高齢者における
ポリファーマシー対策について
慢性期・回復期における病棟薬剤業務セミナー
日 時
2016年10月16日(日)
場 所
アクロス福岡 4階 国際会議場
共 催福岡県病院薬剤師会/福岡県病院薬剤師会中小病院委員会委員/沢井製薬株式会社
教 育
講 演
ポリファーマシーは負のスパイラルを招く
高齢者は、複数疾患を合併することが多いため服用薬剤が 多くなる傾向にあり、中央社会保険医療協議会資料(2015年) によると、複数の医療機関から10種類以上の投薬を受けてい る患者さんは、前期高齢者で11.7%、後期高齢者では27.3%と 報告されています。多剤併用下において不適切な薬剤が処方さ れ、それによって有害事象が生じている状態はポリファーマ シーとされ、薬物療法の適正化が必要となります。必要な対策 が講じられない場合には、副作用を抑えるためにさらに薬剤が 追加されるという負のスパイラルに陥ってしまう場合もあり ます(図)。薬剤師の積極介入が重要
こうした状況を踏まえて作成された「高齢者の安全な薬物療 法ガイドライン2015」(日本老年医学会)では、薬学的管理(薬 識の確認、残薬確認、薬歴管理、相互作用の確認、処方設計な どの薬剤師の包括的介入)が、薬物有害事象の未然防止、重篤 化の回避に有用であること(CQ1)、漫然と繰り返し使用され ている薬を、薬剤師が定期的に見直すことで、薬剤数の削減、 薬物有害事象の抑制につながること(CQ2)など、9項目にわ たって、薬剤師の役割が明記され推奨されています。 このようにポリファーマシー対策では、薬剤師の積極的介 入が極めて重要となりますが、その際、強調しておきたいのは、 「ポリファーマシー対策=薬を減らす」ではないということで す。患者さんの病態や生活状況、さらには患者さんのご意向も 含めて、本当に必要な薬剤を医師と協働で検討しながら、もっ とも適切な薬物療法を実践していくこと。それが、薬剤師に求 められるポリファーマシー対策だと考えております。それぞれ の施設で患者さんの生活の質の向上のために、薬剤師の専門性 を発揮した取り組みが今求められています。日常業務から行える
ポリファーマシー対策
医療法人知命堂病院薬剤科長武藤 浩司
先生 開会のあいさつ 提供:知命堂病院薬剤科長 武藤 浩司 先生 【図】 ポリファーマシーによる負のスパイラル 多疾病罹患 ポリファーマシー(多剤投与) (Polypharmacy) 負の スパイラル スパイラル負の 薬物有害事象(Adverse Drug Events) 潜在的に不適切な薬剤 (PIMs : potentially inappropriate medication) ポリファーマシーの問題は以前から注目されてきまし たが、2016年度診療報酬改定では、医療機関での減薬 の取り組みが新たに評価され、入院だけでなく外来でも、 6種類以上の処方薬に対し、処方の適正を評価した上で2 種類以上の減薬を行った場合には、薬剤総合評価調整管 理料(250点)を算定できることになりました。こうした なかで、薬剤師が介入することによってQOLを向上させ ることが可能になるなど、処方の適正化がもたらすメリッ トを示すデータを蓄積していくことが、ますます重要に なっています。本日のセミナーを参考に、ぜひ積極的に ポリファーマシー対策を進めていただければ幸いです。 長時間にわたるセミナーですが、活発な討論をお願いい たします。 福岡県病院薬剤師会会長
増田 智先
先生 医療法人清和会 長田病院 薬剤科長大神 修一
先生 総合司会 福岡市民病院 薬剤部長丸野 重信
先生 教育講演/特別講演 座長 飯塚市立病院 薬剤室長山下 崇
先生 福岡県済生会飯塚嘉穂病院 薬剤部長古川 貴弘
先生 講演/総合討論 座長ポリファーマシー回避のポイント
