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2018年7月中国マクロ経済動向分析

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マクロ経済動向分析

2018 年 7 月

GDP は成長を維持、景気優先への舵切り

2018 年第 2 四半期の国内総生産(GDP)はインフラ投資の減速が影響し、前年同期比 6.7% 増となり、伸び率は第1 四半期から 0.1 ポイント低下した。6 月の工業製品付加価値生産の 伸びは前年同期比6.0%増で、前月から 0.8 ポイント低下したものの、ハイテク産業を中心 に高い成長率を保った。ベンチャー投資は持続的に増加し、特許出願数からも製造業のレベ ルアップが見られる。 一方、6 月上旬には米中双方が追加関税を発表するなど、貿易戦争の長期化が懸念される。 中国は EU などと連携し、多国間の貿易体制を守る必要があると主張するが、先行きは見 通せない。これらを背景として、中国共産党は7 月 31 日の政治局会議で「景気優先」の経 済運営に舵を切ること決めた。

内容

1.GDP は成長を維持、新興産業が経済を牽引 2.消費の伸びは減速、住宅価格上昇も続く 3.貿易戦争激化に備え、景気優先への舵切り 4.外貨準備高 3 ヶ月ぶりの増加、過剰債務の圧縮への取り組みも 5.対米貿易黒字の拡大、輸出の構造変化が進展 6.中国は多国間貿易の維持を主張も、米中双方が追加関税を発表する展開に 7.上海市場・香港市場ともに、米中摩擦を背景に様子見モード 参考Web ... 20 参考新聞・資料 ... 20

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マクロ経済動向分析7 月 駒形哲哉研究会

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1.GDP は成長を維持、新興産業が経済を牽引

2018 年第 2 四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比 6.7%増となり、伸び率は第 1 四半 期から0.1 ポイント低下した。GDP 増加率は、12 季連続 6.7%から 6.9%の間の数値を保持 した(国家統計局 2018/7/16)。インフラ投資の減速が GDP 成長率低下に大きく影響した(日 本経済新聞 2018/7/17)。2018 年上半期の国内総生産(GDP)は、前年同期比 6.8%増であり、 産業別で見ると、第一次産業が3.2%増、第二次産業が 6.1%増、第三次産業が 7.6%増だっ た。産業構造からみると、第三次産業の国内総生産に占める割合は 54.3%で、前年同期比 0.3%増加した(国家統計局 2018/7/16)。 上半期の工業付加価値生産は前年同期比 6.7%増だった(国家統計局 2018/7/16)。要因と して、創業と創新、いわゆる「双創」が持続的に進展したことがあげられる。上半期は、一 日平均 1.81 万件の企業が新たに登記された(国家統計局 2018/7/16)。また、特許庁が 6 月 28 日発表した 2018 年版の「特許行政年次報告書」によると、日本、米国、欧州、中国、韓 国の5 大特許庁の特許出願件数を比較のうち、中国が約 138 万件と圧倒的に多かった(日本 経済新聞2018/6/29)。 2018 年 6 月の工業付加価値生産の伸びは前年同月比 6.0%となり、前月からは 0.8 ポイン ト低下した。企業形態別では、国有企業が前年同月比6.1%増加、集団企業が前年同月比 1.9% 減少、株式会社が前年同月比6.1%増加、外資企業が 5.4%増加した(国家統計局 2018/7/16)。 部門別では、製造業は前年同月比6.0%上昇、電力・熱生産供給業は前年同月比 9.2%上昇、 鉱業においても前年同月比2.7%上昇した(国家統計局 2018/7/16)。ハイテク産業も持続的な 発展を続けている。6 月のハイテク産業の工業付加価値生産の伸びは前年同月比 11.6%増と なり、伸び率は前月から0.7 ポイントの低下となった。中でも、新エネルギー車、産業用ロ ボット、光ファイバー、スマートテレビなどの新製品が高い伸び率を保った(国家統計局 2018/7/17)。 6 月製造業購買担当者景気指数(PMI)は 51.5 と、前月から 0.4 ポイント低下した。米国と の貿易摩擦が激化するなか、投入価格が上昇し、輸出受注が減少した(ロイター2018/7/2)。 非製造業PMI は 55.0 で、前月から 0.1 ポイント上昇した。非製造業 PMI は 4 ヵ月連続で 緩やかな上昇が続いている (国家統計局 2018/6/30)。 6 月の都市部の失業率は 4.8%で前月の数値を維持した(国家統計局 2018/7/16)。中国経済 の構造最適化調整の段階で新業態が生まれ、新政策が打ち出され、企業の租税と費用を低減 し、発展を支援する過程でも、労働力市場により多くの、より活力のある就業の受け皿とな る主体がもたらされている(中国通信 2018/7/6)。農村における E コマースが爆発的に発展 していることは、中国の就職市場が持続的に上回っていることの縮図であると言える。農村 部のE コマース企業は 980 万社を上回り、2800 万人以上に就職ポストを提供した。また、 オンラインとオフライン、バーチャルとリアリティーの有機的な結合によって、多くの新業 態が続々と登場し、様々な就職ポストに対するニーズが増加した(人民日報 2018//7/20)。

