Title
ウマの消化管運動調節機構に関する臨床薬理学的研究( 内容
の要旨 )
Author(s)
佐々木, 直樹
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 乙第039号
Issue Date
2000-09-26
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2023
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 学 位 論 文 尭 目 審 査 委 貞 佐々木 直 樹 (滋賀県) 博士(獣医学) 獣医博乙第39号 平成12年9月26日 学位規則第4条第2項該当 ウマの消化管運動調節機構に関する臨床薬理学的 研究 主査 岩 手 大 学 教 授 副査 帯広畜産大学
教
授 副査 岩 手 大 学 教 授 副査 東京農工大学 教 授 副査 岐 阜 大 学 教 授 副査 渦中央董鳥全馬事部防疫‡長 論 文 の 内 容 の 要 __旨 雄 数 久久 義 香 茂 昌 善義 豊 村 藤根脇 野 原 西 内 山 武水 ウマにおける消化管運動の調節機構を解明することは、種々の消化辞疾患に射し、 客観性の高い診断および安全性の高い治療を実施する指針を得るうえで、●極めて重要な課題であると考えられる。そ.こで、本研究においてはまずウマの滑化菅運動の
特性を検討した。・次に、鞘化管運動調節ホルモンであるモチリンの及ぼす影響を観 察するとともに、消化管運動辰軒ヒ素であるシサブリドの養口投与における蜂床有効量を検討した。きらに、消化管の緊張緩和作用をもつ、α2-アドレナリン受容俸
作動薬(α2一作動秦)■であるキシラジンおよび塩酸メデトミジン(メデトミジン)
の消化管各部位に対する作用特性を検討した。
本研究により明らかとなった蘇呆
は、以下のとおりである。Ⅰ.ウマの鞘化管運動を評価することを目的上した本研究を挙行するに奉たっては、
消化管運動の特性お皐び薬物評価方法の確立が不可欠であった。●そこで、本研究に
おいてはウマの消化管運動の特性、再現性を有する秦物投与時期および投与方法を
知ることを目的とした。すなわち、サラブレッド種成馬7頭の鞘化菅に全身麻酔下 でForceTrzmsducerを装着する実験的開腹衝を実施し、回復後の意識下において 消化管運動の基礎的データーを記録・解析した。近位空腸における各phaseの持続時間は、phA琴eI(休止期)・Ⅱ(不規則な収縮期)
では平均122.2士26.?(mean士S.D.,nギ)分、phaseIⅡ(強収締の発現期)では平均7.9±1.7分および周鄭ま平埼130.1±26.0分であった。一方、遠位空虚および回腸にお
いてほ、他のホ乳動物で鱒観察されない強収締群bhaseⅢ・ⅣbhaseⅢからphase
Ⅰへの移行斯)]が認められ、その持続時間は遠位空腸では平均29.0±6.1分、回腸で
は平均44.6±9.0分であり、これらは近位空腸に比較して長期間にわたり継続した。この部位でのphase叩ま、高速波形解析によりphaseⅡ様であったことから、この
時期に消化管内容物が輸送されているものと考えられた。 以上の成凄から、ウマに特徴的な強収締群は消化管の恒常性の維持に加え、より 早期に盲腸へ消化管内容を輸送する役割をもつものと考えられた。一方、mig相月ngCOntraCtiohs(MC)出現作用をもつ薬物の影響を評価するためには、phaseⅢ出現
後すみやかに薬物を投与すること、収締運動抑制作用をもつ薬物の投与においては、
概ね130分以内に効果を観察し得る投与量を検討することの必要性か判明した。
Ⅱ・消化管運動機能の低下例モこ対し、消化管運動賦浩化襲の有用性を検討すること
を目的とした。まず、MCの生理的出現を詞癒している消化管ホルモンである「モ
チリン」のウマの消化管運動調節機構に対する影響窄検討した。次に、モチリンと
同様のセロトニン受容体作動薬であり消化管運動賦活化奏である「シサブリ・ド」の
静脈内投与および経口投与における用量変化に伴う影響を検討した。
モチリン(0.6fLg/kg)の静脈内投与により、近位空揚に強収締群bhaseⅢ)が
出現した。,強収衝群の出現周期はモチリン投与により有意に短締され、投与前126.6
士34.5(mean±S.D.,n=7)分および投与後4l.3±8.5分であった。シサブリド(0・1丁場/庭)の蕗脈内投与により近位空腹に強収帯革が出現し、シサブリド
(0.75mg/1唱および1.伽pg/Ⅰ唱)の雀口投与においては、空腹のMCが有意に増加し
た。以上の成凄から、ウマの消化管運動調節機構は、ヒトやイヌと同様にモチリンが
