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YAKUGAKU ZASSHI 134(10) (2014) 2014 The Pharmaceutical Society of Japan 1069 がん分子標的薬副作用の自己組織化マップ (SOM) を用いたビジュアル化と解析 r 本知之,,a 芹澤彩香, a 大槻佳織,

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The authors declare no con‰ict of interest. a昭和薬科大学医療薬学教育研究センター,b東北薬科 大学医薬情報科学教室 e-mail: hamamoto@ac.shoyaku.ac.jp ―Regular Article―

がん分子標的薬副作用の自己組織化マップ(SOM)を用いたビジュアル化と解析

r本知之,,a 芹澤彩香,a 大槻佳織,b 川上準子,b 佐藤憲一b

Visualization and Analysis of Adverse Reactions of Molecularly Targeted Anticancer Agents

Using the Self-organizing Map (SOM)

Tomoyuki Hamamoto,,aAyaka Serizawa,aKaori Ohtsuki,b Junko Kawakami,b and Kenichi Satob aEducational and Research Center for Clinical Pharmacy, Showa Pharmaceutical University; 33165 Higashi-tamagawagakuen, Machida, Tokyo 1948543, Japan: andbDepartment of Medical and Pharmaceutical Information Science, Tohoku Pharmaceutical University; 441 Komatsushima, Aoba-ku,

Sendai 9818558, Japan.

(Received April 6, 2014; Accepted July 8, 2014)

Molecularly targeted anticancer agents cause a variety of adverse reactions compared with conventional anticancer agents because of their unique mechanisms of action. Sources of drug information such as package inserts(PIs) provide primarily document-based and numerical information. Therefore it is not easy to obtain a complete picture of drugs with similar eŠects, or to understand diŠerences among drugs. In this study we used the self-organizing map (SOM) technique to visualize the adverse reactions indicated on PIs of 23 molecularly targeted anticancer agents as of March 2013. In both the presence/absence version and the frequency version, SOM was divided into domains according to mechanism of action, antibody drug or low-molecular weight drug, and molecular target. The component planes of the 753 adverse reaction items in the frequency version enabled us to grasp all available information and diŠerences among the drugs. In some component planes in the presence/absence version, an adverse reaction that had not been reported for a drug but had already been reported for its proximally positioned drug(s) as of March 2013, was found to be report-ed thereafter by the Drug Safety Update(DSU) or the Adverse Event Report Search System ``CzeekV,'' which is based on FDA Adverse Event Reporting System(FAERS). Our results suggest that visualization of the adverse reactions of molecularly targeted anticancer agents by the SOM technique is useful not only to acquire all available information and diŠerences among drugs, but also to predict the appearance of adverse reactions.

Key words―molecularly targeted anticancer agent; adverse reaction; self-organizing map; visualization

緒 言 近年,がんの増殖,浸潤,転移などの特異的な細 胞特性に係わる分子機構が明らかになり,それらを 標的とした分子標的薬が登場し,単剤あるいは従来 型の抗がん薬との併用により大きな臨床効果を上げ ている.1,2)分子標的薬は,がん細胞に特異的に発現 する,あるいは正常細胞に比較してがん細胞で相対 的に多く発現する標的分子に対して特異的に作用す ることから,従来型の抗がん薬に比べて副作用の軽 減が期待される.2)一方で,従来型の抗がん薬とは 作用機序が異なるため,副作用の発現も異なり各薬 剤に特徴的で多岐に渡る.また,最近では海外とほ ぼ同時に使用され始める薬剤も増えてきているた め,副作用情報が十分に把握でき難い場合がある. そのため,以前にも増して薬剤に関する幅広い知識 が必要であり,投与時には添付文書などの医薬品情 報源を十分に活用しての確認や医療チーム内での情 報共有が重要である.2) しかし,医薬品情報源である医療用医薬品添付文 書,インタビューフォームや現在の医薬品情報デー タベースは,文字・数字の情報が中心である.その ため,例えば多くの同効薬の医薬品情報に関する全 体像や,医薬品間での違いを把握することは容易で はない.そこで,医薬品情報をビジュアル化すれば 短時間に多くの情報が得られるようになり,多忙な

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Table 1. Molecularly Targeted Anticancer Agents Used in This Study (23 agents, as of March 2013)