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図表1 製造業購買担当者景気指数(PMI) (出所)国家統計局より作成 図表2 工業付加価値生産額伸び率(単位:%) (出所)国家統計局より作成 51.7 51.4 51.7 52.4 51.6 51.8 51.6 51.3 50.3 51.5 51.4 51.9 51.5 50 50.5 51 51.5 52 52.5 53 7.6 6.4 6.0 6.6 6.2 6.1 6.2 7.2 6.0 7.0 6.8 6.7 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0

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マクロ経済動向分析7 月 駒形哲哉研究会

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2.消費の伸びは減速、住宅価格上昇も続く

2018 年 6 月の社会消費品小売総額は 3 兆 842 億元となり、前年同月比 9.0%増で、前月 比では0.5 ポイント上昇した。1-6 月の社会消費品小売総額は前年同月比 9.4%の 18 兆 18 億元で、伸び率は1-5 月と比べ 0.1%低下した(国家統計局 2018/7/16)。1-6 月のネット小 売総額は前年同期比30.1%増の 4 兆 810 億元で、同期間の社会消費品小売総額の 17.4%を 占めた(国家統計局 2018/7/16)。消費の低迷の一因は不動産の高騰にある。例えば、不動産 バブルが深刻なアモイ市は、個人の借金の預金に対する比率が15 年 1 月の 117%から 18 年4 月に 183%まで急上昇。ローン負担で消費に回すお金がなくなっている(日本経済新聞 2018/7/15)。 6 月の新車販売台数は前年同期比 2.31%増の 187 万 4200 台であった。上半期の新車販売 台数は前年同期比4.64%増の 1177 万 5300 台であった(中国汽車工業協会 2018/7/11)。電 気自動車(EV)など新エネルギー車の販売は 41 万台で前年同期比の 2 倍強に伸びた(日本経 済新聞2018/7/12)。テスラの 2017 年の中国販売は約 1 万 5000 台と世界販売の約 15%を 占めた(日本経済新聞 2018/7/11)。 6 月の消費者物価指数(CPI)は前年同期比 1.9%増となり、前月では 0.1 ポイント低下した (国家統計局 2018/7/10)。 変動の大きい食品・エネルギーを除いた 6 月のコア CPI は 1.9%上昇で、伸び率は変わらなかった(ロイター2018/7/10)。現在のところ消費者に対する 米中貿易摩擦の影響は限定的であるが、7 月 10 日にトランプ政権が発表した新たな関税対 象リストによると、スポーツ用品や一部アパレル製品など消費財が含まれ、発動されれば 生活物資の価格上昇は必至だ(産経新聞 2018/7/12)。 6 月の生産者物価指数(PPI)は前年同期比 4.7%増と、前月からでは 0.3%上昇した。国際 原油価格の変動が影響を与え、とりわけ、石油天然ガス産業においては4.5%上昇した(国 家統計2018/7/10)。 6 月の中国主要 70 都市の新築住宅価格は前月比 1.1%上昇し、伸び率は前月の 0.7%を上 回った。6 月の一線都市での新築住宅の価格が前月比 0.6%上昇し、中古家屋も前月比 0.1%上昇した。二線都市では、新築価格が前月比 6.3%上昇、中古家屋価格も前月比 4.6% 上昇した。三線都市でも新築価格が前月比6.0%上昇、中古家屋が前月比 4.3%上昇した(国 家統計局2018/7/17)。価格が上昇した都市の数は 2016 年 9 月以来の高水準となる。北京 や上海は横ばいだったが、地方都市の値上がりが目立った(日本経済新聞 2018/7/17)。 図表3 社会消費品小売総額伸び率(単位:%)

