Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japar ユese Physlcal Therapy Assoclatlon理 学 療 法 学 第
42
巻 第3
号228
〜
236
頁 (2015
年 )研
究 論 文
(
原
著
)
大腿 骨 近 位 部骨 折患 者
に お
け
る
立 ち上 が
り
動作
の
運動 力学 的
・
筋 電 図学 的分 析
*動作 時疼痛
の有
無
に
よ る
比 較
一
上
野
貴 大
1)2>
#高 橋 幸 司
1>座
間 拓 弥
1
)鈴 木 英
二1
)原
和 彦
3
) 要 旨【
目的
】
大 腿 骨 近 位 部 骨 折 患 者
の i’
i
.
ち 上 がり動 作
を 運動 力 学
的・
筋
電 図学 的
に解 析
し,
疼 痛
の有 無
による 運動 様 式
と その際
の筋 活 動
の差異
を 明 ら か に す るこ と と し た。
【
方 法
】
対 象
は,
認 知 機 能
が保
た れ,
重 篤
な既 往
を有
さ ない大腿 骨
近位 部 骨
折 患者
21
名
であっ た。
下 腿 長の120
%の高 さの椅 子 か らの一
ヒ肢 支 持 を
用 いな
い立 ち 上
がり動 作 を対 象 動 作
とし
,
3
次 元 動 作解 析 装 置
,
表 面 筋 竃 謝
を用
い計 測
を行
っ た。
対
象
を疼
痛 あ り群
・
疼 痛 な し群
に分 類
し,
動 作 分 析 結 果
を 群間
で比較
し た。
【
結 果
】
疼 痛 は お も に患
側 大腿
四頭 筋
に 認め た。
患
側 股 運動 範
囲・
患 側 股仲 展
モー
メ ン トは,
疼 痛 あ り
群で有
意に小 さ かっ た。
患 側 膝 伸 展モー
メ ン トは疼 痛
あ り群
で有 意
に大 き
かっ た。筋 活 動 量 健 側 比
は,
疼 痛 あ り群
の外 側 広 筋
で有
意 に 大 き かっ たe【
結 論
】
疼 痛 を生
じ てい る例
で は,
患 側 股 関 節 機 能 低 下
に対 す
る患 側 膝 関 節 機 能
に よ る代 償
が確
認
さ れ,
回復 期
に 生 じ る筋 痛 発
生へ の閼与
が示
唆 さ れ た。
キー
ワー
ド大
腿 骨
近位 部 骨
折,
疼 痛,
立 ち一
ヒが り動 作
は じ め に超 高 齢 化
へ の進展
の中
で,
本邦
に お け る 大 腿 骨 近位 部
骨 折 推 計 発
生数
は.
2007
年
に実 施 さ れ た 全 国 的 調 査で男 性
31,
300
入
,
女 性
116
.
800
人,
計
148,
100
人 で あり
,
発
生数
は15
年
間で男 性
は1
,
7
倍
.
女 性
は2
.
0
倍 増
加 し た 1)。 また,
2020
年
に は年
間約
20
万 人に増 加 す る と 推計 され
てい る2)。大 腿 骨 近 位 部 骨 折
患者
に対 す
る リハ ビ リ テー
シ ョ ンの阻 害 要 因
の ひとつ と して,
疼 痛 が 挙 げ ら れ る3>。
大 腿 骨近 位 部 骨 折 患 者
に生 じ る疼 痛
は,
骨 折 部
の疼痛
,
股 関節
周 囲
の軟 部 組 織
の疼 痛
.
膝
関節 痛
に 大 別 さ れ る3)4)。 こ *Kinetic and Etectromyographic Analyses of Sit
.
to.
Stand Motion in Patients with Prox al Femoral Fracture:CDmparison of Patients withPain
and
without
Pain
l) さい たま記 念 病 院リハ ビ リテ
ー
ショ ンセンター
(〒 337
−
ODl2 埼玉県さいた ま市 見 沼 区東 宮下 西 196>Takahiro Ueno
,
PT.
MS,
Koji Takahashi,
PT.
Takuya Zama,
PT、
Eiji Suzuki,
MD,
Dr:Saitama Memorial Hospitat RchabilitationCenter2
) 越 谷 リハ ビ リ ケア センタ
ー
Takahiro Ueno
,
PT,
MS:
Koshigaya Rehabilitatiun Care Center3) 埼 玉 県立 大 学 大 学 院
Kazuhiko Hara
,
PT,
PhD:
Graduate School of Saitama Publican University#E
−
mail: takahiro−
ueno @live.
jp
(受 付日 2014年5月1日/ 受 理 日 2015年2月3日) の う ち
,
急 性 期 に お ける疼 痛
に は,
骨 折 時
お よび手 術 侵
襲
に伴
い出
現す
る骨 折 部
の疼 痛
・
股 関節 周 囲
の軟 部 組 織
の疼 痛
が存 在 す
る3)4)。 これ
ら急 性 期
の疼 痛
は,一
般
的 に 術 後3
週程 度
で消 失 す
る と され て おり
,
慢 性 痛
へ の移 行 は考
え
にく
い。一
方
,
荷 重 練 習
や歩 行 練 習 が 進
んでく
る回 復 期 に 生 じ る筋 痛
は筋
スパ ズムを生 じ
,
慢 性 痛
へ と 移 行 す る 危 険 性 が ある といわ れ ている 4)5)(
図
1
)
。
大 腿骨
近位
部骨 折 患 者
の半 数 近 く
が慢 性 痛
に悩 ま さ
れている という報 告
があ
る 6−
8)。慢 性 痛
はQOL
低
下 を招 く
一
因 とさ れており
9),
生命
予後
にまで影 響
を及
ぼ す と さ れて い るlo)。大 腿 骨 近 位 部 骨 折 患 者
において慢 性 痛
の存在
は大 き な問 題
の ひ とつ とな
っ ており
,
その原 因 と な る 回復 期
に生
じる筋 痛
の軽 減
お よび発
生予 防
が 重要
と さ れて い る4)5)。
回
復 期
に生 じ
る筋 痛
の好 発 部 位
と しては,
大 腿
四 頭筋
等
が 挙げ
られ てい る 3}4)。 ま た,
筋 痛
は 軟部 組 織 修 復 状
態
に合 わ
せ た積 極 的 な荷 重 練 習
が 進行
す る 術後
2 〜3
週 の問
に出現 す
る とされ
ており
2−
5)ll ),
発
生部
位
・
時期
に つ いて は概
ね 諸家
の報 告 が一
致
してい る。
発 生 原 因
につ い て は,
過 負 荷
に よ る炎 症
に より
出 現 す る2)3)6)11)と い っ た報 告
や,
動 作 時
の防御
性 収 縮 が 原 因であ
る とい っ た異 な
る見解
を示
し た報 告
5 )があ
る が,
いず れ も急 性
N工 工一
Electronlc Llbrary疼痛
を有
する大腿 骨近位 部 骨 折 患 者に おける 立ち上 が り動作の特 徴229
1
惹
手 術 施 行積 極
的 な 代償
運 動によ る荷
重練
習 開 始筋
過活動
の繰
り 返 し 図1
大 腿 骨 近 位 部 骨 折 患 者にお ける疼 痛の推 移 慢 性 痛へ の移 行・
骨 折 時や術 時 侵 襲に より生 じる急 性 期の疼 痛 が 減 弱 する の に伴い,
積極
的 な荷 重 練 習 が 開始 される時期に筋 痛 が 生 じる.