Classiˆcation General name Brand name version (edition)Package insert's

Low-molecular

weight drug

Tyrosine kinase inhibitor (TKI)

Geˆtinib IRESSA tablets Dec 2011 (23rd)

Imatinib Mesilate GLIVEC tablets Oct 2012 (10th) Erlotinib Hydrochloride TARCEVA tablets Mar 2013 (9th) Dasatinib Hydrate SPRYCEL tablets Sep 2012 (6th) Nilotinib Hydrochloride Hydrate TASIGNA capsules Dec 2012 (8th) Lapatinib Tosilate Hydrate TYKERB tablets Apr 2012 (4th)

Crizotinib XALKORI capsules Sep 2012 (2nd)

Sorafenib Tosilate NEXAVAR tablets Mar 2013 (12th) Sunitinib Malate SUTENT capsules Jan 2013 (8th) Pazopanib Hydrochloride VOTRIENT tablets Dec 2012 (2nd)

Axitinib INLYTA tablets Jun 2012 (1st)

Proteasome inhibitor Bortezomib VELCADE injection Dec 2012 (7th) Mammalian target of

rapamy-cin (mTOR) inhibitor

Everolimus AFINITOR tablets Feb 2013 (7th)

Temsirolimus TORISEL injection Jul 2012 (2nd)

DiŠerentiating agent Tamibarotene AMNOLAKE tablets Oct 2009 (3rd)

Epigenetic agent Azacitidine VIDAZA injection Apr 2012 (2nd)

Vorinostat ZOLINZA capsules Mar 2012 (3rd)

Antibody drug

Chimeric antibody Rituximab RITUXAN injection Apr 2012 (14th)

Cetuximab ERBITUX injection Dec 2012 (5th)

Humanized antibody

Trastuzumab HERCEPTIN intravenous infusion Jun 2012 (22nd) Bevacizumab AVASTIN intravenous infusion Jun 2012 (12th) Mogamulizumab POTELIGEO injection Dec 2012 (2nd) Human antibody Panitumumab VECTIBIX intravenous infusion Mar 2013 (10th)

現場で働く医療従事者の負担を軽くできるととも に,ある程度総合的な把握や比較が容易になること

が期待される.38)

副作用情報をビジュアル化する方法として,デー タマインニング手法の 1 つで,有力なパターン認識 手法である Kohonen の自己組織化マップ(self

or-ganizing maps; SOM)9,10)を用いた方法が抗菌薬,35)

降圧薬,3,57)糖尿病治療薬3,8)で報告されている.こ の方法を用いると,同効医薬品全体での副作用情報 のデータ構造を反映した,分かり易いビジュアルな 2 次元マップが作成できる.副作用情報を SOM に よってビジュアル化することで,副作用の発現傾向 の把握や副作用回避に活用でき,新たな副作用発現 の予測や代替薬の検討も可能になり医療安全の向上 につながることが期待されている.3) そこで今回,がん分子標的薬の副作用にこの方法 を応用し,解析を行った. 方 法 1. 入力データ 2013 年 3 月までに日本で販 売されている,がん分子標的薬 23 剤を対象とした (Table 1).副作用情報は独立行政法人医薬品医療 機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームペー ジからダウンロードした各薬剤の添付文書から収集 した.使用した添付文書の版数と改訂年月を Table 1 に示す.添付文書における副作用情報の記載は, ◯ 重大な副作用,◯類薬での副作用,◯その他の副 作用,に分けて記載されているが,SOM 作成にあ たり,◯を除く◯と◯に記載されているすべての副 作用を収集した.医療現場での副作用対応において

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Fig. 1. Scores and Colors to DiŠerentiate Frequencies of Ad-verse Reactions of Molecularly Targeted Anticancer Agents

Fig. 2. Example of Data Input File for Preparation of SOM of 23 Molecularly Targeted Anticancer Agents