高齢者では、複数疾患の罹患や臓器予備能の低下などいく つもの要因により、薬物有害事象のリスクが高くなります。75 歳以上の入院患者さんの15%以上に有害事象がみられること が報告されており、その主な要因の1つはポリファーマシーで あると考えられます。ポリファーマシーに明確な基準はありま せんが、6種類以上の薬剤を服用していると有害事象が生じや すくなることや、5種類以上で転倒リスクが増すなどの報告を 踏まえ、5~6種類以上をポリファーマシーの目安とするのが 妥当とされています。 ポリファーマシーを回避する上で最も重要なポイントは、使 用する薬剤に高齢者でのエビデンスがあるかをチェックする ことです。また、対症療法としての投薬では、それが対症療法 として本当に有効か、薬物療法以外の手段はないのかなどの検 討も欠かせません。こうした検討を前提として、処方薬の優先 順位をつける際は、十分な期間、患者さんと向き合い、病態だ けでなく、日常生活動作(ADL)や認知機能、嗜好、家庭環境 などを把握することが重要です。 また、予防薬のエビデンスについては、そのほとんどが一 般成人や前期高齢者を対象としたものであるため、後期高齢者 に用いられている場合には、その多くが見直しの対象になると 考えられます。ポリファーマシー対策のゲートキーパーとしての薬剤師
もう1つのポイントは、高齢者で有害事象を起こしやすい 薬剤について、知識を蓄えておくことです。そこで、「高齢者 の安全な薬物療法ガイドライン2015」では、処方スクリーニン グ適正化ツールとして、「特に慎重な投与を要する薬物」およ び「開始を考慮すべき薬物」のリストが提示されています。い ずれも、後期高齢者と、フレイルないし要介護状態にある前期 高齢者を対象としたもので、薬物有害事象の回避と、薬剤数削 減に伴うアドヒアランスの改善を目的としています。リストは あくまでスクリーニングツールであり、実際に使用する際のフ ローチャートも添えられていますので、ぜひ参考にしていただ きたいと思います。 また近年、老年病科を受診する患者さんの半数以上は認知 症を有していますが、認知症の極めて早期の段階から薬剤の管 理能力が低下しています(図)。このようなケースでは、アド ヒアランスを良好に保つため、服薬数を減らす、服用法を簡便 化する、剤形を工夫するなどの配慮が必要となり、配合剤、 OD錠、貼付剤の選択が、アドヒアランスの改善に有用である ことが明らかにされています。高齢者の薬物療法―ポリファーマシー対策を中心に
東京大学大学院医学系研究科加齢医学教授秋下 雅弘
先生特 別
講 演
多くの高齢患者さんが複数の診療科を受診し、薬剤の一元 管理が困難な状況となる中で、医師以外の医療従事者が、ポリ ファーマシーやアドヒアランス維持のゲートキーパーとなる ことが求められます(表)。とりわけ、処方薬の薬学的管理に あたる薬剤師の役割は大きく、高齢者に対する適正医療への積 極的な介入を期待したいと思います。 【図】 認知症の重症度と症状 【表】 医師以外の職種だからできること 提供:東京大学大学院医学系研究科加齢医学教授 秋下 雅弘 先生 (国立長寿医療センター薬剤部)薬の管理
判断力・ 問題解決 記 憶 見当識 社会適応 家庭状況 介護状況 問題なし 健康 認知症疑い 軽度認知症 重度認知症 問題あり 1.患者が薬を飲む様子から、服用に困難がある状況が わかる。 2.「(飲むと)体調が悪い」、「本当は飲みたくない」、「実 際には飲んでいない」といった訴えは、医師以外の職 種に伝えられることが多い。 3.医療環境の変化に伴い、処方・調剤の誤りが起きや すい。 4.疑問を感じたら、とにかく確認を!医師以外のメディ カルスタッフがエラーを防ぐ最後の砦である。地域包括ケアシステムをいち早く構築
