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■■■「遺伝と遺伝子」2007 年度参考問題リストの解答例■■■
( 医学科1年 木下作成) ◆2009/2/5 「解答例」として公開 ★2007 年度後期に配布された、大野先生による遺伝学の参考問題リストの解答例です。一部問題 には用語説明や簡単な解説をつけました。 ★生化学の一部である遺伝腫瘍学の試験の配点は、遺伝50%+腫瘍 50%で、遺伝のさらに半分 が大野先生による出題になります。1.ある2つの表現型が Mendel
s second law of inheritance に従わない場合、その
理由を説明しなさい(2006 年度本試問題)
◆(類題―2006 年度本試より)ヒトにおいてある遺伝性疾患 A が、ある表現系 B を持つ集団に 高頻度に認められる。つまり、表現系A と表現系 B は Mendel s second law of inheritance に 従わない。この現象が起きる理由を説明しなさい。
★まずは用語の整理から。
◆ メンデルの第一法則(分離の法則principle of independent segregation):配偶子形成に おいて、体細胞では対になっている対立遺伝子が、分離して別々の配偶子に入ること。 例:(P)AA×aa → (F1)Aa →(F2)AA:Aa:aa=1:2:1
◆ メンデルの第二法則(独立の法則principle of independent assortment):2組以上の対 立遺伝子が、互いに無関係に別々の配偶子に入ること。 例:AaBb の配偶子は AB:Ab:aB:ab=1:1:1:1 であり、自家受精による F1 の表 現型は[AB]:[Ab]:[aB]:[ab]= 9:3:3:1 となる。 ◆解答+解説は、以下の方針で作成しています。 ・解答部分は、試験での再現可能性を考慮した、簡潔なものとする。 ・コメントや注で、解答作成の考え方、基本的な概念の説明、発展的な内容などを書く。 ◆この解答解説では、以下の記号を用いています。 ★:コメントや解説 ◆:脚注や短いコメント(解答・解説内に随時挿入されます) ◆もし間違いがありましたら、ご指摘いただけるとうれしいです。またご要望や質問な どもどうぞ。直接知らせていただくか、下記までメールください。 [email protected]
2 ★独立の法則は、2組の対立遺伝子が別々の染色体上にある場合にかぎり成り立つ。このとき2 組の対立遺伝子を「独立」の関係にあるという。逆に2組の対立遺伝子が同じ染色体上にあると き、これらの遺伝子はセットで遺伝する。このとき2組の対立遺伝子を「連鎖」の関係にあると いう。 例:A と b、a と B がそれぞれ同一の染色体上にある(連鎖している)とき、 AaBb の配偶子は Ab:aB=1:1 となる ただし上記の例は染色体の交差が起こらないと仮定した場合の理論値で、実際にはヒトなら染色 体あたり2∼3回の交差が起こり、AB や ab も一定割合でできる。染色体上の A-b、a-B 間の距 離が近い場合は、交差が起こっても連鎖がくずれる確率が小さくなる。 <解答>メンデルの独立の法則は、二つの表現型の原因遺伝子が別々の染色体上にある場合にか ぎり成り立つ。同じ染色体上にあるときは連鎖して遺伝するため、この法則には従わない。
2.Meiosis において recombination が起きる機構を説明しなさい
◆ 減数分裂Meiosis/体細胞分裂 mitosis ◆ 染色体の交差(乗換え)crossover/遺伝子の組換え recombination ★まず減数分裂における組換え現象をマクロに説明します。「機構」ということで何をどこまで 書くかが問題ですが、(1)相同組換え一般のホリデイモデルを説明し(2)減数分裂時の組換 え特異的にはたらくタンパク群について述べる……などが考えられますが、いずれも簡単には説 明できないので、解答は誤魔化して大雑把に書きます。 <解答>減数分裂の第一分裂前期で、2本の染色分体からなる相同染色体どうしが対合し、4本 鎖が密着した二価染色体bivalent という構造をつくる。この構造により相同組換えを担う各種タ ンパクがはたらきやすくなり、DNA 二本鎖の切断と鎖交換がおこることで、結果として非姉妹の 染色分体の間で染色体が交差する。3 ◆ 以下は交差の模式図。染色分体の交差箇所をキアズマというが、キアズマ形成は第一分裂時
に染色体が正常に分離するのに重要な役割を持っている。
