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ゼミナールにおける実践的マーケティング活動による教育効果

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Academic year: 2021

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Ⅰ.活動の目的

 担当するゼミナールにおいては,マーケティングの 知識を深めるだけでなく,実践力を身につけることを 目的に,活動を展開している。  その内容は,地元の JA から依頼されたおにぎり専 門店のマーケティング活動,学外でのイベント参加や, キャンパス見学会でのプレゼンテーション,さらには 学内の花壇活動など,複数に及ぶ。  これらの活動を通じて,マーケティングの本質を理 解し,マーケティングを実践する力を身につけること ができるだけでなく,チームで PDCA サイクルを繰 り返す中で,ビジネスに直結する社会人基礎力を身に つけることも期待される。

Ⅱ.実践的マーケティン活動の経過

1.ゼミナールの機能  本学のカリキュラムは,17 フィールドから構成さ れる。必修科目は松商ブランド(簿記とパソコン), 進路支援,ゼミ研究活動だけであり,そのほかビジネ ス系の科目群だけでなく,医療事務やブライダル, ファッション,図書館司書など,学生は数ある分野を 自由に選択し,学ぶことが可能である(図 1 参照)。

ゼミナールにおける

実践的マーケティング活動に

よる教育効果

The Journal of Economic Education No.32, September, 2013 The Education Effect of Practical Marketing Activities in Seminar Kaneko, Noko 金子 能呼(松本大学松商短期大学部) 図書館 司書 医療 事務 ブライダル 基礎ゼミナール (1年前期) 専門ゼミナール (1年後期~2年前期) 卒業研究 (2年後期) ファッション ビジネス 心とこども 福祉 ホーム ヘルパー スポーツ 健康 外国語 地域交流 芸術と 文化 留学生 進路 支援 ゼミ 研究活動 図書館 司書 医療 事務 ブライダル 個性と長所を伸ばす ゼミナール 基礎ゼミナール (1年前期) 専門ゼミナール (1年後期~2年前期) 卒業研究 (2年後期) ファッション ビジネス 心とこども 福祉 ホーム ヘルパー スポーツ 健康 外国語 地域交流 芸術と 文化 留学生 経理・会計 経営・法律 経済・金融 ブランド松商 情報専門 経理・会計 経営・法律 経済・金融 進路 支援 ゼミ 研究活動 松商 ブランド 情報専門 図 1 17 フィールドのカリキュラムとゼミナール

