J S C E
日本比較内分泌学会ニュース
Newsletter
No. 126
2007. 8
JSCE on the Web:
AVPV-POA AVPV POA GnRHニューロン ARC-正中隆起 ARC メタスチンニューロン LHサージ LHパルス ステロイド合成 卵胞発育 排卵 + + エ ス トロ ジ ェ ン の 正 の フ ィ ー ド バ ッ ク + + メタスチンニューロン +会長 筒井 和義 早稲田大学教育・総合科学学術院生物学教室 〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1 TEL:03-5286-1517 FAX:03-3207-9694 E-mail:[email protected]
幹事 安部 眞一 熊本大学大学院自然科学研究科物質生命科学専攻 〒860-8555 熊本県熊本市黒髪2-39-1 TEL/FAX:096-342-3437 E-mail:[email protected]
安東 宏徳 九州大学大学院農学研究院動物資源科学部門 〒812-8581 福岡県福岡市東区箱崎6-10-1 TEL/FAX:092-642-4427 E-mail:[email protected]
内山 実 富山大学大学院理工学研究部(理学) 〒930-8555 富山県富山市五福3190 TEL:076-445-6633 FAX:076-445-6641 E-mail:[email protected]
香川 浩彦 宮崎大学農学部生物環境科学科水産科学講座 〒889-2192 宮崎県宮崎市学園木花台西1-1 TEL/FAX:0985-58-7223 E-mail:[email protected]
菊山 榮 早稲田大学教育・総合科学学術院生物学教室 〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1 TEL:03-5286-1517 FAX:03-3207-9694 E-mail:[email protected]
窪川かおる 東京大学海洋研究所先端海洋システム研究センター 〒164-8639 東京都中野区南台1-15-1 TEL:03-5351-6487 FAX:03-5351-6488 E-mail:[email protected]
小林 哲也 埼玉大学理学部生体制御学教室 〒338-8570 埼玉県さいたま市桜区下大久保255 TEL:048-858-3420 FAX:048-858-3698 E-mail:[email protected]
佐久間康夫 日本医科大学大学院医学研究科システム生理学分野 〒113-8602 東京都文京区千駄木1-1-5 TEL:03-3824-6640 FAX:03-5685-3055 E-mail:[email protected]
塩田 清二 昭和大学医学部第一解剖学教室 〒142-8555 東京都品川区旗の台1-5-8 TEL:03-3784-8103 FAX:03-3784-6815 E-mail:[email protected]
高橋 明義 北里大学水産学部海洋分子生物学研究室 〒022-0101 岩手県大船渡市三陸町越喜来字烏頭160-4 TEL:0192-44-1925 FAX:0192-44-1925 E-mail:[email protected]
竹井 祥郎 東京大学海洋研究所海洋生命科学部門生理学分野 〒164-8639 東京都中野区南台1-15-1 TEL:03-5351-6462 FAX:03-5351-6463 E-mail:[email protected]
田中 滋康 静岡大学理学部生物学教室 〒422-8529 静岡県静岡市駿河区大谷836 TEL:054-238-4783 FAX:054-238-0986 E-mail:[email protected]
長澤 寛道 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻生物有機化学研究室 〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1
TEL:03-5841-5132 FAX:03-5841-8022 E-mail:[email protected]
中嶋 暉躬 星薬科大学 〒142-8501 東京都品川区荏原2-4-41 TEL:03-3786-1011 E-mail:[email protected]
朴 民根 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻動物科学大講座 〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 TEL/FAX:03-5841-4437 E-mail:[email protected]
兵藤 晋 東京大学海洋研究所海洋生命科学部門生理学分野 〒164-8639 東京都中野区南台1-15-1 TEL:03-5351-6467 FAX:03-5351-6463 E-mail:[email protected]
前多敬一郎 名古屋大学大学院生命農学研究科生殖科学研究室 〒464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町
TEL/FAX:052-789-4073 E-mail:[email protected]
森 裕司 東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物学専攻 〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1 TEL:03-5841-5474 FAX:03-5841-8190 E-mail:[email protected]
屋代 隆 自治医科大学解剖学教室 〒329-0431 栃木県河内郡南河内町薬師寺3311-1 TEL:0285-58-7313, 7314 FAX:0285-44-5243 E-mail:[email protected]
安原 義 東京農業大学短期大学部栄養学科食品学教室 〒156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1 TEL/FAX:03-5477-2579 E-mail:[email protected]
監事 菊地 元史 自治医科大学解剖学教室 〒329-0431 栃木県下野市薬師寺3311-1 TEL:0285-58-7314 FAX:0285-44-5243 E-mail:[email protected]