3.ABO 血液型の A 型 allele が 30%、B 型 alleles が 10%、O 型 allele が 60%の集団
における O 型の表現系の割合を求めなさい(2006 年度再試問題)
◆ (類題―2006 年度本試より)ABO 血液型の A 型 allele がα%、B 型 alleles がβ%の集団に おけるA 型の表現系の割合を求めなさい。 ◆ 対立遺伝子allele ★血液型は複対立遺伝の典型例で、(1)抗原(赤血球上の糖鎖)と血液中の抗体の組み合わせ により決まる。その決定機構を右表で復習しておこう。同じ型 の抗体と抗原があると凝固してしまうことから、輸血できる・ できないが決まる。 この問題ではA、B、O の各 allele の遺伝子頻度が分かって いる。「遺伝子頻度」は集団遺伝学の概念で、特定のallele の セットについて、集団全体の頻度を指す。単純な確率計算によ って遺伝子型や表現型の分布を求めることができる。 <解答>下表より0.6×0.6=0.36 より 36% A(0.3) B(0.1) O(0.6) A(0.3) 0.09 0.03 0.18 B(0.1) 0.03 0.01 0.06 antigen antibody A A anti-B B B anti-A AB A,B - O - anti-A, anti-B
4 O(0.6) 0.18 0.06 0.36 <類題の解答>同様にして 2 2 2
100
)
100
(
2
100
100
100
2
100
AO
AA
4.以下の単語を説明しなさい(phenotype と genotype, homozygote と
heterozygote, dominant inheritance と recessive inheritance)
◆ 表現型phenotype/遺伝子型 genotype
◆ ホモ接合体homozygote/ヘテロ接合体 heterozygote
◆ 優性遺伝dominant inheritance/劣性遺伝 recessive inheritance
<解答>
・phenotype は個体にみられる観察可能な性質であり、genotype は phenotype を決めている遺 伝子の構成である。
・homozygote は、AA や aa のように優性・劣性が同じものが対になった遺伝子型を持つ個体。 またheterozygote は、Aa のように優性・劣性が異なるものの対になった遺伝子型を持つ個体。 ・ヘテロ接合体(Aa)のときに A が表現型に現れた場合、A を a に対して優性 dominant、逆に a は A に対して劣性 recessive という。特定の表現型に着目した場合に、その表現型が優性であ らわれるような遺伝的性質を持つとき、その遺伝様式をdominant inheritance と呼ぶ。逆に劣性 の場合をrecessive inheritance と呼ぶ。 ◆ たとえば単一遺伝子を原因とする疾患があったとして、その遺伝子が親から子へ、子から孫 へと引き継がれていく際に疾患があらわれるパターンから、優生遺伝/劣性遺伝を判断でき る。
5.Nucleosome の構造を説明しなさい
<解答> ・真核生物の染色体は、DNA とタンパクの複合体のかたちで存在しており、この構造をクロマチ ンという。クロマチンの基本単位がヌクレオソームであり、約 200bp の DNA がヒストンコアに約 2回巻きついた構造をしている。 ・ヒストンコアは、4種類のタンパクがそれぞれニ量体化し、全体で八量体となっている。ヒス トンは正電荷を持つ小型のタンパクであり、負電荷を持つDNA 主鎖と強く結合する。各ヒスト ンタンパクのN 末端は尾のようにコアの外へと突き出ており、この部分がメチル化やアセチル化 などの修飾を受けることで、ヌクレオソーム構造が変化する。5 ・ヌクレオソーム構造の変化には、このほかに クロマチン再構成複合体もかかわり、これは ATP 加水分解のエネルギーを利用してヒスト ンコアへのDNA の巻き付きをゆるめることで、 構造変化を引き起こす。 ・DNA は間期には主に、ヌクレオソーム線維 が規則的に折りたたまれた30nm 線維の構造 をとり、転写時のみ線状に伸びた構造をとると 考えられる。また分裂期には最も凝縮された構 造をとる。ヌクレオソームはこうした DNA の構 造変化の基盤となるような単位構造である。 ◆ 右図はクロマチンの段階的な凝縮の模 式図。 ◆ また下図は、ヌクレオソーム1単位の分 子モデル。ヒストン尾部が突き出ている 様子がわかる。
6.マウスとヒトの synteny の存在は進化的に何を意味するか説明しなさい
