都道府県別の子どもの貧困率の要因分析
著者
鈴木 孝弘, 田辺 和俊
著者別名
Takahiro SUZUKI, Kazutoshi TANABE
雑誌名
現代社会研究
巻
17
ページ
53-61
発行年
2020-03
URL
http://doi.org/10.34428/00011784
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja― 53 ― 現代日本では「子どもの貧困」が大きな社会問題の一つになっており、2013年に「子どもの貧困 対策の推進に関する法律」が制定され、自治体には子どもの貧困対策の策定と実施が義務付けられ た。しかし、子どもの貧困には種々の要因が関与するとされ、自治体の子ども貧困対策の実施には その要因の解明が必要である。そこで、本稿では都道府県別の子どもの貧困率をとり上げ、それに 関係すると想定される人口・世帯、経済・労働、教育・福祉分野の多数の指標との関係を多変量解 析の手法によって解析した。その結果、子どもの貧困率を統計的に有意な精度で再現できる10種の 要因が得られた。そのうち、母子世帯や人口当たりの子ども数などの要因の影響が大きいこと、失 業率や共働き率などの経済・労働要因が影響度全体の約5割を占めることを見出した。さらに、そ れら要因の指標値に基づいて、地域自治体における子どもの貧困率改善策を試論した。 keywords:子どもの貧困率、都道府県格差、要因分析、非線形重回帰分析 目 次 1.はじめに 2.データと方法 3.結果と考察 4.結論 1 はじめに すべての子どもに人権を保障する「子どもの権利条約」が国連で1989年に採択されてから、これまで に世界では5歳未満児の死亡数は50%以上減少し、栄養不足の児童も半減した。しかし、子どもへの暴力・ 虐待は年間10億人に上るほか、児童労働や子どもの貧困など問題も多く残っており、権利条約の理念の 実現には多くの課題が残っている。日本では2009年、厚生労働省は2006年での子どもの貧困率が14.2% であると発表し1)、大きな社会的反響を引き起こした。近年、子どもを取り巻く環境は劇的に変化し、
都道府県別の子どもの貧困率の要因分析
鈴 木 孝 弘
田 辺 和 俊
1都道府県別の子どもの貧困率の要因分析
鈴 木 孝 弘(経済学部教授) 田 辺 和 俊(客員研究員) 現代日本では「子どもの貧困」が大きな社会問題の一つになっており、2013 年に「子どもの貧困対策の推進 に関する法律」が制定され、自治体には子どもの貧困対策の策定と実施が義務付けられた。しかし、子どもの 貧困には種々の要因が関与するとされ、自治体の子ども貧困対策の実施にはその要因の解明が必要である。そ こで、本稿では都道府県別の子どもの貧困率をとり上げ、それに関係すると想定される人口・世帯、経済・労 働、教育・福祉分野の多数の指標との関係を多変量解析の手法によって解析した。その結果、子どもの貧困率 を統計的に有意な精度で再現できる10 種の要因が得られた。そのうち、母子世帯や人口当たりの子ども数な どの要因の影響が大きいこと、失業率や共働き率などの経済・労働要因が影響度全体の約5 割を占めることを 見出した。さらに、それら要因の指標値に基づいて、地域自治体における子どもの貧困率改善策を試論した。 keyword:子どもの貧困率、都道府県格差、要因分析、非線形重回帰分析 目 次 1 はじめに 2 データと方法 3 結果と考察 4 結論 1 は じ め に すべての子どもに人権を保障する「子どもの権利条約」が国連で1989 年に採択されてから、これまでに世界 では5 歳未満児の死亡数は 50%以上減少し、栄養不足の児童も半減した。しかし、子どもへの暴力・虐待は年 間10 億人に上るほか、児童労働や子どもの貧困など問題も多く残っており、権利条約の理念の実現には多く の課題が残っている。日本では2009 年、厚生労働省は 2006 年での子どもの貧困率が 14.2%であると発表し1)、 大きな社会的反響を引き起こした。近年、子どもを取り巻く環境は劇的に変化し、子どもの姿も変わりつつあ るが、いつごろから子どもの貧困が話題になっていたのかを調べるために、「子どもの貧困」をキーワードに近 年の新聞記事数を検索した(図1)。2000 年以前は子どもの貧困に関する記事は見られないが、厚労省発表の 2009 年頃から記事数が急増している(2011 年の減少は東日本大震災の影響と推測される)。 図1 「子どもの貧困」に関する新聞記事数(朝日新聞 DB『聞蔵』による) 0 100 200 300 400 500 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 記事数 図1 「子どもの貧困」に関する新聞記事数(朝日新聞DB『聞蔵』による)『現代社会研究』17号 ― 54 ― 子どもの姿も変わりつつあるが、いつごろから子どもの貧困が話題になっていたのかを調べるために、 「子どもの貧困」をキーワードに近年の新聞記事数を検索した(図1)。