博 士 ( 工 学 ) 渡 邉 宣 史
学位論 文題名
Structural Study onMo −V ー O ― Based Metal Oxide Catalysts Active for Propane Ammoxidation
(プロパンアンモ酸化反応用Mo −V −O 系複合酸化物触媒の構造的研究)
学位論文内容の要旨
製 造 プロ セ ス の 簡 略化 お よ び コ ス ト削 減 と い っ た理 由 か ら 、 豊富 で 安 価な 天然ガ ス中の アル カン を 原 料 と し た 含 酸 素 化 合 物 の 製 造 プ ロ セ ス が 求 め ら れ て い るが 、 実 用 化 に至 っ た 例 は 、VPO触 媒 を 用 い た ブ タン 酸 化 法 無 水マ レ イ ン 酸 合成 プ ロ セ ス のみ と な っ て い る。 こ のプロ セスに 追随す るも の はMo一V‑Te‑Nb‑0触 媒 を 用 い た プ ロ パ ン ア ン モ 酸 化 法 ア ク リ ロ ニ ト リ ル(AN)合 成 プ ロ セ ス で あ る 。 こ の 触媒 の 開 発 以 来、 多 く の 研 究が そ の 性 能 に注 目 し 、 更 な る性 能 の向上 を目指 してい る。
し か し 、 そ の触 媒 作 用 が どの よ う に し て発 現 す る の かな ど 、 本 質 的 な疑 問 に迫っ た系統 的研究 例は 少 な い 。
以 上 の よ う な 背 景 を 鑑 み 、 本 研 究 で は 水 熱 合 成 法 に よ る 単 一 相Mo‑V‑O系 複 合 酸 化 物触 媒 の 調 製 を 図 る と とも に 、 構 成 元素 の 役 割 、 触媒 の 精 密 構造 に関す る研 究から 、Mo一・V‑O系複合 酸化物 触 媒 の プ ロ パ ン ア ン モ 酸 化 反 応 に お け る 構 造 的 活 性 発 現 要 因 を 明 ら か に する こ と を 目 的と し た 。 第1章 「Generallntroduction」 では 、 こ れ ま での プ ロ パ ン ア ンモ 酸 化 反 応 プロ セ ス に お ける 現 状 を 俯 瞰 し 、 こ の 研 究 分 野 に お け るMo‑V‑O系 複 合 酸 化 物 触 媒 の 重 要 性 を 位置 づ け る と と もに 、 本 研 究 の 目 的 と 意 義 を 明 ら か に し た 。
第2章 「Comparison of the Catalyti.c Performance of Single Orthorhombic Phase Mo‑V−O‑
Based Metal Oxide CatalysbinPmpaneAmmo妬 出mon」 で は 、 同 一 の 斜 方 晶 構 造 を も ち 、 異 なる 構成元 素から なる5つの 触媒(Mol・V一 〇、Mol.丶LTe―0、M0一V一1b・Nb一0、Mp・vー‐Sb−O、 M0一.v−Sb一.Nb一0) を用 いてプ ロパン アンモ酸化反応を行い、これらの触媒性能、速度論的分析結果 の 比較 か ら 、 本 反 応に お け る 構 成元 素 の 役 割 を明 ら か に し た。5つ の 触 媒全 て が 同 等 の プロ パ ン 酸 化 能 を 示 し た こ と か ら 、 こ れ ら の 触 媒 に 共 通 す る 構 成 元 素 で あ るMoとVが 律 遠 段 階 で あ る プ ロ パ ン か ら プ ロ ピ レ ン ヘ の 酸 化 脱 水 素 に か か わ っ て お り 、第3成 分 で あるTcあ る いはSbは 、プ ロ パ ン か ら 形 成 す る プ ロ ピ レ ンの ア ン モ 酸 化反 応 を 促 進 し てい る こ と を 明ら か に し た 。ま た 、Te系触 媒 で はNbの 導 入 に よ っ て 、 形 成 す るANの 過 酸 化 が 抑 制 さ れ る こ と を 明 ら か に し た 。Sb系 触 媒 で は こ の よ う な 効 果 は 現 れ な か っ た 。M宀Sbむ 北 トIO触 媒 で は 、Nbの 導 入 に よ っ てMoが 一 部 置 換 さ れ る の に 対 し て 、M0− ヽqいNblO触 媒 で は 、Vが 一 部 置 換 さ れ て い る こ と が示 唆 さ れ 、 還 元 さ れ や す いVが 構 造 的 に 希 釈 さ れ る た めAN過 酸 化 の 機 会 が 減 少 し 、 高 いAN収 率 が 得 ら れ る と推 測した 。
