タブレット端末を活用した幼児教育向け教材の試作
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(2) Vol.2013-CE-120 No.4 2013/7/6. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 第 5 回 神経衰弱アプリケーションと前回までの 復習. 評価の観点は,先行研究などを参考に,1)幼児間のコ ミュニケーション,2)デジタル教材を使用する意義,3). 第 6 回 アプリケーションとペーパーを併用した. 学習面での効果の 3 点とした.. 学習効果の検証 第 7 回 神経衰弱・絵の創作を自分で考えて使っ. 1)幼児間のコミュニケーション 図 2 のように,園児は周りの友達との間で,自発的に操. てみる 第 8 回 ひらがなアプリケーションのまとめとし. 作方法の学び合い,自分が興味をもったことなどを伝え合. て,自分の名前を書き,順通り書く絵の. うなどの行動が見られた.先行研究[4]で保護者が危惧して. 創作使い,作品を作り写真に残す. いる「コミュニケーションへの影響」は良い方向で働くと 思われる.一人一台の環境においてもコミュニケーション への負の影響はないと考えられる.これも,図 2 に見られ るように,タブレット端末は,幼児が,簡単に持ち運ぶこ とができないディスクトップ型コンピュータとは異なり, 5才ぐらいの体格,体力でも容易に持ち運びができること が大きいとおもわれる. 2)デジタル機器・教材を使用する意義 全体として,園児は,興味・関心が高く積極的に, “ひら がな”の書き方や“すうじ”の量の概念などについて繰り 返していた.また,指導者への聞き取りによって,従来の 紙メディアによる練習と比べ,書き順などの間違いがアプ リケーションによって確認しながら学習できるため,園児. 図 1 使用アプリケーションと使用した授業. が自分のペースで練習できること,さらに指導者が机間指 導によって個別対応を行う時間が十分にとれる点などの利. 今回実施した実証講座の授業内容は,iPad を教具の一つ. 点が確認できた.. として捉えている.なお,実施幼稚園の直接体験を多くさ. また,観察する過程で,図 3 のように,紙で“ひらがな”. せたいという考えと,デジタル教材で, “ひらがな”が書け. を書く場面で,手遊びなどを続けて集中できない幼児が,. るようになるかを検証するために, “ひらがな”を学ぶ場合. iPad を使って“ひらがな”を書くことは集中して行なうこ. は,紙と鉛筆も併用するようにした.また,使用アプリケ. とができ,他の園児よりも進み具合が良い場面があった.. ーションは,すべて市販(無償アプリケーションを含む) のものを用いている.. 図 3 実証講座の場面(同一園児の様子) タブレット端末の操作方法の習得は,当初予想していた よりも順応性は高かった.1回目の授業の後半では,ほぼ 図 2 実証講座の場面(学び合いの場面). 全員が使う事ができるようになった.また,1回目に欠席 していた幼児も,2回目の授業においては,周りの幼児に 遅れることなく参加できていた.これは,幼児間の学び合. 3.2 観 察 に よ る 評 価. いの効果もあると思われるが,タブレット端末の操作性の. 観察による評価は,第 1 回,第 4 回,第 6 回,第 8 回の. 良さが主な要因であると考えられる.. 4 回分は実際の講座を観察して行った.残りの回は,講座. 今回,使用したアプリケーション全般で特徴的だったの. の様子を録画し,ソーシャルラーニングシステムを用いて. は,カラフルな画像,動画,音などで子供たちの五感に訴. 参観者の意見を確認して評価を行った.. えかけるものが多いことである.アプリケーションへの興. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 2.