2000年以前は子どもの貧困に関 する記事は見られないが、厚労省発表の2009年頃から記事数が急増している(2011年の減少は東日本大 震災の影響と推測される)。 厚生労働省によれば、日本の子どもの貧困率は1985年の10.9%から2000年には14.5%、2012年には 16.3%と上昇したが、2015年の最新データでは13.9%である2)。一方、ユニセフは、2009年の日本の貧困 率14.9%は、先進35カ国の内で9番目の高さであると報告している3)。 このように、世界的に見ても日本の子どもの貧困率が高く、子どもの約7人に1人が経済的に困難な状 況にある社会の現実を前に、政府は2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」を制定した。こ れを受けた大綱では、生活保護世帯に属する子どもの高等学校等進学率や、スクールソーシャルワーカー の配置人数、スクールカウンセラーの配置率などについて、数値目標を設定している。また、自治体に はこの法律の施行により、子どもの貧困対策の策定と実施が義務付けられた。 しかし、子どもの貧困にはさまざまな要因が関与していると考えられるため、自治体の子ども貧困対 策の実施には多くの問題がある。一方、全世帯の貧困率については筆者らの論文4)で示したように、多 くの研究により貧困率に大きな影響を与える要因の解明が進んでいるが、子どもの貧困要因に関する研 究は少ない。また、それらの論文でも、子どもの貧困率に大きな影響を与える要因とその重要度の解明 は未だ不十分である。 そこで、本稿では、自治体の子ども貧困対策の実施に有用な情報を提供することを目的として、都道 府県別の子どもの貧困率を目的変数とし、人口・世帯、経済・労働、教育・福祉の3分野の多数の指標 を説明変数とする非線形重回帰分析を行い、都道府県の子どもの貧困率に大きな影響を与える要因の探 索とそれらの相対的影響度の推定に関する実証研究を試みた。 2 データと方法 2.1 子どもの貧困率(目的変数) 目的変数に用いる子どもの貧困率(以下、貧困率)のデータとしては、都道府県別の貧困率を推定し た先行研究の中からもっとも信頼性の高いデータを採用することにした。該当する研究としては戸室健 作5)、永井保男6)、日本財団7)、坂口雄紀8)の4報があるが、それらの推定貧困率は図2のように大きな違い がある。 戸室は、「就業構造基本調査」のオーダーメード集計データを用い、18歳未満の末子がいる世帯のうち、 収入が生活保護の最低生活費以下の世帯の割合を子どもの貧困率として算出した。永井は、「就業構造 基本調査」のデータを用い、夫婦と子どもからなる世帯と夫婦と子どもと親からなる世帯について、生 活保護の最低生活費以下の世帯を子どもの貧困世帯とし、その総世帯数に対する割合を子どもの貧困率 とした。日本財団は、「被保護者調査」、「児童養護施設入所児童等調査」、「国勢調査」のデータを用い、 生活保護世帯、児童養護施設入所児童、および父子・母子世帯の15歳児童の合計の割合を子どもの貧困 率として算出した。坂口は、「就業構造基本調査」の個票データを用い、世帯所得と世帯人数とから算 出した貧困線を下回る18歳以下の子どもの割合を子どもの貧困率として推定した。この際、貧困線を全 国一律にして貧困率を推定したA法と、都道府県ごとに貧困線を決めて貧困率を推定したB法の結果を 発表している。 以上のように、貧困率推定方法にはそれぞれ違いがあり、図2の貧困率の差異をもたらしていると考 えられるため、これらの貧困率の内のどのデータを採用すべきか否かを検討する。まず、永井の貧困率 が他と比べて異常に低いことが目立つが、これは上記のように、その貧困率推算法では、夫婦と子ども
都道府県別の子どもの貧困率の要因分析 ― 55 ― からなる世帯と、夫婦と子どもと親からなる世帯のみを考慮し、貧困世帯の多い父子・母子世帯を考慮 していないことによると考えられる。したがって、永井の貧困率は採用できない。 次に、残りの4本の貧困県別変動を比較すると、その中では坂口のA法の貧困率が青森と岩手の2県に おいて他の結果よりかなり高いことが目につく。このA法は全国一律の貧困線を用いて貧困率を推定し ていることによって、都道府県ごとに貧困線を決めたB法や、戸室の結果と比較すると、青森と岩手の 2県の貧困率の高さは突出することになっている。したがって、この坂口A法の貧困率も不採用とした。 残りの戸室、日本財団、坂口B法の3本を比較すると、沖縄県での大きな違いが目に付く。戸室によ る沖縄県の貧困率37.5%は他県より飛びぬけて高いが、日本財団と坂口B法による同県の貧困率はそれ ほど突出していない。一方、沖縄県は子どもの貧困率が29.9%という高率であることを発表している(た だし、この貧困率の推計は沖縄県下41市町村の内の8自治体のみが対象である)9)。そこで、本稿では都 道府県別の貧困率には戸室5)のデータを採用することにした。 2.2 説明変数 多変量解析モデルの説明変数には、都道府県別の子どもの貧困率の要因分析を行っている先行研究 で検証されている各種指標、および貧困率への効果が報告されているが、これまで回帰分析の説明変数 として検証されていない数種の新規指標を選定した。