宮 野 純 次
(初等教育学科教授)高 桑
(初等教育学科教授)進
はじめに 今日ほど,子どもたちに自然との触れ合いが 求められる時代はないのではないだろうか。自 然に親しむことにより,自然への興味や関心の 眼が聞かれ,自然への共感や理解を深めること ができる。しかし最近の子どもは自然の中で 遊んだり,生き物と関わったりするさまざまな 自然体験が著しく不足してきている。あまりに も自然と直接接する機会が少ないため,自然に 感動したり,生命を大切にしたりする心や,同 時に実体験に基づいた科学的なものの見方や考 え方が育ちにくいと思われる。 そのような生活環境で育つ子どもたちには, 今まで考えもされなかった様々な異常な兆候が 現れ始めている。「生活環境の破壊」という意 味で「ライフハザード」という言葉を瀧井宏臣11 は造語したが,本質はさらに深刻で「生命環境 の破壊」ともいえる情況になりつつあるのが現 実ではないだろうか。つい2
0
年前の当たり前の 日常生活が,急激なIT
革命で劇的に変化してお り,子どもたちの環境認知能力はそのような急 激な環境変化に対応する限界を超えているのか も知れない。 自然に触れて育つことは,子どもの健全な心 身や豊かな人格の形成にとって欠かすことがで きない。野外に出かけ,自然の大きさや美しさ に触れたり,日で見たり,音に聞いたり,臭い を嘆いだりして,n
感を通して体験することが, ますます大切となっている。 そこでこれからの子どもたちに,自然のすば らしさやいのちの不思議を伝えたり,体験的な 活動を通して科学的な見方や考え方などの基礎 や科学的素養を育てたりするためには,指導者 自身が自然と触れ合い,感動する心や柔らかな 感性を育てると同時に,自然生態系のはたらき について科学的に見る眼を培っていく必要があ る。保育士や幼稚園教諭,小学校教諭を目指す 学生たち自身が,直接体験を通して,将来の指 導者としての生き物に対する感性を修得して欲 しいと切望し私たちは平成 12年から自然体験 学習カリキュラムを開発し展開してきた。 1 .自然体験学習の目的と課題 就学前教育や小学校教育に携わる者や携わる 予定の学生には,自然体験学習は必須科目であ る。なぜ¥保育や学校教育の指導者に自然体験 学習が必要かと言えば,次の3
点を指摘したい。 1 )自分が実際に体験したことで,初めて正 しい指導ができる。 2 )体験学習とは「自分自身の感性を磨くこ と」にある口 3 )正しい科学的な知識を身につけてこそ, 不思議に気づく探究心を育てることがで きる。 以上の視点は,保育所指導指針2)や幼稚園教 育要領3)にそって,幼児生活環境について教え ることができる保育者(保育士,幼稚園教諭), さらには小学校教諭にとっても必要条件である と言えよう。 現場での実際の保育や教育場面では実践的な 活動が大切である。様々な教育理論はあるが, すべてに共通する教育理念は健やかな子どもの 発達をいかにして促進するかという点であろう。 そのような観点を踏まえ,次のような目的で保育者や小学校教諭になるための実習中心の内 容である自然体験学習カリキュラムを開発して きた。 1 )学習者自身が,生命環境である自然の事 物・現象に接することで「いのちの不思 議を感じる感性」を育てる。 2 )その体験から,自然の持つ持続可能性の しくみを理解して,現代文明の持つ非持 続性に気づく口 3 )自然観察や調査活動などを通して,科学 的な見方や論理的な考え方を習得し,持 続的な社会の構築を目指した行動を身に つける口 言いかえれば,保育者や教諭として子どもの 命や生活をどう取り扱うかという視点だけでは なく,この地球上のすべてのいのちが相互依存 しているということを気づかせる力を備えた, 深くて広い視野を身につけた保育者や教諭を育 てようとしている。そのためには,学生自身が ! とl分自身の感性を磨き上げるl直接的な自然体験 学習が不可欠で、あると考えている。 このように自然体験学習カリキュラムの課題 は,学生たちにいかにしてこのような感性を身 につけさせるかを只.体的に開発することにある。 また,開発した白然体験学宵カリキュラムを検 ,i、
I
しながら振り返る過程も重要である。2
.
