「
ふるさと春日井学」研究フォーラム
Forum for Furusato Kasugai Studies
「ふるさと春日井」まちづくりへの応援
メッセージ
『ふるさと意識なくして地域の創生なし』
会報
NO.31 2015.9.30発行 編集責任:河地 清 [email protected]第 31 回「ふるさと春日井学」研究フォーラム』
『ふるさと春日井の自然-蛍のロマン-』
『探訪 高貝用水』
9 月 6 日(日)市民活動支援センター(ささえ愛センター)において「ふるさと春日井学」 研究フォーラムをテーマ『ふるさと春日井の自然-蛍のロマン-』(春日井ビオトープの会 会長野田淑人氏)と『探訪 高貝用水』(「ふるさと春日井学」研究フォーラム副会長塚田 忠雄氏)の二本で開催しました。 野田淑人氏より『ふるさと春日井の自然~蛍のロマン』と題して講演とパワーポイント による映像を見せていただい。塚田忠雄氏より、資料に詳細な高貝用水についての論文「高 貝用水物語~潤った7 カ村に入らなかった神領」が配布され、「春日井市史」の誤りも指摘 されていると講演された。 市民 37 名の参加がありました。 講演する野田淑人氏 講演する塚田忠雄氏 会場風景-
発表要旨
- 『ふるさと春日井の自然~蛍のロマン』 野田氏のビオトープ・ホタルの飼育の報告は 2 度目であるが、今回は住友理工(旧東海ゴ ム)の「夢・街・人づくり助成」のまちづくり応援を受けての「進化した」活動(司会者の言 葉)の報告であった。“進化”の内容は①400 人もの人が野田氏の自宅にあるビオトープを訪 れ、ホタルを見に来た。②4 月末に 30 人もの人が繁田川の清掃活動に参加した。③清掃を した繁田川(JR 中央線の橋下約 50m のところ、ピアゴ気噴店の近く)にホタルの幼虫を放流 した。町内の子どもたちも参加した。④水質検査も3 ヵ所(放流地点とその上流 2 ヵ所)で実 施した。⑤放流直後、台風 6 号による大雨で増水し、幼虫は流されたが、ひょっとして下 流のどこかで生息しているかも知れない。来年度に向け頑張って生きたい--というのが要 点。 Ⅰ. 前半はホタルという昆虫について (1)節足動物門-六脚上綱-昆虫綱の中でのホタルの位置づけ … 節足動物の特徴の一つ 「変態」では完全変態(幼虫-蛹-成虫)をする。蝶と同じだ。(2) ホタルの一生は、成虫が 6 月中旬から7 月中旬にかけて産卵し、7 月上旬から中旬にかけ孵化、7 月下旬から 3 月上旬 にかけ幼虫になるが、8 月上旬時点では 3mm、8 月中旬には 5mm まで成長し、11 月上旬 から中旬には12mm 程度になる。幼虫には 6 本の脚があり、エラがいくつもある。幼虫は 4 月から 5 月上旬に上陸。5 月下旬までには蛹(さなぎ)になる。この時、土繭の中で蛹にな る。6 月上旬から中旬にかけ羽化し、成虫になる。(3) ホタルの種類と 3 種の「光る」ホタ ルの比較 … 日本には約40 種類いるが、「光るホタル」はゲンジホタル、ヘイケホタル、 ヒメホタルの3 種類である。 ゲンジホタル ヘイケホタル ヒメホタル 明滅回数 約20 回/分 約 80 回/分 約 120 回/分 飛び方 曲線的 直線的 蛇行的 幼虫期の餌 カワニナのみ カワニナ、タニシ、 キセル貝、オカチョ ウジ モノアライガイ 棲んでいる所 谷川、用水路など 小川、水田、池など 池、竹やぶ、杉林など 天 敵 クモ、カエル、カマキリ、ザリガニなど(3 種とも同じ) 寿 命 およそ2 週間 およそ 2 週間 およそ 10 日間 (注)餌になるカワニナは毒を持ち臭い。カワニナもホタルの幼虫も排泄物を出し、水の管理 が大変で、1 日に 2~3 回も掃除が必要。 (4) 発光のメカニズム … 「光の宝石」と呼ばれる発光のメカニズムを調べてみた。ホタ ルの発光器は発光細胞、反射細胞、神経、気管から成る。そのメカニズムを省くが、大きな エネルギーを生じさせ、熱を伴わない光エネルギーとして外部に放出する。この反応におけ る生成物は生きている発光器内でリサイクルされ、反応が継続される仕組みになっている。明滅する発光は①雌雄のプロポーズ、②食べてもおいしくないという警告、③敵を脅かす--などの意味をもつといわれる。 (5) ホタルの生息条件 … 水、土、空気、草、樹木な どの自然条件が良い場所だが、具体的には、①成虫が生息できる川の瀬、草、樹木など身を 潜める場所がある、②コケ類、水草などがあり、産卵できる場所がある、③幼虫の餌となる カワニナ、モノアラ貝などが棲むる場所がある、④その餌が食す珪藻類、水草がある場所、 ⑤水量、水質(DO)、水温などが安定して保たれている場所--などの条件が整う場所があるこ と。 Ⅱ. ホタル飼育・放流の意義など (1) ホタルの飼育と放流の意義 … ホタルの復元が全国的に行われてきているが、その 生態は於くが深く計り知れない。それ故に自然界というエリアでは観察しきれない生態を飼 育という過程を通して学ぶことは復元に繋がる大きな意義になる。しかし、人工的環境(自 宅のビオトープ)と自然環境の条件が違うため、ホタルが成虫になるまでの環境影響をどの ように受け、どう変化したが懸念される。自然界の凄さは絶大である。現在、ホタルを人工 的に飼育して復元のために河川に放流することは、生態系を壊すという指摘もあるが、しか し、ホタルの生息は減少の一途で、自然環境の保全、動植物の保全と併せて復元は大きな課 題だ。元凶からすれば、ホタルという宝物の保全と復元は必要不可欠だ。(2) ホタルのロ マン … 古来、ホタルは日本人の心をとらえてきた。今、私が考えているホタルのロマ ンは①ゲンジホタルとヘイケホタルの 2 種類だけが幼虫期のみ淡水の水中で暮らす。それ はなぜなのか ②蛹(さなぎ)の時期に土繭の中で 2~3 週間すごし蛹になり羽化する。グロ テスクな体型から見事な変化をする驚き ③成虫期の寿命とオスがメスより早く発生し、産 卵の頃にはオスはほとんどいなくなる。 (3) ホタルが飛び交う里山づくり … ホタルの生息のための環境保全と復元も大事だが、 ホタルそのものの生態系を知ってもらうことが大きな要素だ。今回の放流では結果を出せな かったが、その体験は大きな収穫だった。次にこの体験をつなぎ、春日井市の東部丘陵地域 を中心に、里山づくりによって、豊な自然と人間の共存、人々のふれあい、感動を生み出し、 歴史・文化・産業などを育むまちづくりに挑み、未来に生きる子どもたちのためにも、いつ までも住み続けたいまちづくり=里山づくりにチャレンジしようではありませんか、と締め くくられた。 『探訪 高貝用水』 要旨は、関田・小木田の高貝用水の「暗渠」を探し歩く歴史散歩(「暗渠学」が全国的に流 行りだした)の奨め、いま熊野・桜佐の土地改良・区画整理事業が進んでおり、最後の景観 を記憶にとどめようというのが、30 分しかない発表時間でのメインで、スライドを使って 取り入れ口(大留)の写真から桜佐で上条用水に注ぐこと。その上条用水が上条・下条・中切・ 松河戸から勝川にまで達していたこと。(注)現在は中切町の県立春日井高等養護学校付近の 地下貯水池に放流していてここで終りとなった。 資料に詳細な高貝用水についての論文「高貝用水物語~潤った 7 カ村に入らなかった神
領」が配布された。そこには「春日井市史」の誤りも指摘されている。 Ⅰ. 「春日井市史」の年表にみる用水関連史 春日井原は春日井市の西部地区だけでなく、篠木庄までも含む広大な土地で、開墾地と して開拓できる地であった。江戸時代はここを開墾地とし、また新田づくり、既存の田畑に 灌漑し、収穫を上げることが、藩の使命であった。入鹿池(1633 年)をつくり、入鹿用水で 南に水を送り、木津用水(1648 年)や新木津用水(1664 年)もその役割を果たした。高貝用水 の歴史は不明な部分が多い。1669 年に「高貝用水取入口を大留に変更」と書かれているが、 元は相生から取ったと書かれているが、その位置は不明である。もともと「古高貝用水」が あったものを関田・上条まで用水路を変更し、延長したと見るべきだと指摘した。高貝用水 の井組に入っていない大留と神領について、恩恵を受けないが用水工事に協力したと推定 した。近世村絵図を見て、田畑と用水・溜池・清水(湧水)の利用を確認している。全国諸藩 が「寛永の大飢饉」(1642 年)を機に百姓没落を防ぐ政策を幕府から命じられ取り組むが、 尾張藩ではその 10 年前に入鹿池の着工を始めており、1644 年に初代藩主徳川義直の採っ た莫大な用水工事費の財政負担を藩士に負担をさせる政策も紹介した。 Ⅱ. 高貝用水の功労者、加藤重兵衛のこと (1)林昌寺の墓碑は重兵衛と母であって、妻の 戒名ではない。、没年も間違いで林昌寺の本末関係にある瑞雲寺古文書の没年と墓碑の没年 は同じである。市史は墓碑の印刻を読み違えていると指摘。(2)本文中の高貝用水工事の時 期よりも年表の時期で見る方が正しいとの指摘もした。重兵衛の子孫はつい最近、300 年忌 を実施されている。(注)この講演の翌日に、桜佐で鎌倉・室町時代の遺蹟が発掘されたとの 中日新聞記事。 (記録:塚田忠雄)
