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喜界島小野津方言の地名複合語アクセント資料

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Academic year: 2021

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(1)

喜界島小野津方言の地名複合語アクセント資料

上  野  善  道

1.ねらい,話者,表記

 これまで続けてきた与論島方言のアクセント資料は未発表のものがたくさん残っている が,今回は,他の発表との関係で,喜界島小野津方言のアクセントを取り上げる。主とし て前部要素が地名で,後部要素はそれと比較的自由に組み合わせて用いることのできる和 語・漢語・外来語からなる,生産性の高い複合語を対象とする。

 話者は (1) の方である。

(1) 大畑 倫(おおはた のり)氏,昭和2年小野津神宮(かみや)出身  本稿の記号は (2) と (3) で,詳しいことは拙論(2016)を参照。

(2) 音調記号(○は任意の拍。 音調の交替とその表記については後述)

 [ ○:○の直前の上昇(上げ)

   ○ ]:○の直後の下降(下げ)

   |:アクセント単位の切れ目。

(3) 主な語音記号(他は,ほぼローマ字通りの発音)

   P, T, C, K:喉頭(緊張)化音(無気音)。  N:撥音

   C, c:チ・ツとタ行拗音の破擦音子音。Cji(チ),Cu(ツ)など。

    :声門閉鎖音 [ 㷊 ]。i と声門閉鎖音のない ji の対立がある。

   ng:鼻濁音の [ ŋ ]。語頭以外,特に助詞のカ゚に頻出。喜界以外の地名は g で出る。

   I, E:a, i, u, e, o の他,緩んだ中舌化母音の I と E がある。

   

2.考察

 小野津方言は,α,β,γの3系列からなる三型アクセントである。α系列は昇り核 /[/

が単語の次末拍にある次末核(−②),β系列は同じく語末核(−①),γ系列は無核(○) で,それらに語頭が上昇する形状特徴が被さる。その上に,語形の長さや特殊拍の種類に 応じた交替があって複雑になっているが,語頭の上昇範囲のゆれも含めて,詳細は上記拙 論に譲る。

 助詞の「が」付きでは,「バス」(α)は [ba]su,ba[su]nga,「ガス」(β)は ga[su,[ga]

su[nga,「土産」(β)は [mi]ja[ngI,[mi]jangI[nga の交替を示すが,本稿では,助詞は 省いてそれぞれ [ba]su, ba[su];ga[su, [ga]su[;[mi]ja[ngI[ と略記する。3拍語「旅行」

(α)rjo[Ko]:,4拍語「製品」(β)[se]:hji[N] などの昇り核の位置は動かない。

 また,紙幅の関係で省いたが,「テレビ」(α)te[re]bi は表の「ラジオ」と,「ガラス」(β)

[ga]ra[su[ は「土産」と,「方言,組合」(β)[ho]:ge[N],[Ku]mi'a[i] は「新聞,名物」と,

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そして「チャンポン,ピーマン,ワックス」(γ)[CjaN]PoN,[Pi:]maN,[wak]Kusu は

「ラーメン」と,それぞれ同じ振る舞いをする。

 別表に掲げた資料の範囲での複合語アクセント規則の結論を述べるならば,前部要素は

「県」の場合を除いて無関係で,複合語の型はすべて後部要素によって決まる。その中の 具体的な振る舞いは,後部要素の拍数と系列と長音・撥音の有無による。

 後部が4拍語の場合,α系列はα系列(−②)に,β系列とγ系列はβ系列(−①)になる。

「銀行,民謡」(α)は,前部と無関係に -giN[Ko]:,-miN[jo]:(α)となるのに対し,「新聞」

(β)[sji]Nbu[N],「ラーメン」(γ)[ra:]meN  は,前部を問わず,ともに  -sjiNbu[N],

-ra:me[N](β)となる。「ワックス」(γ)[wak]Kusu も -wakKu[su](β)となる。こ の規則により,「学校」(α)gak[Ko]: は -gak[Ko]:,「小学校」も [sjo:]gak[Ko]: (α)と なり,それを後部要素にしてもすべて -sjo:gak[Ko]: になる。

 後部が3拍語の場合,系列を問わずα系列(−②)になるが,次末拍が長音・撥音の時 は前次末拍(−③)に核がずれる。「旅行,レモン」(α)rjo[Ko]:,re[mo]N も,「土産,

言葉」(β)[mi]ja[ngI[,[ju]mI[Ta[ も,-rjo[Ko]:,-re[mo]N,-mi[ja]ngI,-ju[mI]Ta と なる。ただし,次末拍が長音・撥音の「料理」(β)[rjo]:[ri と「文化,ジュース」(γ)[buN]

Ka,[zju:]su では,-[rjo:]ri,-[buN]Ka,-[zju:]su となる。

 後部が2拍語の場合,「バス」(α)[ba]su も「ガス」(β)ga[su も,-ba[su],-ga[su] 

でβ系列(−①)になる。語末が撥音の「パン」(α)[Pa]N も [ フ ] ランスパ [ ン ] となる。

ただし,「キー」(α)[Ki]:  など語末が長音のものは,[ マス ] ター [ キ ] ーとα系列のま ま残る。

 例外的なのが「県」(α)[ke]N で,元の型に関係なく -ke[N] になる他に,元が3拍の「秋 田,岩手,宮城,栃木,長野,富山,愛知,福井,島根,香川,愛媛」のα系列語と「群馬,

兵庫,高知」のγ系列語,および2拍の「千葉,岐阜,滋賀,三重,奈良,佐賀」のα系 列語には,各々の型を生かしたまま -keN が付く型が併用されている。ただし,4拍のγ 系列語の「鹿児島」には [ka]gosjimake[N] しかない(その語音は,一般に kagusjima で あるが,「- 県,- 大学」などの公式名称は kagosjima でないと変だという。[ o]Ki[na]: に対する[ o]Kinawake[N]も参照)。

 最後に,表からは省いたが,名字+「さん」は,名字の核の位置を保ったまま「さん」

が付く。[ta]Kaha[sji]saN(高橋),ta[na]KasaN(田中), [mo]risaN(森/盛)等。

[ 参考文献 ]

上野善道(2016)「喜界島小野津方言のアクセント体系」『音声研究』20(3):95-111.

[ 付記 ]  一方ならぬお世話になった話者の大畑倫先生に厚く御礼を申し上げる。本稿は,

2016 年度 JSPS 科学研究費 16K02619 による研究成果の一部である。

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