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2型糖尿病患者における衝動的間食行動の先行条件に関する検討

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-53 402

-2 型糖尿病患者における衝動的間食行動の先行条件に関する検討

○北原 万莉1)、齋藤 順一1,2)、井上 和哉1)、高橋 まどか1)、熊野 宏昭3) 1 )早稲田大学人間科学研究科、 2 )日本学術振興会特別研究員、 3 )早稲田大学人間科学学術院 【目的】 2 型糖尿病は生活習慣やストレスなどの環境要因に よって発症し, 生活習慣病としても知られている。 2 型糖尿病の治療は日常生活と深い関係があり, 患者自 身が治療の必要性を理解し実行することが求められ る。しかし, 2型糖尿病患者は発症後も過食や不規則 な食事, 間食などの食行動の問題を抱えており, 自己 管理行動を続ける上で様々なつらさを感じている(林 他, 1998)。近年, 2型糖尿病患者では衝動性が高いこ とが示されており (Vincent & Hall, 2015), このよ うな食行動の問題の背景に 2 型糖尿病患者の衝動性が 関連している可能性がある。 しかし, 日常生活場面において, 衝動的な食行動が 生起しやすい環境について検討した研究は少ない。そ こで, 本研究では 2 型糖尿病患者の間食行動をター ゲット行動とし, 日常生活場面において衝動的間食行 動の生起しやすい先行条件について検討することを目 的とする。衝動的間食行動の測定にあたり, Rachlin & Green (1972)による衝動的行動の定義をふまえ,間 食によって短期的には望ましい結果を伴う (短期小報 酬の獲得) が, 長期的には望ましくない結果を伴う (長期大報酬の損失) ような間食行動を衝動的間食行 動と操作的に定義する。 【方法】 対象者 外 来 の 内 科 医 院 に 通 院 す る 2 型 糖 尿 病 患 者12名 (男性 3 名, 女性 9 名, 平均年齢50.67±6.92歳)を対 象に調査を行なった。 調査手続き データ収集には, 日常生活場面におけるデータ収集 法であるEcological Momentary Assessment (EMA; Stone & Shiffman, 1994) を用いた。本研究では, 研 究対象となる出来事を捉えるEvent - Basedデザイン (Shiffman et al., 2008) を用い, 間食行動生起時の 状況を捉えることで間食行動の随伴性を検討した。 EMA調 査 はGoogleのForm機 能 を 使 用 し て 回 答 用 フォームを作成し, 参加者のスマートフォンなどに回 答用フォームのURLを含めたメールを配信して, 回答 を求めた。回答は間食行動生起時に自発的に回答する ものとした。調査期間は 2 週間とした。 測定指標

Grenard et al. (2013), McKee et al. (2014) を 参考に, 日常生活場面における間食に関する質問を作

成した。

( 1 )対象者の基本情報

身長, 体重, HbA1cについて事前に回答を求めた。 身長および体重のデータからBody Mass Index (BMI) を算出した。HbA1cは過去数ヶ月の平均的な血糖値の 指標である。 ( 2 )間食前の先行刺激に関する質問 ( A : 先行刺激) 「誰と一緒にいたか」について「一人」,「家族」,「同 僚」,「友人」,「その他の人」の中から選択式で回答を 求めた。同様に,「どこで間食したか」について,「自 宅」,「職場」,「その他の場所」の中から選択式で回答 を求めた。 また, 「間食直前の気分」について, 不快 ( 1 )〜 快 ( 7 )の 7 段階で回答を求めた。 ( 3 )間食直後の結果に関する質問 ( C :短期的結果) 「短期気分」に関する質問をした。「短期気分」は間 食をして一口目を食べた時点での気分とした。「間食 直前の気分」と同様, 7段階で回答を求めた。 ( 4 ) 間食の長期的結果に関する質問 ( D :長期的結 果) 「長期気分」に関する質問をした。「長期気分」は回 答時点での気分とした。「間食直前の気分」と同様, 7 段階で回答を求めた。 倫理的配慮 本研究は早稲田大学「人を対象とする研究に関する 倫理委員会」の承認を得て実施された。 分析方法 「間食直前の気分」,「短期気分」,「長期気分」の得 点から操作的定義にしたがって衝動的間食行動と非衝 動的間食行動に分類した。その後, 「誰と一緒にいた か」,「どこで間食したか」に関する各選択肢を独立変 数, 間食の分類 (衝動的間食行動・非衝動的間食行 動 ) を 従 属 変 数 に そ れ ぞ れ マ ル チ レ ベ ル ロ ジ ス ティック回帰分析を行い, オッズ比を算出した。解析 時には, 各選択肢について選択されたものを1, それ 以外の選択肢を 0 として変数化した。オッズ比が 1 よ り大きい場合は衝動的間食行動の生起確率が高く, 1 より小さい場合は衝動的間食行動の生起確率が低いこ とを示す。解析には統計解析ソフトR (ver.3.3.2) を 使用した。 【結果】 対象者のBMIは平均値は28.25, 標準偏差は6.29, HbA1cの平均値は6.76, 標準偏差は0.59であった。

