"I" 見聞録 : SIGGRAPH 2009
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(2) 第4回. SIGGRAPH 2009. 写真 2 3D 会議システムにおける話者側. 写真 3 3D 会議システムにおける会議参加者側に提示される 3D 顔映像. 大会の特徴として,音楽やオーディオに焦点を当てて,. 送り予告会(Technical Papers Fast Forward)」が行われた.. 新しいビジュアル表現を取り入れた点を挙げることがで. 恒例となったこのセッションでは,翌日から始まる技術. きる.また,SIGGRAPH にゲームを呼び戻そうとする動. 論文の全発表者が参加し,1 分間で各自の論文の内容を. きがあり,これまで別に開催されていたゲームの研究. 発表していく.会場には技術論文の発表に興味を持つ多. 者・開発者向けのセッションが統合された.音楽・ゲー. くの人が集まり,立ち見の人がでるほどの盛況だった.. ム双方の分野に関連したイベントや講義,デモンストレ. 各発表者のプレゼンテーションは聴講者の興味を引き付. ーションなど多彩なプログラムが用意されていた.. けるための工夫がされており,ウィットに富んだ発表が 数多く見られた.そのため,セッション自体がエンタテ. 最先端技術の論文発表 SIGGRAPH のメインイベント,中核となる論文発表は,. インメントの様相を呈している.一方で聴講者は注目の 論文を見極めるべく参加しており会場は非常に熱気を帯 びていた.. 8 月 4 日から 7 日の 4 日間で行われた.論文発表は,世 界の研究者が最新技術を持ち寄るもので,製品や開発技 術の基礎となる重要なものである.. 先端技術によるシステム展示. SIGGRAPH での技術論文の発表はペーパー(Paper). 世界中の大学や研究機関などが研究・開発中の最先端. と呼ばれ,ここで発表される論文は,通常の論文発表. 技術を披露する技術展示であるエマージングテクノロジ. と同様に Proceedings(予稿集)に収められるとともに,. ー(Emerging Technologies)は,全日程 5 日間行われた.. Transaction と呼ばれる論文集にも収められる.そのた. 世界中から選ばれた 33 の展示が行われ,その中でも日. め,SIGGRAPH における論文発表は厳格な審査によって. 本勢の出展が目立ち,33 の展示の中で 17 の展示が日本. 選考された論文が集まり, 「世界最高の質」 を誇る 1 つの. からのものであった.. 理由になっている.. 今年は 3 階建ての会場のうち 1 フロアが割り当てられ,. 今年のペーパーの採択率は 20% ほどで,78 本の論. ハプティクス /VR,音響,ロボティクス,センサ,ディ. 文が採択された.そのうち TOG(ACM Transaction on. スプレイ,視覚化,入力インタフェースの全 7 の分野. Graphics)に採択された論文 19 本が招待されている.論. で部屋ごとに展示が区分されていた.カテゴリごとに分. 文発表は全部で 24 のセッションに分かれ,レンダリン. かれ人の流れが上手く制御されており,どの展示におい. グやイメージング,キャラクタアニメーション,インタ. ても体験者が後を絶たず非常に活気のあるものとなって. ラクションデバイスなど多岐にわたる発表が行われた.. いた.. 中でも,流体アニメーションと同調した水滴音を緻密. ディスプレイ技術の展示として目を引いたのは USC. な物理モデルに基づいて生成する手法や,詳細な物理演. Institute for Creative Technologies の Graphics Lab が展. 算をすることなくキャラクタの動きや事象を生成する手. 示を行った 3D 会議システムで,遠隔地の話者を 3D の. 法など,今年の特徴に即した論文発表が行われていた.. 顔画像映像として複数人の会議参加者が見ることができ. 8 月 3 日には翌日からの論文発表に先駆けて「論文早. るシステムである(写真 2, 3).回転式の 3D ディスプレ 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009. 1153.
