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JSCE-NL2007_126

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(1)

J S C E

日本比較内分泌学会ニュース

Newsletter

No. 126

2007. 8

JSCE on the Web:

AVPV-POA AVPV POA GnRHニューロン ARC-正中隆起 ARC メタスチンニューロン LHサージ LHパルス ステロイド合成 卵胞発育 排卵 + + エ ス トロ ジ ェ ン の 正 の フ ィ ー ド バ ッ ク + + メタスチンニューロン +

(2)

会長 筒井 和義 早稲田大学教育・総合科学学術院生物学教室 〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1 TEL:03-5286-1517 FAX:03-3207-9694 E-mail:[email protected]

幹事 安部 眞一 熊本大学大学院自然科学研究科物質生命科学専攻 〒860-8555 熊本県熊本市黒髪2-39-1 TEL/FAX:096-342-3437 E-mail:[email protected]

安東 宏徳 九州大学大学院農学研究院動物資源科学部門 〒812-8581 福岡県福岡市東区箱崎6-10-1 TEL/FAX:092-642-4427 E-mail:[email protected]

内山  実 富山大学大学院理工学研究部(理学) 〒930-8555 富山県富山市五福3190 TEL:076-445-6633 FAX:076-445-6641 E-mail:[email protected]

香川 浩彦 宮崎大学農学部生物環境科学科水産科学講座 〒889-2192 宮崎県宮崎市学園木花台西1-1 TEL/FAX:0985-58-7223 E-mail:[email protected]

菊山  榮 早稲田大学教育・総合科学学術院生物学教室 〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1 TEL:03-5286-1517 FAX:03-3207-9694 E-mail:[email protected]

窪川かおる 東京大学海洋研究所先端海洋システム研究センター 〒164-8639 東京都中野区南台1-15-1 TEL:03-5351-6487 FAX:03-5351-6488 E-mail:[email protected]

小林 哲也 埼玉大学理学部生体制御学教室 〒338-8570 埼玉県さいたま市桜区下大久保255 TEL:048-858-3420 FAX:048-858-3698 E-mail:[email protected]

佐久間康夫 日本医科大学大学院医学研究科システム生理学分野 〒113-8602 東京都文京区千駄木1-1-5 TEL:03-3824-6640 FAX:03-5685-3055 E-mail:[email protected]

塩田 清二 昭和大学医学部第一解剖学教室 〒142-8555 東京都品川区旗の台1-5-8 TEL:03-3784-8103 FAX:03-3784-6815 E-mail:[email protected]

高橋 明義 北里大学水産学部海洋分子生物学研究室 〒022-0101 岩手県大船渡市三陸町越喜来字烏頭160-4 TEL:0192-44-1925 FAX:0192-44-1925 E-mail:[email protected]

竹井 祥郎 東京大学海洋研究所海洋生命科学部門生理学分野 〒164-8639 東京都中野区南台1-15-1 TEL:03-5351-6462 FAX:03-5351-6463 E-mail:[email protected]

田中 滋康 静岡大学理学部生物学教室 〒422-8529 静岡県静岡市駿河区大谷836 TEL:054-238-4783 FAX:054-238-0986 E-mail:[email protected]

長澤 寛道 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻生物有機化学研究室 〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1

TEL:03-5841-5132 FAX:03-5841-8022 E-mail:[email protected]

中嶋 暉躬 星薬科大学 〒142-8501 東京都品川区荏原2-4-41 TEL:03-3786-1011 E-mail:[email protected]

朴  民根 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻動物科学大講座 〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 TEL/FAX:03-5841-4437 E-mail:[email protected]

兵藤  晋 東京大学海洋研究所海洋生命科学部門生理学分野 〒164-8639 東京都中野区南台1-15-1 TEL:03-5351-6467 FAX:03-5351-6463 E-mail:[email protected]

前多敬一郎 名古屋大学大学院生命農学研究科生殖科学研究室 〒464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町

TEL/FAX:052-789-4073 E-mail:[email protected]

森  裕司 東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物学専攻 〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1 TEL:03-5841-5474 FAX:03-5841-8190 E-mail:[email protected]

屋代  隆 自治医科大学解剖学教室 〒329-0431 栃木県河内郡南河内町薬師寺3311-1 TEL:0285-58-7313, 7314 FAX:0285-44-5243 E-mail:[email protected]

安原  義 東京農業大学短期大学部栄養学科食品学教室 〒156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1 TEL/FAX:03-5477-2579 E-mail:[email protected]

監事 菊地 元史 自治医科大学解剖学教室 〒329-0431 栃木県下野市薬師寺3311-1 TEL:0285-58-7314 FAX:0285-44-5243 E-mail:[email protected]

村上志津子 順天堂大学医学部解剖学第二講座 〒113-8421 東京都文京区本郷2-1-1

TEL:03-5802-1205 FAX:03-5800-0245 E-mail:[email protected]

事務局:早稲田大学教育・総合科学学術院生物学教室 〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1

(3)

8

4

日㈯∼

5

日㈰ 日本神経内分泌学会第

34

回学術集会(ウェルシティ前橋)

8

19

日㈰∼

24

日㈮

International Congress of Insect Biotechnology and Industry

(韓国大邱(デグ)市) (連絡先:

http://www.icibi2007.com/

8

21

日㈫∼

23

日㈭ 日本比較免疫学会第19回学術集会(舞阪文化センター)

8

24

日㈮∼

26

日㈰ 日本下垂体研究会第

22

回学術集会(湘南国際村センター) (連絡先:

http://www.jichi.ac.jp/jspr/

9

3

日㈪∼

8

日㈯

The 8th International Symposium on VIP, PACAP and Related Peptides

(Manchester, Vermont, USA)

(連絡先:

http://www.uvm.edu/conferences/2007_VIP_PACAP_Symposium/

9

10

日㈪∼

12

日㈬

Nuero2007

(第

30

回日本神経科学大会・第

50

回日本神経化学会大会・第

17

回日本神経回路学会大会)(パシフィコ横浜) (連絡先:

http://www2.convention.jp/neuro2007/

9

15

日㈯∼

17

日㈪ 日本昆虫学会第

67

回大会(神戸大学六甲台キャンパス)

9

20

日㈭∼

22

日㈯ 日本動物学会第

78

回大会(弘前大学総合教育棟) (連絡先:

http://zsj2007.umin.jp/

)(連絡先:

http://www.nacos.com/jshc_jscmm2007/

9

28

日㈮∼

29

日㈯ 第

48

回日本組織細胞化学会総会・学術集会(第

8

回日中合同組織細胞化学 セミナー)(山梨県甲府市総合市民会館)