★シンテニーSynteny とは、2つのゲノムを比較した場合に、複数の遺伝子の並び順や地図上 の位置が似ていることで、進化的に保存された結果と推測される。6 ヒトとマウスは約7500 万年前に分岐した。ゲノムサイズと遺伝子数はほぼ同じであるが、分 岐後にトランスポゾンの移動や染色体の切断・組換えがそれぞれ何度も起こり、染色体の全体 構造は劇的に変化した。にもかかわらず遺伝子の並びが保存されている場所が多くみられる。 この理由はおそらく単純で、生存や適応にとって重要な機能を持った遺伝子の並びは、この機 能を喪失する変異をもった個体が排除されることで、よく保存されたと考えられる。 <解答>種間で遺伝子の並び順が保存されている場合、その領域が両方の種にとって共通の重要 な機能を担っているということが考えられる。次に挙げるような領域がよく保存されていること が知られている。 ・(タンパクの機能単位である)ドメインをつくるエクソンの配列 ・リボソームRNA などの機能的に重要な RNA 分子をつくる配列 ・DNA の転写にかかわる調節領域
7.Physical map と recombination map の違いを、centiMorgan の定義を含めて説
明しなさい
・減数分裂時の染色体の交差は、染色体のどの位置でも等し い確率で発生すると仮定すると、同じ染色体上の二つのマー カー(たとえば遺伝子)は、近くにあるほど交差により分離 する可能性が低くなると考えられる。この仮定をもとに複数 のマーカーの連鎖を調べていくことで、マーカーの染色体上 の相対位置をマッピングしたものを、recombination map ま たはgenetic map 遺伝地図という。 ・こうした方法で調べられた遺伝子間の距離をあらわす単位 がMorgan であり、減数分裂一回当たり、相同染色体間で平 均1回の交差が起こる距離を1モルガンと定義する。その 1/100 のセンチモルガン(cM)がよく使われるが、1cM は だいたい 1000kbp に相当するといわれる。 ・それに対して分子生物学な手法でDNA 分子を直接調べるこ とで、遺伝子を含む塩基配列の位置を示す地図を、physical map 物理地図という。 ◆ 右図は、酵母の1番染色体の、遺伝地図と物理地図の 例。(左が物理地図、右が遺伝地図)8.Human genome のサイズ・遺伝子数・構成を述べ
なさい
7 <解答> ・DNA 長 3.2×109bp ・遺伝子数 約22,000 ・構成 ヒトゲノムの半分以上は、非コード反復配列である(53%)。このうち LINE(21%)、SINE (13%)、レトロウイルス様因子(8%)、DNA 型トランスポゾン(3%)はいずれも動く遺伝 因子である。また単純反復配列(5%)は14 塩基未満の短い配列が何度も反復して長く連なった もので、分節的重複(5%)は 1000∼20000 塩基対の配列がゲノム内のほかの場所に複製された もの。 ユニーク配列(39%)のうち遺伝子が 25%を占めるが、このうち 23%程度はイントロンであ る。残りの12%の多くは、遺伝子調節にかかわる領域と考えられている。 最後の残り8%は配列未決定の領域で、ヘテロクロマチン構造をとる部分である。
9.LINEs, SINEs, minisatellites, microsatellites を説明しなさい(2005 年度本試問
題)
★ゲノムの塩基配列の半分以上を占める反復配列は、以下のように分類することができる。 (1)tandem repeats 縦列(単純)反復配列:AGCAGCAGC……のように、同じ配列が連続し て並ぶもの。サテライトDNA とも呼ばれる。配列ユニットが短いものは、ミニサテライト(10 ∼100 塩基程度)、マイクロサテライト(数塩基程度)として特に区別され、遺伝マーカーとし てよく利用される。 (2)散在配列:一定の長さの同じ配列が、ゲノムに散らばって存在しているもの。主にトラン スポゾンの転位による。以下にトランスポゾンの分類を挙げる。 ・DNA 型トランスポゾン:DNA が直接転位する ・RNA 型トランスポゾン(レトロポゾン):RNA 中間体を経て転位する
−LTR(l
ong terminal repeat
)型レトロポゾン:末端部に長い反復配列を持つもの −LINE(long interspersed nuclear element, 長鎖散在性核内反復配列):偽遺伝子8 −SINE(long interspersed nuclear element, 短鎖散在性核内反復配列):偽 RNA 分子
<解答>
