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実験力学 Vol.19 No.1

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Academic year: 2021

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(1)

勾玉形垂直軸風車ブレードの

Hele-Shaw

セルによる実験的性能検討

二 宮 広 樹

,吉 岡 修 哉

**

Experimental Investigation of Aerodynamic Characteristics of

Magatama Type Vertical Axis Wind Turbine Blade Using Hele-Shaw Cell

Hiroki NINOMIYA and Shuya YOSHIOKA

New wind turbine blade designed exclusively for vertical axis wind turbine (VAWT) is examined. This new blade has "Magatama" type cross section. In this paper aerodynamic force generated by the Magatama blade in two dimensional potential flow is experimentally investigated by using Hele-Shaw cell. Pressure distribution and aerodynamic force are calculated from streamlines visualized in the Hele-Shaw cell. As a first step, potential flow around circular cylinder and Joukowski airfoil is examined. Obtained pressure distributions are in good agreement with theoretical values. Increase of lift force with increase of angle of attack is also confirmed by examination of NACA0018 airfoil. Our original Magatama blade is then investigated by the Hele-Shaw cell. Pressure distribution and aerodynamic force are successfully obtained. It is confirmed that the lift force can be controlled by modifying curvatures of upper and lower surface of the Magatama blade.

Keywords: Vertical axis wind turbine (VAWT), Magatama blade, Hele-Shaw cell, Potential flow, Aerodynamic force,

Lift force, Flow visualization

1.緒 論

垂直軸風車は,ローター回転の駆動源となる空気力の違 いにより,揚力形と抗力形に大別される1,2).抗力形垂直軸 風車は,風車ブレードが発生する抗力により駆動される. 比較的低風速で起動することが出来,高いトルクを得るこ とが出来るものの,風速を超える周速度で回転することが 出来ない.一方,揚力で駆動される揚力形垂直軸風車は, 風速を超える周速度で回転可能である.そのため,風から 回収できる動力が大きく,一般的には発電用風車に適して いるとされることが多い.しかしながら,低風速では起動 することが出来ない,得られるトルクが抗力形と比較して 低い,という特性から,低風速時に発電用風車として運用 することは困難である.そのため,風力エネルギーをより 効果的に利用するためには,揚力形,抗力形の形式にとら われず,低風速から高風速までの幅広い風速域で運用可能 な,実用的な新しい垂直軸風車が求められる. 著者らは,垂直軸風車専用に特化した新しいブレードと して,勾玉形断面を持つブレードを提案している.この勾 玉形ブレードを採用する垂直軸風車は,従来よく用いられ ている,例えば NACA0018 翼断面ブレードの垂直軸風車と 比較し,低周速で回転できることが分かっている3-5).しか しながら現在のところ,この勾玉形ブレードが生み出す空 気力について詳細な検討は行っていない.従って勾玉形ブ レードを持つ垂直軸風車の性能を最大化させるためには, 基本に立ち返り,勾玉形断面をもつ翼単体の性能を詳細に 検討する必要がある. 本研究ではその手法の一つとして,遺伝的アルゴリズム による勾玉形断面形状の最適化を実施する.その際の評価 指標は,勾玉形ブレードが発生する流体力とする.この流 体力値は,2 次元パネル法による簡易な数値計算で予測さ れる値に加え,実際の実験により得られる値も併用する予 定である.この実験では,Hele-Shaw セルを用いて,2次元 ポテンシャル流れ中に置かれた勾玉形ブレードが発生する 流体力を計測する.本報では,この実験の詳細を報告する. Hele-Shaw セルはオイラーの方程式で表される非粘性・ 非圧縮流れに非回転条件を付加した 2 次元ポテンシャル流 れを,実在流体を用いて疑似的に生成する装置である 6) これを用いることで,ポテンシャル流れではあるが,圧力 の空間分布を実験的に求めることが出来る.Hele-Shaw セ ルは,平行な 2 つの壁で挟まれた狭い流路と,その壁面に 挟まれて設置される 2 次元の物体で構成される.流路には 作動流体として水を低速で流す.この水流を染料により可 視化することで,設置した 2 次元物体まわりの 2 次元ポテ ンシャル流れの流線を観察できる.得られた流線より,物 体まわりの 2 次元ポテンシャル流れの圧力分布を算出でき る.さらに,Hele-Shaw セル内の物体に疑似的に循環を与え ることにより,物体が発生する揚力を求める手法も報告さ れている 7).本研究では上記の手法を用い,勾玉形断面を もつブレードまわりの圧力分布を求めた.さらに,ブレー 原稿受付 2018 年 11 月 26 日 * 立命館大学大学院理工学研究科(〒525-8577 滋賀県草津 市野路東1丁目1−1) ** 正会員 立命館大学理工学部(〒525-8577 滋賀県草津市 野路東1丁目1−1) ドが発生する流体力の算出を試みた. 本研究ではまず Hele-Shaw セルにより,円柱とジューコ フスキー翼まわりの圧力分布を求めた.これらを,理論解 と比較したところ,良い一致が見られた.次に,従来風車 ブレードに用いられている翼形である NACA0018 翼形ま わりの圧力分布を求めた.その後に,本研究が対象として いる勾玉形ブレードまわりの圧力分布を求めた.これより, 勾玉形ブレードが発生する流体力(揚力)を算出した.ま た,勾玉形ブレードの断面形状を変更して同様の実験を行 い,流体力(揚力)がどのように変化するか検討した. 主な記号