(3) Vol.2013-CE-120 No.4 2013/7/6. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 味・関心を持ちやすい作りになっている.しかしながら,. の保護者アンケートの結果などから,意欲面で効果があっ. ほとんどのアプリケーションは,自宅での利用を想定して. たと思われる.. いため,音量の調整,まちがっても先に進めるなど,教育 効果の部分で問題があるなど園活動で使うこと場合には注. 3.3 保 護 者 ア ン ケ ー ト の 結 果. 意が必要であった.. 実証講座終了後に,保護者(対象 21 名:回答 20 名)を. また,タブレット端末では,前提として“指”での操作. 対象として,1)幼児と保護者とのコミュニケーション,. との認識があったが,実際に“ひらがな”の練習を行う場. 2)幼児の“ひらがな”,“すうじ”に対する興味・関心の. 面では, “ 指”でうまく,画面をなぞれない幼児が多くいた.. 変化,3)デジタル機器を使うことに保護者の考え,5). 観察からは,直線以外の曲線部分において,その傾向が強. その他全般に関する意見,についてアンケートを行った.. い.推測ではあるが,曲線をなぞる場合においては,正し. 1)の幼児と保護者とのコミュニケーションについては,. くなぞろうとするがために,画面を指で強く押してしまい,. すべての家庭で数回以上の話す機会を得ており,50%の家. 手首や腕がスムーズに動かなかったように見えた.そこで,. 庭で,どちらからかというと幼児から話をしている.主に. スタイラスペンを用いると,スムーズに曲線をなぞれるよ. 保護者から話をしているのは 40%であった.その際の,幼. うになった.しかしながら,スタイラスペンは,幼児が使. 児の様子は 95%幼児が(大変)楽しそうにしていることが. うと,ペンの先が外れやすいこと,書いていて疲れない重. わかった(図 5).. さの見極め,正しく持たないと画面操作できないこと,そ れに対応して持ちやすさ,などの面で課題がはっきりした. 幼児向けのスタイラスペンが多くないことから,今後,実. ② # !
(4) $,#20%#. ③# " $,# 5%#. ④ ,#0%# ⑤ ,#0%#. 践に基づく開発が必要である。 ① #.
(5) $,#75%#. 3)学習面での効果 学習面の効果については,小学校などと異なり幼稚園で は,比較となるテスト結果などの定量データがないことか ら統計的な検証は困難である.また,幼児へのインタビュ. 図 5 家庭での会話の様子. ーは,幼児の回答を誘導する可能性が高いことから行わな かった.そこで,第 2 回目の授業において,iPad を使った 練習の前に,ひらなが(あ行)を紙に書いてもらう(1 分. 2)については 55%の幼児が,大変興味を持ったあるいは,. 間).その後,iPad のアプリケーションを用いて,“あ”行. ある程度興味をもったと答えている(図 6).実証講座前か. を 3 回反復練習した後に,もう一度,紙に“あ”行を書き. らい自宅等で“ひらがな”や“すうじ”を学習していた幼. (1 分間),比較した.. 児は, “行なっていた”が 75%, “あまり行なっていなかっ た”が 15%,“学習していなかった”が 10%であった.多 くの家庭で学習している状況の中で,保護者から見て,35% の幼児が, “ 大変興味を持つようになった”と回答しており, 興味・関心の向上に効果があると思われる.特に,自宅で 学習をしていない幼児ほど興味・関心が高くなっている傾 向があった. ④" ( % ,#0%#. 図 4 ひらがな練習(上段:練習前 下段:練習後). ③ & $"',# 45%#. ① % ! ,#35%#. ⑤ % ,#0%#. 結果として 18 人(第 2 回出席数)中 8 名が事前より事後 で書ける文字が増えていた.顕著に差があったのは 2 名で, 1 名は事前ではまったく書けなかったが,事後に 3 文字は 書けていた(図 4).その他も 2 文字から 1 文字書ける字が. ②#
(6) %! ,#20%#. . 図 6 幼児の興味・関心度について . 増えていた.これだけでは,デジタル機器や教材アプリケ ーションでの練習の結果であるとは決められないが,3.3. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 3)の保護者の考えでは,学習活動では 35%の保護者が,. 3.
