2020 年度 修 士 論 文
ブリルアングレーティングをベースにした低コヒーレンスリフレ
クトメトリーにおけるスペックル雑音の研究
指導教員 高田 和正 教授 群馬大学 大学院理工学府 電子情報・数理教育プログラム 川上 暁也1 目次 第1章 序論………..……….…. 2 1.1 研究背景………..……… 2 1.2 研究目的と成果の概要..……… 4 第2章 OLCR の測定系……….…..……… 5 第3章 S/NとDRの関係……….………8 第4章 実験結果と考察….………...……….………...15 第5章 結論….………...….………23 謝辞……….………24 参考文献……….25
2 第1章 序論 1.1 研究背景 光ファイバ中を対向伝播する周波数の異なる2種類の励起光とプローブ光を介 した四波混合という非線形光学効果によって[1]、ファイバ内にプローブ光に対して後 方に伝搬するストークス光が発生する。このストークス光は、励起光によってファイ バ内に発生したダイナミックなブリルアングレーティング(Dynamic Brillouin grating: DBG)がプローブ光を反射することによって発生したものと考えることも可 能である。ここで、対向伝搬する励起光間の周波数差を変化させながらファイバの各 地点で発生するストークス光のパワーを測定することにより、ファイバ長手方向のブ リルアンスペクトルの分布を求めることができる。ブリルアンスペクトルの中心周波 数がいわゆるブリルアンシフトでありその地点の歪の状態を反映していることから、 励起光間の周波数差の関数としてストークス光のパワー分布を測定すれば、ファイバ 長手方向の歪の分布を求めることが可能となる。 ファイバ各地点で発生するストークス光を測定する方法として、光パルスを入射 させて反射するストークス光パルスを測定する時間領域の光反射測定方法(OTDR: Optical Time-Domain Reflectometry)がある[2-6]。この OTDR 法の特徴は、反射さ れて戻る光パルスを高速フォトダイオードで検出するだけで光のパワー分布をリア ルタイムに測定できることであり、光ファイバを用いた分布型歪検出方法として広く 実用化されている。高層ビルや航空機内の歪分布測定を目的とした場合、その空間分 解能は数センチメートルで十分であるが、小型化された光集積回路や光モジュール内 の歪分布を四波混合で測定しようとすると、OTDR のような光パルスを使用する技術 では空間分解能が低すぎて光回路内の各地点の歪を分解できないという問題が発生 する。低空間分解能という本質的な問題を OTDR 技術で解決しようとすると、時間 幅が1ナノ秒以下のいわゆる超短光パルスを出射する光パルス光源と、1ナノ秒以下 の戻り光パルスを波形歪なく受信できる超高速光検出器を導入することが不可欠と なる。しかしながら、このような超高速送受信系を使用すると検波帯域が10GHz を超えてしまうため、電気的な雑音レベルが急激に増大して、ストークス光パルスを 検出する際の信号対雑音比、いわゆるS/N が大幅に劣化してしまうという重大問題 が発生する。このためOTDR 法を用いた歪分布測定法においては、著者の知る限り、 マイクロメートルスケールの空間分解能で光ファイバの長手方向の歪分布を測定で きたとの報告例は存在しない。 高空間分解能化に伴うこのようなS/N の劣化という根本的な問題を克服するた
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めに、我々は100 kHz 以下の検出帯域幅で局所光(LO:Local oscillator)との干渉 を利用してストークス光を検出するDBG をベースにした低コヒーレンス光リフレク ト メ ト リ ー ( Brillouin grating-based OLCR : Optical low coherence reflectometry )を提案した[7]。本干渉技術では、高輝度発光ダイオードや光ファイ バ増幅器からの自然放出光源といった低コヒーレンス光源、波長多重分割光ファイバ 通信用に開発された狭スペクトル幅の分布帰還形レーザダイオード、及びファイバ型 のマッハ・ツエンダ干渉計を用いるだけで、マイクロメートルという超高空間分解能 でストークス光のパワー分布を測定できることから、光集積回路や光モジュールを診 断する新技術として注目されている。 光ファイバに沿って伝搬する DBG の位相は、グレーティングを発生させる対向 伝搬する励起光の位相差に依存する。ファイバが設置されている環境にもよるが、実 験室レベルでもファイバの各地点にランダムな外乱が加わっており、それぞれの励起 光には数 Hz 程度の位相変動が誘導されると考えられる。すなわち、DBG の位相、 そしてプローブ光が当該DBG で反射されて生じるストークス光の位相にも同じレベ ルの僅かな位相変調が印加されていると考えられる。しかしながら、OLCR の検波帯 域は数kHz もあるので、例えストークス光の位相がこのように変動しても、検波し て得られるストークス光パワーの値は変動することなく正確に測定できる筈である。 すなわち OLCR でストークス光を検波することは、媒質の屈折率が異なる境界部分 で発生するフレネル反射を測定する状況と大変似ており、ストークス光パワーの大き さに依存してランダムな変動量が変化するような光学効果は存在しないと考えられ る。 しかしながら実際には、OLCR でストークス光のパワー分布を測定してみると、 ストークス光パワーが大きいところでは大きな変動が観測された一方、光パワーが小 さい部分では変動も小さくなるような、いわゆるスペックル雑音が観測されている[8]。 このスペックル雑音は非常に大きかったので、S/N を改善する唯一の手段は、同じ 条件で繰り返し測定を行った後に加算平均して雑音を低減することだけであった。こ のような悪い条件の下では実験を完了するまでに数時間を要することとなり、この間 にも実験条件を同一に保つために一時的に実験を中断して測定系の各部を微調整す る必要が生じたほどである。このため、雑音量を大幅に低減することが最優先課題で あり、これを実現するためにはスペックル雑音の起源を解明することが不可欠であっ た。
