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慢性心不全に対する運動療法の最前線

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 342 43 巻第 4 号 342 ∼ 348 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 4 号. 理学療法トピックス シリーズ 「内部障害に対する運動療法の最前線」. *. 連載第 1 回 慢性心不全に対する運動療法の最前線. 神谷健太郎 1). 5)6). 定義が示されている(表 1). はじめに. 。また,LVEF が 40 ∼. 49%の患者層がいままでの多くの臨床試験では対象に含.  人口の高齢化に伴い,日本のみならず先進国において 1)2). まれていないことから,2016 年の ESC ガイドラインで. 。心不全は加齢に伴. はこれらの患者層を HFmrEF(heart failure with mid-. い増加する症候群であり,米国の疫学研究によると 40. range ejection fraction)と定義し,さらなる研究の必. 歳以上の成人の 20%が死亡するまでに心不全を発症す. 要性を提唱している. 慢性心不全患者が増加している. 3). 6). 。HFpEF か HFrEF かを認識す. 。本稿では心不全の定義や病態に関する知識を整理. る意義は病態の理解だけでなく,治療法の選択において. するとともに,運動療法のエビデンスについて最近の知. も重要な意義をもつ。薬物療法やデバイス治療の有効性. 見を交えて紹介する。. を示したエビデンスの多くは HFrEF を中心とした臨床. る. 研究の結果である。. 定  義  慢性心不全は,慢性の心筋障害により心臓のポンプ機. 疫学と予後. 能が低下し,末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの.  日本人を対象とした前向きの登録観察研究である. 血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない状態であ. JCARE-CARD からの報告では,心不全の増悪によって. り,肺,体静脈系または両系にうっ血をきたし日常生活. 入院した患者の 1 年以内の再入院率は HFrEF 患者では. に障害を生じた病態と定義される. 4). 。労作時呼吸困難,. 23.7%,HFpEF 患者では 25.7%,全死亡率はそれぞれ 7). ,実に,4 人に 1 人の. 息切れ,尿量減少,四肢の浮腫,肝腫大等の症状の出現. 8.9%,11.6%と報告されており. により QOL の低下が生じ,日常生活が著しく障害され. 割合で 1 年以内に再増悪で入院してくることになる。特. る。この定義からわかるように,心不全による症状は,. に,退院後 3 ∼ 4 ヵ月の間に再入院イベントの発生率が. ポンプが不全に陥って末梢組織に十分な血液がいきわた. 高く. らない“低灌流”症状と“うっ血”症状に大別される(図. る(図 2)。在院日数の短縮化が進む中,いかに再入院. 1)。心不全の原因疾患としては,虚血性心疾患と高血圧. を予防するかが重要なアウトカムとなっている。心不全. がもっとも多く,拡張型心筋症や弁膜症がそれに続く。. の予後規定因子に関しては数多くの報告があり,おもに.  従来,心不全というと左室駆出率(以下,LVEF)が. 1)心臓に関連するもの,2)合併症に関連するもの,3). 低下した患者が主体であると考えられていたが,LVEF. 治療に関連するもの,4)運動や認知機能に関連するも. が保たれた心不全患者が 30 ∼ 50%を占めることが明ら. のに大別される。表 2 におもな心不全の予後悪化因子を. かになってきた. 5). 。2013 年の ACC/AHA および 2016. 年の ESC ガイドラインでは LVEF が低下した心不全 (heart failure with reduced ejection fraction: 以 下,. 示す. 8). vulnerable phase(不安定な時期)とも称され. 9‒11). 。. フレイル・サルコペニアと循環器疾患. HFrEF)と LVEF が保持された心不全(heart failure.  近年,急性期治療の進歩と患者層の高齢化に伴い,循. with preserved ejection fraction: 以 下,HFpEF) の. 環器疾患患者におけるフレイルやサルコペニアを有する 患者の割合が増加し,その対応がもっとも重要な課題と. *. Current Topics in Exercise Training for Heart Failure 1)北里大学病院リハビリテーション部 (〒 252‒0375 神奈川県相模原市南区北里 1‒15‒1) Kentaro Kamiya, PT: Department of Rehabilitation, Kitasato University Hospital キーワード:慢性心不全,運動療法,運動耐容能. して位置づけられている。手術や心臓カテーテルなどの 侵襲的な治療を施行するか否かにおいても,その治療成 績にフレイルやサルコペニア合併の有無が関与するた め,治療適応やそのリスク層別化の重要な判断材料にな.