(7) Vol.2013-CE-120 No.4 2013/7/6. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report “ぜひさせたい”, 60%の保護者が“機会があればさせたい”. ランスを求める声もあった.. と答えている(表 1).それ以外の園活動では,100%の保. したがって,これらのことから,幼児たちの学びの興味. 護者が“ぜひさえたい”あるいは“機会があればさせたい”. 関心の入り口としてタブレット端末は優れており,タブレ. と答えている.それ以外の園活動とは,運動あそび,自然. ット端末幼児の直接体験を広げる一つの教材として活用す. とのふれあいなど,直接体験を伴う園活動である.. ることが有効であると考えられる.ただし,教材として利. これらの調査から保護者は, “ 現代的ニーズに合ったタブ. 用するアプリケーションも,学習目標に合うものを厳選す. レット端末を用いた新しい教育に対して期待すると共に,. る必要である.また,余暇活動が強いアプリケーションも. 幼児教育においては,直接体験との融和あるいは,直接体. あるため,事前に指導者側で確認をしておく必要あると思. 験を広げる間接体験としての利用などを望んでいる”姿が. われる.. 浮かび上がっている. 表 1 学習活動での利用についての保護者の考え. 4. 幼 児 教 育 に お け る タ ブ レ ッ ト 活 用 方 法 日本の幼児教育におけるコンピュータ活用は,先行研究. . . . .
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(9) . にあるように,未だ黎明期である.今後,iPad や Android などタブレット型端末の普及により,幼児教育においても 活用が進むことが期待されている.以下,これらの結果か ら,幼稚園などの幼児教育におけるタブレット型端末の活 用方法について考察を行なう.. 3.4 実 証 講 座 の 考 察. 幼児教育のコンピュータ利用は,幼稚園教育要領[5]など. 上記の結果から,幼児教育におけるタブレット端末の活. の影響もあり遊具としての活用などの報告[6]がある.しか. 用は,. しながら,保護者の意識には,保護者アンケートや松山ら 1. タブレット端末の操作方法については大人以上 に幼児の順応性は高い.. の調査結果[4]などに見られるように,学習活動(“もじ” や“数字”の知育)への期待が高い.また,加藤らによる. 2. 教材(アプリケーション)がカラフルな画像や,. と,幼保と小学校のスタッフ間で有意に差が見られる事項. 動画,音などで子どもたちに訴えかけるので,. として「文字を読むことや基本的な計算技術」があり,幼. 教材に対して興味を持ちやすい.. 小のスタッフでは幼稚園や保育所で身につけるべきである. 3. 指でタッチして動かすことにより,自らが操作 をしている感覚が強い. 4. 幼児たちの学びの興味関心の入り口としてタブ. と考えるが,小学校教員はそうでない結果がでている[7]. 幼稚園と小学校における教育目標の考え方は大きく異な る.幼稚園教育要領においては,幼児期は「学びの芽生え」. レット端末は優れており,タブレット端末幼児. の時期であり,学ぶということを意識しているわけではな. の直接体験を広げる一つの教材になりえる.. く,遊びの中で集中することで様々なことを学んでいると. などが有効であることが確認できた.. されている.これが,小学校入学にかけて「自覚的な学び」. 特に,保護者アンケートの自由記述の中に, 「元々,字を. へと成長していくと考えられている. 「 自覚的な学び」とは,. 書くことに興味を持っていましたが,iPad 授業を受講する. 学ぶということに意識があり,集中する時間とそうでない. ようになってからは,家庭のテーブルに向かっていろいろ. 時間の区別がつき,学びの集団の中で決まりを理解しなが. な物の名前を書いて遊んだりするようになり,学ぶ楽しさ. ら,与えられた課題を自分の課題として受け止め学習を進. を実感しているようで良かったと思います」,「今まで興味. めることである.小学校における教科学習がこれにあたる.. のなかったひらがなに,急に興味を持ち,ワークブックを. 小学校学習指導要領[8]においては, 「〜ができるようする」. 買うと自分から進んで取り組んでいます」,また,「毎回,. と具体的な到達目標が上げられ,学問体系の獲得を重視す. 子供の方から,“今日 iPad やったよ!”と報告を受け,内. るようなカリキュラムであるなど違いがある.. 容についても子供の言葉で説明をしてくれました.書き順. また,幼稚園教育要領では,ねらいは,幼稚園修了まで. などの確認など,家庭でも子供から話してきたので,興味. に育つことが期待される生きる力の基礎となる心情,意欲,. をもって取り組め,できるようになったことに喜びを見出. 態度などであり,内容は,ねらいを達成するために指導す. せていたのではないかと思います」など,肯定的な意見が. る事項とし,これらを幼児の発達の側面から,心身の健康. 多く書かれていた.一方で, 「これからの世の中,デジタル. に関する領域「健康」,人とのかかわりに関する領域「人間. 機器を使いこなせた方が良いと思いますが,紙と鉛筆で絵. 関係」,身近な環境とのかかわりに関する領域「環境」,言. を書いたり,文字を書くなどアナログなことも大切にして. 葉の獲得に関する領域「言葉」及び感性と表現に関する領. 欲しいです」などの記載もあり,幼児期の直接体験とのバ. 域「表現」の5領域において定めている.これを基本とし. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 4.
