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厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)
様々な依存症の実態把握と回復プログラム策定・推進のための研究
(研究代表者 宮岡 等)
平成 27 年度分担研究報告書
病的ギャンブリングの実態調査と回復支援のための研究
研究代表者 宮岡 等 北里大学医学部精神科学主任教授
研究要旨
アディクションは、当事者のみならず家族を巻き込む病気であるとされ、逆に家族との関係性 が、依存行動を助長することも指摘されている。病的ギャンブリング(以下 PG)でも同様の状況 があることが予想されるが、アルコール薬物依存症ほどには実証的なデータが乏しい。昨年は、
病的ギャンブラーのギャンブル行動や家族関係に対する家族と本人の意識について明らかにする 研究を行ったが、それをさらに進めて「研究1:ギャンブル障害を持つ者の家族への支援に関す る研究―実態と援助ニーズの把握」と「研究2:病的ギャンブリングのある人の家族に対する心 理教育プログラムの開発」と「研究3:精神保健福祉センターにおけるギャンブル障害のある者 の家族への心理教育用冊子の作成」いう 3 つの研究を行った。さらに、ギャンブリングにより引 き起こされる問題のひとつに借金のトラブルがある。そこで「研究4:債務問題支援機関におけ る病的ギャンブリング問題に関する研究」を行い、家族と借金問題の関連について考察した。
研究 1 では、ギャンブル障害のある者の家族が、ギャンブルによりどんな影響を受け、そのよ うな状況の時に援助者に求めるニーズは何かを明らかにすることでギャンブル問題の渦中にある 家族に対する支援の在り方を検討した。ギャンブル問題のある人の家族 105 名に対して、無記名 式のアンケートを行い、ギャンブル問題でどのような困難を生じてきたか、それに対してどのよ うな相談機関を利用してきたか、支援の有用性や課題について調べた。その結果、家族の抱える 困難として、「浪費・借金による経済的困難」、「家庭崩壊・離婚」、「生活や人生計画の破壊」、「当 事者の嘘やコミュニケーションの問題」、「周囲の人からわかってもらえないこと・孤立無援感」、
「暴力や自傷などの問題行動」、「子どもや養育への不安」、「家族自身の精神・身体健康の問題」
があることが明らかになった。また、利用している相談機関としては、自助グループと医療機関 が主であるが、問題を知ってから相談にいくまでに 10 年以上かかった人が 4 分の1いるなど支援 開始がおくれがちであること、相談にいっても医療や保健機関では十分な対応がない場合もある ことなどの課題があることが明らかになった。最も利用され、有用性を感じているのは自助グル ープであり、そこで仲間との分かち合いが大きな支えになっていた。また医療や自助グループを 含めて、ギャンブル依存症が病気であることの理解と、それをもとに家族には責任がなく、借金 の肩代わりをしなくていいことを理解できたことが大きな助けになっていることが確認できた。
医療や保健の機関もこうした内容を家族に伝え、自助グループへのつなぎをすることがまずは重 要であると考えられた。
研究 2 では、ギャンブル障害のある者の家族がその障害を受けとめ、当事者への援助や介入を どのように進めるべきかを教える心理教育プログラムを作成することおよびその効果を検証する ことが目標である。方法としては、①プログラムのワークブックの作成:依存症の家族に対する 心理教育プログラムとして成果を上げ、世界的に用いられている CRAFT(Community Reinforcement and Family Training:コミュニティ強化と家族訓練)をもとに、これを日本のギャンブル障害に 特化した内容にした。②有効性の検証:プログラムに参加した 16 名の被験者に対して、プログラ ムの前後に「ギャンブル依存に対する家族の理解と対処の質問票」に行い、またプログラム後に、
プログラムの自覚的な有効性と満足度の質問紙を行った。研究 2 の結果として開発したプログラ ムは、全 4 回(第 1 回:ギャンブル依存症によるダメージと回復 第 2 回:依存症のサイクルの
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しくみを知り、どのような支援が役立つかを考える、第 3 回:当事者とのコミュニケーションス キル、第4回:家族が自分自身をケアする)のものを作成し、これをワークブックとしてまとめ た。有効性の検討の結果は、プログラムに参加した 16 名の被験者に対して、プログラムの前後に
「ギャンブル依存に対する家族の理解と対処の質問票を行ったところ、「今後のギャンブル問題の 改善に希望を持っている」、「ギャンブル依存症とはどういうものかわかっている」、「当事者とギャン ブル問題の治療・相談について話し合うことができる」、「当事者」の無理な要求をきちっと断れ る」の 4 つの項目について、プログラム前の得点よりプログラム後の得点が有意に高かった(全 て、P<0.05)。また、プログラム後の主観的な有効性では、とても役立つ 9 名(56.3%)、役立つ 6 名(37.5%)、無回答 1 名(6.3%)であり、満足度では「とても満足」8 名(50.0%)、「満足」7 名 (43.8%)、無回答 1 名(6.3%)であった。以上により、プログラムは、ギャンブル障害の理解を深 めることができ、更にそうした理解をもとに家族が話し合いをもつことを促進することができる 効果をもつことが示唆された。
研究3では精神保健福祉センターにおける個別面接や電話相談等で使用できるギャンブル障害 のある家族のための心理教育を作成することである。これにより、精神保健福祉センターにおけ る個別相談や電話相談が充実され、家族の心理的・社会的負担軽減に繋がることが期待される。