A total of 753 adverse reaction items had been reported as of March 2013. As the above ˆle was used to prepare the frequency version, each item was scored according to the scores indicated in Fig. 1. In the ˆle for the preparation of the presence/absence version, each adverse reaction item was assigned the score of 1 if it had been reported, or 0 if it had not been report-ed. は,まず◯に注意が払われるが,◯であっても患者 の状態や生活状況によっては◯と同等に注意すべき 副作用もあり,また,SOM のようなデータマイニ ング手法を用いて解析する場合は,一般に,◯でも ◯ でも発現しているあらゆる副作用を漏れなく考慮 することが重要となる.3)なお,海外でのデータ, 他剤併用時のデータは除いた.ただし,海外のデー タしか記載されていない薬剤は,そのデータを使用 した.トラスツズマブに関しては,添付文書の◯そ の他の副作用が,1)HER2 過剰発現が確認された 転移性乳がん,2)HER2 過剰発現が確認された乳 がんにおける術後補助化学療法,3)HER2 過剰発 現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃が ん,と分けて記載されているため,それぞれを別薬 剤として扱い,トラスツズマブ a,トラスツズマブ b,トラスツズマブ c とした. 添付文書に記載されている副作用項目は ICH 国 際医薬用語集日本語版(MedDRA/J)11)により同義 語を可能な限り整理した結果,753 項目となった. 医薬品名には系統毎に,1:チロシンキナーゼ阻害 薬(tyrosine kinase inhibitor; TKI),2:プロテア ソーム阻害薬,3:哺乳類ラパマイシン標的タンパ ク質(mammalian target of rapamycin; mTOR)阻 害薬,4:分化誘導薬,5:エピジェネティック薬, 6:キメラ抗体,7:ヒト化抗体,8:ヒト抗体,と 異なる数字をラベルした.添付文書に記載されてい る副作用発現有無情報に基づいて,副作用項目リス トと医薬品リストからなる 2 次元表に,副作用があ るものを「1」,ないものを「0」として入力するこ とで SOM(有無版)を作成するための入力データ とした.また副作用発現頻度については,添付文書 に記載された発現頻度を Fig. 1 のようにスコアを 割り当てた.このスコアとそれに対応する色は,マ ップから頻度が一目で推測できるように副作用頻度 の範囲を選択して決めた.これらのスコアは,これ まで SOM 解析された他の薬剤における研究38) の頻度とスコアの関係をほぼ同じスケール(比例す る)でより頻度の高い(スコアの大きい)範囲まで 拡張したもので,合理性があるものである.上述の 2次元表にこれらのスコアを入力することで SOM (頻度版)を作成するための入力データとした. Figure 2に入力データの例を示す. 2. SOM の作成 SOM は大脳皮質の感覚野に みられる機能地図が,知覚経験に基づく学習により 形成されていく仕組みの本質的な部分を取り出した 脳神経回路の数理モデルであり,その情報処理のア ルゴリズム(競合学習)は 1982 年に Kohonen が提 唱した.このモデルにより,高次元のデータセット を視覚化した 2 次元地図を作成することが可能とな り,これが SOM と呼ばれる.統計解析的には,線

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形手法である主成分分析を非線形の場合へ拡張した

方法とみなせることが知られている.3,6,8)

SOM 作成のツールとして,オープンソースとし

て Web 上で入手可能な Kohonen の SOM_PAK12)

