植 物 防 疫 第68 巻 第 9 号 (2014 年) ― 66 ― 577 一眼レフのカメラを手にしたときから,いろいろな昆 虫の写真を撮りたいと思っていた。大学1 年のことであ る。はじめは,単に昆虫の写真を撮るだけでも満足して いたが,やがて昆虫が を食べていたり,産卵していた りする,行動を撮影するのが楽しくなってきた。10 年 ほど前にデジタルの一眼レフカメラを入手してからは, なおさら昆虫たちの行動の決定的瞬間を撮れないものか と,空き時間はカメラを片手に歩き回っている。 数ある昆虫の行動の中でも,「狩りバチ」が獲物を捕 らえ,巣へ運ぶ行動は,「昆虫記」の中で,ファーブル が魅せられたものとして取り上げられている。この話を 少年版の「ファーブル昆虫記」を読んで以来,狩りバチ の狩りを自分でも見ることは,小さいころからの憧れで あり,いつかは撮影したいものだと思っていた。しかし 一口に「狩りバチ」といっても,その名は特定の種群を 表すものではなく,スズメバチ,アシナガバチ等の社会 性を持つもののほか,アナバチ,クモバチ等,多くの単 独生活する種からなるもので,日本には1,000 種ほどい るようである。となると,出会う機会も多そうなものだ が,彼女ら(巣を作り獲物を狩るのはメスバチである) が,狩りをする場面に出会うには,その狩りバチの生息 場所はもちろん,獲物となる種やその生態もわかってい て,さらに撮影する運も含めた条件が必要となるため, まとまった時間がないと無理だと半ばあきらめていた。 2001 年から自分で撮影した昆虫を,「戸定の昆虫」と いうウェブサイトで公開し始めたが,一眼のデジカメで 撮影するようになってからは,撮影した写真を当日にも サイトにアップすることが可能になった。このため更新 の頻度が上がり,野外に出る機会も増えたため,行動し ている昆虫との遭遇頻度も以前より高くなってきた。 あるとき近くの空き地に,サトジガバチがよく見られ たので,空き時間を利用して撮影に出かけた。ふと見る と,1 匹のジガバチが地面にいて何かを探しているよう なので観察してみた。彼女は落ち着きがなかったが,や がて少し離れたところに歩いて行き,何かをくわえた。 これはチャンスとファインダーを通して覗いた私は驚い た。彼女のくわえていたものは,地面と似た配色のシャ クガの幼虫だった。警戒心の強いメスバチは,なかなか 巣穴の位置を教えてくれなかったので,その後の行動を 撮影することはできなかったが,私は初めて狩りバチが 獲物を運ぶ姿を撮影することができた。こうして野外を 出歩く機会が増えると,狩りバチの撮影のチャンスも多 くなり,昨年は調査帰りに立ち寄った公園の花壇で,自 分の体よりも大きなヒメギスを運ぶクロアナバチの様子 も撮影することができた。そしてついに,オオフタオビ ドロバチがムクゲのつぼみに潜む蛾の幼虫をほじりだし て,針を刺す「狩りの瞬間」の撮影にも成功した。長年 の夢が少しだけ叶ったのである。まだまだ狩りバチはた くさんいるし,もっとすてきな瞬間に立ち会えるよう, これからも観察していこうと決意を新たにしている。 ありきたりの教訓だが,外に出ていろいろ観察し,そ こから様々な昆虫の生活を学んでいくことで,良い写真 も撮れるようになるものだと思う。私の専門は,環境に 優しい害虫防除や分子系統解析だが,抽出したDNA や 実験室内だけで,昆虫に接するのではなく,野外に出て 彼らの生き様を見て,そこから感じてほしいと,自分の 学生には指導している。それでこそ野外観察から生きた データが取れてくるものだと,私は信じている。
あれも見たい!これも撮りたい!~私の昆虫撮影記~(その1 狩りバチ)
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