自然体験学習カリキュラムの内容と方法 これからの保育や教育では,観察や実体験に N~づく円然学習は一層大切になってくる。 直接体験と身近な自然の事物や現象について の観察を通して,指導者としての観察力,思考 力を高め,自然や環境への理解を深めることをf
l
標とした。自然との触れ合いや観察,体験的 な活動を通して,感動を覚え,疑問を感じ,実 践する過程を大切にしていきたい口 自然体験学習のカリキュラムとして,短大で は前期に「自然体験演宵 1J
,後期に「自然体 験演宵rJ
r
,大学では前期に「環境教育研究1J
, 後期に「環境教育研究r
r
J
という科目を設定 している。これらの科目では,I
自然観察」と 「栽培活動」を通じて,自然生態系の働きにつ いて科学的に理解すると同時に,体験活動を通 じて総合的な学習態度を身につけることを目的 としている。 自然との触れ合い体験を通して,いのちの不 思議や自然のしくみを学ぶために「自然観察」 を実践している。「栽培活動」は,活動の場と なる理科教材園や水田で、の継続的な体験活動を 通じて,植物を育てる喜びゃいのちの大切さを 体験し,いのちに対する思いやりを養うことを 目的としている。また身近な環境の動物や植物 を観察し記録して生物暦をつくる。 このような体験学習を通して四季の変化を実 感し,生物の相互作用や自然の大切さを学ぶこ とができると考えている。 自然体験学習の大まかな流れを示すと,次の ようになる。 ①イントロダクション:自然観察と体験学習 の目的,自然観察の方法と栽培活動の説明 ②栽培活動:菜園づくり(野菜やバケツ稲の 育て方) ③植物の観察:キャンパス内の樹木と野草の 観察,草花あそび等 ④動物の観察・飼育:バードウォッチング, ニワトリの飼育等 ⑤ものづくり:絵てがみ, ドングリセット, ネイチャークラフト, しめ縄づくり等 イントロダクションでは,この授業の目的と 進め方,レポート,スケッチの仕方について説 明する。活動に必要なものとしては,スケッチ ブック,筆記用具,汚れてもよい服装,タオル, 帽子等があげられるc 自然観察の基本は,身近な野生植物や昆虫等, 自分の身の回りの生き物に関心を持つことであ る。そのため,肉眼やルーペを使用して観察を 行う習慣をつけることが大切である口よく観る ためにはスケッチすることが基本となる。 植物栽培活動では,いのちを育てる活動を通 じて,感性を育て,食べ物がいのちであること に気づかせている。無農薬と有機栽培により, 安全な野菜作りが実践できることを学ぶ。野菜 を訪問する昆虫の観察から,いのちのつながり に気づかせる。お米がどのようにして育つのかを観察するために,バケツで稲を育てさせると 同時に実際の水田での田植えと稲刈りも行って いる。 動物飼育活動では,動物と直接触れ合うこと から,いのちの大切さを学ばせている。ニワト リの飼育を実体験することで,生き物を飼うた めの正しい知識と飼育の喜びを学ぶ。 晴天であれば畑のある理科教材園や野外で実 習し雨天の場合は室内で授業を行うことを基 本としている口室内での授業は,土壌微生物の 働きや自然生態系を活かした有機栽培に関する ビデオ「生きている十
J
I
土の世界から」や, 野生植物を紹介したスライド「路傍の植物」を 鑑賞し,野生植物について解説している。2
-1.