4 1.2 研究の概要と成果 本論文は、深刻な雑音であるスペックル雑音が、OLCR システムで採用されてい る2乗検波を介してストークス光信号と漏れ励起光で生じるビート雑音の相互作用 によって生成されることを理論的および実験的に示す。スペックル雑音の起源がこの ような相互作用に起因することが判明した以上、当該スペックル雑音を低減するため の唯一の方法は、バランス回路に入射する漏れ励起光のパワーを極限まで低減するこ とである。第2章では、分散型フーリエ分光法(DFS)を組み込んだ OLCR システ ムの実験系について説明する。ここでは、偏光コントローラと偏光ビームスプリッタ で構成された偏波ダイバーシティ光学系を OLCR 光学系に導入して、励起光がバラ ンス回路に入射することを徹底的に阻止することを述べる。偏波ダイバーシティで励 起光を有効に除去するためには、励起光自身の消光比を格段に大きくしておくことが 必要不可欠であり、励起光が伝搬する経路に光ファイバ偏光子を組み込んだことを述 べる。 第3章では、OLCR で検波するストークス光信号の大きさと、LO 光やプローブ 光そして2 つの励起光の平均光パワーとの関係について理論的に導出する。このよう にして得られた理論結果と実験データと比較して、構築した OLCR が四光波混合と いう非線形光学効果によって生じたストークス光信号を正しく検出していることを 実験的に確認する。次に、漏れてバランス回路に入射する励起光とLO 光の間で生成 されるビート雑音の分散(variance)やショット雑音の分散そして LO 光と被試験光 ファイバ(DUT)からの端面反射の間に生成されるビート雑音の分散から構成される 全分散を理論的に導出する。ここでは、ストークス信号の平均値と全分散の値の平方 根との比によってS/N を定義してその具体的な理論式を求める。第4章では、実験 によって得られたS/N のデータと第3章で導出した理論結果とを比較して、スペッ クル雑音の発生源がストークス信号とビートノイズの相互作用に起因することを実 験的に検証する。ファイバ型偏光子で励起光の消光比を各段に増加させることにより、 スペックル雑音を低減でき、空間分解能が数十マイクロメートルにも係わらず、S/ N を 24 まで上昇させることに成功したことを述べる。今回の S/N の増大により、 光コネクタのDBG の分布を取得することができたので、その結果についても述べる。
5 第2章 OLCR の測定系 DBG をベースにした OLCR の構成を図1に示す。本 OLCR は、測定用光ファ イバからの反射を検出するための従来の OLCR 光学系と、励起光を対向伝播させて 測定用光ファイバとしての DUT に DBG を発生させるための光ファイバループから 構成されている。OLCR の主干渉計は光ファイバカプラ(CP1、CP2)を用いた光フ ァイバ型マッハ・ツェンダ干渉計(Mach-Zehnder interferometer: MZI)であり、 DUT に誘起された DBG すなわち音響波によって光周波数がダウンコンバートされ たストークス光を干渉で検出できるように、LO 光の周波数を予めダウンコンバート してある。ストークス光とLO 光の干渉で発生するビート信号のキャリア周波数が fc = f1‐f0 = 5 kHz となるように、位相変調器 PM1 と PM3 をそれぞれf0 = 145 kHz と f1 = 150 kHz の鋸歯状波の電圧波形で駆動した。バランス回路から出射した光電流は、 トランスインピーダンス増幅器(TIA)で電圧に変換した。 図1 ブリルアングレーティングをベースにしたOLCR の構成 補助干渉計は、光ファイバカプラ(CP4、CP5)と 1×2 波長分割多重(WDM) モジュールを備えた光ファイバ型の MZI であり、主干渉計とバルク光可変遅延線を 共有している。ここで光源にはλ0 = 1316.077 nm で発振する分布帰還形レーザダイ オード(DFB LD:Distributed feedback: DFB)を使用した。光可変遅延線に設置さ れた直線ステージを並進させた時に発生する補助干渉計からのビート信号を参照信 号として利用して、ストークス光とLO 光の干渉で生じるビート信号を一定の光路長
6 ごとにサンプリングすることでビート信号の横軸のグリッドを等時間間隔から等光 路長間隔の刻みに変換してストークス光信号のインターフェログラムを取得した。 光ファイバループでは、励起用光源である DFB LD からの出力を光ファイバカ プラ(CP3)で 2 分割し、対向伝播する二つの励起光として使用した。レーザ出力光 の周波数を図 1 ではωpと表記している。励起光の周波数を、プローブ光のダウンコ ンバート周波数と同じ周波数Ωでアップコンバートするために、励起光にLiNbO3 位 相変調器(PM2)を用いて周波数Ωの位相変調を印加し、位相変調成分ωp±nΩ (n=1,2,3,,,)のうちでωp+Ωの光成分のみを超狭帯域光バンドパスフィルタで抽出し た。抽出して得られた周波数ωp+Ωの励起光をエルビウム添加ファイバ増幅器 (EDFA)で増幅し、偏光ビームスプリッタ PBS1 でプローブ光と直交偏波状態で合 波した後に光サーキュレータ(CL1)を介して測定用光ファイバ(DUT)に入射させ た。 もう一方の DFB LD 出力は、光サーキュレータ(CL2)を通過させた後、周波 数ωpの励起光として使用するために、反対方向から測定用光ファイバ(DUT)に入 射させた。ここで、対向伝播する励起光の光路長は、ファイバコネクタの接合部で等 しくなるように調整した。偏光コントローラ(PC1、PC2)とビームスプリッタ(PBS2) からなる構成される偏波ダイバーシティ系を用いて、ωp の励起光のバランス回路へ の入射をブロックした。