方法としてはギャンブル障害のある者の家族を対象とした個別相談や電話相談に用いることを想 定し、ギャンブル障害のある者の家族のギャンブル障害をもつ当事者への対応法、ギャンブル障 害のある者の家族のサポートとなる社会資源、ギャンブル障害の疾病教育についての説明に役立 てることができる内容の冊子の作成を行った。研究3の結果として作成された冊子にはギャンブ ル障害のある者の家族のギャンブル障害をもつ当事者への対応法、ギャンブル障害のある者の家 族のサポートとなる社会資源、ギャンブル障害の疾病教育の記載が入った。その内容は二部構成 となっており、前半は簡易なギャンブル障害の説明、家族の対応法、社会資源について記載し、
後半は疾患教育になった。これにより、精神保健福祉センターにおける個別面接や電話相談等で 使用できるギャンブル障害のある家族のための心理教育用の冊子を作成することができた。今後 はこの冊子が、個別相談や電話相談に有効に活用できるか吟味する必要がある。
研究4では多重債務に関する相談におけるギャンブリング問題の頻度を明らかにすることを目 的とし、債務問題への支援を行っている司法書士事務所に協力を依頼した。
2011
年1
月〜2015
年3
月までの多重債務事件受託者181
名中、ギャンブル等依存の問題を持つもの102
名について 調査した。この調査により、ギャンブル等が原因の多重債務者は、社会適応が困難な者が多く、ギャンブルに関する問題以前の生活上の課題の支援の重要さが示唆された。
研究協力者
森田展彰 筑波大学 医学医療系
新井清美 首都大学東京 健康福祉学部 田中紀子 ギャンブル依存症問題を考える会 川口由起子 植草学園大学 発達教育学部 朝倉崇文 相模原市精神保健福祉センター 稲村 厚 稲村厚事務所
蒲生裕司 北里大学医学部
A
.研究目的我が国では、かねてよりアディクション問題 と言えばアルコール問題が論じられてきた。し かし、近年は、アルコール以外のアディクショ ン問題を持つ者が増加してきたことに伴い、
様々なアディクション問題に関する多くの報 告がみられるようになっている。アディクショ ンは、当事者のみならず家族を巻き込む病気で あるとされ、逆に家族との関係性が、依存行動 を助長することも指摘されている。病的ギャン ブリング(以下
PG
)でも同様の状況があるこ とが予想されるが、アルコール薬物依存症ほど 実証的なデータに乏しい。昨年は、病的ギャン ブラーのギャンブル行動や家族関係に対する 家族と本人の意識について明らかにする研究 を行ったが、それをさらに進めて家族に対する 支援を行う上での家族の関わる困難や支援ニ ーズを明らかにする研究と、実際に家族を支援 する心理教育プログラムの開発を行うことと[
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した。さらに、多重債務に関する相談においてギャ ンブルに関する問題が少なからず存在するた め、その頻度を明らかにし、債務者の特徴につ いて調べることとした。
・研究
1
:「ギャンブル障害を持つ者の家族へ の支援に関する研究―実態と援助ニーズの把 握」:ギャンブル障害は持続的に繰り返される ギャンブルの結果、社会的、職業的及び家庭的 生活に破綻をきたす疾患であり、買い物依存、セックス依存、病的借金、理由なき殺人などと 同様、社会的には注目されている衝動制御障害 である(松澤,
2005
)とされていた。しかし、アメリカ精神医学会作成の精神疾患の診断と 統計のためのマニュアル第
5
版(Diagnostic and statistical manual of mental disorders 5th edition : DSM-5
、以下DSM-5
とする)よ り物質関連障害と同様アディクションの中の 非物質関連障害に位置づけられた。また、ギャ ンブルとは、結末がはっきりと分からない活動 や出来事のために、価値のあるもの(普通はお 金)を失う危険にさらすことであると言われて いる(Fong et al.
,2010
)。我が国のギャンブ ル産業の年商は30
数兆円であり(森山,2009
)、 樋口ら(2014
)はパチンコや競馬などギャンブ ル障害を持つ者が成人人口の4.8
%に当たる536
万人に上るとの推計を示している。さらに、パチンコ依存問題電話相談事業を行っている リカバリー・サポートネットワーク(
2012
)は、パチンコ、パチスロに問題を持つ者のうち、
46
%が10
代、20
代までに84
%がパチンコ・スロットを開始しており、
3
%が10
代、28
%が20
代から借金をしながら当該ギャンブルをし ていることを示した。つまり、潜在的な病的ギ ャンブラーが多く存在していると考えられる。Petry
(2005
)やHodgins
ら(2006
)は、ギャンブル障害がそれに罹患している人の家
族や友人などの近しい人に対して社会的、感情 的、経済的に大きな被害を及ぼすことを報告し ている。特にギャンブル障害に伴う借金の問題 は、物質乱用の様に精神症状が出現しにくいた めに家族はそれに気づきにくく、家族にとって は突然深刻な経済問題を追うという状況に追 い込まれる
(McComb et al.
,2009)
。このこと が家族機能を変調させ、夫婦関係、あるいは親 子関係の不和がもたらされることで家族とし ての絆が希薄になったり、反対に密着度が増し たりすることとなる(新井,2015
)。しかしな がら多くの場合借金の本質的な原因を知らさ れることはなく、問題を回避するための行動を 取ることができずに苦悩している現状が推察 される。この様な状況にさらされた家族を医療 従事者や法律家、アディクションの援助者等が ケアすることが必要と考えられるが、問題の渦 中にある家族の状況や、援助者に求めるニーズ については明らかにされていないのが現状で ある。そこで、本研究では、①ギャンブル問題を持 つ家族が、本人の引き起こすギャンブルにより 生活や精神状態にどのような影響を受けてい るのか、②そのような状況の時に援助者に求め るニーズは何かを明らかにすることでギャン ブル問題の渦中にある家族に対する支援の在 り方を検討していく。
・研究2「病的ギャンブリングのある人の家族 に対する心理教育プログラムの開発」:近年、
依存症者の家族に対する動機づけの方略とし て
CRAFT
(Community Reinforcement and Family Training
:コミュニティ強化と家族訓 練、以下、CRAFT
とする)が用いられるよう になってきている(Smith et al.
