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瀬戸内海燧灘でユムシの巣穴から採集されたカニ類

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(1)

C A N C E R 14 (2005)

p.1-4

│ 原著論文│

瀬戸内海燈灘でユムシの巣穴から採集されたカニ類

伊 谷 行 ・伊知地稔・上田拓史

A b

s

act

Symbiotic association of the varunid and

pinnotherid crabs with the burrows of the echiuran

Urechis unicinctus was investigated

at the

tidal flats

in Hiuchi-nada

,出

e cen

回1

Seto Inland Sea

]apan.

At the study sites

sediment rich in the

burrows

of U. unicinctus was carefully dug and checked

for the presence or absence of the symbiotic crab.

Because the tidal flats were densely inhabited

by upogebiid and callianassid burrowing

shrimp

only the crab that was found very close

to the body of U.

unicinctus in its burrow was

regarded as a

symbiont of the echiuran. A s a

result

four specimens of Acmaeoρleura balssi

and one specimen of

A.

toriumii

(V

arunidae)

and six specimens of PseudoPinnixa carinata

(Pinnotheridae) were found associated with the

burrows ofι

unicinctus.

はじめに

太 平 洋 東 部 で は , ユ ム シ 類 の

Urechis caupo

Fisher & MacGinitie

1928

U

字 状 の 巣 穴 の 中 に,ウロコムシ類,カニ類,テ ッポウエピ類, 二 枚貝類,ハゼ類などが住み込むことが知られて おり

(MacGinitie

1935)

,こ の事例は,海洋環境 における共生関係の例として多くの教科書で紹介 されている (例えば,

Le

vinton

1995; Nybakken

2001)

.

日本を含む太平洋西部には,同属のユ ムシ

Urechis unicinctus (von Drasche

1881)

が 分

布しており,同様に

U

字状の巣穴を作る

(Sato

1931)

が , ユ ム シ の 直 腸 内 に 住 む カ イ ア シ 類

Gyo 1

T . 釧1,

Minoru 1ZICHI & Hiroshi UEDA: Crab

species coUected from the

burrows of Urechis

unicinctus in Hiuchi-nada

the

central Seto 1nland

Sea

]apan

Goidelia japonica Embleton

1901

が報告 されてい る

(Embleton

1901)

のみで,これまでその巣穴 に共生する生物は報告されていない. ユムシはかつて日本の干潟に多産したが,現在 では減少し,絶滅が危慎されている状態にある (和 田ら,

1996).

そのため,ユムシの共生者を研究 することは難しいと考えられたが (伊谷,

2001;

2003)

,愛媛県東部の; 瞳灘沿岸では干潟域にユム シが生息しており ,今でも釣り餌用として盛んに 採集されている. 今回,ユム シの巣穴に共生する カニ類が明らかとな ったので報告する.

材料と方法

2003

年7 月か ら

2005

2

月にかけて, 瀬戸内海 中央部の燈灘に位置する河原津干潟と加茂川河 口干潟で,干潮時にシャベルを用いて採集を行 っ た

(Fig. 1)

どちらの干潟も砂質干潟であり,ユ ムシとともに,アナジャコやナルトアナジャコ, ニホンスナモグリが同所的に分布している. これ らのアナジャ コ類の巣穴に共生するカニ類と混同 されることを避けるため シャベルで堆積物を掘 る際,ユムシの巣穴がは っきりと区別でき

(Fig.

2 A)

,かつ,その巣穴内でユムシの体のすぐ近く にカニ類が発見された場合

(Fig. 2B)

にのみ, そのカニがユ ムシの巣穴に共生していたと 判断し た.

結 果

調査地では

120

個体あまりのユムシを採集した が,堆積物を掘る際,多くの場合は巣穴壁がく ずれてしまうため,ユムシの共生者の有無は確 認できなか った. しかし, 11例 で,ユムシの巣 穴にカニ類が共生していた ことを 確認できた. モクズガニ科ヒメアカイソガニ属のオオヒメアカ イソガニ

Acmaeopleura balssi Shen

1932

q

例,

(2)

2 瀬戸内海媛灘でユムシの巣穴から採集されたカニ類

Pacific Ocean

3 3・

132・ 135・E

Fig.

