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分裂酵母のα-アクチニン Ain1 の生化学的、細胞生物学的、分子動力学的研究

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Academic year: 2021

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Biochemical, Cell Biological, and Molecular

Dynamics Studies of the Fission Yeast α

-Actinin Ain1

著者

森田 陸離

発行年

2020

その他のタイトル

分裂酵母のα-アクチニン Ain1 の生化学的、細胞

生物学的、分子動力学的研究

学位授与大学

筑波大学 (University of Tsukuba)

学位授与年度

2019

報告番号

12102甲第9449号

URL

http://hdl.handle.net/2241/00160763

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氏名 森田 陸離 学位の種類 博 士(理学) 学位記番号 博 甲 第 9449 号 学位授与年月日 令和2年3月25日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 審査研究科 生命環境科学研究科

学位論文題目 Biochemical, Cell Biological, and Molecular Dynamics Studies of the

Fission Yeast α-Actinin Ain1

(分裂酵母のα-アクチニン Ain1 の生化学的、細胞生物学的、分子動力学的研究) 主査 筑波大学教授 博士(理学) 中野 賢太郎 副査 筑波大学准教授 博士(理学) 桑山 秀一 副査 筑波大学准教授 博士(理学) 原田 隆平 副査 筑波大学准教授 博士(理学) 出川 洋介

論 文 の 要 旨 本論文において著者は、細胞質分裂に必要な収縮環の形成や収縮のしくみを明らかにする目的で、収 縮環の構成成分であるアクチン束化タンパク質 α-アクチニン(Ain1)の分子機能を、生化学的、細胞 生物学的、分子動力学的に研究した。収縮環は主にアクチン繊維とミオシンから構成され、その構成成 分は動物や真菌などで共通性がある。著者は、収縮環の形成や収縮の過程においてアクチン束化タンパ ク質が重要な役割を担うと考え、研究に着手した。著者は、分裂酵母を研究材料に選んだ。分裂酵母は 4種類のアクチン束化タンパク質を有しており、いずれもアクチン結合ドメインとして Calponin homology domain (CHD) を有する。それらの内、α-アクチニンのホモログである Ain1 と IQGAP ホモ ログである Rng2 は収縮環にのみ局在し、細胞内の他のアクチン細胞骨格には局在しないことが、先行 研究により示されていた。ところが、これらのタンパク質が収縮環にのみ局在するしくみや、ミオシン との相互作用を許容するように適度にアクチン繊維を束化するしくみは不明であった。そこで著者は、 Ain1 について、特にそのアクチン結合ドメイン(ABD)のはたらきに着目し、細胞内局在や生化学的性 質について調べた。 著者は本論文の第一部で、Ain1 のリコンビナントタンパク質を調製し、アクチンに対する生化学活性 を測定した。その結果、Ain1 は他の生物の α-アクチニンや分裂酵母の他の CHD タンパク質と比べて、 アクチン繊維に対して高い解離定数を示した。そこで著者は、ヒトの α-アクチニンで同定されていた アクチン繊維との結合性を強める病原性変異と相同な点変異(R216E)を、Ain1 をコードする遺伝子に 導入した。この変異型 Ain1 を発現した分裂酵母について、著者は収縮環の形状が異常になるのを発見 した。これより著者は、Ain1 はアクチン繊維に対して適度な強さで結合することで、収縮環の収縮や動 態を妨げないように、アクチン繊維を束化することで環状構造の維持に寄与していると結論した。次に 著者は、Ain1 の ABD を構成する CH1 及び CH2 配列の細胞機能について調べた。その結果、アクチン繊 維との主要な結合性を CH1 が担い、収縮環への Ain1 の特異的局在性には CH2 とその C 末側に隣接する 領域がはたらくことを示した。さらに著者は、Ain1 の C 末端側にある EF-hand モチーフの興味深い機 能を発見した。この領域を欠いた Ain1ΔEF は、in vitroの実験ではアクチン繊維と結合し、束化活性 を示した。ところが、細胞内では収縮環への局在能を失った。Ain1 の分子形状は、他の α-アクチニン

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と同様に、逆平行型のダイマー構造をとる。そのため、ABD はペアを形成したサブユニットの EF-hand モ チーフに隣接する。そこで著者は、EF-hand モチーフは Ain1 が細胞内で動的にターンオーバーするア クチン繊維に的確に結合するために重要な機能を担う可能性を提唱した。 本論文の第二部で著者は、Ain1 のアクチン繊維結合性について、分子動力学計算によるシミュレー ションを行った。まず著者は、第一部の R216E 点変異が、CH1 と CH2 の間の非共有結合を開裂すること で、Ain1 のアクチン繊維への親和性を高める可能性について検証した。著者は、野生型および R216E 変 異型の ABD について 1 µs のシミュレーションを行った。Cα 原子についての Root mean square deviation (RMSD) 計算から、安定した系としてシミュレーションに成功したと著者は述べている。と ころが仮説に反して、R216E 変異によっては、期待したドメインの開裂が生じなかった。著者はこの研 究の過程で、Ain1 の4番目のαヘリックスの前後のループ領域 L2 と L3 に構造変化を見出した。L3 領域の構造変化は、野生型タンパク質でも検出された。そこで著者は、Ain1 がアクチンのサブドメイ ン1とサブドメイン3の間の狭い窪みに結合する際に、L3 領域が可動することでアクチン繊維に結合 しやすくなる可能性を提唱した。一方、L2 領域は塩基性アミノ酸を豊富に含んでいる。著者は、アク チン繊維との結合における L2 領域の寄与を調べるため、Ain1 とアクチン三量体の複合体のモデル構 造を構築し、分子動力学計算を行った。その結果、L2 領域の塩基性アミノ酸群とアクチンの N 末端の 酸性アミノ酸群との間に静電相互作用が形成されることを明らかにした。この計算により得られた結果 を検証する目的で、著者は塩基性アミノ酸群を置換した変異型 Ain1 を作製し、分裂酵母細胞内におけ る局在性への影響を調べた。その結果、L2 領域の塩基性アミノ酸残基を置換すると、Ain1 の収縮環へ の局在量が著しく低下した。これより著者は、L2 領域が新規アクチン結合サイトであることを実証し た。

審 査 の 要 旨

本論文の著者が複数の手法を組み合わせ、Ain1 の分子機能を明らかにすることに成功した点は高く 評価できる。特に、Ain1 が適度な強さでアクチン繊維に結合することが収縮環構造の形成と維持に重 要なことを示し、収縮環のアクチン繊維への Ain1 の嗜好性が CH2 によることを発見したことは、アク チン束化タンパク質のin vitroと in vivo の性質を有機的に結びつけた点で、革新的な成果だといえ る。また著者は、分子動力学計算に基づく構造変化の精査から、Ain1 の L2 領域が新規のアクチン結合 サイトであるのを見出すことに成功した。著者は、同様のアプローチにより他のアクチン調節タンパク 質の機能を原子レベルで解明できる可能性について言及している点でも、本論文の学術的価値は高い。 令和2年1月27日、学位論文審査委員会において、審査委員全員出席のもとに論文の審査及び最終 試験を行い、本論文について著者に説明を求め、関連事項について質疑応答を行った。その結果、審査 委員全員によって合格と判定された。 よって、著者は博士(理学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものとして認める。

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