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Duchenne 型(DMD)及び Becker型(BMD)筋ジストロフィー家系の保因者診断に関する研究

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(1)

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Duchenne ll!

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(DMD) tiP6X Ue Becker ZI! (BMD)

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Carrier Detection of Duchenne and Becker Type Muscular

Dystrophy Using Various Methods

Akemi YAMAUCHI

Department of Pediatrics (Director: Prof. Yukio FUKUYAMA)

Tokyo Women's Medical College

We carried out family tree analysis, serum creatine kinase (CK) level measurement and molecular

genetic investigations (Southern blotting) of the Duchenne muscular dystrophy (DMD) gene to determine the carrier state of mothers from 26 DMD and five Becker muscular dystrophy (BMD)

families.

Family tree analysis revealed four, one, and 26 mothers to be definite, probable and possible carriers, respectively. According to the serum CK level, 18 mothers, 15 from DMD and three from

BMD families, had normal levels. Thirteen mothers, including 11 from DMD and two from BMD

families, had high serum CK levels, and were thus suspected to be carriers. The genes of all probands were investigated by Southern blotting and 19 were found to have deletions in the DMD gene (67.8% of

31).

O In 14 mothers (73.7% of 19), gene deletions identical to those of their affected sons were

recognized. Therefore, these 14 mothers were diagnosed as carriers. Five of them were possible

carriers and had normal serum CK levels. These five carriers would probably not have been detected by classical methods.

@ Five mothers (26.3% of 19), diagnosed to be possible carriers, did not show the gene deletions found in their affected sons. These mothers were diagnosed as non-carriers, and the probands were diagnosed as new mutations (new mutation rate: 26.3%).

Molecular biological study makes it possible not only to identify genetic carriers, but also to detect non-carriers and new mutations. However, in the seven sporadic case families (22.6% of 31 families),

whose mothers showed a normal serum CK level, no gene abnormalities were found and carrier

detection was not possible. The diagnostic rate of carrier detection using farraily tree analysis, serum CK level and molecular genetic methods was 77.4%, altogether.

It is difficult to detect carriers by Southern blotting when fragments comigrate or hybridize weakly. Therefore we carried out an RNA investigation by the nested PCR method and pulse field gel electrophoresis (PFGE) in one model family. RNA of abnormal size, as observed in the patient, was also observed in the mother's RNA proving her to be a carrier, and a junction fragment was observed in both the patient and his mother by the PFGE method. The mother was'thus confirmed to be a carrier. It is expected that these methods will also make carrier detection more accurate and detailed in other families.

(2)

-1104-         緒  言

 Duchenne三筋ジストロフィー(DMD)は,1868

年,Guillaume Benjamine Amand Duchenne1)に より最初の詳しい記載がなされ,次いで1891年, Wilhelm Erbが神経系に異常を認めず,骨格筋に 進行性変性を来す疾患を,病理組織学的所見から

dystrophia muscularis progessivaと命名し

た2).DMDは筋ジストロフィー諸型の中でも先天 型について重症の経過をとり,罹病率は入口10万 人当たり21.7人3),本邦における発生率は,男児出 生3,000∼4,000人に1人と報告されている4).ま た,肝疾患は高い突然変異率でも知られ,本邦に

おける突然変異率は,臨床的統計分析により

0.29±0.046とされている5).より緩徐な経過を取 るBecker型筋ジストロフィー(BMD)6)の罹病率 は人口10万人当たり3.2人3)である.DMD, BMD

はともにX連鎖性劣性遺伝性疾患(以下XR疾

患)であるため,女性保二者の診断は臨床的,社 会的に重要な役割を持つ.従来,種々の方法が保 因者診断に試みられてきた.この内,・家系分析は,

DMD/BMDのような遺伝性疾患の診断基礎をな

すもので,家系によっては明確な保因子診断が可 能である.しかし,今後出生してくる児の診断は, 確率論で結果が得られるにすぎなかった.また, 構成人数が少ないなど,家系によっては判断不能 であることも多かった.その後,血清クレアチン キナーゼ(CK)値,徒手筋力テスト,筋電図など も保因者診断への応用が検討されてきたが7)∼11), より信頼できる方法が望まれていた.

 DMDの基礎研究分野における近年の分子遺伝

学的,遺伝子工学的進歩は著しく,1977年,DMD

遺伝子座がX染色体短腕21に位置することが明

らかになったのを始め12),1987年Koenigらは

DMD遺伝子をクニーニングし13),その14kbの

mRNAを分離14),対応するcDNAの塩基配列を

決定した15).また,その遺伝子産物であるタンパク 質が発見され,ジストロフィンと命名された16).

DMD遺伝子は現在知られている遺伝子の中では

最大の,全長2,500kbに及ぶ巨大遺伝子であ’る.こ の配列の中にエクソンが70個以上あることが明ら かにされている17).このような遺伝子研究の進歩 は,罹患家系の遺伝子診断をすることにより,保 誉者診断,出生前診断として様々な形で臨床に応 用されてきている18)∼29>.  現在のところ従来行われてきた保因者診断法と 分子遺伝学的保冷者診断を合わせ検討した研究は 見受けられない.本研究ではこれら,家系分析,

血清CK値,サザンプロット法による分子遺伝学

的検索により31家系の保因者診断を行い,結果を 総合的に検討,保因者,二三因者の確定,新生突 然変異患者の確定とその出現率を調べた.また,

そのうちの1家系に関しては,nested PCR法に

よるmRNAの分析24)およびpulse丘eld gel

electrophoresis(PFGE)法28)29)により遺伝子を分 析し,より明確な保因者診断を試みたので報告す る.

       対象および方法

 臨床症状,臨床経過,生化学的,筋組織学的諸

検査に基づき,当科で診断したDMD発端者の母

親26例とBMD発端者の母親5例,合計31例(31

家系に属し,互いに血縁関係はない)を対象とし

た.臨床的DMD, BMDの診断の目安としては,

乳児期には著変なく,自立歩行を1歳半∼2歳ま

でに獲得した者の中で,幼少時期に明らかな跳躍,

または走る能力を獲得したことのない例をDMD

とし,これらが可能な症例および15歳で歩行可能

な症例をBMDとした.