をマップの表示面で佐藤らがマップのカラー化や薬 剤名表示を見易くするなどの拡張を行ったもの4,8) を使用した.SOM 作成の計算条件は,入力層のニ ューロン数は副作用の総項目数(753 個),出力層 にはマップの解像度を考慮して対象の薬剤数(23 剤)より十分に多いニューロンを 2 次元的に並べ た.競合学習が進むにつれて,学習初期のランダム な配置から副作用発現のパターンが類似している薬 剤同士ほど近接するよう,全体のバランスが最適化 された状態,つまり,データ構造を反映したものに 変化していく.例えば,全く同じ副作用発現パター ンを示す薬剤は同じ場所に重なって配置されるし, かなり異なる副作用発現パターンを示す薬剤同士は 遠く離れて配置されることになる.3,610) 計算の条件として,要素平面から個々の薬剤での 副作用発現の有無が読み取れる必要があるため,出 力層は 2 つ以上の薬剤が重ならない解像度が必要と される.3)そのため今回,出力層に横 40×縦 30 の合 計 1200 個のニューロンを用意し,標準的な条件下 で最適とみなせる SOM を作成した.競合学習の回 数は,4 万回であった. 3. 球面 SOM 2 次元 SOM マップは実用面で は使い易いが,マップの四隅に配置された薬剤の相 互関係が分からない,四辺があることで写像の形成 に歪みがあるという問題点がある.そこで,2 次元 SOMと同じアルゴリズムで作成されつつ,これら の問題点を克服した球面 SOM も作成した.2 次元 SOMと球面 SOM の両方を比較することで,四隅 の薬剤の関係性を知ることができる.13)球面 SOM 作 成 の ツ ー ル と し て は , ク ラ ス タ blossom [ 有 SOMジャパン]を使用した. 4. 類似性の確認 がん分子標的薬の副作用は 753 項 目 と 膨 大 な 入 力 デ ー タ が 存 在 し て い る . SOM(有無版)を作成するための入力データにお いて,その膨大な入力データの特徴が SOM にどの くらい反映しているか評価するために,薬剤同士の 類似度や相関係数を計算した. 類似度としては,主に SOM(有無版)(0, 1 のデ ジタルデータ)での評価を目的とすることから,似 ていない目安を与える 2 剤のマンハッタン距離(ハ ミング距離)を規格化した X を用いて,Eq. (1) (類似度の計算式)によって求めた.したがって, 比較する 2 剤の共通項目が多いほど,類似度は 1 に 近い値を示す. 類似度=1-X X= 副作用項目数

i=1

|

(薬剤 A)i-(薬剤 B)i

|

副作用項目数 (1) i:副作用項目 5. 予測された副作用の確認と副作用の発現予測 2013年 4 月以降に,医薬品安全対策情報(Drug

Safety Update; DSU)から報告された副作用情報を 得られた SOM(有無版)の要素平面で確認した. また,SOM(有無版)から今後起こり得る副作 用を予測し,医薬品有害事象情報システム CzeekV (株式会社京都コンステラ・テクノロジーズ)14)を使 用して,2013 年 8 月までの副作用情報の報告状況 を確認した.このシステムは,米国食品医薬品局 (U.S. Food and Drug Administration; FDA)の有害 事象レポートデータ(FDA Adverse Event Report-ing System; FAERS)を整理し,日本語検索ができ るものであり,世界で報告されている副作用情報を 得ることができる.なお,使用する際は以下の点を 考慮した:◯入力データは基本的に日本人でのデー タを使用しているため,CzeekV では海外での報告 か日本での報告かを見極める必要があること,◯併 用薬がある場合が多いので第一被疑薬を検索する必 要があること,◯副作用は件数で表示されるので発 生頻度は不明であること. 結 果 1. SOM(有無版)から読み取れたこと 作 成した SOM(有無版)を Fig. 3 に示す.23 剤のが ん分子標的薬は,副作用発現パターンに反映される データ構造を反映して,地図上に配置されていた. 薬の配置マップを見易くするために系統分類を示 す区画線を書き加えたものを Fig. 4(A)に示す.お おまかに TKI がまとまって配置されていた.抗体 薬と低分子薬を示す区画線を加えた Fig. 4(B)を見 ると,おおよそ低分子薬と抗体薬に分かれていた が,抗体薬の中でベバシズマブだけが離れて配置さ れた.さらに,添付文書に記載された各薬剤が阻害

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Fig. 3. Adverse Reaction SOM of 23 Molecularly Targeted Anticancer Agents(Presence/Absence Version, as of March 2013)

する主な標的分子を示す区画線を書き加えたものを Fig. 4(C)に示す.左上にヒト上皮成長因子受容体 2 型(human epidermal growth factor receptor 2;

