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分譲マンション管理組合の意思決定手法に関する研究 -千里Aマンションを対象としたケーススタディ- [ PDF

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Academic year: 2021

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32-1 を経年的に捉え、管理組合の意思決定手法について考 察することを目的とする。法律面からも、管理面から も、管理に関する情報が多くないと推測される時期か らの管理組合活動を明らかにすることは、日本のマン ション管理の歴史を探るうえで、意義があると考える。 2. 研究の方法 2-1. 研究の流れ  本研究では、A マンションの管理組合活動について、 A マンション居住者から譲り受けた、入居時から建替 え解散決議までの 44 年 2 ヶ月間の管理組合理事会の 議事録や回覧文書などの活動記録をもとに、理事会の 議題と意思決定の手法に着目して考察する ( 表 1)。ま ず、A マンションの管理活動を、議事録に記載された 運営上の課題の変遷をもとに 4 つの期間に分ける。次 に、各期間における意思決定の方法の特徴を明らかに する。最後に、A マンションで特に議論となった取り 組みについて、意思決定に至るプロセスを示し、課題 解決の方法を考察する。 2-2. 研究対象の概要  A マンションの建物概要と配置図をそれぞれ、表 2、 図 1 に示す。  A マンションの管理運営は、1967 年の分譲時に管理 組合に相当する「自治会」が入居者によって組織され、 その 10 年後、供給元である大阪府住宅供給公社 ( 以下、 公社 ) からの区分所有権の移転に伴い、管理組合に移 行した。管理形態は、「自治会」結成当初から 1997 年ま で約 30 年自主管理であったが、一部委託管理を経て 2003 年に全面委託管理へと変化した。その後、2010 年 11 月に建替え決議を行い、2011 年 5 月に解散を決 議している。  管理組合の集団編成は、水平方向を住棟中央のエレ ベーターホールで東西に 2 分し、垂直方向を 2 層ごと に分けた計 6 ブロックで構成され、各ブロックから毎 年 1 名選出される理事で理事会は運営される。理事の 任期は 1 年、理事長は互選で決められ、理事が連続し て再任したのは最初の 3 年間のみである。 3. 理事会議事録の議題による区分  まず、管理組合の活動の変遷を捉えるため、理事会 1. 研究の背景と目的  分譲マンションでは、様々な年代、ライフスタイル、 考え方を持つ区分所有者による意思決定によって管理 組合の業務が進められる。国土交通省が 2016 年に改 正した「マンション標準管理規約」( 以下、標準管理 規約 ) 第 32 条では管理組合の業務内容は 15 項目挙げ られており、マンション内の建物管理を始めとして、 生活管理から修繕計画の作成や修繕積立金の運用まで 様々で、建物の質や価値、良好な住環境を保つために 管理組合の業務を円滑に進めることは重要である。  これらの課題に関して梶浦らは 1980 年代から共同 管理の難しさを指摘しており1) 、近年では建替えに関 わる合意形成が課題として挙げられる2) など、管理組 合の意思決定のあり方は長年にわたり問われている。  そこで本研究では 1967 年から管理組合による自主 管理が行われていた A マンションを対象として、分譲 時から建替えに至る全期間の管理組合記録をもとに、 管理組合の業務で生じる懸案事項とその決め方の実態

分譲マンション管理組合の意思決定手法に関する研究

‐千里 A マンションを対象としたケーススタディ‐

