1・ は じ め に
APS:去 (Appearance Potential SpectrscoPy;軟 X線出現電圧分光法)1'2)においては
X線
発生装置 の対 陰極電圧(I)を
測定する。 Iは 微小なうえに試料物質 の物性 あるいは電子回路の 特性上避け られない各種の ノイズを多く合んでいる。その中から必要な信号を精度 よく選び出し,得
られたデーケに更に各種の演算を行な って3)物性研究上有用な情報を得る。従 って I,Eの ア ナログ測定値を十分な精度で求めた後,デ
ジタル化,計
算機処理に適した形にする必要がある。測定のS/Nを
向上させるために,これまでa)ロ
ック・ イン・ アンプによって位相検出する方 法4)b)検
出電極を大きくしてX線
の検出効率を高 くす る方法5)C)信
号をデジタル化した後に記憶させ長時間の測 定値を利用する方法6)APSス
ペ クトル収録用デジタル ●レコーダ
小
西
亮
介
*・渡
部
健
治
**・加
藤
益* (1978年 5月 31日 受 理)A Digital Data RccOrding System fOr Appearancc POtential Spectroscopy
by
Ry5suke KoNIHI,Kenziヽ VATANABE and Susumu KATO
(Rec ed May 31,1978)A digital recording system has been constructed for data prosessing of App_ earance POtential Spectroscopy. The system consists of signal block, target potential block,counter block, staircase wave sweep block and printer block, As an example, the La and L2 SpeCtra of pure chromium are shown using
this digital recorder.「 Γhe spectra were good agreements with the one obtained by usual X――Y recorder.
d)検
出器を液体窒素温度に冷却 し雑音の発生を抑 える方法7) 等が考案 された。 われわれはEを一定間隔△Eごとに設定 し得 られたI を周波数変換によってデジタル化 しその後カウンタ加算 による積分を行ない, S/Nの
向上 とデータの安定化に よって以後の計算機処理を容易に進められるシステムを 試作 した。デ ィスル イはデータの定量化や後の演算の 事を考え,信
号 Iを 6桁,対
陰極 (試料)電
圧Eを 4桁 の表示 とし印字する。2.動
作 原 理 検 出器 と信号 の処理回路はFig,1の
ような構成にな っている。試作 したデータ・ レコーダはこの微分スペク トルをデジタルデータとして記録する。試料電圧を△E
ごとに区切 りその時の出力電流をデジタル化する。 この 時 1個 のデータのサ ンプ リング回数を nと す るとS/N **現墓千蘇熱電機株式会社 伏 東め鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
9巻
255Fig。 3 TiniD.g chart Of digital recorder.
2-1
各 ブロックの構造 修)信
号ブロックFig.4に
信号測定回路を示す。 初段プ リア ンプは利 得10∼104倍までの切換えをもつ反転増幅器である。サ ンプルホルダはボルテージフ ォロワを通 してホール ド用 のコンデ ンサにチ千―ジさせる。サ ンプル用のアナログ スイ ッチにはFETを
用 いて サ ンプ リングを 行 ってい る。次の C―Fコ ンバータは積分回路 と単安定回路 とか らな り,入
力電圧に比例 した周波数が得 られる。 この回TER BLOCK
L… ……… … 1PRN TER
! ____ 州STAIRCASE WAVE SWEEP
は
VTに
比例 して改善される。 ここでは nを 104と し てい る。 全体の回路ブロック図をFig,2に
示す。 構成 は 信 号 ブロック,試
料電圧 ブロック,カ
ゥンタブロック,階
段波ス ィープおよびプ リンタか らなる。測定時のがイ ミ ングチャー トをFig.3に
示す。 ここで 微分 スペク ト ルを測定するときはラッチ 。パルスの後各カウン少を リ セ ッ トする。スペク トルを加算積分する場合は リセット せず前のデータに直接加算する。 この時 ラッチ, リセ ッ トの間はゲー トをオフとし,そ
の間に電圧制御パルスに ょって△Eだけ試料電圧を上昇させ る。Fig. l Measurement system of Appearance
Potential SpectroscoPyoL_上
SIGNAとPoTENTIAL BLOCK
﹁ ︱ ︱ ︱ COUN 匡 2T E・ Ej dE■路は測定精度を大 きく左右す るので部品選定には注意が 必要である。 い
)試
料電圧ブロックFig.5に
回路図を示す。 信号測定回路 と同 じ構成で入力 回路は入力 l kVに 対 し0∼10Vの
範囲の電圧 となるよう分圧 して いる。ま たサ ンプルホルダは入力に変調信号を合む事 も考え られ るので 100kHzまで無歪 となるよう,
コンデ ンサ,オ
C―F coNVERTER
―15
。 ← ∼ N押
INPREAMP
1‐V CONVERTER
S
SAMPLE a HOLD
OUT
SICNAL BLOCK
Fig.4 Signal block.