HER2) 阻 害 薬 , 左 下 に 上 皮 成 長 因 子 受 容 体

(epidermal growth factor receptor; EGFR)阻害薬, 中央下に HER2 と EGFR の両方を阻害する薬剤, 右 上 か ら 中 央 に BCR-ABL チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ (BCR-ABL)を阻害する薬剤が配置されていた. 血小板由来増殖因子受容体(platelet derived growth factor receptor; PDGFR)と幹細胞因子受容体(c-Kit)を阻害する薬剤は右側に配置していた.血管 内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)や血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を 阻害 する 薬 剤は 少し 離 れて 配置 さ れて いる が , mTOR と VEGF の両方を阻害する薬剤が中央上, VEGFR と PDGFR・c-Kit の両方を阻害する薬剤は 中央真ん中,VEGF や VEGFR だけを阻害する薬 剤が右下に配置していた. SOM(有無版)に関して類似度の計算を行った 結果,類似度の高い薬剤同士が左側,類似度の低い 薬 剤 同 士 が 右 側 に 配 置 し て い た . ま た , 2 次 元 SOMの端に配置している薬剤同士の配置関係を球 面 SOM で確認すると,左側の上下に離れていたゲ フィチニブとテムシロリムスやエベロリムスが隣接 して配置していることが分かった(Fig. 5).これ らの薬剤は類似度の計算結果からも副作用発現の類 似性が高いことが確認できた(ゲフィチニブ対テム シロリムス,0.941;ゲフィチニブ対エベロリムス, 0.906). 2. SOM(頻度版)から読み取れたこと 副 作用発現頻度により作成した SOM(頻度版)を Fig. 6に示す.SOM(有無版)と同様に,系統分 類毎に区画線を加えたもの,抗体薬と低分子薬で区 画線を加えたもの,阻害する標的分子毎に区画線を 書き加えたものを,それぞれ Fig. 7(A), 7(B), 7 (C)に示す.Figure 7(A)と 7(C)を見ると,SOM (頻度版)は SOM(有無版)に比べて薬剤が複雑 に配置していたが,Fig. 7(B)では,SOM(有無版) と同様に抗体薬の中でベバシズマブだけが離れて配 置された. 3. SOM(頻度版)の要素平面による副作用発 現情報の一括把握 SOMを作成すると,753 項 目の副作用それぞれについて医薬品の反応性を表現 する 1 つの要素平面が得られる.医薬品の反応性と は,本研究の SOM(頻度版)では副作用発現頻度 であり,発現するものは頻度の高~低によって赤~ 水色,しないものは青で表される.また,すべての 要素平面における医薬品の配置は Fig. 6 の SOM と 同じである.SOM(頻度版)における各薬剤の配 置も Fig. 7 で示されるように系統分類や分子標的

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Fig. 4. The Same Adverse Reaction SOM as Fig. 3

The SOM is divided into domains according to mechanism of action (A), antibody drug or low-molecular weight drug (B), and molecular target (C).

Fig. 5. Spherical SOM Using the Same Data as Fig. 3 などの系統性を反映したものであることから,各副 作用項目について副作用発現頻度を加味した全体的 な傾向の把握が可能となる. 753 項目の副作用要素平面を見ると,白血球減 少,発疹,高血圧,掻痒症などのように,ほとんど のがん分子標的薬で発現しており,要素平面のカ ラー表示では全体的に青以外の色がついているもの から,心室性不整脈,皮膚萎縮,多毛症など 1 つの がん分子標的薬でしか発現がみられず全体的に青く なっているものまで,発現状況は多様であることが 確認できた. Figure 8に副作用「手足症候群/手掌・足底発赤 知覚不全症候群」,「高血圧/血圧上昇」,「ざ瘡様皮 膚炎/ざ瘡様皮疹等の発疹」及び「ざ瘡/ざ瘡等の皮 膚症状」の要素平面を示す. 「手足症候群/手掌・足底発赤知覚不全症候群」は VEGFR 阻害薬でよくみられる副作用である.1) 素平面からも,VEGFR 阻害薬やテムシロムスを除 く VEGF 阻害薬で高頻度に発現している薬剤が多 いことが確認できた.ほかにも,EGFR を阻害す るキメラ抗体のセツキシマブやヒト抗体のパニツム マブ,HER2 を阻害するヒト化抗体のトラスツズマ ブ c で発現していることがわかった. 「高血圧/血圧上昇」は多くのがん分子標的薬で発 現している.特に VEGFR 阻害薬では,腫瘍細胞 だけでなく正常細胞の VEGFR にも作用すること

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Fig. 6. Adverse Reaction SOM of 23 Molecularly Targeted Anticancer Agents (Frequency Version, as of March 2013)

Fig. 7. The Same Adverse Reaction SOM as Fig. 6

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Fig. 8. Component Planes of Hand and Foot Syndrome/Palmar-Plantar Erythrodysesthesia (A), Hypertension/Increased Blood Pressure (B), Dermatitis Acneiform/Rash, Such as Acneiform Rash (C), and Acne/Dermal Symptoms, Such as Acne (D) (Fre-quency Version)

Colors indicate frequencies of adverse reactions, as shown in Fig. 1. In (A) and (B), frame borders indicate VEGFR or VEGF inhibitors. In (C) and (D), frame borders indicate EGFR and/or HER2 inhibitors.