その結果、選定した人口・世帯、経済・労働、教 育・福祉の3分野の説明変数47種の内訳を表1に示す。これらの都道府県別データは「国勢調査」など各 種政府統計の最新値を使用した。なお、指標の単位が異なり、また下記の感度分析のために、各指標は 都道府県別の最小と最大が0と1になるよう正規化して解析に用いた。 3 図2 先行研究による 47 都道府県の子どもの貧困率の推定値(坂口の A 法、B 法については本文参照) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 北 海 道 青 森 岩手 宮城 秋田 山形 福島 城茨 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈 川 新 潟 富山 石川 福井 山梨 長野 岐阜 静岡 愛知 三重 滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌 山 鳥 取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄 子どもの貧困率(%) 戸室(2016) 永井(2016) 日本財団(2016) 坂口(2018)A法 坂口(2018)B法 図2 先行研究による47都道府県の子どもの貧困率の推定値(坂口のA法、B法については本文参照)
『現代社会研究』17号 ― 56 ― 2.3 解析方法 貧困率の要因を探索した先行研究では線形重回帰分析(OLS)が多用されてきた。しかし、貧困率と 個々の説明変数との間に必ずしも線形性が成立するとは限らず、統計的に有意な結果を得ることが難し い場合が多い。本稿ではこの問題を解決するために非線形重回帰分析の手法としてサポートベクターマ シン(SVM)10-12)を適用した。SVMは説明変数の数値に対してカーネルと呼ぶ非線形関数を用いて学習 パターンを別の空間(超平面)に写像し、その空間で線形回帰を行う。この操作により、説明変数の元 の数値での非線形回帰が可能になり、目的変数と説明変数の間の任意の関係に対して高精度の回帰結果 が得られる。 SVMのソフトウエアはLIBSVM ver. 3.11 13)の回帰機能(SVR)を、カーネル関数はRBFを用いた。多 数の説明変数の中から要因を探索するためにはSVMモデルと説明変数の最適化を行う必要がある。本 稿では、前者については、LIBSVMのSVRの3種のパラメータ(g,c,p)の最適化を交差検証法により 行った。 後者に関しては、回帰分析では一般に説明変数の中に有効でないものがあると過学習状態に陥り、学 習データに対する誤差は減少するが、予測データについての誤差は増大するため、必要最小限の説明変 数を抽出する変数選択が必要である。本稿では迅速な変数選択法として感度分析法を採用した。この感 度分析法は、目的変数に対する各説明変数の感度を計算し、感度の低い変数を順次削除しながらSVM モデルを最適化し、目的変数の予測値と実測値の平均二乗誤差が最小となる組み合わせを探索する方法 である。筆者らはこの感度分析法の有用性を別の問題において実証している14)。 そこで、以下の手順により要因の探索を行った。 ①1つの都道府県を予測セット、他の46都道府県を学習セットとし、学習セットのデータを用いて SVMのモデルパラメータ(g,c,p)の最適条件を探索し、この最適モデルに予測セットのデータを入 力して貧困率の予測値を求める。 ②次の都道府県以下を予測セットとして①の操作を繰り返し、全都道府県について貧困率の予測値と 実測値との平均誤差(RMSE)を求める。 ③各説明変数の感度を求めるために、当該変数は実際の数値のまま、その他の変数は全都道府県の平 均値に設定したデータセットを最適モデルに入力し、出力値を求め、当該変数の実測値を説明変数、出 力値を目的変数とする単回帰分析を行い、回帰直線の傾きをその変数の感度とする。 ④全説明変数の中で感度の絶対値の最も小さい変数を取り除き、①~③の操作を繰り返し、RMSEが 最小になる説明変数の組み合わせを貧困率の要因と判定する。 5 表1 「子どもの貧困率」に対する説明変数の内訳とデータ源 分野 説明変数 定義 データ源 人口・世帯 人口密度 可住地面積当たりの人口密度 社会生活統計指標 都市化 人口集中地区の人口割合 社会生活統計指標 世帯人数 一般世帯の平均人員 国勢調査 子ども数 人口当たりの15 歳未満の子供の数 国勢調査 幼児世帯 6 歳未満の子供のいる世帯の割合 国勢調査 核家族 核家族世帯の割合 国勢調査 三世代 三世代世帯の割合 国勢調査 高齢世帯 高齢世帯の割合 国勢調査 母子世帯 母子世帯の割合 国勢調査 婚外子 嫡出でない子の割合 国勢調査 離別率 人口当たりの離別者の割合 国勢調査 経済・労働 労働力率 労働力人口割合 国勢調査 求人倍率 有効求人倍率 社会生活統計指標 就業率 15 歳以上の有業者の割合 国勢調査 失業率 労働力人口当たりの完全失業者数の割合 社会生活統計指標 大企業 大企業の就業率 経済センサスー活動調査 中企業 中企業の就業率 経済センサスー活動調査 