(2) 慢性心不全に対する運動療法の最前線. 343. 図 1 心不全の概念図. 表 1 欧米のガイドラインにおける左室駆出率による心不全の分類と基準値 名称. ACC/AHA 2013 5). ESC 2016 6). HFpEF. LVEF ≥ 50%. LVEF ≥ 50% LVEF < 40%. HFrEF. LVEF ≤ 40%. HFpEF, borderline. LVEF: 41 ‒ 49%. HFpEF, improved. 以前は HFrEF であったが LVEF > 40% に改善 LVEF 40 ‒ 49%. HFmrEF. HFpEF, heart failure with preserved ejection fraction; HFrEF, heart failure with reduced ejection fraction; HFmrEF, heart failure with mid-range ejection fraction; LVEF, left ventricular ejection fraction. 表 2 慢性心不全の予後不良因子 • 高齢. • 貧血. • 心不全入院の既往. • 高尿酸血症. • BNP 高値. • 低体重. • 低ナトリウム血症. • 低筋量. • 慢性腎臓病. • 低運動機能. • 糖尿病. • β 遮断薬不使用. • COPD. • ACEI/ARB 不使用. BNP:B 型ナトリウム利尿ペプチド,COPD:慢性閉 塞性肺疾患,ACEI:アンジオテンシン変換酵素阻害薬, ARB:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬 図 2 心不全患者の退院後の再入院時期と頻度. る。理学療法士は,ある一時点での運動機能,運動耐容.  また,上腕の周囲長と予後に関しても興味深い結果が. 能や認知機能の客観的な評価結果のみでなく,繰り返し. 得られている。肥満は重要な心血管疾患発症の危険因子. 入院の患者であれば過去の結果と比較して心不全の長期. となるが,一旦,心血管疾患に罹患すると body mass. 経過に伴う変化をハートチームカンファレンスに提示す. index(以下,BMI)が高いほうが予後が良好なことが. ることが重要と考えられる。. 知られており,これをオベシティパラドックスという。.  筆者らの検討では,1,314 例の虚血性心疾患患者に対. オベシティの指標として一般的に BMI が用いられるが,. して等尺性膝伸展筋力を測定し予後との関連を検討した. 筆者らはコストや時間をかけずに簡便に測定可能な上腕. ところ,筋力の低下は既存の冠危険因子の影響を調整し. 周囲長と腹囲をそれぞれ筋量と脂肪量の代替指標とし. たうえでもなお,全死亡および心血管死亡の独立した予. て測定し,心不全患者 570 名で予後との関連を検討し. 12). 13). 測因子であった(図 3-A) 。また,筋力と予後の関係. た. 。その結果,腹囲は BMI に付加的な予後予測能を. は,様々なカテゴリー別で解析しても同様の傾向であっ. 有しなかったが,上腕周囲長は BMI に付加的な予後予. た(図 3-B) 。. 測能を有していた(図 4-A)。加えて,様々な患者層に.

(3) 344. 理学療法学 第 43 巻第 4 号. 図 3 虚血性心疾患患者における下肢筋力と生命予後. 図 4 心不全患者における上腕周囲長,腹囲,BMI の予後予測能. おいて層別解析を施行しても腹囲と予後の関連は一定し. ˙ O2 は最高運動時の心拍数×一回拍出量×動静脈 peak V. たものではなかったが,上腕周囲長は一貫して予後との. 酸素含有量較差 [C(a-v)o2] によって求められる。心不全. 関連を認めた(図 4-B)。これらの結果は,筋量を保持. 患者の運動耐容能は心機能の低下が主因と考えられがち. するための運動療法や栄養療法の重要性を示唆するもの. だが,様々な研究において骨格筋機能が重要な規定因子. と考えている。. であることがわかってきている。Lee らは,1979 年に. 心不全患者の運動耐容能規定因子  運動耐容能の指標には大きく分けて心肺運動負荷試験 (以下,CPX)によって求められる最高酸素摂取量(peak ˙ O2)と 6 分間歩行距離がある。Fick の式において, V. 心筋梗塞後の心不全患者 18 名に運動療法を行い,心機 能の悪化を認めることなく運動耐容能や NYHA クラス の改善を認めたと報告した. 14). 。驚くべきことに,この. 初期の報告ですでに運動負荷試験や心臓カテーテル検査 を繰り返し評価し,運動耐容能の改善は心機能の改善に.