・
筋 痛 を生じ る ような代 償運動に よ る筋 過 活 動の 繰 り返 し に よ り,
慢 性 痛へ 移行す る.
期
に 生 じ る疼 痛
に起 因す
る代 償 的 な抗 重 力 運 動
の繰 り返
しに より
生 じるという見 解
は一
致
し てい る。 し か し,
発
生原 因
に関 す
る過 去
の報 告
2−
6)11)は
,
いず れ も経 験 則
とし
て述
べら
れ る に留 ま
っ て おり
,
代 償 運 動
と その際
の筋 活 動 を
運動 力 学 的
・
筋
電 図学
的 側面
か ら分析
し た報 告
はな
い。
そこ で
,
本研 究で
は筋 痛 好 発 時 期
であ る術 後
2 〜3
週 に おけ
る大 腿 骨
近位 部 骨 折
患者
の立 ち 上 がり動 作
に着 目
し,
運動 力 学 的
・
筋 電 図学 的分 析
を行
い,
疼 痛
の有 無
に よる運動 様 式
と その際
の筋 活 動
の差異
を明
ら かにす
る こ とを 目的
とした
。対 象
お よ び方 法
1.
対 象
対 象
は,
平 成
24
年
4
月
か ら同 年
11
月 ま
での間
に当 院
へ 入 院 さ れ た 大 腿 骨 近 位 部 骨 折 患 者のう
ち,
除 外 対象
を除
い た患 者
21
例
であ
っ た。疼 痛 評 価
の妥 当 性 を確 保 す
るた
めの対 象 者の
除 外 基 準 と
して,
先 行 研 究
6)を参 考
と し,
認 知機 能
低 下 を 認 め た 例(
Mini−Mental
State
Exami−
nation :MMSE
〈19
pt)
,
過去
に動 作 能 力
に 大き
な影 響 を
及 ぼす 程 度
の重 篤
な整
形外
科
疾 患
,
中枢神
経
疾 患 およ び神 経筋
疾 患の 既 往 を 有 す る 者 と し た。
ま た,
対
象
と
なっ た事
例 で は,
術 後
経
過
に おいて,
画像所
見
上.
骨 折 部
の解 離
や転 位
,
骨
頭穿 破
とい っ た 異常 所 見
が生
じ てい ない こと を 主 治 医 よ り確 認 し た。
2.
倫
理的
配慮
対 象 者 に は 本 研 究の 目的 と 内 容
,
倫 理 的 要 項 につ い て書
面 お よ び 口 頭 に て 十 分 に 説 明 し た。
そのう
え で,
研 究参 加
に対 す
る同 意 を書 面
に て得
た。本研 究
は埼 玉 県 立 大
学 倫
理審査 委 員 会 (
承
認番 号
:23720
)
お よ び さい た ま記 念 病 院倫 理 審 査 委 員 会 (
承 認番 号
:3
>
の承 認 を得 た
。3
.
調 査
・
評 価 方 法
調 査
・
評 価 項 目
は,
性
・
年 齢
・
診 断 名
・
大 腿 骨
近頸 部
骨 折
の分 類 (
転 位 型
・
非 転 位 型 )
・
大 腿 骨 転
子部 骨 折
の分 類 (
安 定 型 骨 折
・
不安 定 型 骨 折 )
・
術 式
・
手術
か ら 計測 ま
で の期 間
・
計 測 実 施 時 期
にお け
る歩 行 自 立 度
(
Functional
Independence
Measure
:FIM
移 動
項 目)
・
関節 可 動 域
・
筋 力 (
徒 手 筋 力 計
GT −300
(
OG
技 研 社 製
)
を
用いた最 大 等
尺性 収 縮 時
の筋 力
)
と し た。
4.
三次
元動 作 解 析
・
筋
電図解 析 方 法
計
測対
象動作
は,
解析
が容 易
で矢
状 面 上の関 節
運動
が明確
であ
る抗 重 力 運 動
であ
る 立ち
上が り動 作 を 選 択 し
た。 立ち
上 がり動 作
につ い て,
三次元 動 作 計 測 お
よ び筋
電 図計 測
を同期 計 測
した。身体 運 動 計 測
に は8
台
の カ メ ラを装 備
した
三次
元動 作 解 析 装 置
VICON
MX
(
Oxford
Metrics
社 製 ) と
4
枚
の床 反 力 計
(
Kistler
社 製
)
を
用い た。
得
ら れ た 標 点 デー
タ は サ ンプ リング 周 波 数100Hz
で,
床
反力
デー
タ は1.
OOO
Hz
でVICON
NEXUS
へ取 り
込
んだ
。
動 作 時 筋 電
図 は,
マ ルチテ レ メー
タ シス テムWEB
−
5000
(
低
域 遮断 周 波 数
:0
.
3
Hz
,
時 定 数
;0
.
03
sec,
感 度
:0,
5mV
/V ,
日 本光
電 社 製)
に よっ て増 幅
さ れ.