・LINE と SINE は、一定長の配列のコピーがゲノム上に散らばったもので、いずれも RNA を 中間体として転位するレトロポゾンによる。
LINE は比較的長い塩基配列を持ち、遺伝子と類似した配列を持つため偽遺伝子ともよばれる。 逆転写酵素などのコードを含み、自身のコピーを作って転位させることができる。
SINE は比較的短い塩基配列を持ち、tRNA や rRNA のような RNA 分子と類似した配列を持つ。 逆転写酵素を持たないため転位はほかの可動因子に依存する。Alu 配列は最もよくみられる SINE である。
・一定長の配列が連続して繰り返される配列をtandem repeats と呼び、このうち反復ユニット が10-100 塩基程度のものをミニサテライト、数塩基程度のものをマイクロサテライトと呼ぶ。い ずれも遺伝マーカーとしてよく利用される。
10.Gene structure を以下の単語を使って図示し、説明しなさい(promoter region, 5'
UTR, exon, intron, 3
UTR, open reading frame) (2006 年度本試問題)
<解答>
塩基配列のうち、遺伝子をコードしている配列およびその周辺部について説明する。
・open reading frame(ORF, 開いた読み枠)とは、終止コドンに中断されることなく 100 個以 上のコドンが続く塩基配列。これはタンパクをコードしている可能性が高い配列である。ORF は、 塩基配列が決定された後に遺伝子をコードする領域の候補をコンピュータで探索する際に使われ る。 ◆ 64 個のコドンのうち 3 個は終止コドンなので、ランダムな塩基配列には、およそ 20 個に 1 個の割合で終止コドンが存在していることになる。よって 100 個以上のコドンが続くも のは、遺伝子コード配列である可能性が高いというわけである。 5'
promoter exon1 intron1 exon2 intron2 exon3
3' ORF UTR
・転写配列の少し上流にあり、RNA ポリメラーゼが結合する部位となるのが promoter region で ある。
・真核生物の転写配列には、スプライシングに連結され成熟mRNA を構成する exon と、スプラ イシングで切り捨てられるintron が存在する。exon のうち、成熟 mRNA の両端に位置する部分 はタンパクに翻訳されないため、UTR(untranslated region, 非翻訳領域)と呼ばれる。5’側(上流) を5’UTR、3’側(下流)を 3’UTR と呼ぶ。
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11.20 種類のアミノ酸の full name in English, three letter code, one letter code を
書きなさい(2005 年度本試問題)
<解答>
日本語名 英語名 1 文字略称 3 文字略称 アラニン Alanine A Ala
システイン Cysteine C Cys アスパラギン酸 Aspartic Acid D Asp グルタミン酸 Glutamic Acid E Glu フェニルアラニンPhenylalanine F Phe グリシン Glycine G Gly ヒスチジン Histidine H His イソロイシン Isoleucine I Ile リジン Lysine K Lys ロイシン Leucine L Leu メチオニン Methionine M Met アスパラギン Asparagine N Asn プロリン Proline P Pro グルタミン Glutamine Q Gln アルギニン Arginine R Arg セリン Serine S Ser スレオニン Threonine T Thr バリン Valine V Val トリプトファン Tryptophan W Trp チロシン Tyrosine Y Tyr
12.Missense mutations, nonsense mutations, splice site mutations, inframe
DNA rearrangement, frameshift DNA rearrangement の違いを説明しなさい(2006
年度本試問題)