から高血圧が生じることが報告されている.15)要素 平面からも VEGFR 又は VEGF の阻害薬で頻度が 高いことが確認できた.ほかにも,PDGFR と c-Kit,BCR-ABL を阻害するダサチニブ等で発現し ていることがわかった. 同様に,「ざ瘡様皮膚炎/ざ瘡様皮疹等の発疹」と 「ざ瘡/ざ瘡等の皮膚症状」をみると,様々ながん分 子標的薬で発現していることが確認できた.これら の副作用は正常細胞の EGFR に作用することで生 じると考えられ,1,15)要素平面からも EGFR を阻害 する薬剤やトラスツズマブ c 以外の HER2 を阻害 する薬剤で発現していることが確認できた.ほかに も,ダサチニブや PDGFR と c-Kit,VEGFR を阻 害するソラフェニブ,スニチニブ,mTOR を阻害 するエベロリムスとテムシロリムス等で発現してい ることがわかった. 4. DSU で追記となった副作用の確認 SOM のデータマイニング能力により,各副作用項目の要 素平面からこれまで発現していない副作用で将来発 現し得るものをある程度予測できると考えられる. SOM(有無版)は発現がある,ない,という入力 データであり曖昧さがないため,データマイニング 手法を活用して新規副作用発現を予測できる可能性 を持つ重要なマップと考えられる.それに比べて SOM(頻度版)では今回の分子標的薬でも 23 剤中 8 剤においていずれも数十個の副作用項目に頻度不 明があるなどデータマイニングの精度をだいぶ下げ てしまうことが懸念されるものであった.そこで, SOM(有無版)を用いて発現可能性についての検 討を行った. Figure 9 に「紅斑」,「皮膚炎」,「痙攣/痙攣発作」 の SOM(有無版)の要素平面を示す. 2013 年 7 月の DSU16)でエルロチニブに対し, 「紅斑」の副作用が追記となった.2013 年 3 月時点 での紅斑の要素平面を見ると,エルロチニブでは発 現していなかったが,隣接する同じ EGFR を標的 とする薬剤では既に発現がみられていた. 同様に,2013 年 7 月の DSU でベバシズマブに対

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Fig. 9. Component Planes of Erythema (A), Dermatitis (B), and Convulsion/Seizure (C) (Presence/Absence Version)

Red dots: adverse reaction (+); blue dots: adverse reaction (-). In (A), frame borders indicate EGFR and/or HER2 inhibitors. In (B) and (C), frame bord-ers indicate VEGFR or VEGF inhibitors.

し,「皮膚炎」と「痙攣」の副作用が追記となった. 2013年 3 月時点でのそれぞれの要素平面をみる と,ベバシズマブでは発現していなかったが,隣接 する薬剤では既に発現がみられていた.「皮膚炎」 が発現し隣接していた薬剤は,同じ VEGFR 又は VEGFを標的とする薬剤であった.一方,「痙攣」 では,隣接していた薬剤とは標的が異なっていた. 5. SOM(有無版)の要素平面からの副作用の 予測・確認 Figure 10に副作用「心電図 QT 延 長」,「創傷治癒遅延/不良」,「高血圧クリーゼ」の 要素平面を示す. 「心電図 QT 延長」は TKI や BCR-ABL を阻害す る薬剤で多く発現していた.それらの中でイマチニ ブではまだ発現していないことから,今後発現する と予測した.また,ベバシズマブは同じ VEGFR 又は VEGF を標的とする薬剤を含む隣接している 薬剤でも発現していることから,今後ベバシズマブ でも発現すると予測した.CzeekV で確認したとこ ろ,イマチニブでは 15 件の報告があり,そのうち の 4 件は日本の報告であった.ベバシズマブは 10 件の報告があったが,日本の報告はなかった. 「創傷治癒遅延/不良」は VEGFR 又は VEGF を 阻 害 す る 薬 剤 で 多 く 発 現 し て い た . そ こ で , VEGFR又は VEGF 阻害薬の中でまだ発現のない テムシロリムスとソラフェニブについて CzeekV で 確認した.その結果,テムシロリムスは添付文書上 には頻度不明(海外で報告あり)と記載されていた が,CzeekV では報告がなかった.ソラフェニブは 「創傷」が 6 件報告されていた. 高血圧は様々な薬剤で生じていたが,重篤な症状 である「高血圧クリーゼ」は VEGFR 又は VEGF 阻害薬で発現していた.そこで,まだ発現のない VEGFR 又は VEGF 阻害薬について CzeekV で確認 した.その結果,ベバシズマブは添付文書に頻度不 明(海外で報告あり)と記載があったが,CzeekV でも 23 件の海外での報告があった.同様に,スニ チニブは 27 件,エベロリムスは 7 件,テムシロリ ムスは 2 件の海外での報告があった. Figure 11に副作用「胸水」,「腹水」,「肺水腫/急 性肺水腫」の要素平面を示す.これらの副作用は

