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分子状窒素の有機合成への利用

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 上 田 和 孝

学 位 論 文 題 名

分子状窒素の有機合成への利用

―トランスメタル化を利用した有機化合物への窒素雨の導入一

学位論文内容の要旨

    大気 中の 約80%を 占め る窒 素は 、その高い結合工ネルギー(226 kcal/mol)が示   す よう に従 来不 活性 な気 体と して 存在 し、 化学 的変 換は 不 可能とされてきた。20   世 紀初 頭に開発されたハーバー・ボッシュ法は人類の生存を 可能とした窒素固定化   法 であ る。しかしこの方法は高温・高圧という条件を必要と している。一方、近年   の有機金属化学の発達はめざましく、1気圧・室温という穏和な条件下、遷移金属―

  窒 素錯 体の合成が可能となっている。しかし、それらは専ら 錯体の合成に主眼が竃   かれており、有機合成への利用、っまり有機化合物への窒素固定には至っていない。

著 者 の研 究室 では1気 圧の 窒素 雰 囲気 下、 チタ ン化 合物 、リ チウム、TMSC1よりーチ   タン‐窒素錯体(T‑N錯体)を合成し、この錯体を用いて様々なケトカルポニル基を持   つ有機化合物への窒素導入反応に成功している。また、 パラジウム触媒を用いてlIN   錯体とのトランスメタル化を利用した無置換アニリンの合成に成功し報告している。

    今回、著者はバラジウム触媒存在下、Ti−N錯体をアリール化合物及びアリル化合 物 と 一 酸 化炭 素雰 囲気 下で 反応 させ る こと によ り、 窒素 と一 酸化 炭素 の2種 類の 気 体 が 固定 され たア リー ルア ミド 及び ァリ ルア ミド の合 成に 成 功したので本論文中で 報 告 する 。さ らに 、Ti一N錯体 を パラジウム触媒存在下アリル 化合物と反応させるこ   とによルアリルアミンの合成にも成功したので報告する 。

    まず 始めにアリール化合物への窒素と一酸化炭素の段階的 固定化反応を試みた。

反 応 に用 いるTi−N錯 体は 著者 の 研究室で既に報告している方 法に従い、チタン化合 物 のTHF溶 液 に り チ ウ ム (10当 量 ) 、TMSCl(10当 量 ) を 加 え 、 室温 で1気 圧の 窒 素 気 流下 一 晩攪 拌す るこ とに より 調製した。このTi.N錯体 と基質のアリールブ口   ミドのトルエン溶液にPdユ(dba)3錯体、配位子としてDPPF、及び塩基としてNaO一fI

、Buを加 え、1気 圧の 一酸 化炭 素 雰囲 気下 、90°Cで一 晩反 応 させた。その結果、低 収 率 なが らア リー ルア ミド が得 られ た。 そこ でア ミド の収 率 の向上を目指し、まず 溶 媒 を検 討す るこ とと した 。そ の結 果、 アミ ド、 イミ ド、 ア ミンの他にニトリルが 得 ら れ る こと がわ かり 、DMFやプ 口ピ オニ トル を用 いて 反応 を行 う とア ミド の収 率 が 向 上 し た 。 又DMFの 系 に お い て はDMFと 反 応 し た と 考 え ら れ る ホ ル ミ ル ア ミ ド が 得 ら れ るこ とが わか った 。次 に、 溶 媒と してDMFを用 いて 塩基 の 検討 を行 った 。 f_Pr2NEtを 用い たと ころ イミ ド 及びニトリルは得られず、ア ミド、ホルミルアミド の 収 率 は あ ま り 変 化 が 見 ら れ な か っ た 。 し か し 、 新 た にDMFと 反 応し たと 考え ら

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れ る ア シ ル アミ ジン が18%の 収率 で得 られ た。 更に 塩 基を 添加 しな いで この 反応 を 行 っ た と こ ろ、 反応 はス ムー ズに 進行 し、 一酸 化炭 素 及び 窒素 の導 入さ れた 化合 物 は 合 わ せ て87% の収 率で 得ら れた 。本 結果 は、 この 反 応が 卜ラ ンス メタ ル化 で進 行 し てい るこ とを 示 して いる 。ホ ルミ ルアミド及びァシル アミジンをメタノール中炭酸 カ リウ ムで 処理 し たと ころ 、目 的と するアミドへと良好 な収率で変換できた。この結 果 は ア リ ー ルハ ライ ドか らTi‑N錯 体と 一酸 化炭 素に よ り、 アミ ドを 得る とい う当 初 の 目的 を達 成で き たこ とを 意味 して いる。様々な置換基 を持ったアリールハライドを 基 質と し、 溶媒 にDMFを用 いて この 反応 を行 っ た。 アリ ール ハラ イドの置換基が笙`