9

28

日㈮∼

29

日㈯ 日本食禽学会

2007

年度秋季大会(岡山大学津島キャンパス:創立五十周年 記念館) (連絡先:

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jpsa/index.html

10

5

日㈮∼

8

日㈪

2007

年度日本魚類学会年会(北海道大学学術交流会館) (連絡先:

http://www.fish-isj.jp/indes.html

10

12

日㈮∼

13

日㈯ 日本比較内分泌学会第32回大会・シンポジウム(日光プリンスホテル) (連絡先:

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsce3/index-j.html

10

18

日㈭∼

22

日㈪ 第

100

回日本繁殖生物学会大会(東京大学農学部) (連絡先:

http://www.reproduction.jp/index-j.html

10

19

日㈮ 第

12

回日本生殖内分泌学会学術集会(東京大学弥生講堂) (連絡先:

http://seishoku.org/

11

15

日㈭∼

16

日㈮ 第

32

回鳥類内分泌研究会(ニューグランデみまつ) (連絡先:

http://plaza.umin.ac.jp/%7ejae/index.html

11

17

日㈯∼

18

日㈰ 日本爬虫両棲類学会 第

46

回大会(琉球大学) (連絡先:

http://zoo.zoo.kyoto-u.ac.jp/herp/

12

10

日㈪∼

14

日㈮

The 6th Congress of the Asia and Oceania Society for Comparative

Endocri-nology (NBU, India)

(連絡先:

http://www.waseda.jp/assoc-AOSCE/The_6th_Congress.html

12

11

日㈫∼

15

日㈯

BMB2007

 日本生化学会・日本分子生物学会合同年会(第

80

回日本生化 学会大会・第

30

回日本分子生物学会年会)(パシフィコ横浜)

(連絡先:

http://www.aeplan.co.jp/bmb2007/index.html

(4)

特集 新しい内分泌現象

ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)作用系の比較生物学

大久保 範聡(基生研・生殖生物学)

[email protected]

はじめに  ゴナドトロピン放出ホルモン(

Gonadotro-pin-Releasing Hormone; GnRH

)はアミノ酸

10

個程度からなるごく小さなペプチドであ るが、生殖機能を中枢レベルで支配する最も 重要な因子であると考えられている。脳内で 産生された

GnRH

は下垂体へと運ばれ、そ こからゴナドトロピンを分泌させる。それに より生殖腺の発達が進行する。また、

GnRH

は、神経修飾物質として脳内でも作用し、性 行動を誘起することが知られている。生殖機 能の二大要素である生殖腺の発達と性行動の 発現のどちらも、この小さなペプチドによ って支配されているわけである。  これまでに、ヤツメウナギからヒトまで の脊椎動物はもちろんのこと、原索動物で あるホヤ1, 2)や軟体動物であるタコ3)からも

GnRH

が見つかっている。さらに、これら の生物種からは、

GnRH

に特異的な受容体 (

GnRH receptor; GnRH-R

)も同定されてい る4∼6)。加えて、節足動物のショウジョウバ エ7)や軟体動物のカキ8)、線形動物の線虫9) からも

GnRH-R

様遺伝子が見つかっており、

GnRH

作用系は種を越えて広く保存されて いることが分かりつつある。  さて、これまでの研究によって、少なく と も 脊 椎 動 物 や 原 索 動 物 で は、

GnRH

GnRH-R

の両者にはパラログ遺伝子(遺伝 子重複によって、

1

つの生物種に複数存在 する遺伝子。パラロガスな遺伝子とも言う) が存在することが明らかとなってきた。つ まり

1

つの動物種が複数種類の

GnRH

遺伝 子 と

GnRH-R

遺 伝 子 を も つ と い う こ と が 分かった。そして最近になって、

GnRH

GnRH-R

のパラログ遺伝子の数は、動物種 によって大きく異なっていることが分かっ てきた。本総説では主として、脊椎動物にお いて

GnRH

GnRH-R

のパラログ遺伝子が、 どのような系統進化を経て、どのような機能 分化を遂げたかに関する最近の知見を、比較 生物学的な見地から簡単にまとめてみたい。 GnRHの系統進化   脊 椎 動 物 か ら は、

3

種 類 の

GnRH

パ ラ ログが見つかっており、それぞれ

GnRH1

GnRH2

GnRH3

と よ ぶ10)

GnRH

の 命 名 法については、以前は、そのアミノ酸配列 をもった

GnRH

がはじめて同定された動物 種の頭文字を付ける慣習があった。例えば、 最初に同定された

GnRH

(アミノ酸配列:

pEHWSYGLRPG-NH

2)はブタ11)とヒツジ12) か ら 見 つ かった の で、

mGnRH(mammalian

GnRH)

と よ ば れ て い た。 ま た、 メ ダ カ で はじめて見つかったアミノ酸配列の

GnRH

(ア ミ ノ 酸 配 列:

pEHWSFGLSPG-NH

2)は

mdGnRH(medaka GnRH)

とよばれていた13) これまでに、脊椎動物からアミノ酸配列の異 なる

14

種類の

GnRH

が同定されているが、そ れらの全てに、それぞれ別々の名前が付けら れてきたわけである。しかし、その命名法は 結果として、「ウナギの

mammalian GnRH

chicken-II GnRH

」などというような表現をも たらし、複雑で混乱を招きやすかった。さら には、オーソロガスな(同じパラロガスグル ープに属する相同な)

GnRH

であっても、動 物種によって異なる名前になってしまい、分 かりにくかった(例えば、哺乳類の

mGnRH

(5)

遺伝子とメダカの

mdGnRH

遺伝子はオーソ ロガスであるのに、別々の名称になってしま う)。  しかし近年、先にも触れたとおり、脊椎動 物の

GnRH

3

つのパラロガスなグループに 分かれることが明確に示された14)。そこで、 これまでの命名法を改め、単に、

GnRH1

GnRH2

GnRH3

とすることになった。こ れ だ と、「ウ ナ ギ の

GnRH1

GnRH2

」と いう表現でよく、混乱を招くおそれがな い。ゲノム上における

GnRH

遺伝子の位置 は、進化の過程でよく保存されており、オ ーソ ロ ガ ス な

GnRH

遺 伝 子 で あ れ ば、 生 物種を越えて、ゲノム上で近隣に同じ遺伝 子 が 存 在 す る。

GnRH1

の 隣 に は

KCTD9

という遺伝子が存在する一方、

GnRH2

の 隣には

PTPRA

遺伝子が、

GnRH3

の隣には

PTPRE

遺伝子が存在する14)。そのようなシ ンテニー(ゲノム上での遺伝子の並び方)の 保存により、脊椎動物の

GnRH

3

つのパ ラロガスなグループに分かれることが証明 されたわけだ。例えば、哺乳類の

mGnRH

遺伝子とメダカの

mdGnRH

遺伝子はとも に、

KCTD9

の下流に位置し、オーソロガス な関係にあるので、両者を

GnRH1

と同じ名 称でよぶことができる。なお、この新表記 法 で は、

cGnRH-II(chicken-II)