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Fig. 10. Component Planes of Prolonged Electrocardiogram QT (A), Delayed Wound Healing/Impaired Healing (B), and Hyper-tensive Crisis (C) (Presence/Absence Version)

Red dots: adverse reaction (+); blue dots: adverse reaction (-). In (A), frame borders indicate TKIs. In (B) and (C), frame borders indicate VEGFR or VEGF inhibitors. BCR-ABL阻害薬を中心に発現していることが確認 でき,その理由として,これらの薬剤は体液貯留が 起こり易いことによると考えられる.ニロチニブで は「腹水」と「肺水腫/急性肺水腫」がまだ発現し ていないので CzeekV で確認した.その結果,「腹 水」は 15 件の報告があり,そのうち 7 件が日本の 報告であった.また,「肺水腫」は添付文書に頻度 不明(国際共同第Ⅲ相試験,国内第Ⅱ相試験では, なし)と記載されていたが,CzeekV では 14 件の 報告があり,そのうち 2 件は日本での報告であった. 考 察 今回,がん分子標的薬の副作用について SOM を 用いてビジュアル化を行った.SOM において,入 力データを副作用の有無のみとするか,頻度も用い るかによって,それぞれ有無版,頻度版が作成でき る.今回の結果では,有無版と頻度版では配置に違 いがあり,頻度版では有無版に比べて薬剤が複雑に 配置されていた.この理由として,頻度版は副作用 の発現頻度という要素も加味されたことで薬剤の類 似度が影響を受けたためと考えられる.系統分類や 分子標的で区画線を入れると,有無版では頻度版よ りも系統分類や標的分子が同じ薬剤同士がより隣接 して配置されており,頻度版よりも有無版の方が副 作用発現の有無の可能性を判断・確認するのにはよ り有用であった.抗体薬と低分子薬で区画線を入れ ると,いずれの版でも抗体薬の中でベバシズマブだ けが離れて配置していた.これは,抗体薬の中でベ バシズマブの副作用の項目数が著しく多いため,離 れて配置したと考えられる.このことからベバシズ マブは,他の抗体薬とは異なる副作用の発現パター ンを有する可能性があるため,添付文書で他薬との 違いの詳細を確認して使用患者に対応する必要があ る.このように SOM を作成した結果,有無版と頻 度版のいずれの版からも,がん分子標的薬の副作用 発現の全体傾向は上述の区分で類似する特徴を持つ ことが示唆された. SOM では,各副作用項目の要素平面も得られ

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Fig. 11. Component Planes of Pleural EŠusion (A), Ascites (B), and Pulmonary Edema/Acute Pulmonary Edema (C) (Presence/ Absence Version)

Red dots: adverse reaction (+); blue dots: adverse reaction (-). In (A), (B), and (C), frame border indicates BCR-ABL inhibitors.