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 ゼミナールは全期通じて必修科目に位置づけられて いる。新入生は入学時から「基礎ゼミナール」に所属 し,3 ヶ月程度はゼミナールにて初年次教育を受ける。  その後,学生は自分が選んだ「専門ゼミナール」に 所属し,卒業まで同ゼミナールで研究テーマに取り組 む こ と に な る。 先 に も 述 べ た よ う に, 本 学 は 17 フィールドを展開しているため,教員の専門分野も多 様であり,担当する「専門ゼミナール」の研究テーマ はすべて異なる。学生は,「基礎ゼミナール」の所属 期間中に,自分の興味ある研究テーマを探るとともに, 担当教員によるゼミナールの説明を参考にし,自分が 所属する「専門ゼミナール」を決める。  ゼミナール当たり学生数は 15 名程度であり,「専門 ゼミナール」は少人数クラスの研究グループとして機 能している。加えて,大学祭や体育大会など学校行事 への参加はゼミナール単位になっているため,研究の 場としてだけでなく,学内での行動単位として認識さ れている。ゼミナールの担当教員は,学生の学習面で のサポートや就職活動を支援するなど,学生生活全般 を支える役割も果たしている。 2.ゼミナールでの活動内容  本ゼミナールのテーマは“マーケティング”であり, 実践力を身につけることを目標に据えている。  ゼミナールでの活動内容は図 2 に示したとおりであ る。  ①の枠にある講義・アウトキャンパス,あるいは先 に触れた大学祭や体育大会など学内行事・イベント参 加については,すべてのゼミナールで実践されている ことである。  もちろん,講義やアウトキャパスの内容は個々のゼ ミナールで異なる。マーケティング,あるいは関連科 目は講義科目として存在するため,本ゼミナールでは 講義時間をほとんど持たず,アウトキャパス・スタ ディの機会を増やしている。アウトキャパスの行き先 は,県内外の製造業,市場,ハーブ園,農家,商業施 設や外資系小売店舗など,多岐に渡る。事前学習をし ていても,実際に現地に赴き,見聞きしたことにより, 学生は少なからず驚かされる。アウトキャンパス・ス タディは学生にとって,現地に行かなければ得られな い刺激的な学びの場になっている。そして,学んだこ とは知識として吸収され,図 2 で③の枠に示した実践 的な活動において活かされる。  ゼミナールでの特徴ある活動であるとともに,マー ケティング力を強化するために重視しているのが,図 2 の②花壇活動である。文字通り,学内の花壇を整備, 維持する活動であり,放課後などにゼミナールの学生 が取り組む,ボランティア活動である。  マーケティング活動においては,“観察すること” が不可欠である。ターゲットが求めること,すなわち ニーズを探る上で必要となるだけでなく,環境の変化 を敏感に察すること,そしてマーケットを読み解くた めにも,観察力が求められる。  花壇活動では,物言わぬ小さな草花の,小さな変化 を見逃さないよう世話をしなければならない。病気や 害虫を見逃さないよう,細心の注意を払って観察する ことを習慣にすることで,自然と細やかな観察力が備 わる。  また,花壇活動を実践することにより,みずみずし い緑や美しい花に触れ,感性が豊かになる。感性が豊 かであることは,マーケティング活動のあらゆる場面 で活かされる。マーケティングとは,相手の心を動か すために,心のひだに入り込むような働きかけをする こととも換言できる。そうした活動を行うためには, 感性が豊かであればあるほど良い。 花 壇 活 動 講義 アウトキャンパス 学内行事・イベント参加