小企業 小企業の就業率 経済センサスー活動調査 自営業 自営業者の割合 就業構造基本調査 一次産業 第一次産業の就業率 就業構造基本調査 二次産業 第二次産業の就業率 就業構造基本調査 三次産業 第三次産業の就業率 就業構造基本調査 管理・専門職 管理・専門職の就業率 就業構造基本調査 事務職 事務職の就業率 就業構造基本調査 営業職 営業職の就業率 就業構造基本調査 製造業 製造業の就業率 就業構造基本調査 宿泊飲食業 宿泊飲食業の就業率 就業構造基本調査 正規率 正社員雇用率 就業構造基本調査 非正規率 非正規雇用率 就業構造基本調査 共働き 共働き世帯の割合 社会生活統計指標 パート パートタイム就職率 社会生活統計指標 短期雇用 短時間雇用者割合 国勢調査 ニート 若年無業者の割合 国勢調査 大卒無業 大学新規卒業者の無業者の割合 社会生活統計指標 最低賃金 地域別最低賃金時間額 賃金構造基本統計調査 労働時間 所定内実労働時間 賃金構造基本統計調査 残業 超過労働時間 賃金構造基本統計調査 教育・福祉 教育費 世帯消費支出に占める教育費の割合 社会生活統計指標 中卒 最終学歴が中学卒の者の割合 社会生活統計指標 高卒 最終学歴が高校卒の者の割合 社会生活統計指標 短大大卒 最終学歴が短大・高専・大学卒の者の割合 社会生活統計指標 児童福祉費 人口当たりの児童福祉費 社会生活統計指標 児童福祉施設 人口当たりの児童福祉施設等の数 社会生活統計指標 保育所 未就学児童当たりの保育所等の数 社会生活統計指標 保育士 未就学児童当たりの保育士の数 保育所等関連状況調査 学童保育所 低学年児童当たりの学童保育所の数 全国学童保育連絡協議会 民生委員 人口当たりの民生委員数 社会生活統計指標 表 1 「子どもの貧困率」に対する説明変数の内訳とデータ源(I)
都道府県別の子どもの貧困率の要因分析 ― 57 ― 5 表1 「子どもの貧困率」に対する説明変数の内訳とデータ源 分野 説明変数 定義 データ源 人口・世帯 人口密度 可住地面積当たりの人口密度 社会生活統計指標 都市化 人口集中地区の人口割合 社会生活統計指標 世帯人数 一般世帯の平均人員 国勢調査 子ども数 人口当たりの15 歳未満の子供の数 国勢調査 幼児世帯 6 歳未満の子供のいる世帯の割合 国勢調査 核家族 核家族世帯の割合 国勢調査 三世代 三世代世帯の割合 国勢調査 高齢世帯 高齢世帯の割合 国勢調査 母子世帯 母子世帯の割合 国勢調査 婚外子 嫡出でない子の割合 国勢調査 離別率 人口当たりの離別者の割合 国勢調査 経済・労働 労働力率 労働力人口割合 国勢調査 求人倍率 有効求人倍率 社会生活統計指標 就業率 15 歳以上の有業者の割合 国勢調査 失業率 労働力人口当たりの完全失業者数の割合 社会生活統計指標 大企業 大企業の就業率 経済センサスー活動調査 中企業 中企業の就業率 経済センサスー活動調査 小企業 小企業の就業率 経済センサスー活動調査 自営業 自営業者の割合 就業構造基本調査 一次産業 第一次産業の就業率 就業構造基本調査 二次産業 第二次産業の就業率 就業構造基本調査 三次産業 第三次産業の就業率 就業構造基本調査 管理・専門職 管理・専門職の就業率 就業構造基本調査 事務職 事務職の就業率 就業構造基本調査 営業職 営業職の就業率 就業構造基本調査 製造業 製造業の就業率 就業構造基本調査 宿泊飲食業 宿泊飲食業の就業率 就業構造基本調査 正規率 正社員雇用率 就業構造基本調査 非正規率 非正規雇用率 就業構造基本調査 共働き 共働き世帯の割合 社会生活統計指標 パート パートタイム就職率 社会生活統計指標 短期雇用 短時間雇用者割合 国勢調査 ニート 若年無業者の割合 国勢調査 大卒無業 大学新規卒業者の無業者の割合 社会生活統計指標 最低賃金 地域別最低賃金時間額 賃金構造基本統計調査 労働時間 所定内実労働時間 賃金構造基本統計調査 残業 超過労働時間 賃金構造基本統計調査 教育・福祉 教育費 世帯消費支出に占める教育費の割合 社会生活統計指標 中卒 最終学歴が中学卒の者の割合 社会生活統計指標 高卒 最終学歴が高校卒の者の割合 社会生活統計指標 短大大卒 最終学歴が短大・高専・大学卒の者の割合 社会生活統計指標 児童福祉費 人口当たりの児童福祉費 社会生活統計指標 児童福祉施設 人口当たりの児童福祉施設等の数 社会生活統計指標 保育所 未就学児童当たりの保育所等の数 社会生活統計指標 保育士 未就学児童当たりの保育士の数 保育所等関連状況調査 学童保育所 低学年児童当たりの学童保育所の数 全国学童保育連絡協議会 民生委員 人口当たりの民生委員数 社会生活統計指標 「子どもの貧困率」に対する説明変数の内訳とデータ源(II)