下村 帆美 所在地 竣工 , 入居開始時期 供給者 敷地面積 / 建築面積 構造 , 階数 , 住居形式 戸数 住戸面積 共用施設 大阪府吹田市 1966 年 12 月竣工 ,1967 年 1 月入居開始 大阪府住宅供給公社 4106.69 ㎡ /1058.75 ㎡ RC 造 ,6 階建て , メゾネット型式 住戸 53 戸 , 管理組合事務所1戸 85.54 ㎡ 管理組合事務所、駐車場、駐輪場、ごみ集積所 図 1 竣工時の A マンション配置図 表 2 建物概要 資料内容 資料数 概要 幹事会議事録(1967~1976年) 12冊 理事会議事録(1977~2011年) 31冊 修繕・建て替え計画 6冊 大規模修繕や建替え計画に関する資料 冊 5 2 他 の そ 理事会(幹事会)の議事録および回覧板資料、 総会資料、その他議案に関する資料など ※ファイルの欠年は1968、1969、1978、1993、2001、2004、2011の7年分 表 1 研究資料の概要 0 5 10 20(m) N 集会所 公社賃貸住宅団地 A マンション 池 A 棟 B 棟

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32-2 れている。ここで、アンケート議題について理事会の 議論開始と意思決定の時期が明らかになっている 15 件の、意思決定までに要した期間を図 3 に示す。議題 は建物設備管理が 9 件を占め、アンケート実施までの 期間が長くなる傾向がある。廊下塗装の場合、見積も りの方法や公社への申請方法の調査などに 1 年以上費 やしており、費用確認後、塗装の是非を回覧し居住者 全員の同意を得て工事実施に至った。長期にわたった のは建物設備管理のノウハウがなく、慎重を期したた めと考えられる。また、建物設備管理以外の内容は1 ヶ 月ほどの短期間で意思決定に至ることが多いが、長い 時間を要した議題もみられ、特に 1976 年度の保険加 入は約半年の期間をかけている。これは、入居者全員 の合意が必要であったがアンケートの結果、意見が複 数案に分かれ、詳細な内容まで議論したことが理由に 挙げられる。このように長期間検討する事案も自治会 期は書面で議論、議決していた。 の議題を内容から 10 項目に分類する。( 図 2)  これをもとに以下では、A マンションの管理活動を 自治会期、管理組合前期、管理組合中期、管理組合後 期の 4 つに区分して考察する。自治会期は入居開始か ら管理組合へと移行するまでの「自治会」として活動 していた 1967 ~ 1976 年度、管理組合前期は管理組合 移行後から大規模修繕開始までの 1977 ~ 1984 年度、 管理組合中期は大規模修繕開始から建替え検討開始ま での 1985 ~ 2001 年度、管理組合後期は建替え検討が 行われた 2002 ~ 2011 年度とする。 4. 時期区分別の意思決定の特徴 4-1. 自治会期   自治会期は議事録が 41 回分 308 件、内容は建物設 備管理が 58 件で最も多く、生活ルールがそれに次ぐ。 1971 年には廊下塗装や共同アンテナ取付といった本 格的な修繕行為が初めて議論された。  自治会期の意思決定は書面会議とアンケートで行わ 図 2 A マンション管理組合活動の経緯 0 3 6(題) 8 12 11 4 5 1 13 15 17 9 5 11 12 13 13 1 14 14 8 11 7 7 11 14 17 11 13 12 8 15 2 8 10 12 11 13 20 2 47 119 82 23 33 4 123 111 153 42 44 58 69 119 143 2 43 42 29 121 40 48 33 135 152 62 91 66 70 105 16 58 52 97 117 157 197 25 建物設備 管理 建替え 検討 管理 委託 会計 ルール 地域集団生活 保険 規約 清掃 組合運営 その他 回 数 合計 ※議題件数の数字は実数を表す 0 30 60( 題 ) ※1 理事会理事は 1993 年度と 2005 年度以降は賃貸居住者は理事ではなく役員として議決権を持たず参加している ※管理費、修繕積立金の空欄は前年度と同様である。 ※1 〇 〇〇〇〇〇 ● ●●●●● ● 〇〇〇〇● 〇 〇〇〇〇〇 〇 〇〇〇〇□ 〇 〇〇〇〇〇 〇 〇〇〇〇〇 〇 〇〇〇〇□ 〇 〇〇●□△ ● 〇〇〇●● ● 〇●●●● ● 〇●●□□● 〇〇●□■ ● 〇●●□△ ● 〇●●□△ ● 〇●●●● ● 〇〇●●● 〇 ●●●●● ● 〇●●●● 〇 〇〇〇□□ ● 〇●●□□ ● 〇●●□■ ● 〇〇●●□ ● 〇●□□■ ● 〇〇●●● □ ●□□□△ ● ●□□□■ ● 〇□□△△ ● 〇●□□■ ● 〇●●□■ 〇 〇〇□□△ ● 〇〇●●□ ● ●●□■△ □ 〇●□■■ ● 〇●●■■ □ ●□△△△ ● 〇●□□△ □ 〇●■△△ ○ ○□■△△ ● ●●□■△ ○ ○●●□□ ■ ○○□□△ ● ○●●■△ 11 11 7 4 2 1 23 42 14 4 12 9 23 14 24 1 10 21 2 26 13 9 12 23 21 11 17 11 19 44 8 14 12 17 33 45 53 5 7 23 20 3 5 33 26 56 14 16 20 26 48 48 9 7 10 17 5 8 2 49 46 7 29 12 18 17 2 15 18 24 26 22 43 6 10 5 1 3 2 2 9 1 1 1 14 5 1 3 8 1 6 3 2 3 2 3 1 15 12 10 6 4 23 7 15 10 7 3 3 10 10 1 4 6 4 13 6 6 3 5 14 8 1 1 7 17 1 5 1 8 19 23 25 3 2 5 2 2 1 1 1 3 1 4 1 1 2 2 2 4 2 1 2 12 8 1 7 1 7 16 21 1 2 7 5 8 2 4 1 5 5 1 11 14 10 15 16 4 4 3 5 4 10 12 19 16 4 5 13 10 4 1 11 3 12 3 2 3 10 18 3 5 15 8 8 6 9 11 7 9 4 3 2 12 11 22 38 3 2 2 3 1 2 4 3 10 2 4 3 1 2 16 9 3 5 1 11 6 17 5 7 9 2 16 12 6 2 16 5 6 9 18 20 12 8 11 4 3 5 1 7 8 11 8 1 5 25 11 5 4 5 6 14 4 3 4 11 20 5 1 20 2 5 17 8 7 13 6 3 6 2 8 12 15 5 11 6 1 実費 1000 1500 1800 2500 3500 4000 4500 5000 5500 5000 7000 6000 8500 52 52 52 51 52 52 52 51 52 49 47 48 47 47 47 52 49 49 48 48 48 46 51 48 48 48 45 45 47 41 49 48 47 42 46 46 43 42 41 41 41 41 37 33 33 該当 なし 理 事 長 理事 区分所有者新任 区分所有者再任 区分所有者以外新任 区分所有者以外再任 賃貸居住者 ◇管理業務担当者 分譲入居開始、「自治会」発足 ◇住み込み管理人 ( 自治会雇用 ) ◆自治会業務 管理組合へ移行 ◇住み込み管理人 ( 管理組合雇用 ) ◇会計業務のみ管理会社に委託 ◇管理会社に一括全面委託 地区連合自治会発足 ◆A マンション自治会発足  ( 理事長と自治会長の役割分担 ) 中高層共同住宅標準管理規約公表 A マンション管理組合会則作成 管理業務、自治会活動に関する動き 建替え発意 建替え決議 凡 例 2 7 2 1 2 2 3 2 1 1 1 3 1 1 1 1 3 1 2 2 1 1 1 1 1 書面決議 総会決議 建物の区分所有等に関する法律改正 ◎長期計画修繕委員会 ◎改修のための特別委員会 ◎新管理委員会 ◎長期計画検討会  長期計画検討委員会 ◎特別委員会 1967 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006 2011 年度 自治会期 管理組合前期 管理組合中期 管理組合後期 自主管理 一部委託 一括委託 アンケート 予算決議 管理 費 ( 円 ) 1250 3000 5000 5500 12000 9500 4500 9500 10000 12500 修繕 積立 金 ( 円 ) 区分所 有者居 住状況 ( 戸 ) 解散決議 規約改正 [ 書 ] [ 総 ] [ 総 ] [ 総 ] [ 総 ] [ 総 ] [ 総 ] [書]書面決議 [総]総会決議 時 期 区 分 管 理 形 態 役員の構成 議事録の議題件数 理事会役員の構成 予算決議の方法 規約改正の決議方法 管理業務、自治会活動に関する動き