(4) 慢性心不全に対する運動療法の最前線. 345. 図 5 心疾患患者における目標活動水準と筋力値の目安. 依存しないことをすでに指摘している。その後,1980 ˙ O2 が安静 年代前半には運動耐容能の指標である peak V 15). のモニタリングを CPX 中に施行し,運動耐容能の制 18). 1992 年には Jondeau らが 24 名の心不全患者と 7 名の健. 。その報告では,酸素 ˙ O2 の 相 関 は, 利 用 能 の 指 標 で あ る C(a-v)O2 と peak V. 常者に下肢エルゴメーター単独で CPX を行った条件と. HFpEF,HFrEF ともに健常者と比較して高値を示すこ. 下肢+上肢エルゴメーターで CPX を行った条件を比較 ˙ O2 が< 15 ml/kg/min に低下している低運 し,peak V. と,HFrEF では最大一回拍出量と運動耐容能に関連を. 時の左室駆出率では推定できないことが報告された. 。. 不全患者と 24 名の健常者を対象に侵襲的な血行動態. 動耐容能の心不全患者では上肢エルゴメーターを加える ˙ O2 が上昇することを示した 16)。本 ことにより peak V. 限因子について報告している. 認めるが HFpEF では認めないこと,HFpEF 患者にお いては C(a-v)O2 がより大きく低下しており,HFpEF の 40%の患者は酸素利用能の低下が運動耐容能の主要な制. ˙ O2 が骨格筋での酸素利用 研究は,心不全患者の peak V. 限因子となっていることが示されている。高齢心疾患患. 能に大きく影響を受けていることを示した象徴的な研究. 者に多く,増加傾向の HFpEF 患者においては,より骨. である。これらの研究を背景に,心不全患者の運動耐容. 格筋の機能維持が重要であることを示唆する研究結果で. 能向上には心臓に介入するだけでなく,骨格筋に介入す. あり,運動療法の重要性を示していると考えられる。. る重要性が認識されるようになった。.  最大運動時に心拍数が十分に上がらないことを変時性. 運動耐容能の制限因子に関する最近の報告. 不全(Chronotropic Incompetence)といい,心不全患 者における重要な運動耐容能の制限因子であると報告さ.  筆者らは,虚血性心疾患患者 621 名において運動耐容. れてきた。しかし,最近,重症心不全患者に対してふた. 能と膝伸展筋力の関連を検討し,5,7,10 METs の運. つのクロスオーバ試験を行い,運動時の最高心拍数を機 ˙ O2 は上昇せず,また,機械 械的に上昇させても peak V. 動耐容能を獲得するうえで必要な筋力水準について報 17) 告した(図 5) 。これらの筋力水準は,運動耐容能の. ˙ O2 は低下 的かつ薬物的に心拍数を低下させても peak V. 制限因子として下肢筋力の関与の程度を推察するうえで. しないという報告が JACC に掲載された. の目安になり,また,筋力測定結果のフィードバックの. 心不全患者における末梢の酸素利用能の重要性を再認識. 際に患者に目標値を提示することでトレーニングに対す. させるものと思われる。. る意欲を高めるうえでも有用と考えられる。下肢筋力 は,Fick の式に直接あてはまる因子ではないが,高い. 19). 。本報告は,. 心不全に対する運動療法. 酸素利用能を達成するうえでは,ミトコンドリア機能や.  心不全に対する運動療法の対象となる患者を,4 つの. 量などの代謝要因に加えて,ある程度の強度の運動負荷. カテゴリーに分けて図 6 に示した。運動療法のエビデ. に耐えうる機械的要因が関与している。急性期の脊髄損. ンスがもっとも蓄積されているのは心不全が 8 ∼ 12 週. 傷の例を考えれば容易に理解できるが,両下肢が完全に. 間安定している HFrEF 患者である。最近,HFpEF 患. 麻痺した患者では,心機能,下肢筋量,ミトコンドリア. 