第3章 「Crystal StructureICatmyuCActivityRelan弧shipof血eSingleor也orhombicPh恥e MpV二O・B譌edMetalO虹d岱 」 で は 、5つ の 複 合 酸 化 物 のXRDパ タ ー ン のmetveld解 析 に よ っ て 結 晶 構造 の 精 密 化 を行 う と と も に、 第2章 で 述べ た 構 成 元 素の 役 割 に 基 づ ぃて 、 プ ロ パ ンア ンモ 酸 化 反 応 に お け る 構 造 的 活 性 発 現 要 因 に っ い て 検 討 し た 。M007五 角 両 錘 とM006か ら な る5員 環 状 構 造 ユ ニ ッ ト (PCs) 同 士 がV06で 連 結 して い る 特 異 的 縮合 形 態 が5つの 触 媒 に 共 通し て 見 ら ―55―
れ た。 構成 元 素と してMoとVを 含む(Mo,V)5 014触媒は 本反応にほとんど活性を示さ なぃこと か ら、斜方晶構造で見られた 特異的縮合形態がプロパン活 性化の基点と考えた。PCsを 連結する V06は配 位歪みが著しいことから、歪曲/`面体構造と四角錘構造の中間状態にあると考えられる。
こ のよ うな 配 位状 態は 、M006と頂 点共 有で 隣り 合ってい る場合、Moへの電荷移動を 介してV4+
とV5+間 の変化が容易になると考えられる。この過程で酸素が活性化され、プロパンからプロピレ ンヘの酸 化脱水素が開始されると推 定した。形成したプロピレンは近接する6員環状トンネル内の 第3元素(TeあるいはSb)によ ってANへと転換される。プ ロピレンが脱離あるいは過酸 化される ことなく 、ANへと効率よく転換され るためには、これらの触媒機 能を備えた構成元素が近接する 位置に存 在することが重要であると 考えた。
第 4章 「Forma廿onMechanjsmoftheSmgleorthorhombicPh鉞eMOVOandMov・Sb―O O蚶d飴」では、斜方晶構造Mo―V一〇系複合酸化物の形成機構について調ぺた。MOI,v・―Sb(4め)―O 触媒は、Teの飛散が課 題であるMoーヽ′−Te4晒―0触媒の代替として注目されている。しかし、Sb を含む触媒は擬六方晶 構造の形成が著しく、単一斜方晶触媒の調製が困難であった。本研究では、
擬六方晶構造の前駆体 が水熱合成前の原料溶液の段階ですでに形成、沈殿することを明らかにし、
原料溶液のろ別を適用 した簡便な調製法を新たに 提案した。また、Mo―V混合溶液のラマンスペク トルと5員環状構造ユ ニットを構造内にもつ結晶性 化合物のスペクトルとの比較から、5員環状構 造ユニットが原料混合 溶液の段階ですでに形成していることを明らかにした。この構造ユニットが 温和な水熱条件下で安 定に存在し、V06を介して縮 合することで斜方晶構造が形成すると考えた。
第5章 「Crystal Struc恤noftlIe IHg恤alPh恥eMol丶しOOx岨eCataJyst曲ditsCatalyti.c Perfbm孤cemPr叩北eAnImo虹da60n」 で は、 触媒 構造 の制 御 を視 野に 入れ、 構造ユニットの結 合環境を変え て触媒調製を試みた。その結果、斜方晶構造と同様の構造ユニットをもちながら、ユ ニットの縮合する結晶学的方向性が異なる新規構造触媒(三方晶構造MOI.v−D触媒)を見出した。
斜 方晶 構造 では 、PCsを 中心 と したV06の連 結が 、2つの 結晶 学的 等 価サイ トによって3方向に 向いているの に対して、三方晶構造では、2つの等価サイトによって4方向に向いている。熱的安 定性において は三方晶構造より斜方晶構造の方が高いが、本反応に対する活性は同程度であること を 明ら かに した 。 以上 の結果からも両構造に共 通する特異的縮合形態、っま り、PCs同士がV06 によって連結 している縮合形態がプロパン活性化の基点であることが支持された。加えて、構造ユ ニ ッ ト の 縮 合 環 境 を 変 え る こ と で 触 媒 構 造 を 制 御 で き る 可 能 性 を 示 し た 。