旧暦と生物暦の役割について まず,自然体験活動を行う前に旧暦と生物暦 との関係について述べておきたい。 わが国の四季の変化は自然の生き物が教えて くれることは昔から知られている。このことを 理解して自然現象を観察するため,旧暦と新暦 の歴史について学んでおく必要がある。 すなわち,新暦であるグレゴリオ暦は,地中 海地域の気候に合わせて作り上げられたキリス ト教の暦である。ところが明治 5年までわが国 で千年以上にわたり使用されて来た暦は,中国 の農事暦である旧暦なのである九この旧暦は 太陽の動きだけでなく月の動きをも計算した太 陽太陰暦であり,中国で 4千年も使用されてき た。新暦は太陽活動だけを考慮した太陽暦のた め,アジアモンスーン地帯では気候変化を正確 に予測できないことを知っておく必要があるヘ また,新暦では四季は毎年同じ長さであるが, 旧暦では四季の長さが毎年変化する。つまり, 一年の長さが違ってくるのである口ここでは詳 しい新暦,旧暦の解説は割愛するが,文献 4と 5を参照されたい。 そこで,生物暦と旧暦が自然暦であることを 理解させるために,旧暦カレンダーを用いて, 新暦のカレンダー上に以下の旧暦24節気の日を 記入させるc 立春,雨水,啓費,春分,清明,穀雨, 立夏,小満,~種,夏至,小暑,大暑, 立秋,処暑,白露,秋分,寒露,霜降, 立冬,小雪,大雪,冬至,小寒,大寒 次に,毎月の月の満ち欠けを記入させている。 特に満月と新月の日を記入させる。そうするこ とで,様々な自然現象が月の満ち欠けに関係し ていることに気づかせるようにしている。 現在,この自然暦である旧暦は少しずつ広 まってきてはいるものの,教育的な目的では使 用されていないのが現状である。私たちは,こ の旧暦こそがアジアモンスーン地帯に位置する 日本列島の生き物の活動を支配していることを, 保育者や教諭を通してこれからの子どもたちに も学んでほしいと考えている。 一方,生物暦とは桜の開花やウグイスの初鳴 きといった身近な生物の動きから四季の変化を 知るものであり,自然との触れ合いを学ぶため には大切なものである口この生物暦を毎年継続 することで地球温暖化の兆候や異変などについ て気づくことができるヘ また,私たちの生活の中には旧暦にもとづく 風俗や習慣があることを年配の方々から聞き取 ることも大切である口古き良き日本の伝統行事 には,旧暦の教える生物暦と関連しているもの が多く, 21世紀の日本を支える子どもたちに伝 えていきたいと考えている口2
-2
.
栽培活動に基づくカリキュラム ①第1段階:畝作り作業 最初に学生たちに課せられる体験活動は,夏 野菜を植えるための畝作りである。栽培活動は, どの保育園や幼稚園でも日常的に行われている が,現在の学生たちのほとんどは鍬を使った経 験がない。黙って渡すと危なくて,隣にいる学 生に怪我をさせかねない行動に出る口そこで, まず鍬の使い方を教える必要がある。 鍬には唐鍬と備中鍬がある。最初は備中鍬で 畝にする土をよくすき,有機肥料である堆肥と 石灰を混ぜ合わせる。その後,苗を植えるため の畝作りを,唐鍬で行う。この場合に,畝の断 面は台形になり, 上面は平にする。 栽培活動をうまく進めるには,この土作りが 最も大切であることを学生に理解させる必要が ある。使用する土は清浄な山土が最適であり,写真1 畝作りのための作業 どんな士でも良いから植えればいいという考え は間違いであると教えている。また,石!火を加 える目的は土の酸性度を和らげて,微生物の活 動を活発にするためである。前年度から製造し ておいた生ごみ堆肥を堆肥として使則している が,場合によっては有機コンポストを購入して 使用しでも良い。化学肥料の使出を最低限にし て栽培活動ができることを学ばせている。 (2)第2段階:苗の植え付け作業 その後, 2~ 3週間おいた後で,購入した夏 野菜の白を植える作業に取りかかる口 例年, トマト,ナス,キュウリ,ピーマン, サツマイモ等を夏野菜として植えている。この 5種類は,大抵の保育園や幼稚園あるいは家庭 で栽培されているごく普通の野菜であることか ら選んでいるc オクラも栽培してみたが,この 植物は大変な肥料食いで、あることと,実のつみ 取り時期が一時になるため,観察を続けていく l-=I的には向いていないことがわかった。その点, トマト,ナス,キュウリ,ピーマンは長い間観 察を楽しめる。特に, ミニトマトは栽培が容易 であるので初めての栽培には向いている。 