サ ンプ リング 周 ?E
数
1
,
000
Hz
でVICON
NEXUS
へ取 り
込 ん だ(
図2
)
。
立 ち 上 が
り動 作 方 法
は,
上肢
を胸
の前
で組
ん だ状 態
で 支 持物
を 用い ない至 適 速度
で の立 ち 上 がり
と し た。椅 子
の高 さ 設 定 につ い ては.
対 象 者へ の身 体 的 負 担 を考
慮 し高
め に設
定
す
る た め 下腿 長
の120
% と設 定
し,
測 定 回 数
は3
回 と し た。
動
作開
始 肢位
におけ
る踵部
を床
反力 計
の 端 に 置 く よう
に 規 定 し,
足部
の向
き は 生 理 的 な 足部外 転
角 度
で接 地 さ
せ,
動 作 中
に足 部 が動 か な
い よう
に指示 し
て下 肢 回旋 要 素
が加
わ らな
いよう
に配 慮
した。計 測 実 施 時 期
は,
対 象 者
へ の身体 的負 担
に考慮
し,
術
部 軟 部
組織
の修 復
が得
ら れ 主治 医
より外 出
が許 可
さ れる 時期で
あ る 術 後2
〜
3
週の問
に実 施
し た。 ま た,
こ の時
期 は 急 性 期 に 生 じ る 術 部・
骨 折 部の疼 痛 が 軽 減 し3)4),
荷 重練 習
の積 極 化
に より筋 痛
を生
じやす
い時 期
であ
る。マ
ー
カ貼
り
つけ位
置
は,
臨床歩
行 分 析 研 究会
が推 奨 す
る10
点 12)と し た。
10
点 は,
左 右 肩峰
,
大転 子
と 上前
腸骨 棘
を結
ん だ線
上の大 転 子
か ら レ3
遠 位 点
,
膝 関節 側
方
において 中 央の高 さで膝
蓋骨
を除
い た中央
の位 置
,
外
果,
第5
中足 骨であ る。
床 反 力計
は前 後
2
枚 ず
つ計
4
枚
Japanese Physical Therapy Association
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理学 療 法学 第42
巻 第3
号床
反力計
図
2
計 測 環境設 置
し.
後 方左 右
2
枚
に ま た が る よう
に椅
子 を 設 置 し,
前 方左 右
2
枚
に は そ れ ぞ れ左 右
足部
が乗
る よう
に した。
モ デル分 析 は 解 析 ソ フ ト
Vicon
Body
Builder
3
,
6
,
1
(
Vicon
Peak
社 製)
を 用いて実 施
した。
本研 究
で用
いた剛 体
リンク モ デ ルは三次 元
であ り
,
体 幹
,
大 腿
,
下 腿
,
足部
の4
体 節
モ デ ルと した。
体 節
の質
量や慣性
モー
メ ントな
どの生 体 定 数
は,
報 告 され
て い る数 値
13)より被 験
者
の体 格
に適 合
させ て用いた。
各
関節
の中 心 はDavis
の方 法
!4)より算 出
し た。
標 点
デー
タ の誤 差 範
囲につ い て は,
上
下・
進 行 方 向
・
左 右
いず
れも
1mm
以 下と
さ れ て い る 15)。
得
ら れ た デー
タ は,Bryant
らの ディ ジ タ ル・
フ ィ ル タ 16)を 用い6Hz
の遮 断 周 波 数で平 滑 化 した
。立 ち上
がり動 作
は.
阿南
らの手 法
17)を参 考
に,
動
作
開始 前
の姿 勢
か ら体 幹
の前
傾角 速 度
が は じめ て 正の値 を 示 した点
を 動作
開 始 とし,
股 関 節の 最 大仲 展
の点 を 動作 終
了と規 定
し,
立 ち
上 が り動 作 時
間 を100
% に 正規
化 し た 後 力 学 デー
タの体 重 に よ る 正 規 化 を 実 施 し た。
抽出 す
る計
測パ ラメー
タ は,
立 ち上が り動作
中の 床 反力
鉛直 成 分
ピー
ク値
COG
前 方 移 動 距 離
ピー
ク値
,
股
・
膝
関 節の 屈 曲・
伸 展角
度ピー
ク 値,
股・
膝 関 節の 屈 曲・
伸 展モー
メ ン トとし た。
下 肢荷
重 量 ピー
ク値
は,
患 側床
反力
鉛直
成 分 ピー
ク値
を健
側床
反力
鉛直
成分
ピー
ク値
で 除 し,
健 側 下 肢 荷 重 量 を100
%と し た 場 合の患 側 下 肢 荷 重 量の割
合 を算
出 し た。
股・
膝 運動 角
度 ピー
ク 値 か ら動
作 中の 関節
運動 範
囲 を算
出 し た。
股・
膝
モー
メン トか ら ピー
ク値
の抽
出と 立ち上 が り動作
中の積
分値
の算
出 を行
い,
体 重
で除
し正 規 化 を実 施
した、
筋 電
図計
測 に お け る被 検 筋
は.
三次
元動 作 解 析
モデル に 合 わ せ,
矢
状 面 上の 運 動 に 関 与 す る筋
で あ る左 右
の大
殿筋
上部線
維,
外 側 広筋
,
大 腿二頭筋
長 頭の計6
ヵ所
と し.
各 筋
の筋 腹 中 央 部
の皮 膚 上
か ら計測
し た。
筋 電位
の 検 出 に は 双 極 表 面 電 極Ag −AgCl
電 極F
ビ トロー
ドF
−150S
(
電極
サ イズ :18
x36
mm,
日 本光
電 社 製)
を用
い,
電 極 間距 離
を2cm
に定
め た。
電 極 抵 抗
に対 す
る皮 膚 表
面の角 質
層・
脂 肪 分の除 去,
アー
チファ ク ト混 入抑 制
の た めの リー
ド線 固定
を行
っ た。
筋
電 図波 形 処
理はSciLab
−5,
3,
3
(
INRIA
に よ り 開 発)
を 用い,
International
Society
ofElectrophysiology
andKinesiology
(
ISEK
)
の基
i9
18)を 基 にButterworth
丘lter
(
10−400
Hz )
にて実 施
し,
全波
整 流 を行
っ た。
その後
,201msec
の移動
平 均 法
を用
い波 形
の平 滑 化
を行
っ た。 立 ち上 がり動 作 中
の筋 活 動
ピー
ク値
を抽
出し,
加
えて筋 活 動 積 分 値
か ら1msec
あ
たり
の平 均 筋 電 位 (
以
.