★遺伝子変異は、塩基配列の変化に着目して次のように分類される。 1.小さな変異(1塩基置換、点突然変異) ・ミスセンス変異:別のアミノ酸を指定するようになる ・ナンセンス変異:アミノ酸が終止コドンに変わり、短いタンパクができる ・サイレント(同義)変異:アミノ酸が変化しない(同じアミノ酸を指定する別のコドンになる) ・スプライス部位変異:スプライス部位の変異(スプライシングを行う酵素が認識できなくなり、 スプライシングが正常に行われない)10 2.大きな変異 a)欠失:染色体の一部が切れて失われる。 b)挿入:染色体に他の部位の染色体が付着する。 c)重複:染色体の一部で同じものが重複している。 d)逆位:染色体の一部が切れて方向が逆になってつながる。 <解答> ・ミスセンス変異Missense mutations とは、1 塩基変異の結果、当該コドンが別のアミノ酸を指 定するような変異。 ・ナンセンス変異nonsense mutations とは、1 塩基変異の結果、当該コドンが終止コドンに変わ り、短いタンパクができるような変異。
・スプライス部位変異splice site mutations とは、スプライシングを行う酵素が認識する配列部 分の変異で、スプライシング異常を引き起こすような変異。
・インフレームDNA 再編集 inframe DNA rearrangement とは、3の倍数個の塩基が欠失また は挿入され、読み枠がずれないような変異。
・フレームシフトDNA 再編集 frameshift DNA rearrangement とは、欠失または挿入される塩 基が3の倍数個ではないために読み枠がずれて、以降のアミノ酸配列が元の配列と全く異なるも のになるような変異。
13.遺伝子変異のタンパク・細胞レベルへの影響から見て、dominant and recessive
disorders の違いを説明しなさい(dominant negative effect, haploinsufficiency,
gain of function, loss of function を説明すること)
<解答>以下では正常遺伝子A、機能喪失遺伝子 a、新規機能獲得遺伝子 A’として説明する。 ・体細胞の核内には、両親のそれぞれから受け継いだ2セットの染色体が存在しているから、通 常は正常な遺伝子が2セット存在している。遺伝子の変異によって遺伝子産物の正常な機能が失 われてしまう機能喪失変異loss of function(A→a)の場合、片方の遺伝子のみ異常があっても(Aa)、 もう片方の正常遺伝子で遺伝子産物が作られるので特に問題が起こらないことが多い。両方の遺 伝子の変異が起こるか、変異遺伝子を両方から受け継いだ場合(aa)にはじめて悪影響があわわれ ることから、これはrecessive disorder(劣性遺伝疾患)である。 ・ただし片方のみの変異(Aa)でも悪影響がある場合があり、これを haploinsufficiency(ハプ ロ不全)という。これは単純に遺伝子産物が不足する場合のほか、多量体を構成するタンパクの 場合に、変異タンパクが混じっていると多量体が正常に作られない場合などがある。この場合は、 loss of function でも dominant disorder 優性遺伝疾患である。
・変異によって遺伝子産物が別の機能を獲得してしまうこと(A→A’)を機能獲得変異 gain of function といい、片方の遺伝子の変化(A’a)だけ悪影響があらわれるから、優性遺伝する。
11 ・また変異した遺伝子の産物自体には悪影響がなくても、それが正常な遺伝子の産物に悪影響を 及ぼすことで悪影響をもたらすことがあり、これを優性阻害効果dominant negative effect とい い、優生遺伝する機能獲得変異の一種と考えることができる。
14.X-inactivation の機構を XIST と XIC を使って説明しなさい。X inactivation の例
を3種類挙げなさい。
★X 染色体不活性化 X-inactivation は、発見者の名前からライオニゼーション lyonization とも呼ばれ、
哺乳類の雌が持つ2本のX 染色体のうち1本が、発生途中で不活性化される現象である。 X 染色体を1本しか持たない雄と比較して、遺伝子産物が2倍合成されるのが望ましくないため に起こると考えられている。 <解答>X 染色体不活性化 X-inactivation は、哺乳類の雌が持つ2本の X 染色体のうち1本が、 発生途中で不活性化される現象である。X 染色体の不活性化は、発生途中の胚が約 1000 細胞に分 裂した胚盤胞の時期に起こる。2本の染色体のどちらが不活性化されるかはランダムに決まり、 一度不活性化されてしまうと、その後の体細胞分裂では不活性化のパターンがずっと引き継がれ る。