畝に雑草を生やさない方法として,私たちは 黒いゴミ袋を切り広げてマルチとして使用して いる。この方法の利点は,まずゴミ袋を使用す るので安いことである。本格的なマルチは価格 も高く,必要以上に購入することになりかねな い。お金がかからず簡単に工夫することで,ど こでも栽培ができるやり方として薦めている。 苗を植える場所はマルチの上に卜文字に切れ目 写真2 苗の植え付け作業 を入れておくとよい。 苗を畝に植える場合の j主意としては,穴を掘 り甫の根が土に密着するようにしっかりと周り の土を指で押さえ込むことである。これをしな いと,苗の根と周りの士との聞にすきまができ て,折角植えた甫が枯れてしまったり発育が遅 れてしまったりする原因となる。 また,全農からバケツ稲の種を無料で入手で きるので利用しているil口このバケツを使用し て稲を育てる体験学習は,現在では都市を中心 にして広がってきており,時々学生の中にも幼 稚園などで取り組んだ経験者も見られる。バケ ツ稲の栽培は,水田で、の稲の栽培に比べて,場 所をとらない,世話がしやすい,観察も容易で あるという利点があり,狭い幼稚園の園庭や保 育園では取り組みやすい栽培活動で、ある。欠点 は,夏の間の水管理が難しいことである。この ようにして,自分たちで栽培し収穫したお米を 食べる活動は子どもたちに食べ物の大切さを教 える良い機会になる。 ③第
3
段階:苗の生育の観察と収穫祭 このようにして,植え付けた苗は夏の高温で すくすくと育ち, 1週間ごとの観察で驚くほど の成長を見せる。この様子に,学生たちは驚き の色を隠せない。ほとんどの学生にとって,野 菜はスーパーマーケットで買うものであり,で き上がったものは見たことはあるものの,生育 する過程を見たことがないからである。このよ うな野菜の成育過程を観察することから,いの ちの不思議を体験することが十分にできること写真3 バケツ稲を刈り取る がわかる口 次に,学生たちが知らないことはトマト,ナ ス,キュウリ,ピーマンの花の違いである。野 菜の種類の違いは花の形にあることが,実物を 前にして初めて理解できる。そして,青くて小 さな実が着く頃には驚きの表情が見られる口 初めて自分たちが毎日食べてきた野菜が作り 出されることを目の当たりにする子どもと同じ, 素晴らしい感性の目覚めである。小さないのち が大きくなることを目にする機会が少ない現在 では,このようなごく普通の野菜の栽培から多 くのことを学ぶことができる。 夏野菜はできたものから,その場でもぎ取り 食べさせている。そうすると,ほとんどの学生 は「売っているものとはちがう!なにかおいし い !
J
と叫ぶのである口味覚という五!惑を働か せることで,白然のいのちの味わいが本当に理 解できると言える。 同様な観察は,冬野菜でも行うことが可能で ある口冬野菜の場合には,ほうれん草や小松菜, 大根などの他,春菊などが簡単で丈夫な野菜と して薦められる。 春菊は畑に残して生育させると,春には素晴 らしい花を咲かせてキク科植物であることがす ぐに分かる。 「収穫祭j という授業を設けてこのようにし て育てた冬野菜を,鍋物として全員で食べる。 そうすると学生たちは,立派な形に育たなくて も自分が育てた野菜ということで一味も二味も 違うという感想を書いてくる。このことはとて 写真4 生長する野菜の観察をする 写真5 野菜の収穫,キュウリをかじる学生たち も大切なことである。いままで知らなかった本 物の野菜の味を,生まれて初めて知った学生も 多いことがわかる。 ④栽培活動のカリキュラムの流れ -理科教材園の畑にて,畝作りをする口 ・準備するもの:唐鍬,備中鍬,軍手,堆肥, マルチ用のゴミ袋,小バケツ,スコップ, 1 輪車 ・まず苗を植えるための畝を作る。 -畝に有機肥料として堆肥を入れる。 →土壌の活性を高めるために石灰をまいて, 中性にする。 →苗を植える 2~3 週間前にこの作業をして おく口 →苗床を作り,マルチをする。 →連休前の4月末に野菜苗を植える。 . 5月 か ら , 植 え た 苗 の 生 育 を 継 続 し て 観 察 する。スケッチする口→どんな昆虫がやって来るかよく観察する。 昆虫の種類は「畑や庭に来る見虫j8)で調 べてみる。 →なるべく農薬は使用しないで,栽培を続け る。特に,各野菜の花のしくみをよく観察 しスケッチする。 →デジタルカメラでも記録しておくとよい (後で編集しておく)口 →C Dに書き込み保存可能。 〈バケツ稲の栽培活動〉
.