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(出所)国家統計局より作成 図表4 消費者物価指数(CPI)及び生産者物価指数(PPI)(単位:%) (出所)国家統計局より作成 11.0 10.4 10.1 10.3 10.0 10.2 9.4 9.7 10.1 9.4 8.5 9.4 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 10.5 11.0 11.5 1.5 1.4 1.8 1.6 1.9 1.7 1.8 1.5 2.9 2.1 1.8 1.8 1.9 5.5 5.5 6.3 6.9 6.9 5.8 4.9 4.3 3.7 3.1 3.4 4.1 4.7 0 1 2 3 4 5 6 7 8 CPI PPI

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3.貿易戦争激化に備え、景気優先への舵切り

2018 年上半期の固定資産投資は前年同期比 6%増となり、伸び率は 1-5 月から 0.1 ポイン ト低下した。このなかでも民間投資額は前年同期比8.4%増となり、伸び率は 1-5 月から 0.3 ポイント上昇した。第 1 次産業への投資は前年同期比 13.5%増、第 2 次産業は 3.9% 増、第3 次産業は 7.3%増となった。上半期のインフラ投資は前年同期比 7.3%増となり、 伸び率は1-5 月から 2.1 ポイント低下した(国家統計局 2018/7/16)。固定資産投資の鈍化 は、当局が進める債務削減の影響が大きい。地方政府の資金調達が絞られ、インフラ建設 は失速した(日本経済新聞 2018/7/17)。一方で 7 月 31 日、中国共産党は、党の重要政策を 話し合う政治局会議を開き、2018 年下期に積極的な財政政策で景気を下支えする方針を決 めた。米国との貿易戦争の長期化に備え、公共投資拡大など景気優先の運営に舵を切る思 惑がある。また地方のインフラ整備と同時に、金融政策を通じて、市場への資金供給を増 やす姿勢を見せた(日本経済新聞 2018/8/1)。 アメリカの電気自動車(EV)メーカー、テスラは中国・上海に大規模な自動車工場を新設 することで中国当局と合意した。生産能力は年50 万台を想定しており、上海市政府は声 明で、テスラは新工場だけでなく研究・開発にも投資を行うと発表した(ロイター 2018/7/11)。 上半期の不動産開発投資は 5 兆 5531 億元で、前年同期比 9.7%増となり、伸び率は 1-5 月の前年同期比10.2%から 0.5 ポイント低下した。うち住宅投資は 13.6%増の 3 兆 8990 億 元で、伸び率は0.6 ポイント低下した。不動産投資に占める住宅投資の割合は 70.2%だった (国家統計局 2018/7/16)。不動産には構造的な矛盾が未だ残っており、今年の初めから、三 線都市と四線都市の住宅価格上昇は比較的大きい。一方で、遠隔地や人口流出の大きい地域 では、住宅の売れ残りなども生じている。これらに対し、政府は固定資産税を含む不動産セ クター向けの長期的な対応策を確立するとした(国家統計局 2018/7/16,ロイター2018/7/16)。 上半期のベンチャー投資は 3680 億元で、過去最大だった 16 年通期をすでに上回った。 ネット通販や人工知能、電気自動車、バイオ医療などを手掛ける新興の成長企業で、投資家 の成長期待が高い。習近平国家主席が打ち出した産業政策「中国製造2025」はエコカーや 医薬、ロボット分野などの育成を目指す。中国政府はこうした分野に重点的に資金を投入し ており、中国のユニコーン企業数76 社は米国の 119 社に迫る(日本経済新聞 2018/7/21)。

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図表5 固定資産投資及び民間固定資産投資伸び率(単位:%) (出所)国家統計局より作成 図表6 不動産投資伸び率(単位%) (出所)国家統計局より作成 8.6 8.3 7.8 7.5 7.3 7.2 7.2 7.9 7.5 7.0 6.1 6.0 7.2 6.9 6.4 6.0 5.8 5.7 6.0 8.1 8.9 8.4 8.1 8.4 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 固定資産投資 民間固定資産投資 8.5 7.9 7.9 8.1 7.8 7.5 7.2 9.9 10.4 10.3 10.2 9.7 6 6.5 7 7.5 8 8.5 9 9.5 10 10.5 11

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4.外貨準備高 3 ヵ月ぶりの増加、過剰債務の圧縮への取り組みも