偏波コントローラ PC1 の直前に光ファイバ型偏光子 (polarizer#2)を組み込むことにより、励起光の直交成分が極限的に小さい、すなわ ち消光比が非常に大きい直線偏光となるようにした。実験の結果、ファイバ型偏光子 を設置たことにより、偏波コントローラ PC2 で励起光の偏光状態を微調整すると励 起光のパワーを55dB 程度まで減衰させることができた。このようにバランス回路に 入射する励起光を極限的まで減衰させながら、ステージを特定の位置に固定し、バラ ンス回路から得られるストークス信号をダイナミックシグナルアナライザで検出し たところ、図1 に示すように 37dB のダイナミックレンジ(DR:Dynamic range) が得られた。ここで、DRの定義としては、信号レベルとバックグラウンドの雑音レ ベルの比を対数スケールで表したものを採用している。 光可変遅延線に設置した一軸ステージを400 µm/s の速度で移動させ、バランス 回路からの出力と補助干渉計からの信号を 40k サンプル/秒 のレートで同時サンプ リングした。取得した信号から、キャリア周波数5kHzを中心とした幅 630Hz の矩 形バンドに含まれる信号のみをデジタル的に抽出し、その抽出信号を5kHz の同相・ 直交波形からなるデジタルミキサーに入力させることにより、ストークス光信号の解
7 析信号(複素信号)を導出した。 原理的には、光路長の関数として取得した解析信号の絶対値の二乗を求めること により、DBG から反射されたストークス光パワーの分布が得られることは明らかで ある。しかしながら本研究では、復調された解析信号からストークス光のパワー分布 すなわちリフレクトグラムを導出する前に、インターフェログラムのグリッドを等時 間間隔から等経路長間隔に変換し、その結果をフーリエ逆変換することにより、空間 分解能を低下させる主要因となっていた変残留分散を完全に除去した。逆フーリエ変 換の結果として得られるスペクトル成分において、低コヒーレンス光のスペクトルが 1527 から 1576nm の範囲外に分布する雑音を除去した後にフーリエ変換を計算して 解析信号を再構築した。 OLCR 用として使用した低コヒーレンス光源のスペクトル波形から、空間分解能 は30μm 程度と予想された。構築した OLCR の実際の空間分解能を決定する最良の 方法は、空間分解能よりもはるかに短い領域で発生したDBG からの反射分布すなわ ちリフレクトグラムを測定してその半値全幅より空間分解能を決定することである。 しかし常識的に考えて、このような究極的に狭いDBG を人工的に生成することは困 難である。そこで、実際の空間分解能を事前に確認するため、斜研磨ファイバコネク タの接合部周辺部のリフレクトグラムを測定したところ、図2に示すように、半値全 幅はそれぞれ10.47GHz と 10.5GHz で 81μm と 84μm となった。このため、本研 究で構築したOLCR の実際の空間分解能は 81μm 以下であることが分かった。 図2 斜研磨ファイバコネクタの嵌合部周辺のDBG の分布
8 第3章 S/N と DR の関係 LO 光、プローブ光、周波数がωp +Ωと ωpである励起光の電場の解析信号をそれ ぞれELO + c.c. , Epr + c.c.、v+ c.c.、Ep2 + c.c.と表記する。ここで、c.c.は複素共役 を表す。図3において、プローブ光Eprは光サーキュレータCL1 を通過して測定用光 ファイバであるDUT に入射し、DBG で反射してダウンコンバートされる。光サーキ ュレータCL1 を介してバランス回路に入射するストークス光の解析信号をEsとする。
バランス回路には、ストークス光の他に3種類の光波 ΔEpr、ΔEp1、ΔEp2が入射し、
ビート雑音を発生させる。すなわち、光サーキュレータ CL1 のダイレクティビティ が有限であるため、プローブ光や周波数がωp +Ωの励起光の一部は、DUTに入るこ となく単に光サーキュレータから漏れ出て直接バランス回路に入射して、DUTの端 面でフレネル反射して CL1 に戻ったそれぞれの成分と合波される。ここでは、プロ ーブ光から発せられてバランス回路に伝搬する光波をまとめて∆Epr、励起光から発せ られてバランス回路に伝搬する光波をまとめて∆Ep1とする。周波数が ωpの励起光は 偏光ビームスプリッタPBS2 で減衰されるが、少量の光は PBS2 を透過してバランス 回路に入射する。バランス回路に入射する励起光成分をΔEp2とする。 図3 プローブ光Epr、ωp +Ωで励起光Ep1、ωpで励起光Ep2から発生した光波ΔEpr、ΔEpr、 ΔEprがそれぞれ伝播する経路
電界Es + ∆Epr + ∆Ep1 + ∆Ep2 + c.c.は 3dB のファイバカプラ CP2 によって LO 光に
9
𝐼 𝑡 = 2𝑖𝛼𝐸𝐿𝑂 𝑡 𝐸𝑆 𝑡 + 2𝑖𝛼𝐸𝐿𝑂 𝑡 ∆𝐸𝑝𝑟 ∗ 𝑡
+ 2𝑖𝛼𝐸𝐿𝑂 (𝑡)∆𝐸𝑝1∗(𝑡) + 2 𝑖𝛼𝐸𝐿𝑂 (𝑡)∆ 𝐸𝑝2∗(𝑡) + 𝑐. 𝑐. (1)
ここで、i=√-1、αは電場を二乗した値を光電流に変換するための比例係数である。式 (1)の右辺の第1項は求めるストークス信号であり、第2項から第4項はビート雑音を 発生させる要因である。ELO(t)は ΔEpr (t)との相関は存在せず、ΔEp1(t)は ΔEp2 (t)と
