D-アミノ酸を利用した
旨み増強日本酒の製造方法
関西大学 化学生命工学部
生命・生物工学科
物理化学的性質(融点、沸点、溶解度 など):同じ
生理学的性質 : 異なる
D-アミノ酸とL-アミノ酸
D-アミノ酸研究の展開 (1)
~微生物から動物へ~
1940,1950年代
ピリドキサール,金属,アルブミンの混合物がアミノ酸の
ラセミ化を触媒することが発見される
1960年代~
さまざまな微生物由来のアミノ酸ラセマーゼの研究が進展
アラニンラセマーゼ,アルギニンラセマーゼ,
オルニチンラセマーゼ,グルタミン酸ラセマーゼ,
セリンラセマーゼ,低基質特異性アミノ酸ラセマーゼ 他
1990年代後半~ 動物由来のアミノ酸ラセマーゼの研究へ展開
カイコのセリンラセマーゼ(動物由来の最初の例)
ヒト,マウス,アカガイ,エビ 他
脳内D-セリンの生理的機能
脳内D-セリンと病態
精神神経疾患治療薬の開発
医学・薬学領域での
D-アミノ酸の研究は
著しい発展
B. subtilis chungkookjang B. licheniformis ATCC9945 B. subtilis natto IFO 3336
ポリ
γ -グルタミン酸
食品分野:増粘剤・安定剤
1970年代以降
マメ科植物(エンドウ豆,Pisum sativum)に植物アミノ酸
ラセマーゼが存在し,L-アミノ酸からD-アミノ酸が生成する
ことが発見される
γ-L-Glu-D-Ala: エンドウ豆,レンズ豆
D-Ala-Gly, D-Ala-D-Ala: イネ
1-[(N-γ-L-glutamyl)amino]-D-Pro: 亜麻の種子
L-Val-γ-L-Glu-D-Arg-Gly: ヤクヨウニンジン
などの結合態D-アミノ酸が脱アセチル化,ペプチド結合の切断
によって遊離D-アミノ酸を生成
同芽生え中にD-アミノ酸アミノトランスフェラーゼが存在し,種々の
D-アミノ酸のアミノ基がピルビン酸または2-オキソグルタル酸に転移され,
D-Ala, D-Gluが生成することが確認される
外来D-アミノ酸の植物への取り込み
共生根瘤菌 Rhizobium sp., Bradyrhizobium sp.
D-アミノ酸研究の展開 (2)
~植物から食品へ~
アルファルファのアラニンラセマーゼ(植物ラセマーゼの最初の例)
イネのセリンラセマーゼの存在
a. 推定立体構造
b. 活性中心の構造
PL
P
Mg
2+
by Swiss-PDB viewer
Trp312
Trp333
Trp257
Trp136
Mg
2+
PLP
Mg
2+
Trp257
PLP
Rice SerR (yellow)
Reference protein: S. pombe-SerR (1V71) (yellow-green)
植物中のD-アミノ酸
D-アミノ酸研究の展開 (3)
~食品~
ドイツ・ベルギー産ビール: D-Ala, D-Pro, D-Asp, D-Glu, D-Tyrが含有
T. Erbe and H. Brückner,
J. Chromatography A
, 881, 81-91 (2000).
オレンジジュース中のD-アミノ酸: オレンジジュースの品質や製品の均一性の確認に応用
C. Simŏ, C. Barbas, and Cifuentes, A., J
. Agric. Food Chem.,
50, 5288-5293 (2002).
その他の研究例は,ほとんどない
当研究室では,様々な食品(野菜・果物・日本酒・ワイン・ビール・食酢など)中の
D,L-アミノ酸の定量的解析を先駆的に行ってきた。
バルサミコ酢:ぶどうから作られるイタリアの伝統的な酢,木の樽の中で熟成される
T. Erbe and H. Brückner,
Z Lebensm Unters Forsch A
207, 400–409 (1998).
医学・薬学領域では著しくD-アミノ酸の研究が発展する一方で,
農学・食品領域では,未だ未解明の課題が残されている。
~平成20年度~24年度
(独)農業・食品産業
技術創業研究機構
生物系特定産業技術
研究支援センター
「イノベーション創出
基礎的研究推進事業」~
D-アミノ酸研究の
展開 (5)
D-アミノ酸の味
型
側鎖の特性
アミノ酸
味
味に関する特性
Gly
D-
Ala
D-
Ser
D-
Thr
D-
Cys
D-
Met
D-
Val
D-
Leu
D-
Ile
D-
Phe
D-
Trp
D-
Glu
D-
Asp
D-
Gln
D-
Asn
D-
Lys
D-
His
D-
Arg
D-
Pro
新水性,中性
サイズ(小)
疎水性
サイズ(中)
疎水性
サイズ(大)
酸性
アミド
塩基性
イミノ酸
甘味(高濃度で弱い旨味)
甘味
甘味,辛味
甘味,非常に弱い辛味
-
甘味,苦味
甘味,弱い苦味
甘味,弱い苦味
-
甘味,弱い苦味
甘味,非常に弱い苦味
辛味
辛味
甘味,非常に弱い辛味
甘味,非常に弱い辛味
-
甘味,非常に弱い苦味
苦味,甘味
苦味
D,L共に元来甘味
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
Ⅶ
D:
甘味
,辛味
L: 主に
苦味
D:
甘味
,辛味
L: 主に
苦味
D:
甘味
,辛味
L: 主に
苦味
D,L共に元来辛味
D: 苦味
食品中のD-アミノ酸の機能
食品の機能性
第一次機能:栄養機能、カロリー、タンパク質、脂肋、糖質、
ビタミン等必要な栄養素を補給して生命を維持する機能
第二次機能:色、味、香り、歯ごたえ、舌触りなど食べた時に
おいしさを感じる機能
第三次機能:健康性機能・生体調節機能、生体防御、
体調リズムの調節、老化制御、疾患の防止、疾病の回復調節など
生体を調節する機能
例.
D-
アスパラギン酸と美肌効果
色沢 濁り ・あり ・なし 色 無色 黄色 茶褐色 0 3 10 香り 高低 低い 普通 高い 2 5 10 酸臭 なし 弱い 強い ※ 強い→酸臭はあるが飲酒可能なレベル 弱い→酸臭がありその酒の特徴となっているレベル 0 3 8 炭臭 なし 弱い 強い ※ 強い→清酒の香りより炭臭が高い 弱い→炭臭が混ざっていると感じたもの 炭臭:鉛筆の芯の臭い 0 2 6 甘臭 なし 弱い 強い ※ 強い→甘臭により香りがだれているもの 弱い→甘臭を感じたもの 甘臭:蜂蜜様の香り 0 3 8 特性 ・新酒香 ・吟醸香 ・熟成香 ・個性的 味 濃淡 うすい 淡麗 普通 旨味ある 濃醇 ※ なめらか・キレ良い・甘い は濃淡に影響している特徴を表し たもので、数値化には入らない 0 1 2 4 8 10 苦味うく 苦味 弱い 普通 強い ※ 苦味が強くそのほかの味が弱いというバランス的な所感である ため、強いと同じ値とした 0 2 5 8 10 酸味うく 酸味 弱い 普通 強い ※ 酸味が強くそのほかの味が弱いというバランス的な所感である ため、強いと同じ値とした 0 3 5 8 10 旨味 弱い 普通 強い だれる 0 1 5 7 10 甘味 弱い 普通 強い だれる 0 1 5 7 10 総合 熟度 若い 普通 熟成