(10) Vol.2013-CE-120 No.4 2013/7/6. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report て教育内容を定めていることと,直接体験重視の考え方か. この考え方に基づき,数種類の教材開発を行なっている.. ら,情報教育への対応に難しさがある.. 本報告では,まず,5領域のうち,自然と表現領域の活動. しかしながら,平成 24 年度青少年のインターネット利用. において6つ目の領域として「科学リテラシー」及び「情. 環境実態調査(内閣府) [9]によると,情報通信技術の発展・. 報リテラシー」の育成を図る教材「草花図鑑」について,. 普及が大人や教育現場が考える以上に,幼児・生徒に普及. 以下に述べる.その後,健康領域における教材案について. し,低年齢化が進んでいる現状がある.そこで,子供が初. 述べる.. めてコンピュータなどに触れ始める幼児時期に,幼児が身. これらの教材開発上の特徴は,可能な限り既存のシステ. に付けるリテラシーの一つとして科学リテラシーと並び情. ム,アプリケーションを組み合わることで,園活動に対し. 報リテラシーを位置づけ,米国の ISTE が策定した情報教. て柔軟性に対応できることである.. 育の規準 NETS[10]のように段階的に情報教育を行なって いくことが重要であると考えられる.. 5.2 「 草 花 図 鑑 」 の シ ス テ ム 構 成. したがって,我々は,幼稚園教育要領における5領域の. 「草花図鑑」は,WordPress を基盤に,幼児用インタフ. 他に,小学校での教科学習への接続性を考慮した,科学リ. ェースとしての Web アプリケーションと保育者と保護者. テラシー,言語リテラシー,数量リテラシーなどと,情報. のインタフェースを試作した(図 7).. 教育への接続性を考慮した情報リテラシーを6番目の領域. . として位置づけることとした.この6番目の領域は,他の 5領域とは異なり,5領域の活動を支える領域であり,5. % /#0 !,. *). % /#0. 領域の活動を通して習得させる領域と考えている.. . これらを考慮すると,例えば,タブレット型端末などを 教具としての利用する場面としては,小学校で学ぶ, “ひら がな”や“すうじ”への接続を考慮して,幼稚園の年長組. .). &. -
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(12). において,自分の名前がかけることを教育目標として, “ひ らがな”や“すうじ”への興味・関心を高める活動を通し て,小学校での教科学習への移行をスムーズに行なうこと 対してタブレット型端末が有効であると考えられる. その際に重要ことは,保育者や保護者が積極的に関わる. +$(. %'" . 図 7 「草花図鑑」のシステム構成概念図. ことである.保護者である大人と共に情報リテラリーを共 有し活用する力を付けることで将来起こりうる情報モラル. 主に幼稚園での活動では,幼児が活動中に気づいた事柄. に関する対応が容易になることが期待できる.. について保育者と協働(但し,幼児が主体的に活動する) で調べ,その結果とその活動に対する気づきを登録するこ. 5. 教 材 と 活 動 案 5.1 基 本 的 な 考 え 方. とから,検索では,草花に対する科学的な視点に基づき検 索活動を行えるようにしている.その結果を WordPress サ ーバに蓄積することで,自宅等での活動において,保護者. これまでの考察等に基づき,次の考え方に基づいた教材. と幼児のコミュニケーション(人間関係など)を活発に行. の開発を行った.. えるように工夫している.その際,自宅での活動で保護者 が気づいたことなどをシステムに登録することで保育者と. 1. 幼児たちの学びの興味関心の入り口としてタブレッ. 保護者の間のコミュニケーションにも活用できるよう配慮. ト端末を活用し,幼児の直接体験を広げる教材とする. している.システムの詳細については,次節以降に述べる.. 2. タブレット端末は幼児が希望すれば,いつでも自由 に利用できる1人1台の環境での利用を想定する 3. 5領域の活動の中に,リテラシーを位置づける 4. 