4
月末までにバケツ稲をスタートさせるよう にする。 -保育園・幼稚園セットと小学校セットがある0 .バケツ稲コンテストに応募しよう。 ・やり方 →普通の田んぼより 1ヶ月早く描種して7月"
1
にイヒが咲くようにする。 →毎週,生育状態を観察してスケッチする(
I'~I 宅で栽培しでも良い)。 →班ごとに生育状態を毎月報告する口 →夏休み前,7
月になかほしを行う。 8月中は水を切らさないことが大切り →収穫は 10月上旬に行う(後期授業)。 →収穫したお米を脱穀し,精米してご飯にし て食べてみる。 2 - 3.飼育活動に基づくカリキュラム 動物の飼育活動の基本は,動物との触れあい からいのちの大切さを学ぶことである口毎日世 話をしながら観察する活動習慣をつけることが 大切である。生き物の素晴らしさ,不思議さに │当分自身で気づくことができるよう指導してい る。 生き物に触れたり,飼ったりした経験の少な い学生が多い。ニワトリの飼育を実体験するこ とで,牛.き物との触れあいの大切さを学ぶと同 時に,生き物を飼うための正しい知識と飼育の 喜びを学ばせている。 〈ニワトリの飼育活動〉 ・ニワトリ小屋で,飼育されているニワトリを よく観察する。 →ニワトリの特徴,取り扱い方,雄と雌の違 いに気づくc →ニワトリの行動を観察し,スケッチブック に記入する。 ・ニワトリの動きや習性について,説明する。 →スケッチは絵画ではないので,上手下手よ りもどんな点に気づいたかを,評価の対象 とする。 →ニワトリの糞は大切な肥料となることを教 える0 ・毎日,水とエサを与える係りを決めておく。 →世話係表を作り,担当予定者をあらかじめ 記入させる。 →世話した人が採卵し 自分で料理して味わ いその感想、を記入させる。 ・ニワトリの運動と健康状態に留意すること。 →烏インフルエンザ対策としては,病気の場 合に,すぐに獣医に相談すること。 各市町村には学校飼育動物の病気について の相談窓口がある。ない場合には,地元の 専門家を捜しておき相談できる準備をして おくことが大切である口 -野生動物や,ネコ,イヌなどの被害に遭わな いように,網の保守,I
組問の点検など小屋の 整備を怠らないこと。 →休み中の世話を,どのようにするかをあら かじめ相談しておく。 -その他,気づいたことをみんなで話し合う機 会を持つ。 2 - 4.r
観察」を通じての学習活動 「観察」においては,季節の変化を観察し実 感することが中心になるc それぞれの季節に特 徴的な野生植物(野草や樹木)を観察し,半期 の問に,野草や樹木をそれぞれ10種類以上観察 し,スケッチすることを課題としている。また, 秋には近くの鴨川へ出かけバードウォッチング をしている。事前にフィールドスコープの使い 方だけでなく,野鳥の剥製を利用してスケッ チさせている口 「観察」の際には,気づいたことを記録に残 すことが大切である。スケッチの基本は, 1本 の実線で描くことである。気づいた点や疑問に 思った点を余白に記入する。 1頁には‘つのも のをスケッチし,自分で調べたことも記入させ写真6 バードウォッチングをする学生たち る。小さなものはルーペを使用して観察を行う。 また,必ず日付と観察場所を記入する習慣をつ けることも指導している。 生き物は色々な角度から眺めて,特徴がわか るように描くことが大切である。彩色は必ずし も必要ではないが,可能ならばする。用いた書 籍名等は,例えば, 牧野寓太郎(1958)
r
牧野植物図鑑』北隆館 のように記入しておく。 このような自然観察の習慣づけは,自分の身 のまわりの生き物,身近な野生植物や見虫等, に関心を持ち,いのちの素晴らしさや大切さを 感じる心を育てるためには不可欠である。この ような「観察」から,大気,雨水,土を感じる ことのできる感性や季節の変化を感じるこころ が学生に育っていくことがこのカリキュラムを 続けてわかってきた。3
.