ド
,
IEMG
) を 求
め た 。 さ ら にIEMG
は左
右の測定
位 置 や皮 膚 表
面の電気 抵 抗
の差 異 を
除去
し,
被 検 筋
の筋 活 動 量
を視 覚 化 す
る た め に %IEMG
を算 出
し た。 %IEMG
は,
体 重
の2
%の重
さの重 錘 を 用い た 特 定の 肢 位(
図3
) に お け る各
被検 筋
の筋 負
荷時
IEMG
を100
%として求
め た。
5.
疼 痛 評 価 方 法立 ち 上 が り動 作 測
定
時の痛 みの程度
・
痛
みの部位 を評
価
し た。
痛
みの程 度
につ い て は,
高 齢 者
の問 で痛
みの強
さの測 定 に おいて 高い信 頼 性 を有
し,
有 効 な測定 方 法
で あ る19)2e)とさ れている 視覚
的アナログス ケー
ル(
Visual
Analogue
Scale
:以 下.
VAS
) を用
い実 施
した
。6.
統 計 解 析 方 法
計
測 実 施 時 に お け る 疼 痛 評 価 結 果 に基
づ き,VAS
で0
の例 を 疼 痛 な し 群,
そ れ 以 外の例 を 疼 痛 あ り群 と分 類 し,
各
結 果の群 間 比 較 を行 っ た。
統 計 手 法
は,
尺度
に応
じ てMann −Whitney
のU
検 定
・
Z2
独 立 性
の検 定 を用
い 実施
した。
統 計 処
理 に はIBM
SPSS
Statistics
20
(
日本
IBM
社 製 ) を用
い,
有 意 水 準
は5
% と し た。結
果
1
.
基 本特 性
の群
問 比較
疼 痛 あ り群
と疼 痛 な
し群
は,
そ れ ぞ れ
11
例 (
男性
4
例
,
女 性
7
例)
,
10
例(
男性
1
例
,
女 性
9
例 )
であ
っ た。年
齢
(
中央 値 (
第
1
四分 位 値
,
第
3
四分 位 値 ))
は,
疼 痛あ り群
8LO
歳 (
71,
0,84,
0
)
,
疼 痛 な
し9e
75
.
0
歳
(
68.
0,
81
.
0
)
であ
っ た。計 測 時
の歩 行 自
立度
は,
全 例で監視
ま たは準 備 (
5
点 )
以 上であり
,
大 き く逸 脱 し た 例 は 認 め N工 工一
Electronlc Llbrary疼 痛 を有 する大 腿 骨 近 位 部 骨折 患 者にお ける立 ち
E.
がり動 作の特徴 231大殿 筋 測 定肢 位 外 側 広 筋 測 定 肢位 大 腿
r.
頭筋
測定
肢 位 図3
止 規 化のた めの 正EMG
測 定肢 位・
大殿 筋 測 定 肢 位 :体 幹 を 台に乗せ,
対 側 下 肢 は床 面に設 置 させ た ま ま測 定 側 股 関節 屈 曲45
°
の 位 置 を保つ.
・
外 側 広筋 :端 座 位にて,
測 定 側 膝 関節 屈 曲60
°
を保つ.
・
大腿二頭筋:台 を両 ヒ肢で支持し
,
対 側下肢は床 而に設 榿させたま ま測 定側膝
関節
屈 曲60
°
の 位 置 を保つ.
表
1
疼 痛 あ り群 (n=
ID
疼 痛 あ り群
・
疼 痛
な し群
に お け る基 本 特性
疼 痛な し群 (n=
10
)P
性 別年
齢 診 断 名 (骨折分類) 術 式 知 的 機 能 〔MMSE
)手
術 か ら計測 まで の期 間歩
行 自立度 非 転 位型 :Garden
stagc I 型 : Replaccment.
CHS
: 男’
罔…4
イ歹9,
4
(‘
性7
伊叮8LO
歳(
71.
0
.
84
.
0
) 大腿 骨 頸 部 骨 折5例 (非 転 イ立型 1例,
車/r’
{立型 4例 〉 大腿骨 転f
’
部 骨 折6
例 (安定 型2
例,
非安定 型4
例) PFNA6
例,
FHR 4例,
CHS
l例28
.
0
点(
24
.
5
,
30
.
0
)
18,
0
日〔16
.
5,
19
.
0) 6.
O点 (5.
0,
6.
0) 男 性1
例,
女性
9
例n
.
s 75.
0歳 (68.
0,
81.
0) n.
s 大腿 骨 頸 部骨 折7
例 n.
s (非 転 位 型4例,
転位 型3
例 ) 大腿 骨 転 子 部骨 折3例 〔安 定型 1例,
非 安 定型 2例)PFNA
3
f
列,
FHR
2
例,
CHS
4
例 n.
s29
.
0
,
点 (26
.
3
.
30
.
O
) n.
s 18.
5H (16.
3
,
19.
8
) n.
s5
,
0
丿焦 (5
.
0
,
6
、
0
) n.
sH
,
転 位型 :Garden stage nl・
IV,
安 定型 :TypeI
の group1・
2
,
非安 定Typc Iのgroup
3
・
4
・
Typc fi.
PFNA ;Proximal femoral nail antirot/atioll.
FHR
:Femoral
Head
Compression
hip screw MMSE :Milli−
Mental State Examirlationなか っ た
。
年 齢
・
診 断 名
・
術 式
・
手 術
か ら計 測
まで の期
間・
計 測 時
の歩 行 自
立度
・
ド肢 関 節 可 動 域
・
下肢 筋 力
に っ い て は,
いず れ も群 間
で有 意 差
を認
めな
かった (
表
L2
)
D疼 痛
あ り群
に お け る疼 痛 発 生 部 位
は,
患
側大 腿
四 頭筋
部
8
例,
患
側ハ ムス ト リングス部
3
例
であ り
,
いず
れも
局 所
の限 局
し た疼 痛
で は な く,
筋
の 走向
に沿
っ た疼 痛
を訴
えて い た。
疼 痛
の程
度 (中央 値
(
第1
四分 位 値
第
3
四分 位 値 )
)
は,
VAS
3
.