(3) コラム “I”見聞録. 写真 4 赤ちゃんロボット:YOTARO. 写真 5 トランポリンインタフェースを用いた VR システム. イで遠隔地の話者の顔を立体映像として映しており,会. YOTARO はさまざまなインタラクションが可能な赤ちゃ. 議参加者は偏光メガネなどの特殊な器具の装着をするこ. ん型ロボットで,触れると色が変わる暖かな肌,感情モ. となく複数人が同時に立体映像を見ることができる.ま. デルに基づいた感情表現などが特徴となっている.. た,3D 顔画像の提示と,話者視点の映像取得のカメラ. 入力インタフェースのカテゴリでは,Upper Austria. 位置の設定により,会議参加者は話者からの正確なアイ. University of Applied Sciences の Media Interaction Lab. コンタクトを受けることができる.このシステムはデモ. を中心に東京大学,慶應義塾大学が共同して開発された. 展示に加えて,論文発表でその技術について発表が行わ. CRISTAL(Control of Remotely Interfaced Systems using. れた.. Touch-based Actions in Living spaces)が部屋の一画をリ. また,東京大学の篠田研究室の Touchable Holography. ビングルームに変えて展示されていた.このシステムで. はホログラフィによって提示された立体映像を見ること. は,天井カメラを通じて取得した映像がマルチタッチ対. ができるだけでなく,実際に手をかざして触ることがで. 応のテーブルに表示されており,テーブルに表示された. きる空中超音波触覚ディスプレイである.立体映像を触. 映像にある部屋の電気機器を触ることで遠隔制御できる. ろうとしてかざした手に,空中超音波を収束させること. システムである.グラフィカルなインタフェースによっ. で体験者の手に触覚を与える方法をとっている.. て直感的に部屋内の機器を制御できる様子は近未来のシ. ロボティクスのカテゴリでは,2008 年の IVRC 国際. ステムの到来を予感させられるものだった.. 学生対抗バーチャルリアリティコンテストで総合優勝. また,筑波大学の星野研究室はトランポリンをイン. をした筑波大学の YOTARO も展示されていた(写真 4).. タフェースとして運動支援を目的とした VR システム,. VTF(Versatile Training Field)の展示を行っていた.こ のシステムでは,トランポリン上での運動に連動して,. VR の世界を実際に跳び回る感覚を得ることができるシ ステムで,トランポリンに乗って体験する人たちで賑わ っていた(写真 5).. CG 映像の上映 CG 映像の上映が行われるコンピュータアニメーショ ンフェスティバルでは,CG プロダクションや制作会社, 学校,個人から応募された作品から選出された映像が上 映されるイブニングシアターや,映像と音楽の組合せに 焦点を当てたセッション,映像プロダクションによる作 品解説,トーク,パネルなど CG 映像作品に関するさま ざまな催しが行われた.. 1154. 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009.
(4) 第4回. 会期中,毎晩開催されたイブニングシアター(Evening. SIGGRAPH 2009. や映像関係のプロダクションへの就職活動を促進する. Theater)は昨年からなくなったエレクトロニックシアタ. job fair というリクルートの場,運営を補助する学生ボ. ー(Electronic Theater)に相当するものであり,1 年ぶり. ランティアなど関連分野の学生にとって,最先端の研究. に「ET」としてその名称が復活した.イブニングシアタ. に触れるだけでない,非常に有益な体験ができる場とな. ーは,大ホールの大スクリーン上で上映され,冒頭に. っている.. は PS3 や Xbox などのゲームや,創価大学畝見准教授の. 次 の SIGGRAPH は, ア ジ ア 開 催 の 2 回 目 と な る. DT4 Identity Sa のリアルタイムデモが行われた.その後,. SIGGRAPH Asia 2009 ( https://www.siggraph.org/. 芸術性,表現技術に優れたショートフィルム,映像プロ. asia2009/)が日本のパシフィコ横浜を会場として,12. ダクション制作の映像が上映され,高品質の作品に観客. 月 16 日から 19 日の会期で開催される.日本での開催. は魅了された.. として日本語による各種セッションも予定されており. 映像プロダクションによる作品解説では,全米で公開. SIGGRAPH の雰囲気を体験する絶好の機会となっている.. された Coraline のセッションなど,非常に人気があり,. また,来年の北米開催となる SIGGRAPH 2010(http://. 開催前から長蛇の列を作っていた.また,日本ではまだ. www.siggraph.org/s2010/)はロスアンゼルスで開催が予. 馴染みが薄い 3D 映像を用いた映画の試写映像など 3D. 定されている.. 映像のみを集めた上映も行われており,3D 映像を用い. (平成 21 年 9 月 5 日受付). たコンテンツの浸透を予期させられるものであった.. SIGGRAPH への参加 このほかにも SIGGRAPH では,学生を参加対象として, 三人一組でテーマ発表後から 32 時間で 45 秒のアニメ ーションを製作する FJORG! や,24 時間で 3D と 2D の ゲームを制作する Game Jam! と呼ばれるワークショッ プが行われるなど非常に活気を帯びていた.また,CG. 森 博志(正会員) [email protected] 平成 14 年筑波大学卒業,平成 19 年同大学院修了.平成 20 年から 同大学院システム情報工学研究科研究員.エンタテインメントコンピ ューティングの研究に従事.. 情報処理 Vol.50 No.11 Nov. 2009. 1155.
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