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女子大学ビジネス系学部学生の経済分野に関する意識と経済教育 : 椙山女学園大学現代マネジメント学部の場合(投稿原稿(査読付))

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176 シンポジウム 論 考 投稿原稿 会務報告 大会報告

Ⅰ.はじめに

 少子化やグローバル化が進み,それに伴って女性の 社会でのより一層の活躍が期待されている。高度経済 成長期の女子教育は補助的な業務での就労や家庭にお いて専業主婦となることを前提としていたが,現在の 女子教育では,グローバルに活躍できる人材やリー ダーとなる人材の育成が求められている。  人材育成において経済に関する知識を身につけるこ とは重要な課題である。本研究では社会・経済構造が 変化したことで女子教育の位置付けがどのように変 わったかを踏まえて,それに対応したビジネス系学部 での経済教育の展開について考察する。そのために女 子大学生へのアンケート調査を行うことで経済に関す る学習の状況を分析し,自己責任が求められる社会の 中で自立して活躍できる人材の育成のために必要な経 済的知識と,その教育のためのカリキュラムやアク ティブラーニングの活用について考察する。

Ⅱ.少子化による社会経済構造の変化と

女子教育の変遷

 少子化により社会・経済構造は大きく変化し,高度 経済成長期のような人口増加とそれに伴う経済成長か ら,人口減少による国内市場の縮小へ転換してい る。1)また,長期的な円高が続いたことによってグ ローバル化が進み,海外の企業との厳しい国際競争に さらされたことで,直接投資による企業の生産拠点の 海外移転や海外での人材の雇用が進んでいる。  高度経済成長期は女性の就労は結婚によって退職す ることが前提であり,長期的な雇用を前提としていな かった。そのため女子教育は一般事務や秘書のような 補助的な業務に従事することや家庭に入り専業主婦と なることを前提としていた。そのような女子高等教育 は主に短期大学において行われていた。  1980 年代に入り,男女雇用機会均等法が改正され たことを契機に女性が生涯働き続けることが可能とな り,それに伴って女子教育は前述の補助的な業務や専 業主婦の育成を目的とした教育内容から転換し,生涯 を通じて働けるような,自立した女性の育成が求めら れるようになった。そのため女子の進学率は年々上昇 し,短期大学を主流とした教育から大学での教育へ移 行し,2013 年現在は大学での女子学生の比率は 40 パーセントを超えている。また,専門分野も家政系か ら社会科学系等の幅広い分野へ移行している(詳細は 3 章にて述べる)。  2010 年代に入り,男女雇用機会均等法の恩恵を受 けた女性が 40 代となり,管理職にも登用されるよう になってきた。2012 年 12 月に発足した第二次安倍内 閣においても女性を重視する方針が示され,企業の女 性役員の増加等の政策が進められている。既にアジア も含めた諸外国では国のリーダーとなる女性が誕生し ている。グローバル化が進んだことで,日本において もグローバル人材,その中でもリーダーとなる女性人 材の育成が求められている。  今後は少子化により労働力が減少することで,女性 の労働力の重要性がさらに増していくことになる。  しかしながら,男女の性差による役割分担や学歴差は 縮小しているが,職業においては依然として性差が 残っている。そのため M 字型カーブは緩和してきて はいるが,結婚・出産を機に退職して家庭に入る女性 も多い。高学歴の女性という貴重な人的資源を労働力 として活用できていないことは,日本経済だけでなく グローバル化が進む世界経済にとっても損失となる。  女子労働に関しては非正規雇用が多いことも問題と して指摘できる。結婚や出産を機に退職した女性が正

Survey Report

The Journal of

Economic Education No.33, September, 2014

調査報告

女子大学ビジネス系学部学生の

経済分野に関する意識と経済教育

─椙山女学園大学現代マネジメント学部の場合─

Economic Consciousness of the Business Learning Students in a Women’s University and Economic Education : The Case Study of Sugiyama Jogakuen University, School of Modern Management

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規雇用に復職することが困難なために,非正規雇用に 従事せざるを得ない。その背景には,継続的な就業が 困難であるために職業に関する知識が蓄積できず,子 育てが一段落した段階で復職する際に非正規雇用にな らざるを得ないことがある。そのためキャリアの継続 やキャリアアップのためのリカレント教育として社会 人向けの大学院が増えている。2),3)

Ⅲ.ビジネス系学部と女子教育

 平成 25 年度現在,4)全国には 782 校5)の大学があり, そのうち女子大学は79校ある。6)学部数は2441学部で あり,表1は平成25年度の学部・学科別学生数と男女 別の内訳を表している。大学全体の男女比は 56.5: 43.5 であり,それに比べて学部・学科別の男女比は学 部・学科によって大きく異なっている。特に顕著なの が,工学系・理学系の女子学生の比率の低さであり, 次いで社会科学系,特に商学・経済学の 27.4 パーセン トが低い。逆に女子学生の比率が高いのは文学系,保 健系(特に看護学),家政系,芸術系である。  女子大学の中で,経済・経営・商学部等のビジネス 系学部・学科がある大学は数校のみである。共学校で は経済・経営・商学部等のビジネス系学部はほぼ全て の総合大学・文系大学に設置されていることと比べて みれば,女子大学におけるビジネス系学部の少なさは 顕著である。  大学全体で見れば,学生総数約 256 万人のうち,社 会科学系の学部・学科は最大の約 85 万人で約 3 分の 1 を占めており,その中でも商学・経済学系は約 47 万 人で学生総数の約 20 パーセントを占めている。その ようなウェイトの高い分野で女子学生の学生数が約 13 万人,比率が 27.4 パーセントと低いのである。  大学生全体で見て社会科学系,特に商学・経済学系 のウェイトが高いのは,文系の就職では商学・経済学 系は有利であることが背景にある。就職に有利なはず の商学・経済学系への女子学生の進学が少ないことは, 女性の社会進出にとって望ましいことではない。7)