成 物に 及ぽ す影 響 にっ いて は現 在の ところよく分からな いが、いずれも良好な収率で 窒 素及 び一 酸化 炭 素の 導入 され たア リールアミドが得ら れることが分かった。次に分 子 内に カル ポニ ル 基を 持つ アリ ール ブ口ミドを用いて本 反応を行うならばへテ口環の 構 築が 可能 にな る と考 え、 分子 内に カルボニル基を持つ 基質を用いて本反応を行った ところキナゾリン環やイソキノリン環の構築に成功した。

  次 に 著 者 はア リル 化合 物と バラ ジウ ムと の反 応に よ って 得ら れるu‑ア リル パラ ジ ウ ム錯 体に 注目 し た。 すな わち 、兀 ‐アリルパラジウム 錯体とTi‑N錯体とのトランス メ タ ル 化 が 進行 する なら ばア リル アミ ンが 得ら れる は ずで ある 。種 々条 件を 検討 し た 結果 、Ti‑N錯 体 のト ルエ ン溶 液にPd(OAc)2、二 座配 位子BINAP、添加物としてHMPA を 基 質 の ア リ ル ハ ラ イ ド と 共 に 加 え 室 温で1気 圧の 一 酸化 炭素 雰囲 気下 一晩 攪拌 す る こ と に よ り、 窒素 が導 入さ れた アリ ルア ミン 誘導 体 が比 較的 良い 収率 で得 られ る こ と が わ か った 。さ らに 著者 の研 究室 で開 発し たェ チ レン ガス を用 いた 分子 間エ ニ ン メ タ セ シ スを 用い てア ルキ ンか ら水 酸基 誘導 体を 有 する ジエ ンを 合成 し、 これ を 基 質 と し て 本反 応を 行っ たと ころ 目的 とす るア リル ア ミン 誘導 体を 高収 率で 得る こ とができた。

  さ ら に 前 述 の 反 応 を 一 酸 化 炭 素 雰 囲 気下 行う こと によ り窒 素と 一酸 化炭 素の2種 類 め 気 体 が 固定 され たア リル アミ ドの 合成 を試 みた 。 基質 とし てア リル ハラ イド を 用い、種々条件を検討した。その結果、Ti―N錯体のトルエン溶液にPd(OAc)2、P(o‑tolyl)3丶 塩 基 と し てK2C03、 添 加 物 と し てHMPAを 加 え 室 温 で1気 圧 の 一 酸 化 炭 素 雰 囲 気 下 一 晩 攪 拌 し 、最 後に 加水 分解 を行 うこ とに より 、ア リ ルア ミド を良 好な 収率 で得 る こ と が で き た 。 ま た 、 本 反 応 で は 副 生 成物 とし て基 質の2量体 の混 合物 が生 成し て し ま う が 、Ti‑N錯 体 の 調 製 時 に お け る りチ ウム 、TMSCIの 量を 検討 する こと によ り 解 決で きた 。次 に 本反 応の 反応 機構 を解 明す べく 、2種 類の アリ ルハライドの異性体 を 用い 、本 反応 を 行っ た。 その 結果 、1種類 の アリ ルア ミド のみ が得られ、本反応が 兀‐アリ ルパラジウム中間体を経由して進行したことが示された 。さらに種々の基質を 用 い て 一 酸 化炭 素雰 囲気 下Ti‑N錯 体と の反 応を 検討 し たと ころ 、ア リル アミ ドが そ れぞれ良好な収率で得られることがわかった。

  以上 のよ うに 本 論文 にお いて 、著 者は1) ア リー ルハ ライ ドヘ の一酸化炭素及び窒 素 の段 階的 固定 化 によ るア リー ルア ミド の合 成、2)ア リル 化合 物への窒素の固定化 に よる アリ ルア ミ ンの 合成 、3)ア リル 化合 物 への 一酸 化炭 素及 び窒素の段階的固定 化によるアリルアミドの合成、について記述を行っている。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

森 高橋 佐藤 小笠原

学 位 論 文 題 名

美和子     保 美洋 正道

分子状窒素の有機合成への 利用

一トランスメタル化を利用した有機化合物への窒素雨の導入―

上 田 和 孝君 の 上 記 題名 の 博 士論 文 が提 出され2月6日論文 審査会が 開かれ た.その 提 出 論 文の 内 容 は 以下 の 通 りで あ る .