2.

Hele-Shaw

セル

2.1 Hele-Shawセル内の流れ 実験装置の概略および写真を Fig. 1,Fig. 2 に示す.2 枚 のガラス板に挟まれた狭い流路で Hele-Shaw セルを作成 し,その間に観察対象の物体(Fig. 1 は例として円柱)を設 置している.Hele-Shaw セルによりポテンシャル流れに類 似する流れを生成できる事実は,以下の通り示すことがで きる.物体中央を原点とし,流れ方向に 軸,スパン方向に 軸,高さ(厚さ)方向に 軸をとる.それぞれの方向の速 度成分を , , とおく.流れは定常非圧縮流れとする. Hele-Shaw セル内では,高さ方向速度成分は w=0 とみな す.さらに , 方向の速度勾配は 方向の速度勾配と比べ小 さいとして,無視する.同様に 2 階微分も無視する.以上 より,Hele-Shaw セル内におけるナビエ・ストークス方程 式は以下の通り簡略化される. = , = (1) の 方向分布は層流ポアズイユ流れの速度分布となるの で, = 0面を流路厚さ方向の中心面にとると, = 1 − ²² (2) で与えられる. は平板間隔の半分の長さを示す. は 速度の 方向成分 の最大値である.これは,バルク平均 速度 用いると次のように表される. =

3

2

1 − ²² (3) 同様にして 方向速度分布についても, =

3

2

1 − ²² (4) を得る.Eq. (3),(4)を Eq. (1)に代入し,それぞれ , に 関して微分することで以下の等式を得る. = (5) 次に,速度ポテンシャル を以下のようにとる. = , = (6) ただし, , をあらためて = , = と置き換え た.Eq. (5),(6)より + = 0 (7) となる.Eq. (7) は常にに渦度が 0 であるポテンシャル流 れの条件を満たす.よって,Hele-Shaw セル内の粘性非圧 縮流れはポテンシャル流れと同等になる. 2.2 対象物体への循環の付与 Hele-Shaw セル内に置かれた物体に循環を与えると,得 られたポテンシャル流れから揚力を算出できる.本研究で は,Suzuki7)の方法に従い,Hele-Shaw 流れに疑似的に循環 を与えた.Fig. 1 に示すよう,観察する物体の片側に,流路 厚さよりさらに薄い厚さ+,幅 の帯状の薄板である循環発 生器を隣接させた.これにより,循環発生器を設置した側 の流路抵抗を増加させ,物体上のよどみ点位置をその方向 に移動させる.この方法で疑似的に発生する循環の大きさ は,循環発生器の厚さ+と幅 に依存する.循環発生器は, 観察物体の上側あるいは下側に隣接させる.Fig. 1 と Fig. 2 は,下側に隣接させた場合の例である.適当な大きさの循 環発生器を設置することで,クッタ条件を満たす翼まわり の流れを疑似的に実現することが出来る.この手法により, 物体表面を移動壁面とすることなく,物体に適切な循環を 与えた状態の流れを Hele-Shaw セル内で実現できる. ,- :抗力係数 ∆/ :流線間隔[mm] ,0 :揚力係数 + :循環発生器の厚さ[mm] ,1 :圧力係数 2 :主流速度[m/s] 3 :複素速度ポテンシャル :循環発生器の幅[mm] 4 :速度(√ + )[m/s] 6 :迎角 [°] 8 :円柱半径[mm] 9 :循環[m /s] > :曲率半径[mm] ? :角度[°] /@AB :主流流線間隔[mm] ?C :よどみ点角度[°]

(2)

ドが発生する流体力の算出を試みた. 本研究ではまず Hele-Shaw セルにより,円柱とジューコ フスキー翼まわりの圧力分布を求めた.これらを,理論解 と比較したところ,良い一致が見られた.次に,従来風車 ブレードに用いられている翼形である NACA0018 翼形ま わりの圧力分布を求めた.その後に,本研究が対象として いる勾玉形ブレードまわりの圧力分布を求めた.これより, 勾玉形ブレードが発生する流体力(揚力)を算出した.ま た,勾玉形ブレードの断面形状を変更して同様の実験を行 い,流体力(揚力)がどのように変化するか検討した. 主な記号

2.

