病院ボランティア・コーディネートシステムの日米比較 [ PDF
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(2) 務を支援する仕組み,組織,集団,団体などをさし、また,. いだろうか.もしくは,現時点ではその存在は明らかとなっ. この「病院ボランティア・コーディネートシステム」は,外. ていないが,存在しているのではないだろうか.. 部の環境に対して開かれたシステムであり,そのため環境と の相互作用により維持,発展していくものとすると定義した。. 次に、病院ボランティア・コーディネートシステムの発展 過程を検討する上での仮説は、以下の 2 つである。 仮説 1’:アメリカでは,病院ボランティア・コーディネー. 有機的システムの組織. 安定的な環境. 不安的な環境. 機械的システムの組織. トシステムは,「ボランティアによる運営」から「病院ボラ ンティア・ディレクターによる運営」へと発展を遂げてきた.. 不適合. 適合. ↓. ↓. (低成果). (高成果). ステムは,「ボランティアによる運営重視」から「ボランテ. 適合. 不適合. ィア・グループによる運営」,さらには「兼任コーディネー. ↓. ↓. ターによる運営」へと発展し,「専任のコーディネーターに. (高成果). (低成果). 仮説 2’:日本では,病院ボランティア・コーディネートシ. よる」へと発展してきているのではないか. これらの仮説の検証は,アメリカや日本の病院ボランティ. (加護野(1981:178)を参照に筆者作成). ア・コーディネーターへのインタビュー調査や関連資料の分 析などにより,行っていく.この比較研究を行っていくうえ. 図 1:適合・不適合と組織の有効性. では,アメリカの病院ボランティア・コーディネートシステ ムを一つの発展段階モデルと位置づけると前述したが,アメ. この病院ボランティア・コーディネートシステムの分析に. リカのモデルが全て日本においても当てはまるとは考えてい. は、コンティンジェンシー理論を用いた。コンティンジェン. ない.日本とアメリカでは,あとに述べるように医療システ. シー理論(contingency theory)は,条件適合理論あるいは環. ムは異なっているし 16),ボランティアの事情も異なっている. 境適応理論と訳され,最適な組織構造や組織化の方法は,環. 17).しかし,日本の場合,歴史的にみてアメリカ保健医療に. 境・技術・組織規模などの条件に応じて異なるという前提の. 影響を受けている点よりして,アメリカ保健医療との比較分. もと,これらの異なった条件において組織がいかに機能する. 析を通し得られる,経験・知識を参考とすることは,問題の. かを理解し説明しようとする理論である.Burns and Stalker. 考察・改善のため有効・必要と思われる(時井 2002)とも考. や Woodward,Lawrence and Lorsch らによる研究から体系. えられる.また,病院ボランティア・コーディネートシステ. 化されたコンティンジェンシー理論を本論文では、病院ボラ. ムについて焦点を当てたとき,何らかの共通点や相違点,そ. ンティア・コーディネートシステムの発展過程を検討する分. れぞれの特徴を把握することは可能であると考える.そして,. 析枠組みとして用いる。そして、本論分における仮説を以下. それらを明らかにすることで近年関心の高まりとともに,急. のように設定した。. 速な増加傾向を見せている病院ボランティア活動を円滑に発. まず病院ボランティア・コーディネートシステムの日米比 較における仮説は、以下の 2 つである。. 展させていくための糸口がつかめるのではないかと考えてい る.. 仮説 1:アメリカに病院ボランティア・ディレクターの資格 化やディレクターによるネットワークの存在は,病院ボラン ティア・コーディネートシステムの外部環境からの影響を受 け,その環境に適応するために,生まれたのでないか.. 3. アメリカの病院ボランティア・コーディネートシス テム アメリカの病院ボランティア・ディレクターや病院ボ. 仮説 2:アメリカにおいて専任・専従のボランティア・ディ. ランティア・コーディネートシステムの現状をアメリ. レクターの設置を可能とし,支えているのは,職業団体とし. カ・ハワイ州ホノルル市内の 5 つの病院のボランティ. てのネットワークの存在によるのではないだろうか.そして,. ア・ディレクターへのインタビュー調査の結果から次の. 日本の病院ボランティア・コーディネーターについても職業. ようなことが明らかになった。. 団体としてのネットワークの存在が求められているのではな. 病院ボランティア・コーディネートシステムの構成要 2.