2
cm(
2.
3,3.
7
)で
あっ た(
表
3
)
。
2
.
立ち
上 がり動 作 巾
におけ
る各
運動
パ ラ メー
タの群 問
比
較 (
表
4
,
図
4
)
健 側
下肢 荷 重 量
ピー
ク値 を
100
% とした場 合
の患 側
ド肢 荷 重 量
ピー
ク値
の割 合
は,
群 問
にお
い て有 意 差 を認
め な か っ た。巾 央 値 (
第
1
四分 位 値
,
第
3
四 分位 値 )
は,
疼 痛 あ り群
で69,
9
%(
65.
2
,85.
5
)
,
疼 痛 な
し群
で72.
9
%(
68.
5,76.
0
)
であ り
,
いず
れも
100
%以
下 であ
っ た。
COG
前 方移 動
距離
は,
疼 痛
あ り群
で疼
痛 な し 群 と比 べ有 意
に小
さ かっ た。巾 央値
〔第
1
四分 位 値
,
第3
四 分位 値
)は,
疼
痛 あ り群 で22.
7cm
(
19,
3,30.
5
)
,
疼 痛 な
し群
で32.
8cm
(
30.
0,36.
8
) で あっ た。
立 ち
上 が り動 作
中の患 側 股関 節
運動 範 囲
は,
疼 痛 あ り
群で疼痛
な し 群 と 比べ有 意
に小 さ
かっ た.
,中 央値
(
第
1
四 分 位 値,
第
3
四分 位 値 )
は疼 痛 あ り群
93,
7°
(
88.
3,
97
.
4
)
,
疼 痛 な し 群で102
,
2
°
(
96
.
3
,
103
.
8
)
であっ た。
患 側 股 伸 展
モー
メ ント
は,
ピー
ク値
,
積
分値
と も に 疼痛 あ り群
で疼 痛 な し群
と比
べ有 意
に小
さ かっ た。
ピー
ク値
の中央 値 (
第
1
四分 位 値
,
第
3
四 分 位 値 ) は、
筋 痛 あり群
で積 分 値
0.
42Nmfkg
(
0.
36,0.
49
)
,
疼 痛
な し群
でO.
52Nm
/kg
(
0.
47,0.
62
)で
あ
っ た。
積
分値
の中 央値
(第
1
四分 位 値
第
3
四 分 位 値 ) は,
筋 痛 あ り群で積 分 値
0.
09Nm ・
sec/kg
(0,
06,0no
)
,
疼 痛
な し群でO
.
11
Nm
・
sec〆kg
(
O.
09,0.
14
)
であっ た。
患 側膝 伸 展
モー
メ ントは,
ピー
ク 値,
積 分 値 と も に 疼 痛 あ り群で疼 痛 な し群 と比べ有
意 に 大 き かっ た、
,
ピー
クf
直の中央 値 (第
1
四分 位 値
,
第
3
四 分 位値 )
は,
疼痛
あ り 群で0
.
49Nm
・’
kg
(
0.
41
,
0.
64
),
疼 痛 な し 群で0、
38
Nmf
’
kg
(0
.
33
,
0
.
44
)
であ
っ た、
, 積 分 値の中
央値
(第
1
四 分位 値
,
第
3
四分 位 値 )
は,
疼
Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japar ユese Physical Therapy Association232
理 学 療 法 学 第42
巻 第3
号 表2
疼 痛 あ り群
・
疼 痛 な し群 に お け る 関 節 司.
動 域,
筋 力
疼 痛 あ り群 (n=
ll
) 疼 痛な し群 (n=
10
) P 股 関 節 膝関節 大 殿 筋 筋力
外 側 広 筋 筋 力 ハ ム ス ト リングス筋 力 伸 展 可 動 域 の 屈 曲 可 動域 の 伸 展可動域(
り
)
屈 曲 可 動域 (°
) (N) (N
) (N) りリ
リ
リ
リ
リ
リ
リ
ロ
リ
リ
ロ
リ
リ 便 狽 惧 倶 倶 狽 但 但 倶 恨 偵 倶 但 倶 健 思 健 患 健 思 健 患 健 患 健 患 健 患
1
〔}.
O
(5
,
0
,
12
.
5
) 5.
0
(2
.
5
,
10
.
0
) 110.
0
(llO
.
0
,
117
.
5)100
.
0
(100
.
0
,
110
.
0
)0
.
0
(0
.
0
,
α0
)0
.
0
(
−
2
.
5,
0
.
0
)
140.
0 (132.
5,
140.
0)130
.
0
(122
.
5
,
130
.
0
>63
.
3
(
28
.
2
,
9L6
)
37
.
3
(20
、
6
,
102
.
2
)83.
7
(46.
2
,
133.
5)76
.
0
(43
,
5
,
105
.
7
) 57.
7 (46
、
7
,
75
.
5
) 45.
8 (36
.
6
,
59,
3
)16
.
6
−
(lo
.
6
,
13
.
8
)10
.
〔)(
5
.
0
,
13
.
8
)120
.
0
(111
.
3
,
12
〔}.
0
)llO
,
0
(106,
3
,
ll7.
5
)0
.
0
(0
.
O
,
0
.
0
)0
、
0
(
−
5
.
0
,
0
.
0
) 140.
0
(13L3,
14α0
)130
,
0
(130.
0
,
138.
8
)82
.
2
(
57
、
3
、
100
.
8
)60
.
5
〔5L8
,
98
.
5
)96
.
9
(74.
9
,
ll7
.
8
)77
.
8
(55
、
1
,
88
.
9
)60
.
7
(50
.
0
,
71
.
〔))52
・
1
〔39
・
9167
・
1
).
SSSSSSSSSSSSSS nnnnnnnnnnnnnn 中央 値 (第1四 分 位 値,
第3
四分 位 値 )表
3
疼
痛 あ り群
にお ける疼 痛 発
生部 位
と程 度
疼 痛 あ り群 (n=
ll) 疼 痛 発 生 部 位患 側 大 腿 四 頭筋郎
8
例,
.