指導力の養成法 3一
1.観察力の養成 栽培活動や飼育活動での体験をスケッチブッ クに記録していくことが観察力の養成にとって 極めて大切である。自分自身で観察したことを 記入したスケッチブックが完成する頃には,お のずと観察力が身についてくることがこのカリ キュラムの実践から明らかとなった。 3 - 2.遊び能力,製作能力の開発 草花遊ぴ.))や絵てがみIヘネイチャークラフト, ドングリセットやしめ縄づくりなどを通して, 指導者としての遊び能力や製作能力の実践力を 写真7 草花あそび:バッタづくり 写真8 絵てがみの作品例 つけさせている。 さまざまな葉を使った草笛や花を使った花飾 り,ススキやシュロの葉を使ったバッタづくり などの草花遊びゃ松ボックリやドングリなど自 然のものを用いるネイチャークラフトでは,思 わず時間を忘れてしまうほどその取り組みは熱 心である。秋には9種類のドングリを集めるド ングリセットづくりに取り組むことから,身近 なドングリがどこにあるかに気づかせている。 また,日本の伝統文化であり自然のものには捨 てるところがないという考えを学ぶために,モ チ 米 の わ ら を 毎 年 い た だ い て し め 縄 づ く り を 行っている。 このような自然の素材を活用するものづくり には今後とも大いに力を入れていきたいと考え ている。.
.
.
.
三幽““N川J川帽静鉄一
一
一一ず
写真9 ネイチャークラフ卜の作品例 写真10 ドングリセット-
革
i一
4命 r 魁 楓γ7 写真11 しめ縄づくりをする学生たち3
-3
.
大学の所有する「京女の森J
など自然 環境の活用 京都女子大学が所有する「京女の森」を活用 した自然体験学習も日曜日を利用して実施して きた11) 12) 山 14)0I
京女の森」には図15)に示すよう に,ニノ谷尾根コース,ナメラ林道コース,荒 谷コースがある。自然観察会では,どのコース でも,いのちの不思議に触れてもらい,感じて もらうよう指導している。 二ノ谷尾根コースでは,春になるとタムシバ, アセビなどさまざまな花が咲く。尾根道の足元 のふかふか感を楽しみながらこのコースを歩く と,アカマツの大木,アセビ,ネジキ,タムシ パなどの天然林とスギやヒノキだけの人工林の 違いを簡単に比較観察できる。また,野生の鹿 が樹皮を食べた後やその後に木の回復していく 様子も観察できる。 荒谷コースでは,まず谷筋に沿ってスギの植 林地が続く。ここは,かつて薪炭利用された二 次林(天然林)が広がっている。沢筋でミズナ ラ,カエデなどの谷筋を好む植物をはじめとし て野鳥,蝶,水生昆虫,菌類をはじめ野生動物 の生態を容易に観察できる。 「京女の森」の各コースには, 20m間隔に杭 を打ってあるので,この杭番号を参考にして地 図(図参照)と照らし合わせれば,実際に歩き 図 「京女の森」の生き物地図ながらそこで日にする草や木などがわかりやす くなる。 炭焼き体験は,一昨年の秋に左京区大原百井 の集落で実際の炭窯を見せていただき,炭焼き の方法について教えていただいた。 昨年からは,京都駅の近くに造成された「い のちの森」でも自然観察を実施している。この 場所は約 10年前に作られた人工林であるが,今 では立派な森となっている。過去10年間でこの 森の動植物の分布がしっかり調査されている161 ため,どんな生き物がみられるかが事前にわか る点や, 4 mの高さに樹冠回廊がつくられ木の 実や花の観察が容易にできるなど,都市に生育 する野生生物をウオッチングする場所として好 都合である口 また,近畿中国森林管理局の「箕面森林環境 保全ふれあいセンター」とのパートナーズシッ プにより,
I
