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福岡県佐賀県における既存建築物の耐震診断および補強法に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)福岡県・佐賀県における既存建築物の耐震診断および補強法に関する研究 崎野研究室 1.はじめに. 田中. 睦. の次数が上がるほど算定法は詳しくなり、それに伴. 1995 年(平成 7 年)1月 17 日に兵庫県南部地震. い結果の信頼性が高まる性格を持っている。ただし、. (阪神・淡路大震災)が発生した。大都市を襲った. 診断法の次数が高いほど結果の信頼性が高まるが、. 直下型地震で、M=7.2 であった。この地震による建. 同時に診断にかかる時間と費用も増大する。実際の. 築物の被害は、1981 年の「新耐震設計法」以前に建. 耐震診断では、第 2 次診断法が用いられる場合が多. てられた建物について特に顕著であった。これを受. い。. けて、同年の 10 月には「建築物の耐震改修の促進. 構造耐震指標 IS の値が決まると、最終段階として. に関する法律」が公布され、全国各地で既存建物の. 耐震性の判定を下す必要があるが、それは構造耐震. 耐震診断および耐震補強が実施されるようになった。. 判定指標 ISO を用いて判定される。すなわち、. 本研究の目的は、福岡県・佐賀県で 1981 年(昭和. IS≧ISO. (2). 56 年)以前に建てられた公共建築物(学校建築)を. であれば、 「安全(想定する地震動に対して所要の耐. 中心とする耐震診断データを統計的に処理すること. 震性を確保している) 」とし、そうでなければ耐震性. により、両県における既存建築物の実態を把握する. に「疑問有り」とすることになる。. とともに災害対策に役立てることにある。. ISO は次式で求める。. 2.耐震診断および補強法の概要. ISO=ES×Z×G×U. 耐震診断基準では、それまでの地震被害などをも. (3). ここで、. とにして、建物の耐震性能を表す指標である構造耐. ES:耐震判定基本指標で、方向にかかわらず次の値. 震指標 IS を式(1)のように定義している。IS の値. を基準とする。. は、数値が高いほど耐震性能も高いとされている。 IS=EO×SD×T. (1). ここで、 EO:保有性能基本指標. 第1次診断. ES=0.8. 第 2 次診断. ES=0.6. 第 3 次診断. ES=0.6. Z :地域指標で、その地域地震活動度や想定する地. 強度指標 C と靭性指標 F の積で定義され、強度が. 震動の強さによる補正係数。. 高く、破壊時の変形能力が高いほどその値は大きく. G :地盤指標で、表層地盤の増幅特性、地形効果、. なる。. 地盤と建物の相互作用などによる補正係数。. SD:形状指標. U :用途指標で、建物の用途などによる補正係数。. 建物の平面および立面的に見た耐震要素の配置の. 耐震診断を行った結果、耐震性が不十分であると判. 良否が耐震性能に及ぼす影響を考慮するための指標. 定された場合の対応としては次の 3 つが考えられる。. である。. (1)取り壊し. T :経年指標. 耐震性が著しく低い場合(例えば、IS<0.3 ISO の場. 建物に生じた経年変化による亀裂、変形、老朽化. 合)、地震時において建物の倒壊などの大きな被害が. などが建物の耐震性能に及ぼす影響を考慮するため. 予想され、補強コストがかさむので取り壊す。. の指標である。. (2)耐震補強. この構造耐震指標 IS の算定方法には、第1次、第 2. 耐震性がある程度低い場合(例えば、0.3 ISO≦IS<. 次、そして第 3 次診断法がある。これらは、診断法. 0.7 ISO の場合)、地震時において柱や壁にかなりの. 54-1.

(2) 被害が生じることが予想されるが、補強にかかる負 X方向 Y方向. 0.08. 担も大きくないと考えられるので、補強し、社会資. 0.07. 本としての建物を有効に使い続ける。. 資料数 92棟 平均(X) : 0.90 標準偏差( X):0.69 平均(Y) : 1.36 標準偏差( Y):0.55. 耐震性が若干不足する程度(例えば、0.7 ISO≦IS< ISO の場合) 、より詳しい調査を行って、耐震性能の. 相対頻度. 0.06. (3)再調査. 0.05 0.04 0.03 0.02. 評価精度を高める。. 0.01. 耐震性能が不十分であると判定された建物に対する. 0 0.00. 耐震補強法には、主に次の二つの手法が上げられる。. 0.50 1.00 1.50 保有性能基本指標Eo. 2.00. (1)強度を高くする(強度抵抗型補強) 強度を高める耐震補強法としては、一般的には、RC. 図 1.佐賀県の EO 値の頻度分布(1 階、各方向). 造耐震壁を新たに増設したり、K 形や X 形の鉄骨ブ. 資料数 44棟 平均( X):0.74 標準偏差(X) : 0.49 平均( Y):1.07 標準偏差(Y) : 0.57. 0.09. レースを増設する方法が用いられている。. 0.08 0.07. 柱に鋼板や炭素繊維を巻き付けるなどして靭性能を. 0.06. 相対頻度. (2)靭性能を向上させる(靭性抵抗型補強). 高める。腰壁またはたれ壁と柱の間にスリットを設 けることで短柱を長柱とし変形能力を向上させるな. 0.05 X方向 Y方向. 0.04 0.03 0.02. どの方法がある。. 0.01. 3.佐賀県・福岡県の 2 次診断結果. 0 0.00. 図 1、図 2 に、佐賀県・福岡県における建築物の各 方向における 1 階の保有性能基本指標 EO を式(1) で表される対数正規分布で近似したものを示す。以. 0.50 1.00 1.50 保有性能基本指標Eo. 2.00. 図 2.福岡県の EO 値の頻度分布(1 階、各方向). 下は学校の敷地内に存在する体育館以外の建築物に 45. ついての結果である。.  1 ( y − yA )2  exp  − ⋅  y S2 2π ⋅ y S ⋅ x  2  1. 35. (4). 30 棟数. P ( x) =. 40. ここで、x:保有性能基本指標 EO 値. 25. 資料数92棟 平均( X):0.92 標準偏差(X) : 0.06 平均( Y):0.89 標準偏差(Y) : 0.07. X方向 Y方向. 20 15. y:ln(x). 10 5. yA:ln(x)の平均値. 0 0.60∼0.65 0.70∼0.75 0.80∼0.85 0.90∼0.95. yS:ln(x)の標準偏差 図をみると、保有性能基本指標 EO の値の分布は、X 方向の EO 値のほうが Y 方向の EO 値に比べてかなり. 図 3.佐賀県 SD 値の分布(1 階、各方向). 小さい値となっていることがわかる。これは、学校 建築が X 方向には開口部が多く、Y 方向には壁が多. ける形状指標 SD の頻度分布を示す。両方向の平均. い構造が主流となっている影響のためと思われる。. を比べると、両県とも、Y 方向の SD 値のほうが僅か. また、佐賀県の平均は X 方向、Y 方向ともに福岡県. ではあるが小さくなっていると言える。しかし、X. の値より大きくなっている。. 方向 Y 方向にそれほど大きな差は無く、一部の建物 を除き、形状指標 SD が構造物の耐震性能の大きな. 図 3、図 4 に佐賀県・福岡県の 1 階の各方向にお. 減点要因にはなってはいない。. 54-2.

(3) 25. 15. X方向 Y方向. 資料数44棟 平均(X) : 0.91 標準偏差(X) : 0.08 平均(Y) : 0.86 標準偏差(Y) : 0.15. X(1階) Iso=0.7 Y(1階). 資料数93棟 X方向   1階 平均   :0.80 標準偏差:0.65 Y方向   1階 平均   :1.17 標準偏差:0.51. 1.20 1.00 相対頻度. 棟数. 20. 1.40. 10. 0.80 0.60 0.40. 5. 0.20. 0 0.50∼0.55. 0.65∼0.70. 0.80∼0.85. 0.00 0.00. 0.95∼1.00. 図 4.福岡県 SD 値の分布(1 階、各方向) 60 50. 1.00 1.50 構造耐震指標Is. 2.00. 図 7.佐賀県の IS 値の頻度分布(1 階、各方向) 1.60. 資料数92棟 平均:0.96 標準偏差: 0.04. Iso=0.56 資料数44棟 X( 1階) X方向 平均   : 0.63 Y(1階) 標準偏差: 0.44 Y方向 平均   : 0.87 標準偏差: 0.55. 1.40 1.20 相対頻度. 40 棟数. 0.50. 30 20. 1.00 0.80 0.60 0.40 0.20. 10 0 0.78∼0.80. 0.84 0.86. 0.90 0.92. 0.00 0.00. 0.96 0.98. 0.50. 経年指標T. 図 5.佐賀県 T 値の分布(1 階、各方向). 1.00 1.50 構造耐震指標Is. 2.00. 図 8.福岡県の IS 値の頻度分布(1 階、各方向) 表 1.佐賀・福岡県の1階の各方向の IS 値の割合(%). 30 25. 佐賀県. 資料数44棟 平均:0.92 標準偏差: 0.09. 20. 福岡県. X. Y. X. Y. 0.0. 0.0. 2.3. 0.0. 0.3 ISO≦IS<0.7 ISO. 37.0. 1.1. 29.5. 11.4. 10. 0.7 ISO≦IS< ISO. 22.8. 9.8. 20.5. 20.5. ISO<IS. 40.2. 89.1. 47.7. 68.2. 棟数. IS<0.3 ISO. 15. 5 0 0.65∼0.70. 0.75 0.80 0.85 0.90 経年指標T. 0.95 1.00. 岡県共に Y 方向よりも X 方向 IS 値が小さい。 表 1 に佐賀県・福岡県の診断建築物の1階におけ. 図 6.福岡県 T 値の分布(1 階、各方向). る各方向の構造耐震指標 IS の分布の割合(%)を示 す。ここで、佐賀県では ISO=0.7、福岡県では ISO. 図 5、図 6 に佐賀県・福岡県の経年指標 T の頻度. =0.56 としており、そのため佐賀県の X 方向では約. 分布を示す。両県ともに平均が 0.90 を超えており構. 60%、福岡県の X 方向では約 50%が耐震補強を要. 造耐震指標 IS の大きな減点要因にはなってはいない。. する建築物となっている。. 図 7、図 8 に、佐賀県・福岡県における建築物の. 図 9 に佐賀県の IS 値と建設年度の関係を示す。図. 各方向における構造耐震指標 IS を式(1)で表され. より建設年度の古い建物ほど耐震性が劣る傾向があ. る対数正規分布で近似したものを示す。佐賀県、福. ると思われる。. 54-3.

(4) Iso=0.7. 0.35 資料数 76棟. 2.80. 0.25. 2.10 1.40. 0.2 0.15. 補強前 補強後. 0.1. 0.70. 0.05. 0.00 35. 40. 45 50 建設年度( 昭和). 55. 0 0.00. 60. 図 9.佐賀県の IS 値と建設年度の関係(1階、X 方向). 資料数. 2.10. 0.50. 1.00 1.50 構造耐震指標Is. 2.00. 図 11.佐賀県の補強前後の IS 値の頻度分布 (1階、X 方向). 1階建て 2階建て 3階建て 4階建て. 2.00 資料数 35棟. 1.40. 1.50. 3次診断. 構造耐震指標Is. 資料数 52棟 平均(補強前) : 0.49 標準偏差( 補強前):0.13 平均(補強後) : 0.81 標準偏差( 補強後):0.10. 0.3 相対頻度. 構造耐震指標Is. 3.50. 0.70. 0.00. 1.00. 4階、Y. 3階、Y. 2階、Y. 1階、Y. 4階、X. 3階、X. 2階、X. 1階、X. 0.50. 0.00 0.00. 0.50. 1.00. 1.50. 2.00. 2次診断. 図 10.佐賀県の地上階数と各階の平均値の比較 図 12. 2 次と 3 次の IS 値の比較(1階、X 方向) 図 10 に佐賀県の地上階数と各階の IS の平均値と の関係を示す。図をみると、X、Y 両方向の 1∼3 階. どちらかが大きくなるというものでもなく、おおよ. においては上層階があるほど IS の平均値は小さくな. そ半々の確率で分かれているものと図からは思われ. るという結果となった。. る。2 次診断において、かろうじて安全と判定され. 4.佐賀県の補強前後の比較. た建物には再調査が望ましい。. 図 11 に佐賀県の補強前後の1階 X 方向の構造耐震. 6.まとめ. 指標 IS の分布の比較を示している。用いられた補強. 佐賀・福岡両県の耐震診断結果から 1981 年以前. 方法は、ほとんど RC 増設壁か鉄骨ブレースあるい. の建物の過半数は耐震性に不安があることがわかっ. はその両者を設置する強度抵抗型補強であった。図. た。また、この時代の建物の耐震性能は、建設年度. をみると補強後の IS 値は、構造耐震判定指標 ISO=. が古いほど、そして上層階をもつ層ほど耐震性能が. 0.7 を僅かに上回る 0.7∼0.8 の付近に集中するよう. 劣る結果となっている。. な最低限の補強だけが行われていることがわかる。. 参考文献. 5.福岡県の 2 次診断と 3 次診断の比較. 1)青山博之. 図 12 に福岡県の同一の建物の1階 X 方向における. 系構造の設計,彰国社、昭和 58 年. 2 次診断の IS 値と 3 次診断の IS 値とを比較したもの. 2)日本建築防災協会刊行:既存鉄筋コンクリート. を示す。 (2 次、3 次ともに ISO=0.56)3 次診断は、. 造建築物の耐震診断基準、1995 年 7 月. 2 次診断よりも精度が高い手法であるが、IS 値は. 54-4. 他:新建築学体系 41−コンクリート.

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