キャンパス 見学会での プレゼン おにぎり専門店の マーケティング活動 (おにぎりプロジェクト) 学外での イベント参加 地域活動

図 2 専門ゼミナールにおける活動 写真 1 花壇の世話をする学生たち

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 毎年秋には,学校の敷地を囲むように,チューリッ プの球根を約千個植える。春になると,学内の教職員 や学生だけでなく,学外のお客様やご近所からも喜ば れることがある。たくさんの方々に喜ばれるような活 動をすることで,ホスピタリティ精神も育まれている。  なおかつ,花壇活動は学生が協力し合って作業を進 めるので,ゼミナールをチームとして意識することに もつながっている。各自,水やり当番なども責任持っ て果たすようになり,自ずとチームワークが強化され る。団結力も強まるため,学校行事へも一丸となって 参加することができる。さらには,図 2 の③,マーケ ティングの実践的な活動をする際にも有効に作用して いる。 3.マーケティングの実践的活動  図 2 の③が,ゼミナールにおいて最も力を注いでい るマーケティングの実践的な活動である。  なかでも,B「おにぎり専門店のマーケティング活 動」(おにぎりプロジェクト)は,今年度で 4 年目を 迎える継続的かつ主軸となるゼミナールの活動である。  おにぎりプロジェクトは,2009 年に地元の JA から の依頼を受けて,スタートさせた。JA ではブランド 米を使用したおにぎり専門店の出店を検討しており, 店舗経営に不可欠なマーケティング活動をゼミナール に任せたいという意向であった。  当時の 2 年生がこの活動に取り組んだ初代ゼミ生と なり,手始めに基本的なリサーチを行った。店舗予定 地の近隣には高校が 2 校あり,JA は高校生をター ゲットにしたおにぎり専門店を想定していた。よって, まずはこれらの高校でアンケート調査を実施し,おに ぎりに対するニーズを探った。さらにその結果を活用 し,ターゲットをひとりの人物と想定する「ターゲッ ト・プロファイリング」を試みた。以後,一人の高校 生をターゲットとして捉え,マーケティング活動を展 開している。  店舗予定地では,終日交通量調査を行い,時間帯別 の交通量を把握した。このデータは,店舗の営業時間 や駐車場の設計を決める際に活かすことができた。  そのほか,全国のおにぎり専門店やコンビニエンス ストアやスーパーマーケットで扱っているおにぎりな どをリサーチし,その分析に時間を費やした。  リサーチを行う一方で,専門店において必要となる マーケティング活動を整理し,それぞれの活動につい て担当を決めた。役割分担を明確化することで,各自 が責任感を持って参画する態勢を整え,個別にも作業 を進めていった。  学生は,おにぎりの商品開発にも挑戦し,各自,自 宅で試作を重ねた。家族も巻き込んで,“おいしい” を追究する中で,試作すればするほどわからなくなる という困った事態に陥ることもあり,お互いに試食し 合って意見を集めた。効率的に試作と試食を行うこと ができるよう,1 泊 2 日,食事は 3 食すべておにぎり とする,おにぎり合宿も決行した。  活動の 1 年目は,調査活動,情報収集に力を注ぎ, 活動のベースづくりに尽力したといえる。  引き継いだ 2 代目ゼミ生たちは,初代の学生が築い たベースの上に,より現実的なマーケティング活動を 展開した。たとえば商品開発においては,おいしさの 追求だけでなく,コストと効率にもシビアな目を向け た。また,おにぎりを商品化することを前提に,誰が 作っても同じおにぎりを完成させることができるよう, 手順を詳しく記載したレシピづくりにも力を注いだ。  秋には JA の祭があり,お客様に学生が考案したお にぎりを無料で配布することになった。おにぎりは, 2 日間で 16 種類,それぞれ 100 個ずつ配布することが 決まり,まさに効率の良さが試されるような,大量の おにぎりを作る機会を得た。  祭の当日は,多くのお客様におにぎりを配布するこ とができ,おにぎりを召し上がっていただいたお客様 には,アンケートにご協力をいただき,おにぎりに対 するご意見やアドバイスを集めることもできた。  3 年目は,JA からの要望で,さらにレシピの充実 を図ることになった。地元の食材を使った地域性豊か なおにぎりや,どの店でも売られているような定番お にぎりに一工夫を施したおにぎり,そして他にはない 風変わりで珍しいおにぎりなど,テーマを設定し, テーマ別のチームで作業にあたった。 写真 2 おにぎりを試作する学生たち

