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機能的アセスメントに基づく事例検討型研修会が教師の生徒指導に対するセルフエフィカシーおよび対処方略に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-30 180

-機能的アセスメントに基づく事例検討型研修会が

教師の生徒指導に対するセルフエフィカシーおよび対処方略に及ぼす影響

○中川 智晴1)、堀川 柚2)、野中 俊介3)、嶋田 洋徳4) 1 )日高市立高萩小学校、 2 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 3 )東京未来大学こども心理学部、 4 )早稲田大学人間 科学学術院 【問題と目的】 児童生徒に対する生徒指導においては,特別な教育 的支援が必要とされる場合も少なくなく,問題行動の 背景も多様であることから(文部科学省,2012),一 様な型通りの指導方法では対応が困難であることが予 測される。 児童生徒の問題行動に対して,適切な指導を行なう 際の理論的に裏付けられた判断する方法として,機能 的アセスメントがあり,幼児や児童生徒の問題行動に 対する有効な支援方略として成果をあげている(馬場 ら,2013)。しかしその多くは,外部専門家による行 動コンサルテーションによるものであり,多く必要と される人的・時間的コストの問題を解決するために は,教師自身が機能的アセスメントを行なうことが有 効であると考えられる(中川ら,2017)。このような 教師に対する研修を実施する際,仮想事例を用いた研 修プログラムと実事例を用いた研修プログラムはいず れ も 効 果 を 示 し て い る( 大 久 保 ら,2015; 田 中, 2017)ものの, 1 つの事例についてグループで検討す る形式は「知識習得」には効果が高い一方で,自らの 職場において日々の実践に「応用」するためには,教 師自身が担任する児童生徒の事例について検討するこ とが必要であると予測できる。しかしながら,これら の形式のうち,どちらの形式がより効果があるのかは 必ずしも明らかにされていない。また,これまでの教 師に機能的アセスメントに基づく支援方略を教授する 研修は,保育園や幼稚園,特別支援学級の教師,養護 教諭を対象としており,小学校の通常学級の教師を対 象とした機能的アセスメントに基づく支援を行なうた めの研修の効果は必ずしも明らかにされていない。 そこで本研究においては,小学校の通常学級の教師 を対象として,機能的アセスメントに基づく支援を行 なうための研修会を実施し,より効果的な研修会の形 式としてグループでの教師自身の事例(実事例)の検 討と事前に準備した 1 つの事例(仮想事例)の検討と の差異を記述することを目的とした。具体的には, 「仮想事例よりも実事例を用いた研修会に参加した教 師は,研修会前後で生徒指導全般へのセルフエフィカ シーが高まり,児童の問題行動に対する対処方略数と 適応的な対応数が増加するであろう」という仮説の検 証を行なった。 【方法】 調査対象者 公立小学校教師24名。実事例群12名(平 均年齢:37.8歳,SD = 10.5,平均経験年数:13.0年, SD = 11.0),仮想事例群12名(平均年齢:39.3歳,SD = 10.3,平均経験年数15.0年,SD = 10.2)であった。 測度 ( 1 )行動科学的アプローチに関する知識:石 垣(2009)において作成された項目群を一部改変, ( 2 )生徒指導に対するセルフエフィカシー:職務葛 藤項目群尺度(高木ら,2008),( 3 )行動レパート リー:嶋田ら(2014)において作成された項目群,( 4 ) 問題行動に対する適応的な対応(嶋田ら,2014)にお いて作成された項目群,を用いた。 倫理的配慮 本研究は早稲田大学「人を対象とする研 究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施された (承認番号2017-132)。研究参加においては,参加は自 由意思によるものであり,いつでも中止できることな どに関して説明を行ない,口頭および書面による同意 を得た。 【結果】 行動科学的アプローチに関する知識,生徒指導に対 するセルフエフィカシー,行動レパートリー数,問題 行動に対する適応的な対応数をそれぞれ従属変数,群 2 (実事例群,仮想事例群)×時期 4 (pre,post-1, post-2,follow-up)の 2 要因分散分析を行なった。 その結果,行動科学的アプローチに関する知識の時期 の 主 効 果 が 有 意 で あ り(F (3,66) = 9.85,p < .001)であった。多重比較の結果,preは他の水準に 比べて知識得点が有意に高いことが示された(Figure 1)。また,生徒指導に対するセルフエフィカシー(F (3,66)= 1.54,n.s. )および行動レパートリー(F (3,66)= 1.10,n.s. ), 適 応 的 な 対 応(F (3,66)= 0.36,n.s. )に有意な交互作用は認められなかった。 その一方で,生徒指導に対するセルフエフィカシーに おいては,時期の主効果が有意(F (3,66)= 4.79,p <.01)であり,多重比較の結果,preに比べて他の水 準のセルフエフィカシー得点が有意に高いことが示さ れた(Figure 2)。 【考察】 本研究の目的は,小学校教師を対象とした機能的ア セスメントに関する研修会を実施し,実事例群と仮想 事例群における効果の差異を検証することであった。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-30 181 -小学校教師は,機能的アセスメントに基づく支援方 略を教授する研修会を受講することによって,従来か らの知見と同様に行動科学的アプローチに関する知識 を獲得できることが明らかにされた。その一方で,行 動科学的アプローチに関する知識得点の群による差異 は示されなかったことから,実事例群も仮想事例群も 同じように研修会の内容を理解していたと考えられ る。この結果は,いずれの群においても,グループで の事例検討を体験的に理解することができたためであ る可能性があると考えられる(肥後,2007;寺門ら, 2014)。 また,実事例群,仮想事例群にかかわらず,小学校 教師に対して機能的アセスメントに基づく支援方略を 教授する研修会を行なうことが,生徒指導に対するセ ルフエフィカシーを高めることが明らかになった。本 研究においては,仮説とは異なり実事例群が仮想事例 群よりも有意な上昇を示さなかったことから,より応 用的な実事例を用いなくても仮想事例で十分セルフエ フィカシーを向上させることができる可能性があると 考えられる。また,仮想事例群は,実事例群とは異な り複数の教師で意見交換できたことがセルフエフィカ シーの向上に影響した可能性がある。 さらに,行動レパートリー数と問題行動に対する適 応的な対応数については,群と時期いずれにおいても 有意な差がみられなかった。これは,実践場面におい て問題行動の維持要因について考えることはできたも のの,機能する指導を選択するまでに至らなかった可 能性があると考えられる。また,教師歴が長い対象者 が多かったことから新しい手法に対して知識は身につ いたものの,指導場面における実践的な行動が変容す るまでには至らなかった可能性があると考えられる (山口・嶋田,2009)。 以上のことから,本研究では実事例を用いることの 十分な優位性は示されなかったものの,今後,学校教 育現場において機能的アセスメントに基づく支援を教 授する研修会を実施する場合,まずは教師の状態に応 じて情報量を調節しやすい「仮想事例」を用いてケー スフォーミュレーション方略を十分に習得した後,指 導が非機能的である児童の問題行動についての「実事 例」を用いてケースフォーミュレーションを行なうこ とによって,実践的な対処方略が広がり,機能的な指 導が増える可能性があると考えられる。

参照

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