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博士(農学)甫尓加‘甫 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)甫尓加 甫 学位論文題名

遊牧生産方式の展開過程に関する実証的研究

一中国新彊におけるアウル組織の性格変化を対象として一

学位論文内容の要旨

  遊牧という生産方式は現在でも世界的に広く分布、定着し、主として少数民族 によって担われている。遊牧による畜牧生産方式は、自然的立地条件および社会 経済的条件などから農耕に適さず、生産カのきわめて乏しい自然の草資源と水資 源を、専ら家畜を移動させることによって利用する独自の家畜生産システムとい える。しかし今日、遊牧に対する評価には、それが古い伝統的生業、民族的生業、

後進的な生産方式に固執するものとみるものもあり、さらに遊牧民は環境破壊や 貧困の象徴であるかのような認識もある。

  本論文では、遊牧による畜牧生産が今日なお定着し続け、畜牧産業の中で一定 の役割を果たしている事実の背景には、一定の生産カを発揮させるような諸技術 の有機的結合のカ、すなわち生産方式としての科学的根拠が存在するという立場 をとっている。遊牧による経営展開の理諭的、実証的研究はきわめて少なく、こ れまで専ら文化人類学的領域において遊牧研究がなされてきたといえる。しかし ながらその中で世界各地で展開されてきた遊牧が、人間労働の有機的組織化によ って展開されて.きたこと、すなわち遊牧による畜牧生産が複数の家族による生産 と生活を含めた相互扶助的集団によって担われてきていることが、それら研究の 中で共通的に指摘されてきている。本諭文では、そのような遊牧の「基本的活動 単位」に着目し、その具体的な諸機能を析出し、それら機能が、中国解放以降の 社会経済的変動の下で変容を伴いながらも、現在においてなお機能発揮されてい ることを実証的に明らかにするものである。

  以上の、 課題設定と 接近視角を 述べる第1章に続 き第2章では、分析の予備的 作業として、世界の遊牧の諸形態と特徴を、自然的立地条件、家畜飼養条件、お よび基本的活動単位の存在について要約しながら、本諭文で分析対象とする中国 新彊ウイグル自治区における遊牧展開の位置づけを行う。そして、・新彊では年間 降雨量50mmー180mmの乾燥・荒漠草原において遊牧が展開していること、アルタイ 山脈、天山山脈など高山に散らばる草地に四季折々に営地を移す垂直的遊牧が行 われていること、農耕地区における牧畜生産と異なり、羊、山羊、牛、馬、駱駝 の5種類の家畜 をすべて保 有することが必要であること、農耕地帯よりもより大 規模な頭数が飼養されていることなどを示している。さらに調査対象としたアル タイ地区フーユン県卜ロゴン郷およびクルト郷における遊牧が、カサフ民族によ って担われており、そこでは各家畜群の飼養を数家族の役割分担の下に行われる

「アウル」とよばれる労働組織の基本的活動単位が存在し、中国における農業集 団化の強化のたびに丙実を変容させながらも再びアウルとして再編されているこ とを確認し、そのようなアウルの展開過程を歴史的に分析することが必要である ことを指摘している。

  第3章は、フ― ユン県トロゴン郷を対象として、中国解放以前における氏族集 団による遊牧経営の構造と所属アウルの活動についての実態調査から、アウルの

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形成諭理と諸機能を析出するものとなっている。氏族社会は権力関係をもっピラ ミッド式の多数の血縁集団より構成され、アウルはその最末端の自治集団として 存在していたが、氏族社会は慣習法や道義法に従って強い結束カをもっていたた めに、生産集団としてのアウルも氏族社会の結束機能によって制約されていた。

しかし、アウル単位に即しながら遊牧業展開について検討を加えた結果、氏族社 会の結束嶺能を背景として、遊牧経営の再生産にとって大前提となる草地占有擾 能、乏しい要素保有下の遊牧展開の推進条件である資源結合調整溌能、巌しい自 然条件の変動に対応した家畜管理の舵取り機能である作業調整機能が保証され、