2018 年 6 月のマネーサプライ(M2)は、前年同月比 8%増の 177 兆 200 億元となり、伸び 率は前月から0.3 ポイント低下した。マネーサプライ(M1)は前年同月比 6.6%増の 54 兆 3900 億元となり、伸び率は先月から 0.6 ポイント上昇した (中国人民銀行 2018/7/13)。6 月末の社会融資総量のストックは183 兆 2700 億元で、前年同期比 9.8%増加した。社会融 資総量フローは1 兆 1800 億元で、前年同月よりも 5900 億元減少した社会融資総量のス トックは上半期の社会融資総量は前年同期比2 兆 300 億元減の 9 兆 1000 億円となった。 委託貸付は8008 億元の減少、信託貸付は 1 兆 5000 億元の減少だった(中国人民銀行 2018/7/13)。特に銀行が帳簿外で貸すオフバランス融資が 4-6 月に計 1 兆 1000 億円減少 し、当局による「影の銀行」への規制強化に起因する。これを背景に、地方政府は資金源 を立たれ、インフラ建設は失速した。民間調査によると、6 月の住宅ローンの金利は平均 5.64%で前年同月よりも 0.75 ポイント高くなった(日本経済新聞 2018/7/17)。また、新規 人民元建て融資は1 兆 1800 億元となり、前年同月から 5902 億元減少した(中国人民銀行 2018/7/13) 6 月の財政収入は前年同月比 3.5%増の 1 兆 7680 億元だった。上半期の財政収入総額 は、前年同期比10.6%増の 10 兆 4331 億元に達した。6 月の財政支出は前年同月比 7%増 の2 兆 8897 億元だった。上半期の財政支出総額は、前年同期比 7.8%増の 11 兆 1592 億 元に達した(財政部 2018/7/17)。 6 月の外貨準備高は前月比 15 億ドル増の 3 兆 1121 億だった(外貨管理局 2018/7/9)。3 月 末から3 ヵ月ぶりに増えた。6 月は通貨人民元が対ドルで急落したが、通貨当局が元買 い・ドル売りの大規模な為替介入を見送ったことを裏付ける(日本経済新聞 2018/7/10)。米 中貿易摩擦をめぐる懸念が人民元相場を圧迫するなかでの、予想外の増加に対して、中国 国家外為管理局は、資産価格の変動が理由と説明した(ロイター2018/7/9)。 中国は急速に普及するスマートフォン決済の安全性確保に乗り出し、過剰債務の圧縮に 取り組む。支付宝などスマホ決済を手がける事業者に対し、利用者が前払いしたお金のす べてを中国人民銀行に預けるよう義務付ける。スマホ決済市場を二分するアリババ集団と 腾讯控股の両社は、前払金のうち滞留資金を銀行に預けるなどして金利収入を得ているた め、運用収入の減少は避けられない。これらの背景には、スマホ決済の対流資金が銀行に とって新たな資金調達手段となり、野放図な融資を牽制する狙いがある(日本経済新聞 2018/7/4)。

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図表7 通貨供給量(M2)の伸び率(単位%) (出所)国家統計局より作成 9.4 9.2 8.9 9.2 8.8 9.1 8.2 8.6 8.8 8.2 8.3 7.5 8 7.4 7.9 8.4 8.9 9.4 9.9

