論文内容要旨
IRF6 variants affect nasolabial morphology in East Asian populations
(IRF6 遺伝子多型は東アジア健常集団の口唇鼻形態と関連する)THE ANGLE ORTHODONTIST(投稿中)
歯科矯正学 冨田 大介
内容要旨
【目的】人間の顔の形態学上の遺伝的変異の影響についての知見は、主に 先天性頭蓋顎顔面異常の研究によるものである。これまでに口唇裂に関与 する遺伝子のいくつかが健常人の顔面形態と関与することが報告されて いる。これは疾患のリスクとなるアリルが正常な変化の範囲内で健常人の 表現形を調節しうることを示唆している。近年、顔面形態の軟組織評価と インターフェロン制御因子 6(IRF6)遺伝子多型との関連が報告された。
しかし、IRF6 遺伝子多型とレントゲンを用いた健常日本人、韓国人にお ける口唇鼻形態との関連について詳細な検討はなされていない。本研究で は健常日本人、韓国人における側面セファロによる口唇鼻形態との関連を 検証した。
【資料および方法】対象者は健常日本人 215 人、健常韓国人 226 人である。
IRF6 遺伝子の4つの SNP(Single Nucleotide Polymorphism) rs17389541、
rs642961、rs2013162、rs2235371 についてタックマンのジェノタイピン グアッセイによりタイピングした。計測は画像解析ソフト Image J を用い て1名の観察者により行った。計測項目は Subalare、Subnasale、Labrale superius と Nasion-Point A 平面との距離(Sbal-NA, Sn-NA, LS-NA)と し、これらを従属変数、sex、population、顔面サイズを表す幾何平均 (GM)、
SNP を説明変数として重回帰分析を行った。
【結果及び考察】rs2013162 および rs2235371 は、Sbal-NA および Sn-NA に 統 計 学 的 に 有 意 な 関 連 を 認 め た 。 Sbal-NA お よ び Ls-NA の 比 (Sbal-NA/Ls-NA)とこれら2つの SNPs に関連がみられた。性別とこれら SNPs に関連は認められなかった。これまでに IRF6 遺伝子が 3D キャプチ ャーによって評価された健常人の軟組織口唇鼻形態に関与することが報 告されている。しかし、IRF6 遺伝子とレントゲンを用いて評価した顔面 形態との関連の報告ははまだない。本研究では側面セファロを用いて硬軟
組織両方の計測を行うことで矢状面形態と IRF6 遺伝子との関連を解析し た。重回帰分析の結果、rs2013162 及び rs2235371 と口唇鼻形態との関連 が認められた。また、硬組織形態の関連は認められなかったことより IRF6 遺伝子の顔面形態に与える影響は、軟組織に限局することが示唆された。
これは疾患のリスクとなるアリルが正常な変化の範囲内で健常人の表現 形を調節しうることを示唆しており、これを Subphenotype という。
Subphenotype の解析を行うことにより口唇裂の病因の解明に寄与する可 能性がある。
【結論】IRF6 遺伝子多型は口唇鼻形態と関連する。