,2012
)。CRAFT
は本人に関係する家族または友人を通じて本人の行動変容への動機づけに取り組み、
治療を拒否している本人を治療に繋げる介入
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方法である(
Smith
ら、2012
)。この方法をア ルコールや薬物問題を持つ家族に対して用い ることの有用性について示した報告が散見さ れており(Kirby,et al.1999, Roozen, Ranne &
Petra,2010
)、我が国でも同様の対象者に対して
CRAFT
を用いた治療介入がなされるようになりつつある。
他方、アメリカ精神医学会作成の精神疾患の診 断と統計のためのマニュアル第
5
版(
Diagnostic and statistical manual of mental disorders 5th edition : DSM-5
)から物 質関連障害および嗜癖性障害群の中に位置づ けられ、アルコールや薬物同様アディクション(嗜癖)として取り扱われるようになったギャ ンブル障害に関する報告は少なく(
Hodgins, et al.2007, Makarchuk , Hodgins &
Reden,2002
)、とりわけパチンコがギャンブル 障害の中心となり、世界に稀に見るギャンブル 大国である我が国ではギャンブル障害のある 本人への治療について試行錯誤をしている段 階である。そのため、家族への介入にまで着手 できていないのが現状であり、カジノ法案が国 会に提出されてギャンブル障害(及び問題)の 深刻化が危惧される昨今、家族への介入としてCRAFT
を作成し、効果を検証することは急務である。
そこで、本研究では、ギャンブル障害のある 者の家族のための介入であるギャンブル版
CRAFT
を作成し、その効果を検証することを目標とした。ギャンブル
CRAFT
ができれば、ギャンブル障害のある本人に関係する家族ま たは友人が、本人の行動変容への動機づけに取 り組み、治療を拒否している本人を早期に治療 に繋げることでギャンブル障害の深刻化を予 防できる可能性がある。さらに、家族がギャン ブル障害は病気であるということを認識する ことができ、家族の心理的・社会的負担軽減に 繋がることが期待される
・研究3:「精神保健福祉センターにおけるギ ャンブル障害のある者の家族への心理教育用 冊子の作成」:精神保健福祉センターはギャン ブル障害のある者の家族の相談を受けること ができる行政窓口として期待されている。平成 27年に関東甲信越にある全18の精神保健 福祉センターに対して行ったアンケート調査
(平成27年度 関東甲信越ブロック精神保 健福祉センター連絡協議会 第一分科会「依存 症」資料より)では、ギャンブル障害のある者 の家族に対して、個別面接、電話相談等の何ら かの支援を行っているのは、15 施設に上った。
そのうち、依存症家族を対象としたプログラム
(ギャンブル障害に特化していないものを含 む)を用いて、ギャンブル障害のある者の家族 の対応をしている精神保健福祉センターは8 施設あった。
しかし、ギャンブル障害のある者の家族向け に特化した心理教育やグループワーク等の専 門プログラムを実施している自治体はなく、専 門の対応マニュアルを持っている自治体もな かった。この為、実施可能なギャンブル障害の ある者の家族に特化した専門プログラムの作 成が早急に望まれる。
しかし、精神保健福祉センターにおいて、ギ ャンブル障害のある者の家族向けに特化した グループワーク等のプログラムを新規に実施 するにはプログラムを実施するための職員の 配置と、その教育が必要となる。先ずは、すで に多くの精神保健福祉センターで実施されて いる個別面接や電話相談を充実させることで ある。このため、精神保健福祉センターにおい て、使用することのできるギャンブル障害のあ る者の家族に対する心理教育に用いるテキス トの作成は急務である。
本研究の目的は、精神保健福祉センターにお ける個別面接や電話相談等で使用できるギャ
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ンブル障害のある家族のための心理教育を作 成することである。これにより、精神保健福祉 センターにおける個別相談や電話相談が充実 され、家族の心理的・社会的負担軽減に繋がる ことが期待される。
・研究4:「債務問題支援機関における病的ギ ャンブリング問題に関する研究」: ギャンブリ ングの問題が深刻化すると、借金の問題が生じ ることが一般的に知られている。しかしながら、
国内の債務問題の支援機関において、病的ギャ ンブリングの頻度に関する調査は行われてい ない。そこで、債務問題への支援を行っている に関連機関、司法書士会に協力を依頼し、それ らの機関におけるギャンブリングの問題の頻 度について調査を行った。
B
.研究方法研究1:ギャンブル障害を持つ者の家族への支 援に関する研究―実態と援助ニーズの把握 1.調査対象
調査対象者は、ギャンブル依存症者の家族で ある。具体的には、ギャンブル障害家族の支援 団体である社団法人ギャンブル依存症を考え る会(以下、考える会とする)が関わる家族に 対して調査協力を依頼し、承諾が得られた者に 対して実施した。現在調査を継続しているが、
今回はそのうち 105 名について分析を行った。
2.調査内容
主な調査内容は以下の通りである。
・ギャンブル問題のある当事者のギャンブルの 開始時期やギャンブルの種類や頻度
・ギャンブル問題に直面してから、相談の場に たどり着くまでの状況や苦労
・現在のギャンブルの状況や相談機関の利用状 況
・ギャンブルによる借金問題
・ギャンブルに伴う様々な問題
・ギャンブル障害のある方の家族への支援とし てどのようなものが必要であるか
3.調査方法
本調査に対して同意の得られた施設で自記 式質問紙調査を行った。質問紙は「ギャンブル 依存症問題を考える会」より同意の得られた施 設に郵送され、同意の得られた施設スタッフよ り参加者に配布された。回答後の質問紙は返信 用封筒に密封の上、郵送にて回収した。
4.倫理的配慮
本研究は、筑波大学医の倫理委員会の承認を 得て実施した。本研究の実施にあたり、施設責 任者、もしきは団体責任者に研究概要と調査内 容を文書及び口頭で説明し承諾を得た。また、
質問紙の表紙に調査の目的、自由意思による回 答、個人情報やプライバシーの保護等の研究上 の倫理についての説明を記載した。回答は無記 名とし、回答後の質問紙は郵送にて回収した。
尚、本研究への同意については、質問紙への回 答をもって同意を得た。
研究2「病的ギャンブリングのある人の家族に 対する心理教育プログラムの開発」
1.プログラムの開発
欧米における依存症の家族に対する心理教 育 プ ロ グ ラ ム で あ る
CRAFT
(Community Reinforcement and Family Training
:コミュ ニティ強化と家族訓練、以下、CRAFT
とする)を基にしたプログラムを日本人のギャンブル 障害に向けたものにしてプログラムを作成す る方針をたてた。
日本人用に
CRAFT
を用いている第一人者は 吉田であり、吉田はCRAFT
の内容を以下のよ うな要素にまとめている。①状況をはっきりさせよう
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・きっかけ
・徴候
・影響
・
1
週間にどれくらい・流れをつかむ
・シナリオを変える
②安全第一:暴力への対策
③コミュニケーションを変える
8
つのポイン ト④望ましい行動を増やす
⑤イネイブリングをやめる
⑥あなた自身の生活を豊かにする
⑦治療をすすめる
Karyn Makarchu
らはCRFT
に基いたギャ ンブル障害者用の自助的なワークブックを作 成している。その主な内容は以下である。A. Introduction
B. Becoming and Staying Motivated to Help 1.Negative consequences of living with a
problem gambler
2.Reasons for seeking assistance 3.Possible benefits of taking action 4.Benefits that may result once the gambler