(3) 素として「ボランティア・ディレクターとしての職務記. となった。日本においては、アメリカの場合と比較する. 述書が存在すること」、「病院内の一部門としてボラン. と、病院ボランティア・コーディネートシステムが未整. ティア・サービス部門が存在すること」、「ボランティ. 備であることがわかり、システム化への要因として①コ. アの必要性への認識が高いこと」、「病院にあったボラ. ーディネーターによるネットワークの不在、②コーディ. ンティア・ディレクター体制があること」、「地域・全. ネーターの業務内容が不明確、③外部環境要因による規. 国レベルでのボランティア・ディレクターによるネット. 制が少ないこと、などがわかった。. ワークが存在すること」が把握された。また、外部環境. 5. 病院ボランティア・コーディネートシステムの発展. 要因として、「第三者機関による病院評価」、「連邦政 府法 HIPAA」、「病院の経営難」などが明らかとなっ. 過程 コンティンジェンシー理論を分析の枠組みとして日 米の病院ボランティア・コーディネートシステムの比較. た。. を通して、日米においてシステムの分化・統合の様子が 4. 日本の病院ボランティア・コーディネートシステム アメリカの調査結果と比較検討するため、日本の 10. 確認できた。 また、2 で提示した病院ボランティア・コーディネー. 病院のボランティア・コーディネーターへのインタビュ. トシステムの日米比較における2つの仮説も検証され. ー調査を行った。その結果、次のようなことが明らかに. た。 加えて、2で提示した病院ボランティア・コーディネ. なった。 病院ボランティア・ コーディネート システム 個人. 職務記述書. 部門 組織・集団. 資格. 日本. アメリカ. ートシステムの発展過程の検討における 2 つの仮説も. ボランティア 兼任ボランティア・コ ーディネーター 専任・専従ボランティ ア・コーディネーター. ボランティア 専任・専従ボラン ティア・ディレク ター ボランティア・デ ィレクター・アシ スタント ボランティア・コ ーディネーター 配属部署の監督 者. 検証された。日米の病院ボランティア・コーディネート. なし. 各コーディネーターに より多様.. 看護系部署・事務系部 署など 病院ボランティア協会 でコーディネーターに よる検討会の開催. なし.. ボランティア・デ ィレクターとし ての職務記述書. 標準化されてい る. ボランティア・サ ービス部門 地域レベルネッ トワーク 全米ネットワー ク 全米病院協会 全米資格 CAVS 先進州における 資格. 表 1:病院ボランティア・コーディネートシステムの日米比較. まず日本における病院ボランティア・コーディネート システムの構成要素としては、「専任・専従のボランテ ィア・コーディネーターの設置(兼任から専任・専従へ)」、 「病院ボランティア・コーディネーターのネットワー ク・職業団体形成への動き」、外部環境要因個人情報保 護法の施行」、「第三者評価機関の存在」などが明らか. システムの発展過程としては、以下のようなことが明ら かとなった。アメリカの発展段階としては、第1段階は 「ボランティアのみによるボランティア活動」、第2段 階「病院職員の兼任によるボランティアのマネジメン ト」、第3段階「専任・専従のボランティア・ディレク ターによるボランティアのマネジメント」、第4段階「地 域レベルでのボランティア・ディレクターのネットワー クの形成」、第 5 段階「全国レベルでのボランティア・ ディレクターの職能団体の形成」、第 6 段階「専門職と しての資格制度」という過程を経てきたことがわかった。 一方、日本の発展段階としては、第 1 段階は「病院ボ ランティアのみによるボランティア活動」、第 2 段階「病 院職員の兼任によるボランティア担当者としてのコー ディネーター」、第 3 段階「専任・専従のボランティア・ コーディネーターによるボランティア・マネジメント」、 第 4 段階「ボランティア・コーディネーターとしての業 務の標準化と研修体制の整備」という過程が明らかとな った。日本に関しては、現在、第 2 段階から第 3 段階、 第 4 段階への移行過程にあるといえる。 アメリカ、日本の病院ボランティア・コーディネート システムの分析を踏まえ、今後の日本の病院ボランティ ア・コーディネートシステムにとって発展するために必 3.