10GHz の周波数差があるため干渉することができないので、3種類の雑音は統計的に 独立していると考えられる。 ストークス信号の二乗平均値がストークス光パワーを与えるので、実験ではトラ ンスインピーダンス増幅器 TIA から出力される電圧を、図 3 の点線で囲んだ部分に示 された RF スペクトルアナライザに設置されている 2 乗検波器に通過させた。ここで、 2乗検波器は、キャリア周波数 f c = 5 kHz を中心周波数として雑音の分散を決定する バンドパスフィルタと、信号の二乗を計算する二乗検波回路と、出力中の平均値を検 波するためのローパスフィルタから構成されている。RF スペクトラムアナライザの 出力は dBV または dBm 単位で対数にスケーリングされていたので、線形スケールに 変換してストークス光パワーの大きさを求めた。以下に示す図では、ストークス光信 号の大きさをA2、雑音のパワースペクトル密度をA2/Hz の単位で計算した。 OLCR の光源として使用した低コヒーレンス光のコヒーレント時間は検出系の応 答時間よりもはるかに短かったため、ストークス信号は、可変遅延線に誘起される遅 延をτとすると、式(1)の右辺の第一項を統計的に平均化することにより次式で表され る[12]。 (2) (3) < >は統計的平均値を示し[13]、G(ω1+Ω)は中心周波数がω1である広帯域光の光スペ クトル、r(τ)はDBGの包絡線である。γeとρ0はそれぞれ測定用光ファイバの導波路 材料の電気歪定数と平均密度であり、n は導波路の屈折率、Δφ は定数、ωcは角周波 数であり、2πfc(fc=5kHz)に等しい。 F(t)を広帯域光の電界が緩やかに変化する包絡線、κ1、κ2を定数とし、LO 光、 IS(t) =αω1γeκ1κ2 2n2 ρ0 | F(t) |2 exp i Δϕ +ω
{
(
1τ −ωct)
}
× −∞r(τ ')V*(τ −τ ')exp −i ω{
(
1−ωp)
τ '}
dτ +∞∫
V (τ) = G(ω1− Ω)exp( −i(
ωτ)
dω/ −∞ +∞∫
G(ω1− Ω) dω −∞ +∞∫
10 プローブ光の包絡線をそれぞれ κ1F(t)、κ2F(t)とすると、LO光およびプローブ光の 二乗平均値は、それぞれ2|κ1|2<|F(t)|2>および2|κ2|2<|F(t)|2>で与えられるので、 個々の平均光電量は、ILO = 2|α||κ1|2<|F(t)|2>、Ipr = 2|α||κ1|2<|F(t)|2>で与えられる。 ωpにおける励起光に対応する光電流をIp2と表す。 τcohを光源のコヒーレンス時間とすると、τ が|τ|<τcohの範囲に含まれる場合に はV(τ)は有限の値を取る。従って、τ が|τ-τ′|<τcohの範囲に含まれてV(τ-τ′)が定数 と考えられるほど緩やかにτ とともに変化する場合には、式(2)は次のように単純化す ることができる。 (4) ここで、 (5) は、広帯域光の有効幅である。バンドパスフィルタの中心はストークス光信号のキャ リア周波数に設定されているので、ストークス光信号は当該バンドパスフィルタを通 過することができる。このため、ローパスフィルタからの出力は (6) と表される。ここで、式(5)では G(ω1 + Ω)を光周波数ν の関数と考え、これを新たに G(ν)と表記した。 定常状態においては、音響波の包絡線r(τ)は (7) で表される。ここで は自由空間の誘電率、qは音響波の波数、ΩBはτの関数として のブリルアンシフト量、ΓBはブリルアン線幅である。式(7)に定数Q1を導入した理由 は、DUTの導波路内の音響波と励起光波の断面分布を考慮したためである[14]。Ap1
とAp2は励起光波の包絡線であるため、電界の二乗平均値は2|Ap1|2と2|Ap2|2となる
IS(t) = αω1γeκ1κ2 2n2 ρ0δvLO×p 2 F t
( )
2 2 r τ( )
exp i Δϕ +ω{
(
p−ωct)
}
+ c.c.δ
v
LO×p=
∫
0+∞G(v)dv
/ G(v
p)
IS2 (t) = 2 αω1γeκ1κ2 2n2 ρ0δvLO×p 2 F t( )
2 2 r( )
τ 2 r(τ) = ε0γeq 2Q 1Ap1Ap2 ΩB 2 − Ω2− iΓBΩ ε011 ので、DUT内を伝播する全平均パワーはそれぞれPp1 = 2Q2|Ap1|2とPp2 = 2Q2|Ap2|2とな る。ここでQ2は定数である。式(7)を式(6)に代入すると (8) が得られる。従って、ストークス光信号は、これら4つの光波の平均パワーの積に比 例することが分かる。空間分解能はδνLO×pに比例して増加すると考えられるので、式 (8)は分解能の2乗に比例してストークス光信号は減少することを意味する。 式(1)の第 2 項ΔI(t)=2iαELO(t)ΔEpr*(t)+c.c.の自己相関関数を計算して、電流雑音ス ペクトル密度を導出する。詳細な計算方法については、[15]に詳述されているのでこ こでは結果のみを示す。電場がガウス確率過程[16]に従うと仮定すると 4 次モーメン トは (9) と単純化できる。ここでGLO(ν)は LO 光、Gpr(ν)はプローブ光の光スペクトルである。 f は検波周波数5kHz 付近の任意の周波数であり、ν は 200THz 付近の光周波数である ことから、式(9)において、Gpr(ν+f)≒Gpr(ν)と近似することができる。このため、 LO 光 と プ ロ ー ブ 光 の 平 均 光 電 量 を そ れ ぞ れ ILO = 2|α|<|ELO(t)|2> 、 ∆Ipr= 2|α|<|Epr(t)|2>とすると、電流雑音のスペクトル密度は次のように表される。 (10) GLO(ν)はGpr(ν)と相似形であり、光の周波数ν よりもはるかに小さい 10GHz だけシフ トしているので、Gpr(ν)は式(10)においてGLO(ν)に比例すると仮定することができる。 このため、LO 光とプローブ光の間のビートでのスペクトル密度は次式で与えられる。 (11) ここで、 δνLO×Pは、[17]で定義された広帯域光のもう一つの有効幅である。 Is2 t
( )
= 1 32 ε0ω1γe 2q2Q 1 n2 ρ0δvLO×pQ2 ⎛ ⎝ ⎜ ⎜ ⎞ ⎠ ⎟ ⎟ ILOIprpp1pp2 Ω2B− Ω2(
)
2− Γ(
BΩ)
2 Is2 t( )
ΔI (t +τ ) = 2α( )
2 exp(−2πi f τ )df −∞ +∞∫
GLO(v)Gpr(v + f )dv + c.c. 0 +∞∫
σ2LO×pr = 4ILOΔI pr GLO(v)Gpr(v)dv / −∞ +∞∫