第6章 「Summary」では、本論文を総括した 。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
Structural Study onMo ― V ― 0 ―Based Metal Oxide Catalysts Active for Propane Ammoxidation
(プロパンアンモ酸化反応用Mo ―V ―O 系複合酸化物触媒の構造的研究)
ア ル カ ンを 原 料 と し た 含酸 素 ( 窒素 )化合 物の触 媒酸化 的製 造プロ セスが 強く求 めら れてい るが、
実 用 化 に 至 っ た 例 はVPO触 媒 を 用 い た 気 相 ブ タ ン 酸 化 法 無 水 マ レ イ ン 酸 合 成 プ ロ セ ス だ け で あ る 。 こ の プ ロ セ ス に 追 随 す る も の はMo ‑レ‑ Te ‑ Nb一 〇触 媒 を 用 い たプ ロ パ ン ア ン モ酸 化 法 ア クリロ ニトリ ル(AN)合 成プロ セスで ある 。
本 論 文 は 、 水 熱 合 成 法 に よ る 単一 相 新 規Mo ‑レ − 〇系 複 合 酸 化 物 触媒 の 調 製 を 図る と と も に 、 構 造 形 成 機 構 、 構 成 元 素 の 役 割 、 触 媒 の 精 密 構 造 に 関 す る 研 究 を 進 め 、Mo ‑y‑ Te(Sめ‑Nbー 〇 系複 合 酸 化 物 触媒 の プ ロ パ ンア ン モ 酸 化 反応 に 対 す る 活 性発 現 要 因 を 明ら か に するこ とを目 的に し ている 。
第1章 「 General Introduction」 では、 これま でのプ ロパ ンアン モ酸化 反応プ ロセ スにお ける現 状 を 俯 瞰 し 、 こ の 研 究 分 野 に お け るMo ‑y― 〇 系 複 合 酸 化 物触 媒 の 重 要 性を 位 置 づ け ると と も に 、 本研究 の目的 と意義 を明ら かに してい る。
第2章「Comparison of the Catalytic PerformanceofSingleor出0rhombicPhase´ば,D―レ―〇−Based Metむ0xjdeCataユysts泣nop孤eAmmo虹dation」 で は 、 同一 の 斜 方 晶 構造 を も ち 、 異 なる 構 成 元 素 か ら な る5つ の 触 媒 (MDー レ ― 〇、MD− レ一 丁e− 〇 、MD−y― 丁P―A陽 ― 〇、MDー レ―Sみ ― 〇 、 MD― レ ―Sみ ―m― 〇 ) を 用 い て プ ロ パ ン ア ン モ 酸 化 反 応 を 行 い 、 こ れ ら の 触 媒 性 能、 速 度 論 的 分 析 結 果 の 比 較 か ら 、 本 反 応 に お け る 構 成 元 素 の 役割 を 明 ら か にし て い る 。5つ の 触 媒 全 てが 同 等 の プ ロ パ ン 酸 化 能 を 示 し た こ と か ら 、 こ れ ら の 触 媒 に 共 通 す る 構 成 元 素 であ るMDと レが 律 速 段 階 で あ る プ ロ パ ン か ら プ ロ ピ レ ン ヘ の 酸 化 脱 水 素 に 関 わ り 、 第3成 分 で ある 丁 ゼ あ る いはSみ は 、 プ ロ ピ レ ン の ア ン モ 酸 化 反 応 を促 進 し て い る こと を 明 ら か にし て い る 。 また 、 丁 ビ 系 触媒 で はNろ の 導 入 に よ っ て 、 形 成 す るANの 過 酸 化 が 抑 制 さ れ る こ と を 見 出 し 、 八 陽 の 導 入 に よ っ て MD―y―Sみ −m― 〇 触 媒 で はMDの 一 部 が 置 換 さ れ る の に 対 し て 、A釦 ―y― 丁P−Nみ ― 〇 触 媒 で は 、 レ が 一 部 置 換 さ れ 、 還 元 さ れ や す い レ が 構 造 的 に 希 釈 さ れ る た めAN過 酸 化 の 機 会が 減 少 し、高 いAN収率 が得 られる と推測 してい る。
第3章 「CづstalS弧cture.Catal皿cAcmiぢRela.tionshi二pof也eSingleO油orhombicPhaseAんー レ ― 〇 −BasedMetaloxides」 で は 、5つ の 複 合 酸 化 物 のXRDパ タ ー ン の 触etveld解 析 に よ って 結 晶 構 造 の 精密 化 を 行 う とと も に 、 第2章 で 述 べ た 構 成元 素 の 役 割 に基 づ い て 、 プロ パ ン ア ン モ酸 化
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渉 彦
夫 郎
弥
一
正 隆
潤 竜
田 井
田
口
上 荒
増 林
竹
授 授
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教
教
教
教
教
助
査
査
査
査
査
主
副
副
副
副
反 応 に おけ る 構 造 的活 性発 現要因 を検討 してい る。M007五 角両錘 とMo〇6か らなる5員環状 構 造ユ ニット(PCs)同士 がy〇6で 連結し ている 特異的縮 合形態 が5つの 触媒に共通し、この特異的 縮合 形態が プロパ ン活性化の基点であると結論している。PCsを連結するレ〇6は配位歪みが著し いこ とから 、歪曲 八面体構造と四角錘構造の中間状態にあると考えられ、Moへの電荷移動を介し て伊 ゛とザ ゛間の 変化が容易になるとしている。この過程で酸素分子が活性化され、プロパンか らプロピレンヘの酸化脱水素を開始するとし、生成したプロピレンは近接する6員環状トンネル内 の 第3元 素(Teあ る い はSめ に よっ てANへ と 転 換 され る機構 を提唱し 、プロ ピレン が脱離 ある いは 過酸化 される ことなく、ANへと効率よく転換されるためには、これらの触媒機能を備えた構 成元素が近接する位置に存在することが重要であると結論している。
第4章「Formation Mechanism of the Single OrthorhonlbicPhaseMD−レ―〇andMD−y−Sみ−〇 Oxides」 では、 斜方晶 構造A釦 ―y−〇 系複合 酸化物 の形成機 構につ いて調べている。MD−レ−
S以―A仂ー〇 触媒の 調製では、擬六方晶構造の前駆体が水熱合成前の原料溶液の段階ですでに形 成、沈殿することを明らかにし、原料溶液のろ別を適用した簡便な調製法を新たに提案している。
また 、MD−y混合溶液 のラマ ンスベ クトル と5員環 状構造 ユニッ トを構造内にもつ結晶性化合物 のスペクトルとの比較から、5員環状構造ユニットが原料混合溶液の段階ですでに形成しているこ とを明らかにしている。この構造ユニットが温和な水熟条件下で安定に存在し、レ〇6を介して縮合 することで斜方晶構造が形成すると考察している。
第5章「Cryst甜StnユctureofmeTdgonalPhaSeMo.v‐00ぬdeCatalystanditsCatむydCPerfor一 mance泣hop孤eA伽noxida.tion」では、構造ユニットの縮合環境を変えて触媒調製を試み、斜方 晶構造と同様の構造ユニットをもちながら、ユニットの縮合する結晶学的方向性が具なる新規構造 触媒 (三方 晶構造Aわーレ―〇触媒)を見出している。斜方晶構造では、PCsを中心としたy〇6の 連結 が、2つ の結晶 学的等 価サイ トによ って3方向に向いているのに対して、三方晶構造では、2 つの等価サイトによって4方向に向いていること、熱的安定性においては三方晶構造より斜方晶構 造の方が高いが、触媒反応に対する活性は同程度であることを明らかにした。以上の結果からも両 構造 に共通 するPCs同 士がy〇6によっ て連結 している縮合形態がプロパン活性化の基点であるこ とが支持されたとしている。
第6章「Sun皿q」では、本研究で得られた結果を総括している。
こ れを要す るに、 著者は 水熱合 成法を 駆使し、新規な結晶性MD−y―〇系複合酸化物触媒を調 製し、構造解析に成功するとともに、このものの構造形成機構を解明し、また構造に起因する特性 と触媒性能からプロパンアンモ選択酸化反応の触媒構造依存性や構成元素の役割を明確にし、アル カン選択酸化用複合酸化物触媒の設計指針を与えたものであり、工学上、工業上貢献するところ大 なるものがある。よって著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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