Ⅳ.女子大学における経済分野に関する

アンケート調査

 Ⅲで述べたように,学生数のウェイトが高く,かつ 就職が有利といえる社会科学系,特に商学・経済学系 への女子学生の進学が少ないことは,女性の進学に関 する意識や求める学習内容から考える必要がある。そ のため女子大学ビジネス系学部の学生の経済に関する 認識について,2013 年 7 月に椙山女学園大学現代マネ ジメント学部においてアンケート調査を行った。  椙山女学園大学は7学部で5833名の学生が在籍して いる女子大学の中では規模の大きな総合大学であ る。8)Ⅱで述べたように,かつては女子大学での教育 表 1 学部・学科別学生数と男女別の内訳(平成 25 年度) 合計(人) 男(人) 女(人) 男(%) 女(%) 合   計 2,562,068 1,448,256 1,113,812 56.5 43.5 人 文 科 学 系 377,182 128,881 248,301 34.2 65.8 文       学 138,383 39,336 99,047 28.4 71.6 史       学 25,562 13,500 12,062 52.8 47.2 哲       学 46,584 18,355 28,229 39.4 60.6 そ   の   他 166,653 57,690 108,963 34.6 65.4 社 会 科 学 系 848,652 563,476 285,176 66.4 33.6 法学・政治学 159,733 111,641 48,092 69.9 30.1 商学・経済学 466,676 338,594 128,082 72.6 27.4 社   会   学 144,594 65,239 79,355 45.1 54.9 そ   の   他 77,649 48,002 29,647 61.8 38.2 理 学 系 80,490 59,367 21,123 73.8 26.2 工 学 系 390,042 342,006 48,036 87.7 12.3 農 学 系 75,724 42,734 32,990 56.4 43.6 保 健 系 293,292 120,985 172,307 41.3 58.7 家 政 系 71,288 6,842 64,446 9.6 90.4 教 育 系 183,783 75,132 108,651 40.9 59.1 芸 術 系 70,137 19,978 50,159 28.5 71.5 その他(教養系) 171,478 88,855 82,623 51.8 48.2 出典:文部科学省『学校基本調査』平成 25 年度に基づき作成

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178 シンポジウム 論 考 投稿原稿 会務報告 大会報告 は家政系や文学系が主であったが,女性の社会進出が 進むに伴って社会科学系へのニーズが高まったことか ら,現代マネジメント学部は全国でも数少ない女子大 学のビジネス系学部として 2003 年に設置された。  調査対象を現代マネジメント学部の1年生と2・3年 生としたのは,経済・経営系の学部であり,本研究の 目的とする経済に関する認識やどのような分野の経済 知識が必要であるかを調べるためには,ある程度の経 済についての興味関心と知識を持った学生が望ましい ためである。また,これから学習する 1 年生と,既に 経済学や経営学について学んでいる 2・3 年生の比較 を行うためである。  調査対象となる在籍者は 1 年生 174 名,2 年生 177 名,3 年生 202 名である。(各学年の定員 170 名。4 年 生 182 名を含めて合計 735 名。)そのうち 1 年生の必修 科目と 2・3 年生の比較的受講者の多い授業において アンケートを実施し,1 年生 149 名,2 年生 119 名,3 年生 26 名,合計 294 名より回答を得た。  表 2 の将来の進路の目標は,民間企業が 1 年生で 65.8 パーセント,2・3 年生で 84.8 パーセントと最も多 い。2・3 年生の方が割合が高くなっており,学年が 進むにつれて進路の目標が明確となっていることがわ かる。専業主婦がどの学年においても 1 割にも満たず, 学生にとっても女性が働くことが当然という認識に なっていることが示された。  表 3 は経済に関する知識についての質問であるが, 十分,やや十分を合わせても各学年共に 5 パーセント 程度である。経済・経営系の学部での調査でこの数値 であることから,経済に関する知識について自信がな い学生が多いことがわかる。また,学年が進むことで 知識があるという肯定的な回答も増えるが,逆に不十 分という回答も増えていることについては,専門知識 が増えたことで自分の知識の不十分さが理解できたと いう学生が増えていると解釈できる。  本研究において調査したい内容は,経済教育の中で, 女子教育の観点からどのような分野に学生の興味関心 があり,また,それについてどの学校段階で学んでい るかについてである。9)そのため様々な経済問題につ いて,(1)興味関心の程度,(2)女子教育において扱 うべき内容,(3)学校教育における学習経験,(4)ど の学校において学んだことがあるか(複数回答可), というそれぞれの観点からの質問を行った。  金融広報中央委員会では,金融教育を(1)生活設 計・家計管理(ミクロ経済),(2)経済や金融のしく み(マクロ経済),(3)消費者教育,(4)キャリア教 育,に分類して,それぞれの教育内容を設定している。 それを踏まえて,本研究での質問は(1)個人と経済 (生活設計・家計管理,消費者教育)(14 項目),(2) 社会と経済(経済や金融のしくみ)(4 項目),(3)国 際経済(7 項目),(4)労働と経済(キャリア教育) (4 項目),(5)持続可能な社会の形成(3 項目),に区 分し,それぞれの区分で経済問題(合計 32 項目)に ついて質問している。その結果は表 4 の学生の経済分 野への興味関心と学習意識や学習経験にまとめられて いる。10)  全体としていえることは,学年毎の相違については, 1 年生よりも 2・3 年生の方が,(1)興味関心の程度, (2)女子教育において扱うべき内容,(3)学校教育に おける学習経験,の全てにおいて肯定的な回答が上 回っていることである。現代マネジメント学部ではマ ネジメントに必要な経営学,経済状況を正しく分析す るための経済学,さらには法制度や政治に関しても学 習するカリキュラムとなっている。学年が進むことで 肯定的な回答が増えていることは,大学で体系的に経 済について学習したことによる成果と考えられる。  興味関心の程度については,どの学年においても 「個人と経済」に関する項目が高く,「社会と経済」に 関する項目が低くなっている。また,個人と経済の中 でも,株式会社のしくみ,投資,企業とリスク,為替 レートといった金融や投資に関する項目は低くなって いる。  女子教育において扱うべき内容についての問いに関 しても同じような傾向があり,「個人と経済」に関す る項目が高く,「社会と経済」に関する項目が低く なっている。特に,女性のライフコース,結婚の費用, 表 2 将来の進路の目標 単位:% 民間企 業 公務員 進学 専業主婦 その他 無回答 1 年生 65.8 20.5 0.0 8.9 4.8 2.1 2・3 年生 84.8 8.3 0.0 4.1 2.8 0.0 注:小数点以下第二位にて四捨五入しているため合計は 100 パ ーセントに一致しない。 表 3 経済に関する知識 単位:% 十分 やや十 分 どちらともい えない やや不 十分 不十分 無回答 1 年生 1.3 2.7 38.9 32.2 23.5 1.3 2・3 年生 0.0 5.5 37.9 37.2 18.6 0.7 注:小数点以下第二位にて四捨五入しているため合計は 100 パ ーセントに一致しない。

