超臨界エタノール中での銅フタロシアニン微粒子合成
日大生産工(院) ○渡邊慧,産総研 陶究 日大生産工 岡田昌樹・日秋俊彦 日大総研大学院 中村暁子
【緒言】
銅フタロシアニン(以下
CuPc)は,非常に鮮
明で着色力が大きく,堅牢度が高く,比較的低 コストで生産できる特長があり,理想に近い青 色顔料である 1)。最近では,CuPc は顔料とし ての利用に加え,発光素子,太陽電池等の電子 デバイスへの応用を視野に入れた検討も進め られている。既往の合成法としてワイラー法や フタロニトリル法がある。しかし,環境負荷の 高いアルキルベンゼン等の有機溶媒を多量に 使用することや,合成後に用途に応じて粉砕や 再沈による微粒化や,さらには分散剤添加によ る分散安定化などの追工程を必要とするなど のプロセス上の課題を残している2)。一方で,水や低級アルコールといった低環境 負荷溶媒は温度圧力を操作変数とすることで その溶媒特性を大幅かつ連続的に制御できる 特長を有している。特に,物質固有の気液の臨 界点を超えた状態の超臨界流体は,適切な温度 圧力条件の設定により種々の有機物に対して 高溶解性を示すことから,従来の有機溶媒の代 替溶媒として注目を集めている。さらに,各種 溶質に対しての溶解度の温度圧力操作による 制御性や種々の反応の速度の制御性が高いこ とも特長である。
本研究では,超臨界流体中で
CuPc
微粒子の 合成および分散安定化のプロセス開発を最終 目標にしている。本発表では,超臨界エタノー ル中でのフタロニトリル法によるCuPc
合成について検討を行ったので結果を報告する。
【実験】
実験には,AKICO 社製の攪拌機付き高温高 圧回分式反応器を用いた。反応器の材質は
SUS316,内容積は 480 cm
3,
最高使用温度は500
℃,最高使用圧力は50 MPa,最高攪拌回
転数は485 rpm
である。実験では,反応器内にエタノール
108 g,フ
タロニトリル5.6 g,塩化銅(I) 1.1 g
を仕込み,その後,蓋を密閉した。なお,原料の物質量比
(フタロニトリル:塩化銅(I))は 4:1
である。攪拌回転数を
250 rpm
に設定した後,加熱を開始 した。反応温度である250
℃に到達時(昇温時 間:約1
時間)を反応時間0
とし,1~20時間反 応させた。なお,250
℃において反応器内圧力は約
6.5 MPa
である。所定時間経過後,反応器を冷却することで反応を停止させた。反応器か らの回収物は孔径
1.0 µm
のメンブレンフィル タにより固液分離した。固体回収物は60
℃の 空気中で24
時間乾燥させた。その後,ベンゼ ンで洗浄し,さらに5 wt% NaOH
水溶液,50
℃ 純水,5 wt% HCl水溶液,50 ℃純水の順での 洗浄を2
回繰り返した後,再度乾燥させ精製物 とした。精製物は粉末X
線回折(XRD)により相 同定をするとともに,秤量し全量をCuPc
とし て分子量を用いて質量を物質量に換算後,次式 により収率を算出した。Synthesis of Copper Phthalocyanine Crystals in Supercritical Ethanol Kei WATANABE, Kiwamu SUE, Masaki OKADA,
Toshihiko HIAKI and Akiko KAWAI-NAKAMURA
4 100
[%]= / ×
の物質量 仕込みフタロニトリル
の物質量 収率 精製後のCuPc
【結果と考察】
図
1
に本研究で合成した精製物のXRD
パタ ーンを示す。図より,250
℃のいずれの反応時 間において合成した時の精製物も,β型CuPc
のピークと一致した。これより,精製物は全て 安定相のβ型CuPc
であり,準安定相のα型は確 認されなかった。図
2
にβ型CuPc
収率の経時変化を示す。図 より,収率は,反応時間1 h
の時は約1 %程度
であるのに対して,反応時間の経過とともに増 加し,5 hにおいて最大収率の19 %となった。
その後は,時間の経過とともに減少して
20 h
では
15 %程度となった。 CuPc
収率が低下した原因としては生成
CuPc
の分解等が考えられる。一般的に,急速に
CuPc
合成反応が進行し,また,高い過飽和度が付与された場合に平均粒 径が小さく,粒径分布の狭い準安定相のα型
CuPc
微粒子が生成すると予想される。このこ とを考慮して,今回の反応条件では,図2
から も明らかなようにCuPc
合成反応の速度が遅く,高い過飽和度も付与できていないため,安定相 のβ型
CuPc
が生成したと考えている。今後,原料であるフタロニトリルの残存率の 評価や他の生成物の有無の確認を進めるとと もに,CuPc収率や結晶相の温度,圧力,反応 時間に対する依存性についての検討に基づき,
さらなる収率向上を目指す。また,分散剤共存 下での実験も行い,合成場での分散安定化につ いても検討を進める予定である。
【結言】
超臨界エタノール中でのフタロニトリル法 による銅フタロシアニンの合成に成功した。本 手法は,従来のアルキルベンゼン等の溶媒を用 いる必要がないため,極めて低環境負荷な手法 であり今後の展開が期待される。
10 20 30 40 50
1 h 2 h
5 h
20 h
β型CuPcIntensity [-]
2θ [deg]
図
1.
精製物のXRD
パターン0 10 20
0 10 20
反応時間[h]
収率
[%]
図
2.
収率の経時変化【謝辞】
本研究は,文部科学省 学術フロンティア推 進事業補助金の支援および本学の石田晃浩氏 の協力により遂行できました。ここに感謝致し ます。
【引用文献】