GLO(v)dv Gpr(v)dv 0 +∞∫
0 +∞∫
σ2LO×pr = 4ILOΔI pr δνLO×pr12
(12)
式(1)の第3の雑音項である2iαELO(t)∆Ep1*(t)+c.c.は、式 (10)において、ΔIpr
をΔIp1に、Gpr(ν)を Gp(ν)に置き換えることで得られる。ここで、ΔIp1と Gp(ν)は、 それぞれ励起光成分∆Ep1 の平均光電流とスペクトルである。∆Ep1 を発生させた要因 は、帯域幅が100kHz であるレーザ光源からのコヒーレント光であるので、Gp1(ν)は、 νp1=(ωp+ω)/2π のデルタ関数 δ(ν -νp1)として近似され、式(12)の結果の幅は、式(5) で定義される有効幅となる。従って、 (13) が得られる。同様に式(1)の第 4 項の電流雑音のスペクトル密度は (14) と表せる。以上の結果より、ショット雑音効果を含めた総電流雑音スペクトル密度は、 次式で表されることが分かる。 (15) ここで、eは素電荷である。式(15)では、広帯域 LO 光の強度雑音はバランス回路に より無視できるレベルまで低減される一方、もともと弱いストークス光によるショッ ト雑音も無視できるものと仮定している。ただし、導出したスペクトル密度は、バン ドパスフィルタの帯域幅が1の場合に観測される全ノイズの分散である。式(15)の最 後の2つの項は、DBG を測定するために特別に構築された OLCR に固有の雑音項で ある。 OLCR は本来、石英系光導波路内のレイリー後方散乱分布を測定するために開発 されたものである。後方レイリー散乱信号は非常に弱かったので、RFスペクトラム アナライザの検波帯域が1Hz のときにどこまで低レベルの反射率を検波できるかの 指針として、変動するレイリー後方散乱信号の平均レベルと電流雑音のスペクトル密 σ2LO×pr= GLO(ν)dν 0 +∞
∫
⎛ ⎝ ⎜⎜ ⎞ ⎠ ⎟⎟ 2 / G2 LO(ν)dν 0 +∞∫
σ2LO×pr = 4ILOΔI p1 δνLO×pr σ2LO×pr = 4ILOΔIp2 δνLO×prσ2= 2e I
(
LO+ ΔIpr+ ΔIp1+ ΔIp2)
+σ 2 LO×pr+σ 2 LO×p1+σ 2 LO×p213 度の比でレイリー後方散乱を測定する際のS/N を定義した[18]。本論文では、図 1 の 挿入図に示すように、トランスインピーダンス増幅器TIA の出力を RF スペクトラ ムアナライザに接続し、キャリア周波数 5 kHz 付近のスペクトルを測定した場合に、 RF スペクトラムアナライザのディスプレイ上で観測されるピークの信号レベル信号 <Is2(t)>とバックグラウンドの雑音レベルσ2との比をDR と定義する。 (16) バンドパスフィルタからの出力をIs(t)+N(t)と仮定する。ここで Is(t)は式(4)で表 される定数A を持つ Acos(2πf ct+θ)の関数の形をした正弦波である。N(t)は式(1)の全 雑音の変動項であり、その分散を<N2(t)>=σ2と仮定する。この場合、二乗検波回 路からの出力は、Y(t)={Is(t)+N(t)}2=Is2(t)+2Is(t)N(t)+N2(t)となり、包絡線の成分のみ がローパスフィルタを通過することができる。Y(t)の 2 番目の項である 2Is(t)N(t)は、 信号 Is(t)の増加に伴って大きく変動し、これが OLCR によって観測されたスペック ル雑音の主要因となっている。信号の変動は、ローパスフィルタからの出力の標準偏 差σΥで表されるが、標準偏差の2乗である分散σ2Υは以下の式で与えられる。 (17) 信号はIs(t)=Acos(2πf ct+θ)と表せるので、ローパスフィルタからの出力信号は、
<I2s(t)>=A2/2 で 与 え ら れ る 。 Is(t) と N(t) が 統 計 的 に 独 立 で あ る と 仮 定 す る と 、
<Is(t)N(t)>=0が成立すると考えられるので、式(17)中の<Y(t)>は、次のように表される。 (18) 式(17)の第1項である<Y2(t)>がローパスフィルタ出力であるので、ストークス信号測 定の際のS/N は次式で与えられる。 2 / 2 / . Y A S N
σ
= (19) <Y2(t)>の実際の形はバンドパスフィルタがガウス型ウィンドウを持つと仮定し た場合には参考文献[19]で導出されている。しかし、我々の実験では、信号とノイズ の大きさを測定するために以下のような3種類のウィンドウを使用した。すなわち、 アナログRFスペクトルアナライザに設置されていたのはガウス型のウィンドウ、図1 DR = IS 2 t( )
σ2 σ2ϒ = ϒ2( )
t − ϒ t( )
2 ϒ t( )
=A 2 2 +σ 214 で示したスペクトル及び雑音のスペクトル密度を測定するために使用したダイナミ ックシグナルアナライザではフラットトップ型のウィンドウ、そしてビート信号を検 波する際に使用したのは矩形(または一様)ウィンドウであった。そこで、本論文で は省略するが、任意のウィンドウ関数H(f )で<Y2 (t)>を計算したところ、<Y2(t)>は一 般的に以下の式で表されることが分かっている。 (20) このため、どのようなウィンドウであっても、バンドパスフィルタからの雑音の分散 がσ2であれば、<Y2(t)>の値は式(20)で与えられることになる。式(18)と(20)を式(17) に代入すると、 (21) が得られ、式(19)で定義されるS/Nは(A2/2)/√(A2σ2+σ4)で与えられる。式(16)に
<Is2(t)>=A2/2と代入することで、DR=(A2/2)/σ2となるので、S/NはDRを用いて次の
ように表される。
S / N =
DR
2DR +1