幼児,保育者,保護者が連携して幼児教育に参加で きる. 5.3 「 草 花 図 鑑 」 の 活 動 案 「草花図鑑」を用いた活動案を,図 8 に示す.幼稚園で の活動は,幼稚園近辺での自然散策活動や園庭での花壇の 整備活動などを想定している.その活動の中で,幼児が気. 5. 特に,保育者は,幼児からの問いかけに対して保育. づいた草花などについて,幼児が気づいた時点で調べ活動. 者主導ではなく,幼児主導あるいは協働で解決にあた. ができるように,タブレット端末や無線 LAN 環境を予め. ることができる教材であること.つまり幼児に寄り添. 配置しておく.また,保育者は,事前に活動周辺での草花. い,助言者としての役割を意識できる教材であること. の情報を収集してシステムへの登録を行なっておく.これ は,検索結果が,幼児の生活範囲にない草花が示されない. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 5.
(13) Vol.2013-CE-120 No.4 2013/7/6. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report ようにするためである.生活範囲にない草花が示されると. 配慮することが求められる.ただし,先の考察に上げたよ. 発展的な学習が可能になるが,直接体験より間接体験が増. うに,幼児のタブレット端末に対する順応性は思っている. えることからの配慮である.. より高いことから,最初の段階で保育者あるいは保護者が. 保育者の役割は,あくまでも助言や援助にとどめておく.. 援助することで,幼児が自主的に活用できると考えている. 保育者は,幼児からの問いかけに対して,安易に答えを述. ことから,過度に簡単化しなくても良いという考えのもと. べることは避け,幼児が主体的に調べ活動できるように,. 構成している.なお,特定の機種に依存しないように,. 助言したり援助したりすることが,主な役割となる.幼児. jquery mobile を用いた Web アプリケーションとして構築し. 自らが,主体的に調べ活動を行なうことで,科学的な視点. ている.. に気づき,科学リテラシーの育成につながると考えている.. 図 9 は,幼児がタブレット端末で使うシステムのトップ. なお,調べ活動の中で,システムに登録されていない草. 画面である.上段に,草花の特徴を「はな」と「はっぱ」. 花を対象とした場合は,保育者が科学的視点に注意しなが. にわけて観察できるようにしている.調べた特徴は,下段. ら図鑑本などで調べ,教えるなどの活動を行なう.その後,. に言葉として表示することで,特徴を言葉でも理解出来る. その情報はシステムに登録するなどデータの蓄積を行なう.. ように配慮している.. 図 9 トップ画面 図 10 は,「はな」の特徴を,色と形で捉えられるように, イメージ図から選択できるようにしている.ここに上げて いるイメージ図に類似のものがない場合は不明(?)を選 べば良いようにしている. 「はっぱ」の特徴も,形,葉のつ き方,葉の淵の様子などを選択できるようにしている. 図 8 システムを用いた自然観察などの活動案 自宅等では,保護者等が自宅の端末などを使い,幼児が 調べた内容などを確認する.その際,幼児と一緒に行なう ことが,保護者と幼児との間のコミュニケーションを促進 し,学びを肯定的に捉えることが可能となると考えられる. また,自尊感情で大切な感覚である「包み込まれ感」を育 むことになると思われる.さらに,幼稚園での学びのポー トフォリオへの発展が期待できる. 5.4 「 草 花 図 鑑 」 の 画 面 構 成 年長組の幼児は, “ひらがな”, “すうじ”に興味をもつ時 期ではあるが,すべての用事が読み書きできるわけではな. 図 10 検索条件入力画面(花の特徴). い.また,日常でよく使う言葉以外の意味についても理解 が困難な場合もある.したがって,幼児が使う画面では,. 図 11 は,検索結果を表示する画面である.図では一つの. これらのことから,出来るだけ直感的に利用できるように. 結果だけ表示されているが条件が合えば,複数の結果が表. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 6.
(14) Vol.2013-CE-120 No.4 2013/7/6. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 示される.その際に,検索ワードとのマッチ度による並び 替えなどは行なっていない.本教材では,草花を登録して いる WordPress への登録順で表示されるようになっている.. 図 13 調べた草花についての気づきを登録する画面 保護者等が主に使う画面は,WordPress の標準画面を使 図 11 検索結果の表示画面. う(図 14).これは,保護者等の情報リテラシーは,個人 差が大きいことから,誰でも使えるインタフェースである. 検索結果の一覧から,調べている草花を見つけた場合は,. こと考慮している.. 草花の名前をタップすることで,図 12 の画面上部にある ように,気づきなどを WordPress サーバに登録するための ボタンが表示される.ここをタップすると,図 13 が表示 され,気づきなどを入力することが可能となる. その際に,WordPress に登録される情報としては,発見 した草場の名前と位置情報,登録者の名前,気づきの情報 である.位置情報は,タブレット端末の GPS 情報を基に GoogleMap 上にマークが設定される.この情報は,幼稚園 近辺にどんな草花があるかを共有し,発展的な活動での利 用を視野に入れたものである.例えば,近隣の幼稚園とシ ステムを共有することで,地域の草花図鑑として活用でき,. 図 14 保護者用の画面例. 小学校などの総合的な学習の時間などでも活用が可能とな ることが期待される.. 保護者と幼児が活動について話し合いをして,保護者や幼 児が気づいた事は,保護者がコメント機能を用いて,登録 を行なう.この内容は,保育者が後日確認を行い,保護者 と保育者間におけるコミュニケーションや,その後の園活 動に反映させることが可能であり,園活動全体の振返りが 可能である. 5.5 そ の 他 の 教 材 「草花図鑑」とは別に,既存のアプリケーションやシス テムを用いて行なう教材として5領域のうち「健康」と「情 報リテラシー」を含む「体育授業」の指導案について述べ る. 図 12 草花を発見時に表示される画面. 「体育授業」においても,幼児,保育者,保護者の3者 が一体となって活動できることを目標としている.ここで 身につける情報リテラシーは,映像撮影のための機器の操 作及び,情報活用である. 「体育授業」では,器械体操を対象として,個人の様子. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 7.
(15) Vol.2013-CE-120 No.4 2013/7/6. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report や成果を動画で確認することで,幼児間および幼児個人で. るタブレット端末活用の可能性について,実証講座の観察. 振返りを容易に行なうことを目指している.使用する機器. 及び保護者アンケートの結果からの考察を行った.その結. は,カメラ機能を持ったタブレット端末(iPad)を幼児1. 果,タブレット端末などは幼児の興味・関心を高める効果. 人に1台,ビデオアプリケーションとして,映像に書込が. があり,幼児教育での活用が有効であることがわかった.. でき,他の映像と比較が可能な ubersense など,標準装備の. また,幼児教育においては幼稚園教育要領の5領域と別に,. ビデオアプリケーション,三脚,ビデオデータを共有する. それを補完し,直接体験の学びを広げる6番目の領域とし. ための Google Apps である.. て,科学リテラシーや情報リテラシーを位置付けた.. この教材では,原則として,既存のアプリケーションを. この結果に基づき,幼児−保育者−保護者が,協働で幼児. 活用し,新規に試作は行わないこととした.. 教育での学びを行なう「草花図鑑」,「体育授業」などの教. 本活動の指導案を,以下に示す.. 材の検討を行い,教材を試作した. 今後,この結果を基に,幼児教育におけるタブレット端. ◎準備段階 1.. 教師の見本撮影 (準備段階). 末を活用した教材の開発と指導方法についてさらなる検討 を行ない,実践する予定である. . ・ 幼 児 が い つ で も 見 て , 復 習 が で き る よ う に , Google Apps の Google ドライブに登録する.. 謝 辞 本研究を進めるにあたり,信学会佐久幼稚園での. ・ 授業時に説明するポイントに対して,事前にマ. 実証講座を観察・分析する機会を頂き,評価結果及び試作. ークを入れておく.. 教材について専門的な立場からの意見をいただいた信学会 の栗林聖樹氏,キャスタリア株式会社の山脇智志氏を始め. ◎本時内での活動 1.. 保育者が見本映像を活用して,ポイントを教える.. 2.. 練習を行い,助言を行なう.. 3.. 幼児が行なっている体操を数名分撮影し,見本映像 と並べて比較し,良い点,改善点を探し,話し合う.. 4.. 保育者や幼児同士で教え合いを行なう. 5.. 幼児の体操を撮影し,以前の映像と並べて比較する. その際,良くなった点についての説明を行なう. 6.. 練習 ・ 幼児同士で映像を撮り合い,見ながら改善点な どを見つけて練習していく. ・ 保育者は,習得の苦労をしている幼児の補助を 行なう.. 7.. まとめの撮影 ・ 発表の様子を撮影し,保護者が閲覧できるよう に,Google Apps の Google ドライブに映像をア ップする.. 本教材の利点は,活動に対する教育目標がアプリケーシ ョンの機能と一致すれば,既存のアプリケーションを幼児 教育でも利用できることである.ここで使用予定のアプリ ケーショは,コーチが活用するものであるが,機能的には 十分なものである.なお,保育者のアプリケーション使用 についてトレーニングは必要であるが,教材のアプリケー. とする「デジタル幼稚園プロジェクト NASE」関係者の皆 様に深く感謝いたします.. 参考文献 1) 堀田博史:幼児教育におけるメディア活用の現状とフューチャ ースクールにおける小学校現場での ICT 利活用, 情報処理, Vol.53, No.1, pp.56-59 (2012). 2) 小平さち子:幼児教育におけるメディア利用の課題と展望〜 2008 年度 NHK 幼児向け放送利用状況調査を中心に〜,放送研究 と調査, 第 7 月号, pp.90-105 (2009). 3) 冨津田香:日本の幼児教育における ICT 活用の現状−メディア 世代を生きる幼児教育の課題−,児童教育研究,第 20 号,pp.73-82 (2011). 4) 松山由美子,村上涼,堀田博史,松河秀哉,森田健宏,吉崎弘 一:幼児のパソコン利用に関する調査−保護者へのアンケートより −,四天王寺大学紀要, 第 53 号,pp.85-98 (2012). 5) 文部科学省:幼稚園教育要領, http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/you/index.htm 6) 坂東宏和,大即洋子,大島浩太,小野和:幼児がお互いに宝物 を隠しあう「宝探しゲーム」の幼稚園における試行,情報処理学 会研究報告,Vol2012-CE-113,No.3,(2012). 7) 加藤美帆,高濱裕子,酒井朗,本山方子,天ヶ瀬正博:幼稚園・ 保育所・小学校連携の課題とは何か,お茶の水女子大学人文科学 研究,第 7 巻,pp.87-98(2011). 8) 文部科学省:小学校学習指導要領, http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/index.htm 9) 内閣府:平成 24 年度青少年のインターネット利用環境実態調査, http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/h24/net-jittai/html/inde x.html,(2013) 10) NETS:http://www.iste.org/standards(2013 年 3 月 1 日アクセ ス). ション開発に係る手間が省け,即座に実践が可能となる.. 6. お わ り に 本稿によって「デジタル幼稚園プロジェクト NASE」に おけるタブレット教育実証講座を通して,幼児教育におけ. ⓒ2013 Information Processing Society of Japan. 8.
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