村上志津子 順天堂大学医学部解剖学第二講座 〒113-8421 東京都文京区本郷2-1-1
TEL:03-5802-1205 FAX:03-5800-0245 E-mail:[email protected]
事務局:早稲田大学教育・総合科学学術院生物学教室 〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1
8
月4
日㈯∼5
日㈰ 日本神経内分泌学会第34
回学術集会(ウェルシティ前橋)8
月19
日㈰∼24
日㈮International Congress of Insect Biotechnology and Industry
(韓国大邱(デグ)市) (連絡先:http://www.icibi2007.com/
)8
月21
日㈫∼23
日㈭ 日本比較免疫学会第19回学術集会(舞阪文化センター)8
月24
日㈮∼26
日㈰ 日本下垂体研究会第22
回学術集会(湘南国際村センター) (連絡先:http://www.jichi.ac.jp/jspr/
)9
月3
日㈪∼8
日㈯The 8th International Symposium on VIP, PACAP and Related Peptides
(Manchester, Vermont, USA)
(連絡先:
http://www.uvm.edu/conferences/2007_VIP_PACAP_Symposium/
)9
月10
日㈪∼12
日㈬Nuero2007
(第30
回日本神経科学大会・第50
回日本神経化学会大会・第17
回日本神経回路学会大会)(パシフィコ横浜) (連絡先:http://www2.convention.jp/neuro2007/
)9
月15
日㈯∼17
日㈪ 日本昆虫学会第67
回大会(神戸大学六甲台キャンパス)9
月20
日㈭∼22
日㈯ 日本動物学会第78
回大会(弘前大学総合教育棟) (連絡先:http://zsj2007.umin.jp/
)(連絡先:http://www.nacos.com/jshc_jscmm2007/
)9
月28
日㈮∼29
日㈯ 第48
回日本組織細胞化学会総会・学術集会(第8
回日中合同組織細胞化学 セミナー)(山梨県甲府市総合市民会館)9
月28
日㈮∼29
日㈯ 日本食禽学会2007
年度秋季大会(岡山大学津島キャンパス:創立五十周年 記念館) (連絡先:http://wwwsoc.nii.ac.jp/jpsa/index.html
)10
月5
日㈮∼8
日㈪2007
年度日本魚類学会年会(北海道大学学術交流会館) (連絡先:http://www.fish-isj.jp/indes.html
)10
月12
日㈮∼13
日㈯ 日本比較内分泌学会第32回大会・シンポジウム(日光プリンスホテル) (連絡先:http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsce3/index-j.html
)10
月18
日㈭∼22
日㈪ 第100
回日本繁殖生物学会大会(東京大学農学部) (連絡先:http://www.reproduction.jp/index-j.html
)10
月19
日㈮ 第12
回日本生殖内分泌学会学術集会(東京大学弥生講堂) (連絡先:http://seishoku.org/
)11
月15
日㈭∼16
日㈮ 第32
回鳥類内分泌研究会(ニューグランデみまつ) (連絡先:http://plaza.umin.ac.jp/%7ejae/index.html
)11
月17
日㈯∼18
日㈰ 日本爬虫両棲類学会 第46
回大会(琉球大学) (連絡先:http://zoo.zoo.kyoto-u.ac.jp/herp/
)12
月10
日㈪∼14
日㈮The 6th Congress of the Asia and Oceania Society for Comparative
Endocri-nology (NBU, India)
(連絡先:
http://www.waseda.jp/assoc-AOSCE/The_6th_Congress.html
)12
月11
日㈫∼15
日㈯BMB2007
日本生化学会・日本分子生物学会合同年会(第80
回日本生化 学会大会・第30
回日本分子生物学会年会)(パシフィコ横浜)(連絡先:
http://www.aeplan.co.jp/bmb2007/index.html
)特集 新しい内分泌現象
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)作用系の比較生物学
大久保 範聡(基生研・生殖生物学)[email protected]
はじめに ゴナドトロピン放出ホルモン(Gonadotro-pin-Releasing Hormone; GnRH
)はアミノ酸10
個程度からなるごく小さなペプチドであ るが、生殖機能を中枢レベルで支配する最も 重要な因子であると考えられている。脳内で 産生されたGnRH
は下垂体へと運ばれ、そ こからゴナドトロピンを分泌させる。それに より生殖腺の発達が進行する。また、GnRH
は、神経修飾物質として脳内でも作用し、性 行動を誘起することが知られている。生殖機 能の二大要素である生殖腺の発達と性行動の 発現のどちらも、この小さなペプチドによ って支配されているわけである。 これまでに、ヤツメウナギからヒトまで の脊椎動物はもちろんのこと、原索動物で あるホヤ1, 2)や軟体動物であるタコ3)からもGnRH
が見つかっている。さらに、これら の生物種からは、GnRH
に特異的な受容体 (GnRH receptor; GnRH-R
)も同定されてい る4∼6)。加えて、節足動物のショウジョウバ エ7)や軟体動物のカキ8)、線形動物の線虫9) からもGnRH-R
様遺伝子が見つかっており、GnRH
作用系は種を越えて広く保存されて いることが分かりつつある。 さて、これまでの研究によって、少なく と も 脊 椎 動 物 や 原 索 動 物 で は、GnRH
とGnRH-R
の両者にはパラログ遺伝子(遺伝 子重複によって、1
つの生物種に複数存在 する遺伝子。パラロガスな遺伝子とも言う) が存在することが明らかとなってきた。つ まり1
つの動物種が複数種類のGnRH
遺伝 子 とGnRH-R
遺 伝 子 を も つ と い う こ と が 分かった。そして最近になって、GnRH
とGnRH-R
のパラログ遺伝子の数は、動物種 によって大きく異なっていることが分かっ てきた。本総説では主として、脊椎動物にお いてGnRH
とGnRH-R