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ま り 扱 う き で は な い (個人と経済) 商品選択と価格 (ブランド品) 1 年生2・3 年生 29.7 49.0 13.1 3.4 1.4 3.4 30.3 42.8 22.1 0.7 0.7 3.4 11.0 31.7 22.8 14.5 15.9 4.116.1 36.2 28.2 6.7 4.0 8.7 22.1 28.2 31.5 5.4 3.4 9.4 5.4 16.8 29.5 11.4 26.8 10.1 お金の管理(家計簿) 1 年生2・3 年生 47.6 35.9 9.7 2.8 1.4 2.8 57.2 26.2 13.1 0.0 0.7 2.8 20.7 32.4 20.0 11.0 12.4 3.425.5 32.9 22.8 4.0 6.0 8.7 35.6 25.5 23.5 3.4 2.7 9.4 5.4 18.1 28.9 14.8 22.8 10.1 銀行の機能 1 年生2・3 年生 20.0 35.2 26.2 13.1 2.8 2.8 29.7 32.4 33.1 1.4 0.7 2.8 25.5 35.9 14.5 13.8 7.6 2.818.1 23.5 36.9 8.1 4.7 8.7 20.1 28.9 35.6 3.4 2.7 9.4 11.4 20.1 26.2 8.7 22.8 10.7 外貨預金 1 年生2・3 年生 5.4 15.4 40.9 18.8 10.7 8.7 6.7 22.8 51.0 6.7 3.4 9.4 4.7 9.4 31.5 14.1 30.2 10.19.7 21.4 37.9 19.3 9.0 2.8 13.8 25.5 47.6 7.6 2.8 2.8 15.2 22.1 23.4 20.0 15.9 3.4 クレジットカード 1 年生2・3 年生 23.4 39.3 20.7 9.0 4.8 2.8 30.3 37.2 26.9 1.4 1.4 2.8 7.6 17.9 28.3 18.6 24.1 3.413.4 28.9 38.3 6.7 4.0 8.7 17.4 32.2 30.9 6.0 4.0 9.4 4.7 12.1 32.9 12.1 28.2 10.1 株式会社のしくみ 1 年生2・3 年生 18.6 25.5 35.9 12.4 4.8 2.8 16.6 26.2 45.5 6.9 2.1 2.8 30.3 35.2 17.9 8.3 4.8 3.47.4 26.2 30.2 18.1 9.4 8.7 10.1 26.2 41.6 7.4 5.4 9.4 16.8 20.8 26.2 10.1 16.1 10.1 投資 (株式・投資信託) 1 年生2・3 年生 12.4 26.9 30.3 20.7 6.9 2.8 11.0 32.4 43.4 7.6 2.8 2.8 22.8 27.6 22.1 13.1 11.0 3.46.7 23.5 29.5 19.5 12.1 8.7 7.4 22.1 47.0 8.1 6.0 9.4 13.4 14.8 29.5 8.1 24.2 10.1 起業とリスク 1 年生2・3 年生 11.0 26.2 31.7 20.7 7.6 2.8 13.1 24.8 46.2 9.0 4.1 2.8 15.2 27.6 26.9 14.5 12.4 3.47.4 15.4 38.3 17.4 12.8 8.7 6.7 20.1 47.0 9.4 7.4 9.4 4.7 10.7 30.9 13.4 30.2 10.1 為替レート (円高と円安) 1 年生2・3 年生 11.7 32.4 36.6 11.0 5.5 2.8 13.1 31.7 47.6 4.1 0.7 2.8 27.6 35.9 18.6 6.9 7.6 3.46.7 18.8 36.2 17.4 12.1 8.7 6.7 26.8 43.0 8.7 5.4 9.4 13.4 27.5 22.8 4.7 21.5 10.1 女性のライフコース 2・3 年生 41.4 36.6 14.5 3.4 1.4 2.8 75.9 14.5 5.5 1.4 0.0 2.8 33.8 32.4 12.4 10.3 7.6 3.41 年生 24.8 30.2 24.8 6.7 4.7 8.7 44.3 26.8 14.1 2.0 3.4 9.4 9.4 18.1 22.8 12.8 26.8 10.1 結婚の費用 1 年生2・3 年生 49.0 26.9 15.9 4.1 1.4 2.8 67.6 19.3 8.3 1.4 0.7 2.8 13.8 19.3 21.4 16.6 25.5 3.430.2 28.2 20.8 6.7 5.4 8.7 45.0 24.8 15.4 2.7 2.7 9.4 8.1 12.1 22.1 16.1 31.5 10.1 子育てと育児休業や 教育費 1 年生2・3 年生 52.4 34.5 9.7 0.7 0.0 2.8 75.9 15.9 5.5 0.0 0.0 2.8 23.4 32.4 21.4 8.3 11.0 3.428.9 28.9 21.5 5.4 6.7 8.7 43.0 24.8 14.1 4.7 3.4 10.1 10.7 15.4 26.8 10.7 25.5 10.7 住宅取得と住宅ローン 1 年生2・3 年生 33.8 38.6 22.1 2.1 0.7 2.8 49.7 33.1 14.5 0.0 0.0 2.8 14.5 19.3 25.5 16.6 20.7 3.417.4 28.2 34.2 4.7 6.7 8.7 26.8 30.2 24.2 4.7 4.7 9.4 4.0 9.4 28.2 14.1 33.6 10.7 年金・保険 1 年生2・3 年生 42.8 35.9 15.2 3.4 0.0 2.8 47.6 35.9 13.1 0.7 0.0 2.8 17.9 35.9 23.4 12.4 7.6 2.821.5 28.2 30.2 4.7 6.7 8.7 25.5 26.8 29.5 4.7 3.4 10.1 7.4 17.4 25.5 12.8 25.5 11.4 (社会と経済) GDP の定義 1 年生2・3 年生 4.0 10.1 40.3 20.8 16.1 8.7 6.0 16.8 47.7 13.4 6.0 10.1 7.4 18.1 36.9 6.7 20.8 10.13.4 19.3 44.8 24.1 4.8 3.4 13.8 23.4 51.0 6.2 1.4 4.1 31.0 31.7 20.0 6.2 