enters treatment
5.Remember the good things about the gambler
6.Establish realistic goals for yourself 7.Seek assistance from family and friends
C.Helping Yourself
1.Get control of finances
a.Suggestions to protect yourself b.Establish a budget
c.Convince the gambler to turn over control
of finances
2.Minimize your distress
a.Ineffective coping mechanisms b.Effective coping mechanisms c.Arrange positive reinforcers for
yourself
3.Dealing with other issues a.Dealing with your anger
b.Depression, suicide, and other addictions
c.Domestic violence d.Emotional abuse
D.Increasing Your Awareness and Understanding of the Gambling Problem
1.Problem gambling defined 2.Gamblers irrational thoughts 3.Reasons for gambling
4.General signs of gambling 5.Immediate signs of gambling 6.Triggers and patterns
7.Consequences of gambling (for the gambler)
E.Helping the Gambler
1.Identify financial bailouts and enabling
behavior
2.Stop interfering with natural consequences
3.Arrange activities that are incompatible
with gambling
4.Arrange positive reinforcers for NOT gambling
5.Stop ineffective responses to gambling 6.Improve communication skills
7.Engage the gambler into treatment
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8. Prepare for relapse
これらの内容の中から要素を選び、特に日 本のギャンブル問題において重要になる借金 に対する家族の肩代わりをやめることをわか ってもらう内容を加えることで、心理教育プ ログラムのたたき台を作成した上で有識者に 意見をもらって改変していき全 4 回の内容の プログラムを作成した。
2.有効性の検証 1)調査対象
考える会代表に書面、及び口頭にて承諾を 得後、考える会が主催する月例相談会に参加 した家族に対して 2015 年 12 月 26 日、2016 年 1 月 23 日の計 2 回実施した。
2)調査方法
本プログラムは、全 4 回からなるものであ る。
質問紙調査はプログラム開始前である第 1 回目と、各回の終了時に行うものとした。有 効性の検証はついては、第 1 回目の前とプロ グラム終了時である第 4 回目後の変化を測定 することとした。
基本的に 4 回連続での参加を依頼している が、半オープンのセミナーであるため、全て の回への出席が困難な者もいる。そのため、
各回の反応を把握する目的も含め、各回の終 了時に有効性や満足度および自由な感想・意 見を得ることとした。
今回は前半 2 回の質問紙調査の結果につい て報告する。
3)自記式質問紙の調査内容
①プログラム有用性と満足度に関する主観的 評価
②ギャンブル依存症に対する家族の理解や対
応の尺度:報告者が自作した、家族が当事者 に対して対処する自己効力感に関する 8 項目 について、7段階で評価するものである
③ギャンブル依存症の当事者のギャンブル行 動(最近 2 週間のギャンブル状況
④家族の幸福度を測る Happiness 尺度
④倫理的配慮
本研究は筑波大学医の倫理委員会の承認を 得て行った。本研究の実施にあたり、施設責任 者に研究概要を文書及び口頭で説明し承諾を 得た。また研究協力者には個人のプライバシー の保護に最大限に留意すると共に、自由意思に よる参加、同意の撤回等について文書および口 頭で説明し、同意書への署名をもって同意を得 た。
・研究3:「精神保健福祉センターにおけるギ ャンブル障害のある者の家族への心理教育用 冊子の作成」
ギャンブル障害のある者の家族を対象とし た個別相談や電話相談に用いることを想定し、
ギャンブル障害のある者の家族のギャンブル 障害をもつ当事者への対応法、ギャンブル障害 のある者の家族のサポートとなる社会資源、ギ ャンブル障害の疾病教育についての説明に役 立てることができる内容の冊子の作成を行っ た。
・研究4:「債務問題支援機関における病的ギ ャンブリング問題に関する研究」
1)調査対象
調査対象者:関東圏内の債務問題への支援を 行っている関連機関における多重債務問題相 談者。年齢は 20 歳以上。
2)調査方法
多重債務問題相談者に対し、対面にて調査を 行う。
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3.倫理面への配慮1) 対象者対する人権擁護上の配慮
対象者に対して、書面にて①調査の趣旨、方 法、②データは調査目的のみに用いられ、個人 情報は外部に漏らされないこと、③協力は自由 意志であり、調査票の提出後であっても、希望 があった場合、速やかに調査を中止することを 説明した上で、調査協力の同意を得ることとし た。
個人情報の保護の方法については、個人の特 定に結びつく個人情報は資料から削除し資料 には新たな符号をつけ、連結可能匿名化してデ ータ票を作成した。協力機関にて作成したデー タ票は、USB メモリーに保存の上、書留で郵送 することとした。対応表は、研究終了後処分す る。
2) 対象者に対する不利益・危険性への配慮 調査を受けることでの対象者の不利益はな いことについて説明を行った。調査に対する質 問や意見、万が一何らかの不都合が生じた場合 にすぐ連絡できるよう、調査者の連絡先を記し た説明書を配布した。
C
.研究結果 研究1
の結果1
.対象の概要表
1
−1に、今回の対象の背景要因を示した。性別では、男性
21
名(20.0
%)
で、女性84
名(
80.0
%)であった。年齢では、60
代が最も 多く39
名(37.1
%)で、次が50
代で30
名(28.6%)であった。続柄としては、母親が
42
名(40.0
%)で最も多く次が妻25
名(23.8
%)であった。
ギャンブラー側の年齢は、
40
代が32
名(
29.5
%)で最も多く、次が31
名(29.5
%)であった。ギャンブラーの最終学歴は、大学卒 が最多で
39
名(37.1
%)で、次が高校・高専 卒28
名(26.7
%)であった。中退者についても聞いたところ、高校・高専中退が
3
名(2.9
%)、 短大・専門学校中退が3
名(2.9
%)、大学中退 が14
名(13.3
%)であった。これらの中退者20
名に対して、中退の原因にギャンブル問題 が関係していたかを尋ねたところ、16
名が回 答し、そのうち14
名が中退にギャンブルを関 係していることを肯定した。ギャンブラーの妻(元妻)に絞って、調査時 点における結婚生活の状況と就労状況につい て尋ねった結果を、それぞれ図
1
−1、図1
−2
に示した。結婚生活の状況としては、回答のあ ったギャンブラーの妻8
元妻)52
名中、同居 している者が32
名(61.5%
)で、別居してい る者が6
名(11.5%
)離婚した者が
14
名(26.9%
)であった。2.ギャンブル歴
