回群馬脳腫瘍研究会 74