上
S
SAMPLE 3
I
HOLD
C―F CONVER TER
POTENTIAL BLOCK
鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
9巻
ペアンプなどの部品選定に注意する必要がある。サ ンプ リングモー ド,ホ
ール ドモー ドはそれぞれ10μS,100μS cAEPtbE である。 (C)カ ウンタブロック 信号処理および試料電圧処理回路で入力電圧に比例 し たパルスに変換 された信号はカウンタ回路で処理 しデ ィ スル イされる。カウンタ回路図をFig.6に
示す。 こ の回路はクロックパルス発生,各
タイ ミングパルス発生 を信号および試料電圧用のカウンタ,
ラッチ,
デ コー ダ, ドライバか ら成 っている。 タイ ミングパルス発生の タイ ミングチャー トをFig.7に
示す。 ここで発生す る パルスはサンプ リングパルス,ラ ッチパルス, リセ ッ ト パルス,ゲ
ー トパルス,プ
リンタ 。タイ ミングパルス, 電圧制御パルスであ リタト部 よリスイ ッチなどに よってス ター ト,エ
ン ドを制御す る。 信号用カウンタは 6桁 浮動小数点 としている。まず入 カパルスはゲー トされた分周回路へ送 られる。 この分周 回路は小数点位置に応 じて分周比を変更 して主カカウン タヘ送 る。主カ カウンタ は カウンタ, ラッチ, デ コー ダ・ ドライタヾを統一 したLSI ωN 7414の を用いてい る。試料電圧用 カウンタはそれぞれカウンタ, ラッチ, デ コーダ ドライバ用のLSIを
用い 4桁 としている。 そ の他試料電圧パルス,サ
ンプ リングパルス,電
圧制御パFig. 7 Timing chart Of counter b二 ock. ルス (S.Cパルス
),S,Cか
らのエン ドパルス は アー ス レベルが違 うのでフォトカプラとパルス トランスを用 いて レベル変更を行ない,波
形整型 して誤動作防止を行 なっている。出力 としては各カウンタともLED 7セ
グ メン ト表示器で表示 し,プ
リンタヘの出力 としてはバ ィ ナ リ,コー ド・ デシマル (B・C.D)パ
ラレル出力を と りだ している。 (d)プリンタ・ プロック カウンタブロックで得 られたデータはこのプ リプ リン かによって記録される。 ここで用いたのは電卓用 のプ リ ン トメカニズムであ り,10桁の 7セ グメン ト型の表示 と なる。プ リン ト方式はサーマルプ リン ト方式であ り,用
紙,プ
リン ト入力はそれぞれ規格のものを使用 した。 こPRINTER(Bα
))L.E.E
LATCH―
R
TIMING―
R
LATCH"P
L.E.D
257坤
卿呻
IN(9
COUNT
Fig.6ER BLOCK
Counter block. IN(P'RINTER(ECD〕
Pmrr
PULSE
GROUND SELECT
24V
PAPER ADVANCE
PRINTER B LOCK
Fig,8 Prttlter block・
のプ リンタは シ リアルプ リン トであるか ら
B.C.D.の
10桁分のノヾラレル入力を クロックと同期 したパルスでシ リアルに変換 してい る。 ブロック図およびタイ ミングチ ャー トをFig。3,Fig,9に
示す。 このブ リンタは将来 テープパ ンチャーと置きかえられる事も考慮して本体 と は別ケースに組み込 まれている。 RAPEnFig. 9 Ti■■i電 block. 仲
)階
段波ス ィープ 。ブロック この回路は試料電圧をデータレコーダによって制御し △Eご
との一定間隔のデー少を 得 るためのス ィープ 電 源の変形である。回路図をFig。 10に示す。原理 とし ては基準電圧に階段波を用い,差
動増幅,制
御回路か ら なる安定化電源である。基準電圧の階段波はデータレコ ーダか らのパルスをフォトカプラでアース レベル変換を 行ない5Vの
パルスとして整形入カ コンデ ンサにチャーBAR
SEGMENT
STttRCASE WAVE SWEEP BL00K
Fig。 lo Staircase wave sweep block.