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 ゼミナール内で試作と試食を繰り返すことによるマ ンネリ化を危惧し,テストマーケティングも実施した。 学生だけではなく,教職員にもおにぎりの試食を協力 依頼し,広く意見を集めることを狙いとした。  テストマーケティングでは,事前に写真入りのメ ニュー表を作成し,前日までに 8 種類中 2 種類のおに ぎりを選んでいただいた。その時点で,人気のあるな しが明確になるため,おにぎりのネーミングやキャッ チコピー,具材などの改善方向を見出す手がかりも得 られた。  テストマーケティングを実施した成果として,たく さんの意見を盛り込み,調味料の微妙な調整を何度も 行って完成度の高い味に仕上げることができただけで なく,ネーミングなどにも時間をかけ,魅力的なおに ぎりを追求することができた。またレシピについても, なるべく手順をシンプルにし,説明を明瞭にするよう 努めていた。短大生ならではの若さあふれるアイディ アが盛り込まれたオリジナルレシピを作り上げること ができた。  今年度,おにぎりプロジェクトの活動は 4 年目に突 入した。現 2 年生が 4 年目を引き継いで活動を行って いる。今年度はレシピをさらに充実させ,レシピ集を 完成させることを目標に据えた。  そこで,まずはこれまでの学生が残したレシピを参 考におにぎりを試作した。レシピ通りにおにぎりを作 る中で,レシピ中の不明瞭な表記や説明不足の箇所が 浮き彫りになることがある。レシピの担当者は,自分 が当然のこととして認識していることは軽視し,説明 を省いてしまいがちである。そのことが,レシピを参 考におにぎりを作ろうとする者を困惑させてしまう。 そうしたことを実感した上で,レシピの作成において は,おにぎりの作り手目線でのわかりやすさを追究す ることとし,前年以上に完成度の高いレシピ作りとレ シピの充実を目指している。  他方で,今年は本学が初めて新宿高島屋で開催され る『大学は美味しい!!』フェアに参加することにな り,ゼミナールでプロモーションを担当することに なった。  『大学は美味しい!!』フェアは,図 2 の③,C「学 外でのイベント参加」に該当する。これまでも,近隣 の理容室から広告チラシの作成を依頼され,ゼミナー ルで学生のコンペを行い,選ばれた学生のチラシがそ のまま配布されたことがある。あるいは,ハーブを売 りにした道の駅より,店舗のリニューアルに伴うディ スプレイの刷新を依頼され,学生が売り場作りを手が けたこともある。そのように地域からの要請に応える 地域活動や,学外でのイベントに参加については,実 践的な教育効果を得られる機会であると考え,臨機応 変に挑戦していくことを方針としている。  よって,『大学は美味しい!!』フェアにも全員参 加で取り組むこととした。フェアは 2012 年 5 月 30 日 から 6 月 5 日まで開催され,4 月から準備を始めた。  フェアには大学が関わる食品を出品する。本学は, 併設されている大学部のゼミナールや教員が携わった 13 品目を出品することとなった。学生は,それぞれ の商品について知識をほとんど持たなかったため,商 品化の経緯や,関わった人たちの思いなどを聴く機会 を設け,商品に対する理解を深めた。その上で,商品 をアピールするポイントなどをゼミナールにおいて議 論し,セールストークの中身や POP について検討し た。POP づくりには時間をかけ,丁寧に作成した。 当然,ゼミナールの授業時間だけでは足りず,学生た ちは授業の合間や放課後に作業を進めた。  フェアの前日には全員で上京し,フェアの会場で本 学の売り場づくりを行い,フェアの開催中も交替で上 京し,接客にあたった。

Ⅲ.活動の成果

1.マーケティングの実践力  これらの活動を通じて,講義で学んだマーケティン グを自分のものとして,より深く理解することができ る。そして,知識を活用して活動するため,実践力も 身につくことが期待される。  マーケティングにおいては“ニーズ”を重要視しな ければならない。ニーズを把握し,ニーズに合った活 動を展開していくことができるか否かで,マーケティ ング活動の成否が決まるといっても過言ではない。  おにぎりプロジェクトでは,おにぎりに対するニー ズを常に意識し,自分が何をすべきかを本気で考える ようになる。  とはいえ,例えばおにぎりを開発する際に,学生は どうしても自分が食べたいおにぎりにこだわってしま うことがある。その都度,軌道修正しながら活動を続 けることになるのだが,自分ではなく,ニーズに目を 向けることの難しさを実感することになる。レシピを 作る上でも,自分ではなく,読む人がわかりやすいよ う,表現ひとつについても吟味しなければならない。  ニーズを先回りした商品を完成させることが理想で