7.6 3.4 景気と物価 1 年生2・3 年生 14.5 38.6 27.6 14.5 2.1 2.8 17.2 32.4 39.3 6.9 0.7 3.4 33.1 33.8 17.9 6.9 5.5 2.811.4 22.8 36.2 11.4 9.4 8.7 7.4 26.2 40.9 10.1 5.4 10.1 10.7 24.2 30.2 7.4 17.4 10.1 財政政策 (税金と財政赤字) 1 年生2・3 年生 6.7 17.4 39.6 16.8 10.7 8.7 4.7 20.1 46.3 13.4 5.4 10.1 8.1 23.5 31.5 6.0 20.8 10.19.7 28.3 35.9 19.3 4.1 2.8 13.1 30.3 46.2 6.2 0.7 3.4 28.3 40.0 16.6 7.6 4.8 2.8 金融政策 (金利,貯蓄と投資) 1 年生2・3 年生 12.4 31.7 37.2 11.7 3.4 3.4 13.1 30.3 42.1 8.3 1.4 4.8 24.8 36.6 24.1 4.1 4.8 5.55.4 18.8 44.3 14.1 7.4 10.1 7.4 18.8 51.0 8.7 3.4 10.7 10.7 17.4 30.2 8.1 20.8 12.8 (国際経済) 貿易収支 (貿易摩擦) 1 年生2・3 年生 3.4 10.1 49.7 16.8 10.1 10.1 4.7 10.7 60.4 10.7 2.7 10.7 7.4 21.5 32.2 8.7 18.1 12.15.5 20.0 44.8 22.1 4.1 3.4 9.7 17.2 54.5 13.8 0.7 4.1 20.7 36.6 24.1 7.6 5.5 5.5 企業の買収・合併 (M&A) 2・3 年生1 年生 7.6 22.8 37.9 24.8 3.4 3.4 9.7 20.7 51.7 11.7 2.1 4.1 21.4 28.3 27.6 9.0 7.6 6.22.7 11.4 48.3 16.8 10.1 10.7 4.7 10.7 56.4 12.8 4.7 10.7 5.4 16.1 30.2 7.4 28.2 12.8 国際分業と工場の 海外移転(産業空洞化)1 年生2・3 年生 3.4 12.8 43.0 21.5 9.4 10.1 4.0 11.4 57.7 12.8 3.4 10.7 7.4 20.1 28.2 9.4 22.8 12.19.0 26.2 35.2 18.6 7.6 3.4 9.0 24.8 51.0 9.0 2.1 4.1 15.9 29.0 29.0 10.3 9.7 6.2 食料自給率と農業保護 (補助金) 1 年生2・3 年生 17.2 26.2 35.9 15.2 2.1 3.4 13.8 29.7 44.8 6.2 1.4 4.1 11.0 34.5 32.4 9.0 6.9 6.24.7 23.5 45.6 10.7 5.4 10.1 6.0 16.1 51.7 10.7 4.0 11.4 9.4 22.8 30.9 7.4 16.8 12.8 自由貿易と保護貿易 (TPP) 1 年生2・3 年生 13.8 27.6 37.9 15.9 1.4 3.4 14.5 23.4 49.7 7.6 0.7 4.1 15.9 35.9 28.3 9.7 4.1 6.24.0 12.1 49.7 16.8 7.4 10.1 5.4 14.1 55.7 10.7 3.4 10.7 6.0 20.1 30.9 8.7 22.1 12.1 開発途上国 1 年生2・3 年生 14.5 29.0 39.3 13.1 0.7 3.4 15.2 25.5 48.3 6.2 0.7 4.1 17.2 34.5 26.2 10.3 6.2 5.54.0 15.4 44.3 18.8 6.7 10.7 5.4 16.1 52.3 12.8 2.7 10.7 6.7 21.5 30.2 8.7 20.8 12.1 フェアトレード 1 年生2・3 年生 19.3 27.6 31.7 13.8 4.1 3.4 21.4 31.0 33.1 6.9 3.4 4.1 25.5 27.6 17.9 10.3 12.4 6.22.0 19.5 38.3 18.1 11.4 10.7 6.0 18.1 49.0 9.4 6.0 11.4 4.0 15.4 29.5 13.4 24.8 12.8 (労働と経済) 学歴と収入(機会費用)1 年生2・3 年生 31.7 37.9 22.1 4.1 0.7 3.4 32.4 37.2 20.0 5.5 0.7 4.1 17.2 26.2 23.4 11.7 15.2 6.219.5 26.8 31.5 7.4 4.0 10.7 17.4 25.5 37.6 5.4 2.7 11.4 6.7 9.4 34.9 9.4 27.5 12.1 就業機会と失業 1 年生2・3 年生 32.4 37.2 20.0 6.2 0.7 3.4 37.2 32.4 20.7 4.8 0.7 4.1 19.3 28.3 22.1 10.3 13.8 6.216.1 23.5 36.9 6.7 6.0 10.7 16.1 24.2 40.3 5.4 3.4 10.7 6.0 11.4 32.9 11.4 25.5 12.8 非正規労働者 1 年生2・3 年生 21.4 31.7 31.7 9.0 2.8 3.4 31.0 31.7 26.2 4.8 2.1 4.1 20.0 25.5 27.6 11.0 9.7 6.212.1 20.1 42.3 8.7 6.0 10.7 14.8 20.8 43.6 5.4 4.7 10.7 6.0 16.8 30.9 11.4 22.8 12.1 外国人労働者 1 年生2・3 年生 14.5 29.0 34.5 15.9 2.8 3.4 17.9 29.7 37.2 9.0 2.1 4.1 13.8 27.6 31.0 9.0 12.4 6.25.4 21.5 45.0 12.1 5.4 10.7 8.1 20.1 49.0 6.7 5.4 10.7 6.0 16.1 29.5 12.8 22.8 12.7 (持続可能な社会の形成) 環境問題(公害) 1 年生2・3 年生 26.2 41.4 23.4 5.5 0.0 3.4 25.5 38.6 26.9 4.1 0.7 4.1 40.0 26.9 17.2 6.2 4.1 5.513.4 23.5 37.6 9.4 5.4 10.7 11.4 26.8 39.6 8.1 3.4 10.7 18.1 27.5 22.1 8.7 11.4 12.1