のパラログ遺伝子が、 どのような系統進化を経て、どのような機能 分化を遂げたかに関する最近の知見を、比較 生物学的な見地から簡単にまとめてみたい。 GnRHの系統進化 脊 椎 動 物 か ら は、3
種 類 のGnRH
パ ラ ログが見つかっており、それぞれGnRH1
、GnRH2
、GnRH3
と よ ぶ10)。GnRH
の 命 名 法については、以前は、そのアミノ酸配列 をもったGnRH
がはじめて同定された動物 種の頭文字を付ける慣習があった。例えば、 最初に同定されたGnRH
(アミノ酸配列:pEHWSYGLRPG-NH
2)はブタ11)とヒツジ12) か ら 見 つ かった の で、mGnRH(mammalian
GnRH)
と よ ば れ て い た。 ま た、 メ ダ カ で はじめて見つかったアミノ酸配列のGnRH
(ア ミ ノ 酸 配 列:pEHWSFGLSPG-NH
2)はmdGnRH(medaka GnRH)
とよばれていた13)。 これまでに、脊椎動物からアミノ酸配列の異 なる14
種類のGnRH
が同定されているが、そ れらの全てに、それぞれ別々の名前が付けら れてきたわけである。しかし、その命名法は 結果として、「ウナギのmammalian GnRH
とchicken-II GnRH
」などというような表現をも たらし、複雑で混乱を招きやすかった。さら には、オーソロガスな(同じパラロガスグル ープに属する相同な)GnRH
であっても、動 物種によって異なる名前になってしまい、分 かりにくかった(例えば、哺乳類のmGnRH
遺伝子とメダカの
mdGnRH
遺伝子はオーソ ロガスであるのに、別々の名称になってしま う)。 しかし近年、先にも触れたとおり、脊椎動 物のGnRH
が3
つのパラロガスなグループに 分かれることが明確に示された14)。そこで、 これまでの命名法を改め、単に、GnRH1
、GnRH2
、GnRH3
とすることになった。こ れ だ と、「ウ ナ ギ のGnRH1
とGnRH2
」と いう表現でよく、混乱を招くおそれがな い。ゲノム上におけるGnRH
遺伝子の位置 は、進化の過程でよく保存されており、オ ーソ ロ ガ ス なGnRH
遺 伝 子 で あ れ ば、 生 物種を越えて、ゲノム上で近隣に同じ遺伝 子 が 存 在 す る。GnRH1
の 隣 に はKCTD9
という遺伝子が存在する一方、GnRH2
の 隣にはPTPRA
遺伝子が、GnRH3
の隣にはPTPRE
遺伝子が存在する14)。そのようなシ ンテニー(ゲノム上での遺伝子の並び方)の 保存により、脊椎動物のGnRH
が3
つのパ ラロガスなグループに分かれることが証明 されたわけだ。例えば、哺乳類のmGnRH
遺伝子とメダカのmdGnRH
遺伝子はとも に、KCTD9
の下流に位置し、オーソロガス な関係にあるので、両者をGnRH1
と同じ名 称でよぶことができる。なお、この新表記 法 で は、cGnRH-II(chicken-II)
はGnRH2
に、sGnRH(salmon GnRH)
はGnRH3
に、それ以 外の多くのGnRH(mGnRH, gpGnRH(guinea
pig GnRH), cGnRH-I (chicken-I GnRH),
frGnRH(frog GnRH), sbGnRH(seabream Gn
RH), mdGnRH, wfGnRH(whitefish GnRH),
cfGnRH(catfish GnRH), hrGnRH(herring
GnRH))
はGnRH1
になる。この新表記法は2000
年代に入ってから定着しつつある。 さて、脊椎動物には3
種類のGnRH
パラロ グ遺伝子が存在すると述べたが、実は、3
種 類全ての遺伝子をもっている動物種はごく 一部に限られており、多くの種では、1
つも しくは2
つのGnRH
遺伝子しかもたないこと が分かっている。これは、祖先型の脊椎動 物は3
種類のGnRH
パラログをもっていたが、 進化の過程で、いくつかのGnRH
遺伝子が 欠損したためである14)(図1
)。3
種類全てのGnRH
パラログを保持している動物種とし ては、これまでに、タイ15)、シクリッド16)、 ニシン17)、メダカ13)、ペヘレイ18)、マツカ ワ19)、シラウオ20)、フグ21)などが知られて いるが、全て硬骨魚類である。一方、同じ硬 骨魚類でも、ゲノム情報が利用できるゼブ ラフィッシュは、GnRH1
を欠損していると 考えてほぼ間違いないようだ22∼24)。同様に、 キンギョやサケもGnRH1
を欠損していると 考えられている24)。また、ウナギやナマズはGnRH3
を欠損していると考えられている24)。 一方、両生類から哺乳類までの四足動物を 見てみると、ヒトやラット、マウスなどの ゲノム情報が利用できる動物種ではGnRH3
が欠損していることが分かっている。さら に、精力的な探索にも関わらず、四足動物で はこれまで、どの動物種からもGnRH3
は見 つかっていない。おそらく、GnRH3
は四足 動物の進化の初期に欠損してしまったために、 どの四足動物もGnRH3
をもっていないもの と考えられる14(図)1
)。その結果、多くの四 足動物はGnRH1
とGnRH2
の2
種類のGnRH
パラログをもつようになったようだ。さらに は、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、チンパ ンジーでは、GnRH2
も欠損ないしは偽遺伝 子化しており、GnRH1
しかもたないことが 明らかとなっている22, 25)。むしろ現在では、 哺乳類では多くの種が、機能的なGnRH
と してGnRH1
しかもたないのではと考えられ つつある25)。これまでのところ、GnRH2
が 同定されている哺乳類は、トガリネズミ26)、 ヒト27)、キツネザル28)のみであるが、ヒト のGnRH2
遺伝子も翻訳機能を疑問視する声 も出ている22)。一方、非哺乳類を見てみる と、GnRH2
は「最も保存されたGnRH
」の異 名をもつほど普遍的に存在し、どの動物種もGnRH2
を保持している。なぜ哺乳類だけでGnRH2
が脱落しているのか、興味深い問題 である。GnRHの機能分化 脊 椎 動 物 で
3
つ の パ ラ ロ グ に 分 か れ たGnRH
は、そのそれぞれが機能分化してい ることが明らかとなっている。3
種類全てのGnRH
パラログを保持している一部の硬骨 魚類で見てみると、GnRH1
が下垂体からゴ ナドトロピンを分泌させる主因子として機能 する一方、GnRH2
とGnRH3
は主に脳内で 神経修飾物質として機能しているようである (図2
)。それらの魚種においては、GnRH1
