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Vol.40 , No.2(1992)090石上 和敬「ニカーヤに見られる生天の諸表現」

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Academic year: 2021

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(1)

印度學佛教學研究 第40巻第2號 卒成4年3月 ニ カ ー ヤ に 見 ら れ る 生 天 の 諸 表 現 石 上 和 敬 天 界 に 生 まれ る こ と, す な わ ち, 生 天 は, 仏 教 本 来 の 立 場 か らは 輪廻 の 束 縛 を 離 れ て い な い もの と して 否 定 的 に扱 わ れ て い る。 しか し, そ の 生 天 も初 期 仏 教 文 献 中 の 在 家 信 者 に対 す る教 説 の 中 では しば しば 中 心 的 役 割 を 演'じ, 肯 定 的 に扱 わ れ る。 初 期 大 乗 仏 教 が 在 家 信 者 集 団 の信 仰 運 動 か ら起 こ って きた の で は ない か と い う指 摘 や, 浄 土 往 生 思 想 の源 流 として 生 天 が注 目され て い る点 な どを 踏 まえ る と, 初 期 仏 教 の生 天 は看 過 しえ な い多 くの問 題 を 含 ん で い る と考 え られ る。 こ こ で, 生 天 を 考 察 し て い く上 で忘 れ て は な らな い の は, 生 天 は基 本 的 に は死 後 の 問題 で あ る とい うこ と, した が って, 生 天 と して表 現 され る もの 自体 はす べ て, 我 々 が直 接 体 験 す る こ とが で き な い観 念 上 の 問題 に過 ぎな い, とい う こ とで あ る 。 それ 故, 生 天 が文 献 中 で具 体 的 に如 何 に 表 現 され て い る か とい う点 は, 生 天 の 持 つ 思 想 的 意 義 を 解 明す る 上 で, と りわ け 重 要 で あ る さ て, 本論 で は上 述 の趣 旨 に 基 づ き, パ ー リ ・ニカ ーヤ の 範 囲 内 で, 生 天 を 意 味 す る と見 倣 され うる 諸 表 現 を 紹 介 して い くこ と とす る 。 どの よ うな 動 詞 が用 い られ て 生 天 が表 現 され て い る か を 中 心 に して種 々の 表 現 を 紹 介 し, 問 題 の あ る 事 例 に つ い て は 若 干 の 検 討 を 加 え て い きた い。 尚, 多 くの 用 例 を 示 す た め 和 訳 は 割 愛 した 。 ま た 本 論 中 は 韻 文 部 分 を 示 す 。

〔1〕{upapajjati (skt. upapadyate)とuppajjati(skt. utpadyate)}

ニ カ ー ヤ中 で は 動 詞upapajjatiを 用 い て 生 天 が 表 現 さ れ. る こ とが 圧 倒 的 に 多 い 。 但 し, このupapajlatiはuppajjatiと ましぼ 混 同 され る。 い ず れ が 時 間 的 に 本 来 的 であ るか を 若 干 検 討 して み る。但 し, 前 提 として シ ンハ リ文 字 で はpapa とppaを 区 別 す る こ とは 非 常 に 困 難 だ と され て い る こ と は忘 れ て はな らな い 。 まず, 意 味 とい う点 か ら は両 語 とも辞 書 に よる限 り 「生 まれ る」 とい う意 味 が 確 認 され る の で判 断 は下 せ な い。 次 に, 如 何 な る 格(case)と 接 続 す る か と い う 点 か ら見 てみ る と, ど こか に 生 まれ る とい う意 味 の 場 合, upapajjatiはacc. と loc. の 両 方 に接 続 す る事 例 が 見 られ るが, upPajjatiは 大 抵10c. と接 続 す る 。 ニ

(2)

-969-ニカ ーヤ に見 られ る生 天 の 諸 表 現(石 上)(119)

カ ー ヤ 中 で 生 天 が 表 現 さ れ る 場 合, sugatirh saggam lokal pupapajjati, bra-hmalokam upapajlati等 と あ り, 通 例acc. と接 続 して い る の で, こ の 観 点 か ら はupapajjatiの 方 が 支 持 さ れ よ う。 ま た, 韻 律 の 観 点 か ら もupapajjatiが 支 持 さ れ る よ う で あ る 。 以 下 に 示 す 事 例 は, upapajjatiが, も しnppajlatiで あ る と 仮 定 す る と極 め て 例 外 的 な 韻 律 と な っ て し ま うた め, upapajjatiを 支 持 す る 根 拠 と な る も の で あ る 。 尚, 各 事 例 の 韻 律 はvattaで あ る 。

<kdyassa bhedd sappanno saggam so upapajjati> (It, 26, 10) <avydpajjham sukham lokam pandito upapajjati>(AN3, 337, 19) <saddhammo sabbhi rakkhito brahmalokupapattiyd>(DN2, 246, 7)

こ の よ うに, upapajjatiの 方 がuppajjatiよ り も 本 来 的 で は な い か と 推 測 で き る 根 拠 が 見 られ た 。 そ の 反 対 の 根 拠 は 見 出 せ な か っ た 。