ギャンブラー当事者と家族のギャンブル歴 について表
1
−2
に示した。ギャンブラーが行 っていたギャンブルについて複数回答可で尋 ねたところ、一番多く行われていた者はパチン コ・パチスロ90
名(85.7%)で、それに次ぐ ものとしては競馬22
名(21.0
%)、宝くじ11
名(10.5
%)、麻雀10
名(9.5
%)、その他9
名(
8.6
%)、競艇7
名(6.7
%)であった。更に、ギャンブラー当事者以外の家族員でギャンブ ルをしていた人を訊いたところ、個別の人とし ては父親
7
名(6.7
%)、兄弟姉妹7
名(6.7
%)が最多であり、次いで祖父
6
名(5.7
%)、夫6
名(5.7
%)、息子6
名(5.7
%)がであった。それ以外の親類という問いかけでは
19
名(
18.1
%)が肯定した。以上をまとめて1
名で も家族員にギャンブルを行っていた事例は51
名(48.6
%)であった。3.家族のギャンブル問題への関わり
家族がギャンブル問題に関わるようになっ た時期について、図
1
−3
に示した。2
−3
年前[
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が
14.3
%で最も多い割合であり、0
−1
年前の8.6
%よりも多かった。4
年以上の期間になると、各年度の割合は少しずつ低下していくものの
26
年以上の者もおり11.4%
認められた。一方、ギャンブル問題について初めて相談に 行った時期について調べた結果を、図
1
−2
に 示した。0
−1
年前が36.2
%で最も高く、次が2
−3
年前の11.4
%であり、その後は各年について
10%に満たない割合であった。
家族がギャブル問題に関わり始めた時期か ら相談に行く時期の間の期間を図
1
−5
に示し た。1
年未満が16.2
%で最も多く、その後は比 較的少なくなる傾向がある。しかし、相当長期 の場合も認められ、10
年以上の場合をまとめ た場合には23.8
%にのぼった。最初に用いた相談機関についてまとめたも のを図
1
−6
に示した。自助グループと医療機 関の2つがどちらも21.9
%で最も多かった。こ れに次ぐのが電話相談11.4
%、精神保健福祉セ ンター10.5
%であり、それ以外は10
%未満で あった。更に最初用いた機関がどのような対応して くれたと感じたかを示したのが図
1
−7
である。使用率が突出して高い自助グループと医療機 関について比べると、自助グループでは利用者 の
95
%以上が、「親身に相談に乗ってくれて、対応や治療について具体的に教えてくれた」で あったのに対して、医療機関ではこうした理想 的な対応をしてくれたという回答した者は
6
割程度であり、残りは「話はある程度聞いてく れたが、具体的な対応や治療はあまり教えてく れなかった」「少ししか話を聞いてくれなかっ た」であった。相談機関につながったきっかけを図
1
−8
に 示した。最も多かったのは「自分で調べた」48.6
%であり、次いで「インターネットで調べ た」38.1
%、「自助グループで紹介された」23.8
%であり、広報や医療保健機関や警察などの公的機関は
10
%以下であった。これまでに用いた相談機関の割合を図
1
−9
に示した。割合の高いものとしては、自助グル ープ98
名(93.3%
)、医療機関68
名(64.8
%)
、 民間依存症回復施設29
名 (27.6%
)、弁護士・司法書士
28
名(26.7%
) 精神保健福祉センター23
名(21.9%
)であった。用いた相談機関の有用性について、「役立っ た」または「少し役立った」を合わせた肯定的 回答の割合を図
1
−10
に示した。割合の高いも のとしては、自助グループ94.9%
、電話相談94.7%
、民間依存症回復施設89.3%
、民間の相 談機関76.5%
、保健所・保健センター72.2%
、 医療機関72.1%
であった。
家族による借金の肩代わりの状況について、
表
1
−3
に示した。借金の肩代わりした経験が あるとした者は86
名(81.9%
)とした。肩代 わりした回数について回答してくれた75
名で は、1回15
名(19.7%)
、2
回13
名(17.1
%)、3
回17
名(22.4%)であった。より多い回数 の者もいて、6
−10
回の者8
名(10.5
%)
、11
回 以上の者7
名(9.2
%)
、数えきれないとした者8名
(10.5%)
であった。肩代わりした金額について回答してくれた
85
名において多かったのは、100
〜300
万円22
名(25.9
%)
、300
〜500
万円20
名(23.5
%)
、1000
万円以上20
名(23.5
%)であった。
4.ギャンブラーの状況
ギャンブラーに関連する問題の発生状況を 表
1
−4
に示した。現在ある問題で比較的多く 認められたものは、「浪費、借金による経済的 困難」28
名(回答のあった94
名中29.8
%)、「家庭不和・別居・離婚」
15
名(回答のあっ た91
名中16.5
%)「脅しや言葉の暴力」、8
名(
回 答のあった90
名中8.9
%であった。以前のみあ[
テキストを入力]
った問題についての回答で比較的多く認めら れたのは、「浪費、借金による経済的困難」
48
名(回答のあった94
名中51.1
%)、「家庭不和・別居・離婚」
42
名(回答のあった91
名中46.2
%)、「うつ状態」
32
名(回答のあった93
名中34.4
%)、「脅しや言葉の暴力」28
名(
回答のあ った90
名中31.1
%)
、「異性関係の問題」19
名(回答のあった
87
名中21.8
%)、「子への暴 力・不適切な養育」18.0%(回答のあった89
名中19.3
%)、「パートナー・親への暴力」16
名(回答のあった89
名中18.0
%)、「飲酒運転」16
名(回答のあった89
名中18.0
%)であった。ギャンブラーにおける現在のギャンブル状 況
(
図1
−11)
は、105
名中「回復してギャンブ ルをやめている」47.6
%、「減ってはいるが、たまにはしている」
9.5
%、「回復に取り組み始 めているが、止めたりやったりを何度も繰り返 している」9.5
%、止める(
回復する)
気がない」5.7
%、「不明」24.8
%であった。ギャンブラーの相談状況
(
図1
−12)
は、105
名中「医療やカウンセリングを用いたことがある」
52.4%、
「自助グループにつながっている」57.1
%、「入寮型の回復施設を用いたことがあ る」32.4
%であった。5
.自由回答によるギャンブル問題に関する家 族として意見「ギャンブル問題に関して、家族として最も 困ったこと」について自由回答を求め、得られ た意見を分類した結果を表
1
−5
に示した。「当 事者の嘘や裏切りに対する不信や葛藤」「家族 崩壊・別離」「借金やその返済に対する不安・負担」「金銭トラブル・犯罪」「子どもや養育へ の影響」「借金で周りの関係が壊されてしまう こと」「周囲の人にわかってもらえないこと・
孤立」「人生設計が壊れてしまうこと」「暴力・
喧嘩・自傷への不安」「家族が責められたり、
自責の念を抱くこと」「絶望感・不安感・人間
不信」「家族精神・身体の健康の問題」「相談や 治療に関する悩み」に分類された。
「ギャンブル問題に関して、家族として助け になったこと」についての自由回答の結果を表
1
−6
に示した。「自助グループでの仲間との分 かち合い」「当事者との境界線を持った関わり をすること、借金の肩代わりをしないこと」「自 分を責めなくてよいというメッセージ」「自分 を大切にすること」「依存症という病気として の理解」「相談・セミナー」「医療者による自助 グループの紹介」「医療者のアドバイス」「「家 族の支援」「施設への入所・保護」「書籍」「教 会」でった。研究2の結果
1
.プログラムの内容開発されたプログラム内容は以下の通りで ある。
第 1 回:ギャンブル依存症によるダメージと回 復
・ギャンブルのもたらす影響を知ろう。
・依存のサイクルから回復の道を歩むには?
第 2 回:依存症のサイクルのしくみを知り、ど のような支援が役立つかを考える
・ギャンブルがとまらないのはなぜでしょう?
・依存症の人の持つ2つの考え方
・「依存症の考え」を助ける言い方と「自律的 な考え」を助けるいい方
・家族として回復をどう助けるか?