(22) DR >>1の場合、S/N≈√(DR/2)となり、S/Nは4つの光波の平均パワーの積に比例し て増加するDRの平方根に比例することになる。一方、バランス回路に入射する励起 光のパワーが増加すると、DRと同時にS/Nも低下し、発生するビート雑音の分散は、 LO光と漏れた励起光の平均光電量の積に比例することになる。S/NがDRの平方根 に比例して変化することから、対数スケールで20dBのDRを達成したとしても、S/ Nの値は直線スケールで7しかなく、検出された信号が平均レベルに対して±14%以 上変動する可能性があることが分かる。 ϒ2( )
t = A 2 4 + 2A 2 σ2+ 2σ4 ϒ2( )
t = A 2 4 + 2A 2 σ2+ 2σ415 第4章 実験結果と考察 ダイナミックシグナルアナライザを用いて、光ファイバコネクタの接合部から 2cm の距離でストークス光を測定した。ダイナミックシグナルアナライザで検波する 信号の中心周波数を5kHz に設定し、ウィンドウとしてフラットトップ型を選択した。 これは、主干渉計における外乱の影響によるキャリア周波数の変動が数Hz ほど存在 していたため、周波数変動があってもストークス光のパワーを測定できるようにフィ ルターの中心近辺がフレットではいけないと考えたことによる。ダウンコンバージョ ン周波数は、ファイバのブリルアンスペクトルの中心周波数すなわちブリルアンシフ トである10.77GHz に設定した。信号の大きさを正確に測定するために、アナライザ ーの波形取得モードとして「繰り返しスキャン」を選択して10回ほどスペクトル波 形を加算した後に、平均スペクトルをパソコンで読み取り、取得データに対して最小 二乗法を適用することにより、スペクトル波形のピークの値を決定した。取得したピ ーク値は対数スケールであったので、トランスインピーダンス増幅器TIA の増幅率か ら、信号の大きさを pA2の単位に変換した。周波数が ω p+Ω 及び ωpである励起光 であるの出力は、それぞれPp1=200mW、Pp2=12mW であった。 低コヒーレンス光源からの出力を増加させながら、ダイナミックシグナルアナラ イザで検波された信号をLO光の光電流ILO の関数として測定した結果を図4(a) 及び(b)に示す。プローブ光の出力が 114mW のとき、LO 光の光電流はILO=4 7µAであった。図4(a)は、Pp2を12mW に固定した状態で、Pp1=50、100、200mW の設定パワーで信号を測定した結果を示す。また、図4(b)は、Pp1を 200mWに 固定した状態で、Pp2=3、6、12mWの励起光パワーでの測定結果を示す。ここ で、横軸、縦軸ともに対数目盛を用いている。各データポイントの平均値に対するば らつきは 10%であるため、log-log グラフにはエラーバーは付けていない。図より、 ILOの各値において、Pp1またはPp2のいずれかの励起光パワーを2 倍にすると、検波 した信号は2 倍に増加したことが分かる。このような依存性から、信号が個々の励起 光パワーの積、すなわちPp1×Pp2に比例していることが分かる。 (Pp1, Pp2)の各組ごとの信号のILOへの依存性は、実線で示すILOの2乗関数と一 致しており、この依存性から測定して得られた信号がILOの2乗に比例していること がわかる。3.1 節で述べたように、LO 光とプローブ光の光電量は、それぞれ ILO = 2|α|·|κ1|2<|F(t)|2>とIpr = 2|α|·|κ2|2<|F(t)|2>で定義されているので、2|α|<|F(t)|2>は 低コヒーレンス光源からの出力電力に対応する光電流に相当する。このため、ILO と Iprは出力電力に比例して変化するので、I2LO=|κ1/κ2|2ILO × Iprの関係が得られる。この
16 (a) (b) 図4(a) ωp+ω励起光のパワーPp1が50、100、200mW で、ωpにおける励起光の パワーPp2が12mW に固定したときのプローブ光の光電流ILOに対するストークス 信号の大きさ。(b) Pp2=3、6、12mW で、励起光のパワーPp1が200mW に固定された ときのプローブ光の光電流ILOに対するストークス信号の大きさ。 実線はCs=4.29×10-5 でCsILOIprPp1Pp2を計算してプロットした。 ように、信号が ILOの2乗に依存することから、信号が ILO×Iprに比例して変化して いることが分かる。 これら二つの依存性から、信号はILO× Ipr × Pp1 × Pp2に比例して変化すると結論づ けることができる。この結果は、式(8)で表された依存性と一致しており、今回開発し た OLCR によって四波混合によって生成されたストークス光を検出できていること が実験的に確認できた。なお、図中の実線はすべて、比例係数を Cs=4.29×10-5とし て、(ILO, Ipr)と(Pp1, Pp2)の単位をそれぞれμA と mW にしたときの CsILOIprPp1Pp2 の変 化の大きさを pA2 単位で計算してプロットしたものである。Cs は式(8)におけ る δνLO×p = 2.05 THz、Ω ≈ ΩBで決まる係数であることから、Ω の任意の値における係
数はδν’LO×p 、Cs’=Cs×(δνLO×p/δν’LO×p)2×(ΓBΩB)2/{(ΩB2-Ω2)2 +(ΓBΩ)2}とする必要がある。
図3に示すように、3種類の光波がバランス回路に入射してビート雑音を発生さ せたことから、電流雑音のスペクトル密度を以下のような手順で測定した。すなわち、 ダイナミックシグナルアナライザの垂直スケールをパワースペクトル密度(PSD) とし、その単位をV2/Hz に設定した。当該アナライザーにおいて、その中心周波数を 5kHzに設定して得られたデータから、トランスインピーダンス増幅率を考慮して 対応する2乗平均電流に変換した。漏れた励起光によるビート雑音の影響を示すため に、偏光ビームスプリッタ PBS1 と光サーキュレータ CL1 の間の光路を切断して、 プローブ光とωp + Ω の励起光を DUT に入射させないようにした。この条件におい
17
て、低コヒーレンス光源の出力を変化させ、光電流 ILOの関数として5kHzでの電