『現代社会研究』17号 ― 58 ― 3 結果と考察 3.1 貧困率の要因 以上の方法により、47種の説明変数の中から要因を探索した結果、10種の説明変数を用いた場合に貧 困率の予測値と実測値とのRMSEが最小となり、そのときの回帰決定係数(R2)は0.867で、危険率1% で有意と判定された。したがって、この10種の説明変数が47都道府県の貧困率の要因となる。 各要因の貧困率への相対的影響度について考察するために、要因iの感度Siから式 により貧困率に対する寄与率Ciを推定した。要因10種の内訳、貧困率に対する感度とその推定誤差、 および寄与率を表2に示す。感度分析で得られた各要因の感度は、他の変数は平均値に固定し、当該変 数のみ数値を変化させた場合の貧困率の変化から求めたので、貧困率に対する当該要因の正味の影響度 を表わしている。したがって、感度が正の4種の要因は貧困率の増加に寄与する危険要因であり、感度 が負の6種の要因は貧困率の減少に寄与する抑制要因であると解釈できる。これらの結果はそれぞれの 貧困率に対する影響の予測方向と整合する。また、得られた要因の感度の誤差は感度分析過程における 感度値のばらつきから推定したが、その大きさを見ると、各要因の感度はいずれも信頼できる精度で推 定されていると考えられる。 3.2 要因に関する考察 得られた10種の要因の寄与率を分野別に集計すると、人口・世帯分野が2要因で37.5%、経済・労働分 野が5要因で49.9%、教育・福祉分野が3要因で12.6%であり、経済・労働分野の要因の影響が最大で、全 体の半数以上の影響度であるが、人口・世帯と教育・福祉の2分野もかなりの影響を与えることが分かる。 これに対し、子どもの貧困要因分析を行った先行研究としては、永井6)、坂口8)、大石亜希子15)、斉藤 知洋16)、明坂弥香ら17)、戸室健作18)の6報がある。永井は、一人親世帯率や非正規雇用率などの6種の説 明変数を用いて線形回帰分析を行い、要因探索を行った。坂口は子ども数、学歴、就業状況などの19種 の説明変数を用い、大石は年世帯構造、配偶、子供数などの13種の説明変数を用いて要因探索を行った。 6 表2 子どもの貧困要因の内訳、貧困率に対する感度とその推定誤差、および寄与率 要因 分野 感度 寄与率 (%) 危険要因 抑制要因 誤差 1 母子世帯 人口・世帯 0.202 0.037 25.1 2 子ども数 人口・世帯 0.142 0.035 12.4 3 失業率 経済・労働 0.141 0.031 12.3 4 製造業 経済・労働 -0.140 0.025 12.1 5 共働き 経済・労働 -0.132 0.019 10.7 6 大企業 経済・労働 -0.124 0.018 9.5 7 宿泊飲食業 経済・労働 0.092 0.016 5.2 8 学童保育所 教育・福祉 -0.087 0.015 4.6 9 保育所 教育・福祉 -0.081 0.013 4.0 10 短大大卒 教育・福祉 -0.080 0.008 4.0 3 結果と考察 3.1 貧困率の要因 以上の方法により、47 種の説明変数の中から要因を探索した結果、10 種の説明変数を用いた場合に貧困率 の予測値と実測値とのRMSE が最小となり、そのときの回帰決定係数(R2)は0.867 で、危険率 1%で有意と 判定された。したがって、この10 種の説明変数が 47 都道府県の貧困率の要因となる。 各要因の貧困率への相対的影響度について考察するために、要因i の感度 Siから式 100 (%) 10 1 2 2
i i i i S S C (1) により貧困率に対する寄与率Ciを推定した。要因10 種の内訳、貧困率に対する感度とその推定誤差、および 寄与率を表2 に示す。感度分析で得られた各要因の感度は、他の変数は平均値に固定し、当該変数のみ数値を 変化させた場合の貧困率の変化から求めたので、貧困率に対する当該要因の正味の影響度を表わしている。し たがって、感度が正の4 種の要因は貧困率の増加に寄与する危険要因であり、感度が負の 6 種の要因は貧困 率の減少に寄与する抑制要因であると解釈できる。これらの結果はそれぞれの貧困率に対する影響の予測方 向と整合する。また、得られた要因の感度の誤差は感度分析過程における感度値のばらつきから推定したが、 その大きさを見ると、各要因の感度はいずれも信頼できる精度で推定されていると考えられる。 3.2 要因に関する考察 得られた10 種の要因の寄与率を分野別に集計すると、人口・世帯分野が 4 要因で 28.7%、経済・労働分野 が8 要因で 52.5%、教育・福祉分野が 2 要因で 18.8%であり、経済・労働分野の要因の影響が最大で、全体の 半数以上の影響度であるが、人口・世帯と教育・福祉の2 分野もかなりの影響を与えることが分かる。 これに対し、子どもの貧困要因分析を行った先行研究としては、永井6)、坂口8)、大石亜希子15)、斉藤知洋 16)、明坂弥香ら17)、戸室健作18)の6 報がある。永井は、一人親世帯率や非正規雇用率などの 6 種の説明変数を 用いて線形回帰分析を行い、要因探索を行った。坂口は子ども数、学歴、就業状況などの19 種の説明変数を 用い、大石は年世帯構造、配偶、子供数などの13 種の説明変数を用いて要因探索を行った。また、斉藤は母 子世帯、職業、学歴などの20 種の説明変数を用い、明坂らは子どもの年齢、親の学歴、就業状況などの 16 種 の説明変数を用い、戸室は三世代率、共働き率、非正規率など7 種の説明変数を用い、要因探索を行った。 