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32-3 約を検討し、翌年度から適用している。  A マンション自治会会則に則った規約の制定手続き を理事会で検討し、規約原案は公社サービスセンター から取寄せた他の分譲マンションの管理規約をひな形 に自治会会長が作成した。規約原案は理事会で議論さ れ、回覧文書で居住者の意見収集と回答を行い、内容 決定した。実際に制定された規約は理事会で提案した 規約原案とほぼ同じである。 5-2. 管理規約改正のプロセス  規約制定から組合解散までの間、規約改正は 8 度行 われている。管理組合前期は書面決議で 2 度、管理組 合中期以降は総会決議で改正した。  1983 年の区分所有法の改正に伴う規約改正は 1990 年度の理事会決定で㈶マンション管理センターに登録 し、管理規約の要改正点について指示を受けたことを 契機に約 2 年をかけ行った。  理事会では規約改正案の作成方法を回覧による居住 者アンケートで決定し、専門の弁護士に改正案作成を 依頼した。作成された改正案は居住者向けの説明会、 臨時総会、通常総会の3度説明が行われ、意見交換の後、 1992 年度の臨時総会で議決している。 6. 特別委員会を設置した課題の意思決定手法 6-1. 大規模修繕の実施計画  規約には特別委員会に関する規則はないが、特別委 員会の内規で理事会の支援組織と位置付けている。こ れは国の標準管理規約で理事会で設置可能とされてい る専門委員会にあたる。設置された 4 つの特別委員会 の概要を表 3 に示す。  理事会の支援組織として、特別委員会を設置した大 規模修繕は管理組合中期に 2 度実施された。1986 年度 から実施した大規模修繕は前年度に「長期計画修繕委 員会」を設置しており、委員は有識者と理事経験者で 構成される。同委員会は長期修繕計画についての答申 を理事会に提出しており、建築、設備それぞれについ 4-2. 管理組合前期  管理組合中期は議事録が 70 回分 531 件、建物設備管 理に次いで組合運営に関する議題が多く、この時期に 入退去届等の様式作成など、組合運営に必要な手続き がかたちづくられた。  同期間からは管理規約及び会則 ( 以下、規約 ) に則っ た意思決定が行われ、1977 年に「管理組合に移行した 第一回目の定期集会でもあるので、慎重を期して定期 集会を開催する方がよいという意見が大勢を占めた」 (1977 年 4 月 16 日理事会議事録 ) ため、総会を開催し たが、1980 年度からは「文書による合意で充分全会員 の意思が確認できる」(1980 年 4 月 22 日回覧 ) ことから、 総会に代わり回覧を利用し、回収不能または不在を除 いた全員の合意によって総会議案を可決とすることで 書面で決議した。 4-3. 管理組合中期  管理組合中期は議事録が 178 回分 1195 件、2 度の大 規模修繕や区分所有法の見直しに伴う規約改正、管理 委託業務の見直しなど重要事項を検討するため、特別 委員会を組織した。さらに、不在区分所有者の増加に 伴い書面決議から総会決議へと議決方法を変更した。  管理組合前期から書面による決議を引き続き行って いたが、不在住戸を回収不能とする決議について、規 約の改正・修正事案の中で「集 会 決 議 事 項 の 書 面 合 意 は 原 則 と し て NO、 普 通 決 議 に 適 用 と 考 え る べ き」(1990 年 10 月 19 日理事会議事録 ) と指摘があった。加えて、 1991 年度に居住者と区分所有者が異なる場合の取扱 いについて、組合員から疑義申し立てがあり、所有者 が委任状を提出する方法がとられるようになり、1992 年度から「従来の書面による“区分所有者全員の承認” は今後困難が予想される」(1992 年 4 月 12 日理事会議 事録 ) ため、通常総会が開催された。 4-4. 管理組合後期  管理組合後期は議事録が 101 回分 894 件、組合運営 に関する議題が 250 件と最も多く、次いで建物設備管 理が191件でそのうち建替え検討の議題は96件である。 建替え検討は特別委員会を設置して検討していたた め、理事会ではそのルール作りや運営方法に関する議 論が中心である。  また、高齢化が問題として取り上げられていたが、 管理人によるゴミ出し代行の仕組みづくりや、緊急時 手助けリストなどの新たな取り組みが見られる。 5. 運営課題に関する意思決定プロセス 5-1. 管理規約の制定  A マンションでは、自治会期にあたる 1976 年度に規 3 2 1 0 1 2 会計 地域 建物 建物 会計 地域 委託 建物 建物 建物 建物 建物 建物 建物 保険 年度 1970 1971 1971 1971 1971 1971 1971 1974 1975 1976 1976 1976 1976 1976 1976 ( ヶ月 ) 凡例 協議開始アンケート実施アンケート決定 ( 協議開始と別日の場合 )アンケート結果報告 ( 意思決定と別に行われた場合 ) 意思決定 次年度への引継ぎ 内容 芝刈機購入賛否 慶弔規定 廊下塗装 UHF アンテナ取付 管理人室電話設置 池の埋め立て賛否 管理人退職慰労金 池フェンス工事 共用部分塗装替え 排水管の清掃 中央階段手すり塗装 塀の修繕 塀の鉄部塗装 共用部分窓点検修理 損害保険の一括加入 ※時期が明確な議題のみ 図 3 発意からアンケートによる意思決定までの期間

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32-4 計画を明確にするとともに活動内容をを詳細に報告し た。また、3 回目となる建物アンケートも実施した。  2005 年度に建替え推進決議が総会で可決されると、 4 度目のアンケートとなる長期計画アンケートを実施 した。3 年後、2008 年度の総会で「建替え推進決議の 確認」を可決し、建替え事業協力者を選定した上で同 年度末に臨時総会を開催し「建替え推進決議の再確認」 を議決している。2009 年度には 10 回の建替え検討委 員会を開催し、2010 年度に臨時総会を開催し、建替 え決議の可決に至った。 7. まとめ  A マンションでは公社や外部の専門家から意見や情 報を積極的に取り入れながら、組合運営の手法を区分 所有者自らで模索することで、自主的な運営で検討し 意思決定に至る手法を確立してきたことが窺える。さ らに、輪番制かつ 1 年で理事全員が交代する理事会で の長期的な課題解決の方法として、特別委員会の設置 による継続的な議論の場の設置が挙げられる。  また、回覧を用いた書面会議による意思決定から書 面決議を経て総会決議へ、区分所有法や不在区分所有 者の増加等の変化に応じて意思決定手法を変更してい るが、議論や意見交換の場を持ち続けていたことが分 かった。最終的な意思決定の方法は変化しても、議案 を総会に提出あるいは理事会決定する前に詳細な資料 を回覧または配布し居住者から募った意見を参考に提 案を改善し、意思決定に至ることは度々あり、回覧や アンケートによる意識調査は、A マンションでの課題 解決に至るための手法の 1 つであったと考えられる。 て計画的に修繕が必要な項目を挙げ修繕の緊急度を評 価している。理事会ではこれをもとに事案の優先順位 をつけ、見積りなどの具体的検討を開始し、1989 年 度までに電気工事やエレベーター改修工事を行った。  また、1996 年度には「改修のための特別委員会」を 設置し、委員は理事会役員以外の居住者から選出した。 同委員会では「建物の維持管理・改修を長期的視野より 行うため、理事会の支援組織」(1996 年 10 月同委員会内 規)として理事会役員とともに修繕計画の検討を行い、 作成した修繕計画案に基づいて次年度から大規模修繕 を実施した。次年度以降は理事会役員就任などに伴い 委員を調整しながら理事会の支援組織として活動を継 続している。 6-3. 管理体制の見直し  A マンション管理組合は約 30 年間の自主管理から、 管理体制を見直し 1998 年度から一部委託へ変更した。  「管 理 体 制 が 従 来 方 法 の ま ま で は、 居 住 者 の 高 齢 化、 役員業務の高負担等のため行き詰まりを見せつつある」 (1997 年 9 月 ) ため、A マンション新管理システム作成 のための「新管理委員会」を設置し、管理組合役員選 出の新しいルールの提案や、管理委託の内容の検討 を行った。新管理委員会での検討結果に基づき、1998 年度に理事の選出方法を変更し、会計業務も通常総会 で議決し外部委託となった。  2003 年には一括全面委託に至るが一部委託から移 行する際に特別委員会は設置せず、理事会が作成した 管理に関するアンケートで組合員及び居住者の意識調 査を行い、通常総会で議決した。 6-2. 建替えの検討  2002 年度、「『10 年後をめどに建替え』を考える最初の 年 と す る」(2002 年 4 月 4 日理事会議事録 ) と宣言し、 長期計画に関するアンケートと管理に関するアンケー トを実施し居住者の意思確認を行い、2003 年度に、 外部専門家を加えて本格的に建替えか改修かを検討す る準備を開始した。2004 年度に長期計画検討会を発 足させ、長期計画検討会ニュースを 4 回発行し、活動 謝辞  調査に協力してくださいました旧 A マンション管理組合の皆さま、心から御礼を申 し上げます。 参考文献 1) 梶浦恒男「マンション管理を問う」 都市文化社 1983 年 2) 広瀬直樹 斎藤広子:建替え実施マンションにおける検討課題‐マンション建替え の合意形成のための研究‐ 日本建築学会大会学術講演梗概集 pp.1361-1362 2010 年 3) 岡俊江:千里ニュータウン公社分譲マンション居住者の生活と管理組合活動の計画 史的研究 2012 - 2014 年度 科学研究費 基盤C(一般) 研究課題番号:24560777 研 究成果報告書 2015 年 4) 中村和枝、三宅雪加、村田あゆみ:千里ニュータウン A マンションの管理組合活動 に関する研究、九州女子大学家政学部人間生活学科 2013 年度卒業論文、2014 年 1 月 5) 岡俊江、藤野雅子、馬場昌子、三村明子:千里 A マンションの管理組合活動に関 する研究 第 1 報 区分所有者の状況、日本建築学会九州支部研究報告計画系 第 54 巻  pp.129-132、2015 年 3 月 名称 長期計画修繕委員会 改修のための特別委員会 長期計画特別委員会(2002年度~) 管理技術の継承を目的とする委員会 (2003年1月~) 新管理委員会 長期計画検討会・長期計画検討委員会 建替え検討会・建替え検討委員会 (2008年度~) 活動時期 1985年度 1996年度~ 1997年度 2004年度~ 提案時の委員 条件 有識者(居住者) 過年度理事経験者5~7名 不在区分所有者を含めた全組合員 居住者 各ブロックから最低1名以上 居住する組合員と配偶者、または三親 等以内の未成年者ではない親族 各ブロックから2名以上 発足時委員数 5名 6名 10名 15名 設置までの経緯 理事会より組合員各位に提案、圧倒 的多数の賛同を得て了承 理事会が発起人となり回覧で賛否 を問い、設置することに決定 管理に関するアンケートの結果に基づ き理事会が設置を提案、総会で承認 発足時の目的 組合員の共有財産の維持、保全を 計る 建物の維持管理・改修を長期的視野 より行うための理事会の支援組織 理事会の支援組織として新管理シ ステムを作成する作業を行う 建物の改修と建替えを比較検討し、検 討会を開催する 活動内容 中長期修繕計画についての答申 の作成、理事会へ提出 改修方法の調査、実施方法の立案、 業者との折衝、居住者への説明 新理事選出方法および新管理シス テムの提案 検討会の企画運営(検討委員会)、開催 特別委員会発足時の情報 表 3 特別委員会の概要

参照

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