  大 気 中の 約80% を 占 める 窒 素 は、 そ の 高い 結 合 エネ ル ギ ー(226 kcal/mol)が示 す よ う に 従 来 不活 性 な 気 体と し て 存在 し 、 化学 的 変 換は 不 可 能と さ れ てき た 。20 世 紀 初 頭 に開 発 さ れた ハ ー バー ・ ポッ シュ法 は人類の 生存を可 能とし た窒素固 定化 法 で あ る 。し か し この 方 法 は高 温 ・高 圧とい う条件を 必要とし ている 。一方、 近年 の 有 機 金 属化学の 発達はめ ざまし く、1気圧・ 室温とい う穏和な 条件下 、遷移金 属一 窒 素 錯 体 の合 成 が 可能 と な って い る。 しかし 、それら は専ら錯 体の合 成に主眼 が置 か れてお り、有機 合成へ の利用、 っまり 有機化合 物への窒 素固定 には至っていない。

著 者 の 在 籍す る 研 究室 で は1気 圧 の 窒素雰囲 気下、 チタン化 合物、 リチウム 、TMSC1 よ ルチタ ン.窒素 錯体fi‑N錯 体)を合 成し、 この錯体 を用い て様々なケトカルボニル 基 を 持 つ 有機 化 合 物へ の 窒 素導 入 反応 に成功 している 。また、 パラジ ウム触媒 を用   い てlIN錯 体と の ト ラン ス メ タル 化 を 利用 し た 無置 換 ア ニ リン の合成に 成功し 報 告 してい る。

    今回、著 者はバ ラジウム 触媒存在 下、l‐N錯体をアリール化合物及びア1」ル化合 物 と 一 酸 化炭 素 雰 囲気 下 で 反応 さ せ るこ と に より 、 窒 素と 一 酸 化炭素の2種類 の気

` 体が固 定された アリー ルアミド 及びア リルアミ ドの合成 に成功 した。さらに、TiIN   錯体をパ ラジウム 触媒存 在下アリ ル化合 物と反応 させる ことによルアリルアミンの   合成にも 成功した 。

    まず始め にアリ ール化合 物への窒 素と一 酸化炭素 の段階 的固定化反応を試みた。

  反応に用 いるT卜N錯体は著 者の研究 室で既 に報告し ている 方法に従い、チタン化合   物 のTHF溶 液に ル チ ウム (10当 量 ) 、TMSCl(10当量 ) を 加え 、室温 で1気 圧の窒   素気流下 、一晩攪 拌する ことによ り調製した。このTi‐N錯体と基質のアリールブロ

798 ‑

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ミ ド の ト ル エ ン 溶 液 に

Pd2(dba)3

錯 体 、 配 位 子 と し て

DPPF

、 及 び 塩 基 と し て

NaO‑t‑

Bu

を 加 え 、

1

気 圧 の 一 酸 化 炭 素 雰 囲 気 下 、

90

C

で 一 晩 反 応 さ せ た 。 そ の 結 果 、 低

  

収 率 な が ら ア リ ー ル ア ミ ド が 得 ら れ た 。 そ こ で ア ミ ド の 収 率 の 向 上 を 目 指 し 、 ま ず 溶 媒 を 検 討 し た と こ ろ

DMF

や プ 口 ピ オ 二 卜 ル を 用 い て 反 応 を 行 う と ア ミ ド の 収 率 が 向 上 し た 。

DMF

の 系 に お い て は

DMF

と 反 応 し た と 考 え ら れ る ホ ル ミ ル ア ミ ド が 得 ら れ る こ と が わ か っ た 。 次 に 、 溶 媒 と し て

DMF

を 用 い て 塩 基 の 検 討 を 行 っ た と こ ろ 塩 基 を 添 加 し な く と も 、 反 応 は ス ム ー ズ に 進 行 し 、 ー 酸 化 炭 素 及 び 窒 素 の 導 入 さ れ た 化 合 物 は 合 わ せ て