ジする。次にパルスの立ち下が りに応 じて入カ コン デ ンサか ら電荷が くみ出されるが
,ダ
イオー ドのア ース レベル側が不導通のためその電荷は積分 コンデ ンサか らくみ出されパルスの立ち下が りに応 じて1 段づつ出力電圧が上昇する。3.
測 定 結 果 検 出方法は従来か ら用い られている方法であ り,試
作 した レコーダを ロック・ イ ン・ ア ンプの出力に接続 し微 分 スペク トルおよびその加算 スペ ク トルを測定 した。測 定に用いた試料 は純粋な Cr e9・995%)で
電解研磨の 後,超
高真空中にセ ットしスパ ッタリング,アニー リン グを行 った。測定条件は次の通 りである。 試料 Cr e9・ 995%) a b ⋮ 9 6 2”.呻
呻Ⅷ
呻
+24V
chart Of printer鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
9巻
259 エ ミッシ ョン6.OmA
ス ィープ速度 0・lV/Sec. 測定範囲550eV∼ 600eV レコーダ・ ゲイ ン40db 変調 周波数 5.5kHz 変調振幅 0.5Vr.m.s,1.OVr.m.s,2.OVr,mos。 ロ ック・ イ ン・ ア ンプ入力感度 10醇V
変調振幅 2,OVr.m.s.の ときのCTの
L3'L2ス
ペ ク トルを Fig.■ に示す。また積分 スペク トルを Fig.12に
示す。Fig.11は
従来X可
レコー ダを使用 して 得 られた結果 と同様 のスペク トルを示 している。また積 分 スペ ク トルはバ ックグラウン ドの傾きを直線近似 し, その直線に対する増減をプロッ トした。 このバ ックグラ ウン ドを直線近似 した積分スペ ク トルは高エネルギー側 にある傾きをもった増加が観察される。これは自由電子 に近い4S電
子の状態密度が寄与 していると考えられる がGrant等
じ)はその傾きはスペ ク トルに寄与す る原子 密度に比例すると考え定量化の試みを行 っている。 しか しバ ックグラウンドは軟X線
領域 では直線 よりも電圧 の1,15乗に比例す るとい う報告 もなされている。。)我 々の実験データか らバ ックグラウンドをこの値で補正し てやるとスペク トルの高エネルギー側に傾斜は存在 しな くなる。微分スペク トルと積分 スペ ク トルのしきい値は よい一致を示 している。積分スペ ク トルのしきい値は変 調振幅を 1・OVT.m.s.と 2.OVT,mosで行 った結果では 2.OVT.m.s.の 方が低 くなる。これは微分 スペク トルで も同様変調振幅値を補正す ることによって一致 した値が 得 られ る。The L3 and L2 SpeCtra oF pure chro― ml■m obtained by using the dgital recorder.
Fig。
12融
盈着
tr弩
す
生
評
eCtta of chromium(→ mOdulation amplitude l,O Vr.mls.
(b)mOdulation amPItude 2.O Vr.m.s.
4,結
果 の 検 討 このデジタル ●レコーダの精度 と ドリフ トに関 して試 料電圧 5.00Vに対 して較正 した市啄のデジボル (>ケ ダ理研)表
示 と製作 した レコーダ表示に差 は認め られな か った。 しか し信号測定 の下2桁と試料電圧の下 1桁 は 直流入力 5.00Vに対 してば らつ く。より正確なデータ を要求す る場合には更に精密な較正および部品の温度 ド リフ トを考慮すべ きである。ただカーブ・ プロッタを用 いてデータ処理をす る場合には現在確保 してい る精度で 十分実用になると思われ る。交流入力に対 して正弦波入 力およびバイアスをかけた結果,信
号測定では 3.10V のバイアスをかけ 50∼2kHz(OV∼
2.50Vr,m.s.)の 正弦波入力の場合±1%の
誤差内で動作 した。電圧制御 回路は短時間数十分程度では安定であるが長時間になる とオフセ ッ トがず浄て 最大 5mV/seC・ の 出カ ドリフ ト が見 られた。 これは使用 したオペア ンプ用電源の ドリフ トや制御用 トランジスタの発熱に より回路部品の温度 ド Fig.11リフ トな どの影響によると思われる。 しか し通常使用 し ている場合データ中での ドリフ トは認められないか ら問 題 とはな らない。さらに今後制御電圧範囲を拡大 した り より安定な 電圧 を得るためにはD―
A変
換 による 制御 や,ロ ータ リ・ リレーなどを使用 した方法を考慮すべき である。 プ リンタ回路はその機構上ノイズ源 とならない よう注 意 したが現在のところ,他
の機器に悪影響は現われてい ない。またプ リン ト時間も十分な早さであ り温度上昇も ほとんど認め られない。ただ注議すべき点は何 らかの誤 動作によリプ リン ト中 にクロックパルスが 停止 した 場 合,サ
ーマルプ リント方式のため異常に過熱 して断線や ヘ ッドの部分を焼き切ることがある。サーマルプ リン ト の弱点 として温度変化に対 してプ リン ト状態が変化する 事があげ られ る。 0℃ の場合 と50℃ の場合では相当の 状態変化がみ られ る。通常10℃∼30℃ の間ではそれ程 問題はない。 実験結果 については3.測定結果 で報告 したようにCrの
L3'L2ス
ペク トルの形状はこれまでにXヽY
レコーダを使 って測定 した形状 と基本的に一致する。0.5V,1.OV, 2.OVの
3種
の変調振幅に 対 しピーク強 度が 1, 1.7, 3.0と なって お り信号量 が変調振幅 と ともに増大 している。試料電圧に関してL3
ピク
が 57じeY付
近 にL2ピ
ク が580eV付近にみ られる。積 分データにおいては ピークの頂点の位置はピーク間隔よ り変調振幕が十分小さい時は変調振幅には影響されない と考え られ る。5.ぉ
ゎ り に このシステムはAPS用
として試作 したものであり図 に示す ように必要なデー タが十分 な精度で得 られ るが応 用 し得 る範囲はAPSに
限 らずか な り広 い もの と思われ る。 一般 に掃 引電圧Eを時 間 とともに変化 させ △Eぉ
きに,電
流Iを測定 しデ ジ タル化 してプ リン トお よび計 算機処理 を行 な う実験 に使用す る ことが可能で ある。特 に入手容易 な市販 の電子部品のみを使用 して比較的簡単 に製作 し得 る点 が長所であると思われ る。 参 考 文 献 1)加藤益:応用物理43(197o360.
め 力口藤益,小
西亮介:応用物理47o970339.
3)小
西亮介,桐
林新―,国
川憲英,加
藤益 :真空 18 (1975) 473.OR.L,Park,J.E.Houston and D,Go Schrei―
ner : Revo Sci. Instr.,41 (1970)1810.5)A.KIuge:Rev.scI.Instrum.,46(1975)1179.
6)Jo Verhoeven and J. Kistenmakor i Surface,,50o975)388.
つ
S,AndersOn,H.Hammarq
st and C,Nybe―rg:Rev.sci.Instrum.45(1974)877.
めJ.T,Grant,T,W.Haas and J.E.Houston:
Proc, 2nd lnteFnat, Conf. On Solid Surfaces, Kyoto,1974, Japan.J. appュ. Phys. Suppユ.2. Pt.2,p. 811.