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180 シンポジウム 論 考 投稿原稿 会務報告 大会報告 子育てと育児休業や教育費といった項目は肯定的な回 答が 1 年生では 70 パーセント程度,2・3 年生では 80 パーセントを超えている。  学校教育における学習経験については,1 年生では 20─30 パーセント程度が多いが,2・3 年生になると, ほぼ全ての項目で 50 パーセントを超えており,特に, 興味関心の程度が低かった「社会と経済」の分野が逆 に高くなっている。特筆すべきこととしては,日常生 活で使う機会が多いはずのクレジットカードに関して は 2・3 年生でも学習経験があるのは約 25 パーセント でしかない。クレジットカードの過剰な使用による多 重債務等の問題が生じているが,それを防ぐための学 校教育が行われていないことが示されている。  多くの項目について 2・3 年生では半数程度の学生 は学習経験があると回答している。しかしながら,ど の学校段階で学んだかについての質問では,殆どの項 目が大学であり,次に多いのが高等学校である。小学 校や中学校で学んだ経験は殆どない。11)小・中学校の ことは忘れており,大学は最近のことなので印象に 残っているということも考慮すべきであるが,それを 割り引いても大学での学習のウェイトが高いことが示 されている。  大学での学習の経験が多い理由は,現代マネジメン ト学部では 1 年次に生活経営論,生活設計論,2 年次 に消費者行動論が開設されており,個人と経済に関す る項目に該当する内容が十分に学習できるためである。 また,経済学入門 A(ミクロ経済学),経済学入門 B (マクロ経済学)が必修科目として開設されているこ とから,「社会と経済」分野の学習経験を高めてい る。12)  持続可能な社会の形成に関しては,興味関心の程度, 女子教育において扱う内容,共に比較的高い割合と なっている。また,学校教育における学習経験も高く なっている。環境問題や人口問題,経済格差が重要な 現代的課題であることが認識されているといえる。  興味関心の程度と女子教育において扱うべき内容に ついては,同じような傾向にあり,興味関心があるこ とが学習の対象となっていることが理解できる。それ に対して,学校教育における学習経験と興味関心や女 子教育において扱うべき内容については傾向が一致し ない。すなわち,学校教育で扱っている内容が興味関 心やニーズと必ずしも一致していないことを示してい る。先のクレジットカードの事例などは,まさにその ような例である。  小中学生・高校生を対象とした金融広報中央委員会 (2011)「子どものくらしとお金に関する調査(第 2 回)平成 22 年度」の「金融経済の知識」に関する調 査結果では,日本銀行の機能や利子,金融政策等の基 礎的な事項についての理解が低いことが示された。本 研究の女子大学生への調査においても,「社会と経済」 (マクロ経済分野)への興味関心は低く,小中学校・ 高等学校での学習経験が少ないことが影響していると 考えられる。  また,一般の社会人を対象とした金融広報中央委員 会(2009)「金融に関する消費者アンケート調査(第 3 回)平成 20 年」において,「金融全般に関する知識」 については多くの事項で「聞いたことはあるけど,よ くわからない。」という認識であることが示された。 本調査においても示されるように,大学で経済教育を 行っているにもかかわらず半数程度にしか認識されて おらず,同様の理解度となっている。  表 5 の経済の授業への興味関心と表 6 の経済の授業 の実用性に関しては学年によって結果が大きく異なっ ている。1 年よりも 2・3 年生の方が興味関心も,実用 性も 2 倍以上も高い評価となっている。2・3 年生の方 がはるかに高い評価となっていることから,大学での 金融や経済に関する学習を通じて,学生は理解は困難 であっても経済を学ぶことには意義があると考えてい ることが示されている。 表 5 経済の授業への興味関心 単位:% 面白か った やや面白かっ た どちら ともい えない あまり 面白く なかっ た 面白く なかっ た 無回答 1 年生 2.0 18.8 48.3 21.5 7.4 2.0 2・3 年生 10.3 48.3 31.7 6.9 2.1 0.7 注:小数点以下第二位にて四捨五入しているため合計は 100 パ ーセントに一致しない。 表 6 経済の授業の実用性 単位:% 有益で あった やや有益であ った どちら ともい えない あまり 有益で なかっ た 有益で なかっ た 無回答 1 年生 2.0 25.5 54.4 10.1 6.0 2.0 2・3 年生 13.8 49.7 28.3 6.2 1.4 0.7 注:小数点以下第二位にて四捨五入しているため合計は 100 パ ーセントに一致しない。