患
側ハ ム ス ト リングス部3
例 疼 痛の程 度 (VAS ※ )32
cm (2
.
3,
3
.
7) ※VAS
:Vis
し/alAnalog
Scale
,
表
4
立 ち 上 が り動 作
中 に お け る各
運動
パ ラメー
タ の群 間 比 較
疼 痛 あ り群 (n≡
11) 疼 痛 なし群 (n=
10)P
患 側屎
反万
蕗
直
歳
分健
側 比(
t5
’
)
.
.
COG
前 方 移 動 距 離ピー
ク値 (cm ) 股 関 節運動 範囲 (つ 膝 関 節 運 動 範 囲 (°
) 股伸 展モー
メン トピー
ク値(
Nm
fkg
)
膝 伸 展モー
メ ントピー
ク値 (Nm fkg) 股 伸 展モー
メン ト積 分 値 (Nm
・
sec /kg
) 膝 伸 展モー
メ ント積 分 値 (Nm・
sec /kg
) 患 側%IEMG
ピー
ク値 健 側 比 (%) 患 側%IEMG 積 分 値 健 側比 (%) 健 側 患 側 健 側 患側 健 側 患 側 健 側 患 側 健 側 患 側 健 側 患 側 大 殿 筋 外 側 広 筋 大 腿二頭 筋 大 殿筋 外側 広 筋 大 腿二頭 筋69
、
9
(
65
、
2
,
85
.
5
>22
.
7
(
19
.
3
,
30
,
5
)
100、
6 (9ユ.
4,
103.
9)93
、
7
(88
.
3
,
97
.
4)70
.
6
(59
.
0
,
75
,
6
)65
.
7
(60
.
5
,
69
、
6
)0
.
79
(0
.
60
,
0
,
88
)0
.
42
(
0
.
36
,
0
,
49
)
0
.
79 (0
.
66
,
0
,
88
)0
、
49
(0
.
4],
0
.
64
)0
.
16
(0
.
14
,
0
、
22
)0
.
09
(0
.
06
,
0
ユ0
)0
.
22
(0
.
14
,
0
,
26
)0
.
19
(
0
.
11
、
0
.
22
)
77
.
6
(67
.
5
,
96
.
3
)91
.
9
(58
.
2
,
122
.
4
) 103.
9
(76.
1,
1王6.
4)85
.
9
(77
.
O
.
97
.
2
)109
.
5
(143
.
4
,
72
.
3
) ll6.
9
(
80
、
7
,
129
.
5
)
729
(68
.
5
,
76.
0)32
.
8
(
30
.
〔},
36
.
8
)
102.
3(100
.
8,
109
.
8
)
102.
2 (96
.
3,
103.
8)75
.
3
(65
.
9
,
83.
1)7
α7
(63
,
5
,
82.
5) 0.
76 (0、
62,
0.
97)0
.
52
(
0
、
47
,
0
,
62
)0
.
85
(
0
.
66
,
.
89
)
0
.
38(
0.
33,
0.
44)
0
.
18 (0.
16,
0.
20)0
.
ll
(0
.
09
,
0
.
14
)0
.
21
(0
ユ3
,
0
.
32
)0
.
09
(
0
.
07
,
0
ユ2
)
57
.
8
(
49
.
0
,
84
,
6
)53
ユ(
39
ユ,
70
.
0
)
85.
9(
65,
2,
142
.
1)
61
.
6
(53
.
6
,
84
.
5
)64
,
7
(49,
7,
95.
6)8L3
(71
、
1
,
104
.
5
) 聡 ・ 郎 ・ SSS * nnn S S S n*
n * n * S * n S S S nn * n 中央 値 (第1
四分 位 値,
* :P
く0
、
05
第3
四 分 位 値 ) N工 工一
Electronic Library疼 痛を有 する大 腿 骨 近 位 部 骨 折 患 者にお ける 立ち上が り動 作の特 徴
233
To
.
8
嗤
章璽
o
・
4
≧
550L
’、−
0
.
41
屮0
% 立 ち 上 が り動 作
健 側 股 関 節
モー
メ ン トTo
.
8
暈
璽
o
・
4
’
≧
乙
0 ムハ
_
0
.
4
帆1100
% 申 誣 O% 立 ち上 が り動 作患
側 股 関 節
モー
メント 100% 10牟
0
.
6
暈
面0
.
4
〈
∈ろ
0
,
2t
,
丶150 凶 − 申占
6
0
%立
ち
上 がり動 作
健 側 膝 関 節
モー
メント 図4
ml100
% 誣牟
嗤
0・
6 暈璽
o
・
4
≧
乙
0.
2
エ,
、Ol
申占
6
0% 立 ち 上 が り動 作患 側 膝 関 節
モー
メ ント 疼 痛 あ り群・
疼 痛 な し群 にお け る 関節モー
メント婁
恥
。痛 あ り群
で0,
19Nm
・
sec/kg
(
0.
11
,022
)
,
疼 痛 な し群
でO
.
09
Nm
・
sec/kg
(
O.
07,0.
12
)
であ
っ た。健 側 筋 活 動 を
100
% と し た場 合
の患 側 筋 活 動
の割 合
は,
ピー
ク値
,
積 分 値
とも
に患 側 外 側 広 筋
に おい て,
疼
痛 あ り群
で疼 痛 な し群
と比
べ有 意
に大 きか
っ た。 ピー
ク値
の中央 値 (
第
1
四分 位 値
,
第
3
四分 位 値 )
は,
疼 痛
あり群
で9L9
%(
58
.
2
,
122
.
4
)
,
疼 痛 な し群
で53.
1
%(
39,
1,
70
.
0
)
であ
っ た。積 分 値
の中央 値
(
第
1
四分 位 値
,
第
3
四分 位 値 )
は疼 痛 あ り群
で1095
%(
72
.
3,
143
.
4
)
,
疼 痛
な し群
で64,
7
%(
49
.
7.95,
6
)
であ
った
。考
察
今
回の対 象
21
例の内
,ll
例 に疼 痛
を 認 め ていた。
疼痛 発
生部 位
は,
患 側 大 腿
四頭 筋 部 (
8
例 )
,
患 側
ハ ム ス トリ ング ス部 (
3
例 )
で,
中 央 値
でVAS
3
.