GnRH2

に、

sGnRH(salmon GnRH)

GnRH3

に、それ以 外の多くの

GnRH(mGnRH, gpGnRH(guinea

pig GnRH), cGnRH-I (chicken-I GnRH),

frGnRH(frog GnRH), sbGnRH(seabream Gn

RH), mdGnRH, wfGnRH(whitefish GnRH),

cfGnRH(catfish GnRH), hrGnRH(herring

GnRH))

GnRH1

になる。この新表記法は

2000

年代に入ってから定着しつつある。  さて、脊椎動物には

3

種類の

GnRH

パラロ グ遺伝子が存在すると述べたが、実は、

3

種 類全ての遺伝子をもっている動物種はごく 一部に限られており、多くの種では、

1

つも しくは

2

つの

GnRH

遺伝子しかもたないこと が分かっている。これは、祖先型の脊椎動 物は

3

種類の

GnRH

パラログをもっていたが、 進化の過程で、いくつかの

GnRH

遺伝子が 欠損したためである14)(図

1

)。

3

種類全ての

GnRH

パラログを保持している動物種とし ては、これまでに、タイ15)、シクリッド16) ニシン17)、メダカ13)、ペヘレイ18)、マツカ ワ19)、シラウオ20)、フグ21)などが知られて いるが、全て硬骨魚類である。一方、同じ硬 骨魚類でも、ゲノム情報が利用できるゼブ ラフィッシュは、

GnRH1

を欠損していると 考えてほぼ間違いないようだ22∼24)。同様に、 キンギョやサケも

GnRH1

を欠損していると 考えられている24)。また、ウナギやナマズは

GnRH3

を欠損していると考えられている24)  一方、両生類から哺乳類までの四足動物を 見てみると、ヒトやラット、マウスなどの ゲノム情報が利用できる動物種では

GnRH3

が欠損していることが分かっている。さら に、精力的な探索にも関わらず、四足動物で はこれまで、どの動物種からも

GnRH3

は見 つかっていない。おそらく、

GnRH3

は四足 動物の進化の初期に欠損してしまったために、 どの四足動物も

GnRH3

をもっていないもの と考えられる14(図

1

)。その結果、多くの四 足動物は

GnRH1

GnRH2

2

種類の

GnRH

パラログをもつようになったようだ。さらに は、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、チンパ ンジーでは、

GnRH2

も欠損ないしは偽遺伝 子化しており、

GnRH1

しかもたないことが 明らかとなっている22, 25)。むしろ現在では、 哺乳類では多くの種が、機能的な

GnRH

と して

GnRH1

しかもたないのではと考えられ つつある25)。これまでのところ、

GnRH2

同定されている哺乳類は、トガリネズミ26) ヒト27)、キツネザル28)のみであるが、ヒト の

GnRH2

遺伝子も翻訳機能を疑問視する声 も出ている22)。一方、非哺乳類を見てみる と、

GnRH2

は「最も保存された

GnRH

」の異 名をもつほど普遍的に存在し、どの動物種も

GnRH2

を保持している。なぜ哺乳類だけで

GnRH2

が脱落しているのか、興味深い問題 である。

(6)

GnRHの機能分化   脊 椎 動 物 で

3

つ の パ ラ ロ グ に 分 か れ た

GnRH

は、そのそれぞれが機能分化してい ることが明らかとなっている。

3

種類全ての

GnRH

パラログを保持している一部の硬骨 魚類で見てみると、

GnRH1

が下垂体からゴ ナドトロピンを分泌させる主因子として機能 する一方、

GnRH2

GnRH3

は主に脳内で 神経修飾物質として機能しているようである (図

2

)。それらの魚種においては、

GnRH1

を産生するニューロンは、終脳腹側部から視 索前野、視床、視床下部にかけて比較的幅広 く分布しているが、視索前野の産生ニュー ロンの数が圧倒的に多く、他の脳領域の産 生ニューロンは数が少ない29∼31)。視索前野

GnRH1

産生ニューロンは下垂体に軸索を 伸ばし、そこでゴナドトロピンの放出を促す 役割を担っている30, 31)。一方、

GnRH2

の産 生ニューロンは中脳被蓋に位置する

1

つの神 経核のみに局在しており、そこから脳内のあ らゆる部位へ投射している32)。この

GnRH2

の正確な機能については未だはっきりして 図1 脊椎動物におけるGnRHの系統進化  脊椎動物の祖先はGnRH1、GnRH2、GnRH3の3種類のGnRHをもっていた。硬骨魚類と四足動物が 分岐した直後に、四足動物の系統ではGnRH3が失われた。硬骨魚類の系統でも、サケ、キンギョ、ゼ ブラフィッシュ、アロワナなどではGnRH1が失われ、ウナギやナマズなどではGnRH3が失われた。一方、 ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、チンパンジーなど、多くの哺乳類においては、GnRH3に続き、さらに GnRH2も失われた結果、GnRH1しかもたなくなった。 図2 メダカにおけるGnRH産生ニューロン  メダカはGnRH1、GnRH2、GnRH3の全てをもつ。GnRH1産生ニューロンは終脳腹側部から視索前 野、視床、視床下部にかけて比較的幅広く分布している。ニューロン数が最も多い視索前野のGnRH1 産生ニューロンは下垂体に投射し、ゴナドトロピンの分泌を促す。GnRH2産生ニューロンは中脳被蓋に ある単一の神経核のみに局在しており、そこから脳内に広く投射している。このGnRH2産生ニューロ ンは、性行動の促進や摂食行動の抑制を行っているのではないかと予想されている。一方、GnRH3産生 ニューロンは、終神経節から、終脳腹側部、視索前野、視床、視床下部にかけて広く分布する。発現量、 ニューロン数ともに最も多い終神経節のGnRH3産生ニューロンは脳内に広く投射しており、性行動に 対するモチベーションを高める。

(7)