不活性化は、X 染色体上の XIC(X Inacivation Center, X 染色体不活性化中心)という領域か らはじまる。XIC には複数の non-codingRNA をつくる配列 や調節配列が含まれる。 一本のX 染色体において、 XIC 上の Xist 遺伝子が転写さ れてRNA を作り、XIC がある X 染色体に結合する。続いて複 数のタンパクが関与してDNA やヒストンのメチル化や脱ア セチル化が起こることで、凝縮 されたヘテロクロマチン構造 に変化し、不活性化する。 ◆ この機構としてRNA 干 渉が示唆されているが、まだ明確には分かっていない。 X 不活性化の最も分かりやすい例は三毛猫で、三毛がほぼ雌にしかあらわれないことが、X 染 色体不活性化から説明できる。またX 染色体上の劣性遺伝疾患はほとんど男性にしか発症しない が、不活性化の偏りによってヘテロの遺伝子型を持つ女性で発症することがある。Duchenne 型 進行性筋ジストロフィーや血友病などがこの例であり、一般に症状は比較的軽い。
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15.mRNA, rRNA, tRNA, snRNA, snoRNA の違いを説明しなさい
<解答>
・mRNA:リボソームに DNA の塩基配列を伝達し、タンパクに翻訳される RNA。スプライシン グによる編集を受ける。
・rRNA:リボソームを構成する RNA。
・tRNA:リボソームへとアミノ酸を運搬する RNA。
・snRNA(small nuclear RNA, 核内低分子 RNA):真核生物の核内にみられる一群の小型 RNA で、スプライシングやテロメアの維持などの重要なプロセスに関与している。必ず特定のタンパ クと結合しており、この複合体はsnRNP(small nuclear ribonucleoprotein)と呼ばれる。 ・snoRNA(small nucleolar RNA、核小体低分子 RNA):rRNA や他の RNA の化学的修飾(メ チル化など)に関与する一群の低分子RNA である。一般にタンパクと複合体(snoRNP)を形成 し、核内の核小体に局在する。snoRNA がターゲットとなる RNA と相補的に結合し、タンパク 質が反応を触媒する。
16.Eucaryotic RNA polymerase II の転写開始機構を説明しなさい
★いくらでも詳しく書けてしまいますが、ポ イントを要領よく押さえるという方針で解 答を作ります。転写開始の順序の記述がメイ ンですが、細菌と違う点を強調し、またその 生物学的意義を説明します。 <解答>真核生物のRNA ポリメラーゼⅡは、 主にタンパクをコードするRNA の転写を、 以下の順序で行う。 (1)プロモーター領域のTATA ボックス 配列(転写開始部位のすぐ上流にある)に、 最初に転写基本因子であるTFⅡD (transcription factorⅡの D)が結合する。 (2)RNA ポリメラーゼⅡや他の基本転写 因子(A,B,E,F,H など)が集合し、転写開始 複合体を形成する。 (3)TFⅡH は、①ATP を消費して転写開 始部位の二重らせんを引き離し、転写可能な 状態を作る。②RNA ポリメラーゼⅡの尾部 をリン酸化する。このリン酸化によりRNA ポリメラーゼⅡは転写開始複合体を離れ、転
13 写開始をはじめる。 (4)上記因子の他にも遺伝子調節タンパク(エンハンサー配列に結合するアクチベーターと、 サイレンサー配列に結合するリプレッサー)がはたらき、転写開始を促進または抑制する。これ らは①基本転写因子とRNA ポリメラーゼⅡがプロモーターに結合するのを助けるかまたは妨げ ることによって、または②クロマチン構造を変化させることで転写開始を調節している。 調節配列はプロモーターのかなり遠くに存在する場合もあって、1つのプロモーターをDNA に散在する多数の調節配列による調節が可能になっている。この場合、DNA 鎖がループ構造をと って両者が空間的に近づいたり、メディエーターと呼ばれる大型複合タンパクが媒介したりする。 細胞のタイプごとに組み合わせの異なる調節因子が存在しており、遺伝子発現パターンが細胞 の性質を決めている。転写開始が多段階であることや多数の調節因子が作用しうることはいずれ も、真核生物の遺伝子発現パターンの多様化に寄与している。
17.Eucaryotic mRNA における mRNA capping と polyA addition の機構を説明しな
さい(2005 年度再試問題)。また、これら mRNA が必要である理由を説明しなさい