Hele-Shaw

セル

2.1 Hele-Shawセル内の流れ 実験装置の概略および写真を Fig. 1,Fig. 2 に示す.2 枚 のガラス板に挟まれた狭い流路で Hele-Shaw セルを作成 し,その間に観察対象の物体(Fig. 1 は例として円柱)を設 置している.Hele-Shaw セルによりポテンシャル流れに類 似する流れを生成できる事実は,以下の通り示すことがで きる.物体中央を原点とし,流れ方向に 軸,スパン方向に 軸,高さ(厚さ)方向に 軸をとる.それぞれの方向の速 度成分を , , とおく.流れは定常非圧縮流れとする. Hele-Shaw セル内では,高さ方向速度成分は w=0 とみな す.さらに , 方向の速度勾配は 方向の速度勾配と比べ小 さいとして,無視する.同様に 2 階微分も無視する.以上 より,Hele-Shaw セル内におけるナビエ・ストークス方程 式は以下の通り簡略化される. = , = (1) の 方向分布は層流ポアズイユ流れの速度分布となるの で, = 0面を流路厚さ方向の中心面にとると, = 1 − ²² (2) で与えられる. は平板間隔の半分の長さを示す. は 速度の 方向成分 の最大値である.これは,バルク平均 速度 用いると次のように表される. =

3

2

1 − ²² (3) 同様にして 方向速度分布についても, =

3

2

1 − ²² (4) を得る.Eq. (3),(4)を Eq. (1)に代入し,それぞれ , に 関して微分することで以下の等式を得る. = (5) 次に,速度ポテンシャル を以下のようにとる. = , = (6) ただし, , をあらためて = , = と置き換え た.Eq. (5),(6)より + = 0 (7) となる.Eq. (7) は常にに渦度が 0 であるポテンシャル流 れの条件を満たす.よって,Hele-Shaw セル内の粘性非圧 縮流れはポテンシャル流れと同等になる. 2.2 対象物体への循環の付与 Hele-Shaw セル内に置かれた物体に循環を与えると,得 られたポテンシャル流れから揚力を算出できる.本研究で は,Suzuki7)の方法に従い,Hele-Shaw 流れに疑似的に循環 を与えた.Fig. 1 に示すよう,観察する物体の片側に,流路 厚さよりさらに薄い厚さ+,幅 の帯状の薄板である循環発 生器を隣接させた.これにより,循環発生器を設置した側 の流路抵抗を増加させ,物体上のよどみ点位置をその方向 に移動させる.この方法で疑似的に発生する循環の大きさ は,循環発生器の厚さ+と幅 に依存する.循環発生器は, 観察物体の上側あるいは下側に隣接させる.Fig. 1 と Fig. 2 は,下側に隣接させた場合の例である.適当な大きさの循 環発生器を設置することで,クッタ条件を満たす翼まわり の流れを疑似的に実現することが出来る.この手法により, 物体表面を移動壁面とすることなく,物体に適切な循環を 与えた状態の流れを Hele-Shaw セル内で実現できる. ,- :抗力係数 ∆/ :流線間隔[mm] ,0 :揚力係数 + :循環発生器の厚さ[mm] ,1 :圧力係数 2 :主流速度[m/s] 3 :複素速度ポテンシャル :循環発生器の幅[mm] 4 :速度(√ + )[m/s] 6 :迎角 [°] 8 :円柱半径[mm] 9 :循環[m /s] > :曲率半径[mm] ? :角度[°] /@AB :主流流線間隔[mm] ?C :よどみ点角度[°] 実験力学 Vol. 19, No. 1(2019 年 3 月) 45

(3)

2.3 完全流体理論 2.3.1 円柱まわりの流れ 円柱(半径8,循環9)を過ぎ去る流れの複素速度ポテン シャル3( ),および円柱表面の速度4は以下の式で表される. 3( ) = 2 +8 −2E FGHD9 (8) 4 = 22/DI? +2E89 (9) さらにベルヌーイの式を用いて,円柱表面の圧力係数,Jが 以下の通り得られる.