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マクロ経済動向分析6 月 駒形哲哉研究会 10

5.対米貿易黒字の拡大、輸出の構造変化が進展

2018 年 6 月のモノ貿易の輸出入総額は前年同月比 4.3%増の 2 兆 4900 億元となった。う ち輸出が前年同月比3.1%増の 1 兆 3800 億元、輸入が前年同月比 6.0%の 1 兆 1200 億元と なり、2618 億元の黒字と、黒字幅は拡大した(中国海関総署 2018/7/17)。2018 年上半期の モノ貿易の輸出入総額は、前年同期比7.9%増の 14 兆 1200 億元となった。うち輸出が前年 同月比4.9%増の 7 兆 5100 億元、輸入が前年同月比 11.5%増の 6 兆 6100 億元となり 9013 億元の黒字となった(中国海関総署 2018/7/17)。貿易相手国をみると、上半期は欧州連合(EU) が 5.3%、米国が 5.2%、東南アジア諸国連合(ASEAN)が 11%それぞれ伸び、3 カ国・地域 との輸出入の合計が貿易全体の 41%を占めた。品目別にみると、機械・電気製品の輸出が 伸びを保ち、輸出の質向上と収益増大が着実に進んだ。上半期、機械・電気製品の輸出は7% 増の4 兆 4000 億元で、輸出全体の 58.6%を占めた。うち電器・電子製品が 8%、機械設備 が9%伸びた。伝統的労働集約製品の輸出は 4.15%減の 1 兆 4100 億元で、輸出全体の 18.7% を占めた(中国通信 2018/7/17)。 6 月の対米黒字は 289 億 7000 万ドルとなり、前月の 245 億 8000 万ドルから拡大した(中 国海関総署2018/7/17)。2018 年上半期の対米黒字は前年同期比 14%増の 1337 億ドルと上 半期として過去最高だった。中国も輸入を増やしたが、米国経済が好調なため、携帯電話な どの輸出が輸入を上回るペースで拡大した。米トランプ政権は対米黒字圧縮を中国に求め ており、批判を強める可能性がある。中国商務省は声明のなかで、「米国の低い貯蓄率、ド ルの国際通貨機能、米中の産業競争力の差と国際分業、ハイテク製品の対中輸出制限」とい っ た 対 米 黒 字 の 要 因 を 並 べ 、 一 朝 一 夕 に は 解 決 で き な い 点 を 強 調 し た(日本経済新聞 2018/7/13)。 上半期の海外からの対外直接投資(FDI)は前年同期比 1.1%増の 4462 億 9000 万元、上半 期の中国から海外への金融を除く対外直接投資(ODI)は前年同期比 18.7%増の 571 億 8000 万ドルとなった。6 月単月の対外直接投資は 92 億 9000 万ドルで、前年同月の 136 億ドル と比べて3 割以上減少し、7 ヶ月続いた増加が途絶えた(中国通信 2018/7/20)。 上半期、中国企業が実施した M&A は 41 カ国・地域にわたる 140 件で、業種では製造業、 鉄鋼業が目立った(中国新聞 2018/7/20)。一方、中国企業がドイツで行なった精密機器メー カー、ライフェルト・メタル・スピニングの買収がドイツ政府によって却下されるなど、軍 事や航空宇宙関連の技術が企業買収や投資を通して中国に流出する懸念が、欧州諸国を中 心に高まっている。背景には、2016 年の中国美的集団による工作機械大手、独クーカ買収 があったとみられる(日本経済新聞 2018/7/29)。

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11 図表8 輸出の伸び推移(単位:%) (出所)海関総署より作成 図表9 輸入の伸び推移(単位:%) (出所)海関総署より作成 11.3 7.2 6.9 9.0 11.7 11.6 10.9 18.0 7.4 6.4 12.6 4.9 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0 17.2 11.0 14.4 19.5 21.5 17.7 4.5 15.2 11.7 11.7 26.0 11.5 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

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マクロ経済動向分析6 月 駒形哲哉研究会 12 図表10 輸出品目別統計 (出所)海関総署より作成 I 1 1 - 687,153.50 - 15 ( ) - 343,439.70 - 18.3 C 6.9 79,159.20 -6.3 14 - 76,908.10 - 18.7 - 69,192.10 - -2 - 58,331.90 - 10.3 % 1,037.50 38,541.20 10.7 31.1 - 37,577.90 - 9.1 6 3,542.60 30,561.00 -13.2 10 C - 26,729.00 - 13.6 - 25,907.80 - 5.9 6 214.9 22,474.00 -1.8 -4.9 -) 6 611.8 20,387.60 9.7 11.3 6 3,033.30 17,759.40 28.4 55.2 - 13,240.80 - 2 6 152.9 13,089.60 0.8 0.2 3,477 12,540.10 -18.5 3.8 8.6 11,401.70 1.8 -4.1

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13 図表11 輸入品目別統計 (出所)海関総署より作成 C I - 455,719.60 - 19.7 - 313,239.30 - 22 % 1,958.00 146,712.20 13 32 22,481.60 111,303.80 5.8 36 - 68,873.20 - 14 53,069.30 37,287.60 -1.6 -7.9 1 6 1,596.30 27,889.80 15.4 19.9 6 50.8 23,096.30 -13.4 -2.3 4,487.40 19,287.80 0.1 2.1 259.7 19,231.10 16.3 36.9 - 17,645.50 - 17.4 955.2 16,681.00 15.7 39.9 1 4,207.70 16,509.70 35.4 64.6 I 21,300.20 15,657.40 -4.4 26.7 7.2 14,012.90 8 5.6 10.8 13,040.60 -1.2 -10.1 - 14,618.70 12,651.80 9.9 11.7 C 0 )( 4,847.20 10,988.80 9.7 18.1