(4) 要と考えられるものは以下のものである。 ①病院ボランティア・コーディネーターによるネット ワーク形成、②病院ボランティアの受け入れ支援団体、 である。 6. 考察 まず,本論分では、①アメリカの病院ボランティア・. 注目し続けたい.. 主要引用文献・参考文献 American Hospital Association,2003, Hospital Statistics. 2003, American Hospital Association. American. Society. of. Services,2003,Certified. Directors. Administrator. of. of. Volunteer. Volunteer. コーディネートシステムの実態を明らかにした.これま. Services REVIEW GUIDE, American Society of Directors. で,個別に紹介されていた病院ボランティアやディレク. of Volunteer.. ター,HIPAA,JCAHO などを「病院ボランティア・. 安立清史,2000,『病院ボランティアの調査』平成 10∼11. コーディネートシステム」の構成要素と外部環境要因と. 年度科学研究費補助金(基盤(C)(2))研究成果報告. して包括的な実態把握をおこなった.. 書,九州大学.. ②日本の病院ボランティア・コーディネートシステムの. ――――,2003,『病院ボランティア・グループに関する全. 実態を明らかにした.先行研究では,病院ボランティア,病. 国調査』科学研究費補助金(基盤(C)(2))研究成果. 院ボランティア・コーディネーターと外部環境要因との関係. 報告書.. 性から病院ボランティアやコーディネーターについて論ぜら. 平野優,2004,「病院ボランティア・コーディネーターの実. れることはなかったため,今回は環境との関係性に注目し実. 態と機能に関する社会学的考察」九州大学大学院人間環境. 態を明らかにした.. 学府 2004 年度修士論文.. ③これまで把握されることの少なかった医療関係者のボ ランティアに対する意識を知ることができた. ④アメリカと日本の病院ボランティア・コーディネート システムが,どのような発展を遂げてきたのかをいくつかの 過程にわけ,段階的に示した. ⑤先行研究で課題としてあげられていた,専任ボランテ ィア・コーディネーター設置の阻害要因に対してコーディネ ーターによるネットワーク形成やボランティア受け入れ支援 団体による解決可能性を提案した. しかし、日米の病院ボランティア・コーディネーターやデ ィレクターの業務内容の詳細な比較分析が出来なかった点、 患者という視点が欠けていた点、今後の日本の医療における. Lawrence,PaulR.andLorsch,JayW.,1967, Organization =. Environment:. Mananaging. Differentiation. and. Integration! .(=1977,吉田博訳『組織の条件適応理論』 産業能率短期大学出版部.) ― ― ― ― ,1969,Developing Oganizations: Diagnosis and. Action.: Addison-Wesley.(=1973,高橋達男訳『組織づく り: その診断と手順』産業能率大学出版部.) 信友浩一編,2005,『病院ボランティア導入とコーディネー トに関する普及モデルの開発とデモンストレーション』平 成 15 年−平成 17 年度科学研究費補助金. 平成 16 年度総括. 研究報告書,九州大学大学院. 野中郁次郎・加護野忠男・小松陽一・奥村昭博・坂下昭宣,. 病院ボランティアや病院ボランティア・コーディネーターを. 1978,『組織現象の理論と測定』千倉書房.. 明確に位置づけることが出来なかった点は、今後の課題であ. 進藤雄三,1990,『医療の社会学』世界思想社.. る。. 特定非営利活動法人日本病院ボランティア協会編,2001, 『病. 今後,社会の変化,時代の変化とともに,医療も変わり病 院ボランティアや病院ボランティア・コーディネーター,そ して本論文で取り上げた病院ボランティア・コーディネート システムもその変化に適応しながら,発展していくであろう. その中で,専任・専従の病院ボランティア・コーディネー. 院ボランティア―やさしさのこころとかたち』中央法規, 2001. 特定非営利活動法人日本ボランティア・コーディネーター協 会,2002,『ボランティア・コーディネーター』筒井書房. Wolf,M.R.,1980,The Valiant Volunteers: The beginnings,. ターは,日本において普及するのか,最後に必要と示した「病. Growth. and. Scope. 院ボランティア・コーディネーターによるネットワーク」や. Massachusetts. 「ボランティア受け入れ支援団体」は生まれるのか,今後も. General Hospital.. General. of. Volunteerism Hospital.:. at. the. Massachusetts. 4.
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