1.

Sarn

pling locations:

Ka

waratsu (133

04'E,33'58'閃; K am o gawa River (133.09'E, 33.56'E)

卜リウミアカイソモドキ

A. toriumii

Takeda, 1974

1

例 ,ま た, カク レガ ニ 科 の ウ モ レ マ メ ガ ニ

PseudoPinnixa cari

ta

COrtrnann, 1894)

6例

である 採集個体の性 , 甲幅,宿主のユムシの湿 重量,採集地点,採集日についてはTable 1に示 した . また,Table 1に挙げた11例の 他 に,崩れ た砂の中から採集されて ,宿 主 が何 なのか,巣穴 に共生していたのかどうかも不明な個体も多数得 られた. オオヒメアカイソカ、ニで10個体,ウモレ マメガニで5 個体が採集されたほか, トリ ウミア カイソモドキは100個体以上採集されたが,本種 は調査地で、の密度が高かったため 出現した個体す べてを採集していない. 標本は高知大学教 育学部 生物学教室にて保管される.

考 察

太 平 洋 東 部 の ユ ム シ 類

Urechis caupo

の巣穴に 共生するカニ類は,カク レガニ科の

Pinnixa

属と

Sclerotlax

属 で あ るのに対し,日本産のユムシの 巣穴に共生するカ ニ類は カク レガニ科のウモ レ マメガニに加 え,モク ズガニ手ヰのヒメアカ イ ソガ ニ属である ことが特筆 すべき点である . オオヒメアカ イ ソガニの生態に関しては,酒井 (1976) では「宇品産の標本は・'A nnelids" と共 生していた」との記述がある. 宇品の標本を採集 された( 故) 瀧明夫氏に話を伺ったところ,

r

Fig. 2. A.

Urechis unicinctus

in its burrow (at K a mogaw a

River). B. Ps

eudopinnixa

ca

nata

found under

the body of

U unicinctus

(at K a mogawa悶ver),

C.

AcmaeoPleura torimii

加d

U unicinctus

(in

the aquarium at C M E S, Ehime University),

ムシの巣穴から採集したものだと思う 」 とのこと であった. ユムシ類の分類については,環形動物

門の1つの綱として扱われる場合もあれば,独立

した門として扱われる場合もある (近年の知見に ついては ,Hessling & Westheide, 2002; Bleidorn

et al.

2003

を参照) ,酒井 (1976) の“A nnelids"

はユムシを指している かも しれ ないし ,実際には ゴカイ類であったのか も しれない. しかし ,本 研 究によって,オオヒメアカイソガニがユムシの巣 穴を利用することが確実になった. また, Itani

et

al

(2002)

で は , 本 種 の 宗 谷 岬 沖 の 個 体 群 で は

(3)

伊 谷 行 - 伊 知 地 稔 ・ 上 回 拓 史 3 Table 1. Crabs found associated with the burrows of

Urechis unici

ctus.

