• 検索結果がありません。

TPN の処方設計支援や無菌調製などを担ってきた さらに T P N の選択に関する標準指針や中心静脈カテーテル管理の標準化と感染防止など薬剤師の関わりは大きくなっており 静脈 経腸栄養療法の適正使用に多くの施設の薬剤師が貢献している 今回の栄図 1 NST 稼動前後の推移 年度全国主要

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "TPN の処方設計支援や無菌調製などを担ってきた さらに T P N の選択に関する標準指針や中心静脈カテーテル管理の標準化と感染防止など薬剤師の関わりは大きくなっており 静脈 経腸栄養療法の適正使用に多くの施設の薬剤師が貢献している 今回の栄図 1 NST 稼動前後の推移 年度全国主要"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに

 医療に求められるものが、モノからケアへ、そしてケア からシステムへと変わっていく中、薬剤師業務も『数える、 注ぐ』の調剤、医薬品を中心とした業務から、薬剤管理指 導業務などの臨床業務主体、患者中心の業務へと急速に 変革してきた。一方で、現在、病院医療は診療科閉鎖、救 急返上、病床削減など、その崩壊スピードと範囲はますま す増大しており、このような激動の時期こそ、私たち薬剤 師が、いかにして効率的で高品質な医療サービスを提供 すべきかを念頭に置き、ファーマシューティカルケア、医療 安全、そしてチーム医療に積極的に取組む必要がある。  2010 年の診療報酬改定では、医療安全関連やチーム 医療など多くの項目で薬剤師が関わるべき業務が示され たが、その中でも栄養サポートチーム加算の要件では、 チームの中に栄養管理に係る専門的な知識・技能を有す る専任の薬剤師が明記された。Nutrition Support Team(NST)活動の継続においては、社会のニーズに応 え得る質の保証が必須であり、薬剤師も責任を持って役 割を発揮しなければならない。  今回、本誌に「薬剤師の NST 活動における変革」と いうテーマで執筆する機会を得て、薬剤師としていかに栄 養療法を実践していくべきか考えてみたい。

NSTによる栄養管理とアウトカム

 栄養療法は、全ての治療法の根幹をなす最も基本的な 患者ケアの一つであると認識され、NSTの必要性は急速 に高まっている。NSTは、個々の患者に応じた最適な栄 養療法を提供するため、医師のみならず看護師、薬剤師、 管理栄養士、臨床検査技師らがそれぞれの専門的な知 識・技能を活かしながら、多角的な視野から栄養サポー トを実践するチームであり、静脈栄養管理のみならず、よ り生理的で安全かつ経済的である経腸栄養から経口の 栄養をも含めた栄養療法全体を支援している。  2001 年当初、NST 稼働施設は全国で 12 施設と少な

特集:栄養サポートチーム加算新設で求められるNST活動の変革

薬剤師のNST活動における変革 

-NST薬剤師の目指すところは-*

keywords:

栄養サポートチーム加算、ファーマシューティカルケア、薬剤管理指導業務

室井延之1) Nobuyuki MUROI 横山 正2) Tadashi YOKOYAMA ◆赤穂市民病院 薬剤部 NST1) 外科 NST Chairman2)  Departments of Pharmacy1) and Surgery2),Ako City Hospital

 2010 年の診療報酬改定で、チーム医療、医療安全関連など多くの項目で薬剤師が 関わるべき業務が示され、栄養サポートチーム加算の要件では、チームの中に栄養管 理に係る専門的な知識・技能を有する専任の薬剤師が明記された。栄養療法を実践 していく中、薬剤師が関わるべき業務は、1)静脈・経腸栄養療法における処方支援、2) 栄養療法における適正使用、3)薬剤管理指導業務と栄養管理の連携、であると考え る。最良のアウトカムを示すために、私たち薬剤師は輸液・栄養剤に関する基礎知識 ならびに病態把握の技能を習得し、問題解決のためのファーマシューティカルケアに 取り組むことによって、栄養療法の一層の質の向上を目指していかなければならない。

(2)