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あるが,実際にはニーズを把握することだけでも,ど れだけ難しいことか,この活動を通じて身にしみるは ずである。このことこそが,実践的な活動を通じて得 られる最も大きな成果であると考える。本気でニーズ を追究した者でなければ得られない苦しみの感覚であ る。  そして,その感覚があれば,相手の気持ちをくみ取 ることができるよう,真剣に向き合うようになる。物 事に対しても,謙虚な気持ちで取り組む姿勢が育まれ るのである。 2.社会人基礎力の強化  ゼミナールの活動には正しい答えや正解が提示され るわけではない。また,机上の空論に終わるのではな く,マーケティング活動を実践しなければならない。 誰かの指示を待つのではなく,学生は自分で考え,判 断し,行動に移さなければならないが,これが容易な ことではない。  最初は戸惑いを隠せない学生たちではあるが,一部 がとにかく動き出そうと,自らやるべきことを見つけ て積極的に取り組み始めると,全体がそれに巻き込ま れるかたちで動かされるようになる。  時には悩んだり苦しい思いをすることもあるが,試 行錯誤を繰り返すなかで,自分が動かなければ,何も 進まないことに自ら気づき,主体的・能動的な姿勢に 変化していく。失敗を恐れずに挑戦する一方で,他の 学生の挑戦を応援し,支えようとするようにもなる。  挑戦し,失敗することが重なると,どこに問題があ るのかを発見し,解決の方向を模索する。もともと情 報収集力は得意な学生が多いが,加えて集めた情報の 処理能力や,その情報をどう読むかといった洞察力も 強化されるようになる。  おにぎりの試作会を行う際に,何を課題に据えて, どんな準備をして作業を進めたら良いかなど,自分の 考えをもとに計画を実行に移していく。前回の経験を もとに,新たな試みを取り入れる前向きな様子も示さ れた。作業を進めるなかで,徐々に創造力や発想力も 豊かになっていく。  レシピを完成させたおにぎりには,必ず商品名や キャッチコピーをつける。この作業について,レシピ を担当した学生は非常に頭を悩ませることになる。お 客様の心をつかむような商品名やキャッチコピーを決 めるために,何日も考案し続けることもある。この作 業によっても,創造力や発想力が強化される。  学内における卒論発表会では,1 年生全員の前で卒 業研究についてプレゼンテーションを行う。自分たち が力を入れてきたことを発表する機会であるため,本 ゼミナールでは発表者以外の学生も参加し,時間をか けて準備を行う。リハーサルを何度も行い,完璧な形 で発表できるよう努めている。  また,図 2 の③の枠内の A にあるように,本学で行 うキャンパス見学会においては,高校生に対するプレ ゼンテーションを行っている。キャンパス見学会での プレゼンテーションは,自分の体験を通じて本学の魅 力を伝えるという,学生による広報活動でもある。  したがって,淡々と話すのではなく,高校生が魅力 を感じるような伝え方をしなければならず,学生は自 分が高校生だった頃を思い出しながら,工夫を施して いる。あえて人前で話すのが苦手な学生を指名し,挑 戦させてみると,みるみる発信力が強化されていく。 卒論発表会,キャンパス見学会などでのプレゼンテー ションでは鍛えられることが多い。  日常的な活動においても,グループ,あるいはゼミ ナール全体での議論する際,自分の意見をわかりやす く伝える力も身につく。目標を達成するために,時に は互いに厳しい意見を言い合わなければならない場面 もある。そのような時にも,感情的になるのではなく, 伝え方を工夫しているようである。また,相手の意見 を傾聴しようとする思いも強くなる。相手の意見や立 場を尊重し,理解しようとすることで,考え方に柔軟 性も示されるようになっている。  ゼミナールでの活動は,チームワークで鍛えられる 個人の力がある。ほとんどの学生ははじめ,チーム ワークとはみんなで仲良く足並みを揃えてがんばるこ とだと思っている。しかし,活動を進めるにつれて, チームで仕事をするとき,自分がどのような役割を果 たすべきかを理解し,実行していくことが重要である 写真 3 ミーティング中の学生たち