さ て, upapajjjatiを 用 い た 表 現 と し て 最 も頻 繁 に 見 ら れ る の は, sugatim sag-gam lokam upapajlati. で あ る 。 こ の 他 に は, tavatimsanal pdevanarps ahavyat-am upapajjati. (AN4, 104, 12-13)等 と い う表 現 も し ば し ば 見 られ る 。 こ のsahav-yataと い う語 は(saha+語 言i)に 由 来 す る 語 で, companioship「 共 住 」 な ど と 訳 さ れ る 。 こ のsahavyatalpを 用 い た 表 現 は, 生 天 が, 空 間 的 な 場 所 と し て の 天 界 に 生 ま れ る と い う面 か ら 表 現 さ れ る だ け で は な く, 主 体 者 が 天 人 の 一 員 とな る, 言 い 換 え れ ば 主 体 者 が 天 人 と共 通 の 資 質 を 備 え る とい う面 か ら も 表 現 さ れ る

も の で あ る こ とを, わ れ わ れ に 意 識 さ せ る 。 〔2〕{nikkhitta(skt. niksipta)}

Ahguttara Nikayaに し ぼ し ば 見 られ る, tihi〔三 は 変 数 〕dhammehi

samanna-gato yathabhatam nikkhitto evalp sagge (AN1, 297, 25「26)と い う 定 型 表 卑 も 生 天 を 意 味す る と考 え られ る 。nikkhittaは 「置 か れ た, 投 げ込 ま れ た, 配 置 さ れ た 」等 の 意味 で あ り, ニカ ーヤ の 他 の箇 所 で は, 置 かれ る もの の 意思 にか か わ りな く, 受 動 的 に置 か れ る, 配 され る とい う場 合 に用 い られ て い る。 人 間 も非 人 格 的 な もの と同様 に扱 わ れ て い る 印象 を受 け る点 で, この表 現 は注 目され る。

C3) {upaga}

brahmalokupago hoti. (DN2, 196, 8); saggupagam. (MN1, 483, 10) brahmuno sahavyupago bhavissanti. (DN1, 252, 7)

(4] {gacchati, upeti, yati, kamati (skt. kramati), vajati (skt. vrajati)}

天 界 を 表 す 語 をacc. と し て, そ こ に 到 る と い う 意 味 か ら 生 天 を 表 現 す る 。 <saggam ca so gacchati sariram pahaya>(SN1, 25, 19)

(3)

-968-(120)ぞ カ ー ヤ に見 られ る生 天 の 諸 表 現(石 上) <anindito saggam upeti thanam>(SN1, 32, 6)

<devalokan ca to yanti kule va idha jayare>(AN1, 162, 28)

<saggan ca kamati thanam kammam katvana bhaddakam)> (AN2, 65, 20) <kayassa bheda sugatim vajanti to>(AN4, 93, 28)

(5) {bhajate}

<ariyo dassanasampanno sa lokam bhajate sivam>(AN1, 151, 30)

bhajateに 「行 く」 の 意 味 は な い が, ブ ッ ダ ゴ ー サ の 注 釈 は 次 の 通 り。 sa lokam bhajate sivan ti so khemam devalokam gacchati. (Mp 2, 251, 21)

〔6〕{papupatiま た は 、pappoti(skt. prapnoti)}

<pappoti macco amatam brahmalokam>(DN2, 241, 16) <dhammo papeti suggatim>(Tha 304)

7) {paccajayati (skt. pratyajayate)} <devesu paccajayanti. (SN5, 475, 5)

〔8〕{parip亘ratiの 使 役 形parip廿reti}

<pahaya manusam deham devakayam paripuressanti)'(DN2, 255, 21)

こ こ で, devakayaに は 「天 人 達 の 集 団 」 と 「天 人 の 身 体 」 と い う二 つ の 意 味 が 予 想 さ れ る 。PTSDに は 前 者 の 意 味 し か 見 ら れ ず, ま た, ニ カ ー ヤ の 英 訳 者 達 も 前 者 の 意 味 に 解 し て, 'they shall fill up the hosts in heaven', 等 と 訳 し て い る 。 一 方, 漢 訳 者 達 は 「受 天 清 浄 身 」(大 正蔵1, 79b, 27)「 得 天 身 」(大 正 蔵 2, 411b. 21)と い う よ う に 「天 人 の 身 体 」 と解 し て い る 。 い ず れ と も決 し難1い が, 死 後 の 生 天 を 意 味 す る こ と に 異 論 は な い 。

〔9〕{sagge pamodati}

〈pecca sagge pamodati (ca modati)〉(SN1, 182, 5)は 「死 後, 天 界 にこお い て 楽 し む 。」 と い う意 味 で あ る が, 生 天 と 同 様 に 扱 わ れ て い る 。 【ま とめ 】 以 上, ニ カ ー ヤ に 見 られ る 生 天 を 表 す 諸 表 現 を 概 観 し た 。 生 天 は 大 き く 分 け て 二 つ の 側 面 か ら 表 現 さ れ る よ うで あ る 。 一 つ は 空 間 的, 場 所 的 な 天 界 に 生 ま れ る, 到 達 す る と い う面 か ら 表 現 さ れ る 場 合 。 い ま ひ と つ は 主 体 者 が 天 人 の 一 員 に な る, 言 いi換え れ ぽ, 天 人 と 共 通 の 資 質 を 備 え る と い う面 か ら 表 現 さ れ る 場 合 で あ る 。 〈キ ー ワー ド〉 ニ カ ー ヤ, 生 天 (東 京 大 学 大 学 院)

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