く、個々の医療機関が手探りのなかで NST のあるべき 方向性を模索している状況であったが、日本静脈経腸栄 養学会(JSPEN)の NST 委員会、NST プロジェクトの NST 設立支援により、2010 年には、約 1,600 の施設で NST による栄養療法が展開されている。そして JSPEN では NST の質を確保するために、2004 年より『NST 稼動施設認定』制度を立ち上げた。2009 年には 1,429 の認定施設があり、これら施設の栄養療法の成果が蓄 積され、エビデンスとして臨床に応用されつつある。  栄養療法を実施する際には、低栄養状態患者の抽出 (スクリーニング)、栄養アセスメント、栄養療法プランの 作成・実施、経過のモニタリング、プランの評価及びプラ ンの再作成等の一連のステップにより、最良のアウトカム を得なければならない。  JSPEN・NST プロジェクトによるNST 稼働施設(急 性期 46 施設、慢性期 18 施設)を対象としたアウトカム 調査では(図1)1)、静脈・経腸栄養療法は、急性期、慢 性期病床ともに、NST 導入により高カロリー 輸液(TPN)施行症例数の減少と経腸栄養症 例数の増加が確認された。また、感染予防の 立場から見た NST の効果を抗菌薬購入量、 抗 MRSA 薬購入量で検証した結果、急性期、 慢性期病床ともに、大幅に削減されていた。 NST 活動の実践とともに、病院機能への NST のアウトカムを評価していくシステムが重 要であり、1 施設の取り組みではなく、各施設 のデータを共有することにより、大きな成果を 示すことができる。  栄養領域において、薬剤師は早い時期から TPN の処方設計支援や無菌 調製などを担ってきた。さら に、TPN の選択に関する標 準指針や中心静脈カテーテル 管理の標準化と感染防止など 薬剤師の関わりは大きくなって おり、静脈・経腸栄養療法の 適正使用に多くの施設の薬剤 師が貢献している。今回の栄 養サポートチーム加算新設に おいて、医師、看護師、管理 栄養士とともに NST の一員として要件に明記され、 NST における薬剤師の専門性が要求される中で、最良 のアウトカムを示していかなければならない。   

最良のアウトカムを示すために薬剤師は

“何をすべきか!” 

 JSPEN の NST 委員会と薬剤師部会は、2008 年に開 催された NST フォーラム(京都)でのディスカッションを 経て、「NST における薬剤師の活動指針」を策定した2) チーム医療では、各職種がオーバーラップしながら垣根 を越えた業務を行うことが重要であるが、それぞれの役 割を明確にすることで、目標が定まり、質の向上にもつな がる。NST における薬剤師の役割は、患者の病態を考慮 し、エビデンスに基づいた静脈・経腸栄養療法の適正化 の推進である(図 2)。活動指針は、①静脈・経腸栄養療 法における処方支援、②栄養療法における適正使用、③ 図1 NST稼動前後の推移-2005年度全国主要64施設集計:100床あたり- 文献1)より 図2 薬剤師によるファーマシューティカルケア

(3)

