2・1 原核細胞 iii
最近の目ざましい生命科学の発展にともない,分子細胞生物学の知識は医学,薬学,生物学,
農学,水産学など,生物を研究対象とする多くの分野の基礎知識として必要不可欠なものになっ てきた.しかも,これらの分野の知識は日増しに増加し,ますます膨大なものになりつつある.
このような状況の中で,将来,生命科学関連の仕事に携わろうと考えている学生の方々が必要と する,分子細胞生物学の基礎知識を効率よく理解するための参考書,あるいは,教科書として本 書は書かれたものである.
分子細胞生物学の分野を中心とした情報は,すでに膨大な量の蓄積があり,それらに関する文 献や専門書の類は国内外で数多く出版され,現在でも,その数は日増しに増えつつある.このよ うな状況を目の前にすると,この分野をこれから学ぼうとする学生の方々にとってはたじろぐも のがあるかもしれない.しかしながら,知識がゼロに近い状態で生まれてから人生を歩まなけれ ばならないヒトの性質から考えて,この問題は避けては通れない.
とはいえ,次の時代の生命科学を担っていく学生の方々は,現在までに得られた知識を効率よ く理解し,やがてはその分野で活躍する研究者や知識人を目指さねばならない.そのためには,
たとえば,数多くの研究者が100年間かけて築いた知識を,数か月から数年間で理解する必要が ある.そうしなければ,急速な勢いで進んでいるこの分野の研究に追いつくことは不可能であろ う.このような点を踏まえて,本書は,最近の分子生物学全般の知識をできるだけ効率よく理解 するために,模式図を中心にして書かれている.それは,複雑で巧妙な生き物のしくみを理解す るには,図のイメージを中心にして学ぶのが最も効率的な方法と考えられるからである.
これから生命科学を本格的に学ぼうと考えている学生の方々が,分子細胞生物学の入門書で基 礎的な知識を学んだ後,本書を読んでもう一歩踏み込んだ生命現象の理解ができれば幸いである.
そして,本書を読んだ後,細胞の分子構造や,それらが果たす機能,そして,さまざまな生命現 象の制御のしくみなどについて,頭の中にイメージを構築することができれば,当初の目標は達 成できたものと考える.初版にあたり,以上のような目標を本書が達成できるかどうか不安もあ るが,ぜひ読者からの意見をお寄せいただき,これからさらにより良い教科書にすることができ ればと考えている.
2010年 1月
著者ら
は じ め に
本書の校正に目を通して頂いた石浦章一先生,井出利憲先生,岸本健雄先生,笹川 昇先生,
豊島陽子先生,道上達男先生,渡辺雄一郎先生に厚く感謝申し上げる.