る.要素平面を用いた活用例として,頻度版を用い て,がん分子標的薬副作用のうち,VEGFR 阻害薬 でよくみられる「手足症候群/手掌・足底発赤知覚 不全症候群」,正常細胞の EGFR に作用することで 生じると考えられる「ざ瘡様皮膚炎/ざ瘡様皮疹等 の発疹」と「ざ瘡/ざ瘡等の皮膚症状」,正常細胞の VEGFRに作用することで生じると考えられる「高 血圧/血圧上昇」に今回着目した.その結果,各副 作用における発現状況を頻度も含めて一目で確認す ることができた.このように,ある副作用の頻度も 含めた発現状況を他の薬剤と比較したり,副作用が 発現した場合により頻度の少ない薬剤の使用を考慮 する際などに頻度版は利用できると思われる.がん 分子標的薬を投与するにあたり,効果・効能だけで なく安全性も重視され,薬剤師は副作用に十分な注 意を払わなければならない.副作用の発現情報,頻 度情報を確認・比較する際,文字・数字の情報が中 心の添付文書などの情報源では時間と労力を要する が,ビジュアル化された 753 項目の副作用要素平面 を用いることよってより容易に認識することが可能 となる.さらに,SOM を用いることによってビジ ュアル化された情報から効率よく必要な薬剤を絞り 込み,再度文字情報に戻って詳細に確認することも 可能である.57)一方で,今後活用する際,複数の医 薬品に共通する副作用であればある程度 SOM から 有用な情報が得られるが,少数の薬だけに発現する ような副作用については一般に SOM から情報を引 き出すのは難しい5)という点にも注意する必要があ る. 有無版の要素平面では,SOM マップ作成時点で は発現しておらず,その後 DSU で追記となった副 作用を見たところ,もともと副作用が発現していた 薬剤と隣接した薬剤で追記となったことを確認でき た.これは,標的分子が同じ薬剤に隣接していた薬 剤のみならず,標的分子が異なる薬剤に隣接してい た薬剤でも確認できた.さらに,まだ発現がないが 今後起こり得る副作用を予測し,CzeekV で検索し たところ,現在の報告状況を確認することができ た.特に「腹水」,「肺水腫/急性肺水腫」は日本で の報告が多かったため,今後添付文書に追記となる

(12)

可能性が高いと考えられる.これらの結果から, SOMマップ上の薬剤は一連の副作用発現の類似性 に基づいて配置されているため,SOM マップを見 ることで,標的分子の異なる薬剤でも,これまで発 現していない副作用で将来発現し得るものを予測す るのに役立つことが示唆された.同様の結果は,抗 菌薬,3,4)降圧薬,6,7)糖尿病治療薬3,8)でも報告されて いる.発現が予測された副作用について,医療現場 においては医療従事者が患者での発現の有無に関し てより注意を払うことができたり,特に副作用情報 の少ない新薬については,製薬企業も医療従事者に あらかじめ注意を喚起することができ,副作用の早 期発見や重篤化の回避に役立つことが考えられる. さらに,副作用の類似性から薬剤の新たな分子標的 を探索する研究も報告されており,17,18)その方面へ 応用できる可能性も考えられる. 今回は 2013 年 3 月までに日本で販売されている 23 剤のがん分子標的薬で SOM を作成した.今後 さらに多くのがん分子標的薬が販売されれば,さら に副作用情報を把握し易い SOM が作成できると考 えられる.また,今後,従来の抗がん薬と組み合わ せて SOM を作成することによって,従来の抗がん 薬とがん分子標的薬の副作用情報を視覚的に比較で きると思われる. 本研究により,SOM によるビジュアル化は,が ん分子標的薬の副作用の全体的な特徴をつかむのに 役立ち,さらに,今後起こり得る副作用を予測する のに活用できる可能性が示された.今後,医療現場 における医療従事者の副作用の把握と副作用対策の ための有力なツールとなることが期待される. 謝辞 本研究は,文部科学省 私立大学戦略的 研究基盤形成支援事業(平成 25 年平成 29 年)の 助成を受けたものである. REFERENCES

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Table 1. Molecularly Targeted Anticancer Agents Used in This Study (23 agents, as of March 2013)
Fig. 1. Scores and Colors to DiŠerentiate Frequencies of Ad- Ad-verse Reactions of Molecularly Targeted Anticancer Agents
Fig. 3. Adverse Reaction SOM of 23 Molecularly Targeted Anticancer Agents(Presence/Absence Version, as of March 2013)
Fig. 4. The Same Adverse Reaction SOM as Fig. 3
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参照

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