第 3 回:当事者とのコミュニケーションスキル
・家族の成長を助ける関わりについて
・家族の考えを伝えるスキル(アサーティブネ ス)・回復を助ける言い方のロールプレイ 第4回:家族が自分自身をケアすること―
・家族自身のストレスチェックとセルフケア。
・家族のうつや不安に対する認知行動モデルを 利用して、家族自身の考えを振り返る。
実際に作成したプログラムのワークブック
[
テキストを入力]
を参考資料1として後ろに付けた。
2.有効性の検証
平成 27 年 12 月 26 日に行った第 1 回プログラ ムに参加した家族 16 名に対して、行ったアン ケート結果を以下に示す。
被験者である家族の年齢は平均値 53.3 歳、
標準偏差 11.3 歳、最小値 33 歳、最大値 72 歳 であり、当事者の年齢は、平均値 34.4 歳、標 準偏差 11.1 歳、最小値 21 歳、最大値 59 歳で あった。
被験者である家族の性別は、男性 1 名(6.3%)、 女性 15 名(93,8%)であり、当事者の性別は、
男性 13 名(81.3%)、女性 3 名(18.8%)であ った。
被験者である家族の性別は、男性 1 名(6.3%)、 女性 15 名(93,8%)であり、当事者の性別は、
男性 13 名(81.3%)、女性 3 名(18.8%)であ った。
家族の当事者に対する関係性は、親 10 名 (62.5%)、配偶者 4 名(25.0%)、きょうだい 2 名(12.5%)であった。
おもなギャンブルについて複数回答可で尋 ねたところ、パチンコ 7 例(43.8%)、パチスロ 6 例(37.5%)、競馬 1 例(6.3%)、ゲームセンター 1 例(6.3%)、オンラインギャンブル(カジノ、
ポーカー)2 例(12.5%)、カジノ 1 例、宝くじ 1 例(6.3%)、株 1 例(6.3%)であった。
生涯におけるギャンブルの頻度について尋 ねたところ、6 名が「わからない」と回答した。
回答した 6 名全員が、3 段階(やっていない、
週 1 度未満、週 1 度以上)のうち週1度以上と いう回答を選んだ。最近 1 カ月におけるギャン ブルの頻度については、6 名が「わからない」
とし、3 名がどのギャンブルについて「やって いない」と回答した。残りの6名は 1 種類以上 のギャンブルについて「週 1 以上」と回答した。
プログラム前後のギャンブル依存に対する
家族の理解と対処の質問を、プログラムを行う 直前と直後に行い、その比較をした結果を表 2‑1 に示した。前後の得点について、検定はウ ィルコクソンの符号付順位和検定の結果によ れば、「今後のギャンブル問題の改善に希望を 持っている」、「ギャンブル依存症とはどういう ものかわかっている」、「当事者とギャンブル問 題の治療・相談について話し合うことができ る」、「当事者」の無理な要求をきちっと断れる」
の 4 つの項目について、プログラム前の得点よ りプログラム後の得点が有意に高かった(全て、
P<0.05)。
プログラム後の主観的な有効性と満足度を 図 2‑1,2‑2 に示した。有効性は 6 段階(1.と ても役立つ, 2.役立つ,3、どちらかといえ ば役立つ,4.どちらかといえば役立たない,5、
役立たない ,6.まったく役立たない)を家 族 16 名に回答してもらったところも、とても 役立つ 9 名(56.3%)、役立つ 6 名(37.5%)、
無回答 1 名(6.3%)であり、否定的な反応はな かった。満足度は、6 段階(1.とても満足, 2.
満足,3、どちらかといえば満足,4.どちらか といえば不満足,5.不満足 ,6.まったく不 満足)から回答を選択してもらった結果、「と ても満足」8 名(50.0%)、「満足」7 名(43.8%)、
無回答 1 名(6.3%)であった。
研究3の結果
ギャンブル障害のある者の家族のギャンブル 障害をもつ当事者への対応法、ギャンブル障害 のある者の家族のサポートとなる社会資源、ギ ャンブル障害の疾病教育の記載がある冊子を 作成した(参考資料2)。
二部構成となっており、前半は簡易なギャン ブル障害の説明、家族の対応法、社会資源につ いて記載し、後半は疾患教育になっている。以 下にその構成を記載する。
第一部〜家族にギャンブルの問題が現れたら
[
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〜
・ ギャンブル依存症?
・ 家族はどうすればいい?
・ 家族の回復も重要
・ 家族をサポートする社会資源
・ 本人がギャンブルの問題を相談してきたら
第二部〜ギャンブル依存症の特徴〜① 苦しいのは、誰のせい?
② 矛盾した考え
③ やめる気はないの?
④ コントロール障害
⑤ 非難では解決しない
⑥ 痛み止めとしてのギャンブル
第一部の「本人がギャンブルの問題を相談し てきたら」には「吉田精次+ASK(アルコール薬 物問題全国市民協会)「アルコール・薬物・ギ ャンブルで悩む家族のための7つの対処法 CRAFT P48‑50」の内容を一部改変し、アイ・メ ッセージを利用したコミュニケーションスキ ルを紹介した。
第二部の「③やめる気がないの?」、「⑤非難 では解決しない」では、ギャンブル障害に陥っ た当事者が、ギャンブルを優先してしまう理由 について、選好逆転を用いて説明した。
「⑥痛み止めとしてのギャンブル」では、ギ ャンブルにのめり込む理由の一つとして、
Edward J.Khantzian、Mark J.Albanese らが提 唱 し た 自 己 治 仮 説 (self‑medication hypothesis)を用いた。
研究4の結果
2011
年1
月〜2015年3
月までの多重債務事 件受託者181
名中、何らかの依存の問題を持つ 者は102
名であった。その中でギャンブルの問題を持つ者は
76
名 であり、女性は2名であった。債務額は
100
万円以下のものが22
名、500
万円以上の者が9
名(うち1000
万円以上は4
名)であった。
ギャンブルの種別についてはパチンコ、パチ スロが中心の者は71名であった。
D
.考察1.ギャンブル障害の家族の持つ困難
ギャンブル障害による家族の持つ困難につ いては以下のような所見が注目された。
・浪費、借金による経済的困難:この問題に関 する質問では、調査時
3
割、過去のものもあわ せると9
割が肯定した。これに対して、8
割の 家族が、借金の肩代わりを行っており、それも1
度ではなく何度も繰り返しになっており、肩 代わりしているケースで9
割を超える人が100
万以上、2
割以上が1000
万円の金額の肩代わ りをしていた。自由回答では、経済的にひっ迫 するこことのみでなく、借金とりなどからの嫌 がらせやなどで職場や地域の人間関係も壊れ てしまうことや、家人の現金やカードの持ち出 し・物を勝手な売却・窃盗行為などの犯罪的行 動などに悩んでいた。・家庭崩壊・離婚
この問題に関しては、調査時の状況では
2
割が、以前のこともあわせると7割が、肯定していた。
また、今回の対象のうちギャンブル障害のある 者の妻(元妻)のうち3割が離婚、