,J= 1 − 4/DI ? −E82 /DI? −29 4E 8 29 (10)

ここでよどみ点角度?Cは,Eq. (9)にて4=0 として循環9を用 いると以下のように求まる. ?C= sinMN4E829 (11) 2.3.2 ジューコフスキー翼まわりの流れ 迎角6のジューコフスキー翼の断面形状は,半径8の円を 以下に示すジューコフスキー変換することで得られる. O = +P Q (−2D6) (12) この変換により, 平面( = + D )における半径8,中心座 標 Rの円は,O平面(O = S + DT)のジューコフスキー翼に写像 される.ジューコフスキー翼の形状は,次式で示すP, U, Vの パラメーターによって決定される. 8 = U + WP + V (13) 本研究では,これらのパラメーターはP=1.0,V=0.16,U=0.14 とした. ζ 平面と 平面における共役複素速度4Xと4の関係を次式 に示す. 4X=U3(O)UO =U3(O)U UUO =UO U4 (14) Eq. (12) を で微分し Eq. (14) の分母に代入する.ここで円 の中心が Rであることを考慮して,あらためて を Rと 置き換えると,次式を得る. 4X= 1 1 −(\M\])Z[ [Q (−2D6) 4 (15) Eq. (15) とベルヌーイの式より,ジューコフスキー翼まわ りの圧力係数,1が以下の通り求まる. ,J= 1 − ^ 1 1 −(\M\])Z[ [exp(−2D6) 4 2a (16) よどみ点角度?Cは,次式で表される. ?C= 6 + tanMNcVPd (17) 2.4 勾玉形断面形状 勾玉形断面形状は,半径の異なる 4 つの円弧>N, > , >e, >f で構成される.それぞれの円弧が,翼前縁,翼後縁,翼上 面,翼下面となる.本報では,MT-1,MT-2,MT-3 の 3 種 類の勾玉形断面形状を検討した.各勾玉形断面を Fig. 3 に 示す.また,各断面を構成するぞれぞれの円弧の半径>を Table 1 に示す.3 断面とも共通して,翼弦長 L は 140.0mm 翼前縁は半径>N= 25.0mm,翼後縁は半径> = 2.5mmの円 弧である.MT-1 と比較して,MT-2 は翼上面の半径>eが小 さく,翼厚が厚い.また MT-3 は,翼下面の半径>fが小さ く,翼厚が薄くなっている. +

Undersurface of the fluid passage

Circulation generator

Fig. 1 Schematic of experimental setup Hele-Shaw cell

Observation object

Fig.2 Circular cylinder with circulation generator in Hele-Shaw cell

(4)

(a)

(b)

(c)

Fig. 3 Profiles of Magatama-type blades (a) MT-1,(b) MT-2, (c) MT-3

3.実験方法

3.1 実験装置および実験手順 実験装置の Hele-Shaw セルは(株)東京メータ製流線可視 化実験装置 SVA-70623 をベースに製作した.Fig. 4 に全体 の写真を示す.Hele-Shaw セルは水平に設置されている. Hele-Shaw セル上方に設置したデジタルカメラにより,観 察された流れを撮影した.Fig. 5 に Hele-Shaw セルの概要 を示す.Hele-Shaw セルは 2 枚のガラス平板に挟まれた(ガ ラス平板間距離 1mm)狭い領域で,ここを水(水道水)が 流れる.下部ガラス平板の下には蛍光灯が設置されている. 撮影時にはこれを点灯させる. 水は上流部のタンクから供給される.タンク内の水面高 さは一定に保たれており,ここからオーバーフローした水 が Hele-Shaw セルに一定流量で流入する.Hele-Shaw セル を通過した水は,そのまま下流部のドレンに自由流出する. 上流部タンク,下流部ドレンは大気開放されている.Hele-Shaw セルの側面はゴムシートで塞がれ,側面からの水の漏 出を防いでいる. Hele-Shaw セルを通過する水の流量は約 1.2 L/min とした. Riegels8)によれば,Hele-Shaw セルでポテンシャル流れを 得るためにはh = 2i j⁄ ∙ (ℎ 2i⁄ ) が 1 より十分小さいこと が望ましい(i:代表長さ,ℎ:平板間距離).本実験ではこの 流量にて,h = 0.13である. 観察する物体は,厚さがガラス平間距離(1mm)に等し いゴムシートにより作成した.従って,観察する物体の上 下表面は,それぞれ上下のガラス板と密着している. Hele-Shaw セル流入部には櫛形ノズルを設置した.この 櫛形ノズルから,墨汁をスパン方向に 5mm 間隔で流入さ せた.この墨汁により,Hele-Shaw セル内の流脈を可視化 した.流れは定常なので,この流脈は流線とみなせる. 循環発生器は,樹脂製の透明フィルムにより作成した. この循環発生器は,下のガラス平板表面に観察物体と密着 させて固定した.循環発生器の厚さはガラス平板間距離よ り薄い.そのためこの部分の水流は,上部ガラス平板と循 環発生器上面の間の,さらに狭い領域を通過する.与える 循環の大きさは,循環発生器の幅 と厚さ+により変わる.+の値は,以下のようにして決定した.一般に,両者と も大きい方が与える循環は大きくなる.そこで, と+を変 更しつつ流脈を可視化する実験を繰り返した.実験毎に翼 後端部を詳細に観察し,ここでクッタ条件が満たされたと きの と+の値を循環発生器の大きさとして採用した. 実験条件を Table 2 に示す.観察物体は円柱,ジューコフ スキー翼,NACA 翼,勾玉形ブレードである.円柱の直径 は 70mm,円柱以外の翼形の翼弦長は 140mm である.それ ぞれに必要に応じて,循環発生器を取り付けている. NACA0018 翼と勾玉形ブレードは,迎角を 5 度刻みで変化 させた.各条件における循環発生器の大きさ及び設置位置 は,クッタ条件を満たすように調整されている. 3.2 圧力分布及び流体力の算出 Hele-Shaw セル内各位置の圧力は,その位置における流 線間隔から求めることができる.従って,物体に作用する 流体力は,物体表面近傍の流線間隔から算出できる.物体 が円柱と NACA0018 翼の場合の例を Fig. 6 に示す.図中, 各赤線の位置で流線間隔m/を計測した. 本実験では,Hele-Shaw セルに流入する流量から算出し た主流速度2及び主流の流線間隔/@ABから,物体表面近傍速 度4を以下の式により求めた. 4 =/@ABm/2 (18) さらに,ベルヌーイの式 ,J= 1 −24 (19)