OPINION
『ホタルが飛び交う里山づくり』
―「ふるさと春日井」の自然保護活動と「まちづくり」― 第 31 回「ふるさと春日井学」研究フォーラムで『蛍のロマンをテーマに「ふるさと春日 井の自然」について発表していただいた「春日井ビオトープの会」会長である野田淑人氏は 「ホタルと言う宝物を通して自然環境の保全、復元、生命の尊さ等の大切さを認識して、こ れから未来に生きる子供たちにも何時までも住み続けたいまちづくり(里山づくり)のため にチャレンジしようではありませんか。」と研究資料の中でメッセージを発信しておられま す。この考え方に全く同意するものです。 第 20 回「ふるさと春日井学」研究フォーラムで『ふるさと春日井の自然をまもる-みど りのまちづくりグループの自然保護活動-』のテーマで発表していただいた、「みどりのま ちづくりグループ」代表の高橋 勇氏は「森と緑を健康な状態で将来に引き継ぐ」ためには「人と自然が共生する」ことが大切である。とされ、数々の植林活動を通じて自然保護活動 を発表されました。共通するキーワードは、「保存・維持・継承」ということです。 その地域にある「文化、歴史、自然」はそこに住む人々の生活環境を創りだしてきました。 一つ一つの地域毎に環境は異なり、魅力や特色も異なります。それは、それぞれの「景観」 によって表れてきます。「景観」を創り出すのはそこに住む人々の共通の財産である「文化、 歴史、自然」を保存(保全)、保護(復元)、継承、伝えて行く営みによって創り出されます。 「景観」を創ることは所謂「まちづくり」の大前提であることがわかります。 「まちづくり」論の大御所田村明氏は、『まちづくりと景観』(2005.12 岩波新書)の中で 「都市景観は、自覚ある市民が思いをこめて協働し、長年にわたってつくりあげていく作品 だから、型にはまったマニュアルがあるはずはない、それぞれ自由で創造的な知恵を発揮す ればよい。」と述べ、「まちづくり」のための留意すべき 19 原則をあげておられます。 一つの基準となる原則ですので、参考にしたいと思います。 「まちづくり」のための留意すべき 19 原則 ①自然の地形を尊重し、できるだけ生かしていく。 ②特色ある自然の山・川・海・湖などを極力意識的に見せる。 ③連続した時間の証明者である歴史的遺産を尊重し、現代に生かす。 ④都市を拡散させないで、できるだけコンパクトにして、ゆたかな田園を保持する。 ⑤都市の上空は市民総有の空間としてコントロールする。 ⑥都市を一望で捉えられる眺望点を確保し、市民が都市の実感がもてるようにする。 ⑦協働作品としての都市景観に、個性ある統一性を求める。 ⑧統一を乱さない範囲の多様性を奨励し尊重する。 ⑨道路は人間のためにあることを確認し、歩行者空間を拡大する。 ⑩都市のシンボルをつくり、市民が一致できる共感点を育てる。 ⑪都市に潤いとくつろぎを増やすため、緑と花と水場を増やす。 ⑫「まち」に優れたアートやデザインされたストリート・ファニチュアを置く。 ⑬地域の素材をできるだけ使い、地域の色彩を見つける。 ⑭地域にそぐわない不良物を排除し、その侵入を防ぐ。 ⑮人々が楽しく安心して動き、憩う場を作り、市民の交流を深める。 ⑯都市を舞台にして伝統の祭り、魅力的な新しいイベントを繰り広げる。 ⑰日常生活の中で、市民の愛情ある手がいつも加えられていること。 ⑱ヒトやモノへの人々の優しい気持ちを育てる。 ⑲子供のときから老人まで「まち」への関心を深める教育・学習を行う。 この原則を生かすのは、地域の実行力である。⑳番目は各地域で追加してゆこう。と結ばれ ている。我が「ふるさと春日井」にもいくつか参考になる項目があります。 ⑳番目こそ「ふるさと意識」の醸成に他ならないと思っています。 (文責:河地 清)