87

% の 収 率 で 得 ら れ た 。 本 結 果 は 、 こ の 反 応 が ト ラ ン ス 、 メ タ ル 化 で 進 行 し て い る こ と を 示 し て い る 。 様 々 な 置 換 基 を 持 っ た ア リ ー ル ハ ラ イ ド を 基 質 と し 、 溶 媒 に

DMF

を 用 い て こ の 反 応 を 行 っ た と こ ろ い ず れ も 良 好 な 収 率 で 窒 素 及 び 一 酸 化 炭 素 の 導 入 さ れ た ア リ ー ル ア ミ ド が 得 ら れ る こ と が 分 か っ た 。 次 に 分 子 内 に カ ル ポ ニ ル 基 を 持 つ ア リ ー ル ブ 口 ミ ド を 用 い て 本 反 応 を 行 う な ら ば へ テ 口 環 の 構 築 が 可 能 に な る と 考 え 、 分 子 内 に カ ル ボ ニ ル 基 を 持 つ 基 質 を 用 い て 本 反 応 を行 ったところキナゾリン環やイ ソキノリン環の構築に成功 した。

  

次 に 著 者 は ア リ ル 化 合 物 と バ ラ ジ ウ ム と の 反 応 に よ っ て 得 ら れ る 兀 ‐ ア リ ル パ ラ ジ ウ ム 錯 体 に 注 目 し た 。 す な わ ち 、 兀 一 ア リ ル パ ラ ジ ウ ム 錯 体 と

l

l

吋 錯 体 との トラ ンス メ タ ル 化 が 進 行 す る な ら ば ア リ ル ア ミ ン が 得 ら れ る は ず で あ る 。 種 々 条 件 を 検 討 し た 結 果 、

Ti

N

錯 体 の ト ル エ ン 溶 液 に

Pd

OAc

2

、 二 座 配 位 子

BINAP

、 添 加 物 と し て

HMPA

を 基 質 の ア リ ル ハ ラ イ ド と 共 に 加 え 室 温 で

1

気 圧 の 一 酸 化 炭 素 雰 囲 気 下 一 晩 攪 拌 す る こ と に よ り 、 窒 素 が 導 入 さ れ た ア リ ル ア ミ ン 誘 導 体 が 比 較 的 良 い 収 率 で 得 られ ることがわかった。

  

さ ら に 前 述 の 反 応 を 一 酸 化 炭 素 雰 囲 気 下 行 う こ と に よ り 窒 素 と 一 酸 化 炭 素 の

2

種 類 の 気 体 が 固 定 さ れ た ア リ ル ア ミ ド の 合 成 を 試 み た 。 基 質 と し て ア ル ル ハ ラ イ ド を 用い、種々条件を検討した。その結果、Ti,N錯体のトルエン溶液にPd(OAc)2、P(D.tolyl)3、 塩 缶 と し て

K2C03

、 添 加 物 と し て

HMP A

を 加 え 室 温 で

1

気 圧 の 一 酸 化 炭 素 雰 囲 気 下 一 晩 攪 拌 し 、 最 後 に 加 水 分 解 を 行 う こ と に よ り 、 ア リ ル ア ミ ド を 良 好 な 収 率 で 得 る こと ができた。

  

以 上 の よ う に 本 論 文 に お い て 、 著 者 は

1

) ア リ ー ル ハ ラ イ ド ヘ の 一 酸 化 炭 素 及 び 窒 素 の 段 階 的 固 定 化 に よ る ア リ ー ル ア ミ ド の 合 成 、

2

) ア

I

」 ・ ル 化 合 物 へ の 窒 素 の 固 定 化 に よ る ア ル ル ア ミ ン の 合 成 、

3

) ア リ ル 化 合 物 へ の 一 酸 化 炭 素 及 び 窒 素 の 段 階 的固 定化によるアリルアミドの合 成、について記述を行って いる。

審 査 委 員 会 は こ れ ら の 結 果 は 上 田 和 孝 君 の 博 士 論 文 が 博 士 の 学 位 を 得 る に 十 分 な 内 容 で あ る と 判 断 し た .

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