 また,生検筋をジストロフィン抗体染色し30),

DMD 11家系〔家系2,3,5,10,11,17,21,

22,25,28,29〕,BMD 4家系〔家系14,19,24, 31〕,合計15家系の発端者において,臨床診断と一 致する結果を得た.  1.家系分析(図1)  外来病歴の記載,および一部の症例では入院病 歴,両親へのアンケート調査結果を用いて家系分 析を行い,女性保三者の確度をPearceら31)の定 義に基づき,以下のように分類した.この分類で

は,DMD/BMD発端者の母親は全員,保因州の可

能性があるとの考えに基づくもので,孤下階家系 の母親はpossible carrierとされる.また,家系分 析のみを考慮した下階者の確度分類である.  definite carrier: 一1105一

(3)

 ①罹患した息子と罹患した兄弟または母方の

叔父を持つ女性

 ②罹患した息子および罹患した甥(姉妹の息

子)を持つ女性  probable carrier:

 2人以上の罹患した息子を持つが,罹患した男

性同胞や叔父を持たない女性.  possible carrier(孤発例家系):  ①罹患した息子を持つが,そのほかの罹患した 男性親族を持たない女性

 ②罹患した男性の姉妹

 definite carrierにおいては, DMD/BMDの形

質が,当該女性を介して,彼女の代またはその1

世代前から,次の世代である罹患児に引き継がれ ており,保因者であることが確定的である.prob− able carrierにおいては,形質の引き継ぎは証明 されな:い.しかし,DMDは罹患率が21.7人/男子 10万人で,突然変異はさらにその1/3とされ32),偶

然に1家系内同胞に患児が2人以上発症する確率

は4.7人/男子1億人と著しく低く;従って患児が

DMDまたはBMDであることがジストロフィン

染色で証明されていれば,この母親は保因者と考 えてよいと思われる.一方,possible carrierは孤 発例発端者の母親であり,積極的に保因者と考え る証拠はないが,家系分析のみからは非保因者と 確認することもできない女性である.

 2.血清CK値分析

 対象母親全例の血清CK, GOT, GPT値(UV

反応初速度法)を1∼数回にわたり測定した(図

1).採血は,非妊娠時に,午前中の早い時間に来 院してもらい,30分以上の安静待機後に行った.

140mU/ml以上を高値とした(当院の成人女性の

正常値は18∼99mU/ml).

 3.DIMD遺伝子の分子遺伝学的解析

 1)発端者のDMD遺伝子解析

 31家系の発端者末梢血リンパ球から高分子

DNAを調製した. Chamberlainら33)および

Beggsら鋤の報告したプライマーを用いたPCR

法およびサザンプロット法35)を施行した.

 サザンプロット法は,Koenigらの方法によ

a 家系1  工 H 皿 y 家系3 家系2     ド          マ     エ

    よ

  。7晶 ,

、。□晒、21

fT丁1   皿

○彫6笏

87 9330 398  10欄 ∼13差0    −50720  ノ v   膨[ゴ、,  お85−9561  51

  ノ

    薫習

     2. 匹1 11歳で歩行不能   りぼぽ で  

罷品雛で蝦

1 韮

        叩

∵・・∫「

昇L∫即自

   ・⊥「   ,.欄耽

  雍  彪        駆不明  拠80∼2脚  5260僻12麗0      皿一1  16歳時自殺  ノ 一1106一

(4)

b 家系4  1  11     118 m 183 家系5  1 11 1. m 1. 2. 家系7  1  11 3.;88 3402 74  1280     \ 皿 74. 544       1. 胆20  138  858 −55480 −238 −2820 好 家系8  1       1.  II       ・  III        ・     3056∼11280 57       ノ    2000−2527    ノ 家系11 11L5 2. .299 1一工詳細不明の癌 1レ12歳頃病死,詳細不明 正1−2幼少時,事故死 II−3交通事故死 nl−1独歩1歳3ヵ月,.   やや転びやすい 家系9  1  11 家系6  1  11  艮〔 83  274 6940 .アマ ノ 60 44 家系12 1 11 1736 1−1詳細不明の癌 1−2心肥大,高血圧 m I II HI ・ 白 36 家系14  1  H. 8360∼29940

6

77 18320   、 占 占 家系10  工  II    428  111 白白白6 II1 家系13  1  11 52 26go ノ 71 34  .40 72ユD  \ 歯歯  1、 2、 ,占 3, 56 III [}「一〇44   i    12σ 家系15 1 .II m \ 1正一1事故死 II−2病死 II−3生後まもなく死去 120 64 家系16

1・で・

    /7180  9540卍10660    / 家系17  1  11    51  m     ノ 90 1. 2. 99 533 家系18  1 1「 C月  m    25卍33 / 338∼4112 3、 45 4, 。 18     1−1骨髄線維症 1.   72 1011G∼24870 V 74−91 家系19  1  11 /936 且1 き5 m−1戦死 H−2心筋梗塞 田一3脳外傷 m−4不明   HI−1詳細棚の精神病   m−2心臓弁膜症   W−1股関節脱臼 1 .46 1. 2. 9425∼244000 / . 1. 十

(5)

C 家系20 肛 班 家系21 1

1

÷

糾景

77 6550∼18290   ノ 目 皿. 66 69 1. 54 1, 90∼95 .レ 5016∼24280  \ 占 ○ 2. 亙一¶幼少時 死亡 互一2 40歳で自殺 皿一1脛性麻痺 d 家系25 1 口 家系22 1 H 皿 \ 認 家系26 @1 占 家系23 1 π 家系24 1 1, 皿 647 H 107  9190∼網20 家系27 1

皿 3147∼㎜  1勾  ノ 1,, 75雌出血 家系28 家系29 亙 99 31560 97

∵吊

 1065561麗讐 1   ‘ 薯. 皿 1.    2、

扁1。 謙鏡

      彦      穿伽。

罵耶.

         ぬ 1 皿 フ7 5960卍16950  67  ノ 家系30 1 47 家系31 1. r

幽 品占

旺 1=綴鑑雫雷。 83 五 ∬ 皿 56 皿 師 衡 1. 138    63 暫, 瀞2翻 / 二=;=瓢’饗験 皿7鵬_卸115       ノ 1・158虚 肝癌 99 ロ・1脳性麻輝       図1 31家系の家系図と血清CK値. 璽は罹患者,発端者に→をつける.○は保因者.白○は当科にて診察した家族構成員.数値は血清CK値. a:罹患児に遺伝子欠画を認め,家系分析で母親がde且niteまたはprobable carrierと診断された3家系. b:罹患児に遺伝子欠失を認め,家系分析で母親がpossible carrierと診断された16家系. c:罹患児に遺伝子 欠失を認めないが,家系分析で母親がde且nlte carrierと診断された2家系. d:罹患児に遺伝子欠失を認め ず,家系分析で母親がpossible carrierと診断された10家系. 一1108一

(6)

り13),約10UのHind HI, Bgl Hなどの制限酵素

で消化した5μgの高分子DNAを0.7%アガロー

スゲルで120∼90vの電圧で電気泳動した後,ニト

ロセルロースフィルターに移した.これをmulti

prime DNA labelling system(Amersham社,

Amersham, UK)による32P標識DMD cDNAプ

ローブ(American Tissue Culture Collection,

Maryland, USA)を用いて,緩衝液(1%SDS,

1M NaCl,10%Denhardt液,50mM Tris・HC1

(pH 8.0))中でハイブリダイゼーションを行っ た.室温において,緩衝液(0.2%SDS,0.2×SSC)

により5回,65℃において3回洗浄後,オートラ

ディオグラフィーを行った.本法における遺伝子 欠失の診断方法としては,以下の2通りによった.  (1)デンシトメーター(Shimazu CS・9300型) を用いたgene dose解析18):オートラディオグラ フィーによりレントゲンフィルム上に得られたバ

ンドをプリントに焼付け,シグナル濃度をden−

sitometer scanningにより測定,記録,判定した.  (2)junction fragmentの同定二本来の制限酵 素切断部位より,エクソンにより近い部位に欠失 の端が位置した場合,エクソンの端からイントロ

ン中にある切断部位までの距離が短縮し,DNA

断片の大きさが変化する.これをjunction frag− mentという36).オートラディオグラフィーによっ て得られた・ミンドにおいて,このjunction frag− mentは正常パターンの・ミンドとは異なるサイズ のバンドとしてレントゲンフィルム上に認められ る.その出現の状況により診断,判定した.

 2)母親のDMD遺伝子の解析

 発端者のDMD遺伝子欠失が証明された19家系

の母親について,DMD遺伝子を発端者と同様の

方法を用いて調べた.

 以下の2通りのいずれかまたは両者の場合にお

いて,その母親に遺伝子欠失が陽性で,保因者で あると判断した.  ①gene dose解析で,発端者に欠失しているバ

ンドのシグナル濃度が正常女性の半分である1コ

ピー分しかない場合

 ②発端者と共通サイズのjunction fragment

が検出された場合  一方,母親の対立遺伝子に発端者と共通する欠 失を認めない場合,母親の体細胞には遺伝子異常 が無く,非保因者と判定し,発端者は新生突然変 異であると判断した.

 3)配偶子の加齢が突然変異率に及ぼす影響の

検討  新生突然変異は,男女の加齢に伴い生ずる可能

性が考えられる.DMDはXR疾患であるので,母

の配偶子の加齢,または母方祖父の配偶子の加齢 により母の配偶子にgerm line mosicismを生じ

たことが,発端者にDMDを引き起こす原因の可

能性と考えられる5》.本研究の結果,得られた新生 突然変異率が以上のような配偶子の加齢の結果で はなく,一般人口にも適応すること,すなわち, 新生突然変異とされた家系は配偶子の加齢により 突然変異を起こし易くなった家系のみを取り上げ た可能性を否定する必要がある.r  このため分子遺伝学的検索により母親が保冷者 と証明された家系と,母親が非下平者であり,発 端者を新生突然変異であると分子遺伝子学的に判

定した家系の2暫間において,女性配偶子の加齢

の指標として発端者分娩時の母親の年齢(各々14 家系中12家系と5家系中4家系を用いて検定),男 性配偶子の加齢の指標として,母親出生時の母方

祖父の年齢(各々14家系中10家系と5家系中4家

系を用いて検定)を調べた.有意差検定はWilcox− on検定によった.  4)その他の分子遺伝学的保因者診断法の検討  サザンプロット法を用いた遺伝子解析法では, junction fragmentが検:出されることはまれであ る.一方,gene dose analysisでは,発端者で欠

失している部分のシグナルの濃度を測定し,2コ

ピー分であれぽ正常女性パターンで非保全者,1 コピー分であれぽ対立遺伝子欠失のある保因者と

相対的に診断される.また,PCR法では,検体

DNAを増幅する過程を経るため,このような

DNAの量的比較は困難なことが多い.本研究で

は,保因者診断の確度を上げることを目的として,

家族構成員全員のリンパ球をEBウイルスにより

形質転換し得た1家系(遺伝子欠失を有する

DMDの兄弟発症例とその父母姉妹合計6名)に

一1109一

(7)

表1 リンパ球をから調整したmRNAを用いたnested PCR法の手順 方法 患者リンパ球のmRNA調製  (Chomczynskiらの方法による)     ! 逆転写によりcDNA合成 1回目PCR.ス応(52R−46F)     ↓ 2回巨PCR反応(52R2・46F2)     ↓ PCR産物の電気泳動 使用するもの pr童mer グアニジン液  4M   guanidinium thiocyanate  23mM sodium citrate, pH 7  0.5%   sarcosyl  O.36ml 2−mercaptoethanol/50ml RT buffer 10× PCR buffer O.1M Tris(pH 9) 0.1M MgC12 0.1M DTT dNTP(A.T, C, G,各2μ1) RNase inhibitor reverse transcriptase  5’ 3’  2μ1  2μ1 1.3μ1  1μ1  8μ1 0.05μ1 0.5μ1

46F:GGAGGAAGCAGATAACATTGCT

52R:TTCGATCCGTAATGATTGTTCTAGCCTC

46F2:GGACGCCTCTGTTCCAAATCCTGCATT

52R2:GAACCTGGAAAAGAGCAGCAAC

関して,mRNAのnested PCR(表1)とPFGE

法によって検討した.

 (1)発端者およびその家族のリンパ球から

Chomczynskiらの方法37)により, mRNAを調製

した.このmRNA液5μ1にexon 52の配列の一部

52Rをreverseプライマーとして加え,37℃,1時

間でreverse tsanscriptase(BRL社)0.5μ1によ

り逆転写しcDNAを得た.このcDNAをtem・

plate DNAとして, exon 46の塩基配列の一部46

F500ngをforwardプライマー,前述の52M 450

ngをreverseプライマーとして1回目のPCRを

行った.そのPCR産物について46Fの3’側46F2と

52Rの5’側52R2の配列の間に存在する領域に関し

て2回目のPCRを行った.このPCR産物を

0.7%アガロースゲル電気泳動により,解析した23) (図2a).  (2)PFGE法28)29)を用いて,より高.分子の

DNA分析を行った.各人のリンパ球を2×107

ce11/mlの濃度で約200μ1の0.8%低温融解アガ. ロースゲルブロック中に埋め込み,これを界面活

性剤N一ラウロイルサルコシンナトリウムと蛋白

分解酵素proteinase K:により処理し, DNAを得 た.8塩基認識のrare cutting制限酵素であるS丘

1(BRL社MD, USA)処理後,このアガロース

ゲルブロックを1%アガロースゲル(high

strength analytical grade agarose gel, Bio Rad 社Richmond, CA, USA)にapplyし, CHEF・ DFTM IIシステム(Bio Rad社Richmond, CA,

USA)により,電圧200V,パルス時間20∼40秒と

するPFGE法で20時間泳動した.泳動後,サザン

プロット,引き続き,本家系の発端者の遺伝子欠

失領域を含むcDNAプローブ8を用いて,ハイブ

リダイゼーションを行い,本家系の患者および家 族の遺伝子解析を行った.       結  果  研究対象31家系の各々についての家系調査,血

清CK値,遺伝子診断の結果を表2に一括した.

図3は欠失が証明された発端者19例における欠失

部位を示す.図4にはこれら3方法の結果の相互

関係と,保因者診断の最終判定をまとめた.  1.家系分析

 家系分析では,4例〔家系1,2,20,21〕が

de伽ite carrier,1例〔家系3〕がprobable car− rierと各々判定された.今後の記述では,これらの 一1110一

(8)

a.

mRNA

46 47 48 49 50 51 52

46

47

iiiiii;iiiiiiiii;iiiiiiiiiiiiiiii 51

52

禦1、 5’ 0 3’ 14Kb nested

PCR

PCR

products b. ● 52R 52R2  7,■       3.口■  5.■       1.■ 18.■■■       8.隔    9.■         η.■

  田.一

  19,■■■■■■■■■■■       4.■■       11.置       13.■        6.曜       2,■匿       15.■        16■        14.■        12.■ ● 図3 19家系の罹患児DMD遺伝子に,  に認めた欠失部位  数字は家系No.を示す. ■欠失部位 分子遺伝学的 St bp く860 〈463   図2 家系1.nested PCRの方法と結果 a.方法:患者,家族のリンパ球よりmRNAを調製,52

R:TTCGATCCGTAATGATT GTTCTAGCCTC,

reverse transcriptase(BRL社)により37℃,1時間 で逆転写する.このcDNAをtempelate DNAとし,

46F:GGAGGAAGCAGATAAC ATTGCT,500ng

と前述の52R,450ngをプライマーとして1回目の PCRを行った.そのPCR産物について46Fの3’側に

ある46F2:GAACCTGGAAAAGAGCAGCAACと

52Rの5’側にある52R2:GGACGCCTCT

GTTCCAAATCCTGCATTの間の領域を2回目の

PCRを行った.この2回目のPCR産物を0.7%アガ ロースゲルで電気泳動した.b.結果:発端者では異 常サイズ463bpのmRNAのみが認められ,長女は正 常サイズのmRNAのみ2コピー存在した,次女では 正常サイズ860bpと異常サイズのmRNAを1コピー ずつ認めた,母親は,異常サイズのmRNAのみが認め られた. 計5例(16.1%)を家系分析上の保因者とする. 残り26家系(83.9%)は孤発家系であり,これら

の家系の母親はPearceらの定義によるpossible

carrier31)と判断された.  2.生化学的(血清CK:値)分析  発端者の母親の血清CK値は,13例(41.9%)

が140mU/ml以上の高値を示した(最高1,736

mU/m1,最低147mU/m1,平均421.4mU/ml).以 31 罹患者の   家系分折に   母親の高  母親の 遺伝子欠失  よる保因者   血灘値  遺伝子欠失  判定 +19    *efinite2 carrier    *ro凶b且el carrier   ** 一㊦2 一一一㊦2   林 一一№P一一㊦1

 鷺::1;

一瓢謬

↓ 保因者診断可能数   5*/31 とその割合(%)  (16.1)       *印の合計 ↓  聯14 /31 (45.2) 麟印の合計 ↓ ]  家系分析上、  生化学的、  分子遺伝学的保因者 家系闘o 1.2 3 生化学的、 分子遺伝学国保因者  4∼9 分子遺伝学的保因者 10∼14 新生突然変異.患児 の母親 家系分析上、 生化学的保因者 家系分析上保因者 15∼19 20 21 生化学的保困者   22∼24 確定不能例  24/31 (77.4) 図4 31家系における保因者診断の結果 25∼31 後,本論文では,これらを生化学的保因者とする. 13例には,definite carrier 3例〔家系1,2,20〕, probable carrier 1例〔家系3〕を含み,その血清 CK値はそれぞれ221,606,232,147mU/m1であっ た.他の18例(58.7%)は正常範囲であった.こ の中には家系図よりdefinite carrierと診断され た母親1例〔家系21〕が含まれていた.de丘nite

carrierの75%(4例中3例)は高血清CK値を示

した.

 3.DMD遺伝子の分子遺伝学的解析

 1)発端者のDMD遺伝子解析

一1111一

(9)

表2 31家系の母親の家系分析,血清CK値,分子遺伝学確保判者診断の結果 発端者の 緯親出生時の 発端者出生時 母親の検査結果 家系

mo

遺伝子欠失 ニその領域 臨床 f断 家系分析 母方祖父のN齢(歳) の母親の年齢 @ (歳)

CK値

imU/ml)

GOT値

ilu)

GPT値

iIu) 遺伝子欠失 1 48−50

DMD

de丘nite 一 30 221 十 2 48−52J

DMD

definite 41 25 606 34 25 十 3 49−52

DMD

probable 39 25 147 十 4 47−52

DMD

孤発例 22 45 183 22 十 5 8−10J

DMD

孤発例 34 37 229 十 6 認 52

DMD

触発例 45 26 274 十 7 6−7.

DMD

圏発例 28 31 544 24 22 十 8 49−50

DMD

孤発例 36 26 1,115 11 21 十 9 17−19

DMD

孤立例 30 31 1,136 十 10 る 10−41

DMD

孤発例 34 十 11 52

DMD

孤発議 29 28 36 十 12 家 46

DMD

孤発例 56 十 13 52

DMD

孤発例 38 26 99 十 14 47−48

BMD

孤発例 28 29 64 十 15 50−51

DMD

孤発例 18 16 45

DMD

孤発例 35 30 47 11 9 一 17 48−52

DMD

孤発例 26 27 72 18 1=7

DMD

孤発例 27 32 91−74 皿 19 10−37

BMD

孤発例 43 26 46 20

DMD

de丘nite   .D232

N

21

DMD

de丘nite 95−90

N

22

DMD

二二例 615−251 18 12

N

23 認

BMD

二二例 447

N

24

BMD

二二例 451−259 20 16−13

N

25 な

DMD

二二例 39

N

26 い

DMD

二二例 47

N

27 家

DMD

孤発例 48−44. 11 8

N

28 系

DMD

孤発例 54 13 6.

N

29

DMD

孤発例 63 14 6

N

30

DMD

孤発例 68

N

31

BMD

孤発例 65 18 13

N

N=not done.

 PCR法およびcDNAプローブを用いたサザン

プロット法による発端者の遺伝子分析の結果,31 例中19例(61.3%)に遺伝子欠失が証明された. その内訳は,家系分析上のde丘nite carrier 2家系 〔家系1,2〕,probable carrier 1家系〔家系3〕,

孤発家系16例であった.遺伝子重複は1例にも認

められなかった.他の発端者12例では,DMD遺伝

子異常が検出されなかった.

 2)母親のDMD遺伝子の解析と保田鼠診断(図

4)  発端者の遺伝子早戸が証明さ.れた19例の母親 の,遺伝子分析の結果,14例の母親に,発端者と

共通するDMD遺伝子欠失が認められた.

 そのうち3家系は家系分析でも一因者と判定さ

れ,かつ母親は高血清CK値を示し(図1a,図4

の家系分析上,生化学的,分子遺伝学三保因者),

また他の6家系の母親は孤発例家系であるが血清

CK値は高値であった(図1b家系4∼9,図4の

生化学的,分子遺伝学的保因者).また,家系分析 上,発端者は孤発例であり,かつ母親の血清CK値

が正常範囲内であった5家系(図1b家系10∼14,

図4の分子遺伝学的保因者)が含まれる.発端者

に遺伝子欠失が証明された19家系中5家系

(26.3%)の母親には,欠失が認められなかった(図 一1112一

(10)

cDNA probe 8 Bgl lI         髭め

   cDNA probe 1−20

         kb       kb

ボ繍

 辮 =1匙呂

ll:二驚鷺1:i:i

1 2 34 5 6

達0 芒

  二τ.鵠鵠_」.㌍國}‘          ;’ジ=二四脚一‘   ;ニニ山脚」●   1 と一  __謡「篇訥昌一,‘ 気_.. r一’曹’0

  4

冷留 ’0    2 5置 曳  一一,「隅’a脚一〇 ξ    5 、;=了o r》b 、__._.._   .一冒一9・二=箒尉一‘  ;====昌=鵠■r−o

r

  3

     ぐ

.一7−r㌫昌L罵・箒「L一‘        _=羅,,潟苫冨’腸嗣嗣曽‘      一一;二;=旨−胴一〇      《         6    図5 家系1.サザンプロットの結果 家族全員のDNAについてサザンプロット法により得 られた各シグナルの濃度をデンシトメーター(Shim・ azu CS・9300型)によりスキャニングし,シグナルの濃 度を比較してgene dose解析を行った.発端者の・ミン ドa,b, dは欠失している.このa,b,dは母親と次女 では1コピー分しかなく保剛者と判定した.長女は正 常パターンを示し,非保因者と考えた.

1b,家系15∼19,図4の新生突然変異三児の母

親).すなわち,遺伝子丁丁を有する家系における 新生突然変異の出現率は26.3%であった.なお, これら5家系は家系分析ではいずれも孤発例であ り,母親の血清CK値も全例正常であった.  発端者に遺伝子欠失が認められなかった12家系 の母親の2例では家系分析でde丘nite carrierで あり(図1c,家系20,21〕,家系分析上保因者,他 の3例〔図1d,家系22,23,24〕では母親の血清 CK値がそれぞれ615∼251,447,451∼259mU/m1 と高値を示し,生化学的無因者であった.残り7 例はいずれの方法によっても保記者診断が不可能 であった(図1d家系25∼31,図4の確定不能例).

 3)サザンプロット法による保因者診断法2法

の具体例

帳面繍麟

畿聴診

Hind川

欝欝雛

1甑麟

Bgl ll    図6 家系5.サザンプロットの結果 5μgの高分子DNAを約10UのHind III, Bgl IIなど の制限酵素で消化し,0.7%アガロースゲルに120∼90 vで電気泳動後,ニトロセルロースフィルターに移し た.これを32P標識cDNAプローブ1∼2aで,ハイブ リダイゼーションを行った.発端者(長男)はHind III にては10.5kbのフラグメントが欠失し,同時に7.5kb のシグナルを,Bgl IIでは4.Okbのシグナルを発端者 に認めた.父親では正常パターンを示したが,母親は 発端者と共通するlunction fragmentを認め,保覇者 と診断した.  〔家系1〕家系分析より母親はde且nite carrier (兄弟と息子が患者)であった(図1).家:族全員

のDNAについてサザンプロット法により得られ

た各シグナルの濃:度のdensitometer scann童ngの 結果(図5),発端者ではバンドa,b, dが欠失し ていた.正常コントロールのパターンと比較した ところ,患者では欠失しているa,b, dの量が母 親と次女では1コピー分のみであることから,そ れぞれ保因者と証明された.長女は正常パターン を示し,非保諜者と判断された.

 〔家系5〕家系図(図1)からは孤露例と考え

られたが,血清CK値は母親229mU/ml,長女858

mU/mlと高値を示し,保講者と考えられた.図6 に示すように発端老(長男)ではHind IHで10.5

kbのフラグメントの仰言が認められた.同時に

Hind皿にて7.5kbのシグナルをBgl IIで4.Okb のシグナル,すなわちjunction fragmentが発端 者に認められた.父親は正常なシグナルパターン 一1113一

(11)

量 邑 誓 ○

●  「嵐ぐ.・即.     ド冠 ・

≧嚇、繋∴ _

       1   粂

  轟

       ボ   。  ・

         ゆ

熱輪鱒雛

  薪 .       ㍉      、帝 .       、脳學       家系1.PFGEの結果 一d −o −b 一a

    図7

PFGE法で泳動後,サザンプロット,cDNAプローブ8 を用いてハイブリダイゼーションを行った.父と長女は 正常パターン(シグナルa,b,c)を示した.発端者は正常 の約500kbのシグナル。より約100 kb大きい600kb のjunction fragment 1本のみ(シグナルd),母親と 次女では正常パターンのシグナルa,b, cと共に発端 者と共通するlunction fragmentシグナルdを認めた.

を示したが,母親は発端者と共通するjunction

fragmentを認め,保因者と診断された.

 4)配偶子の加齢が突然変異に与える影響の検

討  分子遺伝学的検索の結果,保因者からの遺伝に よる発生と診断された家系と,発端者が新生突然 変異と診断された家系の2群間において,発端者 出生時の母親の年齢および母親出生時の母方祖父

の年齢に対するWilcoxon法による有意差検定の

結果は以下の通りであった.発端者出産時の母親 年齢はそれぞれ保因者家系群29.9±5.6歳(n= 12),非保因者家系群28.8±2,3歳(n=4)であり, 2群間に有意差は認めなかった.母親出生時の母 方祖父の年齢はそれぞれ保因者家系群33.6±6.5 歳(n=11),三保因者家系群32.8±6.9歳(n;4) であり,有意差は認めなかった.

 5)小括

 保冷者・非保因者診断が可能であった24症例の 内訳を総括すると図4のように判定される.この うち7例〔家系25∼31〕は孤発例家系であり,母

親の血清CK値は正常,かつ発端者にDMD遺伝

子異常を認めなかったため,本研究の方法では保 三者診断確定不能であった.  6)その他の分子遺伝学的保因者診断法

 (1)1家系〔家系1〕におけるmRNA検索結果

(図2b)

 同胞罹患児である兄弟とも,DMD遺伝子に欠

失があるため,小さなサイズ,463bpのパソドのみ が認められた.母親は発端者と共通する463bpの バンドのみ,次女は463bp,860bp両方のサイズの

バンドが検出され,DMD遺伝子の異常が証明さ

れた.長女は正常サイズの860bpのバンドのみが 検出され,非保因者と判定された.

 (2)同家系のPFGE法の結果(図7)

 父と長女は正常パターンを示し,a, b, cと3種 のシグナルを認めたが,発端者は正常サイズのシ グナルは認めず,約500kbのシグナル。よりさら

に約100kb大きい600kbの新しいシグナルdを認

め,これはjunction fragmentと考えられた.母 親と次女では正常パターンの3種のシグナルa,

b,cと共に発端者と共通するシグナルdの,計4

種を認めた.この結果も,本家系において母親と 次女は保因者,長女は非保因者であることを支持

した.従って,mRNAのnested PCR法とPFGE

法はそれぞれバンドサイズの差やバンドパターン の差として,保因者・非保因者を明確に識別する ことが出来た.          考  察  DMDの保因者診断としては,家系調査,徒手筋

力テスト,血清CK値,筋電図など種々の方法が

試みられてきた(表3).  1977年,Rosesらは家系分析上の保因者女性に おいて,75以上の筋および筋群を徒手筋力テスト で調べ,25例中20例において,4ヵ所以上の筋お よび筋群の筋力低下を認めた7).また,Laneらは

Rosesらの検索方法を用い,家系分析上の,

一1114一

(12)

D F 1 SflI 同素切断部位 羅ll ‘1 48 1, 鱒 5152 本家系の欠失部位 cDNAプローブ8 D E

一1]・静一・ズ

    G         H l

§i惚鵬

一例の結果 呈  SfiI部分切断部位 呈Sfil完全切断部位        図8 Sfi I制限酵素地図と家系1の遺伝子異常 cDNAプローブの領域,発端者の欠失部位領域, S丘1の切断部位および正常バンドの サイズを示す.さらに下段には発端者および主因者において予測されたバンドのサイ ズと実際に認められたバンドのサイズの出現機構を示した. 表3 種々の保国者診断法 A.従来の保因者診断法 1)家系分析 2)徒手筋力テスト 3)筋肉組織所見 4)血清クレアチンキナーゼ値 5)筋電図 B.分子遺伝学的方法  1)cDNAプローブを用いたサザンプロット法     gene dose     junction fragment     RFLP     PFGE 2)遺伝子内プローブを用いたサザンプロット法     RFLP  3)PCR法     mRNAを用いたnested PCR法     PCR・RFLP法     densitometerによる遺伝子濃度測定     PCR−HPLC法 definite carrier 3イ列, probable carrier 3イ列, :お よび高CK値を認めるpossible carrier 5例の計

11入の保因女性と9人の対照女性において徒手筋

力テストを施行し,10例の保因者と7例の対照を

正しく判定可能であったと報告している8).

 Hausmanowa−Petrusewiczらは,罹患児の母,

姉妹を対象に保因者診断を行い,血清CK値のみ

で73.7%の保贋者診断が可能であるが,さらに筋 電図を加えることにより,保因者診断率を87.6% に高めることが可能であったという9).Scarlatta らも筋電図単独で保因老診断をした後,筋組織所 見を加味して判断し,その診断率を54%から93%

に上昇せしめたとしているが10),Gardner−

Mediwinらは血清CK値が正常範囲内の保因者

において,筋電図,筋組織像には大ぎな変化は見 られないと主張している11).  今回の症例では,31家系の家族歴聴取により, 26家系(83.9%)が孤発例家系であった.これは, 本研究の対象家系のうち,7家系(29.0%)は子

供1人のみ,15家系(48.4%)は子供が2人のみ

の少子家族であり(その他の家系では3人子供4

家系,4人子供3家系),遺伝情報が少ないためと 思われる.今後わが国の少産化傾向により家系分 析における孤発例家系の占める割合は上昇するも のと考えられる.本研究の対象症例では,家族歴 一1115一

(13)

聴取による家系分析で,4家系の母親はde且nite

carrier,1家系の母親はprobable carrierであっ た.すなわち31家系中5家系(16.1%)で家系分 析による保因者診断が可能であった.

 1959年,Ebashiらは筋ジストロフィーの70%に

おいて血清CKが上昇することを報告した38).そ

の後,血清CK値は新生児期には正常児でも高値

を示すが39),DMD患児ではこの時期に,2.5倍以 上の高CK値を示すこと40),また,15歳までの間で

DMD患児では正常値の100∼300倍の血清CK値

を示し,これは他の進行性筋疾患と比しても著し く高値である41)ことなどが知られるようになっ

た.また,血清CK値は1960年以来,等星老診断

に用いられ,70∼75%の保地者で高値を示すとさ

れ42),Rosesらは,41例のDMDの女性近親者277

例の血清CK値, LDH値を分析し,これらの値が

高い場合,反証が無い限り保因習と仮定すべきで あると述べている43}.また,Pearceらの定義によ るde丘niteとprobable carrierを含む既知保筆者

とその娘を対象に,血清CK値による保因者検出

率を求めたところ,それぞれ53%,90%であるこ とから,若年ほど検出率がよいと述べた44).また, 妊婦においてては偽低値を示すことが知られてい る45)46).本研究において,13家系の母親の血清CK

値は140mU/m1以上(平均421.4mU/ml)の高値

を示した.このうち10家系の母親は家系分析,遺

伝子解析により保因者と診断されたが,残り3家

系では血清CK値以外の方法では保守者診断はで

きなかった.逆に母親の血清CK値が正常範囲内

であった18家系には,家系分析でde五nite carrier

と診断された母親が1例含まれていた.また,こ

の18家系には,家系分析では孤発例家系であり, 分子遺伝学的に保因者と証明された母親を5・例含 んでいた.

 一般に臨床症状や血清CK値などが異常を示さ

ない保因者も稀ではなく,これら表現型に基づき, 母親が非保因者であり,患児が新生突然変異であ ると確下するには不十分である.このような家系’ において遺伝子診断法の有用性が最も顕著に発揮 される.近年,開発された分子遺伝学的門下者診

断法としては,発端者にcDNAプローブを用いた

サザンプロット法による遺伝子変異の検討を行

い,家族構成員の遺伝子量を測定する方法18)∼20) (densitometerを用いる方法), PCR実施後に遺 伝子量を測定する方法(densitometerを用いる方 法21),HPLCを用いる方法22)23)), mRNAのPCR 法により保因習を決定する方法24)がある.欠陥を 示さない例では制限酵素断片長多型(RFLP’s)を サザンプロット法25),またはPCR・RFLP法26)27)に より検出する方法などが必要となる.  分子遺伝学的方法により,保因者診断が可能で

あった19症例の内訳は図4に示す通りである.本

研究の結果において,5家系では発端者に下下は

あるが,母親には浅野は認めず,新生突然変異で

あることが確認された.この母親の血清CK値は

5例とも正常範囲内であった.Bakkerら47)によ ると,新生突然変異とは,分子遺伝学的手法によ り診断する場合,発端者の体細胞(ここではリン パ球)変異を認めながら,その母親や祖父母の体 細胞に変異を認めない場合をいう.本研究では, 遺伝子欠失が同定された家系における新生突然変 異の出現率は26.3%で,従来本症において言われ てきた突然変異率1/3に近いものであった48).  これらの家系では,germline mosaicismの可能

性も考えられる.Bakkerらは新生突然変異と考

えられる42家系中6家系に(14.6%)に複数の罹

患児が発生したことより,罹患児とその母親のX

染色体が同じハプロタイプを示す場合は14%,ハ

プ日戸イプが不明の場合は7%の確率でgerm・

line mosaicismの存在により次子にも発症する

可能性があると推定した47).Germline mosaicism

では,リンパ球由来DNA(体細胞DNA)を用い

た遺伝子診断では異常を検出し得ないが,生殖細

胞におけるDMD遺伝子異常が存在する.従って,

母親がリンパ球由来DNAを用いた遺伝子診断で

非保因者と判断された場合でも,罹愚児が生まれ

る可能性が14.6%あると考えるべきであ

る47)49)50).

 DMD患児における遺伝子の変異は,①DMD

患児の母親の配偶子の加齢により,母親の配偶子

に突然変異が生じることによる場合と,②DMD

患児の母方祖父のため,その配偶子に突然変異が 一1116一

(14)

生じ,発端者の母親が保因者となる場合が考えら

れる.従来,DMD発端者の1/3は突然変異による

とされ51),一方,Haldaneの法則48}52)によれぽ, XR 疾患で罹患者が子供を持てない場合は,卵子と精 子における突然変異率に有意差が無い場合,発端 者の1/3は新生突然変異により出現するとされて いる.Caskeyら53)は彼らの症例では新生突然変 異の出現率はほぼ理論値である1/3に近かったと し,Kanamoriら54)の本邦全国調査における666男

児例で分離比検定を行うプログラムSEGAN55)に

よっても検証されている.

 また,Yasuda&Kondo56)は日本の発端者全体

の約2/3に当たる514症例において,発端者母親の 出生時の母方祖父の年齢の影響は認められなかっ たとしている.一方,Russoら57)は家系分析のデー

タから実際の孤発例は1/3より少なく0.235±

0.034であったと述べているが,この理由として germline mosaisismの関与が考えられている.

.本研究では,分子遺伝学的に母親が保因者で

あった14家系中11家系と,新生突然変異であった

5家系中4家系の2群間について,①発端者母親

の発端者出生時年齢,②発端者母親出生時の母方 祖父の年齢を比較し検討した.すなわち,新生突 然変異群とされた11家系において,母親の高齢ま たは母親祖父の高齢が突然変異の原因であった場

合,自験例より求めた新生突然変異の出現率

26。3%は,一般人口については当てはまらない恐 れがある.自験例において,①,②共に統計上有 意罪なく,男性,女性ともに加齢による影響は認 められなかった.また,この結果,新生突然変異 の出現率はRussoら57)の報告とも一致した.

 図4に示すように,家系分析のみから保因者診

断可能であった5/31(16.1%)家系,家系診断に

母親の血清CK値高値を加えることにより保因者

診断可能となったのは14/31(45.2%)となり,従 来の保判者診断法ではこれ以上の保因者診断は困 難であった.本研究では,さらに分子遺伝子学的 手法を組み合わぜたことにより,新たに5例が, 分子遺伝子学的保因者として同定された。さらに 従来の方法では鑑別不能であった分子遺伝学的非

保係因者5例を診断可能となった.すなわち,保

三者・二二二者診断率を24/31(77.4%)にまで大 幅に上昇させ得たことになる.  残念ながら,31家系中7家系(22。6%)〔家系 25∼31〕は,家系分析では孤二二家系であり,母

親の血清CK値は正常範囲内,遺伝子診断では発

端者のDMD遺伝子に異常を見出せず,本研究で

実施した方法では母親の保因者診断は不可能で

あった.この内,4家系(家系25,28,29,31〕 の発端者は生検筋の蛍光染色でジストロフィンの

異常が確認されており,確実にDMDまたは

BMDである.しかし,残りの3家系〔家系26,27, 30〕については常染色体性劣性遺伝性筋ジストロ フィーである可能性は否定できない.これら,遺 伝子変異の検出ができなかった12例の発端者にお いて,二型および脳型プロモーター58)も検索した が,その異常はなかった.今後,発端者に遺伝子

変異を証明されなかった家系では多型解

析25)}27)59>や点突然変異の検索などが必要である.

一般に保因者診断法としてはcDNAプローブを

用いたサザンプロット法が行われるが,その判定 の際,junction fragmentを検出できない家系に おいては,densitometerを用いたgene dose分析 によりシグナルの濃さにより保二者を判定する方 法がある.しかし,gene dose分析では,人工産物

が多い場合,DNA断片が小さすぎる場合, DNA

断片サイズが重なりによりコピー数が不明な場

合,保慌者診断は十分に行えない.そこで,より

詳しい遺伝子解析の試みとして,’DMDの1家系

について,mRNAの検索ならびにPFGEを用い

た高分子DNAの検索を行った.

 mRNAをPCR法で増幅することによりDMD

遺伝子の転写異常を検出することができ,生検筋

由来のmRNAの研究が臨床応用されるように

なった37).一方,Chellyら60)によれぽ,500∼1,000

丁目リンパ球当たり1コ口ーのジストロフィン

mRNAが存在する.これを利用して, Roberts

ら24}は末梢血リンパ球から精製したmRNAを

templateとしてPCR法で2回増幅することによ

る分析法を報告した.

 著者は1家系でリンパ球由来のmRNAレベル

での保因者診断を試みた.罹患児である長男,次 一1117一

(15)

男では異常サイズのmRNAのみが認められ,こ

の家系の次女では正常および異常サイズの

mRNAが1コピーずつ存在することから保半者

と診断された.長女は正常サイズのmRNAのみ

2コピー有し,非保智者であった.母親は,家系

分析からde丘nite carrierとされ,遺伝子診断法で も階下者であることが確認されているが,異常サ

イズのmRNAのみが再現性を持って認められ

た.このことについては,正常サイズのmRNAが

極端に微量:で肉眼的に検出し得ない可能性も考え られる(図2b).

 DNAの電気泳動は,分子遺伝学的分野では重

要な技術の一つであるが,一般的なアガロースゲ

ル電気泳動法で,解析可能なDNAサイズは最大

20kb程度までである.1983年, Schwartzら28)と Carleら29)は,方向の異なる電圧を一定時間ごと

に交互にパルス状にかけ,DNAアガロースゲル

電気泳動する方法を開発し,従来解析でぎなかっ

た数10kb以上から数10Mbの解析が可能になっ

た.この方法を用いて,1986年にはvan Ommen

らにより染色体xp21近傍4.5Mbに渡るsfi I制

限酵素地図が作成され61),DMD遺伝子地図の解

明に大きく貢献した.さらに詳しいS負1制限酵素 断片地図も示されている62)63).本研究では一般に

用いられているKunkelらの示すエクソン番号に

付け直して示した.これを基礎に本研究のPFGE

の結果を対比させると図8のようになる.正常検

体をcDNA probe 8でハイブリダイゼーションし た結果では,a, b, cの3種類のシグナルが認めら れ,これはそれぞれ,FG, FH, FIのバンドに相 当すると考えられる.これに対して,欠失(αkb) のある発端者においては,欠失によりS丘1切断点 Fが消失しているので,EG一欠失部位(470+200一 αkb), EH一一失部位(460+200+280一αkb),. EI一欠失部位(470+200+280一αkb)という3種

類のバンドが表出されると考えたが,実際には

junction fragm6ntである約600kbのシグナルの

み認めた.これは,partially digestive siteが何 等かの理由で機能せず,fully digestive siteのみ

で切断が行われているためと考えた.PFGE法に

より大きなDNA断片を解析できるようになり,

本法を用いてより広い範囲での検索がなされるよ うになった.また,gene dose分析で検出不能な異 常を有する前述のごとき症例において,この方法 は有用である.遺伝子異常が欠配ではなく重複, 挿入,転移,転座などの場合,従来のサザンプロッ ト法はプローブの近傍での異常のみ検出するのに 対し,本法はより幅広い検索が可能である.

 以上のように,nested PCR法およびPFGE法

は田干老・非保因者の識別に極めて有用であった.

 DMDは遺伝性疾患の中でも予後の不良な疾患

である.患者家族における保卜者診断は,倫理的, 社会的問題としても討議され,筋ジストロフィー 研究の歴史の中でも,臨床家,研究者たちの苦慮 してきた問題でもある.技術面は,本論文に述べ

たようにDNAやRNAの分析により格段に進歩

しつつある.今後,更なる技術面の検討が必要で あると同時に,現在なお,治療不可能な疾患であ

るDMDの三四者診断の実施に当たっては,倫理

面,社会面の配慮を十分行う必要がある64).          結  語

 臨床的にDMD, BMDと診断された31家系の母

親について家系図分析,血清CK値測定, cDNA

プローブを用いたサザンプロット法により保因者 診断を行い,総合的に判断し,以下のような結果

を得た.家系分析のみから保因者診断可能は5/

31(16.1%)家系,家系診断に母親の血清CK値

高値を加えることにより保下野診断可能は14/

31(45.2%),これに分子遺伝学的手法を組み合わ

せたことにより,分子遺伝学三保因者5例,およ

び分子遺伝学的非保評者5例を診断することが可

能となり,保下野か否かの診断率は24/31(77.4%) まで上昇させることができた.  31家系中7家系(22.6%),家系分析では孤発例

家系であり,母親の血清CK値は正常範囲内,遺

伝子診断では発端者のDMD遺伝子に異常を見い

出せず,本研究で実施した方法で母親が保因者か 否かの判断は不可能であった.

 また,より詳しい遺伝子解析をDMDの1家系

に実施した.mRNAの検索ならびにPFGEを用

いた高分子DNAの検索の結果, mRNAを用い

たnestedPCR法では保因老の変異遺伝子を・ミソ

一1118一

(16)

ドサイズの差として,PFGE法ではバンドパター

ンの違いとして明確に表出することができ,保因 者・非保因者の識別に極めて有用であった.  本論文を終えるに当たり,御指導,御校閲賜りまし た恩師福山幸夫教授に深謝致します.また,斎藤加代 子講師には直接,御指導,御校閲を頂ぎ,心よ.り深謝 致します.実験遂行に当たっては,原田隆代技官に多 大なご協力を頂きましたことを深謝致します.  癌研究所遺伝子研究施設部長小池克郎博士には,多 岐に渡り御指導賜りましたことを深く感謝致します. また,PFGE法の実施に当たり埼玉県立癌センター血. 清ウイルス部大木 操部長,市川 仁研究員に貴重な アドバイスを頂きましたことを深謝致します.  本論文を恩師,福山幸夫教授の退職記念論文として 棒げます.  本研究の一部は日本人類遺伝学会第36回大会(1991 年10月24∼6日,山口市)および日本小児神経学会第 34回大会(1992年6月11∼13日,大宮市)にて発表し た.また,本研究の一部は,文部省科学研究費補助金 一般研究A(課題番号02404.046),厚生省筋ジストロ フィーおよび関連疾患の成因と治療法開発に関する 研究班(班長:荒木淑郎)平成4年度研究費,厚生省 精神神経研究委託費(2指2暖3)によった.       文  献   1)Duchenne GB: Recherches sur la paralysie     musculaire pseudohypertrophique ou paralysie     myo呂clerosique. Arch Gen Med 11:5,178,305,     421, 552, 1868   2)Erb WH:Dystrophia muscularis progresslva.     Dtsch Z Nervenheilkd 1:94,173−261,1891   3)McKusick VA:Muscular dystrophy, pseudo・     hypertrophic progressive, Duchenne and Beck−     er type.動Mendelian Inheritance in Man.10th     ed(McKusick VA ed), pp1916−1926, Johns     Hopkins University Press, Baltimore(1992)   4)近藤喜代太郎,金森雅夫,Morton NEほか:     Duchenne型筋ジストロフィー症の遺伝,疫学,臨     床及び治療開発に関する研究班,昭和62年度研究     報告書:13−15,1987   5)Yasuda N, Kondo K= No sex difference in     mutation rates of Duchenne muscular dystro・     phy. J Med Genet 17:106−111,1980   6)Becker PE:Eine neue X・chromosomale Mus・     keldystrophie. Acta Psychiatr Neuro豆Scand     193:427, 1955 7)Roses MS, Nicholson MT, Kircher CS et al:   Evaluation and detection of Duchenne’s and    Becker’s muscular dystrophy carriers by man−   ual muscle testing. Neur610gy 27:20−25,1977 8)Lane R JM, Masprey GA, Nicholson PQR et   a1:An evaluation of some carrier detection   techniques in Duchenne muscular dystrophy. J   Neurol Sci 43:377−394,1979 9)Hausmanowa・Petmsewicz I, Niebroj・Dobosz   1,Borokowska J et al:Carrier detection in   Duchenne dystrophy.肋’ Pathogenesis of   Human Muscular Dystrophia. Proceedings of   the 5th international Science Conference of the   Muscular Dystrophy Association(Rowland LP   ed), pp32−41., Excerpta Medica, Amsterdam   (1976) 10)Scarllatta G, Valli G, Meola G et al.: Quanti・   tative EMG and histological carrier detection   in Duchenne muscular dystrophy。 Neurology   216:235−249, 1977 11)Gardner−Medwin I), Pennington RJ, Walton   JN:The detection of X・linked muscular dys・   trophy genes. J Neuro茎Sci 13:456−465,1971 12)Greenstein RM, Reardon MP, Cban TS: An   X・autosome translocation in a girl with   Duchenne muscular dystrophy(1)MD):Evi・   dence for DMD gene localization. Pediat Res   11 :457, 1977 13)Koenig M, Ho鉦man EP, Betterlson CJ et a1:   Complete cloning of the Duchen阜e muscular   dystrophy (DMD)cDNA and preliminary   genomic organization of the DMD gehe in   normal and a狂ected individuals. Cell 50:   509−517, 1987 14)Monaco AP, Neve RL, Colletti・Feener C et   al: Isolation of candidate cDNAs for portions   of the Duchenne muscular dystrophy gene.   Nature 323:646−650,1986 15)Koe聡ig M, Monaco AP, Kunkel LM:The   complete sequence of dystrophin predicts. a rod   shaped cytoskeletal protein. Cell 53:219−228,   1987 16)Ho∬man EP, Brown RH Jr,1(unkel LM:   Dystrophin:The protein product of the Du・   chenne muscular dystrophy locus. Cell 51:   919−928, 1987 17)Ahn AH, Kunkel LM: The structural and   functional.diversity of dystrophin. Nature   Genetics 3:385−391,1993 18)正aing NG, Siddeque T, Bartlett R et al:   Duchenne muscular dystrophy:Detection of   deletion carriers by spectrophotometric den一 一1119一

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参照

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