当院は尾道市にある、急性期病棟、緩和ケア病棟、回復期 リハビリテーション病棟、保健福祉総合施設(老健、特養、リ ハセンター等)を併せもつ240床の総合病院です。このエリア は高齢化比率が高く、早くから保健、医療、福祉、介護を包括 的に提供する仕組みを構築してきた地域包括ケアシステム発 祥の地です。当院の特徴は、全地域住民を対象に、入院前・入 院中の治療だけでなく、退院後の施設・在宅ケアまで継ぎ目の ないサービスの提供を目指している点です。なかでも特に力を 入れているのは地域密着型の栄養サポートチーム(NST)の取 り組みです。病院、保健福祉総合施設、在宅ケアのそれぞれに NSTを設け、栄養リスクの高い患者さんの掘り起こしや、栄 養問題解決のため継続的なサポートを行っています。ポリファーマシーが低栄養の要因に
NSTの活動を通じて見えてきたのは、薬剤が食事に及ぼす 影響です(図)。当院に併設する老人保健施設での調査では、 入所者(50~100歳代)の平均服薬数は9剤で、なかには20錠 以上服用している方もいました。常用している薬剤の中には、 食欲不振を招き、低栄養の要因となるものもあります。たとえ ば、向精神薬や抗不安薬、睡眠薬などは食行動の妨げとなりま すし、抗コリン薬は味覚を喪失させ、食欲低下をもたらします。 こうした事例以外にも薬による食欲不振は数多く、減薬が栄養 状態やADLを劇的に改善することもまれではありません。 薬剤の減薬・中止には医師との関係など多くの課題があり ますが、栄養療法に携わる薬剤師は、患者さんの体調に応じて 「薬の引き算」を考え得る特異な医療職でもあります。薬剤師 が発信するこうした情報に、耳を傾けてもらえるような活動を 積み重ねていくことが重要だと考えます。薬剤師の積極的介入で薬剤数が有意に減少
当院は、436床を有する急性期病院で、入院患者さんの2人 に1人は後期高齢者です。2013年に市内で唯一の地域医療支援 病院の承認を受け、それを契機に薬剤師が積極的に介入するこ とで、内服薬を適切に削減し、ポリファーマシーを是正する試 みを開始しました。 まず取り組んだのは、院内における医師、看護師、医療ソー シャルワーカー(MSW)との多職種連携の強化です。薬剤師は、 入院中の薬剤管理のみならず、退院後の患者さんの療養生活ま で視野に入れた処方提案に努めました。 実践の効果を検証するため、整形外科を退院した症例(2013 年4~5月)を対象に、MSWと連携して積極的に薬剤管理した 群と、通常の薬剤管理を行った群を比較したところ、積極群で は入院時平均9.8剤であった薬剤数が退院時には平均7.6剤へと 有意に減少し、1日薬価も有意に低下していました。減薬を退院後に引き継ぐ医師にバトンタッチ
入院中に減薬した理由や経緯が退院後に引き継ぐ医師に伝 わらなければ、再びポリファーマシー状態に陥る可能性があり ます。そこで、退院や転院時に医師が記載する診療情報提供書 に、減薬の理由や経緯を書いた「退院時薬剤情報提供書」(図) を添付するようにしました。 当院では院内での多職種連携にとどまらず、院外における 多職種連携にも力を注ぎ、連携先のかかりつけ医や病院、老人 保健施設、地域の医師会、薬剤師会、看護協会などと顔の見え る関係を築いてきました。そうしたネットワークを通じて、退 院時薬剤情報提供書の活用が広がりつつあります。この退院時 薬剤情報提供書は、多職種交流や薬薬連携によって、分かり易 い連携を目標に市内統一形式のものになりました。 このように、薬剤師が提案し、医師が判断できる体制を、病 院内外で作り上げていくことがポリファーマシー対策におい て有効であると考えます。地域連携と
ポリファーマシー対策
栄養療法の効果により
薬剤の減薬・中止は可能か?
