Title
酸化型アルブミン及び還元型アルブミンの生理機能に関す
る研究 1) ヒト血清アルブミン-ビリルビン相互作用の物理
化学的研究 2) 高速液体クロマトグラフィーによるヒト血清
アルブミンの酸化・還元状態の解析( 内容の要旨(Summary)
)
Author(s)
今井, 一
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1173号
Issue Date
1998-10-21
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15097
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 今 井 -(茨城県) 博 士(医学) 乙第1173 号 平成10 年10 月 21日
学位規則第4条第2項該当
酸化型アルブミン及び還元型アルブミンの生理機能に関する研究 1)ヒト血清アルブミンービリルビン相互作用の物理化学的研究 2)高速液体クロマトグラフィーによるヒト血清アルブミンの酸化・還元状態の解析
(主査)教授 恵 良 聖 一 (副査)教授 岩 田 弘 敏 教授 松 波 謙 一 論 文 内 容 の 要 旨血清アルブミン(ヒトの場合,human serum albumin,HSA)は肝臓で合成される単純タンパク質(分子量,
66kDa)で,その総量の約40%は血液中に存在し,総血清タンパク質の約50%を占めている。循環血液中におけ るアルブミンの生理機能として,血焚膠質浸透圧の維持のほかに,ホルモン,ヒリルビン(BR),脂肪酸,多く の薬物,色素などを体組織全体に運搬する搬送体タンパク質としての機能など,多種多様な機能を営んでいるこ とが古くから知られている。血清アルブミンの分子構造上の大きな特徴の一つに.N末端より34番目に非常に反 応性に富むフリーのSH基(システイン残基;Cys-34)が存在している。このSH基がいかなる物質とも結合してい ないフリーの状態のときのアルブミンを還元型アルブミンまたはメルカプトアルブミン(ヒトの場合.buman mercaptalbumin,HMA)と呼んでいる。それに対して,このSH基が血中の含硫アミノ酸などと分子間共有結合 したときのアルブミンを酸化型アルブミンまたはノンメルカプトアルブミン(ヒトの場合.human nonmer-Captalbumin,HNA)と呼んでいる。このうち酸化型アルブミンにはS11基に対する結合リガンドの遠いによって 数種類のタイプが存在し,SH基がシスチンと結合した7ルプミン(HNA(CYS)),グルタチオンと結合したアル ブミン(HNA(GLUT)),さらにそれ以上に酸化されてSH基が-SOH,一SO,H,-SO3Hなどの構造になった酸化 型アルブミン(HNA(0ⅩⅠ))が報告されている。 BRは,血清アルブミンに結合することによって血中を運搬される物質のうちの一つである。BRがアルブミン に結合する部位は既に同定されているが,その結合様式については,なお不明な点が多い。そこで,HMA及び HNAとBRとの複合体におけるBRの結合様式を円二色性吸収(circular dichroism,CD)スペクトルを用いて解 析した。さらに,特殊なカラムを用いた高速液体クロマトグラフィP(highperformanceliquidchromatography, HPLC)システムによるHSA分析によって,HSAのHMA-HNA動態は種々の疾患において変化することが知ら れているので,このHPLCシステムの溶出条件に改良を加え,その改良法を用いて長期間の運動鍛錬が及ぼす影 響の解析として剣道鍛錬者群の血清,病的状態における解析として白内障患者の血清及び前房水中のHSAのHM A-HNA動態を分析した。 材料及び方法 1.HSA-BR複合体におけるBRの結合様式の解析 市販のHSA標品(Calbiochem BehringDiagnostics杜)を脱脂した後,脱脂HSA単独,あるいはHMA,HNA を合成した。溶媒条件によっては分子内SH/S-S交換反応によって老化型(A型)アルブミンが生じるので,実験 に当たっては適宜ヨードアセトアミド(iodoacetamide.IA)にてそのSH基をブロックした。BRはSigma杜より 購入し,HSA-BR複合体におけるBR/HSAのモル比は酸性pH域では5.0,中性∼アルカリ性pH域では2.0とした。 CDスペクトルの測定は,日本分光社製J-40S円二色性分散計を用い.タンパク質の二次構造解析にはDPモー ドで200∼250nm.結合BRによる誘起CD測定にはノーマルモードで350-550nmにわたって測定した。 2.HPLCシステムによるHSAのHMA-HNA動態の解析