流雑音スペクトル密度を測定した結果を図5に示す。ここで、励起光パワーを偏光ビ ームスプリッタPBS2 で 55 dB 減衰させることにより、∆Iprを極限的な数値レベルで
ある∆Ipr=80 nA に設定した。光電流値である各∆IP2の値において、雑音密度の測定
値は、式(15)において∆Ipr = 0、∆Ip1 = 0 とすることで得られた σ2 = 2e(ILO + ΔIp2) +
σ2LO×P2の実線で示される理論曲線と良く一致していることが分かった。 図 5. 光電流が ΔIp2 = 80, 320 または 1280nA となるようにバランス回路に入射する ωp の励起光のパワーを調節したときに測定された電流雑音のスペクトル密度。測定の際に はプローブ光とωp+Ωの励起光を遮断した。励起光を55dB 減衰させたときの光電流は ∆Ip2 = 80 nA であった。実線は、σ2 =2e(ILO + ∆Ip2) + σ2LO×P2 を計算してプロットしたも のである。 低コヒーレンス光出力の測定スペクトルから、式(5)で定義される有効幅は δνLO×p = 2.05 THz と見積もった。励起光が DUT に入るのを完全に遮断することにより、図 5中の白丸で示すように、ショット雑音で制限されたスペクトル密度が観察されたこ とから、低コヒーレンス光に固有の強度雑音がバランス回路によって除去されたこと は明らかである。励起光のパワーが大きくなると、ショット雑音に代わってビート雑 音が支配的となり、前者がDBG を OLCR で測定する際の DR および S/N を劣化さ せる主要因となっていくことが分かる。 周波数が 5 kHz であるストークス光信号が発生しないように位相変調器(PM1
18 および PM3)へのセロダイン変調(鋸歯状波による変調)をオフにした状態で、全 ての光を干渉計に入射させた。そして低コヒーレンス光出力のパワーを増加させなが ら、中心周波数が5 kHz における雑音のスペクトル密度を測定して得られた結果を図 6 に示す。ここで、ILO の値は、実用上の関心のある20から60μAの範囲で変化 させた。また、励起光パワーPp1とPp2はそれぞれ200 と 12mW に設定した。∆Ip1と ∆Ip2の両方をバランス回路に入射させたので、偏光コントローラ PC2 で励起光の偏
光状態SOP(state of polarization)を微調整することにより,総光電流∆Ip=∆Ip1+
∆Ip2を 80、160、そして 320nA に順次設定しながらその都度雑音のスペクトル密度
を測定した。
式(15)より、総雑音量である σ2 = 2e(ILO + ∆Ipr + ∆Ip) + σ2LO×pr + σ2LO×pを計算して
図6中に実線で示した。ここで、σ2LO×prの値は実測値である-62dB の反射量と δνLO×pr
=2.88THz の値を用いて式(11)から計算した一方、σ2LO×prの値は、4ILO∆Ip/δνLO×pの式
にδνLO×pr=2.05THz の値を代入して求めた。σ2LO×prは、従来のOLCR システムの主
要雑音であるであるショット雑音+ビート雑音σ2LO×prの下限を上回ったため、総雑音 量はILOに伴って直線的に増加したことが分かる。このように、実測値と計算値が一 致したことから、本研究で構築したOLCRにおける雑音は式(15)で表されることが 実証された。∆Ip≧80 nA であれば、設定された∆Ipの各値を通常の実験室レベルで20 分間維持することができることも判明した。∆Ipを10 nA オーダーの最小レベルまで 下げることにより、図 6 の丸印で示すように、雑音レベルを本来 OLCR が到達でき る最小の雑音レベルでDBG を測定することも可能であった。 図6. 入射し得るすべての光をバランス回路に入射させたときに観測された電流雑音の スペクトル密度。対向伝搬する励起光の総光パワーは、ΔIp = 80、160、320 nA。 実線は、ΔIp の値を変えたときの σ2 = 2e(ILO + ∆Ipr + ∆Ip) + σ2LO×pr + σ2LO×pの 変化を示す。
19 DR と S/N の関係を求めるため、励起光出力 Pp1、Pp2をそれぞれ 200mW、12 mWに固定した。低コヒーレンス光の出力は 114mWであったため、光電流はILO=47µ Aであった。ダウンコンバージョン周波数は 10.77GHz に固定し、ファイバコネクタ の接合部から 2cm の距離におけるストークス光を測定した。前章でDRとS/N の関 係を表す式(22)を導出したので、この関係を実験的に確認することを目的として測 定を進めた。アナログ型 RF スペクトラムアナライザの中心周波数、スパン、ビデオ バンド幅(VBW)、分解能バンド幅(RBW)をそれぞれ 5kHz、0Hz(またはゼロ スパン)、100Hz、30Hz に設定した。スペクトラムアナライザにはビデオ出力ポート があり、そこから二乗検波された信号をストリーミングさせてこれをA/Dコンバー タでサンプリングしてコンピュータに格納した。 雑音を低減するために光電流∆Ipを徐々に減少させながら、∆Ip各値に対して、キ ャリア周波数をON/OFFして、それぞれストークス信号と雑音出力の時間変化を 10秒間サンプリングした。図7(a)は取得した波形の一例を示しており、雑音(下 側のトレース)レベルがストークス光信号(上側のトレース)とほぼ同レベルの場合 を示す。取得波形から、変動するストークス光信号の平均値(すなわち式(18))で表 される<Y(t)> = A2/2 + σ2の値と、式(17)のσYに相当する標準偏差の値を計算した。 次に、雑音出力波形からその分散σ2を計算し、一方で<Y(t)>の値から σ2を減じるこ とにより、ストークス光信号である A2/2 の値を導出した。これらの計算の結果、図 7(a)の波形の場合では、DRは対数スケールで 12.5dB、S/N は線形目盛で 3.05 であることが分かった。 (a) (b) 図 7. 信号と雑音のビデオ出力波形。中心周波数 5 kHz、ゼロスパン、ビデオバンド幅= 100 Hz、 分解能バンド幅 = 30 Hz。(a) DR = 12.5 dB、S/N = 3.05、(b) DR = 28 dB、S/N = 18.1