―高齢者のポリファーマシー対策―
公立みつぎ総合病院 地域医療部NST専従増田 修三
先生 宝塚市立病院 薬剤部主幹吉岡 睦展
先生講演
①
講演
②
【図】 薬が及ぼす食事への影響 提供:公立みつぎ総合病院 地域医療部NST専従 増田 修三 先生 おいしくない、味がおかしい エースコール、ロンゲス、タナトリルなど(ACE阻害剤) グリチロン、ネオファーゲンCなど(グリチルリチン含有剤) 口が渇く、のどが乾く 入れ歯が入りにくい トリプタノール、アモキサン、ルジオミールなど(抗うつ剤)アーテン、アキネトン、ウブレチドなど(抗コリン剤) 歯茎が腫れる、入れ歯が合わない アダラートなど(降圧薬:Ca拮抗剤)アレビアチン(抗てんかん剤)など 食欲が出すぎる くすりを飲み出してから太った プレドニン、リンデロンなど(ステロイド剤) ドグマチール(スルピリド) 胃が痛くて食べれない、口が苦い 酸っぱいものがこみ上げてくる プレドニン、リンデロンなど(ステロイド剤) ロキソニン、ボルタレンなど(解熱鎮痛剤) 吐き気がする、ムカムカする パキシル、デプロメール、ルボックスなど(抗うつ剤)抗がん剤 等 気持ちが乗らない、外へ出たくない、 食欲がわかない、楽しみがない、 人と関わりたくない プレドニン、リンデロンなど(ステロイド剤) 飲み込めない、むせこむ アーテン、アキネトン、ウブレチドなど(抗コリン剤) グラマリール、セロクエル、セレネースなど(抗精神病薬) テルネリン、ミオナール、リオレサールなど(筋弛緩剤) 味覚、 口 周囲 の 状況 胃 の 障害 う つ 提供:宝塚市立病院 薬剤部主幹 吉岡 睦展 先生 【図】 市内統一形式の退院時薬剤情報提供書 〈患者情報〉 既往歴 〈事由・経過〉 〈調製区分〉 中止・減量 継続・新規開始 退院後も責任を 持って担当薬剤師 が対応 退院後に再度 ポリファーマシー とならないために… 持参薬を含めた 退院時服用薬カンファレンスで処方薬見直しを推進
当院は、高度急性期、一般急性期、療養病棟を併せ持つ266 床のケアミックス型病院です。処方薬の見直しは病院全体の課 題ですが、まず高齢者の多い療養病棟でポリファーマシー回避 に向けた取り組みを開始しました。 対象となったのは、療養病床へ転入した患者さんのうち、75 歳以上で6種類以上の薬剤を服用している方です。療養病棟の 専任薬剤師がリーダーとなって週1回のカンファレンスを開 き、減薬の検討を行いました。減薬の手法として、①全処方薬 の処方理由の調査、②有害事象および潜在的不適切処方の有無 の評価、③減量・中止の妥当性の評価、④処方提案の優先順位 の決定などを実施し、その際Beers criteria、STOPP/START criteria、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」などを 参考にしました。 こうした取り組みの結果、薬剤数は9.7剤から8.8剤に減りま したが(図)、6剤以上というポリファーマシーの回避には至り ませんでした。処方提案に至らなかったり、変更がなされな かった理由は、「診療科がないので分からない」「主治医が専門 外で分からない」「患者さんの同意が得られない」などでした。 また問題点として、参考にしたクライテリアを活用している医 師がいないことが浮かび上がりました。急性期持参薬でも減薬に取り組む