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マクロ経済動向分析6 月 駒形哲哉研究会 14 図表12 主要国別輸出入 (出所)海関総署より作成 1 1 216,740.40 1,172,746.40 12.8 175,127.30 1,033,098.70 19.9 42,622.40 217,778.80 13.6 16,839.10 98,444.90 21.8 25,412.00 137,745.60 13.7 14,742.90 87,105.30 12.9 11,851.00 70,396.70 8 14,523.80 84,611.10 24.2 9,308.10 53,872.30 9 13,652.00 84,022.80 11.8 7,036.10 39,138.00 23.5 , : 9,064.30 52,415.00 9.3 % 1 7,029.20 37,427.60 15 1% 7,953.20 51,386.80 14.9 1% 6,718.80 36,559.40 10 : 6,720.80 34,692.60 20 : 6,354.00 33,780.30 14.2 5,491.80 30,250.60 18.6 % , 4,983.00 25,276.90 -3.1 4,186.40 26,904.30 37.4 6 4,188.70 24,369.00 16.1 4,186.20 26,625.70 31.6 4,159.30 23,212.20 14.4 -% 3,770.80 21,873.00 12 4,218.60 22,521.20 17.7 % 1 2,955.50 17,421.30 33.2

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15 図表13 ドル円対人民元相場推移 (2017/2/1-2018/8/1) (出所)中国外貨管理局より作成 図表14 香港ドルユーロ対人民元相場推移 (2017/2/1-2018/8/1) 610 620 630 640 650 660 670 550 560 570 580 590 600 610 2/1/2018 3/1/2018 4/1/2018 5/1/2018 6/1/2018 7/1/2018 8/1/2018 (2018/2/1-2018/8/1) /10000 /100

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マクロ経済動向分析6 月 駒形哲哉研究会 16 (出所)中国外貨管理局より作成 77.0 78.0 79.0 80.0 81.0 82.0 83.0 84.0 85.0 86.0 7.10 7.20 7.30 7.40 7.50 7.60 7.70 7.80 7.90 8.00 2/1/2018 3/1/2018 4/1/2018 5/1/2018 6/1/2018 7/1/2018 8/1/2018 (2017/2/1-2018/8/1) / / ( )

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6.中国は多国間貿易の維持を主張も、米中双方が追加関税を発表する展開に

トランプ米政権は7 月 6 日、中国による知的財産侵害への制裁として 340 億ドル相当の 中国製品に追加関税を発動した。中国もすぐに同規模の報復に踏み切った(日本経済新聞 2018/7/7)。米国から中国に対する制裁の対象は、中国の産業政策「中国製造 2025」の対 象製品が中心となった。中国の報復措置も同規模で、トランプ氏の票田である農業やエネ ルギーに狙いを絞った。まず大豆や自動車など545 品目(340 億ドル相当)が対象となる(日 本経済新聞2018/7/5)。 一方、トランプ氏は中国が報復すれば追加措置を取ると強調し、500 億ドルに加えて 2000 億ドル、次に約 3000 億ドルを準備していると説明。合計すれば 5000 億ドルを超 え、中国からの輸入品(2017 年は約 5100 億ドル)全体に関税を課す計算になる(日本経済新 聞2018/7/6)。米政府は 5 月初旬の第 1 回の貿易協議から「中国製造 2025」を交渉のテー ブルに乗せ、補助金の即時停止を求めた。だが中国にとっても、貿易赤字縮小は妥協がで きるが、製造業のレベルアップは決して譲れない。中国製造2025 を巡る米中の主張は隔 たりがなお大きい(日本経済新聞 2018/7/2)。 次いで、7 月 10 日、トランプ政権は、追加関税 10%をかける家具や帽子など 6031 品 目・2000 億ドル相当のリストを公表。これまで中国は金額、税率ともに米国と同じ報復措 置をとってきたが、中国の米国からの輸入総額を上回ることになり、今回は難しい(日本経 済新聞2018/7/11)。これに対し、中国は 12 日夜、唐突に米国を批判する声明を発表した 直後に取り下げ、その後すぐに再公表した。中国のあせりが表面化した可能性がある(日本 経済新聞2018/7/14)。 一方で、中国は欧州連合(EU)との結びつきを強め、7 月 16 日には北京で首脳会談を開 催し、多国間の貿易体制を守る必要があると訴える共同声明を採択した(日本経済新聞 2018/7/17)。アメリカも同日、WTO への提訴手続きを始めると発表したが、中国などはす でに米国をWTO に提訴しており、ここでも互いに正当性を訴える事態となった(日本経済 新聞2018/7/17)。要因には、中国が「一帯一路」を名目に巨額インフラ投資を約束し建設 を試みる「紅い経済圏」の行き詰まりが挙げられる。マレーシアで計画されていた高速鉄 道建設計画が白紙になり、ミャンマーでも中国主導のプロジェクトが見直しの対象になる など、これらの政策の先行きが危ぶまれている(日本経済新聞 2018/7/25)。 これらを背景として、中国共産党は 7 月 31 日の政治局会議で「景気優先」の経済運営に 舵を切ることを決めた。中国経済の現状を「新たな問題と挑戦に直面し、外部環境に明ら かな変化が起きている」と分析した。「明らかな変化」が米国との貿易戦争を指している のは間違いない。中国政府はすでにインフラ投資の拡大に動き始めており、7 月 25 日から 27 日にチベット自治区を視察した李克強首相は鉄道建設の現場を訪れ、工事の加速を指示 した。これまで、習指導部の方向転換は、貿易戦争に対する危機感の大きさを表している とも受け取れる(日本経済新聞 2018/8/1)。