(2)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-53 403 -本研究では, 間食行動によって短期的な報酬を得る が, 長期的には望ましくない結果を得るような間食行 動を衝動的間食行動と操作的に定義した。そこで, 全 ての間食データの中で,「間食直前の気分」得点が「短 期気分」得点以下であり, かつ, 「短期気分」得点が 「長期気分」得点より高くなるような間食を衝動的間 食行動, それ以外の間食データを非衝動的間食行動と して分類した (衝動的間食行動24データ, 非衝動的間 食行動76データ, 合計100データ)。 「誰と一緒にいたか」,「どこで間食したか」に関す る各選択肢を独立変数, 間食の分類 (衝動的間食行 動・非衝動的間食行動) を従属変数にそれぞれマルチ レベルロジスティック回帰分析を行い, その結果を Table1に示した。 間食行動の生起時の環境について, 同僚と一緒にい る場合のオッズ比は8.29 (p =.07, 95%CI [0.83, 82.51]) であった。また, 自宅にいる場合のオッズ比 は0.19(p <.05, 95%CI [0.05, 0.80]), 職場にいる 場 合 の オ ッ ズ 比 は9.10(p <.05, 95%CI [1.32, 62.45])であった。 【考察】 本研究の目的は日常生活場面における衝動的間食行 動の生起しやすい先行条件について検討することで あった。 間食行動生起時の環境について, 同僚や職場などの 条件では, オッズ比が高く, 衝動的間食行動が生起し やすいことが明らかになった。特に, 職場で間食する 場合は他の場所で間食する場合よりも9.10倍衝動的間 食行動が生起しやすいことが示された。これらのこと から, 仕事に関連する状況で衝動的間食行動が生起し やすいことが考えられる。一方で, 自宅にいる場合の オッズ比は0.19であり, 自宅では衝動的間食が生起し にくいことが考えられた。このことから, 特に職場で の間食行動をコントロールすることで衝動的間食行動 を抑制できる可能性が考えられる。 本研究の結果から, 仕事に関連する状況で衝動的間 食行動の生起しやすい可能性が示唆された。しかし, 仕事に関連するどのような状況が衝動的間食行動と関 連しているのかは本研究では明らかにされていない。 今後は, 不安やストレスなどのネガティブな思考や感 情, あるいは多忙による不規則な食事なども考慮し, 職場におけるどのような状況が衝動的間食行動の生起 に影響を与えているのかについて, より詳細な検討が 必要となる。 【主要引用文献】

Rachlin, H., & Green, L. (1972). COMMITMENT, C H O I C E A N D S E L F - C O N T R O L . J o u r n a l o f t h e Experimental Analysis of Behavior, 17, 15-22.

Stone, A. A., & Shiffman, S. (1994). Ecological m o m e n t a r y a s s e s s m e n t (E M A) i n b e h a v o r i a l medicine. Annals of Behavioral Medicine, 16 ( 3 ), 199-202.

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