いないが、おそらくは性行動を促進する役 割をもつだろうと予想されている16)。また、

GnRH3

産生ニューロンは、やや

GnRH1

産 生ニューロンとオーバーラップした局在を示 し、終神経節から、終脳腹側部、視索前野、 視床、視床下部にかけて広く分布する29∼31) しかし、終神経節以外の

GnRH3

産生ニュー ロンの数は極めて少ない。他方、終神経節の

GnRH3

産生ニューロンは見事なクラスター を形成しており、細胞数も多く、

GnRH

発 現量も多い。この終神経節

GnRH3

産生ニュ ーロンもやはり、

GnRH2

と同様、脳内のあ らゆる部位に投射しており、性行動に対する モチベーションを高める役割を担っているこ とが示されている33, 34)。また、脳内だけで なく、網膜や嗅上皮にも投射しており、視覚 や嗅覚からの情報を修飾する機能をもつこと が示唆されている35, 36)。異性からのフェロ モンを感知した際や異性を見た際に、性行動 へと誘導するようなはたらきをしているのか もしれない。以上のような発現部位と機能の 分化パターンは、多少のバリエーションはあ るものの、基本的には他の脊椎動物にも共通 に見られる一般原則であるようだ。  しかしながら、先にも触れたが、多くの脊 椎動物では一部の

GnRH

パラログが欠損し ている。そのような動物種においては、残 っている他のパラログがその機能を補ってい ると考えられている。

GnRH1

を欠損してい るゼブラフィッシュや、同様に

GnRH1

を欠 損していると考えられているサケやキンギ ョでは、主として

GnRH3

がその機能を補っ ているようである。つまり、下垂体からの ゴナドトロピン放出という、本来は

GnRH1

の機能を、主に

GnRH3

が請け負っている のである。事実、サケやキンギョでは、視 索前野に多くの

GnRH3

産生ニューロンが 存在し、そこから下垂体まで

GnRH

が運ば れていることが観察されている37, 38)。逆に、

GnRH3

を欠損していると考えられているウ ナギや四足動物では、

GnRH1

がその機能を 穴埋めしているようである39)。つまり、も ともと

GnRH3

産生の場であった終神経節 で、

GnRH1

が産生されるようになり、そこ で

GnRH3

の機能を新たに担当するようにな った。例えば、サンショウウオでは、その 終 神 経 節 の

GnRH1

産 生 ニューロ ン が、 繁 殖期に嗅覚情報の修飾を行っているようで ある40, 41)。これらの機能補填は、もともと、

GnRH1

GnRH3

は産生ニューロンの局在 が似ているため、比較的簡単に起こりうるも のだったと推察される。

GnRH

産生ニュー ロンの発生パターンを見てみても、下垂体に 投射する視索前野の

GnRH1

産生ニューロン と、全ての

GnRH3

産生ニューロンはともに、 嗅覚器の原器で誕生し、その後、同じ道筋で 脳内へと移動していく31)。このように共通 の発生起源をもっていることも、

GnRH1

GnRH3

の間での機能補填を容易にしている 大きな要因の

1

つであろう。  

GnRH

の機能分化を考える上で興味深い のは、多くの哺乳類で

GnRH2

遺伝子が欠損 あるいは偽遺伝子化していることだ。中脳被 蓋に独自の産生ニューロンをもつ

GnRH2

の 機能を補うことは、互いに局在がオーバーラ ップしている

GnRH1

GnRH3

のいずれか が欠損した場合に比べ、はるかに困難である ことが予想される。それが可能になった一つ の可能性として、中脳被蓋の

GnRH2

産生ニ ューロンと、終神経節の

GnRH

産生ニュー ロンがともに、脳内の広い領域に投射してお り、産生の場こそ異なるが、機能する場とし てはオーバーラップしていることが考えられ る。また、性行動の促進という役割自体もオ ーバーラップしていることも考えられる。中 脳被蓋の

GnRH2

ニューロンがなくても、終 神経節からの

GnRH

によって、その機能の 穴埋めができるという考えだ。ただ、この問 題を考えるには、まず、中脳被蓋の

GnRH2

産生ニューロンの役割をしっかり把握するこ とが必須である。これまでのところ、いく つかの生物種において、

GnRH2

を投与する と、性行動が促進される一方、摂食行動が 抑制されることが示されている(

GnRH2

(8)

もたないマウスに

GnRH2

を投与し、表現型 を観察するといった実験を含む)42∼44)。こ のことから、中脳被蓋の

GnRH2

産生ニュー ロンが性行動や摂食行動に関与することが予 想されているが、これは単に薬理作用を見て いるだけかもしれない。

GnRH1

がもつゴナ ドトロピン放出機能が、

GnRH1

遺伝子の変 異体マウスの表現型によって証明されたよう に45, 46)

GnRH2

についても、

GnRH2

遺伝 子をもつ生物種における何らかの機能阻害実 験とレスキュー実験による証明が必要だと思 われる。 GnRH-Rの系統進化  

GnRH-R

は、

7

回膜貫通型の

G

タンパク質 共役型受容体(

G Protein-Coupled Receptor;

GPCR

)に属する膜受容体である。最近の研 究によって、リガンドと同様、脊椎動物は 複数の

GnRH-R

パラログをもち、その分子 進化は極めて複雑であることが明らかとな ってきた47∼50)。これまでに脊椎動物から 同定された

GnRH-R

は、

3

つもしくは

4

つの パラロガスグループに分けることができる (図

3

)。本総説では、便宜上、それらのグル ープ を

GnRH-R1

GnRH-R2

GnRH-R3

GnRH-R4

とよぶことにするが、この名称は 広く受け入れられているわけではなく、研究 者毎にバラバラの名称を使用しており、統一 が為されていないのが現状である。  最初に発見された

1

つ目のパラロガスグル ープ

GnRH-R1

は、

C

末端の細胞内領域をも たないという、

GPCR

としては極めてユニ ークな構造上の特徴をもつ51, 52)。

GnRH-R1

はこれまで、哺乳類のみから同定されてお り、ゲノム情報の分かっている非哺乳類で 探索しても、どの動物種からも見つからな い。したがって、哺乳類以外の脊椎動物が 進化の過程で

GnRH-R1

を欠損したか、ある いは、

GnRH-R1

が哺乳類の系統の中で独自 に誕生したものであることが考えられる。分 子系統樹解析の結果は、前者を支持している ように思われる(図

3

)。

GnRH-R1

は、主な 細胞内情報伝達系として

IP

3シグナルと共役 していることが知られている51, 52)。さらに、 図3 脊椎動物におけるGnRH-Rの系統進化(分子系統樹)  脊椎動物のGnRH-Rは4つのパラロガスグループ(GnRH-R1、GnRH-R2、GnRH-R3、GnRH-R4) に分けられる。研究者によっては、GnRH-R3とGnRH-R4を1つのグループとすることもある。哺乳類 はGnRH-R1とGnRH-R4しかもたない。一方、硬骨魚類はGnRH-R2とGnRH-R3しかもたないが、そ れぞれのパラロガスグループ内で、さらに遺伝子が2つと3つに分かれている(従って、最大で5種類の GnRH-Rをもつ)。各グループの分け方や名称は、まだ研究者の間での統一が為されていないので、個々 の分子の名称が必ずしもグループ名とは一致していないので、注意が必要。

(9)

GnRH-R1

に対するアンタゴニストが、他の

GnRH-R

パラロガスグループではアゴニスト として作用することが報告されている53, 54)。  

GnRH-R2

GnRH-R3

は逆に、魚類から 鳥類までの非哺乳類のみに見られ、

C

末端 の細胞内領域を保持している47, 55)。この領 域の配列により、

IP3

以外に

cAMP

シグナル とも共役していることが明らかとなってい る55, 56)。硬骨魚類では、ゲノムの倍数化の た め に、

GnRH-R2

GnRH-R3

が さ ら に、 それぞれ

2

つと

3

つの遺伝子に分かれてい る21, 57∼60)。フグ21, 60)やスズキ60)など、そ の全てがゲノム中に保持されている魚種も いれば、メダカやゼブラフィッシュ22)など、 一部の遺伝子を失った魚種もいるようだ。  一方、

GnRH-R4

は、これまで哺乳類と両 生類からのみ同定されている47, 49, 50)。この グループも

C

末端の細胞内領域を保持して いるので、

IP3

以外に

cAMP

シグナルとも共 役しているようだ61)。しかし、ラット、マ ウス、ウシ、ヒツジ、チンパンジーなど多く の哺乳類で、

GnRH-R4

が欠損または偽遺伝 子化していることが報告されており62)、機 能的な

GnRH-R4

が同定されている哺乳類は 数種のサルのみである49, 50)。ヒトでも、ゲ ノム中の

2

箇所に

GnRH-R4

様遺伝子が見つ かっているが、そのどちらも偽遺伝子化して いるようである63∼66)。しかしながら、ヒト では、この偽遺伝子が何らかの機能を有する 可能性が報告されている67)とともに、その 相補鎖が別の遺伝子

RBM8

をコードしてい ることが知られている63∼66)。興味深いのは、

GnRH2

を欠損している哺乳類の多くで、こ の

GnRH-R4

も欠損していることである。後 述するように、生体内では、この

GnRH-R4

GnRH2

の特異的受容体として機能してい る可能性が高い。したがって、これらの動物 種ではリガンドと受容体が揃って失われてい ることになり、リガンドと受容体の共進化が 起きていることを感じさせる。  研究者によっては、

GnRH-R3

GnRH-R4

1

つのパラロガスグループにまとめること もある。それらを異なるグループとするのが 正しいのか、同じグループとするのが正し いのかについては未だにはっきりしていない。

GnRH-R

遺伝子座は動物種間の保存性が低い (遺伝子座レベルでの再編が繰り返されてき た)ので、遺伝子座レベルでの解析では、得 られる情報に限界があることが大きな要因で ある。現時点では、分子系統樹解析に頼るし か方法がなく、上記以上の考察は難しい。今 後のゲノムワイドな解析、および進化を考え る上で鍵となる生物種からの

GnRH-R

の同 定が必要であると思われる。 GnRH-Rの機能分化  脊椎動物で

3

つないしは

4

つのパラログに 分かれた

GnRH-R

は、リガンドと同様、そ のそれぞれが機能分化していることが分か りつつある。

GnRH-R

の機能分化は、主と して、発現部位とリガンド選択性によっても たらされていると考えられる。哺乳類と非 哺乳類の間で、保有している

GnRH-R

のパ ラログの種類が大きく異なるので、ここでは、 それらを分けて紹介することにする。ただ、

GnRH-R

の機能分化については、まだまだ 報告が少なく、今後の研究によっては以下の 記述を修正する必要が出てくるかもしれない ので、注意してもらいたい。  これまでに調べられている哺乳類をみて みると、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、チ ンパンジーのようにリガンドとして

GnRH1

のみを、受容体として

GnRH-R1

のみをも つ動物種と、キツネザルのようにリガンド として

GnRH1

GnRH2

を、受容体として

GnRH-R1

GnRH-R4

をもつ動物種が多いよ うだ25(ヒトがどちらのグループに属するか) は議論の分かれるところである22))。

GnRH1

GnRH-R1

しかもたない哺乳類においては、

GnRH1

が有する全ての機能を

GnRH-R1

が 仲介しているはずである。一方、リガンド として

GnRH1

GnRH2

を、受容体として

GnRH-R1

GnRH-R4

をもつ哺乳類におい ては、主として、

GnRH-R1

GnRH1

の機

(10)

能を仲介し、

GnRH-R4

GnRH2

の機能を 仲介していると思われる49, 50)

GnRH-R1

は、

GnRH1

に対して高い反応性を示すと ともに、下垂体で多く発現していることか ら、

GnRH1

がもつゴナドトロピン分泌作用 は、主にこの受容体を介していると考えられ る49, 50)。一方、

GnRH-R4

GnRH2

に高い 反応性を示し、脳内でも幅広く発現してい ることから、

GnRH2

の機能を仲介している と考えられている49, 50)。トガリネズミにお いては、

GnRH2

がもつ行動に対する作用は

GnRH-R4

が仲介していることを示唆する報 告がある68)。しかし、

GnRH-R4

は下垂体の ゴナドトロピン産生細胞でも発現しており49)

GnRH-R1

GnRH-R4

の機能分化の詳細に ついては、今後の課題として残されている。  一方、非哺乳類における各

GnRH-R

パラ ログの機能分化については、まだほとんど分 かっていないのが現状である。これまでに 調べられた非哺乳類の

GnRH-R

GnRH-R2

GnRH-R3

GnRH-R4

)の リ ガ ン ド 選 択 性 を見てみると、全て、

GnRH2

GnRH-R3

GnRH1

の順に高い反応性を示すうえ47, 48, 55) それらの発現部位に関するしっかりした情 報もまだまだ少ない。ここでは、メダカの

GnRH-R

(著者、未発表データを含む)を中 心に話を進めることにする。   非 哺 乳 類 の

GnRH-R

は 全 て、

GnRH2

GnRH-R3

GnRH-R1

の順に高い反応性を 示すと述べたが、その差の度合はパラログ 間で大きく異なり、

GnRH-R3

GnRH2

に 対しても

GnRH1

に対してもそれほど変わ らない反応性を示す(つまり、

GnRH1

に対 しても比較的高い反応性をもつ)47, 48)。ま た、

GnRH-R3

が下垂体のゴナドトロピン産 生細胞で発現していることが、シクリッド69) とメダカで確認されている(図

4

)。これらの ことから、非哺乳類においては、主として

GnRH-R3

GnRH1

によるゴナドトロピン 分泌に関与していることが考えられる。ま た、メダカでは、

GnRH-R3

がさらに

2

つに 分かれており、一方がゴナドトロピン産生細 胞で発現しているのに対して、もう片方はプ ロラクチン産生細胞で発現している。

GnRH

はゴナドトロピン以外にも、プロラクチンも 分泌させる薬理作用をもつことが報告されて いる70)ので、生体内でも実際に、

GnRH1

GnRH-R3

を介してプロラクチンを放出させ ていると考えられる。また、このことは、少 なくともメダカにおいては、同じパラロガス グループの

GnRH-R

遺伝子が複数に分かれ た結果、さらなる機能分化を遂げたことを 図4 メダカにおけるGnRH-Rの発現部位  メダカは1種類のGnRH-R2と2種類のGnRH-R3(GnRH-R3aとGnRH-R3b)をもつ(合計3種類)。 GnRH-R2は終脳背側部と松果体で多く発現している。したがって、主な役割として松果体機能の制御が 考えられる。一方、GnRH-R3aは下垂体のゴナドトロピン産生細胞と視床で発現している。したがって、 主な役割はGnRH1によるゴナドトロピン分泌促進の仲介だと考えられる。GnRH-R3bは下垂体のプロ ラクチン産生細胞、終脳腹側部、視索前野、視床、視床下部、中脳被蓋などで多く発現している。した がって、GnRH1によるプロラクチン分泌促進、およびGnRH2とGnRH3による行動作用を仲介してい ることが示唆される。

(11)

意味している。また、

GnRH-R3

は下垂体だ けでなく、脳内にも広く分布していることが 分かっている。メダカにおいて

GnRH-R3

は、 終脳腹側部、視索前野、視床、視床下部、中 脳被蓋などで多く発現しており、

GnRH2

GnRH3

に高い反応性を示すことから、性行 動の制御など、これらの

GnRH

がもつ神経 修飾作用をも仲介していることが予想される (図

4

)。  一方、メダカの

GnRH-R2

は下垂体での発 現は認められず、終脳背側部と松果体で多く 発現している(図

4

)。

GnRH

は松果体からの メラトニン放出を促進する作用をもつこと が報告されている71)ので、その作用は、こ

GnRH-R2

を介していることが示唆される。 メラトニンは、ゴナドトロピンとプロラクチ ンの放出を制御することが知られている72) ので、ここで、

GnRH

を中心として季節繁 殖に関わる機能的なループができているのか もしれない。一方、メダカとは異なり、シク リッドにおいては、

GnRH-R2

が下垂体の成 長ホルモン産生細胞でも発現していることが 報告されている69)

GnRH-R2

は、

GnRH

よる成長ホルモン分泌作用も介しているのか もしれない。あるいは、動物種毎にそれぞれ の

GnRH-R

パラログの機能が少しずつ異な るのかもしれない。  また、非哺乳類における

GnRH-R4

はこれ まで、カエルからしか見つかっておらず、そ の機能については明らかとなっていない。今 後の大きな課題の

1

つである。 おわりに  これまでに述べてきたように、

GnRH

GnRH-R

は極めて複雑な系統進化をたどり、 その結果として、機能の分化、補償が行われ てきた。生殖という極めて重要な生体機能を 中枢レベルで支配する分子が、種を越えて保 存されている一方、遺伝子の重複と欠損によ り、複雑に多様化していることは、生物種に よる生殖戦略の多様化と考え合わせると非常 に興味深く感じられる。他方、最近の知見に よって、性決定や生殖腺の分化にかかるメカ ニズムも、生物種による多様性が非常に大き いことが分かりつつある。そこでもやはり、 遺伝子の重複と欠損が大きな役割を演じてい るようである。このように、遺伝子から行動 まで、あるいは脳から生殖腺まで、どのレベ ルで見ても、生殖機構は生物種間の多様性を 特徴としているようで、そこから一般法則を 見出すには、まだまだ知るべきことがたくさ んありそうだ。  

GnRH

に関する研究を見てみても、硬骨 魚類から哺乳類までの生物種以外における報 告がまだまだ少ないのが現状である。腔腸動 物や海綿動物(さらには原生動物)などの原 始的な生物種、ナメクジウオを含めた原索動 物、ヤツメウナギやメクラウナギを含めた円 口類における研究が進めば、

GnRH

の起源 はどこにあり、そこではどのような機能をも つのか、あるいは、

GnRH

とゴナドトロピ ン、性行動の関係は進化の過程で、どこで どのように誕生したのか、また、

GnRH

GnRH-R

がどのように対応するようになっ たのかなど、比較生物学的な観点からも興 味深い問題を解決できる可能性が高い。ま た、脊椎動物での研究に限っても、

GnRH2/

GnRH-R4

の生理的役割、メタスチンによる

GnRH

の制御機構、

GnRH

ニューロンの発 生機構とそれに伴う疾患など、ホットなトピ ックが存在する。是非、今後の研究に期待し たい。 謝 辞  本総説執筆の機会を与えてくださった北里 大学水産学部の高橋明義先生に御礼申し上げ ます。また、私が

GnRH

GnRH-R

に関す る研究を行う上で、大変お世話になった元東 京大学大学院農学生命科学研究科の會田勝美 先生と、基礎生物学研究所生殖生物学研究部 門の長濱嘉孝先生に深く感謝いたします。 参考文献

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イラストエッセイ

メタスチン metastin(キスペプチン kisspeptin)と GnRH 分泌

前 多 敬一郎・束 村 博 子(名古屋大・院生命農学・生殖科学)

[email protected]

 メタスチンはキスペプチンとも呼ばれ、

2001

年に武田薬品の大瀧らによりヒトの胎 盤から発見された

54

個のアミノ酸からなるペ プチドである1)。このペプチドは、オーファ

GPCR

G

タンパク共役型受容体)であった

GPR54

の内因性リガンドとして発見された が、このペプチドをコードする遺伝子はそれ よりも以前にすでに発見されており、

KiSS-1

と名付けられていた。

KiSS-1

は腫瘍転移抑制 遺伝子として発見されていたので、メタス チンはその「機能」にちなんで、命名された。 しかしその後

GPR54

を欠損する個体を有す るヒトの家系が発見され、

GPR54

を欠損す る個体では性成熟に達しないこと2, 3)、さら

GPR54

をノックアウトしたマウスでも性 成熟を示さないことが示され3)、メタスチン

GPR54

系が性成熟において、きわめて重 要な役割を持つことが示唆された。その後、 いくつかのグループにより、ラット、マウス、 サルなどで、メタスチンの投与が

LH

FSH

分泌を強力に促進することがわかり4∼6)、生 殖内分泌学の分野では、メタスチンの役割が にわかに注目を集め始めた。  われわれは、武田薬品および埼玉大学井上 グループとのラットを用いた共同研究により、 発情前期の

LH

サージ及びエストロジェンで 誘起した

LH

サージの成立には内因性のメタ スチンが必要不可欠であることをはじめて明 らかにした7, 8)。その後、このペプチドが脳 内では視床下部弓状核(

ARC

)と前腹側室周 囲核(

AVPV

)に明瞭な

2

つの細胞集団を持つ ことが明らかになった8)。この

2

つの領域は それぞれ

GnRH

パルスとサージの中枢であ ると、以前よりいわれてきた。パルスは卵胞 発育に必要な基底レベルの分泌であり、サ ージは排卵を引き起こすための大量放出であ る。

GnRH

が視床下部から

1960

年代に発見 されて以来、パルスとサージが卵巣の機能調 節を考える上で重要な分泌パターンであるこ とはわかっていたが9)、その分泌メカニズム は謎であった。

GnRH

パルスとサージは各々 卵巣から分泌されるエストロジェンの負及び AVPV-POA AVPV POA GnRHニューロン ARC-正中隆起 ARC メタスチンニューロン LHサージ LHパルス ステロイド合成 卵胞発育 排卵 + + エ ス トロ ジ ェ ン の 正 の フ ィ ー ド バ ッ ク + + メタスチンニューロン +  神経ペプチド、メタスチンの生理機能に関す る仮説。視床下部弓状核(ARC)に存在するメタ スチンニューロンはGnRH/LHパルスの発生に関 与しており、卵胞発育を刺激している。十分に 卵胞が発育すると、卵巣から分泌されたエスト ロジェンは前腹側室周囲核(AVPV)にあるメタス チンニューロンに働き、GnRH/LHサージを誘起 し、排卵を引き起こす。GnRHニューロンの細胞 体がある視索前野(POA)には、多量のGPR54が 発現している。

(16)

正のフィードバックにより調節されているが、

GnRH

ニューロンには肝心のエストロジェ ン受容体α(

ER

α)がないのである。

1

)メタス チンニューロンが

ER

αをもつこと、

2

)エス トロジェンが

ARC

あるいは

AVPV

における メタスチン発現にはそれぞれ抑制的あるいは 促進的に働くこと、

3

GnRH

ニューロンが

GPR54

を発現していること、などから、メ タスチンは

GnRH

のパルス状とサージ状分 泌の成立の鍵を握るペプチドであると考えら れ始めている。このペプチドの生理機能を明 らかにすることによって数

10

年来の謎が解 明されるかもしれないのである。 文 献

1 ) Ohtaki T, Shintani Y, Honda S,

Matsumo-to H, Hori A, Kanehashi K, Terao Y,

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155

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Matsui H, Uenoyama Y, Iwata K,

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cy-clicity in female rats. Endocrinology

146

:

4431-4436.

8 ) Adachi S, Yamada S, Takatsu Y, Matsui H,

Kinoshita M, Takase K, Sugiura H,

Ohta-ki T, Matsumoto H, Uenoyama Y,

Tsuka-mura H, Inoue K, Maeda K. (2007)

In-volvement of anteroventral periventricular

metastin/kisspeptin neurons in estrogen

positive feedback action on luteinizing

hormone release in female rats. J Reprod

Dev

53

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9 ) Knobil E. (1980) The neuroendocrine

control of the menstrual cycle. Recent

Prog Horm Res

36

: 53-88.

(17)

学会印象記

8th International Symposium on Reproductive

Physiology of Fish に参加して

遠 藤   琢(北海道大学大学院・水産科学院)

[email protected]

8th International Symposium on

Reproduc-tive Physiology of Fish

2007

年の

6

3

日∼

6

8

日の日程でフランスのサン・マロで開催 された。サン・マロは北フランスのブルタ ーニュ地方に位置する古い港町であり非常に 有名な観光地である。城壁に囲まれた旧市街 は歴史的建造物が建ち並び、城壁の上からは エメラルド色の海を眺めることができた。学 会では、口頭発表

73

題、ポスター発表

222

題 の発表があり、さらに各テーマに関するラ ウンドテ­ブルも行なわれた。筆者は「

In

vi-tro induction of oil droplet accumulation into

previtellogenic oocytes of Japanese eel, Anguilla

japonica

」の題名でポスター発表を行い、ニ ホンウナギの油球蓄積機構についての紹介を 行なった。  学会の初日は、ウェルカムレセプションの みであり、発表は

2

日目から行なわれた。

2

日 目 の 内 容 は「

Reproductive

Neuroendocri-nology

」であり

15

題の口頭発表が行われた。 メラトニン、

GnRH

、ソマトラクチン、下 垂体ホルモンに関する研究発表が行われ、

G

protein-coupled receptor 54

とそのリガンドで ある

Kisspeptin

に関する研究が興味深く、今 後、魚類の生殖に対して重要な存在になっ ていくだろうと感じた。また、最後は

Berta

Levavi-Sivan

博士によるティラピアの

GTH

に関する特別講演が行なわれた。機能的な

LH

FSH

を作成し、さらにその測定系を確 立し

LH

FSH

の作用を解析するという内容 であり、それぞれの特異的な作用が明らかに なった。この実験系は今後ティラピアの生殖 生理の解析に大きな役割を担っていくだろう と感じた。口頭発表が終わると、奇数番号の ポスター発表が行われた。ポスター発表の会 場は大勢の人で賑わい、活発な議論が行なわ れていた。

 学会

3

日目は、先ず「

Sex determination and

sex differentiation

」の内容で

12

題の口頭発表 とラウンドテーブルが行われた。性決定に 関わる遺伝子や転写因子、

DNA

のメチル化、 アポトーシス、

GTH

、性ステロイドなど様々 な視点で性決定と性分化に関わる因子の解析 を行なっており、多くの知識を得ることがで きた。次に「

Gametogenesis and Gamete

Biol-ogy -Part I- Spermatogenesis

」の内容で

5

題の 口頭発表が行われ、この日の学会は終了した。   学 会

4

日 目 の 午 前 は「

Gametogenesis and

Gamete Biology -Part II- Hormonal and

envi-ronmental regulation of gametogenesis

」の内容 で

9

題の口頭発表が行われた。プロゲスチン の研究が興味深く、プロゲスチンの

mPR

を 介した最終成熟への作用に関する研究と、最 終成熟ではなく初期の生殖腺の減数分裂の開

(18)

始に作用しているという内容であった。また、 ウナギを長期間遊泳させることにより成熟を 促す研究の発表は非常に興味深く、ホルモン 投与を用いない新しいウナギの催熟法開発の 可能性を感じた。午後からは、エクスカー ションであり世界遺産のモン・サン・ミッシ ェルを観光した。ガイドの人の熱心な説明を 受けながら内部を廻り、また、最後には、海 に囲まれた岩の上にそそり立つモン・サン・ ミッシェルの姿を見ることができ非常に感動 した。その後、モン・サン・ミッシェルから サン・マロに戻りバンケットが開催された。 バンケットでは、ワインとフランス料理を堪 能し、さらに音楽に合わせて参加者みんなで 輪になって踊り、非常に楽しい時間を過ごす 事ができた。   学 会

5

日 目 は、 先 ず「

Gametogenesis and

Gamete Biology -Part III- Biotechnology

」の内 容で

3

題の口頭発表が行われた。

Luiz Franca

博士による特別講演をはじめ、生殖系列キメ ラについての発表であった。ティラピア精巣 内でカエル由来の精原細胞がシストを形成し たという発表には非常に驚いた。ティラピア とカエル間で移植可能であるならば、精原細 胞に関しては、魚類間でほぼ移植可能なので はないかと思った。また、この技術は絶滅危 惧種の保護や水産養殖業に大きく貢献できる 素晴らしい技術であると強く感じた。次に 「

Gametogenesis and Gamete Biology -Part IV-

Oogenesis

」の内容で

5

題の口頭発表が行われ

た。魚類の卵形成過程においてまだ知見が少 ない前卵黄形成期についての発表があり、魚 類の前卵黄形成期の解析にはさらなる知見の 集積が必要だと感じた。次いで「

Gametogen-esis and Gamete Biology -Part V- Steroid

ac-tion and endocrine disruptors

」の内容で

3

題の 口頭発表とラウンドテーブルが行われ、この 日の口頭発表は終了した。口頭発表が終わる と、偶数番号のポスター発表が行われた。筆 者は偶数番号であるためポスター発表を行い、 多くの人に研究成果を紹介し、さらに、自分 の研究に対して多くの意見をもらうことがで き充実した時間を送ることができた。   学 会

6

日 目 は、 先 ず「

Gametogenesis and

Gamete Biology -Part VI- Yolk protein

depo-sition and new findings in oocyte maturation

」 の内容で

4

題の口頭発表が行われた。

3

種類 のビテロゲニンが精製され、さらに、それら とレセプターとの相互作用に関する研究か ら、一般的に知られている卵黄形成からさら に複雑な卵黄形成機構が存在することが分か った。次に「

Reproductive Strategy and Sexual

cycles

」の内容で

12

題の口頭発表が行われた。 マグロやチョウザメなどの水産有用魚種に関 する研究が発表され、水産有用魚種の生殖生 理に関する基礎的知見の重要性を感じた。ま た、

Penny Swanson

博士による絶滅の危機に 瀕したサケ科魚類の保護についての特別講演 が行なわれた。絶滅危惧種を飼育環境下で野 生の形質を維持し保護するという養殖魚に対 ポスター発表の様子 バンケットの光景

(19)

する飼育法や育種とは違うアプローチを知る ことができた。  そして、この講演を最後に学会会場を後に した。本学会では、魚類の生殖生理に関する 幅広い研究に触れ、非常に多くの新しい知識 を得ることができた。さらに、自分の研究に 対して、同じ分野の研究を行なっている方々 から多くの意見をもらい自分の研究を再度見 直すことができた。サン・マロという美しい 町でこのような学会に参加できたことを本当 によかったと思う。学会を組織運営していた だいたスタッフの方々には、心から感謝の意 を表したい。

8th International Symposium on Reproductive

Physiology of Fish に参加して

山 口 寿 哉(熊本大学大学院 自然科学研究科 博士後期課程一年)  

2007

6

3

8

日にかけて、フランスのサ

ン・マローにおいて

8th International

Sympo-sium on Reproductive Physiology of Fish

(IS-RPF)

が開催されました。私は北野健准教授 のもとでヒラメにおける温度依存性性決定機 構の解析を行っています。温度依存性性決定 機構は、魚類、両生類、爬虫類など多くの生 物種で確認されていますが、その分子機構の 解析はあまり進んでいません。ただ、アロ マターゼ遺伝子の発現が、雌化温度では高 く、雄化温度では低いことが数種類の生物種 で報告されていますが、その発現制御に関す る報告は見当たりません。今回私達はそのア ロマターゼの温度による発現制御に転写因子

Foxl2

が関与を示す研究成果を

ISRPF

で報告 することになりました。私が所属する熊本大 学 自然科学研究科では魅力ある大学院教育 の一環で国際学会への参加が推奨されている こともあり、国際学会へ参加する良い機会で した。しかし、初めての海外渡航、英語に不 慣れ、口頭発表、さらに、国際学会で世界中 の魚類生理学を専門とする研究者の前で質問 に適切に回答することができるか等の不安要 素が多くて、出発前は眠れない日々を過ごし ました。  フランスに到着し、会場に近づくと徐々 に緊張感が増し始めましたが、会場で発表用 のスライドをチェックして頂いた時にフラン ス人の方と多少の会話ができて、少し自信が つきました。しかし、発表の時間になると緊 張で頭の中が真っ白になり、何を話したのか 発表後に思い出してもうなく思い出せないく らいで、自分の英語力の無さを痛感しました。 話したいことがあるのにそれをうまく伝えら れないもどかしさからくる悔しさが今でも思 い出されます。英語がいかに重要かを体感で きたことが今回の

ISRPF

で得られた大きな 収穫の一つです。  自分の発表が終わるまでは自分の発表のこ とで頭の中がいっぱいでしたが、発表が終 わって余裕ができると、口頭発表を聞いた り、ポスター発表を聞いたりしました。英語 を聞き取るだけでもかなり集中力が必要でし が、非常に興味深い研究ばかりで、自分の研 究に役立つ情報も得る事ができました。さら に、同じ魚類で温度依存性の性決定の研究を 行っている方とメールアドレスを交換する機 会もあり、今後の私の研究にとって有意義な 学会でした。また、フランスを出国する前に パリを観光させてもらいそちらも良い思い出 になりました。  今回の学会において、うまく英語での発表 ができなかったことで英語の重要性を身にし みて感じ取ることができましたが、国際学会

参照

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