今年(2016年)からは、急性期の持参薬鑑別時に6種類以上 の内服薬を服用している患者さんには、持参薬鑑別報告書に マークをつけて、医師と協働でプロトコールに即した減薬に取 り組んでいます。 ケアミックス型の病院では、病床の機能に応じたさまざま な薬剤業務が求められます。その点を踏まえつつ、薬剤師はポ リファーマシーのゲートキーパーとして、その役割をしっかり と果たしていきたいと考えています。同効薬は2剤までの努力を
精神科では以前から、ポリファーマシーの弊害が指摘され ており、当院ではポリファーマシー改善のため、単剤化の推進 や処方薬の見直しなどを以前から進めています。 当院では薬物治療の目標として、①同効薬は多くても2剤ま での努力を行う、②誰がみても処方意図がわかるシンプルで美 しい処方内容、③症状が落ち着いたら減量を躊躇しない、④す べての剤形から患者さんが選ぶことなどを掲げ、薬剤師として 積極的な処方提案を心がけています。ポリファーマシー対策にはCP換算が有用
精神科医療において特にポリファーマシーが生じやすいの は、睡眠薬と抗精神病薬の使用においてです。 まず睡眠薬ですが、日本では欧米に比べて、ベンゾジアゼ ピン(BZD)系睡眠薬の使用量が突出して多く、とくに高齢者 での処方率が高いことが示されています。BZD系は、必要な 患者さんに、適切に、短期間使えば良好な効果が得られる薬で すが、高齢者ではBZD受容体の感受性が亢進しているため、 せん妄や転倒を誘発しやすいといったデメリットがあります。 また精神科病院では、認知症の周辺症状に対して向精神薬が使 われることが多いという現状があります。そこで当院の認知症 病棟では、「睡眠薬は鎮静の少ないものを使う」「睡眠薬が必要 な場合は、ラメルテオンまたはスボレキサントをまず試してみ る」「良眠が得られれば中止の方向へ」といった処方提案を行っ ています。また高齢者以外においても、昼間の悩みを寝床に 持っていかない、寝床では音や光をなるべくシャットダウンす るなど、睡眠に対する生活指導にも力を入れています。 抗精神病薬に関しては、薬剤師が全入院患者さんのCP換算 値を算出し、CP換算高値の症例については、多職種で処方内容、 副作用、服薬状況、減量の必要性などを協議した上で、医師に 処方提案します(図)。抗精神病薬のCP換算は、抗精神病薬の 投与量を客観的に数値化できるため、ポリファーマシー対策に おいて極めて有用と考えます。ケアミックス病院における
ポリファーマシー対策
精神科病棟における
ポリファーマシー対策
社会医療法人陽明会 小波瀬病院薬剤部長川崎 美紀
先生 医療法人社団更生会 草津病院薬局別所 千枝
先生講演
③
講演
④
提供:社会医療法人陽明会 小波瀬病院薬剤部 川崎 美紀 先生 【図】 処方薬見直しの成果 減薬結果 ● カンファレンス実施人数 :60名(男性16名・女性44名) ● 年齢:85歳(75 ‒ 98) 内 容 ● 処方提案:44名 介入前 9.7剤 介入後 8.8剤 中 止 減 量 変 更 追 加 変更なし 29件 2件 1件 7件 11件 【図】 ポリファーマシー対策のための薬剤カンファレンス 提供:医療法人社団更生会 草津病院薬剤課 別所 千枝 先生 草津病院におけるポリファーマシー対策薬剤カンファレンス 病棟ごとに、薬剤管理指導の情報 全患者のCP換算値や処方を提示 多職種で処方内容、副作用、服薬状況、減量の必要性 などについて協議 身体合併症 治療薬見直し 多職種への情報提供 医師へ 処方提案医師への処方提案、そのポイントは?