遊牧の経営展開に不可欠なアウルの諸機能が既に備わってきていたことを明らか にしている。

  第4章 は、中国農業集団化過程におけるアウルの変容内容を、同じくト口ゴン 郷を対象として明らかにするものである。生産関係の変革によって生産カを高め るという強カな集団化の推進によって、中国全土における農業生産は互助組、初 級合作社、高級合作社、およ‐び人民公社という集団化過程を辿るが、遊牧におけ るアウルについても同様に集団化が強カに推し進められ、互助組→生産小組→作 業班という集団単位に再編されていった。互助組体制下においては、非血縁関係 の構成員がアウルに行政的に編入させられ、血縁による従来のアウル結束機能が 次第に損なわれ、草地が国家所有となったためアウルは草地占有・利用の裁量権 を喪失した。また、生産小組体制下になると、家畜など生産要素に対するアウル の資源結合調整機能についても失うことになった。さらに生産小組は小規模の作 業班体制に編成替えとなったため、アウルとしての機能発揮にとっては過小な規 模となり、遊牧による畜牧生産体制を大きく脆弱化させることになった。さらに 文化大革命時代における人民公社体制の階級政策は、有能な遊牧技能者やアウル 経営者からアウルによる作業調整機能を奪い、遊牧による畜牧生産における生産 カ の 大 き な 低 下 を も た ら し た こ と を 、 実 証 的 に 明 ら か に し て い る 。   第5章 は、同じくフーユン県クルト郷を対象として、人民公社が解体された19 84年以降の個別経営体制下におけるアウル機能再編の仕組みを明らかにするもの である。クル卜人民公社はクルト郷政府となり、地域全体を管理する「統一経営 管理層」組織に再編され、その下部に遊牧民自身が個別に生産を請け負う「分散 経営管理層」として位置づ‐けられた。しかし遊牧民は実質的に個別に請け負うの ではなく、主として血縁に基づく従来のアウル組織を再び形成し始めた。1988年 には個別アウル単位での草地占有が実現したために、このように再結成されたア ウルは、草地占有とともに資源の結合調整および作業調整などの経営管理機能を 回復した といえる。調査対象とした8つのアウルの経営実績と収支構造によると 収入総額は概ね販売家畜頭数に比例するが、遊牧の熟練技能者を多く抱えるアウ ルや有能なアウル経営者における販売単価は高く、さらに余剰資金が遊牧施設お よび種畜などの購入に回されているなど、「経営」としての成熱度が高まってい ることを明らかにしている。

  第6章 では、乾燥・荒漠草原における草と水資源の利用という制約の中で、遊 牧民が効率的な家畜生産を行うには人間労働の有機的組織化すなわちアウル組織 によることが、新彊における遊牧生産方式にとって必須の条件であったことを指 摘し、アウル組織の適正規模、技能構成員の適正配置、アウル自らの裁量権の確 保が、アウル経営のための前提条件であるとしている。そのためには、その増殖 過程がいくつかの段階にわたるライブ・ストック(資本)としての家畜群を、そ れぞれ周到に管理しうる遊牧技能者の育成が重要であること、また、政府が全国 画一的に進めている定住化施策については、新彊においては「半定住化方式」が より有益であるとし、荒漠草原の有効利用と維持管理が重要であることを指摘し ている。

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学位論文審査の要旨

主 査   教 授   黒 河    副 査   教 授   土 井 時 久

副 査    教授    太田 原高昭 副 査    教授    大久 保正彦

学 位 論 文 題 名

遊 牧生産 方式の展 開過程 に関する実証的研究

― 中 国 新 彊 にお け る ア ウ ル 組 織 の性 格変 化を 対象 として 一

  本論 文は 、6章 から なる 総頁 数283ぺージの和文論文である。図20、表67、付表1 引 用 参 考 文 献 40を 含 み 、 他 に 参 考 論 文 11編 が 添 え ら れ て い る 。   本 論 文 は 、 世 界 各 地 で 展 開 さ れ て き た 遊 牧が、 人間 労働 の有 機的 組織 化に よっ て 展 開 さ れ て き た こ と に 着 目 し 、 遊 牧 に よ る畜牧 生産 が今 日な お定 着し 続け 、畜 牧 産 業 の 中 で 一 定 の 役 割 を 果 た し て い る 事 実の背 景に は、 一定 の生 産カ を発 揮さ せ る よ う な 諸 技 術 の 有 機 的 結 合 の カ 、 す な わち生 産方 式と して の科 学的 根拠 が存 在 す る と い う 立 場 か ら 、 そ の 具 体 的 な 諸 機 能を析 出し 、そ れら 機能 が現 在に おい

ル タ イ 地 区 フー ユン 県ト ロゴ ン郷 およ びク ルト郷 にお ける 遊牧 は、 カサ フ民 族に よ っ て 担 わ れ て お り 、 そ こ で は 各 家 畜 群 の 飼 養 を 数 家 族の 役 割 分 担 の 下に 行う

「 ア ウ ル 」 とよ ぱれ る労 働組 織の 「基 本的 活動単 位」 が存 在す るこ とを 確認 する も の と な っ て い る 。

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は 高 く 、 そ れ ら の 余 剰 資 金 が 遊 牧 施 設 お よ び 種 畜 な ど の 購 入 に 回 さ

「 経 営 」 と し て の 成 熟 度 が 高 ま っ て い る こ と を 明 ら か に し て い る 。   6章 で は 、 新 彊 に お け る 遊 牧 生 産 方 式 に と っ て ア ウ ル 組 織 が 必 須 っ た こ と を 指 摘 し 、 ア ウ ル 構 成 員 の 適 正 規 模 お よ び そ の 適 正 配 置 、 ア 裁 量 権 の 確 保 が 、 今 後 も ア ウ ル 経 営 の た め の 前 提 条 件 で あ る と し て い め に は 、 増 殖 過 程 が い く っ か の 段 階 に わ た る ラ イ ブ ・ ス ト ッ ク ( 資 本 家 畜 群 を 、 そ れ ぞ れ 周 到 に 管 理 し う る 遊 牧 技 能 者 の 育 成 が 重 要 で あ る 政 府 が 全 国 画 一 的 に 進 め て い る 定 住 化 施 策 に つ い て 、 新 彊 に お い て は 方 式 」 が よ り 有 益 で あ る と し 、 荒 漠 草 原 の 有 効 利 用 と 維 持 管 理 が 重 要 を 指 摘 し て い る 。

  こ の よ う に 本 論 文 は 、 こ れ ま で 未 着 手 で あ っ た 遊 牧 に よ る 畜 牧 生 産 ル ) に 関 す る 研 究 に お い て 嚆 矢 的 な 役 割 を 果 た し 、 貴 重 な 知 見 を 示 し れ は 遊 牧 研 究 に お い て 高 く 評 価 さ れ る の み な ら ず 、 中 国 の 辺 境 地 区 に

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下になると、

に 作 業 班 体 て の 機 能 発 さ せ る こ と な 遊 牧 技 能 よ る 畜 牧 生 にしている。

体 さ れ た19 に す る も の 質 的 に 個 別 び 形 成 し 始 の よ う に 再 整 な ど の 経 実 績 と 収 支 の 販 売 単 価 れ る な ど 、 の 条 件 で あ ウ ル 自 ら の る 。 そ の た

) と し て の こと、また、

「 半 定 住 化 で あ る こ と 方 式 ( ア ウ て い る 。 こ お け る 施 策

5

調

調 8 調

8 8 1 9

                t    O                     

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