大学生のための森林体験活動」も一 昨年の秋から実施している。実際に森林内での 間伐作業体験やネイチャークラフト等を通じて, 森林の役割と重要性について学び,環境教育実 践の場としている口 こうした具体的な実体験の積み重ねの中から, 「自然生態系」を実感していくことが大切である。 環境先進国といわれるドイツの学校において も,学校の環境教育を支援するプログラムやプ ロジェクトも構想されており,地域とのネット ワーク化が図られている口さらに,体験的な学 習活動を支援するために,生態学的な視点を中 心に据えた教員養成の段階での取り組みも構想 写真12 大学生のための森林体験活動 されている。自然界におけるつながり,牛物の 多様性や持続的な社会を保つことがいかに大切 であるかが認識されようとしている171 川 191口 その際に, ドイツの学校で行われているよう に,現実の問題に目を向け,身近なことから自 分にできることを考えて実行することも重要で ある。各自で取り組める実践活動をやり遂げて 始めて環境問題と取り組んだと言えよう口自分 で課題を設定して,意識的な取り組みを行うこ とにより,自然についての認識を深め,その豊 かさやすばらしさを理解することができるよう 指導している。 おわりに2
1
世紀に入りわが固では教育改革が声高に叫 ばれている口今までの「ゆとり教育」が見直さ れ,基礎学力を養成する学習カリキュラムの開 発も緊急の課題となっている。しかし,ともす れば誰かが開発した事例研究の成果だけを取り 入れて,自然体験学習も進めようとする傾向が 未だにありはしないだろうかと,私たちは危倶 するc 自然体験学習は何も今に始まったことではな くて,初等教育段階では以前から行われてきた ことは言うまでもない。では,今までの自然体 験学習とどこが違うのかという視点を持つこと が大切であろうc 自然体験活動をすることで, 生きる力を育てるためにも,I
肖ら学ぶ」自然 体験活動,I
自ら考える」自然体験活動,I
観察」 ではなく「感察」など,体験を通じて「感性」 を深めていく必要がある却1211口2
1
世紀の教育改革で大切なことは,幼児教育 や初等教育に携わる指導者自身がしっかりとし た原体験や自然体験を習得して行くことではな いだろうか。その意味で,それぞれの保育者の 養成課程で大学の教育環境に応じたさまざまな 取り組みが始まっていることは嬉しいことであ る。「いのちの環境」を傷っけない教育者を育 てるために,自然体験学習を開発してきたが, これからの環境教育では,正しい環境観を持っ たいのちを大切にする「生命環境教育」を指導で きる保育者や教諭を育てていく必要がある出口「 生 命 環 境 教 育 」 の 実 践 に は , 生 態 学 的 な 基 礎 知 識 に 裏 付 け ら れ た 指 導 に よ り , 子 ど も た ち に 楽 し い 自 然 観 察 と い の ち の 大 切 さ を 教 え て い く こ と が 大 切 で あ る 。 そ の た め に は 身 近 な 自 然 環 境 だ け で な く , 時 々 里 山 に 出 か け て そ こ で 時 間 を か け て 継 続 的 に 観 察 す る こ と も ま す ま す 重 要 になってくると確イ言している。 謝 辞 自 然 体 験 学 習 カ リ キ ュ ラ ム を 実 践 す る に あ た り , 自 然 体 験 学 宵 の 場 で あ る 「 理 科 教 材 閑 」 の 開 設 に つ い て は 施 設 課 の お 世 話 に な っ た 。 ま た , 「しめ縄作り
J
では森澄さんに,I
水 間 の 田 植 え 体 験 」 で は 八 幡 市 川 口 に お 住 ま い の 奥 村 新 司 , 干LI子ご夫妻に,I
炭 焼 き 体 験 」 で は 京 都d
i
大 原n
井 に お 住 ま い の 久 保 恭 ー さ ん に お 世 話 に な っ た り 「 京 女 の 森 」 の あ る 尾 越 周 辺 の 文 化 や 宵 慣 に 閲 し て は , 現 地 に お 住 ま い の 下 坂 恭 昭 さ ん か ら お 話 を 伺 い , 築350年 の ご 自 宅 内 部 も 見 せ てm