山下 高齢者に対して安全・安心で適切な薬物治療を行うこと が、ポリファーマシー対策の主旨です。講演では、各先生方に 薬剤師がこれにどう介入していけばいいのかをお話しいただ きました。ここでは、それを踏まえてディスカッションを進め て参りたいと思います。まず、フロアからご意見、ご質問ござ いますか。 フロア ポリファーマシーにどう対応していけばいいのか、今 日は本当に勉強になりました。しかし、実際問題として難しい のは、減薬、中止など、医師への処方提案です。個別的な対応 とシステム的な対応があると思いますが、そのポイントを教え てください。 増田 医師の場合、外来でも病棟でも、患者さんを診るのは限 られた時間となります。一方、看護師、介護・リハビリテーショ ンのスタッフなどは、長く患者さんと接し、生活状況を熟知し ています。薬剤師がそうした情報を医師にきめ細かく伝えるこ とで、信頼関係が生まれ、処方提案についても折り合いがつく のではないかと思います。それはカンファレンスの場でもいい し、病棟での打合せの時でもいい。それによって医師の理解も 進み、ここまでは同意できる、それ以上はできないという、薬 物治療で治るかの見極めができるのではないでしょうか。 吉岡 私も、看護師、ケアマネジャー、医療ソーシャルワーカー (MSW)、かかりつけ医などから患者さんの情報を得て、処方 プランに反映させ、提案するようにしています。また、担当医 の専門外の薬からアプローチしていくのも1つの手だと思い ます。 川崎 医師に対して、単にガイドライン、クライテリアに照ら し合わせて指摘すると、好意的に受け止められない場合があり ます。患者さんに薬を減らしたい意向があるとか、日頃の生活 状況を細かく聴取、フィジカルアセスメントなど服薬管理指導 や病棟業務で得た情報を細かくお伝えするようにしています。 そうすると医師も受け入れやすいと思います。一方、システム 的な対応ですが、当院では、多剤投与の患者さんを電子カルテ から抽出し、薬学的判断の上で、減薬などを提案しています。 別所 当院でも3剤以上処方されている入院、外来の患者さん を抽出し、問題があるケースでは月に1回の医局会に提出し、 議論するようにしています。それによって減量につながった ケースも少なくありません。処方データを定期的に提示してい くことも一つの方法だと思っています。 山下 患者さんのモニタリングやカンファレンスへの参加に 加えて重要なのはエビデンスです。検査値の確認や薬物治療モ ニタリング(TDM)の提示など、証拠に基づいて処方提案して いくことも大事だと思います。残薬、持参薬の問題と薬剤師の役割は?
古川 次に、事前に寄せられた質問です。薬剤総合評価調整加 算に関して算定していこうと思うが、医局へのアピールがうま くいっていない。どうすればいいかというものです。残薬の是 飯塚市立病院 薬剤室長山下 崇
先生 福岡県済生会飯塚嘉穂病院 薬剤部長古川 貴弘
先生 司 会 宝塚市立病院 薬剤部主幹吉岡 睦展
先生 公立みつぎ総合病院 地域医療部NST専従増田 修三
先生 社会医療法人陽明会 小波瀬病院薬剤部長川崎 美紀
先生 医療法人社団更生会 草津病院薬局別所 千枝
先生 医療法人知命堂病院薬剤科長武藤 浩司
先生 シンポジスト アドバイザー薬剤師の様々な活動からポリファーマシー対策を考える
総 合
討 論
正や算定したいと考えるのなら、医局会議や合同カンファレン スなどでアピールし続けること、それが薬剤部の役割だろうと 思います。 武藤 残薬の問題ですが、医療費削減の観点から、当院の障害 者病棟では出来高請求となりますので、薬の品質や服薬状況な どを薬剤師が確認し、医師の継続投与指示のある薬は可能な範 囲で使うようにしています。退院後、当院を受診される患者さ んであれば、継続投与となった残薬を預かり、外来受診時にお 渡しするなど残薬の有効利用を行う場合もあります。 吉岡 質問から少し外れますが、いま厚生労働省が、診断群分 類別包括評価(DPC)のデータとして、持参薬を使っているか どうかを調査しています。DPCでは持参薬の使用を原則禁止 していますが、病院では持参薬と同じような薬が処方されるこ とも多く、前医の持参薬が無駄になったり、調整が曖昧なまま 退院したりすると重複による有害事象の原因になりかねませ ん。診療報酬の規定も大事ですが、薬剤師はやはり患者さんの 視点に立って、残薬や持参薬の問題を考えていくべきだと思い ます。 川崎 当院もDPC病床を有しています。厚生労働省の定める 持参薬使用ルールでは入院の契機となった傷病の治療に持参 薬を用いることは原則禁止となっています。このルールに該当 するか否かの確認を薬剤師が行っています。もちろん、該当す れば使用しませんし、非該当であれば使用します。使用しな かった持参薬については、医療費削減や患者負担のことを考え ると、退院後に使うときがくる可能性もあるので、そのまま残 しておいて退院時服薬指導時に調整したりもします。