20 バランス回路に入射した励起光の偏光状態を微調して光電流∆Ip を減少させると、 図 7(b)に示すように、ストークス光信号の変動は小さくなり、DRは 28dB、S/N は 18.1 まで高くなった。光電流値∆Ipを変化させたときのDRとS/N の値を計算し, 式(22)による計算と合わせて図 8 にプロットした。図に示したように、測定値と計算 値がかなり良く一致していることから、ストークス光信号の変動は、ストークス光信 号と二乗検波による雑音との結合によるものであることが確認された。 図 8. ダイナミックレンジ(DR)とS/N の関係。バランス回路に入射する 励起光のパワーを変えることによりDRを変化させた。 実線は式(22)から計算した理論曲線。 漏れてバランス回路に入射する励起光の光電流∆Ipを 80nA に設定して、光ファイ バコネクタの接合部周辺から得られたリフレクトグラムを図9(a)に示す。図にお いて、2.5 から-1cmの地点で測定した信号の平均レベルと標準偏差を計算した結果、 このDBG測定の際の S/N は 24 であることが判明した。この S/N の値は、前回 の実験[8]で得られた S/N に比べて 6 倍も高いものであった。そこでリフレクトグ ラムを 10 回繰り返し測定し、それらの平均リフレクトグラムを計算した結果、図 9 (b)に示すようにS/N は更に改善されて 65 に達した。このような高い S/N を前 回の実験系を用いて実現するためには、200 回の繰り返し測定が必要であったことか ら、雑音の低減がS/N の改善や測定時間の短縮に不可欠であることが立証された。
21 図 9. (a)1回のスキャンで得られたリフレクトグラム。 (b)10回の繰り返しスキャンで得られたリフレクトグラムから計算した 平均リフレクトグラム。 光電流∆Ipを 80、160、320nA に順次増加させ、それぞれの値においてファイバコ ネクタから 10 個のリフレクトグラムを取得し、その平均値とファイバに沿った-2.5 から-1cm までの区間の S/N の平均値を測定した結果を図10の赤丸とエラーバー で示す。横軸は∆Ip/Ip2をdB スケールで表した減衰量である。光ファイバからのリフ レクトグラムを導出する際には、2 種類の矩形バンドパスフィルタを採用した。すな わち、信号処理によってリフレクトグラムを導出する際には時間領域で 630Hz 幅の矩 形ウィンドウを使用する一方、スペクトル領域では 1527~1576nm の波長域のみを抽 出するための矩形ウィンドウを使用した。式(15)より、DRは<Is2(t)>/(σ2 × RBW) = CsILOIprPp1Pp2/(σ2 × RBW)( Cs=4.29×10-3)の式で与えられるが、この式に含まれる RBW がどちらのウィンドウのバンド幅を表すかは明確ではない。そこで、RBW の値 が帯域幅として検波を行う際のバンド幅 630Hzに等しいと仮定してDRの減衰量依 存性を計算したが、図に示すように計算値のS/N は小さすぎて実測値にフィットす ることはあり得なかった。 RBWの値を変化させながらDRを計算したところ、RBWの値が 25Hz である ならば、図に示すように実測値と非常に良く一致することが分かった。この 25Hzと いう値の出所の由来をいろいろと考えてみた結果、唯一可能性があるのは、400μm /s の速度で一軸ステージを並進させたときに発生するビート周波数が個々のスペク トル成分に応じて 508Hz から 524Hz に分布しており、この周波数の幅が。16Hz となる ことである。実際にRBW=16Hz のときのDRを計算して S/N の変化を求めたとこ ろ、図に示すように実測値とかなり良く一致していることが分かった。すなわち、今 (a) (b)
22 回の実験では、リフレクトグラムを導出するために2種類のウィンドウを利用したが、 DBG を測定する際のDRを決定するのは、スペクトル領域で 1527~1576nm の波長域の みを抽出するために使用した矩形ウィンドウであることが判明した。 図 10 ∆Ip/Ip2とS/N の関係。Ip2はωpの励起光をフォトダイオードで検出した場合に発 生する平均光電流。RBW = 16、25、および 630Hz の 3 つの分解能帯域幅に対してプ ロット。
23 第5章 結論 マイクロメートル空間分解能を有する低コヒーレンスリフレクトメータ(OLCR) を使用してファイバ内に誘起されるブリルアングレーティングを測定する場合には、 2乗検波を介したストークス光信号とビート雑音との相互作用により、スペックル雑 音が生成されることを理論的および実験的に示した。この結果、スペックル雑音を低 減するためには、バランス回路に入射してしまう漏れ励起光を低減する以外に信号対 雑音比を改善する手段は存在しないことを明らかにした。そこで、光ファイバ型偏光 子を用いて励起光の消光比を予め60dB 以上に向上させることにより、漏れ励起光 量を極限まで低減させることに成功し、ブリルアングレーティングを測定する際のS /N 比として、1 回の測定で 24、10 回測定して平均化を行うことで65を達成した。 このような高いS/N を達成したことから、ファイバコネクタ近辺のDBGの分布を マイクロメートルの空間分解能で測定することが可能となった。
24 謝辞 本研究を通じて指導教員である高田和正教授、千葉明人助教には熱心なご指導, ご助言を賜り,この場をかりて心より感謝を申し上げます。また、論文をご精読いた だきました主査の高橋俊樹教授、副査の三浦健太准教授に感謝いたします。そして高 田研の皆様にも重ねて感謝申し上げます。
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