を産生するニューロンは、終脳腹側部から視 索前野、視床、視床下部にかけて比較的幅広 く分布しているが、視索前野の産生ニュー ロンの数が圧倒的に多く、他の脳領域の産 生ニューロンは数が少ない29∼31)。視索前野 のGnRH1
産生ニューロンは下垂体に軸索を 伸ばし、そこでゴナドトロピンの放出を促す 役割を担っている30, 31)。一方、GnRH2
の産 生ニューロンは中脳被蓋に位置する1
つの神 経核のみに局在しており、そこから脳内のあ らゆる部位へ投射している32)。このGnRH2
の正確な機能については未だはっきりして 図1 脊椎動物におけるGnRHの系統進化 脊椎動物の祖先はGnRH1、GnRH2、GnRH3の3種類のGnRHをもっていた。硬骨魚類と四足動物が 分岐した直後に、四足動物の系統ではGnRH3が失われた。硬骨魚類の系統でも、サケ、キンギョ、ゼ ブラフィッシュ、アロワナなどではGnRH1が失われ、ウナギやナマズなどではGnRH3が失われた。一方、 ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、チンパンジーなど、多くの哺乳類においては、GnRH3に続き、さらに GnRH2も失われた結果、GnRH1しかもたなくなった。 図2 メダカにおけるGnRH産生ニューロン メダカはGnRH1、GnRH2、GnRH3の全てをもつ。GnRH1産生ニューロンは終脳腹側部から視索前 野、視床、視床下部にかけて比較的幅広く分布している。ニューロン数が最も多い視索前野のGnRH1 産生ニューロンは下垂体に投射し、ゴナドトロピンの分泌を促す。GnRH2産生ニューロンは中脳被蓋に ある単一の神経核のみに局在しており、そこから脳内に広く投射している。このGnRH2産生ニューロ ンは、性行動の促進や摂食行動の抑制を行っているのではないかと予想されている。一方、GnRH3産生 ニューロンは、終神経節から、終脳腹側部、視索前野、視床、視床下部にかけて広く分布する。発現量、 ニューロン数ともに最も多い終神経節のGnRH3産生ニューロンは脳内に広く投射しており、性行動に 対するモチベーションを高める。いないが、おそらくは性行動を促進する役 割をもつだろうと予想されている16)。また、
GnRH3
産生ニューロンは、ややGnRH1
産 生ニューロンとオーバーラップした局在を示 し、終神経節から、終脳腹側部、視索前野、 視床、視床下部にかけて広く分布する29∼31)。 しかし、終神経節以外のGnRH3
産生ニュー ロンの数は極めて少ない。他方、終神経節のGnRH3
産生ニューロンは見事なクラスター を形成しており、細胞数も多く、GnRH
発 現量も多い。この終神経節GnRH3
産生ニュ ーロンもやはり、GnRH2
と同様、脳内のあ らゆる部位に投射しており、性行動に対する モチベーションを高める役割を担っているこ とが示されている33, 34)。また、脳内だけで なく、網膜や嗅上皮にも投射しており、視覚 や嗅覚からの情報を修飾する機能をもつこと が示唆されている35, 36)。異性からのフェロ モンを感知した際や異性を見た際に、性行動 へと誘導するようなはたらきをしているのか もしれない。以上のような発現部位と機能の 分化パターンは、多少のバリエーションはあ るものの、基本的には他の脊椎動物にも共通 に見られる一般原則であるようだ。 しかしながら、先にも触れたが、多くの脊 椎動物では一部のGnRH
パラログが欠損し ている。そのような動物種においては、残 っている他のパラログがその機能を補ってい ると考えられている。GnRH1
を欠損してい るゼブラフィッシュや、同様にGnRH1
を欠 損していると考えられているサケやキンギ ョでは、主としてGnRH3
がその機能を補っ ているようである。つまり、下垂体からの ゴナドトロピン放出という、本来はGnRH1
の機能を、主にGnRH3
が請け負っている のである。事実、サケやキンギョでは、視 索前野に多くのGnRH3
産生ニューロンが 存在し、そこから下垂体までGnRH
が運ば れていることが観察されている37, 38)。逆に、GnRH3
を欠損していると考えられているウ ナギや四足動物では、GnRH1
がその機能を 穴埋めしているようである39)。つまり、も ともとGnRH3
産生の場であった終神経節 で、GnRH1
が産生されるようになり、そこ でGnRH3
の機能を新たに担当するようにな った。例えば、サンショウウオでは、その 終 神 経 節 のGnRH1
産 生 ニューロ ン が、 繁 殖期に嗅覚情報の修飾を行っているようで ある40, 41)。これらの機能補填は、もともと、GnRH1
とGnRH3
は産生ニューロンの局在 が似ているため、比較的簡単に起こりうるも のだったと推察される。GnRH
産生ニュー ロンの発生パターンを見てみても、下垂体に 投射する視索前野のGnRH1
産生ニューロン と、全てのGnRH3
産生ニューロンはともに、 嗅覚器の原器で誕生し、その後、同じ道筋で 脳内へと移動していく31)。このように共通 の発生起源をもっていることも、GnRH1
とGnRH3
の間での機能補填を容易にしている 大きな要因の1
つであろう。GnRH
の機能分化を考える上で興味深い のは、多くの哺乳類でGnRH2
遺伝子が欠損 あるいは偽遺伝子化していることだ。中脳被 蓋に独自の産生ニューロンをもつGnRH2
の 機能を補うことは、互いに局在がオーバーラ ップしているGnRH1
とGnRH3
のいずれか が欠損した場合に比べ、はるかに困難である ことが予想される。それが可能になった一つ の可能性として、中脳被蓋のGnRH2
産生ニ ューロンと、終神経節のGnRH
産生ニュー ロンがともに、脳内の広い領域に投射してお り、産生の場こそ異なるが、機能する場とし てはオーバーラップしていることが考えられ る。また、性行動の促進という役割自体もオ ーバーラップしていることも考えられる。中 脳被蓋のGnRH2
ニューロンがなくても、終 神経節からのGnRH
によって、その機能の 穴埋めができるという考えだ。ただ、この問 題を考えるには、まず、中脳被蓋のGnRH2
産生ニューロンの役割をしっかり把握するこ とが必須である。これまでのところ、いく つかの生物種において、GnRH2
を投与する と、性行動が促進される一方、摂食行動が 抑制されることが示されている(GnRH2
をもたないマウスに
GnRH2
を投与し、表現型 を観察するといった実験を含む)42∼44)。こ のことから、中脳被蓋のGnRH2
産生ニュー ロンが性行動や摂食行動に関与することが予 想されているが、これは単に薬理作用を見て いるだけかもしれない。GnRH1