しかし、これらの先行研究で用いられた説明変数は、本稿で用いた47 種の説明変数と比較すると少数かつ 6 表2 子どもの貧困要因の内訳、貧困率に対する感度とその推定誤差、および寄与率 要因 分野 感度 寄与率 (%) 危険要因 抑制要因 誤差 1 母子世帯 人口・世帯 0.202 0.037 25.1 2 子ども数 人口・世帯 0.142 0.035 12.4 3 失業率 経済・労働 0.141 0.031 12.3 4 製造業 経済・労働 -0.140 0.025 12.1 5 共働き 経済・労働 -0.132 0.019 10.7 6 大企業 経済・労働 -0.124 0.018 9.5 7 宿泊飲食業 経済・労働 0.092 0.016 5.2 8 学童保育所 教育・福祉 -0.087 0.015 4.6 9 保育所 教育・福祉 -0.081 0.013 4.0 10 短大大卒 教育・福祉 -0.080 0.008 4.0 3 結果と考察 3.1 貧困率の要因 以上の方法により、47 種の説明変数の中から要因を探索した結果、10 種の説明変数を用いた場合に貧困率 の予測値と実測値とのRMSE が最小となり、そのときの回帰決定係数(R2)は0.867 で、危険率 1%で有意と 判定された。したがって、この10 種の説明変数が 47 都道府県の貧困率の要因となる。 各要因の貧困率への相対的影響度について考察するために、要因i の感度 Siから式 100 (%) 10 1 2 2
i i i i S S C (1) により貧困率に対する寄与率Ciを推定した。要因10 種の内訳、貧困率に対する感度とその推定誤差、および 寄与率を表2 に示す。感度分析で得られた各要因の感度は、他の変数は平均値に固定し、当該変数のみ数値を 変化させた場合の貧困率の変化から求めたので、貧困率に対する当該要因の正味の影響度を表わしている。し たがって、感度が正の4 種の要因は貧困率の増加に寄与する危険要因であり、感度が負の 6 種の要因は貧困 率の減少に寄与する抑制要因であると解釈できる。これらの結果はそれぞれの貧困率に対する影響の予測方 向と整合する。また、得られた要因の感度の誤差は感度分析過程における感度値のばらつきから推定したが、 その大きさを見ると、各要因の感度はいずれも信頼できる精度で推定されていると考えられる。 3.2 要因に関する考察 得られた10 種の要因の寄与率を分野別に集計すると、人口・世帯分野が 4 要因で 28.7%、経済・労働分野 が8 要因で 52.5%、教育・福祉分野が 2 要因で 18.8%であり、経済・労働分野の要因の影響が最大で、全体の 半数以上の影響度であるが、人口・世帯と教育・福祉の2 分野もかなりの影響を与えることが分かる。 これに対し、子どもの貧困要因分析を行った先行研究としては、永井6)、坂口8)、大石亜希子15)、斉藤知洋 16)、明坂弥香ら17)、戸室健作18)の6 報がある。永井は、一人親世帯率や非正規雇用率などの 6 種の説明変数を 用いて線形回帰分析を行い、要因探索を行った。坂口は子ども数、学歴、就業状況などの19 種の説明変数を 用い、大石は年世帯構造、配偶、子供数などの13 種の説明変数を用いて要因探索を行った。また、斉藤は母 子世帯、職業、学歴などの20 種の説明変数を用い、明坂らは子どもの年齢、親の学歴、就業状況などの 16 種 の説明変数を用い、戸室は三世代率、共働き率、非正規率など7 種の説明変数を用い、要因探索を行った。 しかし、これらの先行研究で用いられた説明変数は、本稿で用いた47 種の説明変数と比較すると少数かつ都道府県別の子どもの貧困率の要因分析 ― 59 ― また、斉藤は母子世帯、職業、学歴などの20種の説明変数を用い、明坂らは子どもの年齢、親の学歴、 就業状況などの16種の説明変数を用い、戸室は三世代率、共働き率、非正規率など7種の説明変数を用い、 要因探索を行った。 しかし、これらの先行研究で用いられた説明変数は、本稿で用いた47種の説明変数と比較すると少数 かつ限定的であり、それらの説明変数を用いて線形回帰分析により探索された要因の信頼性には疑問が 残る。それに対して、本稿では広い分野の多数の説明変数を用いて非線形回帰分析により探索して得ら れた10種の要因は、子どもの貧困率の要因として先行研究より信頼性が高いと考えられる。また、それ ら10種の要因の貧困率に対する相対的影響度が得られ、自治体の子ども貧困対策の実施にとって有用な 情報を提供できると考えられる。 3.3 子どもの貧困率の地域の解消対策への試論 最後に、本稿の結果に基づいて地域の子ども貧困対策に資する情報提供の可能性を考察してみる。対 象地域として、国内で貧困率が最高の沖縄県と最低の福井県を取り上げると、両県での要因10種の国内 順位は表3のようになる。ここで各要因の危険度順位は、感度の符号が正の危険要因については指標値 の降順、符号が負の抑制要因については昇順の順位である。 この表を見ると、福井県は全体的に危険度順位が低い要因が多く、貧困率が全国最低であることがわ かる。