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Ⅴ.女子大学ビジネス系学部における

経済教育

1.カリキュラムにおける経済学の位置付け  ビジネス系学部の大学教育における主要な科目は企 業経営に直接かかわる経営学,商学,会計学,経営情 報学,経営工学である。それに加えて,経済を正しく 認識するための経済学,企業活動におけるコンプライ アンス等のための法律学,さらには外国への進出など のために文化的背景を知る必要から社会学等が設けら れている。13)以下では具体的な事例として,椙山女学 園大学現代マネジメント学部の2013年4月から導入さ れたカリキュラムに基づいて分析する。14)  新しいカリキュラムにおいてはこれまでのカリキュ ラムに比べて経営分野の科目の強化を行い,「ヒト」・ 「モノ」・「カネ」・「情報」という経営資源を有効に活用 するために必要な基本的な理論の学習の高度化・精緻 化と,「グローバル化」,「経済・経営のサービス化」, 「経営の戦略化」,「高度情報化」,「少子高齢化」等の 時代のニーズに応えるための視点からの応用力の育成 のための体系的な学習を目指している。また,学習目 標の達成のためにより実践的な教育を行うために,ア クティブラーニングを重視している。さらには,実務 家等による講義を増加させている。  大学全体の教育改革としては,『椙山女学園大学教 育改革 2013(アクションプラン)』「椙山女学園大学に おける学士課程教育の質的転換に向けて」を定めて, 教育の質の改善に努めている。このような教育改革の 取り組みの成果として平成 25 年度「私立大学等改革 総合支援事業」の対象校に選定されている。15)  社会人のリカレント教育も活発になっているが,椙 山女学園大学においても社会人教育も含めた大学院と して2014年4月に現代マネジメント研究科を開設して いる。16)現代マネジメント研究科では「イノベーショ ンマネジメント能力」を育成することで,経済社会に おける既存の制度に対して高度な知識を統合して新た な付加価値を生み出すことで新規ビジネスを創造する ことや,様々なビジネスの課題を解決することでイノ ベーティブなビジネスモデルを構築することができる 知的人材の育成を目指している。17)  このようなカリキュラムの中で,経済学は企業経営 や企業戦略に欠かせないものであり,必修・選択科目 合わせて多くの授業が開講されている。必修科目では 経済学入門 A(ミクロ経済学),経済学入門 B(マクロ 経済学)が開設されている。ミクロ経済学の知識は企 業の効率的な運営や価格設定等に欠かせないものであ る。例えば,費用最小化の概念は企業における生産の 効率化には不可欠である。また,マクロ経済学の知識 は商品展開や経営戦略を考えるのに役立つものである。 特に,グローバル化が進んだ経済を正しく見ることで, 一国経済だけでなく世界的な規模での経営戦略を考え ることができる。18)  そのような重要な分野である経済学であるが,高等 学校までは殆ど学習していないことから,また,独特 の専門用語が多いこと,数式やグラフを使用すること から,初学者である学生には戸惑いの多い分野である。 アンケート調査でも示されたように,大学までの学校 教育の中では,経済に関して学ぶ機会は殆どない。  前章で述べたように,どの学校段階で学んだかの質 問では殆どの回答が大学であった。大学に行かない, または大学に行っても経済系の学部に進学しない場合 には,経済に関して学ぶ機会がないことになる。その ため現実の経済問題について知ることなく経済の理論 的な内容を先に学習することになることでも戸惑いが 生じる。経済学の理論的な学問体系を踏まえた,発展 段階に応じた教育内容の整備が求められる。19)  義務教育である小・中学校や高等学校での学習経験 が少ない理由としては,学校教育においては利害対立 があるお金のことは扱いにくいことや経済問題は立場 の違いによって正しい答えがないこと,20)金融や経済 に関しては最新の時事的な内容を教えることが必要で あり学ぶ側もそのような内容に関心が高いが,学校で は時事的な問題を扱いにくいこと,経済学的な考え方 を教えるべきであるが,暗記科目になっていること等 があげられる。そのため,大学教育における経済教育 が重要であることが指摘できる。 2.ビジネス系学部教育と アクティブラーニング  少子化による教育ニーズの変化から,知識教授型の 教育から体験による経験重視型の教育へ移行している。 大学以前の小・中学校や高等学校の学習指導要領にお いても主体的に学ぶ「生きる力」の育成が定められて いる。そのような背景を踏まえて,大学教育において もアクティブラーニング(体験型学習)が積極的に導 入されている。  ビジネス系学部では学問的な理論を学ぶだけでなく, 実践的な内容の学習も必要である。そのためアクティ ブラーニングを積極的に活用している。特に,経営学 分野では企業活動の様々な場面において起こる問題や

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182 シンポジウム 論 考 投稿原稿 会務報告 大会報告 課題を学習するための PBL(Problem-BasedLearn-ing:問題解決型学習,Project-BasedLearning:課 題解決型学習)が積極的に取り組まれている。21)  アクティブラーニング,PBL による取り組みの際 にも,経済に関する知識は根幹となるものである。現 代マネジメント学部で取り組んでいる経済学に関係す るアクティブラーニングは下記の通りである。 ①株式投資ゲーム,貿易ゲーム等の体験型教材の活用 ②起業体験と商品企画・開発 ③日本銀行(金融広報中央委員会),東京証券取引所 (日本取引所グループ),JICA(独立行政法人国際協 力機構)等から講師を招いての講演会 ④様々な企業や港湾・空港,研究施設等の見学 ⑤ビジネスプランコンテスト等への応募22)  Ⅳのアンケート調査においては,そのような授業を 経験した 1 年生に対して,アクティブラーニングへの 興味関心とその効果について質問している。表 7 の興 味関心と効果に示されるように,ともに約半数の学生 が肯定的に評価している。  経済分野は学生の社会経験が乏しいことから学問的 な理論と現実の社会での経済問題がうまくリンクして いかないことから,それらを整合的に学べるアクティ ブラーニングの活用が効果的である。23)また,キャリ ア教育につながることも期待できる。 3.女子大学の特徴と経済教育  Ⅱで述べたように,社会構造が変化し,女性が働く ことは普通のことになった。しかしながら,現在は女 性の管理職はまだ少なく,性差による分業により,女 性の職務は補助的なものが主となっている企業も依然 としてあり,諸外国に比べて女性の社会進出が遅れて いる。  女子大学の特徴として,男女の性差による分業が行 われないことで,女性のリーダーが育ちやすいことが あげられる。また,精神的な成熟は女性の方が早いた め,同じ年齢の男性に比べて優れた思考や創造性を発 揮する。男性とは区別した女子教育において高いレベ ルの思考や創造性を求める教育を行うことは効率的で あり,経済教育に関しても同様の視点での教育が可能 である。  ビジネス系学部の教育は,ビジネス分野への女性の 積極的な進出を目的としており,ビジネス分野の基礎 となる経営学の理論的分析能力と社会での実務処理能 力の育成が求められる。そのために経営学の理論的・ 実践的内容に加えて,経営分野を学ぶために必要な経 済に関する知識が必要となる。  2005 年の金融教育元年から 10 年近くが経過したが, 「貯蓄から投資へ」という方針は 2008 年のリーマン ショック以降の経済状況によって進まず,むしろ人々 は投資を避けるようになった。2013 年になりアベノ ミクスへの期待から株価は上昇し,2014 年からは NISA(ニーサ,少額投資非課税制度)24)が導入されて いる。このように経済状況は刻々と変化し,次々と新 しい制度が導入されるが,「自己責任」であるために 知らないでいるとその恩恵を受けることは出来ず,逆 に不利益を被ることになる。  社会的自立には経済的自立が欠かすことは出来ない。 グローバルに活躍し,リーダーとなる女性人材の育成 のためには,自立した女性,そのためには経済的に自 立する能力の育成が必要である。女性が社会で自立し て活躍するためには,正しい経済認識を持つためのも のの見方,考え方の基礎となる経済に関する知識を身 に付けることが必要である。様々な経済教育の取り組 みが行われているが,普及のターゲットを適切に設定 する,例えば学校の教員のための経済教育のように, 専門を絞った経済教育が効果的である。25)同様に,女 性が経済的に自立するための経済に関する知識を学ぶ ための,女性向けの経済教育の推進が必要である。  女子学生の学習傾向として,直接的なもの,役に立 つかどうかを重視する。例えば,資格取得には熱心で あり,ファイナンシャルプランナーや簿記,秘書,教 職等の資格の取得を目指す。  女子学生の興味関心が直接的なもの,役に立つもの にあることから,身近なところでの経済教育が考えら れる。例えば,学生証にクレジットカードや電子マ ネー,プリペイドカードの機能を持たせることで,金 銭の管理を経験を通じて総合的に学ばせることが出来 表 7 アクティブラーニングへの興味関心と効果 (1 年生) 単位:% 面白か った やや面白かっ た どちら ともい えない あまり 面白く なかっ た 面白く なかっ た 無回答 興味 関心 24.8 26.2 27.5 2.7 6.0 12.8 効果的 であっ た やや効 果的で あった どちら ともい えない あまり 有効果 的なか った 効果的 でなか った 無回答 効果 15.4 32.9 30.9 2.7 4.0 14.1 注:小数点以下第二位にて四捨五入しているため合計は 100 パ ーセントに一致しない。