1
割が別居 していた。自由回答でも家庭内の不和や葛藤あ るいはそれがもとで夫婦のみならず親類同士 が会えない状況になっていることが多く訴え られていた。・生活や人生計画の破壊
離婚以外でも学校の中退者において中退する 理由にギャンブル問題が関わっており、自由回 答では、ギャンブルや借金の問題を急にまたは 反復的に曝されることで、それまでの住居や人 生計画が破たんしてしまい、見通しや希望をも てなくなることが述べられている。
・当事者の嘘やコミュニケーションの問題当事
[
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者とのコミュニケーションの問題による混乱 や両価的な気持ちについて自由回答では最も 多く記入されていた。ある時には優しい面があ りこれを信用したいと思うのに、嘘が多く、裏 切られることが続いてしまうことについて、ど のようにとらえたらいいのか迷い、傷つけられ ているうちにコミュニケーションが全くとれ なくなっていくことに苦しんでいる様子がよ くわかる内容であった。
・周囲の人からわかってもらえないこと・孤立 無援感
ギャンブル問題を家族自身として受け止める ことが難しいのみでなく、それを他の家族や周 囲の人にわかってもらうことは難しく、相談で きなかったり、相談しても理解を得られないこ とに深い孤立感を感じていることが自由回答 から伺えた。他人の目や世間体につい強く意識 している。
・暴力や自傷などの問題行動
「脅しや言葉の暴力」に関しては、調査時の状 況では
1
割弱が、以前のこともあわせると4割 が、肯定していた。「パートナー・親への暴力」に関しては、調査時の状況では
2
%が、以前の こともあわせると2割が、肯定していた。「子 への暴力・不適切な養育」は、調査時の状況で は1
%が、以前のこともあわせると2割が、肯 定していた。自由回答でもギャンブルのことで 八つ当たりや暴力を生じている記述が多くは ないが見られた。これらをみるとギャンブラー は継続的に暴力的である人は限られているが、ギャンブル問題が深刻な状況では衝動性や周 囲との葛藤などが高まり、言語的暴力や時には 身体的暴力を家人に生じている。そうした衝動 が自傷・自殺の方に向かう場合もあり、家族は これに対しても強い不安を生じていることが 自由回答から伺える。
・子どもや養育への不安
上記したような子ども虐待状況までいかなく
ても、ギャンブル問題が家に生じていることで お金がないことや離婚などの状況に子どもが 我慢を強いられていることへの懸念が自由記 述に書かれていた。また妻のみが子育てに取り 組む状況となり、進学などの重大な決定につい て過剰な負担が生じていることも書かれてい る。
・家族自身の精神・身体健康の問題
自由記述では、不眠や不安、うつ状態、体調不 良になったことが書かれている。ある人は「発 狂状態」になったと表現している。こうした状 態になることと関連しているのは自責感と思 われる。ギャンブル問題から生じる様々なトラ ブルや家庭の危機の中で、自分自身を責めてし まう様子が、自由記述には書かれている。特に 当事者の親の場合に子どもの問題は自分の育 て方のせいだと思ってしまう面が複数の人か らでている。一般に極端な自己否定が継続する と心身の不調につながることが指摘されてお り、ギャンブル障害のある人の家族に自己否定 の視点を変えることが重要と思われる。実際に 何が助かったのかという自由記述で、自分が悪 くないというメッセージをもらえたことを挙 げている者が認められた。
2.家族の支援について
被験者が用いている相談機関としては、自助 グループと医療機関の2つが中心であった。こ れは最初につながる機関としても、その後も含 めた使用経験としてもそうであった。特に自助 グループは
9
割以上が用いていた。この2つの 機関を用いた時の対応や有用性では、自助グル ープの方が圧倒的に高い評価を受けていた。自 由記述でも助けられたと感じた体験として、多 くの人が自助グループで同じ苦しみを持った 仲間と出会い、話を聴いてもらえたことが助け になったということを多くの人が述べていた。医療機関は最初の対応でも、その後の有用性で
[
テキストを入力]
も
6
割程度は肯定的回答を得ており、これはギ ャンブル障害の問題に積極的に対応してくれ る医療機関につながったかどうかで別れてい る可能性がある。ちゃんと対応してくれる医療 につながった場合には、医療者のアドバイスや、医療から自助グループを紹介してもらったこ とが助けになったという話を自由記述で複数 の人が指摘しており、医療の役割も大きいと思 われた。但し、アルコールや薬物依存症と比べ るとギャンブルそのものは精神健康や身体健 康を直接的に損なうものではないので、その点 はやや異なり、自助グループへつないでいくこ と、合併するうつ病などについての対応が主に なるといえる。
助かった支援の内容としては、先述した仲間 との分かち合い以外では、「依存症が病気であ るということ」の理解およびこれを通じての借 金の尻拭いなどのエネーブリングをやめてい いことを知り、自分を責めなくてもいいという 考え方を知ることができたことを挙げている 人が多かった。これは、家族に対して依存症と いう病気の理解や依存症者とのコミュニケー ションスキルを教えることの重要性を示唆し ているといえた。
こうした適切な対応に対する情報をできる だけ早く家族に届け、早期に介入・援助するこ とがダメージを最小限にする上で重要である が、今回の結果では、ギャンブル問題に気が付 いて2年以内に相談に来ている人が
3
割いる 一方で、10
年以上かかっている人も4
分の1
を占めていたギャンブル依存という問題に対 する啓もうが更に必要であるといえる。支援に 結びつくきっかけは、家族自身やインターネッ トでの検索が上位であることは、インターネッ トなどのより積極的な活用の重要性を示すが、一方で、広報や医療保健機関からの情報がきっ かけになった人は少なく、行政や専門機関での 啓もうはもっと行われるべきと思われる。
3.家族の心理教育プログラム
家族の心理教育プログラムの第
1
回の内容 を行ったところ、「ギャンブル依存症とはどう いうものかわかっている」「今後のギャンブル 問題の改善に希望を持っている」という得点が 有意に高まることがわかった。これによって、プログラムがギャンブル依存の理解を助け、そ の回復の希望をあたえることができることを 示しているといえる。また、「当事者とギャン ブル問題の治療・相談について話し合うことが できる」、「当事者の無理な要求をきちっと断れ る」の得点も高くなっていたことから、家族が 当人に対して、適切なコミュニケーションをも てる自信が高められる可能性が示された。
4.精神保健福祉センターにおけるギャンブル 障害のある者の家族への心理教育用冊子の作 成
精神保健福祉センターにおける個別面接や 電話相談等で使用できるギャンブル障害のあ る家族のための心理教育用の冊子を作成する ことができた。今後はこの冊子が、個別相談や 電話相談に有効に活用できるか吟味する必要 がある。