き 大 変 感 謝 し て い る 。 「 京 女 の 森J
自 然 観 察 会 で は , 地 名 研 究 家 の 綱 本 逸 雄 さ ん , 樹 木 医 の 肱111良 男 さ ん , 森 林 イ ン ス ト ラ ク タ ー の 浅 香 剛 さ ん に も 大 変 お 世 話 に な っ た 。 「 い の ち の 森 」 観 察 会 で は 京 都 市 職 員 の 宮 本 水 文 さ ん に 便 宜 を 与 え て 頂 い た 。 最 後 に , 休 み 期 間 に お け る 理 科 教 材 園 の ニ ワ ト リ の 世 話 は , 京 都 幼 稚 園 の 角 南 孝 ー さ ん に 大 変 お 世 話 に な っ たc こ こ に 記 し て お礼申し上げます。 文 献 1 )瀧井宏臣 (2004)r
こどもたちのライフハザー ドJ
岩波書庖 2 )石井哲夫・待井和江編 (2000)r
改 訂 保 育 所 保育指針全文の読み方J
全同社会福祉協議会 3 )大蔵省印刷局 (1999)r
文部省告示幼稚園教 育要領J
大蔵省印刷局 4)小 林 弦 彦 (2003)r
旧暦はくらしの羅針盤j NHK,lf,版 5 )松村賢治 (2002)r
旧暦と暮らすJ
ビジネス社 6 ) 星 沢 昭 ・ 百 武 充 編 著 (1989)r
自然観察デー タブックJ
岩波書出 7 )バケツ稲ネットワーク http://www.ja-group.or.jp/baketsuine/ 8) 中山周平 (2001)r
野や庭の昆虫J
小学館 9)菊 川 穣 (2001)r
ネィチャーウォッチング四 季の草花あそびJ
菊田穣出版 10)園 重 暢 (2002)r
心にのこる絵手紙入門J
日 本文芸社 11) 高桑進,宮野純次他 (2002年)I
私立」貫教 育における環境教育カリキュラムの開発J
r
宗 教・文化研究所研究紀要』第15号, 225~259 頁,京都女子大学宗教・文化研究所 12)高 桑 進 , 宮 野 純 次 他 (2003年)I
私立一貫教 育における環境教育カリキュラムの展開 (1)J
『宗教・文化研究所研究紀要』第16号, 153~ 177頁,京都女子大学宗教・文化研究所 13)高桑進,宮野純次他 (2004年)I
私立一貫教 育における環境教育カリキュラムの展開 (2)J
『宗教・文化研究所研究紀要J
第17号, 157~ 199頁,京都女子大学宗教・文化研究所 14)高桑進,宮野純次他 (2005年)I
いのちの不 思議を感じる生命環境教育の実践と評価J
r
宗 教・文化研究所研究紀要J
第18号, 255~291 頁,京都女子大学宗教・文化研究所 15)京 都 女 子 大 学 ・ 京 都 女 子 大 学 短 期 大 学 部 編 (1995年)r
尾越のいのち 尾越山林環境調杏 報告書J
京都女子学園 16)森本幸裕・夏原由博 (2005年)r
いのちの森: 生物親和都市のま里論と実践J
点都大学学術出 版 会 17)宮 野 純 次 (2005)r
理科教育的視点からみた ドイツの総合的学習』風間書房 18) Hartinger, A/Fりlling-Albers,M. (Hrsg.) . (2004) : Lehterkompetenzen fur den Sachunterricht, JuliusKlinkhardt.19) Baier, H./Gartner, H./Marquardt-Mau, B./ Schreier, H. (Hrsg.). (1999): Umwelt, Mitwelt, Lebenswelt im Sachunterricht, JuliusKlinkhard.t 20)1=1本理科教育学会編 (2004)