がもつゴナ ドトロピン放出機能が、GnRH1
遺伝子の変 異体マウスの表現型によって証明されたよう に45, 46)、GnRH2
についても、GnRH2
遺伝 子をもつ生物種における何らかの機能阻害実 験とレスキュー実験による証明が必要だと思 われる。 GnRH-Rの系統進化GnRH-R
は、7
回膜貫通型のG
タンパク質 共役型受容体(G Protein-Coupled Receptor;
GPCR
)に属する膜受容体である。最近の研 究によって、リガンドと同様、脊椎動物は 複数のGnRH-R
パラログをもち、その分子 進化は極めて複雑であることが明らかとな ってきた47∼50)。これまでに脊椎動物から 同定されたGnRH-R
は、3
つもしくは4
つの パラロガスグループに分けることができる (図3
)。本総説では、便宜上、それらのグル ープ をGnRH-R1
、GnRH-R2
、GnRH-R3
、GnRH-R4
とよぶことにするが、この名称は 広く受け入れられているわけではなく、研究 者毎にバラバラの名称を使用しており、統一 が為されていないのが現状である。 最初に発見された1
つ目のパラロガスグル ープGnRH-R1
は、C
末端の細胞内領域をも たないという、GPCR
としては極めてユニ ークな構造上の特徴をもつ51, 52)。GnRH-R1
はこれまで、哺乳類のみから同定されてお り、ゲノム情報の分かっている非哺乳類で 探索しても、どの動物種からも見つからな い。したがって、哺乳類以外の脊椎動物が 進化の過程でGnRH-R1
を欠損したか、ある いは、GnRH-R1
が哺乳類の系統の中で独自 に誕生したものであることが考えられる。分 子系統樹解析の結果は、前者を支持している ように思われる(図3
)。GnRH-R1
は、主な 細胞内情報伝達系としてIP
3シグナルと共役 していることが知られている51, 52)。さらに、 図3 脊椎動物におけるGnRH-Rの系統進化(分子系統樹) 脊椎動物のGnRH-Rは4つのパラロガスグループ(GnRH-R1、GnRH-R2、GnRH-R3、GnRH-R4) に分けられる。研究者によっては、GnRH-R3とGnRH-R4を1つのグループとすることもある。哺乳類 はGnRH-R1とGnRH-R4しかもたない。一方、硬骨魚類はGnRH-R2とGnRH-R3しかもたないが、そ れぞれのパラロガスグループ内で、さらに遺伝子が2つと3つに分かれている(従って、最大で5種類の GnRH-Rをもつ)。各グループの分け方や名称は、まだ研究者の間での統一が為されていないので、個々 の分子の名称が必ずしもグループ名とは一致していないので、注意が必要。GnRH-R1
に対するアンタゴニストが、他のGnRH-R
パラロガスグループではアゴニスト として作用することが報告されている53, 54)。GnRH-R2
とGnRH-R3
は逆に、魚類から 鳥類までの非哺乳類のみに見られ、C
末端 の細胞内領域を保持している47, 55)。この領 域の配列により、IP3
以外にcAMP
シグナル とも共役していることが明らかとなってい る55, 56)。硬骨魚類では、ゲノムの倍数化の た め に、GnRH-R2
とGnRH-R3
が さ ら に、 それぞれ2
つと3
つの遺伝子に分かれてい る21, 57∼60)。フグ21, 60)やスズキ60)など、そ の全てがゲノム中に保持されている魚種も いれば、メダカやゼブラフィッシュ22)など、 一部の遺伝子を失った魚種もいるようだ。 一方、GnRH-R4
は、これまで哺乳類と両 生類からのみ同定されている47, 49, 50)。この グループもC
末端の細胞内領域を保持して いるので、IP3
以外にcAMP
シグナルとも共 役しているようだ61)。しかし、ラット、マ ウス、ウシ、ヒツジ、チンパンジーなど多く の哺乳類で、GnRH-R4
が欠損または偽遺伝 子化していることが報告されており62)、機 能的なGnRH-R4
が同定されている哺乳類は 数種のサルのみである49, 50)。ヒトでも、ゲ ノム中の2
箇所にGnRH-R4
様遺伝子が見つ かっているが、そのどちらも偽遺伝子化して いるようである63∼66)。しかしながら、ヒト では、この偽遺伝子が何らかの機能を有する 可能性が報告されている67)とともに、その 相補鎖が別の遺伝子RBM8
をコードしてい ることが知られている63∼66)。興味深いのは、GnRH2
を欠損している哺乳類の多くで、こ のGnRH-R4
も欠損していることである。後 述するように、生体内では、このGnRH-R4
はGnRH2
の特異的受容体として機能してい る可能性が高い。したがって、これらの動物 種ではリガンドと受容体が揃って失われてい ることになり、リガンドと受容体の共進化が 起きていることを感じさせる。 研究者によっては、GnRH-R3
とGnRH-R4
を1
つのパラロガスグループにまとめること もある。それらを異なるグループとするのが 正しいのか、同じグループとするのが正し いのかについては未だにはっきりしていない。GnRH-R
遺伝子座は動物種間の保存性が低い (遺伝子座レベルでの再編が繰り返されてき た)ので、遺伝子座レベルでの解析では、得 られる情報に限界があることが大きな要因で ある。現時点では、分子系統樹解析に頼るし か方法がなく、上記以上の考察は難しい。今 後のゲノムワイドな解析、および進化を考え る上で鍵となる生物種からのGnRH-R
の同 定が必要であると思われる。 GnRH-Rの機能分化 脊椎動物で3
つないしは4
つのパラログに 分かれたGnRH-R
は、リガンドと同様、そ のそれぞれが機能分化していることが分か りつつある。GnRH-R
の機能分化は、主と して、発現部位とリガンド選択性によっても たらされていると考えられる。哺乳類と非 哺乳類の間で、保有しているGnRH-R
のパ ラログの種類が大きく異なるので、ここでは、 それらを分けて紹介することにする。ただ、GnRH-R
の機能分化については、まだまだ 報告が少なく、今後の研究によっては以下の 記述を修正する必要が出てくるかもしれない ので、注意してもらいたい。 これまでに調べられている哺乳類をみて みると、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、チ ンパンジーのようにリガンドとしてGnRH1
のみを、受容体としてGnRH-R1
のみをも つ動物種と、キツネザルのようにリガンド としてGnRH1
とGnRH2
を、受容体としてGnRH-R1
とGnRH-R4
