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花崗岩に関する諸問題 (8) 山陰地方産花崗岩質岩石について(第1報)

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(

8) 山陰地方 産花 尚岩 質岩石 について (

1報)

島根大学文理学部地学教室

目 次 ま え が き 花 尚岩地域 の地質 と岩石 の類別 砂鉄の種類 と母岩 との関係

角閃石 ・黒雲母花 尚閃緑 岩

角閃石 ・黒雲母花 尚岩 帆 黒雲母花 置岩

細粒黒雲母花 尚岩及 び黒雲母花 尚斑岩

王分岩中の花 尚岩包含物 ま え が き 筆者 は山陰各地 の花 尚岩地帯 を観察す る機 会 には しば しば恵 まれてい るが ,中で も島根 県 の委嘱によって実施 した次 の3回の調査 は 相 当に詳純 な ものであった.その第1回は同 県仁多都鳥上村 と横 田町に於 ける砂鉄の賦存 状態 の調査であ って, これ は1951年3月か ら 同年6月に亘 る期間に過 2回ずつ延約20日間 行 った野外作業 であ る. この時 は上記2ケ町 村地 内は勿論,斐伊川 の本流 と

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の支流 の 沿線に於 ける花 尚岩地帯 の地質 を観察 し,特 に砂鉄の種顎 とその母岩 の岩質 との関係 を明 かにす ることに努 めた. 第2回は1953年8月中に2週 間石見部 の安 演 ,邑智及 び那賀3郡 を巡見 したことであっ て,一般地質 と特 に花 尚岩類の分布状態 を調 査す るのが主 なる目的であ った. この企 は花 尚岩地帯 を特殊土壌 の地帯 として認 めて貰 う †こめに政府 に提 出す る調査書類 を作製す る必 要 か ら行 った もので,急いで実施すべ き必要 か ら自動車 を利用 して調査 した ものであ る. Ⅵ 神門川流域 の含角閃石黒雲母花 尚岩 Ⅶ 半花 置岩類 Ⅶ 斑鳩岩類及 び閃緑岩類

(附)黒雲母花 園岩 (鳥取県小 鴨鉱 山 附近産)

石英斑岩顎

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I 玄武岩類 む す び 従 って詳細 な る観察 は出来 なか ったが,広 い 地域 に亘 っての花 尚岩地帯 の地質 を概観す る 上には相 当の効果が あった. 第3回の調査 は1953年9月以降,翌年の春 に亘 る期間に約1ケ月 の 日数 を費 して横 田図 幅 と根雨図幅の一部 を含 む地域 の地質調査 を 実施 した ことで あって,第1回の調査以外の 地域 の地質 を明かにす ることがで きた. 第

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回 と第

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回 とに菟集 した試 料の中か ら 精選 され た20余種 の試料 は1955年か ら1956年 に亘 る期間に化学分析 を実施 したので,それ 迄に観察 していた顕微鏡的性質 と併せ てそれ らの岩石学的性質が略 々判 明 した訳 であ る. ここでは此等花 園岩質岩石 を一万 で は砂鉄の 母岩 として見 た場合 と,他方 では金属鉱床 例 えばモ リブデ ン鉱床 な どの母岩 として見 た場 合 とに於 ける夫 々の岩石 の特性 を,主 として 化学成分並 びに岩石 の組織等の性質 によって 明かに したい と思 うのであ る.地理 的に云 え ばこれ ら花 園岩顎 は出雲の各郡 に分布す る も のであ るが,その中で砂鉄 を採取 してい るの

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山陰地方産花 尚岩質岩石 について (第1報) は斐伊川本流の上流に当る仁多郡の奥地であ ら,又モ リブデン鉱床の分布 してい る所 は能 義郡の西部か ら大原郡 の東部に及ぶ地帯であ る.従 ってこの研究で実験に用いた試 料は主 として上記の地域に産す る ものであるが,な お化学的組成の水平的変異 を知 るために八束 郡内即 ち宍道湖流域 に産す る ものや,出雲の 西部の神門川流域産の試料を も検査す ること に した. ここには山陰地方産花 園岩質岩石 に ついて述べ ることに してい るが,化学分析の 及ぶ範囲は上記の通 りであるか ら, これを第 1報 として,石見部の試料や鳥取県産 の もの については又他 日の研究にゆず る こ と に す る. 花 尚岩地域の地質と岩石の類別 出雲の地質はこれを大観すれば奥部の花 尚 岩地帯 と海岸沿いの第三紀 層地謂 とに分 けら れ るが, ここでは後者については触れない こ とにす る.花 梅岩地帯 と云って もその地域内 に露 はれてい る岩石 は普通の所謂花 尚岩ばか りでな く,花 尚岩 と成因的に関係があると見 られ る半花 尚岩や閃緑 岩が至 るところで花掃 岩 を貫いて存在す ることは出雲ばか りでな く 他の花 嵐岩地域で も同様である.その他花 尚 岩 を貫通す る岩脈類には母岩 と成因的に関係 のあると思われ る ものや,然 らざるものがあ り,また花 尚岩 を被 うて存在す る噴出岩 は勿 論花 尚岩 とは成因上関係 はないが,花 街岩地 帯 と総称す る地域 にはこれ等各種 の火成岩類 もしば しば見 られ る. 出雲の花 尚岩 は大 きな底盤 と思 はれ,飯石 郡の一部を除いては,之に貫通 されてい る古 生層を見 ることがで きない. この点では石見 の西部の古生層地帯では花 尚岩の岩株が点 々 と古生層 を貫いてい るのが見 られ るか ら,出 35 雲の方では一層よ く削刺 されてその内部が露 出 してい る もの と解せ られ る. このよ うな現 出状態や,後にのべ る化学成分の斉-性 など か ら, これ等花尚岩類は岩衆が底盤の状態で 固結 した生成物 と筆者 は解釈 し,或 る調査者 が清久鉱 山附近 に産す る岩石 に変 質 砂 岩 と か,片麻岩 とか云 う名称 を用ゆ るのに対 して は賛成で きないのである.筆者が これか ら述 べ るの も花 尚岩 は堆積岩が熔 けた ものか ら来 た と云 う説は採 らないで,岩柴に由来 したと 云 う古い考へ万 に もとずいてい る. 花 尚岩地帯 に於 ける堆積岩 は第四紀層であ って,河成平野 と河岸段丘 とがその主 なる地 形 として現 はれ る ものである,併 し斐伊川の 本流上流である鳥上村や,飯梨川の上流比 田 村 な どでは,花 尚岩の表面 に厚 さ5m 内外の 成 層岩が被 うていて,僕,砂,粘 土 よ り な り,烏上村では海抜500m 位 までの所 に分布 してい る. これ等は広 い面積に亘って分布 し てい るか ら河岸段丘ではな く,あるいは往時 の湖底の堆積物でないか と云 うことを想起せ しむる ものがある.併 しこの間題 は花 園岩 の 風化即 ち砂鉄の量の問題 と関連す る事項であ るか ら, こ ゝではこれ以上触れない ことにす る. 花 尚岩数を砂鉄の母岩 として見 る場合 も, 亦金 属鉱床 を腔胎 してい る母岩 として取 あず か う場合で も,その岩石学上の特性が問題 と なるか ら玄では主 として花 尚岩質岩石 の岩石 学的性質について筆者が調べた結果を記述す ることにす る.併 し第三紀層を貫 く班岩や輝 禄岩中には.花 尚岩片 を包含物 として含む も のがあって,第三紀 層下に潜 む基盤の地質を 暗示す る資料 もあるか ら, このよ うな地質学 上か ら見て興味があ り且つ重要 な資料は之 を

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36 山 口 掲 げることに した.又直接花 尚岩 とは成因関 係 を異 にす ると思 はれ る噴出岩 の1.2につい て も花尚岩地帯に しば しば霜はれ る岩石 とし て,序 なが ら記載す ることに した 次 第 で あ る. このよ うな意味か ら出雲の花 尚岩地帯で 見 られ る岩石 を次のよ うに類別 して,各々に ついての性質を記述す ることに した.

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角閃石黒雲母花 尚閃緑岩

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角閃石黒雲母花 園岩

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黒雲母花 尚岩 Ⅳ.細粒黒雲母花 尚岩及び黒雲母花 尚斑岩

V

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拍 岩中の花園岩質包含物

Ⅵ.

神門川流域の含角閃石黒雲母花 園岩 Ⅶ.半花 尚岩類 Ⅷ.斑欄岩類及び閃緑岩顎

Ⅸ.

(附)黒雲母花園岩 (鳥取県小鴨附近 産)

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石英斑岩類

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玄武岩類 砂鉄の種類 と母岩 との関係 筆者 はさきに花 南岩類を砂鉄の母岩 と云 う 見地か ら研究 したことを述べたが, こゝに簡 単に砂鉄の種類 とその性質並びに分量,及び 種類 と母岩 との関係 につ き一言 して置 くこと は筆者の研究の 目標 とした所 を知 る上に必要 と思 う.砂鉄の種類に関 して製鋼業側 を代表 す ると見てよい 日立製作所安来工場研究所長 小柴博士の記す る所 によれば,母岩が異 なれ ば砂鉄 も亦性質が異 なるのであるが,併 し大 別 して

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種 に分つ ことが出来 ると云 う.即 ち その1は真砂 (まき)であって,他の1は赤 目 (あこめ)である. この2種 に区別す るこ とは古代か らの鉄穴師 (かんな師)即 ち製鉄 製鋼業者達か ら伝わった もので,今で もこの 名称 をつかって砂鉄の種類を区別 してい る. 鎌 次 いわゆる真砂々鉄 と云 うのは鉄黒色の光沢あ る磁鉄鉱粒であるが,赤 目砂鉄 と云 うのは色 が赤褐色を帯びてい る磁鉄鉱 であ り,その色 は表面が風化 した為 と思 はれ る.色だけで一 見 して両者の区別 は容易である. 砂鉄については別に稿 を改 めて報菖す る機 会があると思 うが, こゝには簡単にその特性 をのべ,かつ両種砂鉄 と母岩 の岩質等につい て述べて於 くことにす る.安来製鋼所の中村 技師の教 えによれば,兵砂 は質に於て勝 り, 量 に劣 り,赤 目は質は劣れ ど量が多い と云 う ことになるよ うである. こ ゝでは定性的の記 述 にと ゞめて於 くが,赤 目砂鉄には燐やチタ ンが兵砂の夫等に比 して多いため製鉄の原料 としての特性に欠 げる所があると云 う.特 に チ タンが多ければ熔融体が粘 り気が強 く熔鉱 櫨か ら流れに くい と云 はれ る,その為安来工 場ではチタンの多い ことを最 も忌 むよ うであ る. この意味か ら真砂 々鉄が原料 としては勝 れてはい るが,併 し反面真砂 は含有量が少 な い為に需要量 を採取出来ない と云 う難点があ る.そこで実際には両種砂鉄 を適 当に混合 し た ものがその原料 として使用 されてい る訳 で ある. 砂鉄に真砂 と赤 目との

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種 あることについ ては, これまで製鋼業者にはその理由が判っ ていなかったよ うである.筆者 は安来工場馬 上分工場主任並河孝義氏の案内で砂鉄採取の 現場 を見せて貰 って,その風化物の母岩 を確 かめることが出来 た. これによれば,いわゆ る真砂 々鉄 は普通の黒雲母花 尚岩の風化 した ものか ら水簸 して得 た もので,赤 目砂鉄は閃 緑岩 の風化物か ら採取 した ものであることが 判った. この事 は筆者に限 らず地質学者が見 ればす ぐに判 る事柄である.

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山陰地方産花 尚岩質岩石 について (第1報) 然 るに又いわゆる花 菌岩 と云 はれ る岩石の 風化物か ら採取 した真砂 々鉄 であって も,そ の産地 によって良否があ ることが長い間の製 鉄業者の経験 によって認 め られていて,現代 まで製鋼業 として残っ たのはその最 も良質の 砂鉄 を出す地域 であると云 うことが結 果か ら 見 て云 え るのであ る.その地域 と云 うのは斐 伊川 の本流 を奥地 に潤った所 で,烏上村 を中 心 とす る一帯の地域 であ る. この地帯 は神話 で名高 い船通 しLlの北恵 に当 る所で あるが,そ の方面 の考証 は史家の領域 であ るか らこ ゝに は触れ ない ことにす る. この間題 を岩石学的に検討す る為 に,宍道 湖 の流域か ら斐伊川 の本支流 に沿 うて多数 の 試 料を蒐集 し,その薄片 の検鏡 と共 に幾つか の地点 の試 料について化学分析 を実施 したの 37 が本 研究の主要 な部分 を占めてい る.倉析 の 結果 は後で示 す通 りであ るが,結論か ら云 え ば,島 ヒ地区の良質の真砂 々鉄 を供給す る も のは角閃黒雲母花 尚岩 であ って,花 尚岩 の縁 辺 部に当 る宍道湖流域又 は安伊川下流域 に産 す る角閃黒雲母花 嵐閃緑岩 の風化物 よ り採取 した砂鉄 は質が悪 い と云 うことにな る. 以上の よ うな砂鉄 と花 昂岩質岩石 の種類 と の関係 の夕日こ,本 籍 では金属鉱床 を歴胎 して い る花 尚岩 の特性 について も触れてい る.花 尚岩地帯 は更 に又 ウ ラン鉱 の賦存可能 の地域 として注 目の的 となった感が あ る.併 し本研 究 は ウ ラン鉱床 の探査 の始 まる遥か以前の調 査 に基 いて実施 した ものであ るか ら, ウ ラン 鉱 の問題 については全 く白紙 であ るこ とを断 って置 く. 第 1 表 Granodiorites 産 地 No.1 八束郡玉湯村玉造温泉 ,湯薬師附近,温泉試掘 地下110mの所 のCore・ No,2 八束郡宍道町の南 ,木次線沿線で第 3紀層地符 よ り最初 に花 尚岩地域 に入 る所 . No.3 大原郡幡屋駅の南約500m.冨 田達教授 が ジル コンを分離 された もの と同一の試料 . No.4 大 原郡大束駅の北西 ,赤 川の下流 々域産

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38 山 口

角閃石黒雲母花 向閃緑岩 この種の岩石 は斐伊川流域の下流部,即 ち 花 尚岩体の外縁部 を占めるものであって,宍 道湖の流域か ら,斐伊川の最 も下流で合流す る赤川の流域に亘 って分布す るもの ゝよ うで ある.岩質 は中粒乃至粗粒であって暗黒の鉱 物に富み,一般 によ く風化 してい る. 鏡下では,石英少量の正長石,多量の斜長 石 ,及 び黒雲母 と角閃石 とよ りなる岩石であ って,斜長石 はAb68An。2の附近の ものであ る.次の4種の化学成分 とその平均値 を掲 げ る. これ等各分析の結果か らNornlの百分比を 計算 した値があるが, こ ゝには省略す る.吹 にこの種の岩石が奥部の方 え如何程更に分布 坪 次 してい るかは, もつ と多 くの試料を集 めて分 析 して見 なければ判明 しない.要す るに之の 種の岩石が花 尚閃緑岩 に属す ることは鉱物成 分 と化学成分の両方面か ら見 て明 ら か で あ る.

角閃石 ・黒雲母花 嵐岩 キ ノキ 大原郡木次町附近 よ り上流の斐伊川沿線で 集 めた多 くの試 料によれば,花 園岩 の組織 は 前地域の もの と大差 な くして中粒乃至 は粗粒 であ るが,鏡下 に見 られ る長石類の中で正長 石 とペル ト石の量が増 して斜長石の割合が減 じてい る憤向が明 らかに認 め られ る.両者の 割合は略々等量か ら正長石類の量が勝 る場合 ハ ウチ ダこ もある.又船通 山の麓に当 る烏上村羽内谷 と カンナ パ 云 う鉄穴場の母岩 中には微斜長石 を認 める.

第 2 表 HornblendeBiotiteGranite

Total l 99.97 r 99.89 1 99.40 E 100.54 i 99.97 産 地 No.5 大 原郡木次町 (現在雲南 木次 町) の南端 No.6 仁 多郡 温泉相場村 温泉 の南 (現在 の雲南木次 町湯村) No.7 仁 多部 三沢村水 引,斐伊川左岸継 壁 ノ、T)チ ダ こ No.8 仁 多都 鳥上村 羽内谷 ,之 の地 は船通 山の北麓 で鳥取県 との境界附近 にあって砂鉄 採取 を カ ン + メ す る所 謂鉄穴場 刀所 であ る.比 の 一帯 は最 も優 良 な る真 砂 々鉄 を産 す る.

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山陰地方盛花 尚岩質 岩石 につ いて (第1報) 又有色鉱物 としては黒雲母が主要 な ものであ り,角閃石 の員 は少 し減 じた傾向がある.羽 内谷の試料では上の2鉱物の州 こ少量の斜万 輝石が認め られ る.次の4ヶ所で蒐集 した試 料を分析 した結果 は第2表 に示す 通 りで あ る. ハウヂダニ 大原郡木次町か ら仁多郡鳥上村羽内谷 まで は直線距離に して27km に も及ぶか ら,上に あげた4ヶ所の試料は同一岩体の一部である か否かは勿論明かでない.併 し顕 微鏡下の性 質 と化学成分 とを較べて見れば大体似 ている か ら此等を角閃石黒雲母花 尚岩 と呼ぶ ことに す る.就中船通山方面に近づ くにつれ.即 ち 花園岩体の中心に近づ くに従 って幾分で も酸 性 とな り,又 アルカ リに富 む もの と成 る憤向 のあることは化学成分や,羽内谷産 に微斜長 石 を含む点か ら認 め られ る事実である.真砂 砂鉄は烏上村 を中心 とす る地域 に産す る もの が最 も優良であると長い経験か ら云 はれてい る.是 は母岩では夫れ程明瞭には現 はれない が,砂鉄 その物 を分析 して見れば確 かに真砂 は赤 目よ りも

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2の量が少な く,又前節 に 述べ た花 尚閃緑岩の風化物か ら水選によって 得た砂鉄 も,其の

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2の含有量 は確かに烏 上村産の ものよ り多 く含んでいることが,珍 鉄の分析の結果か ら筆者が知 り得た事実だか らである. 馬上地区産の砂鉄が タタラ精錬の材料 とし て最 も優秀であることは古来か ら業者 によっ て認め られ,またその理由 も安来工場の技術 者 によって澄明 されてい ることは上記の通 り であるが,筆者 の見解 によれば尚他に重要 な 理田がある もの と思考 してい る.それは砂鉄 の量の問題であって,筆者が各地の風化土 を 水食 して得 た砂鉄の分量か ら導かれた推定で 39 あ り, こ ゝでは唯結論だ けをあげて置 くこと にす る.砂鉄の量 は母岩 の風化の程度 による J'ンナパ ことは実際に稼行中の鉄穴場やその他の地方 の岩石表面 の土層の厚 さや風化の状態等か ら 容易に理解せ られ るところである.筆者 の見 る所では,この地域には尚比較的平坦 なる表 面 を有す る山稜 を有 し,その上には前にのべ たよ うな薄い堆積岩 に被 ほれた所があ り,又 位置 は奥部であると云 うよ うな地形,地質, 並 びに気候 な どが風化作用に対 して好条件 と な ってい る もの と思考す る ものである.併 し この間題にはこれ以上触れない事にす る.

黒雲母花 鳥岩 出雲の東部 を占める能義郡の奥部は黒雲母 花 尚岩 よ りな り,飯梨,伯太の両河川が之の 地帯 を貫流 して前者 は殊に多量の砂 を流出 し 第

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上 山 佐 産 地 No.9 能 義郡 山佐村上 山佐 , 山佐川 の支 流 に沿 い布 部村に通 ず る交 通繰 上 の 山佐側にあ る石切 場

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40 山 口 ている.之 の花園岩 は有色鉱物 として黒雲母 だけを含んで角閃石 を欠いでい る.長石 は梢 紅味を帯び,鏡下では正長石 とペル ト石 とが 略々等量に含まれ,斜長石の量 は極 めて少 な い.岩石の組織 は中粒であって伯太川 の下流 では更に粒が小 さい.化学成分は次の通 りで ある. 上表 によれば黒雲母花園岩 は著 しく酸性で あって,酸化鉄,苦土,石欠に乏 しく, アル カ リに富 むのが特徴である.古老の間に伝は る口碑によれば, この地域の砂鉄 も優良 であ った らしく,また所によっては苦精錬 した鉄 浮の跡 もしば しば見受 けられ る.併 し此の地 区で現在砂鉄の採取 を しないのは風化 した土 層が一般 に薄 く,量の点 に於て採算が とれな い もの と忍 ばれ る.安来工場 は伯太川の河 口 に当る安来市安来町にあって.飯梨,伯太両 河川流域 は距離の点では最 も近いのに,此の 地域に砂鉄を採取す る副業が近 世になって起 らなかったのは,このよ うな事情 を物語 る も の と恩 はれ る. この地域の黒雲母花 尚岩 は鉱物成分 と化学 成分 との両方面に於 て,馬上地区の角閃黒雲 母花尚岩 とは異 なる別種 の貫入岩体 として存 在す るもの と恩はれ る.併 し両者の境界は何 れに当 るかば更に詳細 な調査を しなければ判 らないのである. この窯雲母花園岩の北側 は 第三紀層に被 ばれてい るが,飯梨川の左岸地 区では広瀬町の北東約3km,或 る寺 院 の 北 側 の谷 を界に して断層 を以て接 してい る.之 の東側の河成年野の中にある鷺の湯温泉 はこ の断 層 線に沿 うて湧 出す る温 泉である.伯 太川の流域では第三紀 層や,同時代に噴出 し た安 山岩 は遥か南方 まで入 り込んでいて,旧 町村名で云えば井尻村 と赤屋村 との村界の少 錬 次 し北側で花園岩 は安山岩 に被 はれてい る.

細粒黒雲母花 尚岩及び 黒雲母花 尚斑岩 飯梨川 の支流 山佐川の左岸か ら

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斐伊川の

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支流である久野川 の上流地区の右岸 に当 る 地域に亘 る所,即 ち行政地茎では能義郡の西 部か ら大原郡の東 部にか けては他の花崩岩が 分布 していて経済的見地か ら重要 なる一地区 を形成 してい る. この種 の花崩岩 は鉱物成分 の上では前に記 した黒雲母花 尚岩 に属 してい るが,観織の上では一層細粒であって,一般 に風化の程度 も進 まず堅硬である.又或 る地 戟,例へば山佐川 の上流奥 田原方面では黒雲 母花 尚斑岩 と呼ぶべ き組織 を有す る 所 も あ る.大原郡 の方 では下久野駅の附近では後で 述べ る半花 尚岩の岩体 に貫かれてい る もの と 解せ られ るが,何れの岩体 も大規模の岩 体で あるか ら詳細 な地質関係 は明かでない.又能 義郡 と八乗郡及 び前者 と大原都 との境界 をな す山稜地帯は安山岩 や石英粗面岩等第三紀の 火山岩 体に被 ほれている. 本岩 の顕微鏡下の特性は,鉱物成分の種類 に於 ては前の黒雲母花 置岩 と同様であって, 唯組織の上で細粒又は斑状構造をなす点 を異 にす るだけである.化学成分は第4表の通 り である. この表 によれば化学成分は晴々黒雲母花歯 岩 に寮似 してい るが,併 し又明瞭に1地区を 劃 しているのが看取で きる.肉眼的の特徴は 細粒 の構造である事で,従って風化 し難 く, 谷は峡谷 をな し,地形 は概 してけわ しい.又 半花 尚岩 に貫かれ る処が多 く,又郡境,村境 等ば第三紀の火 山岩 に被 ばれている.従 って この岩石の地域 は一般 に交通 も不便 な所が多 い. この花掃岩中には山佐,大栗,清久等の

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山陰地方産花 樹岩質岩石 について (第1報)

第 4 表 FineGrainedBiotiteGranite

41 Total 】 99.15 1 99.81 1 99.60 産 地 No.10能 義郡 山佐相上 山佐 山佐 モ リブデン鉱地区 ,山佐川河底 No.11 山佐村奥 田原 ,奥 田原小学校附近. No.12大 原郡大 東町阿用地区 ,清久鉱 山に於 ける試錐 のCore. モ リブデン鉱床 を肱胎 して居 り,鉱産資源 と 云 う点か ら見て花 掃岩地帯中最 も喜要 なる地 域 をなす もの と云 うべ きである.之の断定は 他に も適用で きて,三瓶火山附近の鉱床 など も同様 な細粒花 尚岩地帯に賦存 している. 第 次に細粒黒雲母花 置岩 が上記の地域 とちが って,別の1地区をな してい る所がある.そ れは伯太川の上流部の大体左岸に当る所で, 能義郡赤屋村か ら井尻村 を経て大塚村に及ぶ 南北に細長い1地区をな し,地形 も概ねけわ

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表 産 地 No.13能 義部赤 星村上十年畑

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しい所である.岩質は上記の もの と略々同様 であるが,その化学成分は次表の 通 りで あ る . この岩石 は花 園岩の中では最 も酸性に属 し ている.その組織は細粒であるが,上記の岩 体のよ うなモ リブデン鉱床 などは之迄の処で は未だ見出 されてはいない.

瑚岩中の花 南岩質包含物 島根半島の 日本海に面す る北海岸に片江村 字七類 と云 う部落がある.その地の大体 の位 置 は弓ヶ浜半島の北岸にある境港の略北に当 る所である.筆者は数 'lT=前七類の海岸の乗 を 探査中,海岸の凍中に径

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位の花 園岩 の 棟 を見出 したのである.之の附近 は第三紀の 凝灰岩 と之 を貫 く碩 岩以外の岩塊が天然には あるはずはないので,附近にある脈岩 中の包 含物にち担 、ない と判断 して少 し く探 し た 処,す ぐに海岸に沿ふて突出せ る甥 岩の岩脈 中に包含物 としてその半分が残ってい るのが 見つかったのである. 肉眼的には白色の石英 と長石の問に点 々 と 黒色の鉱物があるが何かよ く判 らない.鏡下 に検すれば之の黒色物は黒雲母が熱 によって 変質 した もので酸化鉄に化 した ものである. その他長石貫 も煩か され,特 に石英 と長石 と の接触部が多 く熱変成 を受 けてい る.之の岩 塊 の化学成分は次の通 りである. 上の分析表中,K20が極 めて少ないのは黒 雲母 と正長石 とが熱変質を起 してその中の加 里分が脱 出 した ものでないか と思 はれ る. こ のよ うな点 を除 けば化学的組成 は時々黒雲母 花福岩 に頬 している. この岩塊 は輯岩中の-包含物に過 ぎないか ら,或 る地域 を占める地 質の単位 としては何の意味 も持 たない,併 し 島根半島のよ うな第三紀層の下 には,花 岡岩 が潜在 してい ると云 う重要 な る手掛 りを示す 事実 として貴重 なる資料 と云 はなければな ら ないであろ う. カン ドカハ Ⅵ 神門川流域の含角閃石 ・黒雲母 花 尚岩 出雲の南西部に当 る飯石郡の一部 は神門川 の流域に属す る所で,中国山脈脊梁 の北斜面 を占めてい る,この地方の地質 はまだ詳 しく 調べ る機会を有 していないが,次 の 1試料の 検査によって花尚岩地域中の1岩石区をなす ものの よ うである. 第

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七 類 産 地

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八東郡片江村字七類,七類湾南海岸

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山陰地方産花 尚岩質岩石につ いて (第1報) トンパラ ミ 検査に供 した試料は飯石郡頓原町地内の弥 -ヒン 山の麓で花尚岩の石切場で採集 した ものであ る.鏡下では角閃石 を極 く僅かに含む黒雲母 花 尚岩であ って,斜長石の量 は正長石の夫 と 略等 しい.化学成分 は次の通 りである. 第 43 長石 との細粒 の集合体で情状に見 え る.鏡下 では長石 は主 として正長石 であるが,石英 と 正長石の列に微量の黒雲母を含むのが普通で ある.半花尚岩歎中で鉱物成分 として珍 らし い ものを含む ものがある.それは微斜長石 で 7 表 産 地 ミセン No.15飯石郡頓 原町地 内,弥 山の尭 Ⅶ 半 花 尚 岩 類 本節 に掲 げた半花 尚岩類 は古 い解釈では花 南岩か ら分化 して生 じた岩脈 と云 うことにな っているが,筆者 も出雲地域の花 尚岩か らな る各所に之 を貫いてい る半花 尚岩類は同様の 成因関係 を有す る もの と解釈 して取扱 うこと にす る.半花 置岩類の現出の状態 は種 々の厚 さの岩脈 として花 嵐岩 を貫いてい るのであっ て,その薄い ものは僅かに数 センチメ- トル に過 ぎない ものか ら,時には大 きな岩体にな ると長 さ15kmを超 え,幅5kmに も及ぶ もの まであって,斯様に大 きな岩体の ものになる と花 尚岩 との地質関係 は判明 し難 い ものがあ る.そのよい例 は斐伊川 の-支流である久野 川の流域 を構成す る もので,その連続 は東方 山佐川の左岸にまで及ぶ もの ゝよ うである. 半花 尚岩類 は淡 色を示 し,主 として石英 と あって,之 を含む ものは,三成町 の 北 西 約 6kmの所の俗称水引 と称す る所で,地図上で は三沢村林原 と北 原 との中間で,斐伊川左岸 の絶壁をなす所である.此の地点では角閃石 黒雲母花 尚岩 (第2表,No・7)を半 花 置 岩 (No.16)と斑構岩 (No.22)とが相接 し て 岩脈 として貫いてい る. 此の半花 尚岩 は後で分析表で明かなよ うに 最 も酸性であって,又 アルカ リに 富 ん で い る.鏡下に検すれば石英,正長石,微斜長石 及び少量の黒雲母 よ りな り,微斜長石の量が 多いよ うに見受 けられ る.微斜長石 は見事 な る格子状双晶を示す.微斜長石の努開片で入 念にその屈折率 を測定 して見 た結果 は次の通 りである.即 ちn1-1.518n2-1・525が得 ら れた. 半花 尚岩 は各地で集 めて検鏡 して見 たが,

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44 微斜長石 を含む種類 は上記三沢村水引だ けで ある.半花 尚岩が若 し熱水の作用 を受 けると 正長石 は変質 して白雲母になるのが見受 けら れ,調査地域で も湯村温泉地区でその例 を見 ることが出来 る.この種 の変質 作用が更 に進 めば絹雲母鉱床 と呼ばれ,飯石郡三刀屋町附 近に産す る ものは現に稼行 されてい る. 半花 尚岩類の化学成分 は次の通 りである. 第 8 表 又半花 尚岩が熱水変質 を受 けた ものは絹雲母 鉱床 として稼行 されてい ることは前に述べ た 通 りである.又活久鉱 山では細粒黒雲母花 尚 岩 と半花 尚岩 (No.18)とが輝水鉛鉱床 を 肱 胎 してい る母岩である. このよ うに広 い地域 に分布 してい る大規模の半花 尚岩 は金屑鉱床 の母岩 であることは注 目すべ き事実である.

斑横岩類及び閃緑岩類 A plites

N o.16 1 No.1

7l

No.18 No.19 】 No.20 l No.21 水 引 F 若松谷 E 清 久 1 湯 村 E 桂 ケ谷 】 下久野 Tota1 - 99.73 【 100.38

1

99.71 産 地 No.16 仁 多部 三沢村水引 (北 喋 と林原間) No.17 八束郡熊野村若松谷 No・18 大 原郡大東町,阿用, 靖久鉱 山 No.19 仁 多郡温泉村湯村温泉地域 No.20 仁多郡鳥上村桂 ケ谷 No.21 大原郡大東町,下久野 半花 尚岩 と鉱産物 との関係について一言す る.先 づ砂鉄採取の対象 として考へ ると,半 花 尚岩 は一般 に風化 し難 いか ら砂鉄 を採取す る場合は稀 であるが,唯例外 として烏上村佳 ケ谷では,半花 梅岩 と共に存す る閃緑岩の風 化物 と混 じて1951年度 には砂鉄を採取 した. 花尚岩地帯に於ては半花 尚岩 は単独に岩脈 として前者 を貫いて存在す ることが多いが, 閃緑岩 はほ とん ど常に半花 尚岩 と相伴いて現 ほれている.か よ うな場合には両岩 とも数 メ - トルか ら数十 メ- トル,時には更に大 なる 岩体 をなす こともある.半花 尚岩 と閃緑岩又

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山陰地方産花 樹岩質 岩石 について (第1報) は斑欄岩 の よ うな黒 白両種 の岩 石 が岩 RjF(とし て相伴 な って花 嵐岩 を貫 いて存在す る ものに つ き,岩 石学 の初期 には補岩 脈 と祢 して花 園 岩 梁か ら分化 して生 じた と解 してい たが,筆 者 は今 で も之 の解釈 でい ゝと思 ってい る.舵 現在 の地域 で は完全 な分化生 成物 で あ る燈 斑 岩 は見 出 されて はいない. 閃緑岩 は花 置岩 に比 して 色が暗 色で あ り, 細粒 で堅硬 であ る.鏡下 に放 て は多 くの産 地 の ものは斜長石 と角閃石 とよ り構成 され てい るが,之 の列黒雲母 を含 む もの,石 英 の少量 を含 む もの,多少 の正長石 を含 む もの等夫 々 の試 料 に よ って異 な るよ うで あ る.文化学成 分 も産 地 に よ って多少 の相違 が あ るが ,大体 か ら見 て閃緑岩 の範 囲 に属 す る.併 し三 沢村 45 水 引 に産 す る もの は (No.22)最 も塩基 性 で あ って,寧 ろ斑欄岩 と呼 んで もよい もので あ ザ ツカ る.斜長石 の組成 は三 沢村字難 家産 の 閃緑岩 (No.23)で はAb56An44で あ るが,その近 所

の同村水 引産 の斑嘱 岩 で はAb65An35-Ab56

An44で両者 ほ とん ど変 らない. この よ うな性 質 か ら考 え る と, この種暗黒色 の岩 石 は化学 成分 は夫 々或 る範 囲 内に変異 が あ るが, これ らは斜長石 と角閃石 または黒雲母 との相互 の 分量 の相違 か ら超 る結 果 と思 考 され るよ うで あ る. 次 に掲 げ る化学分析 の試 料中,No.22三沢 村水 引産 の もの は,No.16の半花 尚岩 と相接 して喜 ばれ,又湯村産 の No.24も半花 揖岩 No.19と相伴 抄,桂 ケ谷 で も閃緑岩 (No.25) 第 9 表 GabbroandDiorites 産 地 No.22 仁多郡 三沢村水引 (北原 と林原間) ・群■ソカ 7コメ No 23 仁多部 三沢村雑家 (赤目砂鉄の母岩) No. 24 仁多郡 温泉村 爵村 (温泉 の泉源) LTコノ No・25 仁多郡鳥上村桂ケ谷 (赤 目の母岩)

(13)

46 山 口 と半花 尚岩

(

No

.

2

0

)

とは相随伴 して露 出 し てい る.又湯村では温泉 は閃緑岩の節理か ら 湧出 している. このよ うな斑欄岩及び閃緑岩 の数種 について化学成分 を調べ た結果は次の 通 りである. 上表 を子細 に検討 して見れば

Si

0

2の相違 に対 して塩基の中の

MgO

が最 も変化が 目立 ち,之に反 して

CaO

や アルカ リ等は余 り変化 がない.之の点か ら見 て も化学成分の違いは 主 として斜長石 と角閃石 との分量の差 か ら来 た ものであると解す ることがで きる. 閃緑岩 は一般に細粒であるか ら,花 園岩 に 較べ ると風化 し難いよ うである.併 し岩体の 極 めて大なるものでは しば しば能 く風化 して 厚 い土塵 を形成す る場合がある. このよ うな カ ンナパ 場合にはこの地方では鉄穴場 として利用 し砂 7 コノ 鉄 を採取 してい る.赤 目砂鉄なる ものはかよ うな閃緑岩 の風化物 を水致 して得た ものであ ザ ツカ る.上記雑家 と桂 ケ谷 とはかよ うな所で,秩 に雑家方面 は斐伊川本流 と阿井川支流の間の 一地区 を占める位 のひと山をなす もの で あ る.花 尚岩地帯に閃緑岩帯地が点 々とあるの はかよ うな関係の所に当るので ある. Ⅸ (附)黒 雲 母 花 南 岩 産地 :鳥取県東伯郡小鴨村 広瀬南西約3Km この試料は三朝温泉研究会主催の学術討論 会の後に実施 された小鴨鉱 山附近 巡 検 の さ い,上記の所で蒐集 した ものである.花 尚岩 の産地か ら云 えば本筈の関係 した地域 とは相 当離れてい るが,ウ ラン鉱の鉱脈 を腔胎 して い る花 尚岩 として注 目されてい るか ら, こ ゝ に附録 としてその化学成分 をしるす ことにす る. この花 尚岩 は多数の地質学者によって観察 鎌 次 されてい るか ら一般的の記述 は省略す る.揺 集地点附近では岩石 は風化 していて分析の試 料 としては余 り適 当とはいえないが,限 られ た時間に採ったのでやむを得ず これを分析す ることに した.その結果は次の通 りである. 第

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鳥取県東伯郡小鴨村広瀬南西

3Km

上表 によればこの花 尚岩 は島根県の出雲地 域 に産す る何れに較べて も最 も酸性の種類で あることが特徴である.分析表中に表 ほれて い る

Fe

2

03

の量が多いのは前に断 ったよ うに 試料が少な く分解 していたか らである.

X

石 英 斑 岩 類 花 尚岩地帯で石英斑岩 と呼ぶべ き岩石 は二 種 あって,花 尚岩 に対す る地質関係 も亦岩石 学上の性質 も両種 は異 なってい る.その第一 は岩脈 として花 尚岩 を貫 くもので,花 樹岩の 分化物 と解 され るものであ り,半花 尚岩 の一 種 と見 られ る ものである.第二の ものは花 尚 岩 の表面 を被 うてい る もので,花 園岩 とはそ

(14)

山陰地方 産花 尚岩質 岩石 につ いて (第1報) の起源を異 にす る もの と思 は る.今簡単に之 の種石英斑岩について記述す る.

A

半花 南岩型の石英斑岩 この種の石英斑岩 は次の三 ヶ所で見 出 した キ スキ ものである.その- は木次線加茂 中駅の東側 で,岩 体が大 きいので花尚岩 との関係 は明か でない.第二 は加茂町の北大西 と呼ぶ地点で 前者の東

5

0

0

m

位の地点である. こ ゝでは石 英斑岩 は厚 さ

7m

位で明かに花IrLa岩 を貫 く岩 脈である.第三 は仁多郡三成町の乗で,発電 用導水溝 を通ず る随道内で見 出 した もので, 厚 さ約

1

0

m

位の岩 派 として花 嵐岩 を貫 いてい た ものである. 何れ も淡灰色又は白色の岩石 で,微粒鉱物 の集合体で梢々粗面質に見 える.鏡下では斑 状の構造で石英 と正長石の斑晶 と同種鉱物の 微品の集合である石基か ら成立 っている.三 成町附近産 の ものを分析 した結果は次の通 り であ る.

4

7

同様の岩質の岩脈 は第三紀 回地帯には見 られ ない ものである. B 花岩 尚を被覆する石英斑岩 斐伊川の-支流久野川の北岸で大原郡大東 町字上久野 と云 う地点 では半花嵩岩 を被 うて 暗黒 色散密堅硬 なる石英斑岩が露 出 し て い ら.外観 は多少集塊質構造 を示 し,肇大の岩 塊が果合 したよ うな観 を皇す る.分布は之の -小地域に限 られ るよ うであるが,一帯が森 林であ り,谷壁 も急斜をな し,又時間の関係 で精査出来なか ったか ら,その分布状態の精 しい ことは判 らない. 鏡下では石英 と正長石 との斑晶が,珪長質 敏密 な石基の中に埋 まってい る.之の様 な構 造 は一般 に石英斑岩 で見 られ るもの と同様で あ る.次 にその化学成分 を検 した結果は次 の 通 りである. 上の化学成分 を見て もこの種石英斑岩 は花 尚岩 との関係がない ことが明かである. 第

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産 地

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2

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仁 多郡 三成 町 の東,発電所随道 内 上の化学成分によれば第8表に示 した半花 尚岩類の化学成分 と極 めて芽似 している. こ のよ うな点 と鉱物成分 とか ら考 えると, この 種 の石英斑岩 は花 尚岩 の分化物 と解せ られ, 上久野 と一つの山稜 をへだてた大東町塩 田 を中心 とす る地域 に他の石英斑岩 があ り,一 層散密質であるが,之 には黄鉄鉱 を含む為分 析の結果はない.又船通 山の頂上は海 抜

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4

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産 地

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2

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大原郡大東町上久野 m以上は石英斑岩 であって,之 は陰陽の境界 をなす分水嶺地帯を構成す る もので蓋 には省 略す る.

玄 武 岩 類 出雲の花 尚岩地帯で玄武岩 の露出 している 所 は筆者の知 る限 りでは次の三 ヶ所である. 第一は仁多郡横田町北西の台地上地形の表面 であ って,暗灰色敏密堅硬な岩石である.筆 者 は土地の人の庭石 としてあるものか らその 産地 を聞いてその分布 を確かめたのである. 第二の地域 は能義郡比田村地内で坊床 山と 呼ばれ る所で,海抜

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m

の 高 所 で あ る.之の地区は高原地であるが土地が割合に 年坦 なために開拓 の人 々が移住 してい る所で ある.第三の場所 は能義郡井尻村比婆 山を中 心 とす る一帯で,暗黒 邑撤密 な玄 武 岩 で あ る. 以上三 ヶ所 とも玄武岩 の分布状態 は花 尚岩 又は半花 尚岩 の浸蝕 された表面 を被 うてい る か ら,その成因については花 尚岩 とは関係な もの と思 はれ る.之等玄武岩 は恐 らく第三紀 の或 る時代に花 尚岩 の割 目を通 って噴出 して 熔岩流 として多少流れた もの と愚 考 さ れ る が,その噴出の裂執 ままだ見 出 していない. 第

13

Basal

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産 地

No

2

9

仁 多郡横 田町北西台地表面

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山陰地方産花 尚岩質岩石 について (第1報) 猶 またこれ らの玄武岩 と同様 な性質の ものが 第三紀層の地帯で噴出 してい るか否か,残念 なが ら探査が行 きとゞいていない. 鏡下では斜長石や輝石及 び撤横石の斑晶 と 仝様 な鉱物の微晶か らなる石基か らなってい る.横 田産の化学成分 は第13表 の通 りであ る・ 上表ではアルカ リの量は第三紀 胃地帯 の玄 武岩 に比 し梢々多いのが特徴 と思 はれ る. む す び 本編 に於て筆者 は山陰地方,特 に出雲地方 の中国山脈(を主 として構成 してい る花 置岩質 岩石の種類 とそれ らの岩石 学的性質,並びに これ ら各桓岩石中に厳存す る主要 なる鉱産物 と,その母岩 との地質関係 につい て 記 述 し た. この地方の花 尚岩質岩石 は,各種 の花 尚岩 類 と,花 嵐岩紫か ら誘導 された分化生成物 と 解せ られ る もの とがあ って,これ らを鉱物学 的並びに化 学的性質を基準に して分歎すれば 次の通 りである.但 し珪酸の含有量 は仝一種 類の岩石 を数 ヶ所 の産地で蒐果 した試料の分 析値 を平均 した ものである. (1)角閃石 ・黒雲母花 尚閃緑岩 SiO266・18% (2)角閃石 ・黒雲母花 尚岩 SiO269・28% (3)黒雲母花 置岩 SiO 274・910/o (4)細粒黒雲母花 褐岩及び 黒雲母花 尚斑岩 SiO273・47% (5)半花 尚岩 SiO275・96% (6)斑構岩及 び閃緑岩 SiO 256・050/o (7)石英斑岩 SiO 273・79% 上記の うち,(1は り(4ほ での各花 尚岩 は夫 々一定の分布を有 してい る.まず(1)角閃石 ・ 黒雲母花園閃緑岩 は斐伊川 を中心 に してその 位置 を示せば,川の下流部か ら宍道湖に近い 所に分布 してい る.(2)の角閃石 ・黒雲母花 尚 49 岩 は同川の上流部,す なわ ち仁多郡地方 に分 布 し,両岩 体の境界は天体大原郡 大 東 町 と キプキ 木次町 との中間にあると見 られ る. (3)黒雲母花 尚岩 は中海に注 ぐ飯梨川や伯太 川 の流域即 ち能義都一帯 を構成 していて, (4) 細粒黒雲母花 闘岩及び黒雲母花園斑岩 は能義 郡の西部か ら大原部の東部 に亘 る地域,即 ち 前記(1), (3)及び(2)の問に挟 まれた地方 に分布 す るこになる. 各花 南岩窟の大体の分布は上記の通 りであ るが, この種細粒 で塊状の岩石で,かつ風化 の甚だ しい巨大 な岩 体について地 質 の 構 造 線,例へば岩 体の接触面や断 層等 を野外で見 出すのは容易の業ではな く,又岩質の相違 も 化学分析 によって始 めてはっ きりさせ られ る 性質の ものである. (5)半花嵐岩, (6)斑鳩岩 及び閃緑岩 などは花 衛岩梁か ら誘導 された分化型 の岩 石 で あ っ て,上記各花 園岩 のいずれの岩体の分布す る 地方で も大小種 々の大 きさの岩 脈 として花 尚 岩 体を貫いてい る.(7)は半花 尚岩の1種であ る. 次 に花 置岩地帯に賦存す る鉱床 には各種の ものが多 く見 出 されているが,就中鉱産物 と して移行 されてい るものは砂鉄 とモ リブデン 鉱 とである.現在鋼の原料 として採取 してい る砂鉄は母岩か ら云へば次の二種である.節 -は角閃石 ・黒雲母花 絹岩 の風化物を水遷 し マ サ て磁鉄鉱粒 を集 める もので,之 を 真 砂 と 呼 び,燐やチ タニウムの含有量が少な く,鋼 を 精錬す る上に最 も良質の砂鉄 とされ,殊に斐 伊川の上流地区,即 ち船通山の山麓一帯 は古 来か ら優良砂鉄の産地 として有名である

.質

二 の岩質 は(6)の閃緑岩 であって, この種 の砂 了=」メ 鉄 を赤 巨=二称 し,チ タニウムの含有 は多いが

(17)

50 山 口 鎌 次 量が多いので,実用上には両種砂鉄を適量 に 混合 して用いている. 次 に花 尚岩の中に荘胎 している金属鉱床の うち,最 も重要 な位 置を占める ものは輝水鉛 鉱 の鉱 床であって, この地区では細粒黒雲母 花 尚岩又は半花 尚岩 を貫 く石英派中に含 まれ てい る.従 って能義郡の西部か ら大原部の東 部に亘 る地帯がその賦存区域 をな し,山佐, 大乗,清久等の各鉱 LLTEまその代表的の所であ る. 以上の夕日こ鳥取県下,小鴨鉱 山附近の花 尚 岩 はウ ラン鉱 を腔胎す る母岩 として頓 に注 目 を惹いてい るか ら,本篤には附録 としてその 化学成分 を記 してある.その他島根県下では 花 園岩体を貫通 し,又は被覆 してい る石英斑 岩 や玄武岩等があ り, これ等 は花 尚岩 とは成 因的関係 はないが,互に分布上随伴す るか ら 簡単 にその性質 を報告す ることに した次第で ある.

On theGraniticRocksfrom the DistrictofSam-in (PartI)

By

KenjiYAMAGUCHI

(Abstract)

Inthis paper,the petrology ofthe granitic rocks from the district ofSam-in

,

especiallyfrom the province of lzumo, is described with some references on the mineralresourcesassociatedintheserocks.

ThegraniticrocksofwhichtheChagoku-Mountainland in theIzumo provinceis mainly composed may beclassifiedmineraloglCally and chemically into nextseven kinds.Theirnamesandtherespectiveaveragesilicacontentsareasfo一lows:

(1)Hornblende-biotitegranodiorite (2)Hornblende-biotite granite (3)Biotitegranite

(4)Fine一grainedbiotitegraniteand biotite granite porphyry

(5)Aplite

(6)Gabbroanddiorite (7)Quartzporphyry

SiO 2 66.18% SiO 2 69.28% SiO 2 74.91% SiO 2 73.47% SiO 2 75.96% SiO 2 56.05% SiO 2 73.79%

Amongthevariousmineralresourcesfound in thegraniticrocksin thisreglOn,

theiron sand and themolybdenum oreseem to havemoreecconomicalvalue and areindeedwroughtrespectivelyinseverallocalitiesinfarelylargescale.

Theironsandiscollectedeitherfrom thedecompositionproductofthehornble nde-biotitegranite (2)andfrom thatofthediorite(6).The former, so-called やMasa〝, issuperiorin qualityfortheproduction ofsteel,butitisinferiorin its quantity. On the other hand,the latter,so-called "Akome〝,Canbe gatheredinquantity in larger amountthan the former, butitisinferiorto the formerin quality.For thisreason,bothsortsofsandarein practicemixed in somedefiniteamounts.

(18)

山陰地方産花 樹岩質岩石 について (第1報) 51

rocksarefoundinseverallocalitiesandsomeofthem arewrought. In such cases theparentrockoftheoreseemstobeinvariably confined to therock type ofthe fine一grainedbiotitegraniteoroftheaplite.

Besidestherocksstatedabove,somedescriptionsareglVentOとherocks,suchas quartzporphyryandbasalt,whicharefoundinseveralplacesinthegranitereglOn・ Howevertheyseem tohavenogeneticrelationwiththeunderlying granites.

片 山 片 山 質 疑 応 答 山 (東 大) 「ま き」 ので るのは山陰型の花 嗣岩か. ロ 山 口 山陰型 で も,そのあ る部分である・ 花 尚岩上 の疎,粘土層 のあ るのは どこか. 海抜500米 までの ところに相 当広 くあ る.潤 の底 ではないか と思 う・仁 多 郡 鳥上村 大 呂か ら北 にあ る 焼鍵.(鉄穴 場) ,LT/ + )i 唐木田 (九 大) ゼ ノ リスの花 尚岩 の時代 はど うか. 山 口 分析 の結果 は安来附近の ものに近 い. 坪 井 (岡 山大)Vancouverisl.andに 01igoceneの ころの貫 入体 があ る・一 つ のmassにgabbro か らacidicな もの まであ り,Tiのでかたが Siと関係L ilmenite か らsphene (titanite)- の変化がみ られ る・sphene が あ るか ないかが砂鉄の性質 に 関 連 す る が,「ま

」「あ こめ」 とspheneの関係 は ど うだ ろ うか・ 山 口 坪 井 鉱物学 的研究 :ま大切 だが まだや っていない・ 砂鉄 自身 の性 質 との関連 は必要 だ と思 う・

参照

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