表1 JSPEN・NSTフォーラム2008    「NST活動における薬剤師の役割の標準化」    NSTにおける薬剤師の活動指針 日本静脈経腸栄養学会 NST 委員会、薬剤師部会 1.静脈・経腸栄養療法における処方支援  ①処方設計支援  ②病態に応じた栄養製剤の選択  ③無菌調製の実施および指導 2.栄養療法における適正使用  ①栄養療法に用いる機材の適正使用  ②カテーテル関連血流感染対策  ③経腸栄養剤の衛生管理とその指導  ④薬剤の経管投与に関するリスクの回避  ⑤経腸栄養・健康食品と薬剤との相互作用の回避  ⑥誤投与および副作用の防止と対策 3.薬剤管理指導業務と栄養管理の連携  ①薬剤および静脈・経腸栄養剤に関する患者・家族   への文書等を用いた情報提供  ②退院時および在宅での栄養管理法に関する患者・   家族指導と支援 薬剤管理指導業務と栄養管理の連携、という 3 つの柱で構成されている(表1)。  一つ目の柱は「静脈・経腸栄養療法における 処方支援」である。経静脈栄養法、経腸栄養 法に関する基本的知識、特に、電解質輸液、ア ミノ酸輸液などの各種輸液ならびに経腸栄養 剤の製剤的特性を十分に理解した上で、患者 の病態を考慮して、薬学的視点から栄養投与経 路の選択や病態に応じた処方設計支援等の栄 養療法プランニングに関与する必要がある。  二つ目の柱は「栄養療法における適正使用」 である。薬剤師は、薬剤や栄養剤だけではなく、 栄養療法に用いるカテーテルや輸液ラインなどの医療材 料の適正使用にまで関わっていくべきであり、カテーテル 関連血流感染の防止、経腸栄養関連器具の衛生管理や その指導など安全管理の観点から広く業務を行うことが 求められている。  三つ目の柱は「薬剤管理指導業務と栄養管理の連携」 である。薬剤師の使命はファーマシューティカルケアの実 践であり、NST での薬剤師の役割は、薬剤管理指導業 務を切りはなすことはできず、薬剤管理指導業務の中で、 患者に栄養療法について説明するとともに、継続的にモ ニタリングを行い、栄養学的な問題や改善すべき点を見 つけ出すことが大切である(図 3)。NST によるアセスメ ントからケア・プランの作成・実施、モニタリングの一連 のステップは、臨床実践の本質であり、薬剤師による ファーマシューティカルケアの実践、すなわち、服薬指導 や副作用回避等すべての薬剤業務に通じるものである。  栄養サポートチーム加算に関する厚生労働省保険局医 療課事務連絡疑義解釈において、「栄養サポートチーム が、栄養治療により改善が見込めると判断した患者」の 例示として、表 2のような患者が挙げられている。①脱水 状態にある入院直後の患者、②抗がん剤による治療を開 始する患者、③脳卒中を発症して救急搬送された直後の 患者、④集中的な運動器リハビリテーションを要する状態 にある患者など、これらの栄養障害をきたす可能性が高 い患者は、栄養療法のみならず抗がん剤治療などハイリ スク薬を使用する場合も多く、薬剤師は患者の病態を把 握し、薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間等について の処方提案ならびに副作用モニタリングそして服薬指導 を実施し、主体的に薬物療法に参加しなければならない。

栄養療法のエビデンスの構築

 個々の患者に対する栄養療法のアプローチだけでな く、集団を対象とした医療薬学研究を行うことも薬剤師 の重要な役割である。調剤、薬剤管理指導業務、チーム 医療など、あらゆる日常業務の中に、多くの解決すべき研 究テーマが隠れている。私たち薬剤師が常に患者の傍に いて、何が問題かを考える。そして、薬の有効性、安全性 そして患者の QOL に関する問題点を見つけ、それを解 図3 薬剤管理指導業務を介した栄養管理

(4)

決するための医療薬学研究を実践していくことがエビデ ンスの構築につながると考える。当院においても、NST 研究として『中心静脈カテーテル刺入部におけるポビドン ヨード軟膏の感染予防効果の前向き無作為比較試験』、 『経腸栄養剤固形化投与に適切な各種ゲル化剤の検討』、 『胃がん・大腸がん術後患者におけるTPN 肝障害の発 生状況に関する検討』などを実施してきた。   胃がん、大腸がんの術後患者に対するTPN の実施が、 その後の肝障害の発生に関わっているかどうかを明らか にするために行った、消化器がん術後患者におけるTPN 肝障害の発生状況に関するレトロスペクティブ研究では3) 胃がん患者 36 名、大腸がん患者 48 名での調査の結果、 胃がん術後では TPN 施行による影響は認められなかっ たが、大腸がん術後においては、肝障害の発生頻度は TPN 群で 75.0%、非 TPN 群で 38.9%と、非 TPN 群 に比べ TPN 群で肝障害の発生が有意に増加した(p =0.03)(図 4)。次に、その要因について検討を行ったと ころ、投与カロリーは TPN 群が 26.2±5.5kcal/kg/日 に対して、非 TPN 群では 13.7± 4.0kcal/kg/ 日と、 TPN 群の方が約 2 倍と有意に高かった(p<0.001)。当 院での調査では、投与カロリーの過剰が肝障害の発生に 関与しており、短期間の TPN 施行においても肝障害が 増加し得ることが示されたことから、各症例にとって栄養 過剰となり得る周術期の TPN が有益であるかを慎重に 検討し、適正な TPN 実施についてさらに啓蒙する必要 があると考える。  薬剤師は研究を企画し実行する力を持っており、チー ム医療においてファーマシューティカルケアに活かせる医 療薬学研究の積極的な実践が望まれる。