者においても運動耐容能や QOL の改善効果が報告され. 機能や量が保持されていても,筋出力が上がらなければ ˙ O2 は上昇しない。神経・筋要因を含め,筋出力の多 V. てきている. 的な運動療法はないが,高齢女性が多い,合併症の保有. 寡が運動耐容能の制限因子のひとつとなることは当然で. 数が多い,合併症の管理状況が予後に影響することを考. あり,フレイルやサルコペニアを合併した高齢患者では. 慮すると,合併症に対する疾病管理の重要性が高いこと. よりその影響が強くなると考えられる。. が示唆される。また,前述のように,HFpEF 患者にお.  Dhakal ら は,HFpEF 患 者 48 名 を 含 む 104 名 の 心. いては酸素利用能が運動耐容能のより強い制限因子と. 20‒22). 。現在のところ,HFpEF 患者に特異.

(5) 346. 理学療法学 第 43 巻第 4 号. 命予後や心事故発生率に関するデータは不十分である。 2016 年の ESC 心血管疾患予防ガイドラインでは,慢性 心不全患者における高強度インターバルトレーニングは 対象を選択すれば適応可能できる可能性があることが示 されている. 25). 。筆者らの経験では,中高年の心不全患. 者で運動耐容能も保たれており嫌気性代謝閾値強度で Borg 指数が≦ 11 を示すような患者においては,適応で きる可能性があると思われる。いずれにしろ,運動中の 血圧低下がないこと,不整脈の増加がないこと,運動後 に過剰な疲労感がないことなどを確認し,患者自身が運 動に対して嫌悪感を抱くような強度でないことがアドヒ アランスを保つうえで重要である。 図 6 心不全患者に対する運動療法のエビデンス RCT,無作為化比較対照試験. レジスタンストレーニング  心不全患者に対する中強度のレジスタンストレーニ ングは,心機能や血行動態に悪影響を及ぼすことなく,. なっていることから 18),有酸素運動を主体としながら. 持久力,筋力や QOL の改善に有効である. 26). も,高齢患者に多い筋力低下や他の運動機能低下に対す. 過去の心不全患者を対象としたレジスタンストレーニ. るアプローチも重要と考えられる。いずれにしろ,心不. ングの RCT は対象年齢が 50 ∼ 70 歳の心不全患者に 1. 全患者は運動療法を施行するうえでももっともリスクの. repetition maximum の 60 ∼ 80%強度のマシンを用い. 高い患者層であることを念頭に置き,運動療法に関連す. たサーキットウェイトトレーニングを行っている報告が. る心イベントの回避には十分にリスク管理をする必要が. 主体である。しかし,通常の有酸素運動に加えて,週 2. ある。. ∼ 3 回の外来監視型レジスタンストレーニングが実施可. 。しかし,. 能な高齢心不全患者はそれほど多くない。また,これ. 有酸素運動. らの研究で用いられているようなサーキットトレーニン.  心不全患者に推奨される運動として,歩行や自転車エ. グ機器は本邦の日常臨床に十分普及しているとはいい難. ルゴメーターなどの有酸素運動が推奨される。開始初期. く,これらの実験的な研究では,対象症例数は多くても. は自覚症状や身体所見を目安に 1 ヵ月程度かけて時間と. 30 例程度の RCT である。実臨床においては,自重やセ. 強度を徐々に漸増し,安定期では,最高酸素摂取量の. ラバンドを用いたトレーニングが施行されることが多. 40 ∼ 60%,嫌気性代謝閾値レベル,または Borg 指数. い。重要なことは,定期的に筋力や歩行速度,6 分間歩. 23). 。ただし,運動中. 行距離などを測定して,個々の症例で介入に見合った改. には,血中カテコラミン濃度の上昇や交感神経活動の亢. 善が認められているかを確認し,随時介入の見直しをす. 進などが,運動直後には血管拡張と急激な静脈灌流の低. ることである。. 