溶出条件の改良の検討には市販のHSA標品(Calbiochem Behring Diagnostics杜)を用いた。HPLCプロフィー ルにおけるHSAの各分画の確認として,HMA,HNA(CYS),HNA(GLUT)を合成するために用いたシスチン
はNakaraiTesque祉,還元型グルタチオン(GSH)及び酸化型グルタチオン(GSSG)はSigma杜より購入した。
-77-HMA-HNA動態に対する運動負荷の影響を検討するために,運動鍛錬者耶としてT大学別道部員(全日本健勝 級)20名(平均年齢,20・0±1・49歳;剣道経験の平均年数,13.3±2.10年),コントロール群として「 l常特に激 しい運動を行っていないG大学医学部学生20名(平均年齢,22.1±1.80歳)の血清を分析した。なお,運動鍛錬 者の採血は通常のトレーニング中(トレーニング開始後.約40日経過)に行った。 病的状態におけるHMA-HNA動態の解析には,大垣市民病院・眼科より供与された白内障患者46名(男19名, 女27名;平均年曇軌 74.2±8.63歳)の血清と前房水を用いて分析した。 HPLC分析は,イオン交換用のES-502N7Cカラム1本(カラム温度,●35±0.5℃),0.05M酢酸ナトリウム ー0・40M硫酸ナトリウム緩衝液(pH4・80)を溶出液として,さらにエタノールの濃度ダラジュント(0→10%)を 行い,蛍光検出した。 結果及び考察 BRの分子構造において,両内側のピロール環の間の一重結合の角度(∂1,∂2)変化の程度により,00<∂., ∂2<900の場合を右回りコンフォーマー,-900<∂1,∂2<00の場合を左回りコンフォーマーと呼んでいる。 結合BRによる誘起CD帯の符号などの結果より.HSAに結合しているBRは.酸性pH域では左回りコンフォーマー, 中性∼アルカリ性pH域では右回りコンフォーマーの構造をとっていると考えられた。また生理的pH域では, HMA,HNAのいずれの場合も右回りコンフォーマーであったが,その度合はHNAの方が大きいことが明らか になった。 イオン交換用のES-502N7Cカラムを用いて.溶出緩衝液におけるエタノール濃度勾配(0→10%)によるダラジェ ント条件を種々変化させてHSAのHPLCプロフィールを検討した結果.HNAのうち生体内存在率が最も低いHNA (0ⅩⅠ)が定量可能な好条件を得ることができた。 さらに,この改良法を用いて長期間の運動鍛錬がHSAのHMA-HNA動態に及ぼす影響を解析するために運動 鍛錬者群とコントロール群の血清を分析したところ,HMA,HNAの割合の平札即ちf(HMA),f(HNA)値は 両群間で有意な差は認められなかった。しかし,運動の完全な中断,あるいは逆に急性かっ相当過酷な運動負荷 を受けるような状態でのHMA-HNA動態の解析の必要性等.今後の研究の方向性に対する有用な知見が得られ た。 次に同改良法を用いて白内障患者の血清及び前房水中のHSAのHMA-HNA動態を分析したが.血清採取に比 べてごく微量しか採取できない前房水でもHMA,HNAの定量的解析が充分可能であることが明らかになった。 健康成人男子に比し,白内障患者血清のf(HMA)値は有意に低値を示したが,特に前房水ではさらにより低値あ るいは∼0の症例も多数観察された。逆に前房水でのf(HNA)値は非常に高値で.特に血清中の存在率が非常に 低いHNA(0ⅩI)の割合が無視できないほど高値であった。このように,本HPLCシステムによる前房水中のHSA のHMA-HNA動態の解析は,間接的ながら水晶体内の酸化還元状態を反映する指標となり得る可能性があり, 白内障患者の臨床経過や合併症の程度を知るうえで非常に有用な方法であることが示された。 論文審査の結果の要旨 申請者 今井 一は,酸化型アルブミン及び還元型アルブミンの生理機能に関して,CDスペクトル測定によっ て両アルブミンに対する結合BRの結合様式について,さらにHPLC分析によって運動鍛錬者の血清,白内障患 者の血清及び前房水中の両アルブミンの動態変化について研究し,南アルプミンの構造差,機能差を明らかにし た。本研究の成果は,分子生理学の発展に少なからず寄与するものと認められる。