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る。現状ではクレジットカードの仕組みも分からない 学生がクレジットカードを持っていることで過剰な使 用等のトラブルが起こっているが,学生であることを 考慮して,利用限度額に厳しい制限を設ける等の工夫 をしたクレジットカードを使うことで,アクティブ ラーニングとしての経済教育を展開することが可能で ある。  前述の NISA に関しても,学生向けの「スチューデ ント版 NISA」を設けることで,単なる投資の増加を 目指したものではなく,経済教育にもつながるものと して発展できる。イギリスでは金融経済教育に関する 取り組みとして財務省が運営している子供信託基金 (TheChildTrustFunds)という制度がある。子供信 託基金は政府から給付金が支払われ,それを子ども名 義の税制優遇措置を伴う預金口座で運用することで投 資や貯蓄について親子で学ぶ制度である。  日本において実施された子ども手当がばらまき型の 政策であり,消費ではなく貯蓄に回るなど景気対策と しての効果は薄かった。子ども手当を単に給付するの ではなく,イギリスの子供信託基金のように運用を前 提として給付することで金融経済教育が可能であった。 NISA に関しても,金融教育の観点を考慮した制度設 計を行うことで,さらなる投資の増加につなげること が出来る。また,投資に向かない学生は早い段階でそ れを自覚することが出来る。  少子化は先進国において共通の課題であり,少子化 に伴う教育ニーズの「量」の減少とそれに伴う「質」 の変化は,先進各国において教育政策の見直しにつな がった。アメリカでは起業家精神による新規産業の育 成,イギリスでは金融の中心としての発展,韓国では 貿易立国としての繁栄を目指した金融経済教育が経済 政策の一環として取り組まれている。26)  日本においては社会科は暗記科目のイメージが強い が,金融や経済はまさに思考力が求められるものであ る。大学生になれば授業料の支払いやアルバイトの給 与振り込み等などで銀行口座が必要になる。大学にお ける初年次教育や入学前教育として,大学生に必要と されるお金の管理やクレジットカードの仕組み等を教 える金融経済教育を通じて,思考力を育成することが 可能である。  また,私立大学では学債の購入が求められることも ある。学債は通常は無利子で償還されるが,学生が努 力することで大学が発展することに合わせて学債に利 子を支払う等のインセンティブを持たせることで,投 資教育としての意義を持たせることもできる。 さらには,人生やキャリア形成の上で必要になるお金 について考えることは,キャリア教育にもなる。  このように,女子大学において女性の自立を目的と した経済教育を展開することは意義のあることであり, 女性の社会進出をより一層進めるためには不可欠であ るといえる。 註 1) 少子化により出生数は 1973 年の 209 万人から 2012 年に は 103 万人にまで半減し,ランドセルのように若年層が 年齢に応じて必要となるあらゆる財について売れる数は 半減した。 2) 大学院生は増加しており,特に女性の進学者が顕著に増 加している。 3) 女子大学である椙山女学園大学には博士課程も含めて複 数の大学院がある。 4) 本研究の学校数等の統計は文部科学省『学校基本調査』 に基づいている。 5) 内訳は国立大学 86 校,公立大学 90 校,私立大学 606 校。 学部学生のいない大学 30 校を含む。 6) 男子校は 1 校のみ。 7) 同様のことは理系の女子学生の少なさについてもあては まる。そのため理系学部では女子学生の増加のために 様々な対策をとっている。 8) 生活科学部,国際コミュニケーション学部,人間関係学 部,文化情報学部,現代マネジメント学部,教育学部, 看護学部の 7 学部がある。また,附属の幼稚園,小学校, 併設の中学校,高等学校,大学院がある。 9) 先行研究としては,生活と金融知識の関係について調査 した久富健治・飯嶋香織(2011)「生活設計を中心におい た金融経済教育の取り組み」や,それを踏まえた飯嶋香 織(2012)「学校における金融教育の成果─お金の管理の 視点から─」がある。筆者の研究目的は経済学の学問的 な背景を踏まえて大学における女子教育での経済教育を 構築することにある。そのため具体的な経済に関する事 項,特に持続可能な社会形成に関する問題などの現代的 課題も含めて質問を行っている。 10) 本研究は紙幅の制限から最低限の図表と分析に留めてい る。各項目の相関等に基づいた分析は今後の研究課題で ある。 11) 紙幅の都合で詳細なデータは掲載出来ないが,各項目と もに大学で学習したという回答が圧倒的に多い。 12) 2013 年度の入学者のカリキュラムの科目名である。それ 以前の入学者については別のカリキュラムであるが,ほ ぼ同様の科目が開講されている。 13) ビジネス系学部の教育に関しては全国ビジネス系大学教 育会議(前身は全国四系列(経営学・商学・会計学・経 営情報科学)教育会議)が取り組んでおり,その成果は (2010)『社会人基礎力の育成とビジネス系大学教育』, (2012)『ビジネス系大学教育における初年次教育』, (2012)『ビジネス系大学教育における質保証』(いずれも 学文社)が出版されている。 14) 本節のカリキュラムに関する要旨は椙山女学園大学『履 修の手引 2013 現代マネジメント学部』等に基づいている。 15) タイプ 1:大学教育の質的転換,タイプ 2:地域の発展を 重層的に支える大学づくり,タイプ 3:産業界や国内外の 大学等と連携した教育研究の 3 つのタイプ全てに採択さ れている。 16) 専門職養成の高度化が求められている教員養成に関して