11 ∼ 13 の運動強度が推奨される. 下による血圧低下が生じ,心筋虚血や心室性期外収縮が 発生するリスクがある。これらの反応は,十分なウォー. その他の運動療法. ムアップとクールダウン,適切な運動処方とモニタリン.   神 経 筋 電 気 刺 激 療 法:NYHA Ⅱ ∼ Ⅳ の HFrEF 患. グによってそのリスクを軽減することができる。. 者 301 名を対象とした 10 の無作為化比較対象試験をメ タ解析した報告によると,神経筋電気刺激療法はコン ˙ O2,6 分間歩行距離, トロール群と比較して,peak V. インターバルトレーニング  インターバルトレーニングは,運動と安静,または,. QOL を改善させることが示されている。一方,神経筋. 強度の異なる運動を交互に繰り返す運動療法手段のひと つである。従来はアスリートに用いられてきた高強度イ. 電気刺激療法と有酸素運動介入を比較したメタ解析で ˙ O2 は有酸素運動群で改善が大きく,6 分間 は,peak V. ンターバルトレーニングが,慢性心不全患者においても. 歩行距離および QOL の改善には差がなかった。神経筋. 有効であるという試験が報告されている. 24). 。また,メ. 電気刺激療法は NYHA Ⅳを含むより重症度の高い心 27). ,十. タアナリシスにおいても,運動処方強度依存性に運動耐. 不全患者に有効性が高いことが指摘されており. 容能の改善が認められることが報告されている。しか. 分な運動療法が困難な症例に対する介入手段のひとつ. し,心不全に対する高強度インターバルトレーニングの. になると考えられている. 介入試験対象患者は合計しても 100 例程度に過ぎず,生. 下した重症 COPD 患者においても,近年,NMES を用. 28). 。同様に,運動耐容能が低.

(6) 慢性心不全に対する運動療法の最前線. いた良好な試験結果が相次いで報告されており 29)30), Lancet Respiratory Medicine に掲載された二重盲検試 験は注目に値する. 30). 。デバイスの進歩や低価格化が進. めば更なる普及が期待できる。  吸気筋トレーニング:NYHA Ⅱ∼Ⅲの HFrEF 患者 287 名を対象とした 11 の無作為化比較対象試験のメタ 解析によると,吸気筋トレーニングはコントロール群 ˙ O2,6 分間歩行距離,QOL,吸気 と比較して,peak V ˙ E/VCO2 slope を改善させることが示されてい 筋力,V. る. 31). 。また,その後に報告された通常の運動療法に吸. 気筋トレーニングを追加した介入試験でも吸気筋力や 呼吸困難スケール,QOL の改善に有効であったとされ ている. 32). 。本トレーニングは特に,吸気筋力が低下し. た患者に有効性が高いと考えられている. 33). 。2016 年の. ESC 心血管疾患予防ガイドラインでは,慢性心不全患 者に対して吸気トレーニングの導入を考慮すべきである ことが明記されている. 25). 。. ま と め  慢性心不全の病態,疫学から運動耐容能の制限因子と 運動療法について中心に概説した。心不全に対する運動 療法のエビデンスは 1990 年代から急速に増加している が,実臨床の患者は更なる高齢化によってエビデンスと のギャップが生じている。今後,フレイルやサルコペニ アを合併した心不全患者に対する患者負担や医療経済的 負担の少ない介入手法の確立は,今現在の臨床において 必要な課題であり急務である。 文  献 1)眞茅みゆき,筒井 裕:心不全患者数は世界的に増加して いる.Pharma Medica.2013; 31: 9‒14. 2)Shimokawa H, Miura M, et al.: Heart failure as a general pandemic in Asia. 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