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と実感できる。チームの状況を把握し,全体の成果を 意識するようになるのである。  チームワークを強く意識するようになると,自分の ためではなく,チームのために自分が何をすべきかを 第一に考える。状況に応じて,自らの発言や行動を適 切に律する必要もあり,ルールや人との約束を守るこ とを重視するようになる。真剣になればなるほど,ス トレスを抱えることもあるが,成長の機会だとポジ ティブに捉えて対応する力も生まれる。  ゼミナールにおけるマーケティングの実践的活動を 通じて得られる教育効果,とりわけ社会人基礎力が身 につくことは,学生の就職活動結果からも裏付けられ ている。  短大生の場合,ゼミナールでの活動は就職活動と同 時に進めなければならず,学生の負担は決して小さく はない。とはいえ,ゼミナールでの活動に熱心な学生 ほど,就職活動も積極的に励む傾向が示されており, そうした学生ほど志望する企業からの内定を早い時期 にいただくことができる。ゼミナール全体での就職状 況は大変好調で,就職率 100%の実績を残している。

Ⅳ.課題

 活動 4 年目に突入し,ゼミナールでの活動における 課題も明確になってきた。  実践的な活動では,学生の個人差が目立つ。元々の 能力差や,得手不得手の相違はまったく問題ではない。 課題として重視されるのが,活動に対するモチベー ションの個人差である。当然のことながら,モチベー ションの高い学生には,責任や作業が集中する。結果 的として,がんばる意欲のある学生は,重要な役割を 担うことになり,本人も大いに成長し,得られる成果 も大きい。モチベーションが低い学生の得られる成果 が少ないのは必然であるが,それにより必要以上に一 部のやる気のある学生の負担が大きくなってしまう。 また,モチベーションが極端に低い学生がいると,全 体のモチベーションを下げる恐れもある。  これまで,ゼミナールの学生全員に対して,全員で 協力することの大切さ,みんなでがんばることの意義 を繰り返し伝えてきた。また,おそろいの T シャツ やエプロンなどを着用させることで,チームであるこ とを意識させた。さらには,ゼミナールでの活動には 楽しみの要素も取り入れ,明るい雰囲気を作るよう心 がけてきた。  これまでのところ,極端にモチベーションが低い学 生はほとんどいなかったものの,他の学生に不満感を 持たせるようなふるまいをする,やる気の乏しい学生 は存在する。そうした学生には個別に話をする機会を 設けたり,親しい学生にアドバイスをさせたり,働き かけを行っている。それでも最終的には本人がやる気 を持ち得なければ事態が好転しない。いかに一人ひと りの力が大切であるかを理解させ,高いモチベーショ ンを維持したままに活動を展開するかが今後の課題で ある。  短大生は活動に費やせる時間に限りがある。ゼミ ナールでの活動に取り組める 2 年次には,就職活動も 本格化する。そして,2 年次の年内には卒業論文をま とめなければならない。  さらに,基本的に 1,2 年生が一緒に活動に取り組 む機会はほとんどなく,先輩から後輩へといった活動 の引き継ぎが十分にできない。よって,活動をバー ジョンアップさせていくことも難しいのが現状である。  学内でのイベントやアウトキャンパス・スタディで は,1,2 年生が全員で顔を合わせることができる貴 重な機会であるため,コミュニケーションを促し,一 体感を持たせるよう努めている。また,1 年生のうち からゼミナールでの活動に目を向けられるよう,2 年 生が試作するおにぎりを 1 年生も試食している。とは いえ,1 年生は活動を断片的に垣間見ているだけに過 ぎず,2 年次になり前年より活動をバージョンアップ させることができるかというと,それは非常に困難で ある。よって,今後はいかにして活動を進化させてい くかも課題として捉え,ゼミナールでの活動をより一 層充実させていきたい。 写真 4 高校生にプレゼンテーションしている学生

参照

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(1)  研究課題に関して、 資料を収集し、 実験、 測定、 調査、 実践を行い、 分析する能力を身につけて いる.