をもつ動物種が多いよ うだ25(ヒトがどちらのグループに属するか) は議論の分かれるところである22))。GnRH1
とGnRH-R1
しかもたない哺乳類においては、GnRH1
が有する全ての機能をGnRH-R1
が 仲介しているはずである。一方、リガンド としてGnRH1
とGnRH2
を、受容体としてGnRH-R1
とGnRH-R4
をもつ哺乳類におい ては、主として、GnRH-R1
はGnRH1
の機能を仲介し、
GnRH-R4
はGnRH2
の機能を 仲介していると思われる49, 50)。GnRH-R1
は、GnRH1
に対して高い反応性を示すと ともに、下垂体で多く発現していることか ら、GnRH1
がもつゴナドトロピン分泌作用 は、主にこの受容体を介していると考えられ る49, 50)。一方、GnRH-R4
はGnRH2
に高い 反応性を示し、脳内でも幅広く発現してい ることから、GnRH2
の機能を仲介している と考えられている49, 50)。トガリネズミにお いては、GnRH2
がもつ行動に対する作用はGnRH-R4
が仲介していることを示唆する報 告がある68)。しかし、GnRH-R4
は下垂体の ゴナドトロピン産生細胞でも発現しており49)、GnRH-R1
とGnRH-R4
の機能分化の詳細に ついては、今後の課題として残されている。 一方、非哺乳類における各GnRH-R
パラ ログの機能分化については、まだほとんど分 かっていないのが現状である。これまでに 調べられた非哺乳類のGnRH-R
(GnRH-R2
、GnRH-R3
、GnRH-R4
)の リ ガ ン ド 選 択 性 を見てみると、全て、GnRH2
、GnRH-R3
、GnRH1
の順に高い反応性を示すうえ47, 48, 55)、 それらの発現部位に関するしっかりした情 報もまだまだ少ない。ここでは、メダカのGnRH-R
(著者、未発表データを含む)を中 心に話を進めることにする。 非 哺 乳 類 のGnRH-R
は 全 て、GnRH2
、GnRH-R3
、GnRH-R1
の順に高い反応性を 示すと述べたが、その差の度合はパラログ 間で大きく異なり、GnRH-R3
はGnRH2
に 対してもGnRH1
に対してもそれほど変わ らない反応性を示す(つまり、GnRH1
に対 しても比較的高い反応性をもつ)47, 48)。ま た、GnRH-R3
が下垂体のゴナドトロピン産 生細胞で発現していることが、シクリッド69) とメダカで確認されている(図4
)。これらの ことから、非哺乳類においては、主としてGnRH-R3
がGnRH1
によるゴナドトロピン 分泌に関与していることが考えられる。ま た、メダカでは、GnRH-R3
がさらに2
つに 分かれており、一方がゴナドトロピン産生細 胞で発現しているのに対して、もう片方はプ ロラクチン産生細胞で発現している。GnRH
はゴナドトロピン以外にも、プロラクチンも 分泌させる薬理作用をもつことが報告されて いる70)ので、生体内でも実際に、GnRH1
がGnRH-R3
を介してプロラクチンを放出させ ていると考えられる。また、このことは、少 なくともメダカにおいては、同じパラロガス グループのGnRH-R
遺伝子が複数に分かれ た結果、さらなる機能分化を遂げたことを 図4 メダカにおけるGnRH-Rの発現部位 メダカは1種類のGnRH-R2と2種類のGnRH-R3(GnRH-R3aとGnRH-R3b)をもつ(合計3種類)。 GnRH-R2は終脳背側部と松果体で多く発現している。したがって、主な役割として松果体機能の制御が 考えられる。一方、GnRH-R3aは下垂体のゴナドトロピン産生細胞と視床で発現している。したがって、 主な役割はGnRH1によるゴナドトロピン分泌促進の仲介だと考えられる。GnRH-R3bは下垂体のプロ ラクチン産生細胞、終脳腹側部、視索前野、視床、視床下部、中脳被蓋などで多く発現している。した がって、GnRH1によるプロラクチン分泌促進、およびGnRH2とGnRH3による行動作用を仲介してい ることが示唆される。意味している。また、
GnRH-R3
は下垂体だ けでなく、脳内にも広く分布していることが 分かっている。メダカにおいてGnRH-R3
は、 終脳腹側部、視索前野、視床、視床下部、中 脳被蓋などで多く発現しており、GnRH2
やGnRH3
に高い反応性を示すことから、性行 動の制御など、これらのGnRH
がもつ神経 修飾作用をも仲介していることが予想される (図4
)。 一方、メダカのGnRH-R2
は下垂体での発 現は認められず、終脳背側部と松果体で多く 発現している(図4
)。GnRH
は松果体からの メラトニン放出を促進する作用をもつこと が報告されている71)ので、その作用は、こ のGnRH-R2
を介していることが示唆される。 メラトニンは、ゴナドトロピンとプロラクチ ンの放出を制御することが知られている72) ので、ここで、GnRH
を中心として季節繁 殖に関わる機能的なループができているのか もしれない。一方、メダカとは異なり、シク リッドにおいては、GnRH-R2
が下垂体の成 長ホルモン産生細胞でも発現していることが 報告されている69)。GnRH-R2
は、GnRH
に よる成長ホルモン分泌作用も介しているのか もしれない。あるいは、動物種毎にそれぞれ のGnRH-R
パラログの機能が少しずつ異な るのかもしれない。 また、非哺乳類におけるGnRH-R4
はこれ まで、カエルからしか見つかっておらず、そ の機能については明らかとなっていない。今 後の大きな課題の1
つである。 おわりに これまでに述べてきたように、GnRH
とGnRH-R
は極めて複雑な系統進化をたどり、 その結果として、機能の分化、補償が行われ てきた。生殖という極めて重要な生体機能を 中枢レベルで支配する分子が、種を越えて保 存されている一方、遺伝子の重複と欠損によ り、複雑に多様化していることは、生物種に よる生殖戦略の多様化と考え合わせると非常 に興味深く感じられる。他方、最近の知見に よって、性決定や生殖腺の分化にかかるメカ ニズムも、生物種による多様性が非常に大き いことが分かりつつある。そこでもやはり、 遺伝子の重複と欠損が大きな役割を演じてい るようである。このように、遺伝子から行動 まで、あるいは脳から生殖腺まで、どのレベ ルで見ても、生殖機構は生物種間の多様性を 特徴としているようで、そこから一般法則を 見出すには、まだまだ知るべきことがたくさ んありそうだ。GnRH
に関する研究を見てみても、硬骨 魚類から哺乳類までの生物種以外における報 告がまだまだ少ないのが現状である。腔腸動 物や海綿動物(さらには原生動物)などの原 始的な生物種、ナメクジウオを含めた原索動 物、ヤツメウナギやメクラウナギを含めた円 口類における研究が進めば、GnRH
の起源 はどこにあり、そこではどのような機能をも つのか、あるいは、GnRH
とゴナドトロピ ン、性行動の関係は進化の過程で、どこで どのように誕生したのか、また、GnRH
とGnRH-R
がどのように対応するようになっ たのかなど、比較生物学的な観点からも興 味深い問題を解決できる可能性が高い。ま た、脊椎動物での研究に限っても、GnRH2/
GnRH-R4
の生理的役割、メタスチンによるGnRH
の制御機構、GnRH
ニューロンの発 生機構とそれに伴う疾患など、ホットなトピ ックが存在する。是非、今後の研究に期待し たい。 謝 辞 本総説執筆の機会を与えてくださった北里 大学水産学部の高橋明義先生に御礼申し上げ ます。また、私がGnRH
とGnRH-R
に関す る研究を行う上で、大変お世話になった元東 京大学大学院農学生命科学研究科の會田勝美 先生と、基礎生物学研究所生殖生物学研究部 門の長濱嘉孝先生に深く感謝いたします。 参考文献Fischer WH, Park M, Rivier JE, Craig AG,
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イラストエッセイ
メタスチン metastin(キスペプチン kisspeptin)と GnRH 分泌
前 多 敬一郎・束 村 博 子(名古屋大・院生命農学・生殖科学)[email protected]
メタスチンはキスペプチンとも呼ばれ、2001
年に武田薬品の大瀧らによりヒトの胎 盤から発見された54
個のアミノ酸からなるペ プチドである1)。このペプチドは、オーファ ンGPCR
(G
タンパク共役型受容体)であったGPR54
の内因性リガンドとして発見された が、このペプチドをコードする遺伝子はそれ よりも以前にすでに発見されており、KiSS-1
と名付けられていた。KiSS-1
は腫瘍転移抑制 遺伝子として発見されていたので、メタス チンはその「機能」にちなんで、命名された。 しかしその後GPR54
を欠損する個体を有す るヒトの家系が発見され、GPR54
を欠損す る個体では性成熟に達しないこと2, 3)、さら にGPR54
をノックアウトしたマウスでも性 成熟を示さないことが示され3)、メタスチン ─GPR54
系が性成熟において、きわめて重 要な役割を持つことが示唆された。その後、 いくつかのグループにより、ラット、マウス、 サルなどで、メタスチンの投与がLH
やFSH
分泌を強力に促進することがわかり4∼6)、生 殖内分泌学の分野では、メタスチンの役割が にわかに注目を集め始めた。 われわれは、武田薬品および埼玉大学井上 グループとのラットを用いた共同研究により、 発情前期のLH
サージ及びエストロジェンで 誘起したLH
サージの成立には内因性のメタ スチンが必要不可欠であることをはじめて明 らかにした7, 8)。その後、このペプチドが脳 内では視床下部弓状核(ARC
)と前腹側室周 囲核(AVPV
)に明瞭な2
つの細胞集団を持つ ことが明らかになった8)。この2
つの領域は それぞれGnRH
パルスとサージの中枢であ ると、以前よりいわれてきた。パルスは卵胞 発育に必要な基底レベルの分泌であり、サ ージは排卵を引き起こすための大量放出であ る。GnRH
が視床下部から1960
年代に発見 されて以来、パルスとサージが卵巣の機能調 節を考える上で重要な分泌パターンであるこ とはわかっていたが9)、その分泌メカニズム は謎であった。GnRH
パルスとサージは各々 卵巣から分泌されるエストロジェンの負及び AVPV-POA AVPV POA GnRHニューロン ARC-正中隆起 ARC メタスチンニューロン LHサージ LHパルス ステロイド合成 卵胞発育 排卵 + + エ ス トロ ジ ェ ン の 正 の フ ィ ー ド バ ッ ク + + メタスチンニューロン + 神経ペプチド、メタスチンの生理機能に関す る仮説。視床下部弓状核(ARC)に存在するメタ スチンニューロンはGnRH/LHパルスの発生に関 与しており、卵胞発育を刺激している。十分に 卵胞が発育すると、卵巣から分泌されたエスト ロジェンは前腹側室周囲核(AVPV)にあるメタス チンニューロンに働き、GnRH/LHサージを誘起 し、排卵を引き起こす。GnRHニューロンの細胞 体がある視索前野(POA)には、多量のGPR54が 発現している。正のフィードバックにより調節されているが、
GnRH
ニューロンには肝心のエストロジェ ン受容体α(ER
α)がないのである。1
)メタス チンニューロンがER
αをもつこと、2
)エス トロジェンがARC
あるいはAVPV
における メタスチン発現にはそれぞれ抑制的あるいは 促進的に働くこと、3
)GnRH
ニューロンがGPR54
を発現していること、などから、メ タスチンはGnRH
のパルス状とサージ状分 泌の成立の鍵を握るペプチドであると考えら れ始めている。このペプチドの生理機能を明 らかにすることによって数10
年来の謎が解 明されるかもしれないのである。 文 献1 ) Ohtaki T, Shintani Y, Honda S,
Matsumo-to H, Hori A, Kanehashi K, Terao Y,
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学会印象記
8th International Symposium on Reproductive
Physiology of Fish に参加して
遠 藤 琢(北海道大学大学院・水産科学院)
[email protected]
8th International Symposium on
Reproduc-tive Physiology of Fish
が2007
年の6
月3
日∼6
月
8
日の日程でフランスのサン・マロで開催 された。サン・マロは北フランスのブルタ ーニュ地方に位置する古い港町であり非常に 有名な観光地である。城壁に囲まれた旧市街 は歴史的建造物が建ち並び、城壁の上からは エメラルド色の海を眺めることができた。学 会では、口頭発表73
題、ポスター発表222
題 の発表があり、さらに各テーマに関するラ ウンドテブルも行なわれた。筆者は「In
vi-tro induction of oil droplet accumulation into
previtellogenic oocytes of Japanese eel, Anguilla