関与していること、0.75mg/1唱および1.0皿gパ唱のシサブリド雀口投与により、消 化管運動が賦活化されることが明らかとなった。 Ⅲ.痩攣妬、風気応および腸捻転などに代表される、消化管の緊謀例に対するα2イ声動畢の有用性を評価することを目的とした。キシラジン(1mg/k盛上およびメデ
トミジン(0.qO75mg/k由の静脈内投与において、消化管の各部位に対す.る作用特
性を比較検討した。キシラジンの作用時間は近位空揚80分、回腸100分、盲腸100分および右腹側諾腸
120分であり、.メデトミジンのそれは近位空腸80分、回腸70分、盲腸100分および
右腹倒幕腸110分であった。すなわち、上部消化管に比較して下部消化管では、作用
時間が延長する僑向がみられた。
キシラジン投与後における収締振幅の比率は、近位空腸52.8±10.2(mean±S.D.,
ロ=6)‰回嘩15.7±10-.0%、盲腸7.1±0..7%および右腹倒錯腸11・0±6・6%であり、
メデトミジンのそれは近位空腸49.5±14.4%、回腸5.2主1.6‰盲腸5.3±1.2%お
よび右腹御者腸7.3士3.3%であった。すなわち、いずれの薬物も近位空腸に対する
抑制作用は、他の部位に比較して有意に低値を示した。また、両薬物の作用時間は
概ね一致したが、メデトミジンはキシラジンに比較して有意に強い収縮抑制作用を
示した。以上の成徳から、キシラジンおよびメデトミジンに対する消化管運動抑制作用は、
上部消化管に比較して下部消化管の方が長い作用時間および強い抑制作用を有する
ことが明らかとなった。また、ウマに対して消化管の緊張緩和を目的としてα2一作
動薬を選択する場合は、キシラジンより●メデトミジンが推奨されるものと考えられ た。 審 査 結 果 の 要 旨 ウマにおける消化管運動の調節機構を解明することは、種々の消化器疾患に対し、 客観性の高い診断および安全性の高い治療を実施する指針を得るうえで、極めて重要な課題であると考えられる。そこで、本研究においてはまずウマの消化管運動の特性
を検討した。次に、消化管運動調節ホルモンである壬チリンの及ぼす影響を観察する
とともに、消化管運動賦活化薬であるシサブリドの経口投与における臨床有効量を検 討した。さらに、消化管の緊張緩和作用をもつ、α2-アドレナリン受容体作動薬(α2一作動薬)であるキシラジンおよび塩酸メデトミジン(メデトミジン)の消化管各部
位に対する作用特性を検討した。 本研究により明らかとなった結果は、以下のとお りである。 Ⅰ.ウマの消化管運動を評価することを目的とした本研究を遂行するにあたっては、消化管運動の特性および薬物評価方法の確立が不可欠であった。そこで、本研究にお
いてはウマの消化管運動の特性、再現性を有する薬物投与時期および投与方法を知る
ことを目的とした。すなわち、サラブレ■ッド種成馬7頭の消化管に全身麻酔下で
ForceT招nSducerを装着する実験的開腹術を実施し、回復後の意識下において消化 管運動の基礎的データーを記録J解析した。 近位空腸における各phaseの持続時間は、pha?eI(休止期)・Ⅱ(不規則な収縮期)では平均122・2±芦6・3血ean±S・D・,n=7)分、phaseIII(強収縮の発現期)では平均7・9
±1.7分および周期は平均130.1±26.0分であった。一方、遠位空腸および回腸においては、他のホ乳動物では観察されない強収縮群bhaseⅢ・ⅣbhaseⅢからI)h虫se
Iへの移行期)]が認められ、その持続時間は遠位空腸で時平均29.0±6.1分、回腸で
は平均44.6±9.0分であり、
これらは近位空腹に比較して長期間にわた`り継続した。
この部位でのphaseⅣは、高速波形解析により坤ase●Ⅱ様であったことから、この
時期に消化管内容物が輸送されているものと考えられた。
以上の成案から、ウマに特徴的な強収縮群は消化管の恒常性の維持に加え、より早 期に盲腸へ消化管内容を輸送する役割をもつものと考えられた。一方、m垣r癒辻唱 contractions(MC)′出現作用をもつ薬物の影響を評価するためには、phaseⅢ出現後すみやかに薬物を投与すること、収縮運動抑制作用をもつ薬物の投与において軋
概ね130分以内に効果を観察し得る投与量を検討することの必要性が判明した。Ⅱ,消化管運動機能の低下例に対し、消化管運動賦活化薬の有用性を検討することを
目的とした。まず、MCの生理的出現を調節している消化管ホルモンである「モチリ ン」のウマの消化管運動調節機構に対する影響を検討した。次に、モチリンと同様の セロトニン受容体作動薬であり消化管運動賦活化薬である「シサブリド」の静脈内投
与および経口投与における用量変化に伴う影響を検討した。
モチリン(0.6LLg/kg)の静脈内投与により、近位空腸に強収縮群(phaseⅢ)が 出現した。強収縮群の出現周期はモチリン投与により有意に短縮され、投与前126.6±34.5(mean±S.D.,n=7)分および投与後41.3±8.5分であった。シサブリド
(0.1mg/1唱)の静脈内疲与により近位空腸に強収縮群が出現し、シサブリド
(0.75Ing/i唱および1.Omg/kg)の経口投与においては、.空腸のMCが有意に増加し た。以上の成績から、ウマの消化管運動調節機構は、ヒトやイヌと同様にモチリンが関
与していること、0.75Ingパ喝および1.Omg/kgめシサブリド経口投与により、消化 管運動が賦活化されることが明らかとなった。 Ⅲ.痘撃症、風気症および腸捻転などに代表される、消化管の緊張例に対するα2一作 動薬の有用性を評価することを目的とした。キシラジン(1`IT唱/1唱)およびメデトミ ジン(0.0075mg/】曙)の静脈内投与において、消化管の各部位に対する作用特性を 比較検討した。キシラジンの作用時間は近位空腸80分、.回腸100分、盲腸100分および右腹側結腸
120分であり、メデトミジンのそれは近位空腸80分、回腸70分、盲腸100分および右 腹側結腸110分であった。すなわち、上部消化管に比較して下部消化管では、作用時 間が延長すろ傾向がみられた。 キシラジン投与後における収縮振幅の比率は、近位空腸52.8±10.2(mean± S.D.、n=6)%、回腸15.7±10.0%、盲腸7.1±0.7%および右腹側結腸11.0±・6.6%で あり、メデトミジンのそれは近位空腸49.5±14..4%、回腸5.2±1.6%、盲腸5.3±1.2%および右腹側結腸7.3±3.3%であった。すなわち、いずれの薬物も近位空腸に
対する抑制作用は、他の部位に比較して有意に低値を示した。また、両薬物の作用時 間は概ね一致したが、メデトミジンはキシラジンに比較して有意に強い収縮抑制作用 を示した。 以上の成績から、キシラージンおよびメデトミジンに対する消化管運動抑制作用は、上部消化管に比較して下部消イヒ管の方が長い作用時間および強い抑制作用を有するこ
とが明らかとなった。また、ウマに対して消化管の緊張硬和を目的としてα2一作動薬
を選択する場合は、キシラジンよりメデトミジンが推奨されるものと考えられた。
本研究では、モチリンおよびシサブリドが消化管運動を促進することから、消化管運動低下に伴う疾患にこれらの薬物を使用できることが理論付けられた。.またメデト
ミジンおよびキシラジンなどのα2イ巨動薬が収縮振幅を抑制することから緊張性疾患 に有用であることを明らかにした。これらのことは、馬の臨床への貢献はもとより基礎と臨床の間の研究を理解する上で有益な示唆を与えることができた。
以上について、審査委員会全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の 学位論文として十分価値あるものと認めた。 学位論文の基礎となる論文 1.Sasaki,N.andYoshh訂a,T.(1999) meeffectofmot揖nontheregulationmechanisrrlOfintestinalmot批yin COnSCioushorse岳.JournalofVeterinaryMedicalScienc寧.61:167-170. 2.Sasaki,N.andYos肋,T.(2000) Theeffectoforanyadministeredcisaprideonintestinalmbtnityin COnSCioushorses.JournalofVeterinaryMedicalScience.62:21ト213. 既発表論文 1.Sasaki,N.,K汰uta,A.,Nakmishi,Y.,Katam,Y.,Mizuno,Y.牟nd Yoshiba,T.(1998) DoubleDCP肋tionfbrthespiraltibialfractureofaracehorse.Jourrdof EquineScience.9:71-75. 2.Sasaki,N.,MiヱunO,Y.and Yos仙汀a,T.(1998) Tneapp追cationofelectrocecograpbrforevahationofcecummOtihtyin horses.Journ由ofVeterina"MedicalScience.60:122l-1226. 3.Sasaki,N.,Hdbo,S.andYos伽a,T.(1999) Measurementforbreathconcentrationofhydrogenandmethanein hor岳es.JournalofVeterinaryMedicalScience.61:1059-1062.