2
cm の疼 痛
を認
めてい た。疼 痛 評 価
から
,
これ ら をす
べて筋 痛
であ
る と 規定 す
ること は困 難
であ
る。 し か し,
計 測 実 施 時 期
であ
る術 後
2
〜
3
週
は,
回復 期
の疼 痛
であ
る筋 痛
の好 発
時 期
であ り
,
発 生 部 位
から
み ても筋 痛
の可能 性
が高
い と考 え
られ
る。今 回
の対 象
に認 め た 疼 痛 を筋 痛 と仮 定 す
る と,
臨 床
上認
め る こ とが多
い 3)4)11)という点
と好 発
部位
3)4 )で筋 痛
におけ
る過去
の報 告
と一
致 し
てい た。基 本
特
性の群間
比較
では,
いず
れも群 間
に有 意 差
を認
め な かっ た が,
診
断名
では,
大腿骨 転 子 部 骨 折
の割 合
は疼 痛 あ り群
で11
例 中
5
例,
疼 痛
な し群
で10
例 中3
例 であ り
,
疼 痛 あ り群
で は大 腿 骨 転 子 部 骨 折
例 が多
い傾 向
が 示 さ れ た。
大 腿 骨 転 子 部 骨 折 例 で は,
関 節 包外
骨 折であ り,
骨 折 部 位
に 深 部痛
の侵害 受
容 器 で あ る自
由 神 経 終 末 が多 く存 在 す
る骨 膜 を有 す
るた
め,
大 腿 骨 頸 部骨 折 と
比 べ術 後 疼 痛
が 強い とさ れ てい る21)。
ま た,
大 腿 骨 頸 部骨 折
の分 類
に おい て転 位 型
に分 類
さ れ た 例 は,
疼 痛
あ り群
で5
例 中
4
例
,
疼 痛 な
し群
で7
例 中
3
例であ り,
疼 痛
あ り群
で は転位
型 に 分 類 さ れ る 例 が多
い傾向
が 示 さ れ た。
転 位 型
で はCHS
(
Compression
hip
screw)
と 比べ術 時 侵 襲
の大
きいFHR
(
Femoral
Head
Replacement )
が施 行
さ れ ているこ と か ら,
術 後 疼 痛 は 生 じ や すい。
本研 究
で は,
急性 期
に おけ
る疼 痛
につ い ては着 目
して いな
い が,
術 後 急 性 期
の疼
痛の程 度 が 後の回復
期に生 じる筋
痛 発
生 に 関与
し ているこ とが 疑 わ れ た。
立 ち上
がり動 作 中
の患
側 下 肢荷
重 量 は,
疼 痛 あり
,
なし
の群 間
に は有 意 差 を 認
めな
かっ た。
健 側 荷 重 量
を100
% と し た と きの 患 側 荷 重 量の 中 央 値 は 両 群 と もに100
% 以 下 で あり
,
健 側 下 肢 に依 存
し た 立 ち 上 がり動 作
と な
っ ていた。
し か し,
群間
に有 意
差 を認
めな
いため,
健 側 下 肢 での代 償 運 動 は 回 復 期の疼 痛 発 生に関与
し ないも
のと考 え
ら れ た。
立 ち
.
E
がり動 作 中
の 関節
運動 範
囲では,
疼痛
あり
群に おけ
る屈 伸 方 向
の患 側
股 関節
運動 範
囲 で 疼 痛 な し群 と 比Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japar ユese Physlcal Therapy Assoclatlon234
理 学 療 法 学 第42
巻 第3号 べ有 意
に 小 さい結
果と
なっ ていた。
立 ち
上 がり動作 時
の関節
運動 範 囲
では,
両 群 と も健 側 と比べ患 側 で 小 さい傾向
を示
して いた が,
疼 痛 あ り
群 に おけ
る屈 伸 方 向
の股関
節 運動 範 囲
は特
に低 下
を認
めて いた。
これ は,
障害
部
位
であ
る股
関節
の運 動
を抑
えよう
とした結 果
であ
る と考 察
す
る。体 幹前
傾角 度
の低
F
により
,
身体 重 心
は後 方
に残
る と され てい る 22>23)。 立ち
上 がり動 作 中
のCOG
最
大前 方
移 動 距 離
につ い て は,
疼 痛 な し群
と比
べ疼 痛 あ り群
で有
意 に 小 さい値 と なっ てい た。
これ は,
患
側 股 関節
運動 範
囲
の低
下 に伴
う
も
の と考
え
ら れ,
過去
の報 告
22)23) と一
致
し ていた。
ま た
,
体 幹 前
傾角
度の減 少 は 膝 伸 展モー
メ ン トの 増 大を
生じ
る とさ
れてい る22)23)、
疼 痛
あり
群 に お け る 関 節 モー
メ ン トピー
ク値
・
積 分 値
は,
いず
れ も患 側 股伸
展 モー
メ ン トで疼 痛
な し群 と 比べ有
意に小 さ く なっ ており
,
患 側 膝 伸 展
モー
メ ント
で疼 痛 な し群
と比
べ有 意
に大
き
い結 果
とな
っ てい た。Winter
ら 24)は,
下 肢
の3
つ の関
節
に おけ
る 関節
モー
メ ン トの総和
は一
定
のパ ター
ン を示 す
と述べ て お り,
同 側 下肢
の各
関節
は 互い に影 響
し合
い補
い合
いな が ら動 作 を遂 行
し てい ることを示
し てい る。ま
た,
山 本
ら 25) は,
下 肢 障 害 者
の 運動
メ カニ ズム の解 明
に は,
障害 部位
では ない他
の関節
に よ る代 償
を含
め検 討 す
る こ と が 必 要 と述べ てい る。
これ ら を加
味 す る と,
障 害 部位
であ
る股 関節
に か か る負 荷
を膝 関 節
が 補っ ている という代 償
運動
が考
え ら れ た。
膝 伸 展
モー
メ ン ト を 生 成 す る た め に は,
膝伸
展筋
の筋
力 発 揮
が求
め ら れ る。
立 ち 上 がり動
作 巾の筋
活 動 量で は,
健 側 筋 活 動
量 を100