japonica
」の題名でポスター発表を行い、ニ ホンウナギの油球蓄積機構についての紹介を 行なった。 学会の初日は、ウェルカムレセプションの みであり、発表は2
日目から行なわれた。2
日 目 の 内 容 は「Reproductive
Neuroendocri-nology
」であり15
題の口頭発表が行われた。 メラトニン、GnRH
、ソマトラクチン、下 垂体ホルモンに関する研究発表が行われ、G
protein-coupled receptor 54
とそのリガンドで あるKisspeptin
に関する研究が興味深く、今 後、魚類の生殖に対して重要な存在になっ ていくだろうと感じた。また、最後はBerta
Levavi-Sivan
博士によるティラピアのGTH
に関する特別講演が行なわれた。機能的なLH
、FSH
を作成し、さらにその測定系を確 立しLH
、FSH
の作用を解析するという内容 であり、それぞれの特異的な作用が明らかに なった。この実験系は今後ティラピアの生殖 生理の解析に大きな役割を担っていくだろう と感じた。口頭発表が終わると、奇数番号の ポスター発表が行われた。ポスター発表の会 場は大勢の人で賑わい、活発な議論が行なわ れていた。学会
3
日目は、先ず「Sex determination and
sex differentiation
」の内容で12
題の口頭発表 とラウンドテーブルが行われた。性決定に 関わる遺伝子や転写因子、DNA
のメチル化、 アポトーシス、GTH
、性ステロイドなど様々 な視点で性決定と性分化に関わる因子の解析 を行なっており、多くの知識を得ることがで きた。次に「Gametogenesis and Gamete
Biol-ogy -Part I- Spermatogenesis
」の内容で5
題の 口頭発表が行われ、この日の学会は終了した。 学 会4
日 目 の 午 前 は「Gametogenesis and
Gamete Biology -Part II- Hormonal and
envi-ronmental regulation of gametogenesis
」の内容 で9
題の口頭発表が行われた。プロゲスチン の研究が興味深く、プロゲスチンのmPR
を 介した最終成熟への作用に関する研究と、最 終成熟ではなく初期の生殖腺の減数分裂の開始に作用しているという内容であった。また、 ウナギを長期間遊泳させることにより成熟を 促す研究の発表は非常に興味深く、ホルモン 投与を用いない新しいウナギの催熟法開発の 可能性を感じた。午後からは、エクスカー ションであり世界遺産のモン・サン・ミッシ ェルを観光した。ガイドの人の熱心な説明を 受けながら内部を廻り、また、最後には、海 に囲まれた岩の上にそそり立つモン・サン・ ミッシェルの姿を見ることができ非常に感動 した。その後、モン・サン・ミッシェルから サン・マロに戻りバンケットが開催された。 バンケットでは、ワインとフランス料理を堪 能し、さらに音楽に合わせて参加者みんなで 輪になって踊り、非常に楽しい時間を過ごす 事ができた。 学 会
5
日 目 は、 先 ず「Gametogenesis and
Gamete Biology -Part III- Biotechnology
」の内 容で3
題の口頭発表が行われた。Luiz Franca
博士による特別講演をはじめ、生殖系列キメ ラについての発表であった。ティラピア精巣 内でカエル由来の精原細胞がシストを形成し たという発表には非常に驚いた。ティラピア とカエル間で移植可能であるならば、精原細 胞に関しては、魚類間でほぼ移植可能なので はないかと思った。また、この技術は絶滅危 惧種の保護や水産養殖業に大きく貢献できる 素晴らしい技術であると強く感じた。次に 「Gametogenesis and Gamete Biology -Part IV-
Oogenesis
」の内容で5
題の口頭発表が行われた。魚類の卵形成過程においてまだ知見が少 ない前卵黄形成期についての発表があり、魚 類の前卵黄形成期の解析にはさらなる知見の 集積が必要だと感じた。次いで「
Gametogen-esis and Gamete Biology -Part V- Steroid
ac-tion and endocrine disruptors
」の内容で3
題の 口頭発表とラウンドテーブルが行われ、この 日の口頭発表は終了した。口頭発表が終わる と、偶数番号のポスター発表が行われた。筆 者は偶数番号であるためポスター発表を行い、 多くの人に研究成果を紹介し、さらに、自分 の研究に対して多くの意見をもらうことがで き充実した時間を送ることができた。 学 会6
日 目 は、 先 ず「Gametogenesis and
Gamete Biology -Part VI- Yolk protein
depo-sition and new findings in oocyte maturation
」 の内容で4
題の口頭発表が行われた。3
種類 のビテロゲニンが精製され、さらに、それら とレセプターとの相互作用に関する研究か ら、一般的に知られている卵黄形成からさら に複雑な卵黄形成機構が存在することが分か った。次に「Reproductive Strategy and Sexual
cycles
」の内容で12
題の口頭発表が行われた。 マグロやチョウザメなどの水産有用魚種に関 する研究が発表され、水産有用魚種の生殖生 理に関する基礎的知見の重要性を感じた。ま た、Penny Swanson
博士による絶滅の危機に 瀕したサケ科魚類の保護についての特別講演 が行なわれた。絶滅危惧種を飼育環境下で野 生の形質を維持し保護するという養殖魚に対 ポスター発表の様子 バンケットの光景する飼育法や育種とは違うアプローチを知る ことができた。 そして、この講演を最後に学会会場を後に した。本学会では、魚類の生殖生理に関する 幅広い研究に触れ、非常に多くの新しい知識 を得ることができた。さらに、自分の研究に 対して、同じ分野の研究を行なっている方々 から多くの意見をもらい自分の研究を再度見 直すことができた。サン・マロという美しい 町でこのような学会に参加できたことを本当 によかったと思う。学会を組織運営していた だいたスタッフの方々には、心から感謝の意 を表したい。
8th International Symposium on Reproductive
Physiology of Fish に参加して
山 口 寿 哉(熊本大学大学院 自然科学研究科 博士後期課程一年)
2007
年6
月3
∼8
日にかけて、フランスのサン・マローにおいて