NST 質の向上のために

 2010 年度の診療報酬改定において、栄養サポートチー ム加算が新設された。「栄養サポートチーム加算」は、 急性期の入院医療を行う一般病棟において、栄養障害を 生じている患者または栄養障害を生じるリス クの高い患者に対し、患者の生活の質の向上、 原疾患の治癒促進および感染症等の合併症 予防等を目的として、栄養管理に係る専門的 知識を有した多職種からなるチームが診療す ることを評価したものである。栄養管理に係 る所定の研修を修了した専任の医師、看護 師、薬剤師、管理栄養士により構成されるチー ム(1 人は専従)が設置されていることが施 設基準となっており、薬剤師の場合、所定の 研修とは栄養管理のための専門的な知識・技 能を有する薬剤師の養成を目的とするもので、 認定する教育施設において実施され、40 時 間以上を要し、当該団体より修了証が交付さ れる研修であることとされている。栄養サポー 表2 栄養サポートチームが、栄養治療により改善が    見込めると判断した患者 厚生労働省保険局医療課 事務連絡疑義解釈(平成22年3月29日付) (例1)脱水状態にある入院直後の患者で、血清アルブミ ン値は高値を示しているものの、他の指標や背景 から明らかに栄養障害があると判断できる者 (例2)これから抗がん剤による治療を開始する患者で、 副作用等により当該治療によって栄養障害をきた す可能性が高いと予想される者 (例3)脳卒中を発症して救急搬送された直後の患者で、 栄養状態はまだ低下していないが、嚥下障害を認 めており、経口摂取が困難となる可能性が高いと 予想される者 ( 例4)集中的な運動器リハビリテーションを要する状 態にある患者で、入院中に著しい食欲低下を認め ており、栄養治療を実施しなければリハビリテー ションの効果が十分に得られない可能性が高い と判断できる者 図4 胃がんおよび大腸がん術後患者における肝障害の発生率

(5)

トチーム加算の施設基準のハードルは、かなり高く厳し いものであるが、患者の視点に立てば正当な内容と考え る。  『専門性』はチーム医療において重要なキーワードで あるが、チーム活動を行えば『専門性』が自然に身につ くものではなく、スキルアップとともにモチベーションを保 つ努力が不可欠である。求められているのはスーパー NST であり、私たち薬剤師が輸液・栄養剤に関する基 礎知識ならびに病態把握の技能を習得し、問題解決の ためのファーマシューティカルケアに取り組むことによっ て、栄養療法の一層の質の向上を目指していかなければ ならない。 参考文献 1) 東口髙志.NST活動のための栄養療法データブック.中山書店、東京、2008. 2) 山中英治、東口髙志.JSPEN・NSTフォーラム2008.NSTにおける各職種の役割.静脈経腸栄養23:735-742、2008. 3) 千﨑昭輝、室井延之、横山正ほか.Total Parenteral Nutrition(TPN)は消化器がん術後の肝障害発症のリスクとなる

か-胃がん・大腸がん術後患者におけるTPN肝障害の発生状況に関する検討-.日本病院薬剤師会雑誌44:No6、931-934、2008.

参照

関連したドキュメント

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

 スルファミン剤や種々の抗生物質の治療界へ の出現は化学療法の分野に著しい発達を促して

現実感のもてる問題場面からスタートし,問題 場面を自らの考えや表現を用いて表し,教師の

医師と薬剤師で進めるプロトコールに基づく薬物治療管理( PBPM

ASTM E2500-07 ISPE は、2005 年初頭、FDA から奨励され、設備や施設が意図された使用に適しているこ

つまり、p 型の語が p 型の語を修飾するという関係になっている。しかし、p 型の語同士の Merge

キャンパスの軸線とな るよう設計した。時計台 は永きにわたり図書館 として使 用され、学 生 の勉学の場となってい たが、9 7 年の新 大

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば