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間接的統合と企業業績

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間接的統合と企業業績

太  田 肇 1 はじめに  組織と個人それぞれの目的が何であるかについては議論のあるところである が,少なくとも両者はアプリオリに調和しているとはかぎらない。しかし双方 が互いに依存する関係にあることも事実である。そこから統合の要請が生まれ る。筆者は,新人間関係学派に代表される伝統的な統合の枠組みを直接的統合 と称し,それに代わる新たな枠組みとして間接的統合の考え方を提示してきた。 その有効性を実証するため,日本の主要な大企業およびその従業員を対象に調 査を実施した。分析の結果,技術系,事務系を問わず,専門的な職種に属する 者の態度・行動パターンや志向は「組織人モデル」よりも「プロフェッショナ ル・モデル」に近いこと,したがって統合の枠組みとしては間接的統合が有効       1) であることが実証された。  ただこのような方法には一定の長所がある反面,つぎのような批判も当然予 想される。ひとつは,有効性の評価が個人の認知に依存することに伴う客観性 の問題である。もうひとつは,個の成果の集積が必ずしも組織全体の成果に直 結しないのではないかという議論である。そこで本稿では,定量化された企業 の業績指標を用いて,統合のスタイルと企業のパフォーマンスの関係を明らか にしていくことにする。 II 組織と個人の統合 組織と個人の統合に関する伝統的な理論として,Argyris, Likert, McGregor 1)太田肇『日本企業と個人一統合のパラダイム転換一』白桃書房,1994年,第4,5章。

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などいわゆる新人間関係学派(Neo−Human Relations School)によるものが あげられる。その内容を短い摘んで述べるとつぎのようになる。  人間にとって最高の欲求は自己実現や達成である。それらによって動機づけ られる人間は,仕事のうえで能力を最大限に発揮することを望んでいる。また 人間の能力は固定的ではなく,継続的に成長していくものである。したがって 能力を発揮:し成長できるような条件さえ与えられれば,個人は組織全体の目標 に主体的に貢献する。それによって,組織と個人双方の目的が同時に達成され ると考えるのである。マネジメントの手法としては,権限の委譲,参加の促進, 頻繁な相互作用やコミュニケーションなどが重視される。そしてこれらの特徴 をもつ組織の形態は有機的組織である。  このような「直接的統合」は,ある一定の個人像を暗黙の前提にしている。 一言でいえば,組織のなかで能力を発揮し,それによって高次の欲求を達成す ることができる「組織人」(organization man)である。たとえば,企業の内部 でキャリアを形成する典型的な日本企業の管理職とその候補生は,組織の目的 を自分の仕事上の目的として受け入れ,それを達成することによって,金銭的 報酬のほかに社会的な評価や地位を獲得し,自己実現や達成感を得ることがで きるのである。  しかし企業のなかで働く者は,このような典型的組織人ばかりではない。組 織よりも自分の仕事に一体化している者,あるいは職業生活以外に生き甲斐を 見出している者は少なくない。とりわけ前者に属する広い意味でのプロフェッ ショナル的な従業員については,統合の視点からすると企業がその存在と価値 観そのものを肯定し,何らかの方法によって企業への貢献を引き出すようなマ ネジメントを施さざるをえない。  キャリアの形成が必ずしも組織の枠組みに制約されず,また専門の仕事のう えで能力を発揮することによって評価と地位が獲得できる彼(彼女)らにとっ て,上述したような組織の誘因は限定的な価値をもつにすぎない。たとえば同 じ自己実現や達成でも,彼(彼女)らはその尺度をすべて組織内に求めること はしない。そのため,専門とする仕事に対しては全力を投入するが,所属組織

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      間接的統合と企業業績   45 に対しては限定的・手段的な関わり方をするという分離した態度をとることに なる(プロフェッショナル・モデル)。したがって彼(彼女)らから,組織目的 に向けた最大限の貢献を直接引き出すことは困難な場合が多い。そこで,個人 の専門とする仕事のうえで能力を発揮できるような条件を提供し,仕事上の成 果を組織の利益に結びつけることによって,組織・個人双方の目的を達成する という方法が考えられる。このような統合の枠組みが「間接的統合」である。 間接的統合は企業にとっても,専門性のうえでより大きな貢献が期待できる。 それは能力開発,キャリア形成,動機づけ,それに意思決定の効率性において        2) 直接的統合よりも有利だからである。このように,プロフェッショナル・モデ ルのような態度や行動をとる個人の目的を達成させながら組織の利益追求を図 るには,間…接的統合の枠組みが有効であると考えられるのである。  筆者は,1993年12月号東京・大阪・名古屋の各証券取引所1部上場企業を対 象にマネジメントに関する調査を行い,組織と個人の統合に多様なスタイルが あることを発見した。表一1は専門職,表一2は事務系ホワイトカラーに対す るマネジメントについての回答の因子分析結果である。表一1,表一2ともに 第1因子は,直接的統合の特徴を表すほとんどの項目で因子負荷量が高い。し たがって,第1因子は統合の直接性を意味する因子であると解釈することがで きる。  ところで直接的統合と間接的統合は,厳密にいえば同一次元上の概念とはい えない。ただ寄与率の大きさや,主要な項目の因子負荷量から判断するならば, 第1因子の因子得点の負の値が高い企業は間接的統合に近いマネジメントを行 っているとみなすことができよう。そこで,統合の直接性を表す第1因子の因 子得点を用いて,企業が専門職と事務系ホワイトカラーに対して直接的統合を 行っているか間接的統合を行っているかを判別することにした。なお,双方の 第1因子の間の相関係数は0.50である。したがって,専門職に対して直接的統 合(あるいは間接的統合)を行っている企業は,事務系ホワイトカラーに対し ても直接的統合(あるいは間接的統合)を行っている傾向がかなり強いという 2)太田,前掲,第4章。

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二一1 専門職のマネジメントにおける重視度(因子負荷量) n =208 因 子 1 2 3 4 固有値 4.76 2.49 1.48 1.18 累積寄与率(%) 28.0 42.6 51.3 58.3 〔評価の方針〕 1.常に組織の進む方向と同じ方向で努力していること 2.仕事上の専門能力が優れていること 3.会社の行事や会合などに積極的に参加すること 4.個人として自立して仕事ができること 5.仕事のやり方,態度が社員として模範的であること 6.仕事のやり方はともかく一定の成果がだせること 〔組織,管理,勤務条件等〕 7.グループで全員一丸となった活動 8.自分のペースで仕事ができること 9.職種・部門間の連絡・調整が頻繁であること 10.会社の利益に直結した仕事を与えること 11.個人が自分の専門の仕事を続けることを保障する 12.勤務時間を個人の裁量に委ねること 13.細かい点まで管理が行き届いていること 14.状況の変化に即座に対応する柔軟な組織 15.会社の外で活躍する機会があること 16.職場の人間関係が濃密であること 17.組織の目的が個入の目的に優先されること  .43 一.03 .60 一.14 =39 .75 一.03 一.11  .69  .Ol .46 .32 一.e7 .08 .13 .3e .08 .29 .19 .62 .02 .45 .oo .76  .66 .38 一.02 .18 一.Ol 一.18 .80 .10  .40 .64 一.11 .14  .33 .12 一.22 .58  .17 一.40 .45 .38 一.06  .72  .26 一.02  .78  .39 .14 .02 一.04 .78 .19 .08 .67 .75 一.04 .18 一.Ol .11 一.18 .14 .22 .Ol .07 .54 注:(1)因子は固有値が1以上のものである。  ② 因子負荷量はバリマックス回転後のものである。  (3)下線は因子負荷量の絶対値が0.3以上のものである。 資料:太田(1994),166頁。 ことがいえる。  つぎに第2因子は,両方のタイプの統合に関わる項目を含んでいて,一種の プロジェクト・チーム型のマネジメントを意味しているといえよう。そして第 3因子は,間接的統合の要件と考えられる項目の多くで負荷量が高い。しかし 寄与率はそれほど大きくない。そこで第3因子については,間接的統合を表す 補完的な因子として扱うことにした。

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表一2 間接的統合と企業業績 47 事務系ホワイトカラーのマネジメントにおける重視度(因子負荷量)       n =233 因 子 1 2 3 4 固有値 4.82 2.44 1.42 1.15 累積寄与率(%) 28.3 42.7 51.1 57.9 〔評価の方針〕 1.常に組織の進む方向と同じ方向で努力していること 2.仕事上の専門能力が優れていること 3.会社の行事や会合などに積極的に参加すること 4.個人として自立して仕事ができること 5.仕事のやり方,態度が社員として模範的であること 6.仕事のやり方はともかく一定の成果がだせること 〔組織,管理,勤務条件等〕 7.グループで全員一丸となった活動 8.自分のペースで仕事ができること 9.職種・部門間の連絡・調整が頻繁であること 10.会社の利益に直結した仕事を与えること 11.個人が自分の専門の仕事を続けることを保障する 12.勤務時間を個人の裁量に委ねること 13.細かい点まで管理が行き届いていること 14.状況の変化に即座に対応する柔軟な組織 15.会社の外で活躍する機会があること 16.職場の人聞関係が濃密であること 17.組織の目的が個人の目的に優先されること  .42 一.Ol .47 一.32 =62 .78 一.15  .Ol  .63 一.02  .58 一.10  .43  .18 =66 .16 .04 .26 .29 一.13 .36 .20 .34 .33 .12 .Ol .21 .56 .53 一.09 .12 .15 .61 .17 .05 一.OO .05 .67 .23 .25 .07 .06 一.06 ご﹂2

700

.79 一.Ol .03 .06 .03 .73 ’ .68 .15 .63 一.19 .19 .77 一.02

  丑

.29 .03 一.11 .21 .21 .06 .02 一.Ol

注:表一1に同じ。 資料:太田(1994),169頁。  なおこのような統合のスタイルと,企業の属性の間にどのような関係がある かを予め明らかにしておくことが必要であろう。企業の属性のうち最も関係が ありそうなのは規模である。一般に規模が大きいほど分化も進んでいると考え       3) られているからである。そこで第1因子,第3因子の因子得点と企業規模との 相関をみると,専門職についてはそれぞれ一〇.08,0.08であり,事務系ホワイ トカラーについてはそれぞれ一〇.14,0.08となっている。すなわち単純相関係 3) P.M. Blau, “A Formal Theory of Differentiation in Organizations.” Amen’can Sociological Review, Vol. 35, No. 2, pp. 201−218, 1970.

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数でみるかぎり,企業規模と統合のスタイルとはほとんど関係がないといえよ う。 III統合のスタイルと企業業績 1.有効性の尺度  間接的統合は,組織全体の目的とは必ずしも一致しない個人の仕事上の目的 を追求することを認める。したがって,とくに専門的な志向や価値観を有する 者にとっては満足度が高くなるはずである。また専門の仕事のうえで能力が発 揮されやすいため,個人の専門的能力に対する依存度が大きい組織では,直接 的統合と比べて高いパフォーマンスが期待できるはずである。  統合のスタイルの有効性を測定する方法としては,つぎのような方法が考え られる。ひとつは企業の利益率,成長率,生産性などの客観的指標を用いる方 法である。すなわち,組織と個人の統合がうまく行われるほど企業に対する個 人の貢献度が大きくなるため,企業全体の業績も高くなると考えるのである。 この方法は有効性が企業業績という客観的尺度で測定されるため,成果の信頼 性が高いという利点がある。さらに企業にとってより重要度の高い,(サブシス テムではなく)企業全体の目的への貢献度が把握できるという長所がある。し かし同時に問題点もある。まず,統合のスタイルとこれらの数値との因果関係 が弱いということである。企業の利益率や成長率は,経営戦略や資本力などの 要因によって大きく左右される。また業種や規模による差も大きい。それらに 比べると,組織と個人の関係が直接業績に与える影響は小さいであろう。しか も,今回のマネジメントに関する調査の対象はいわゆるホワイトカラー労働者 であり,生産に直接携わる現場作業者は除かれている。したがって,たとえば 労働生産性などの指標を用いても,統合の有効陛を直接測定するには限界があ ることは否定できない。そこで定量的な尺度を用いるにしても,ホワイトカラ ーの仕事の成果がより反映されやすい尺度を選択することが必要になってくる。  ところで統合の有効性は,企業目的の達成度だけで評価できないことを忘れ てはならない。組織目的とならんで,個人の目的がどの程度達成できているか

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      間接的統合と企業業績   49 がもう一方の成果の尺度である。個人目的の達成度を何によって測定するかは もちろん議論の分かれるところであろうが,筆者は,究極的には個人の多様な 欲求がどの程度充足できているかが基準になるという立場をとる(なお用語の 問題として念のため付言しておくと,ここでいう「充足」は必ずしも飽和状態 を意味しない。このことは自己実現など高次の欲求の性質からして自明であ る)。したがってそれを把握するには,個人の認知に基づく主観的尺度によらざ るをえない。認知的尺度には,個人の目的だけでなく企業目的への貢献度を測 定する方法としても利点がある。それは業績指標とは違って,因果関係をある 程度把握することができるからである。もちろん,そこには個人の主観が介入 するため正確性が十分とはいえないが,自分の仕事による貢献度は本来自分が 一番よく知っているという常識的な見方もできる。ただそれを測定する場合に は,被験者の評価にバイアスを与えるような情報から遮断しておくことが必要 なのはいうまでもない。  このように,いずれの尺度にもそれぞれ長短があるため,実際にはそれらを 補完的に用いることが望ましいであろう。 2.測定結果  個人の認知尺度を用いた測定によると,専門職(研究者および情報処理技術 者),それに事務系専門職(営業・マーケティング,財務・経理,および企画) には,直接的統合よりも間接的統合の方が有効であるという結果が得られた。 すなわち,仕事・私生活に対する満足度という個人の成果,ならびに企業への 貢献度という組織の成果の両面において,間接的統合を行っている企業の従業        4) 員は直接的統合を行っている企業の従業員に比べて高い値が表れている。  そこで今度は,より客観的な成果指標を用いて比較してみることにする。統 合の方法とその効果という因果関係を想定した場合,成果はマネジメントの実 施時期と同じかもしくは後に現れると考えるのが自然であろう。企業のマネジ メントに関する調査の実施時期は1993年11月である。そこで,ほぼ同時期もし 4)太田,前掲,第5章。

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くはその直後の指標に注目することにした。  まず,日本経済新聞社によって集計された上場企業の1994年3月期における 経営指標のなかから,売上高利益率,使用総:資本利益率,5年間平均増収率,       5) 労働生産性,および1人当たり利益の5指標に着目した。七一1(専門職),面 一2(事務系ホワイトカラー)の第1因子および第3因子の因子得点とそれぞ れの指標の単純相関係数を求めたが,いずれの項目も0.1未満という極めて小さ な値しか得られなかった。  その理由としては,前述したような因果関係の希薄さが考えられる。すなわ ち,他の多くの変数の介在によって,統合と組織成果の関係が相対的に微小な 意味しかもたなくなってしまうのである。そこでつぎに,ホワイトカラーの仕 事の成果がより反映されやすい指標として,日本経済新聞社が独自に開発した 多角的企業評価システム「PRISM」によって測定した得点を用いることにし 6︶ た。このシステムは,①環境・公正,②財務・収益力,③大企業性,④同族性, ⑤活力・開発力,⑥法的リスク  の6つの項目で企業を評価するものである。 このうち①,②および⑤は加点項目,③,④および⑥は減点項目として総合評 価に反映されている。同社では,東証上場およびそれに準じる非上場有力企業 計1,696社を対象に調査を行い,そのうち有効回答のあった1,090社を評価対象 としている。なお企業評価は1993年6,7月,アンケート調査は同年9,10月に 実施されており,筆者が行ったマネジメントの調査の実施時期と近接している。 企業の行う統合のスタイルが,多くの場合それほど短期間に変化するものでは ないことを考えると,この程度の時期的前後関係は因果関係の推定を妨げるも のではないといえよう。ここでは公表されている,総合得点,財務・収益力, 環境・公正,および活力・開発力の4項目を業績指標として用いることにした。 なお,公表されているのは総合得点の上位1,000社であり,そのうち筆者の調査 5) 『日経 経営指標一1994年秋一』日本経済新聞社,1994年9月。 6)得点は1994年3月1日付「日経産業新聞』による。このシステムでは,企業に対するア  ンケート調査,記者による経営者評価,それに財務データから成長力,収益力,安定性,  生産性などを示す指標を作成し,合計53項目の評価データから因子分析によって6因子に  集約している。その得点によって企業を多角的に評価しようとするものである。

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       間接的統合と企業業績 表一3 因子得点と業績指標の相関 51 専  門  職 事務系ホワイトカラー 第1因子 第3因子 第1因子 第3因子 総合得点 燒ア・収益力 ツ境・公正 ?ヘ・開発力 一.185** 黶D223*** 黶D021 黶D039 .153** D047 C177** D045 一.123* 黶D062 黶D112* 黶D085  .054 黶D014 @.114* @.005 注:(1)専門職,事務系ホワイトカラーともに,第1因子は値が高いほど「直接的」,第3因   子は値が高いほど「間接的」であることを意味する。  (2)*p<.1,**p〈.05,***p〈.01(片側)で有意であることを示す。 で有効回答が得られた企業,すなわち専門職については126社,事務系ホワイト カラーについては141社が分析対象になる。  表一3は,表一1(専門職),表一2(事務系ホワイトカラー)の第1因子お よび第3因子の因子得点とそれぞれの指標の単純相関係数を求めたものである。 表れた数値そのものはそれほど大きいとはいえない。ただ,因子得点そのもの が認知尺度を基礎にしたものであること,それに前述した経営指標ほどでない とはいえ他の変数が多少なりとも影響することを考え併せると,値の低さは納 得できないわけではない。そして値が低いとはいえ,正負の方向は概ね仮説と 一致するものとなっている。すなわち1箇所の例外を除き,統合の直接性を表 す第1因子との間には負の相関が,間接的統合を表す第3因子とは正の相関が 存在している。  つぎに,「PRISM」による上位300社(298位に同得点の企業が4社存在するた め正確には301社)に注目してみたい。ここでは,専門職,事務系ホワイトカラ ーとも第1因子の因子得点の値が正か負かによって,マネジメントが直接的統 合に近いか間接的統合に近いかを区別した。表一4は,企業の分布を示したも のである。なお,専門職または事務系ホワイトカラーのどちらかについてのみ 回答した企業もあるため,合計数は一致しない。  まず専門職の方からみていくことにしたい。上位100社(正確には101社)に 入っている企業をみると,直接的統合に近いマネジメントを行っている企業で は57社のうち12.3%の7社であるのに対して,間接的統合に近いマネジメント

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彦根論叢 第295号   表一4 企業評価による上位ランク企業の統合スタイル (社) 専  門  職 事務系ホワイトカラー    合スタイル 宴塔N 直接的統合  間接的統合 直接的統合  間接的統合 上位100社中 7(12.3%)      13(18。8%) 8(11.8%)      11(15.3%) 上位300社中 17(29.8%) *** 35(50.7%) 22(32.4%)  *   33(45.8%) 十二(1)括弧内の%は,「直接的統合に近い企業」,「間接的統合に近い企業」でありかつ    「PRISM」の上位1,000社に含まれている企業に占める割合を示す。  (2)*p〈.1,***p<,01(片側)で有意差のあることを示す。 の企業では69社中18.8%の13社となっている。さらに上位300社に入っている企 業は,直接的統合に近い企業では29.8%の17社であるのに対して,間接的統合 に近い企業では50.7%の35社に達している。この傾向は事務系ホワイトカラー でも同様である。上位100社に入っている企業は,直接的統合に近いマネジメン トを行っている企業が68社中8社(11.8%)であるのに対し,間接的統合に近 い企業は72社中11社(15.3%)となっている。さらに上位300社についてみる と,直接的統合に近いマネジメントの企業では22社(32.4%)であるのに対し, 間接的統合に近い企業は33社(45.8%)を占めている。  3番目の指標として,企業イメージに注目した。人間のイメージそのものは いうまでもなく主観的なものであるが,それが第三者によるものでありかつ大 量サンプルを用いた場合,統合の当事者である成員個人の認知や数値的な指標 とは全く違った角度から光を当てることができる。そこで,日本経済新聞社・ 日経産業消費研究所が実施した「企業イメージ調査」の結果を取り上げること にした。この調査は,1993年9月に主要企業1,110社について,一般個人とビジ ネスマンを対象として行われたものであり,合計31項目についてそれぞれ100位        7) までの企業が公表されている。常識的には,一般個人よりもビジネスマンの方 が企業についての知識がより豊富かつ正確であると考えられるため,ビジネス 7) 『日経「企業イメージ調査」について』日本経済新聞社・日経産業消費研究所,1994年 2月。本稿で取り上げた項目のうち「好感度」および「就職意向」については,その程度 を表す選択肢を設けて回答させ得点化している。他の項目については,当てはまると思う ものに印をつけさせ,その印がついた割合が高い順にランキングを作っている。