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7.上海市場・香港市場ともに、米中摩擦を背景に様子見モード

7 月第 1 週 2 日の上海総合指数は製造業 PMI の輸出受注不振や人民元安が嫌気され反 落、2800 ポイントを割った。翌 3 日は反発したが、米中通商摩擦への懸念から上げ幅はわ ずかだった。4 日は中国の裁判所の判決による米中対立への懸念から下落し、5 日は双方の 関税発動を控えて、2700 ポイント台前半まで下落した。週末 6 日は、下げ過ぎ反動で小幅 に反発した(内藤証券 2018/7/6)。第 2 週明け 9 日は、大幅高で 2800 ポイント台を回復す る。翌10 日は政府の株価対策への期待感から小幅に上昇した。11 日は米国政府による新た な関税リストの発表を受けて反落したが、週末12 日は今後の米中交渉進展への期待が広が り上昇した(内藤証券 2018/7/13)。第 3 週目は週前半から軟調に推移した。工業統計の下振 れから、17 日に 2800 ポイントを割り込んだ。貿易摩擦懸念の後退で下げ幅は限定的であ ったが、米連邦準備理事会(FRB)議長発言を材料に人民元安が週後半に進み、不安定な動き が続いた。週末20 日には人民元が一時大幅安となったが、銀行株が牽引して 2800 ポイン トを回復するも、先週末を僅かに下回った(内藤証券 2018/7/20)。第 4 週 24 日は、人民元安 の一服感と中国の景気対策が交換され、1 ヵ月ぶりに 2900 ポイントを回復した。その後、 週後半は米中通商摩擦と人民元安が警戒され、最終的には 2800 ポイント台に後退した(内 藤証券2018/7/27)。 7 月第 1 週、香港返還記念の祝日明け 3 日のハンセン指数は 3 営業日ぶりに下落した。海 外・本土マネー流出の圧力に起因して、一時 960 ポイント以上も下げる場面もあるなど、 大荒れの展開になった。6 日には上昇に転じたが、小幅高にとどまった。終値で 2 万 8000 ポ イ ン ト を 維 持 し た も の の 、 米 国 の 関 税 発 動 を 受 け て 小 幅 高 に と ど ま っ た(内藤証券 2018/7/6)。第 2 週目は、強い米雇用統計が好感され、9 日は続伸した。週半ばは米国 政府 の新たな関税リストの発表を受けて米中通商懸念が再燃し、軟調な値動きに落ち着くが、そ れでも ZTE への制裁解除で合意と伝わると上昇し、2 万 8000 ポイント台の半ばまで戻し た(内藤証券 2018/7/13)。第 3 週目は、国際原油相場の大幅下落から石油株が売られ、17 日 は下落した。その後は米国の利上げ観測と人民元安を起因として、小幅安が続いた。人民元 レートの乱高下で20 日には一時的に割り込む場面もあり、結局、2 万 8000 ポイントを維 持したが、週間ベースでは下落となった(内藤証券 2018/7/20)。第 4 週目は、中国の積極財 政が好感され、25 日までに 4 営業日連続で上昇。企業業績期待も加わり、2 万 9000 ポイ ント回復を視野に入れた。翌 26 日は、米中対立と大型 IT 株の軟調を背景に小幅に下落す るも、週末27 日は堅調に推移した(内藤証券 2018/7/27)。