Table 1 Radius of curvature >

Name of blade Leading edge >N/i Trailing edge > /i Upper surface >e/i Lower surface >f/i MT-1 0.179 0.018 0.714 0.536 MT-2 0.179 0.018 0.625 0.536 MT-3 0.179 0.018 0.714 0.446 実験力学 Vol. 19, No. 1(2019 年 3 月) 47

(5)

から,物体表面近傍の圧力分布を算出した.得られた圧力 係数分布より,揚力係数,0と抗力係数,-を以下の式より算 出した. ,0= n ,J/DI?Δc q ,,-= n ,J G/?Δc q (20)

4.結果及び考察

4.1 円柱まわりの流れ 観察 物体 とし て円 柱を 設置 した 場合 の可 視化 画像 を

Fig.7 (a), (b)に示す.それぞれ,循環無し(Case C),循環有

り(Case CG)の場合である.上流側(左側)から下流側(右 側)にかけて,円柱を取り巻くように流線が可視化されて いる.Fig. 7 (b) の円柱下面には,隣接して設置された循環 発生器が見える.両者を比較すると,循環がある場合(Case CG)は,よどみ点が下方向に移動している(よどみ点角度 は?C)ことがわかる. 可視化画像から求めた円柱まわりの圧力分布を,循環無 し(Case C),循環有り(Case CG)の場合にそれぞれ Fig. 8 (a), (b) に示す.図中の実線は,Eq. (10) により得られた (a) (b) (a) (b) Case Object 6 Circulation generator + Mounting location C

Cylinder N/A N/A CG N/A 30.0 0.2 lower ZG Joukowski 0.0 60.0 0.2 lower N NACA0018 0.0 N/A NG 8.0 40.0 0.3 lower MT1G MT-1 -20.0 40.0 0.4 upper -15.0 40.0 0.3 upper -10.0 10.0 0.3 upper -5.0 10.0 0.4 lower 0.0 30.0 0.4 lower 5.0 70.0 0.4 lower 10.0 100.0 0.4 lower 15.0 70.0 0.5 lower 20.0 90.0 0.5 lower MT2G MT-2 -20.0 40.0 0.4 upper -15.0 40.0 0.3 upper -10.0 10.0 0.3 upper -5.0 10.0 0.3 lower 0.0 40.0 0.4 lower 5.0 70.0 0.4 lower 10.0 100.0 0.4 lower 15.0 80.0 0.5 lower 20.0 110.0 0.5 lower MT3G MT-3 -20.0 40.0 0.4 upper -15.0 40.0 0.3 upper -10.0 10.0 0.3 upper -5.0 10.0 0.4 lower 0.0 30.0 0.4 lower 5.0 70.0 0.4 lower 10.0 100.0 0.4 lower 15.0 70.0 0.5 lower 20.0 90.0 0.5 lower