◆ (類題)22.mRNA capping の機構を説明しなさい。(2005 年度再試問題) <解答> mRNA は、DNA から転写が行われ ると同時に、①5’キャップ形成、②ス プライシング、③ポリA 付加の作用 (RNA プロセシングと総称される)を 受け、成熟mRNA として核外に出て 行く。 RNA ポリメラーゼⅡは、尾状の C 末端ドメインがリン酸化されることに より転写開始複合体から離れ転写を開 始するが、このときC 末端ドメインに は複数のRNA プロセシングタンパク が結合する。これらが順にmRNA 前 駆体に直接移動して作用することで、 プロセシングが進む。 ・mRNA キャップ形成は、転写が開始 してまもなく起こり、複数の酵素が順 に作用して、転写産物の5’末端(転写 で最初に合成される末端)にメチル期 を持つグアニン(G)が付加される。14 なおキャップ形成の終了は、スプライシング過程の引き金にもなっている。 ・ポリA 付加は転写の最終段階で起こり、ある酵素により 3’末端(転写の最後で合成される末端) が特定の塩基配列の位置で切断されて、別の酵素により数百ヌクレオチドのアデニン反復配列が 付加される。 ・これらのプロセシングには、①mRNA 分子の安定性を高めて核から細胞質への輸送を助ける、 ②mRNA と他の RNA などを区別する目印となる、③タンパク合成装置が正常な mRNA を識別 する目印にする、といった役割があると考えられている。
18.Pre-mRNA splicing に関わる trans elements である U1 snRNA, U2 snRNA,
U2AF65, U2AF35 が結合する cis elements を挙げなさい
◆ トランス因子trans element/シス因子 cis element:真核生物の遺伝子発現の調節にかか わる因子群。プロモーター、エンハンサーなどの塩基配列をシス因子といい、シス因子と 相互作用する転写因子や転写抑制因子をトランス因子と総称する。
◆ snRNP(スナープス、核内低分子リボ核タンパク粒子):snRNA とタンパクの結合によ る。スプライソソームの主要部分を構成する。
◆ U2AF:U2snRNP auxiliary factor(補助因子)
◆ スプライシングの主なシス因子は、①5'スプライス部位(donner site)、②3'スプラ
イス部位(acceptor site)、③分岐点(branch point)の三つ。分岐点はイントロン上
にある、ラリアット構造の縄の結び目にあたる部分のアデニル(A)。★スプライシングの開始は、
①BBP(分岐点結合タンパク)と U2AF が分岐点に結合
15 の手順を踏む。①のU2AF は U2AF65+U2AF35 の二量 体で、大雑把にいえば分岐点と3’スプライス部位の間の部 分に結合する。U2AF65、U2AF35 がそれぞれ結合する部 位を答えさせるのはマニアックだと思うが、大野研の専門 分野だからかも(下の右図は大野研のサイトより)。 <解答> ・U1 snRNA:5’スプライス部位 ・U2 snRNA:分岐点 ・U2AF65:分岐点と 3’スプライス部位の間のポリピリミジ ントラクト(T と C が多い領域) ・U2AF35:3’スプライス部位付近の AG 配列
19.Ribosome の A, P, and E sites の役割を説明し、
ribosome におけるタンパク合成機構を説明しなさ
い。
◆ A 部位、P 部位、E 部位:リボソームにおいて tRNA が 結合する部位。名前の由来は順にaminoacyl tRNA、 peptidyl tRNA、exit(出口)より。 <解答>リボソームは大ユニットと小ユニットからなり、1 ヶ所のmRNA 結合部位と、3ヶ所の tRNA 結合部位(A、 P、E)を持つ。タンパク合成は次の3段階の繰り返しで行 われる。 (1)A 部位では1コドン分の mRNA が露出しており、ア ミノ酸を結合したtRNA が到来して塩基対を作る。 (2)P 部位では、tRNA とペプチドの結合が切断され、こ のペプチドとA 部位のアミノ酸の間でペプチド結合が作ら れる(ペプチジル転移反応)。この反応に引き続いて、2個 のtRNA は A,P から P,E へと移動する。(3)E 部位は mRNA と少し離れており、tRNA と mRNA は結合していない。そのためE 部位に移動した使用済み tRNA は、リボソームから放出される。
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