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       間接的統合と企業業績   53 表一5 「企業イメージ調査」による上位(100社)ランク企業の統合スタイル        (社) 専  門  職 事務系ホワイトカラー         統合スタイル 驪ニイメージ 直接的統合間接的統合 直接的統合間接的統合 好感度 5     18 11     13 就職意向 6     17 7     17 研究開発力・商品開発力が旺盛 8     20 12     17 営業・販売力が強い 6     15 9     14 製品・サービスの質がよい 8     18 9     18 活気がある 4     11 8      8 成長力がある 5     18 9     15 社会の変化に対応できる 6     16 9     14 技術力がある 6     19 10     16 優秀な人材が多い 2     12 6     9 注:企業イメージはいずれも『日経「企業イメージ調査」について』(日本経済新聞社・日経 産業消費研究所,1994年2月)による。ただし意味を損なわない範囲で表現を短くした箇所  がある。 マン9,407名の回答から算出された得点のランクを成果指標として用いること にした。六一5は,筆者の調査で有効回答を得られた企業のうち直接的統合に 近い企業と間接的統合に近い企業が,「企業イメージ調査」の主な項目(とくに 企業業績の特定の側面を表すと解釈される項目)の上位100社まで(同得点の場 合は100社を超える)にそれぞれ何元入っているかを示したものである。「活気 がある」という項目の事務系ホワイトカラーを除き,いずれの項目でも間接的 統合に近いマネジメントを行っている企業の方に高い評価を得ている企業が多 い。とくに専門職の方で差が顕著である。  こうしてみると,直接的統合に近い企業に比べて間接的統合に近い企業には, パフォーマンスの高い企業の多いことがわかる。とりわけ研究者,情報処理技 術者など専門職に対して聞接的統合に近いマネジメントを行っている企業に, 高業績企業が多い傾向がみられる。これについては,つぎのように解釈するこ とができよう。対象企業の業種をみると,製造業が大きな比率を占めている。 製造業の場合,主として間接部門に属する事務系ホワイトカラーよりも,研究

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者をはじめとする専門職の仕事の成果が企業業績に直結しやすいのではなかろ うか。  これらの結果をみるかぎり,直接的統合よりも間接的統合のもとで企業は大 きな成果を獲得しているといえるようである。これはまた,すでに分析した個 人の認知尺度による評価とも一致している。 IV 考察  組織と個人の統合についての伝統的な理論によると,個人は組織のなかで能 力を発揮して誘因を獲得し,それによって高次の欲求を充足する。同時に,組 織はそこから最大限の貢献を得る。それによって双方の目的が達成される。こ のような統合のパラダイムは,能力の発揮場所や準拠集団が組織内に限定され ている「組織人」を暗黙の前提としている。  しかし現実の企業には,このような典型的な組織人モデルでは説明できない タイプの従業員も存在する。研究者,コンピュータの専門家,デザイナー,建 築士など組織内のプロフェッショナルはその代表的なものである。しかも仕事 内容が専門化し,組織が個人の専門的能力に大きく依存するようになると,こ のような専門的職種はますます増大し,それに伴って従来の統合の枠組みでは 対応できない範囲が広くなってくる。それにもかかわらず企業には,プロフェ ッショナル的な職種に属する従業貝に対しても,直接的統合を適用しようとす        8) る傾向のあることが明らかになっている。  本稿では,客観的な業績尺度を用いて間接的統合の有効性を実証しようとし た。企業評価システムを用いた分析の結果,専門職では財務・収益力,環境・ 公正の尺度との問に,事務系ホワイトカラーでも環境・公正の尺度との問に弱 いながらも有意な相関がみられた。また総合得点でみた場合にも,直接的統合 よりも間接的統合に近いマネジメントを行っている企業に,パフォーマンスの 高い企業が多いという傾向が表れている。なお,表れた数値そのものはそれほ 8)太田肇『プmフェッショナルと組織一組織と個人の「間接的統合」一』同文舘,1993年,  第10章。

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       間接的統合と企業業績  55 ど顕著な差異を示すものとはいえないが,ホワイトカラーの仕事内容それ自体 が定義しにくいこと,したがって絶対的な業績尺度が存在しないこと,それに 統合を分類する因子得点の基礎に企業の認知を用いていることなどを考えると, 高い値を期待することは無理なのかもしれない。  さらに,企業評価システムにより高い評価を得ている企業,それに企業イメ ージのうえで高得点に達している企業にも,間接的統合に近いマネジメントを 行っている企業が多いことが判明した。  前述したように,個人の認知尺度を用いた分析では,専門職や事務系専門的 職種の満足度ならびに貢献度は,直接的統合よりも間接的統合のもとで高いこ とがすでに明らかになっている。それに今回行った複数の分析の結果を併せて 考えると,少なくともこれらの職種においては,間接的統合が直接的統合に比 べてより高い成果に導くという命題がかなりの説得力をもつものとして提示で きるであろう。

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