Fig. 4 Overview of Hele-Shaw cell

Glass plate Drain Dye Water channel Water tank + Water supply Flowmeter Rubber sheet Streamline interval m/ Streamline Cylinder y x NACA0018 airfoil

Fig. 5 Schematic of Hele-Shaw cell (a) side view, (b) top view

5 m m 3 3 0 m m 2 7 0 m m

Comb-shaped nozzle Observation object (thickness 1[mm]) Comb-shaped

nozzle

Camera

Fig. 6 Streamline interval around (a) a cylinder and (b) a NACA0018 airfoil

(6)

Angle ? 値である.なおここでの循環9は.可視化画像から読み取っ たよどみ点角度?Cを用い,Eq. (11) から求めた.循環の有無 にかかわらず,圧力係数は,2 か所のよどみ点付近で極大 に,円柱上下面の両側面では極小に分布している.実線の Eq. (10) と比較すると分布の傾向はおおむね一致するもの の,測定され圧力は上面側の側面? s +90°付近で Eq. (10) より低めに,逆の下面側の側面? s −90°付近では Eq. (10) より高めに偏って分布している.さらに,これら両側面付 近では計測された圧力にばらつきがみられる. 前者の偏りは,実験装置側で円柱上面側の流量と下面側 の流量が厳密には一致しないことにより生じる系統誤差と 考えられる.対して後者のばらつきは,可視化画像上で狭 い流線間に確保できる画素数が少ないこと,及び,流線間 に循環発生器が映り込むことで生じる偶然誤差と考えられ る.これらの不確かさは,円柱上下両側面付近で顕在する ので,主として揚力の不確かさとして現れる.本実験では, 上面側で低圧に,下面側で高圧にそれぞれ計測結果がシフ トしている.そのため算出された揚力値は,実際よりも正 の方向に一定値シフトする系統誤差を含んでいる.以後, 実験結果の特に揚力値については,この系統誤差を考慮す る必要がある.

Fig. 8(b) の循環有り(Case CG)の測定結果は,Fig. 8(a) の循環無し(Case C)の場合と比較して上下面で非対称と なっている.循環の影響により,円柱上面(0° u ? u 180°) が円柱下面(−180° u ? u 0°)よりも,上記の系統誤差を考 慮しても,低圧になっている.このことから,循環による 新たな揚力の発生が示唆される. 4.2 ジューコフスキー翼まわりの流れ Fig. 9 は,循環有り,迎角 0°のジューコフスキー翼まわ りの流れ(Case ZG)を示す.循環発生器の大きさは,クッ タ条件が成り立つように調整してある.この画像から得ら れた圧力分布を Fig. 10 に示す.ここで横軸は,翼前縁から 翼弦方向の距離を翼弦長で無次元化した ⁄ で示す.図にi 示す通り,翼上面が翼下面より低圧となる分布が得られた. 図中には,Eq. (16) を実線で示して両者を比較している. なお Eq. (16) を計算する際,速度4,循環9はそれぞれ Eq. (9),(11) から求めた.半径8は Eq.(13),よどみ点?Cは Eq. (17) より算出した. 圧力係数は前縁付近で急激に低下し,上面では翼弦位置 が 0.3,下面では 0.1 付近からそれぞれ後縁にかけて緩やか に回復する.実験結果には前項で述べた系統誤差を含むこ とに留意する必要があるが,この傾向は理論解である Eq. (16) によく一致していると言える. 4.3 NACA0018 翼まわりの流れ 前項までで,理論解との比較が可能な円柱まわり及びジ ューコフスキー翼まわり流れを検討し,Hele-Shaw セルに よりポテンシャル流れがよく再現され,流体力の検討に有 用であることが分かった.そこで次に,垂直軸風車のブレ ード断面形状として従来よく用いられている NACA0018 翼形まわりの流れを検討した. 迎角6=0,循環無し(Case N)と,迎角6=8,循環有り(Case NG,6=8)の可視化画像を Fig. 11(a), (b)に示す.これらの 画像から算出した NACA0018 翼まわりの圧力分布を Fig. 12(a), (b)に示す.Fig. 12 には,2次元パネル法による数値 計算により得られた結果も参考として示した.NACA0018 翼は対象翼なので,迎角が 0°の場合,上面と下面の圧力分 布はほぼ一致した.迎角が 8°の場合,循環により翼弦位置 が 0 から 0.6 までの上面の圧力分布は下面に比べて小さく なった.このことから,揚力が発生していることが分かる. これら実験により得られた圧力の分布は,パネル法により (a) (b)

Fig. 7 Visualized streamline around a cylinder (a) Case C, (b) Case CG (a) (b) Angle ? Pr es su re co ef fici en t ,J Pr es su re co ef fici en t ,J

Fig. 8 Pressure distribution around a cylinder (a) Case C, (b) Case CG.