これに対し、沖縄県は危険度順位の高い要因が多く、特に影響度の高い母子世帯や子ども数、失 業率、製造業が沖縄県の貧困率の国内最高に大きく寄与していることが明らかである。 表3の結果に基づいて沖縄県の子どもの貧困解消策を考えると、まず、寄与率の高い母子世帯と子ど も数の低減が最も有効である。沖縄県の母子世帯の多いことについては、米軍基地、離婚、低収入、若 年結婚など、多数の理由が考えられる。また、子ども数の多さは、のんびりとした県民性や温かい気候 によることが大きいと思われる。しかし、沖縄県の母子世帯の多くは経済的に不安定であり、さまざま な生活問題を抱えている。これらの問題を解決するには、行政や地域のサポートが不可欠である。 次に、経済・労働分野の失業率の低減と製造業の増加が有効である。これまで沖縄県の3大収入源は 「観光」「基地」「公共事業」の3K経済といわれてきた。しかし、沖縄県では、アジアの巨大なマーケッ トの中心に位置する沖縄の地理的優位性を生かし、アジア経済と連動することで自立型経済を発展させ て行くという目的のため、2015年、「沖縄県アジア経済戦略構想」を策定し、今後の沖縄経済を牽引す る基軸となる「5つの重点戦略」を進めている。 7 限定的であり、それらの説明変数を用いて線形回帰分析により探索された要因の信頼性には疑問が残る。それ に対して、本稿では広い分野の多数の説明変数を用いて非線形回帰分析により探索して得られた10 種の要因 は、子どもの貧困率の要因として先行研究より信頼性が高いと考えられる。また、それら10 種の要因の貧困 率に対する相対的影響度が得られ、自治体の子ども貧困対策の実施にとって有用な情報を提供できると考え られる。 3.3 子どもの貧困率の地域の解消対策への試論 最後に、本稿の結果に基づいて地域の子ども貧困対策に資する情報提供の可能性を考察してみる。対象地域 として、国内で貧困率が最高の沖縄県と最低の福井県を取り上げると、両県での要因10 種の国内順位は表 3 のようになる。ここで各要因の危険度順位は、感度の符号が正の危険要因については指標値の降順、符号が負 の抑制要因については昇順の順位である。 この表を見ると、福井県は全体的に危険度順位が低い要因が多く、貧困率が全国最低であることがわかる。 これに対し、沖縄県は危険度順位の高い要因が多く、特に影響度の高い母子世帯や子ども数、失業率、製造業 が沖縄県の貧困率の国内最高に大きく寄与していることが明らかである。 表 3 の結果に基づいて沖縄県の子どもの貧困解消策を考えると、まず、寄与率の高い母子世帯と子ども数 の低減が最も有効である。沖縄県の母子世帯の多いことについては、米軍基地、離婚、低収入、若年結婚など、 多数の理由が考えられる。また、子ども数の多さは、のんびりとした県民性や温かい気候によることが大きい と思われる。しかし、沖縄県の母子世帯の多くは経済的に不安定であり、さまざまな生活問題を抱えている。 これらの問題を解決するには、行政や地域のサポートが不可欠である。 次に、経済・労働分野の失業率の低減と製造業の増加が有効である。これまで沖縄県の3大収入源は「観光」 「基地」「公共事業」の3K 経済といわれてきた。しかし、沖縄県では、アジアの巨大なマーケットの中心に 位置する沖縄の地理的優位性を生かし、アジア経済と連動することで自立型経済を発展させて行くという目 的のため、2015 年、「沖縄県アジア経済戦略構想」を策定し、今後の沖縄経済を牽引する基軸となる「5 つの 重点戦略」を進めている。 さらに、沖縄県は2016 年に「沖縄県子どもの貧困対策計画」を発表し、34 の指標を設定し、子どもの貧困 問題の解消に向け取り組むべき当面の重点施策を定めた。上記の沖縄の経済が活発化することで、就業率の大 幅な向上が図られ、子ども貧困率も本土並みになると期待できよう。 表3 要因の最小、最大と該当県、および福井県と沖縄県の指標値と危険度順位 要因 感度 最小 最大 福井県 沖縄県 符号 指標値 該当県 指標値 該当県 指標値 順位 指標値 順位 母子世帯 + 1.14 東京 3.07 沖縄 1.30 37 3.07 1 子ども数 + 10.3 秋田 17.2 沖縄 13.2 9 17.2 1 失業率 + 2.9 島根 6.3 沖縄 3.3 45 6.3 1 製造業 − 4.9 沖縄 26.7 滋賀 21.7 39 4.9 1 共働き − 17.8 東京 36.1 福井 36.1 47 22.4 6 大企業 − 15.7 山形 47.1 東京 28.2 23 21.5 8 宿泊飲食業 + 4.6 茨城 7.8 沖縄 5.3 29 7.8 1 学童保育所 − 27.1 神奈川 65.2 島根 60.8 45 41.8 14 保育所 − 0.75 神奈川 6.16 島根 3.50 41 3.38 39 短大大卒 − 18.5 秋田 39.8 神奈川 26.0 23 26.0 23 危険度順位:危険要因については指標値の降順、抑制要因については指標値の昇順の順位危険度順位:危険要因については指標値の降順、抑制要因については指標値の昇順の順位
『現代社会研究』17号 ― 60 ― さらに、沖縄県は2016年に「沖縄県子どもの貧困対策計画」を発表し、34の指標を設定し、子どもの 貧困問題の解消に向け取り組むべき当面の重点施策を定めた。上記の沖縄の経済が活発化することで、 就業率の大幅な向上が図られ、子ども貧困率も本土並みになると期待できよう。 4 結 論 本稿では、地域の子どもの貧困対策に有用な情報を提供することを目的に、都道府県別の子どもの貧 困率を目的変数とし、人口・世帯、経済・労働、教育・福祉の3分野の47種の指標を説明変数として、 サポートベクター回帰により一括解析し、その中から貧困率の決定要因を見出し、それらの相対的影響 度を推定する実証研究を試みた。その結果、貧困率を統計的に有意な精度で再現する10種の要因が得ら れ、その中でも母子世帯や子ども数などの要因の影響が大きいこと、および失業率や共働き率などの経 済・労働要因が影響度全体の約5割を占めていることを見出した。さらに、貧困率最大の沖縄県や最小 の福井県の指標値に基づいて、地域自治体における子どもの貧困率改善策を試論した。 今後の課題として、本稿で用いた手法は生態学的研究であるため、生態学的誤謬(Ecological Fallacy)の問題がある。すなわち、都道府県別の貧困率の解析から得られた要因は個人の貧困に関連 付けられるものではなく、単に都道府県の貧困率差を説明するものにすぎない。地域の貧困対策により 有用な情報を得るためには、市町村規模での時系列データや個人単位のミクロデータ等の各種データを 利用した総合的な解析を行う必要がある。また、ここで使われる貧困率は、我々が「貧困」という概念 に対して想定する、たとえば生活保護基準のような所得基準以下の貧困層の割合(「絶対的貧困率」)を 示すものではなく、想定対象の集団(子どもの貧困率の場合でいえば、子ども全体、あるいは子どもを 有する世帯全体)内での相対的な貧困層の割合を示すことにも注意する必要がある。 2019年6月、改正子どもの貧困対策法が国会で成立した。この改正法では、現在の貧困の解消を目的 とし、市町村自治体には保護者の仕事の安定・向上や所得の増大に役立つ支援の計画策定を努力義務と することが盛り込まれた。これによって、子どもの貧困対策が全国的に展開されることを期待したい。 引用文献 1)厚生労働省「相対的貧困率の公表について」(2009). 2)厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査の概況」(2017).
3)UNICEF. “Report Card 10; Measuring child poverty” (2012).
4)田辺和俊,鈴木孝弘「都道府県の相対的貧困率の計測と要因分析」『日本労働研究雑誌』692号,45-58 頁 (2018). 5)戸村健作「都道府県別の貧困率,ワーキングプア率,子どもの貧困率,捕捉率の検討」『山形大学人文 学部研究年報』13号,33-53頁 (2016). 6)永井保男「子供の貧困:その背景に関する人口学的考察」『中央大学経済研究所年報』48号,69-98頁 (2016). 7)日本財団「子どもの貧困の社会的損失推計-都道府県別推計レポート」1-34頁 (2016). 8)坂口雄紀「都道府県別にみた子どもの貧困の要因分析」『財政経済理論研修論文集』119-141頁 (2018). 9)沖縄県「沖縄県子どもの貧困実態調査結果概要について」(2016). 10)大北剛(訳)『サポートベクターマシン入門』共立出版 (2005). 11)小野田崇『サポートベクターマシン』オーム社 (2007). 12)阿部重夫『パターン認識のためのサポートベクトルマシン入門』森北出版 (2011).
13)Chang C-C, Lin C-J. “LIBSVM-a library for support vector machines”, http://www.csie.ntu.edu.
都道府県別の子どもの貧困率の要因分析
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14)Tanabe K, Kurita T, Nishida K, Lučić B, Amić D. Suzuki T. “Improvement of carcinogenicity
pre-diction performances based on sensitivity analysis in variable selection of SVM models” SAR QSAR
Environmental Research. Vol. 24, No. 7, pp. 565-580 (2013).
15)大石亜希子「子どもの貧困の動向とその帰結」『季刊社会保障研究』43巻, 1号, 54-64頁 (2007).
16)斉藤知洋「子どもの貧困と中学生の教育期待形成」『社会学年報』46巻, 127-138頁 (2017).
17)明坂弥香,伊藤由樹子,大竹文雄「日本の子どもの貧困分析」『ESRI Discussion Paper』337号, 1-38
頁 (2017).
18)戸室健作「都道府県別の子どもの貧困率とその要因-福井県に着目して―」『社会政策』10巻, 2号