% と し た場 合
の患
側筋 活 動 量
に おいて,
筋 活 動
ピー
ク値
・
筋 活 動 積
分値
のいず
れ に おい ても
,
外 側 広 筋
のみ疼 痛 あ り群
で疼 痛 な
し群
と 比べ有 意
に大 き くな
っ ていた。 これ は,
疼 痛 あ り
群 に おけ
る お もな 疼 痛 発
生部 位
であ
る患側 大 腿
四頭 筋 部
と一
致
していた
。ま
た,
群 問
に有 意 差
は認
めな
かっ たも
の の,
中 央 値
をみ ると患 側
ハ ム ス ト リングス に おい て も疼 痛
あ り群 で活 動
量 が 大 きい 傾向
を 認 め た。
膝
関節 伸 展 運 動 時
に患 側
ハ ムストリ
ン グス は,
主動 作 筋
であ
る大 腿
四頭 筋
の拮 抗
筋
であ り
,
防 御 性 収 縮
と して同 時 収
縮 を 生 じ てい ること が考 え
られた。積 極 的
な荷 重 練 習
が展 開 され
る術 後
2
〜
3
週
の時 期
に疼 痛 を認
める例
の立ち
上 がり動 作
の特 徴
と し て,
患 側 股 関節
の運動 を 抑 え
るため に股 関 節
運動 範 囲
は低
下 し,
COG
前 方 移 動 距 離
お よ び股 伸 展
モー
メ ン トの低
下 を 生 み,
膝 伸 展
モー
メ ン トは増 大
し,
患 側外
側広 筋
の筋 活 動
が増 大 す
るといっ た特 徴
を認
め た。
こ の筋 活 動 増 大
は,
疼痛発
生 部 位 と
一
致 し
てお り
,
回復 期
に 生 じ る筋 痛
の誘
因
と なる可能性
が考
え
ら れた
。疼 痛
あり
群 に お け る 立 ち 上 が り動 作
の特 徴
か ら考
え ら れる大 腿 骨 近 位 部 骨 折 患 者
におけ
る回復 期
に 生 じ る筋 痛
発
生 予防
および軽 減 方 法
とし
て は,
患 側 股 関 節
運動
範
囲
の拡 大 が挙 げ
ら れ る。 これ に より
,
抗 重 力 運 動 時
の膝 関
節
に か か る負 担
が軽 減
され
,
疼 痛
の軽 減 が 予 測 さ れ
る。 股 関 節 屈 曲・
伸 展 可 動 域,
股 関 節伸
展筋 力
は群
聞に有 意
差 を認
め ない こ と か ら,
これ ら身 体 機 能 を動 作 上 活 か
せ て い ない という
点
が 問 題であ
る。
つま り
,
大 腿 骨 近 位 部
骨 折 患 者の回 復 期の 疼 痛 軽 減の た め に は,
身 体 機 能
の向
上で は なく
,
動 作 時
の代 償
運動
と その際
の代 償 的 筋 活 動
を抑 制
し て いく
こ とが より
重要
という
こ とがう
か がえ
る。疼 痛
を 生 じる動 作
の繰 り返 し は,
後の慢 性 痛へ の移行 を助 長 す
ること とな り得
る。動 作 練 習 時
に疼
痛
を生
じ た 場 合は,
単
に動 作 練
習量
や患 側 荷
重 量 を求
める の で は なく
,
その発
生要 因
とな
る動 作 様 式
に着
目 し た 臨床
対 応 が 必 要 で あ ろう
。本 研 究の限 界 と し て
,
症 例数
の少
な さ が挙 げ
られ る。特
に診 断 名
と術 式
の群間
比較
を行
う
に は対 象 数
が少 な
く
,
統 計
的有
意 差 を求
め る に は 限 界 があ り
,
今 後
の研 究
課 題
と なっ た。
ま た,
筋 活 動 量 分 析 に お け る 正 規 化手 法
とし
て用
い た %IEMG
手 法
は,
未
だ一
般 的
に確
立 さ れ て いな
い手 法
でもあ り
,
筋 力 指 標
を示 す 値
と し ての妥 当性
につ い て,
検 証 す
るべき課 題
が残
る と考
え ら れ た。
動 作 開始 肢 位
の統
一
等
の配 慮
は行
っ てい るが
,
今 回使 用
し た動 作 分 析
モ デル は,
矢 状 面
上の身 体
ア ライメ ン ト変 化
を 捉 えるも
の であ り
,
下肢
関節
の回旋 要 素
につ いて は 把 握 が でき
ていな
い 。 よっ て,
動 作
におけ
るす
べての身 体
運動
に検 索 を加 え
る には至
っ てお らず
,
さ ら な る検
討
が 必 要と考 え
ら れ た。本 研 究
で は,
筋 痛 好 発 時
期におい て疼痛 を認
めた 大 腿 骨 近 位 部 骨 折 患 者
の抗 重 力
運動
の特 徴
が 明 ら かと な
った も
の であ り
,
筋 痛 発
生原 因
に言 及 す
る こ と は で き てい ない。
今 後
は今
回の結 果
を踏
ま え,
筋 痛 発
生 原 因 に 対す
る追 加 検 討
や 予防お
よ び軽 減 方 法
の具 体 策
の検
証等
,
より臨床
に直 結 す
る検 討 を行
っ ていき
たい。結
論
積 極 的 な荷 重 練 習
が展 開
さ れ る術 後
2 〜3
週の時 期
に疼 痛 を
生じ てい る例
で は,
患 側 股関 節 機
能 低 下 に 対 す る患 側 膝 関 節 機 能
によ る代 償
が確 認
さ れ,
回復 期
に 生 じ る筋 痛 発 生
へ の関 与 が 示 唆 され
た。 こ の筋 痛 発
生 に対 す
る評 価 視 点
を見
い だすこ と は,
理学 療 法 介 入
のエ ビデ ンスを構 築 す
るう え
で意 義 深
い こ とであ
る と考
え る。
文 献1)Morita Y
,
EndoN
,
e‘砿The
incidence
of cervical andtrochanteric fractures of the proximal
femur
in
1999
in
Niigata prefecture
,
Japan
.
J
Bone
Miner
Metab
.
2002
;20: