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SSI MUCAPE3km SReH 3kmMEANSHR VGP EHIMAX (a) (b) 1 ae (c)

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は移動方向に対して北東象限400km 以内で発生が多い こと(McCaul, 1991)や,台風の中心から,500kmある いは1000km という離れた場所での発生も認められるこ と(小林・菅原,2007)が指摘されている。 メソ的な視点に切り替えると,台風によって海から吹 きつける暖気と内陸の寒気との間には沿岸前線(coastal front)が生じることがある。関東平野において調査され た沿岸前線は一般的な温暖前線にみられないほどシャー プで,著しい強風や大雨を伴う(藤部ら,1995)傾向が あり,防災上の観点から無視できない存在と述べられて いる。また,古くから調査・報告されていた台風の中心 付近にみられる特徴としては,温暖域に属する日本列島 へと北上して来た台風のほとんどが中心付近の気流の対 称性を崩し,強い水平シアを持つ停滞性の強雨域を伴う 構造となっていることなどが知られている。 以上のような既往の研究を踏まえ,本稿では比較的近 年である1991 ∼ 2006 年を対象とし,この間に発生した 1 はじめに 台風は,太平洋西部の(亜)熱帯域で発生する熱帯低 気圧の内,中心付近の最大風速が17.2m/s(34knot/s) 以上のもので,主に北半球の夏季から秋季にかけて日本 列島に接近または上陸し,日本各地に風害や降水害をた びたびもたらす。日本への台風の接近・上陸数は,9 ∼ 10 月に最も多い(饒村,1980)。また,夏季に接近・上 陸する台風は雨が多く,秋季に接近上陸する台風は雨・ 風共に強い傾向にある(三好・都成,1958)。日本におけ る台風に伴う災害発生については,地理学的な特徴がこ れまで複数述べられており,特に風害を代表する竜巻害 に関してはほとんどが太平洋沿岸地域で発生しているこ と(小元,1982)に加え,関東平野,東海地方,高知平野, 琉球諸島で発生が集中している(林ほか,1994)ことが 挙げられる。また,統計的に台風(ハリケーン)の中心 位置と竜巻(トルネード)発生の相互位置関係について

岡部 和朗

・山川 修治

**

We classified tornados outbreak into three patterns, i.e. the inner-band pattern, the outer-band pattern and the coast-al front pattern, based on the outbreak position of tornados associated with typhoons. 37 tornados occurred in Japan dur-ing 1991-2006 were analyzed form the viepoint of atomospheric parameters of the observation data at upper air observato-ries. As a result, a spacial peak of the outbreak was found in the vicinity of 300km and 500km to the north through east-northeast of the typhoon center, and the number of the tornados for each pattern was 4, 19, 11, respectively. In addition, the relationships between the pattern of tornados and the atmospheric parameters were not clearly recognized, because of the spatial, tempral gaps.

Keywords: typhoon, tornado, inner-band, outer-band, coastal front, Atomospheric parameter

日本における台風に伴う竜巻の発生場パターン・指数からみる特徴

The Characteristics of Tornados Accompanied with Typhoons in Japan from the Viewpoint of

their Generating Field Patterns and their Indices

Kazuaki OKABE

and Shuji YAMAKAWA

** (Received October 31, 2008)

Graduate School of Integrated Basic Sciences, Nihon University:

3-25-40 Sakurajosui Setagaya-ku, Tokyo, 156-8550 Japan

** Department of Geosystem Science, College of Humanities and Sciences,

Nihon University: 3-25-40 Sakurajosui Setagaya-ku, Tokyo,156-8550 Japan

日本大学大学院総合基礎研究科:

〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40

** 日本大学文理学部地球システム科学科:

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台風に伴う竜巻害発生の特徴,および発生場の気象状況 を実測値をもとにした変化の特徴を探っていく。 前述した沿岸前線では関東地方以外にも台風接近時に おいて,濃尾平野(深津,1983;服部,1987)や日向灘(山 田,1972)からも見出されていて,これらの地域は日本 列島での台風に伴う竜巻発生域に対応することから,こ れらの地域を対象とする。よって,本研究では沿岸前線 と竜巻発生との関係も視野に入れ,今まで多く述べられ てきた台風のアウターバンドとともに,発生場の特徴を 明らかにすることを目的とする。 2 解析方法と対象事例 2.1 解析方法 気象庁ホームページの竜巻の突風データベースの竜巻 害発生事例中より,1991 ∼ 2006 年の期間中で総観規模 で台風が存在し,かつ現象区分で竜巻と断定されたもの を今回の対象事例(南西諸島を除く)とした。 次に,竜巻発生時刻付近の陸上での気象状況の変化を 見るためにアメダスデータの降水量・気温(前1 時間変 化量)・風向・風速の観測値を用い,上述した観測地域 で現象発生の前後2時間分の合成図を作成した。 発生場のパターン分類するために,レーダーエコーと 雲画像を参考に使用した。 また,沿岸前線との対応を検討するため気温・風向風 速合成図および海面気圧,主要地点の風向風速変化のグ ラフを作成した。そして,鉛直状態の把握のため各指数 (SSI・MUCAPE3km・SReH(地上∼ 3km)・MEANSHR・ VGP・EHIMAX)とワイオミング大学の高層気象データ を用いた。 解析期間は1991 ∼ 2006 年の 16 年間とし,発生地点を 基準として解析対象範囲を図1 および図 2 のように設定 した。 図1 解析対象地域(各地域の詳細は図2(a)∼2(e)に示す) 図2(a) 解析対象地点および観測データ使用地点(東北地 方) 図2(b) 解析対象地点および観測データ使用地点(近畿・東 海地方) 図2(c) 解析対象地点および観測データ使用地点(関東地 方)

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2.2 対象事例 表1に示す通り,台風に伴う竜巻発生事例37事例を解 析の対象とした。 3 用語の定義および大気パラメータの説明 3.1 本研究におけるインナーバンド・アウターバンドの 定義  W. M. Frank (1977)の台風断面の模式図に基づき レーダーエコーと衛星画像から「台風の循環に則した動 きをもつ雲で中心付近の円弧状でまとまりのある雲群を インナーバンド,その外側に存在するいくつかのスパイ ラル状の雲帯をアウターバンド」と分類した。 3.2 使用した大気パラメータの説明および閾値 ・CAPE(対流潜在位置エネルギー) 地上付近の空気塊を断熱的に持ち上げた時,LFC(自 由対流高度)∼LNB(中立浮力高度)の間で浮力が空気 塊に為す仕事のことで,以下の式で表される。 CAPE=∫(ZLCL∼ZLNB) gR(Tp−Ta) 1/p*ρdz [J/kg] R:乾燥空気の気体定数(=287J/kg・K)Tp:気塊の 温度[℃] Ta:外塊の気温[℃]  やや不安定<1000  中程度に不安定<2500  非常に不安定<3500<極端に不安定

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表1 対象事例日および竜巻の発生した都県 1993年 9 月 3 日(高知県) 1993年 9 月 3 日(宮崎県) 1993年 9 月 3 日(高知県) 1993年 9 月 4 日(茨城県) 1994年 9 月29日(愛知県①) 1994年 9 月29日(愛知県②) 1994年 9 月29日(静岡県) 1997年 9 月16日(高知県) 1998年 9 月16日(宮城県) 1998年 9 月18日(宮崎県) 1998年 9 月21日(埼玉県) 1998年10月17日(宮崎県①) 1998年10月17日宮崎県②) 1999年 9 月24日(高知県) 1999年 9 月24日(山口県) 1999年 9 月24日(愛知県①) 1999年 9 月24日(愛知県②) 1999年 9 月24日(愛知県③) 1999年 9 月24日(愛知県④) 2000年 9 月11日(和歌山県) 2000年 9 月11日(愛知県①) 2000年 9 月11日(愛知県②) 2001年 8 月22日(埼玉県) 2001年 9 月10日(東京都) 2002年 7 月10日(埼玉県) 2003年 6 月19日(宮崎県) 2003年 8 月 8 日(宮崎県①) 2003年 8 月 8 日(宮崎県②) 2003年 8 月 8 日(埼玉県) 2003年 9 月12日(高知県) 2004年 9 月29日(愛知県) 2004年 9 月30日(東京都) 2005年 9 月 5 日(宮崎県①) 2005年 9 月 5 日(宮崎県②) 2006年 9 月17日(宮崎県①) 2006年 9 月17日(宮崎県②) 2006年 9 月17日(宮崎県③)   ※同日で同県のものは,それぞれ同じ都県の中でも別の時間・場所で発生したものである。 図2(d) 解析対象地点および観測データ使用地点(中国・四 国地方) 図2(e) 解析対象地点および観測データ使用地点(九州地 方)

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・SSI(ショワルター安定指数) 500hPa における気温と,850hPa の空気塊を断熱的に LCL(持ち上げ凝結高度)まで持ち上げ,そこから湿潤 断熱的に500hPa まで持ち上げた時の空気塊の温度との 差。  −3.0 ∼−5.9:トルネード発生の可能性あり  −6.0以下:トルネード発生に適する ・SReH(ストームに相対的なヘリシティ) 積乱雲に流入 ・ 上昇する気塊が運び込む回転 (渦) の 大きさの目安を表す。 SReH=−∫h0k・(V(Z)−C)*(əV(Z)/əZ)*dz V:水平風速ベクトル[m/s] C:ストームの移動ベクトル[m/s] h:ストームに相対的に流入する高度[km]  SReH>150: スーパーセルが発達するための下限  SReH = 150 ∼299:弱い竜巻(F0 ∼F1)の可能性  SReH = 300 ∼499:強い竜巻(F2 ∼F3)の可能性 ・MEANSEAR(平均水平風シア) MEANSEARはホドグラフの長さを高度(hkm)で割っ た量であり,SReH と同じくスーパーセルの発達と良い 相関のある力学パラメータである。 MEANSEAR 0-h= {∫ h 0 (əV/əZ)*dz}/{∫h0dz} ・VGP(Vorticity Generation Parameter)

VGP は鉛直渦度方程式中の立ち上がり項による渦度 時間変化率(əζ/ət)tiltを指標化したものである。 VGP=S (CAPE)1/2 S:平均シア 平均シア∝水平渦度(ωh) w∝(CAPE)1/2→VGP∝(dζ/dt)tilt ・EHI(エネルギーヘリシティーインデックス) EHIは熱に関する指標CAPEと鉛直シアに関する指標 SREHの積として定義され,トルネード強度(藤田スケー ル)を予報する際に適した指標である。 EHI =(CAPE×SReH)/1.6×105  EHI>1.0:スーパーセルの発達のポテンシャルを持つ  EHI > 2.0:スーパーセルの発達の非常に高い可能性を 持つ  EHI>4.0:顕著な竜巻が発生する可能性が高い  上はRaumussen and Blanchard (1998) より

4 結果と考察 4.1 台風に伴う竜巻発生の地理的位置 図3-1 や図 3-2 に示すように,今回の対象期間中での 台風に伴う竜巻の発生場所は,林ら(1994)で示された 宮崎平野・高知平野・東海地方・関東平野での発生が際 立って集中していた(全体の82%)。関東平野以外の集 中地域に関しては,ほぼ全てが沿岸での発生であった。 林ほか(1994)で指摘されている太平洋に南向きに面し ている地域に加え,東向きに面している場所の発生がみ られた。九州地方に着目すると,台風の中心が多数通過 している西部での発生がまったく無かった。また,竜巻 発生時刻における台風の中心位置と竜巻発生地点の相互 位置関係は図3-3 で示されたように,台風の中心移動方 向に対して315°∼ 135°半円に全事例があてはまり,特 に0°∼ 67.5°の範囲内に発生が集中していた(全体の約 65%)。この結果は,日本付近での台風の移動方向がほ ぼ北から東南東に対し,台風の活発な雲域はほとんどの 場合に東から南にあり,台風の低気圧性循環による動き に伴い, この活発な雲域が陸地へと到達する地域や,台 風の暖気移流によって前線帯の強化される位置にあたる ことから,発生の方向にこのような特徴が表れると考え られる。その他の特徴として,中心からの距離が300km 付近と500km 付近に 2 つのピークが認められること , ま た,なかには1000km を超える距離で発生し,最も遠方 では約1200kmということが挙げられる。

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図 3-1 1991 ∼ 2006 年に発生した台風に伴う竜巻の全発生 地点

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4.2 竜巻発生域の分類 図3-3 で示した台風との距離から大まかに 3 つの発生 域に分類できる。 まず,1 つ目は中心から 200km 以内での発生で,この 場合は台風の大小にかかわらずインナーバンド内での発 生であるが,発生数そのものは少ない。次に2 つ目は中 心から300km 付近や 500km 付近に発生のピークをもつ ものである。これは台風の大小に大きく関わっており, アウターバンドのかかった地域での発生と対応し,ほと んどの竜巻がこの位置で発生している。そして3つ目は, 500km 以上台風の中心から離れた場所で発生するもの であり,台風の暖気移流に伴う発生がこれに対応する。 4.3 発生域とタイプ 今回の台風に伴う竜巻発生域の区分として,インナー バンドに対応し発生,アウターバンドに対応し発生,そ して沿岸前線に対応,もしくは前の2 タイプと沿岸前線 の複合型の3 タイプに分類した。インナーバンドに対応 する事例は4 事例(約 11%)と少なく,アウターバンド に対応する事例は19事例(約51%)と半分以上を占めて いた。また,沿岸前線のみに対応したのは7 事例(約 19%)で,複合型の4事例(約11%)と合わせると11事 例(約30%)に沿岸前線が関わっていて,どの分類にも 対応しない特殊なタイプは3事例(約8%)存在した。こ の結果から,発生域のタイプとしてはアウターバンドに 対応する場合が多いことがわかるが,沿岸前線に対応し た事例は全体の3 分の 1 程度も発生しており,沿岸前線 の存在は軽視できないと考えられる。 4.3.1 インナーバンド対応タイプ インナーバンドに対応した4 事例は,台風の中心から 150 ∼250kmの範囲内でほぼ発生しており,インナーバ ンドの中でも比較的外縁部で発生している。このこと は,台風が温低化の非対称な構造状態へまだほとんど移 行していないことから,インナーバンド外縁部では中心 付近のほぼ一様な流れに付随しているものの,外因(主 に地形)からの影響を強く受け,水平シアや鉛直シアを 生じ,竜巻の発生しやすい状況になったと考えられる。 図4-1,4-2に典型的な事例をその時の気象場とともに示 す。

地域別発生の割合

31% 23% 14% 14% 14% 2% 2% 九州 東海 南西諸島 中国・四国 関東 近畿 東北 図 3-2 1991 ∼ 2006 年に発生した台風に伴う竜巻の地域別 の発生の割合(全43回) 図 3-3 台風の中心移動方向に対する竜巻発生位置 図 4-1 2005年9月5日(宮崎県①,②)10時の気温変化量[℃ /h]・風(長い矢羽1本:5m/s)・降水量[mm/h] 合成図 (★は竜巻発生場所を示し,●は高層気象観測所の場所を示す)

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4.3.2 アウターバンド対応タイプ アウターバンドに対応した19 事例は,そのうち 13 事 例が数時間以内に所を変えて発生していることから,発 生場の特徴を示しているといえる。発生域として,スー パーセルに伴うメソサイクロンのもとでの発生が調べら れ,多くの研究(例えば,坪木ほか,2000)からこれら と竜巻発生は深く関連性をもっていることがあげられて いる。しかし,日本においてスーパーセル型積乱雲の発 生は珍しく,台風によるポテンシャルに起因するのか, または外的要因に影響されて発生したのかを調べていく 必要性があると考えられる。図5-1,5-2に典型的な事例 をその時の気象場とともに示す。 4.3.3 沿岸前線・複合型対応タイプ 沿岸前線に対応した7 事例は台風から 1000km 以上離 れた遠距離で発生したものや,主に関東地方で発生した 事例でみられた。これらは台風本体のスパイラルバンド とは対応しておらず,台風に伴う暖気移流域に存在する 総観場の前線に対応するものや,独立した帯状の雲バン ドが形成されるなど,台風の外縁部で発生していること が特徴としてみられる。 また,沿岸前線と他の2 タイプの複合型は 4 事例であ り,宮崎平野や高知平野で発生したもので,インナーバ ンドやアウターバンドの降水域と隣接する無降水域と で,強い降水に伴う気温の下降と暖気移流による気温上 昇が起こり,強制的に大きな気温傾度をもった地域が発 生し,それに付随して竜巻が発生した。よって,沿岸前 線単独でのタイプは,暖気移流に伴い大きな気温傾度が 生じ,前線性の帯状の雲バンドが発達して,竜巻が生じ たと考えられる。そして,複合型のタイプは上述した, 降水の有無に伴う大きな気温傾度が発生し不安定度が高 まった地域に,次のスパイラルバンドの通過が重なり, 竜巻を発生させたものと考えられる。図6-1,6-2に典型 的な事例をその時の気象場とともに示す。 4.4 気温変化量・海面気圧からの発生要因考察 今回調査した事例で着目した点の1 つである,前 1 時 間からの気温変化量の特徴として多くの事例で確認でき たのが,台風本体の領域内では強い降水を伴う下降気流 での降温域と,無降水か弱い降水域での昇温域が台風の 中心から交互に存在しており,発生地点付近での気温傾 度が強化されたことで局地的な前線帯を発生させて,そ の周辺で発達した積乱雲が形成されたと考えられる。ま た,台風から比較的離れた地点で発生した事例では,南 図 4-2 2005 年 9 月 5 日油津の風向風速変化(矢印が発生時 刻付近を示す) 図 5-1 2005年9月17日(宮崎県①,②,③)14時の気温変 化[ ℃/h]・風(長い矢羽 1 本:5m/s)・降水量 [mm/h]合成図 (★は竜巻の発生場所を示し,●は高層気象観測所の場所を示す) 図 5-2 2006 年 9 月 17 日延岡の風向風速変化(矢印が発生 時刻付近を示す)

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方の太平洋上から供給される暖気によって,内陸との気 温傾度が強化されたことから沿岸前線帯を生じ,積乱雲 が発達したと考えられる。 発生時間付近の海面気圧の状態からは,台風の中心に 近い位置での発生が多い九州地方の事例においては,地 上気圧における明瞭なトラフの発生や対応がみられな かった。それに対して,台風の中心から遠方での発生が 多い東海・関東地方では,明瞭なトラフがみられ,発生 地点との対応関係が多くの事例で認められた。これらの ことから,台風の中心からの距離が近い場合は,主に地 形効果や温度傾度による収束帯が形成され,台風のスパ イラルバンドが強化されたことが,竜巻発生の要因に なったと考えられる。また,台風の中心から遠い場合は, 大きな気温傾度と共に地上気圧のトラフによって周囲か ら収束が起こり,上昇気流が発生し,積乱雲を発生・発 達させたことが竜巻発生の要因になったと考えられる。 4.5 各大気パラメータ指数の比較 本稿では大気パラメータの中でも不安定度および竜巻 発生に関係する,SSI・CAPE・SReH・MEANSHR・BRN-shr・VGP・EHI数を用い比較検討した(表2)。ハッチの 施されているところは各数値で不安定や竜巻発生の閾値 を上回っているもので,濃度が高くなるにつれ段階的に 不安定度が大きい,もしくは強い竜巻発生のポテンシャ ルをもっていることを示している。MEANSHR のみは定 量的な経験則による閾値設定を確認できなかった。 SSIやCAPE・BRNshrにおいてはMcCaul(1991)が「グ レートプレーンズにおける典型的な竜巻環境の特徴」の 中で熱的不安定はハリケーン内部での竜巻形成に強く寄 与しないと報告している。今回の研究では,直近の値で SSI が最も低い値が−3.0℃で,CAPE の中程度に不安定 を示す2500J/kg の閾値を上回る事例は 1 事例のみしか 確認できず,これらのことはMcCaul(1991)の報告と 結果が一致した。しかし,BRNshr に関しては Weisman and Klemp(1982)で示した「スーパーセルが発達しやす い」とされる閾値の15<BRN<35 に対応する事例も複数 認められた。また,SReH は多くの事例で竜巻発生の閾 値(SReH > 150m2/s2)を上回っており指数としての対 応が良く表れていた。VGP・EHI については極めて高い 数値を示すことはほとんど無かった。 5 まとめ 台風に伴う竜巻発生位置には地理的な特徴や,台風の 中心位置からの方向や距離に特徴が現れていた。 その距離特徴および地上の気象要素を指標とし,衛星 画像等から竜巻をインナーバンドとアウターバンドと沿 岸前線の3 つのパターンに分類した。本研究期間の 1991 ∼2006 年に日本で発生した 37 事例に関して解析し,高 層気象観測所の観測結果の大気パラメータとの対応を参 考に検討した。 インナーバンドパターンでは,その外縁部の200km 付近で,シアがほとんどない中で地形の影響を受け,竜 巻の発生場になったと考えられる。 アウターバンドパターンでは,中心から約500km 付 近を中心とし,頻発する傾向がみられた。また本期間に おいて, 日本における台風に伴う竜巻事例の半数がこの 型に対応していることから,台風圏で最も竜巻発生ポテ 図 6-1 2002年7月10日(埼玉県)16時の気温変化[℃ /h]・ 風(長い矢羽1 本:5m/s)・降水量[mm/h]合成 図 (★は竜巻の発生場所を示し,●は高層気象観測所の場所を示す) 図 6-2 2002年7月10日(埼玉県)16時の気温[℃]・風向 風速(長い矢羽1 本:5m/s)合成図(コンターは 0.5℃刻み)

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ンシャルの高い領域になっていると考えられる。加え て,地上の気象要素の変化からは,主に気温に関して特 徴がみられ,降水帯と無降水帯において気温傾度の強化 された位置との対応も確認できた。 沿岸前線・複合型パターンでは,台風の中心位置から の距離が1000km を超えるものなど,比較的遠方での発 生がこのパターンに対応していた。気象要素では気温の 温度傾度や風のシアとの対応が確認できた。 大気パラメータに関しては,SReH や BRNshr で,各 閾値を超えるものも確認でき,比較的竜巻の発生を示す よい指標になると考えられる。他に用いた指数に関して は,閾値と比較すると若干小さい値にとどまっており, これは時空間ギャップによるところが大きいと推測され る。いずれにしても,日本における台風に伴う竜巻の特 徴が含まれている可能性もあるので, CAPE より CIN の 方がより的確な指標となるとの指摘(櫻井・川村,2008) などを参考にして,今後のさらなる検討が必要である。 謝辞  本研究を進めるにあたり,日本大学文理学部地球システム 科学科環境気象気候研究室の加藤央之教授をはじめ,気候気 象システム研究室の大学院生や学部生には多くの有益な助言 をいただきました。ここに謝意を表します。 表2 各事例に直近の大気パラメータ指数

年・月・日・時 高層気象観測所 SSI CAPE SReH MEANSHR BRNshr VGP EHIMX 1998/1017/15:00 鹿児島(イ) 0.26 434.93 316.98 21.55 11.1 0.04 1.03 1999/0924/09:00 福岡(イ) 0.63 125.71 178.28 28.62 8.1 0.07 0.01 2005/0905/09:00 鹿児島(イ) -0.5 154.21 472.65 13.12 14.41 0.07 0.43 1993/0903/15:00 鹿児島(ア) -0.1 − 89.38 24.33 8.2 − − 1993/0903/15:00 潮岬(ア) -1.6 1899.76 199.32 20.73 11.86 0.24 1.94 1997/0916/15:00 潮岬(ア) 3.43 356.3 359.87 31.6 16.91 0.14 0.85 1999/0924/09:00 潮岬(ア) 0.2 2219.06 196.25 21.09 11.77 0.21 2.38 2001/0822/03:00 館野(ア) -3 626.85 211.14 16.33 8.48 0.24 0.76 2001/0910/09:00 館野(ア) 0 622.41 270.83 18.39 10.26 0.19 1.02 2003/0619/09:00 鹿児島(ア) -0.2 321.21 296.14 27.84 14.28 0.18 0.65 2003/0807/21:00 鹿児島(ア) 0.69 250.34 335.37 25.3 17.05 0.1 0.42 2003/0808/09:00 鹿児島(ア) 2.77 0 580.28 12.09 15.12 0 0 2003/0808/21:00 館野(ア) 1.03 1134.59 216.5 17.77 8.86 0.22 0.98 2004/0929/21:00 浜松(ア) 3.26 658.85 289.27 36.8 13.16 0.19 1.29 2006/0917/15:00 鹿児島(ア) -0.9 447.25 493.76 42.48 15.96 0.34 1.74 1998/0918/15:00 鹿児島(沿) 4.36 245.26 514.67 16.43 16.48 0.15 0.87 1998/0921/09:00 館野(沿) 2.85 2885.93 128.29 21.06 9.39 0.1 1.28 2000/0911/21:00 浜松(沿) -1.5 2178.85 189.08 23.87 11.33 0.24 2.36 2002/0710/15:00 館野(沿) -0.4 1662.74 202.28 18.5 11.02 0.23 1.77 2003/0912/09:00 潮岬(沿) 0.52 1460.82 117.08 10.27 8.33 0.1 0.23 1998/0916/09:00 仙台(他) -2.1 709.29 859.08 20.67 16.38 0.29 4.43 2000/0911/09:00 潮岬(他) -0.2 742.21 96.05 8.61 6.15 0.12 0.68 2004/0930/03:00 館野(他) 3.47 638.92 345.53 30.16 15.82 0.19 1.51 ※高層気象観測所の後にカッコ書きはアがアウターバンド,イがインナーバンド,沿が沿岸前線,他がその他のパターンとの 対応をそれぞれ表す。

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藤部文昭(1992):台風時の南東風場で関東平野に現れるメ ソ前線 −事例と統計−.天気39(11)697-706. 藤部文昭,田畑 明,赤枝健治(1995):台風 8922 とその北 側を進んだメソ寒冷前線に伴う南関東の下層風の特徴. 天気40(6)403-412. 深津 林(1983):三重県中部の大雨について.研究時報, 35,53-58. 服部満夫(1987):アメダス・レーダー・GMS 赤外資料を用 いた台風第8310 号による東海地方の豪雨の解析.気象 庁研究時報,39,91-108. 林 泰一,光田 寧,岩田 徹(1994):日本における竜巻 の統計的解析.京都大学防災研究年報,37(B-1)57-66. 小林文明,菅原祐也(2007):最近 10 年間のわが国における 竜巻の統計的特徴.大会講演予稿集,91,325. 小元敬男(1982):竜巻に伴う竜巻について.天気29(9) 967-980

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参照

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