?

C Theory (Eq. 10, 9 = 0) Present experiment -180 -135 -90 -45 0 45 90 135 180 1 0 -1 -2 -5 -4 -3 -6 Theory (Eq. 10) Present experiment -180 -135 -90 -45 0 45 90 135 180 1 0 -1 -2 -5 -4 -3 -6 実験力学 Vol. 19, No. 1(2019 年 3 月) 49

(7)

(a)

(b)

Fig.11 Visualized streamline a NACA0018 airfoil (a) Case N, 6=0, (b) Case NG, 6=8

(a)

(b)

Fig. 12 Pressure distribution around a NACA0018 airfoil (a) Case N, 6=0, (b) Case NG, 6=8 得られた圧力と同様の分布形状をしている. 実験により得られた圧力分布より,NACA0018 翼に加わ る揚力係数,0と抗力係数,-を Eq. (20)より算出した.結果 を Table 3 に示す.ポテンシャル流れなので,抗力係数,-は 両者ともほぼゼロに近い.一方,揚力係数,0は前述の系統 誤差のため,ゼロであるはずの Case N においても 0.12 と なっている.従って,+0.12 程度の系統誤差が生じている. 迎角 0°の Case N と比較して迎角 8°の Case NG の揚力値は 大きいことから,迎角増加に伴う揚力の増加が示された. 4.4 勾玉形ブレードまわりの流れ 最後に,本研究が対象としている勾玉形ブレードの流体 力を Hele-Shaw セルにより検討する.迎角が-5°におけるブ レードまわりの流れ(Case MT1G,6= -5)の可視化写真を Fig. 13(a)に示す.翼後端部にてクッタ条件が満たされるよ う,翼下面に隣接するように循環発生器が設置されている. 図より,翼先端部及び後端部のよどみ点が確認できる.翼 上面の流線間隔は翼下面の流線間隔と比較して狭いことが (a) (b) (c)

Fig. 13 Visualizaed streamline around a Magatama-type blade (a) MT1G(6=-5), (b) MT2G(6=-5), (c) MT3G(6=-5)

Case 6 ,0 , -N 0.0 0.12 -0.02 NG 8.0 0.48 0.05

Position ⁄i

Fig. 10 Visualized streamline around a Joukowski airfoil (Case ZG, 6=0) Pr es su re co ef fici en t ,J

Fig. 9 Visualized streamline around a Joukowski airfoil (Case ZG, 6=0)

Theory (Eq.16) Upper surface Lower surface Present experiment Upper surface Lower surface

0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 0 0.1 2 0 -1 1 -2

Table 3 Lift coefficient ,0 and drag coefficient ,- of NACA0018 airfoil Pr es su re co ef fici en t ,J Position ⁄ i 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 0 0.1 2 0 -1 1 -2 -3 -4 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 0 0.1 1.5 0.5 1 0 -0.5 -1 Position ⁄ i Pr es su re co ef fici en t ,J

Panel method Upper Lower

(8)

Panel method MT1G MT2G MT3G Present experiment MT1G MT2G MT3G

Fig. 14 Pressure distribution around Magatama blade MT1G(6= -5), MT2G(6= -5), and MT3G(6= -5)

Fig. 15 Relationship between angle of attack α and lift coefficient ,0 of MT1G, MT2G, and MT3G 分かる.続いて,翼上下面の曲率を変更した Case MT2G(6 = -5)と Case MT3G(6= -5)の写真を Fig. 13(b),(c)に示す.曲 率変更による翼厚の変化に伴い,流線間隔が変化している ことが分かる.翼上面の流線間隔に着目すると,MT-2 と MT-3 は,MT-1 と比較して狭くなっていることから,曲率 変化により翼上面の圧力が低下していることが分かる. 流線間隔より算出した翼表面の圧力分布を Fig. 14 に示 す.MT-2 と MT-3 の翼上下面の圧力差は,MT-1 と比較し て,特に最大翼厚部から下流の領域にて大きくなっている. これは先に述べた,翼上面の流線間隔が狭くなることによ る圧力低下と整合する.この部分の圧力低下は揚力の増加 に貢献する.以上より,翼上下面の曲率変更が,揚力値を 変化させていることが分かる. 圧力分布の算出は,迎角6を−20° u 6 u 20°の範囲で変 化させて繰り返し行った.得られた圧力から算出した揚力 係数,0を,迎角6ごとに Fig. 15 に示す.検討した迎角の範 囲内では,迎角の増加に対して揚力は増加している.この 傾向は 3 つの勾玉形ブレードに共通してみられる.Fig. 15 には,2 次元パネル法による数値計算によって得られた結 果も参考として示す.これにも,揚力係数が迎角増加に伴 い単調増加する傾向が見られる.MT-2 及び MT-3 の揚力は, ほぼすべての迎角で MT-1 と比較して大きい.また MT-2 と MT-3 の揚力を比較すると,全体的に MT-2 の揚力が上回っ ていることが分かる.この傾向は,パネル法で得られた結 果にも同様に確認できる.以上よりポテンシャル流れ中に おいて,勾玉形ブレードが発生する揚力は,翼上下面の曲 率半径により制御できることが分かった.