5.債務問題支援機関における病的ギャンブリ ング問題に関する研究
本調査を行った関係機関は依存症に関する 問題を扱う頻度が高いため、ギャンブル問題を 抱える依頼者が一般的な司法書士事務所より も多数になった可能性がある。
ギャンブル等が原因の多重債務者は、社会適 応がうまくいかず自立できていない人が多い。
また何とか自立していても金銭管理ができな い人も多い。したがって、依存問題以前の生活 上の課題の支援を行うことが先決で、それを見 逃さないことが重要である。債務整理において
[
テキストを入力]
生活支援を並行して行うことでギャンブルの 問題が軽減することが示唆される。
4.限界と今後の課題
家族のニーズ調査も心理教育プログラムもま だ調査研究の途上であり、さらに例数を増やし ての分析が必要である。特に心理教育プログラ ムはまだ前後比較も途上であり、これを確認し て後に対照群を用いた検証が必要になる。
E
.結論本年度は「研究1:ギャンブル障害を持つ者 の家族への支援に関する研究―実態と援助ニ ーズの把握」、「研究
2
:病的ギャンブリングの ある人の家族に対する心理教育プログラムの 開発」、「研究3
:精神保健福祉センターにおけ るギャンブル障害のある者の家族への心理教 育用冊子の作成」、「研究4:債務問題支援機関 における病的ギャンブリング問題に関する研 究」という4
つの研究を行った。これにより以 下の成果を得た。研究
1
より、ギャンブル障害のある者の家族 の抱える困難として、「浪費・借金による経済 的困難」、「家庭崩壊・離婚」、「生活や人生計画 の破壊」、「当事者の嘘やコミュニケーションの 問題」、「周囲の人からわかってもらえないこ と・孤立無援感」、「暴力や自傷などの問題行動」、「子どもや養育への不安」、「家族自身の精神・
身体健康の問題」があることが明らかになった。
こうした困難の解決のために、家族が利用して いる相談機関としては、自助グループと医療機 関が主であり、特に自助グループは
9
割以上の 家族が利用し、高い有用性を感じていることが 明らかになった。課題としては、問題を知って から相談にいくまでに10
年以上かかった人が4
分の1いるなど支援開始が遅れがちであるこ と、相談にいっても医療や保健機関では十分な 対応がない場合もあることなどが挙げられた。研究
1
より、家族ギャンブル依存症が病気で あることの理解と、それをもとに家族には責任 がなく、借金の肩代わりをしなくていいことを 理解できたことが大きな助けになっているこ とが確認できた。これに応えるために、研究 2・3を行い、家族に対するCRFAT
をもとに したギャンブル家族用心理教育プログラム(全4
回のグループセッションから成る)と精神保 健福祉センターにおけるギャンブル障害のあ る者の家族への心理教育用冊子を作製した。・ギャンブル家族用心理教育プログラムは実際 に家族に試行して、前後でギャンブル障害への 家族としての理解が深まるという効果を確認 できた。
研究4より、ギャンブル等が原因の多重債務 者には、依存問題以前の生活上の課題の支援を 行うことが先決で、それを見逃さないことの重 要性が示された。
F
.研究発表 1.論文発表・新井清美,森田展彰:飲酒のリスク判断と介 入 月間細胞,47(14):711‑715 2015.
・新井清美,森田展彰,田中紀子,佐藤拓:病 的ギャンブリングの認識における変化のプ ロセス−ギャンブル問題が深刻化する過程 に焦点を当てて− アディクションと家族,
31
(2
):掲載予定.2.学会発表
・新井清美,森田展彰,大谷保和,田中紀 子:
ギャンブル障害の深刻化に影響する要因の 検討,平成
27
年度 アルコール・薬物依存関 連学会合同学術総会,2015
年10
月13
日.・朝倉崇文,蒲生裕司,大石智,宮岡等:北里 大学東病院ギャンブル障害専門外来に受診 した患者背景,平成
27
年度 アルコール・薬 物依存関連学会合同学術総会,2015
年10
月13
日.[
テキストを入力]
・森田展彰,和田一郎,大谷保和,大橋洋綱,
山口玲子:全国の児童相談所に通告された虐 待事例におけるアルコール・薬物依存症の発 生状況と依存症を伴う事例の特徴平成
27
年 度 アルコール・薬物依存関連学会合同学術 総会,2015
年10
月13
日.・ 大谷保和,川合勇三,湯本洋介,梅野充,榊 原聡,門脇亜理紗,斎藤環,森田展彰,池田 和隆:アルコール依存症入院患者の退院後再 飲酒と関連する要因:自記式尺度と潜在的態 度測定を用いた比較,平成
27
年度 アルコ ール・薬物依存関連学会合同学術総会,2015
年10
月13
日.
G
.文献・ 新井清美(2015).第5章 病的ギャンブ リングの重症化に影響する要因と、段階に 応じた介入方法の検討(研究 4),アディク ションのリスク判断と段階に応じた介入 に関する研究(pp.103‑116).
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・ 吉田精次+ASK(アルコール薬物問題全国 市民協会)(2014)アルコール・薬物・ギャ ンブルで悩む家族のための7つの対処法 CRAFT アスクヒューマン・ケア 48‑50
18
表1
−1.
対象の背景N=105
背景要因 N %
家族(被験者)の性別 男性 21 20.0%
女性 84 80.0%
家族(被験者)の年齢 30代 9 8.6%
40代 12 11.4%
50代 30 28.6%
60代 39 37.1%
70代 15 14.3%
父親 17 16.2%
母親 42 40.0%
夫 8 7.6%
妻 25 23.8%
兄弟姉妹 1 1.0%
息子 6 5.7%
娘 3 2.9%
親類 1 1.0%
その他 2 1.9%
同居家族 父親 3 2.9%
母親 14 13.3%
夫 68 64.8%
妻 16 15.2%
兄弟姉妹 1 1.0%
息子 31 29.5%
娘 15 14.3%
他の人 15 14.3%
20代 17 16.2%
30代 31 29.5%
40代 32 30.5%
50代 13 12.4%
60代 10 9.5%
70代 2 1.9%
ギャンブラーの最終学歴 中学卒業 2 1.9%
高校・高専卒業 28 26.7%
短大・専門学校卒業 15 14.3%
大学卒業 39 37.1%
大学院卒業 1 1.0%
高校・高専中退 3 2.9%
短大・専門学校中退 3 2.9%
大学中退 14 13.3%
関係していた 14 70.0%
関係していない 2 10.0%
無回答 4 20.0%
中退者(N=20)の原因にギャン ブル問題を関係していたか?
続柄
(ギャンブラー当事者に対す る被験者の立場)
ギャンブラーの年齢
19
図 1−1 ギャンブラーの妻(元妻)の現在の婚姻状況(N=52)
図 1−2 ギャンブラーの妻(元妻)の現在の就労状況(N=52)
一緒にいる
(同居して いる)
61.5%
別居してい る
11.5%
離婚した
26.9%
正社員
17.3%
契約社員
/派遣社
員
11.5%
パート
38.5%
無職
19.2%
その他