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19 図表15 上海総合指数(終値) (2018/06/01-2018/07/31) (出所) kabutan より作成 図表16 ハンセン総合指数(終値) (2018/06/01-2018/07/31) (出所) Searchina Finance より作成 2,500 2,600 2,700 2,800 2,900 3,000 3,100 3,200 2018 年 6 月 1 日 金 曜 日 2018 年 6 月 3 日 日 曜 日 2018 年 6 月 5 日 火 曜 日 2018 年 6 月 7 日 木 曜 日 2018 年 6 月 9 日 土 曜 日 2018 年 6 月 11 日 月 曜 日 2018 年 6 月 13 日 水 曜 日 2018 年 6 月 15 日 金 曜 日 2018 年 6 月 17 日 日 曜 日 2018 年 6 月 19 日 火 曜 日 2018 年 6 月 21 日 木 曜 日 2018 年 6 月 23 日 土 曜 日 2018 年 6 月 25 日 月 曜 日 2018 年 6 月 27 日 水 曜 日 2018 年 6 月 29 日 金 曜 日 2018 年 7 月 1 日 日 曜 日 2018 年 7 月 3 日 火 曜 日 2018 年 7 月 5 日 木 曜 日 2018 年 7 月 7 日 土 曜 日 2018 年 7 月 9 日 月 曜 日 2018 年 7 月 11 日 水 曜 日 2018 年 7 月 13 日 金 曜 日 2018 年 7 月 15 日 日 曜 日 2018 年 7 月 17 日 火 曜 日 2018 年 7 月 19 日 木 曜 日 2018 年 7 月 21 日 土 曜 日 2018 年 7 月 23 日 月 曜 日 2018 年 7 月 25 日 水 曜 日 2018 年 7 月 27 日 金 曜 日 2018 年 7 月 29 日 日 曜 日 2018 年 7 月 31 日 火 曜 日 26000 27000 28000 29000 30000 31000 32000 2018 年 6 月 1 日 金 曜 日 2018 年 6 月 3 日 日 曜 日 2018 年 6 月 5 日 火 曜 日 2018 年 6 月 7 日 木 曜 日 2018 年 6 月 9 日 土 曜 日 2018 年 6 月 11 日 月 曜 日 2018 年 6 月 13 日 水 曜 日 2018 年 6 月 15 日 金 曜 日 2018 年 6 月 17 日 日 曜 日 2018 年 6 月 19 日 火 曜 日 2018 年 6 月 21 日 木 曜 日 2018 年 6 月 23 日 土 曜 日 2018 年 6 月 25 日 月 曜 日 2018 年 6 月 27 日 水 曜 日 2018 年 6 月 29 日 金 曜 日 2018 年 7 月 1 日 日 曜 日 2018 年 7 月 3 日 火 曜 日 2018 年 7 月 5 日 木 曜 日 2018 年 7 月 7 日 土 曜 日 2018 年 7 月 9 日 月 曜 日 2018 年 7 月 11 日 水 曜 日 2018 年 7 月 13 日 金 曜 日 2018 年 7 月 15 日 日 曜 日 2018 年 7 月 17 日 火 曜 日 2018 年 7 月 19 日 木 曜 日 2018 年 7 月 21 日 土 曜 日 2018 年 7 月 23 日 月 曜 日 2018 年 7 月 25 日 水 曜 日 2018 年 7 月 27 日 金 曜 日 2018 年 7 月 29 日 日 曜 日 2018 年 7 月 31 日 火 曜 日

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参考

Web

・Searchina Finance http://searchina.ne.jp/ ・人民網日本語版 http://j.people.com.cn/ ・三菱東京UFJ 銀行 http://www.bk.mufg.jp/ ・株探 http://kabutan.jp/ ・财新传媒 http://china.caixin.com/ ・新華社 http://jp.xinhuanet.com/ ・中国海関総署 http://www.customs.gov.cn/publish/portal0/ ・中国外貨管理局 http://www.safe.gov.cn/ ・中国国家統計局 http://www.stats.gov.cn/ ・中国財政部 http://www.mof.gov.cn/index.htm ・中国人民銀行 http://www.pbc.gov.cn/ ・ロイター通信 http://jp.reuters.com/

参考新聞・資料

・朝日新聞 ・産経新聞 ・中国通信 ・日本経済新聞 ・毎日新聞 ・読売新聞

参照

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