5.結 論

垂直軸風車に用いる勾玉形ブレードが発生する空気力に ついて,Hele-Shaw セルにより実験的に検討した.まず,作 成した Hele-Shaw セルによる実験結果の妥当性を検証する ため,円柱およびジューコフスキー翼まわりの圧力分布を 求めた.これをポテンシャル理論により求まる圧力分布と 比較したところ,良い一致が見られた.従って,本実験に より得られる結果は妥当であると判断した.次に,垂直軸 風 車 用 ブ レ ー ド と し て 従 来 か ら よ く 用 い ら れ て い る NACA0018 翼まわりの圧力分布を求めた.これより算出し た揚力係数は,迎角とともに増加する傾向を確認できた. 以上を踏まえ,本研究で提案する勾玉形ブレードに対し て,Hele-Shaw セルによる実験を実行した.その結果得られ た圧力分布から,勾玉形ブレードが発生する揚力を求める ことが出来た.また,迎角に対する揚力の関係も明らかに することができた.さらに,勾玉形ブレードの形状を変更 して実験を実施したところ,翼上面および下面の曲率変更 により揚力を変化できることを確認した. 以上より,Hele-Shaw セルを用いる実験により風車ブレ ードの性能検討が可能であることを示した.今後,遺伝的 アルゴリズムを用いる勾玉形風車ブレードの形状最適化を 実施する.その際,評価指標となる流体力の実験による算 出には,本手法を適用する.

参 考 文 献

1) NEDO: Furyoku hatsuden donyu guide book (in Japanese) (2008) : http://www.nedo.go.jp/content/100079735.pdf

2) JIS C1400 Wind turbine generator systems (in Japanese), Japanese Industrial Standards Committee

3) Kudo, T. and Yoshioka, S.: Improvement of output performance of hybrid VAWT using Magatama blade (in Japanese), Proc. JSME Fluid Engneering Division Conference (2016), 0622.

4) Watanabe, R. and Yoshioka, S.: The VAWT with variable blades setting angle by a linkage mechanism (in Japanese), Proc. JSME Fluid Engneering Division Conference (2016), 0623.

5) Sakato, K. and Yoshioka, S.: Performance investigation of the hybrid VAWT by field experiment (in Japanese), Proc. JSME Fluid Engneering Division Conference (2016), 0624.

6) Hele-Shaw, H. S.: The flow of water, Nature 58 (1898), 34-36.

7) Suzuki, K.: Apparatus of Hele Shaw Flow with and without Circulation (in Japanese), Journal of the Kansai Society of Naval Architects 217 (1992), 31-43.

8) Riegels, F.: Zur Kritik des Hele-Shaw-Versuchs, Zeitschrift für Angewandte Mathematik und Mechanik, Band 18, Heft 2 (1938), 95-106. Position ⁄ i Upper surface MT1G MT2G MT3G Lower surface MT1G MT2G MT3G -4 2 0 -2 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 Pr es su re co ef fici en t ,J 10 20 -20 -10 0 5 4 3 2 1 0 -1 -2 L if t co ef fici en t ,0 Angle of attack 6 実験力学 Vol. 19, No. 1(2019 年 3 月) 51

Fig. 1 Schematic of experimental setup Hele-Shaw cell Observation object
Fig. 3 Profiles of Magatama-type blades (a) MT-1,(b) MT-2,  (c) MT-3  3.実験方法  3.1  実験装置および実験手順  実験装置の Hele-Shaw  セルは(株)東京メータ製流線可視 化実験装置  SVA-70623 をベースに製作した.Fig
Fig.  6  Streamline  interval  around  (a)  a  cylinder  and  (b)  a  NACA0018 airfoil
Fig. 8 Pressure distribution around a cylinder (a) Case C, (b)  Case CG. ?C Theory (Eq
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参照

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