speCles sex widcarapace host size locality date

出 (mm) (g) Varunidae

Acmaeopleura ba

ω

i

Shen, 1932 ma1e 3.23 1.08本a

Ka

waratsu 15]u12003

AcmaeoPleura balssi

Shen, 1932 male 4.29 1.29* a

Ka

waratsu 15]u12003

AcmaeoPleura balssi

Shen, 1932 ma1e 8.74 8.42*b K a mogawa 7 M a y 2

4

Acmaeopleura balssi

Shen, 1932 male 4.16 2.70* a K a mogawa 18 M a y 2004

AcmaeoPleura toriumii

Tal句da,1974 female 6.09 0.97*a K a mogawa 18 M a y 2004

Pinnotheridae

Pseudopinnixa carinata

(Or伽lann,1894) female 11.23 2.91ホb K a mogawa 7 M a y 2004

PseudoPinnixa carinata

(Ortmann, 1894) female 7.10 2.44*b K a mogawa 7 M a y 2004

Pseudo

innixa carinata

(Or凶lann,1894) female 6.91 2.11 *b K a mogawa 7 May2004

Ps

eudoPinnixa carinata

(Ortmann, 1894) male 7.18 1.47*b K a mogawa 7 M a y 2004

Pseudopinnixa carinata

(Ortm加 n,1894) male 7.17 6.37*b K a mogawa 7 M a y 2004

Pseudopinnixa carinata

(Ortmann, 1894) male 7.80 2.02*b K a mogawa 14 Feb 2005

ホa,blotted wet weight of the body fix.ed in ethanol; * b, blo此ed wet weight of the . body fix.ed in forma1in

甲幅1 7 m mに達する大型個体の採集例もあること から,巣穴共生を行わない個体群 もあるかもしれ ない,と推論した. 本種がゴカイ 類などユムシ 以 外の巣穴と共生するかどうか,自由生活を行う個 体,または個体群があるのかどうかは,今後の研 究課題である . トリウ ミアカイソ モドキは,これまでアナジャ コ科とスナモグリ科のアナジャコ類の巣穴に共 生することが知られている( Itani,2002; 2004). 本 種 は , 自 ら 巣 穴 を つ く ら ず, また堆積物表層 からも採集されないため,専ら 他 の生物の作っ た巣穴に共生していると考えられている (Itani, 2002). Davie (1992) は香港の干潟で巣穴構造か ら本種を採集したが,干潟にはアナジャコとス ジユムシの巣穴が錯綜しており , どちらを宿主 としていたかは分からなか った. 本研究でトリ ウミアカイソモドキがユムシの巣穴を利用して いたこと,スジユムシの巣穴にはハサミカクレガ ニ

Mortensenella forceps

Ra

thbun, 1909をはじめ, 員類など豊富な共生者が存在す ること (Morton, 1988) から ,本種がスジユム シの巣穴を 利用 する ことも十分に考えられる. さらなる調査が必要で あるが,日本ではスジユムシの生息場所が干潟で はなく,サンゴ礁や岩礁の転石下であるため (西 川 ら, 1995を参照) ,日本での研究は難しいかも しれない. ウモレマメガニは,報告例の少ないカニであ っ たが,近年,特に近畿地方からの記録が相次いだ ( 古賀 ほか, 2003を参照) . 本種もアナジャコ科と スナモグリ科のアナジャコ類の巣穴から採集され ている( Itani,2004)が,本調査の結果,ユムシへ の共生が記録された . しかし ,酒井 (1976)では, 「本種は,砂泥質の干潟に浅く埋もれて生活して いる種類である

J

としている . 予備的な観察とし て,愛媛大学沿岸環境科学研究センタ ー (C M E S) の水槽 でユムシに巣穴をつくらせたところ, トリ ウミアカ イソモドキは巣穴に入札巣穴口やユム シの身体の近くで観察されるが (Fig.2C),ウモ レマメガニは巣穴には入るものの,ユムシの巣穴 を崩して砂泥中に埋もれる行動もしばしば観察さ れた今後,精細な採集や実験により,本種がど れほど巣穴に依存して暮らしているかを調査する 必要がある.

謝 辞

オオヒメアカイソガニに関する知見を提供し てくださ った京都大学理学部動物生態学研究室の (故) 瀧明夫氏,ユムシの分布する干潟を紹介し てくださ った愛媛大学沿岸環境科学研究センター の奈良正和博士に深く感謝いたします.

(4)

4 瀬戸内海燈灘でユムシの巣穴から採集されたカニ類

文 献

B1

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Fig.   1.  Sarn pling locations:  Ka waratsu (133 ・ 04'E, 33'58' 閃;

参照

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