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184 シンポジウム 論 考 投稿原稿 会務報告 大会報告 も 2014 年 4 月より教育学研究科を開設している。 17) 椙山女学園大学大学院現代マネジメント研究科のパンフ レット等に基づいている。 18) グローバル教育における経済教育に関しては,水野英雄 (2014)「グローバル教育としての経済教育─グローバル 経済の理解と持続可能な国際社会の形成─」を参照。 19) このような問題意識を踏まえて,筆者らは吉田良生編著, 角本伸晃,青木芳将,久下沼仁笥,水野英雄著(2014) 『ミクロ経済学入門 新版』成文堂を出版している。本書 は大学 1・2 年生を対象にしたミクロ経済学の基礎を分か りやすく解説した教科書であり,学生の経済理論は難し いという先入観を取り除くために,経済を身近な問題と して興味関心を持てるように,説明は平易な言葉で,日 常生活に関連した身近な事例を用いて解説しており,グ ラフによる説明や数式の展開なども丁寧に説明している。 20) そのため 2008 年の中学校の学習指導要領において効率と 公 正 の 概 念 が 明 確 化 さ れ て い る。 詳 し く は 水 野 英 雄 (2013)「経済システムの変化と学習指導要領における 「対立と合意,効率と公正」の概念の教員養成における理 解」を参照。 21) 経営学教育におけるアクティブラーニングに関しては日 本マネジメント学会(旧日本経営教育学会)で研究成果 が発表されている。日本マネジメント学会(旧日本経営 教育学会)『経営教育研究』各号を参照。 22) 2013 年度には現代マネジメント学部主催の『ビジネスプ ラン・コンテスト─日本を元気に・地域を元気にするプ ラン─』を実施し,他大学や高校生も合わせて多くの応 募がある中で,現代マネジメント学部の学生が最優秀賞 等を受賞した(2014 年度にも実施を予定している)。また, 学内だけでなく 2013 年度に実施された『一般社団法人日 本バルブ工業会創立 60 周年記念学生懸賞論文コンテスト』 における小林麻耶(2014)「人と環境に優しいスマートバ ルブの開発─持続可能な社会の形成のために─」の優秀 賞受賞のように,学部の 1 年生であっても有名大学の大 学院や専門である理系の学部の学生よりも上位の受賞が 可能となるような高いレベルの達成目標を設けた教育を 行っている。同様に,2013 年度の公益社団法人日本観光 振興協会主催『産学連携オープンセミナー in 中部』での 「学生による観光振興に関する研究発表」においても角本 伸晃ゼミの 2 年生が「観光まちづくり忍法再生の術〜三 重県伊賀市〜」で優秀賞を受賞している。 23) 詳しくは「金融教育の現場レポート」金融広報中央委員 会『くらし塾きんゆう塾』vol.27,2014 年冬号 24-27 ペー ジのインタビュー記事を参照。 24) イギリスの ISA(IndividualSavingsAccount,個人貯蓄 口座)のように,個人の資産形成が行いやすいように税 制の優遇がある口座のことである。 25) 学校の教員向けには金融広報中央委員会,全国銀行協会, 日本証券業協会,証券知識普及プロジェクト,経済教育 ネットワーク等が取り組んでいる。 26) 各国の経済教育については水野英雄・鵜飼遥佳(2013) 「経済政策としての経済教育の展開(Ⅰ)─諸外国におけ る政策との比較から─」を参照。 参考文献・資料 [1] 愛知教育大学『産学官連携による実習等授業の教育効果 に関する研究─社会的ニーズを踏まえた人材育成のため の試み─』報告書,2009 年 [2] 飯嶋香織「学校における金融教育の成果─お金の管理の 視点から─」第 9 回金融教育に関する小論文・実践報告 コンクール小論文部門特賞,2012 年 [3] 岩田年浩・水野英雄編著『教員養成における経済教育の 課題と展望』三恵社,2012 年 [4] 金融広報中央委員会「金融に関する消費者アンケート調 査(第 3 回)平成 20 年」2009 年 [5] 金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調 査(第 2 回)平成 22 年度」2011 年 [6] 金融広報中央委員会「金融教育の現場レポート」『くらし 塾きんゆう塾』vol.27,2014 年冬号 [7] 小林麻耶「人と環境に優しいスマートバルブの開発─持 続可能な社会の形成のために─」『一般社団法人日本バル ブ工業会創立 60 周年記念学生懸賞論文コンテスト』優秀 賞受賞論文(『バルブ技報』に掲載予定),2014 年 [8] 齊藤毅憲,佐々木恒男,小山修,渡辺峻監修,全国ビジ ネス系大学教育会議編著『社会人基礎力の育成とビジネ ス系大学教育』学文社,2010 年 [9] 佐々木恒男,小山修,夏目啓二,吉田優治,渡辺峻,齊 藤毅憲監修,全国ビジネス系大学教育会議編著『ビジネ ス系大学教育における初年次教育』学文社,2012 年 [10]佐々木恒男,小山修,夏目啓二,吉田優治,渡辺峻,齊 藤毅憲監修,全国ビジネス系大学教育会議編著『ビジネ ス系大学教育における質保証』学文社,2012 年 [11]椙山女学園大学『履修の手引 2013 現代マネジメント学部』, 2013 年 [12]日本マネジメント学会(旧日本経営教育学会)『経営教育 研究』各号 [13]久富健治・飯嶋香織「生活設計を中心においた金融経済 教育の取り組み」神戸山手大学,2011 年 [14]水野英雄「現場で活きる経済教育」『日本教育新聞』「教 職を考える」平成 24 年 12 月 17・24 日 日本教育新聞社, 2012 年 [15]水野英雄「経済システムの変化と学習指導要領における 「対立と合意,効率と公正」の概念の教員養成における理 解」『第 3 回教科開発学研究会発表論文集 2013』愛知教育 大学・静岡大学,2013 年 [16]水野英雄・鵜飼遥佳「経済政策としての経済教育の展開 (Ⅰ)─諸外国における政策との比較から─」『経済教育』 第 32 号 経済教育学会,2013 年 [17]水野英雄「グローバル教育としての経済教育─グローバ ル経済の理解と持続可能な国際社会の形成─」『グローバ ル教育』第 16 号 日本グローバル教育学会,2014 年 [18]文部科学省『学習指導要領』 [19]文部科学省『学校基本調査』 [20]吉田良生編著,角本伸晃,青木芳将,久下沼仁笥,水野 英雄著『ミクロ経済学入門 新版』成文堂,2014 年 謝辞  本稿の作成に当たり査読者より貴重なコメントを頂きました ことを深く感謝申し上げます。  尚,本稿で示された内容は筆者の個人的見解であり,筆者の 所属する組織の見解を示すものではありません。

参照

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