取引コストを考慮した最適資産配分問題 | DFO 手法を用いた最適乖離許容領域の決定 | 枇々木 規雄 山本 零 田辺 隆人 今井 義弥 慶應義塾大学 三菱 UFJ トラスト投資工学研究所 数理システム 平成 24 年 12 月 18 日 和文概要 取引コストを考慮して、リバランスをしない最適な乖離許容領域の決定とリバランス戦略を求め る問題に対し、理論的な研究が様々行われている。これらの研究は主に連続時間モデルで特異的確率制御問題 として取り扱われる。それに対して、本研究では、柔軟に問題を記述できる数理計画アプローチの一つである DFO(derivative free optimization) 手法を用いた乖離許容領域の決定方法を提案する。具体的には、モンテカ ルロ・シミュレーションで収益率分布を記述し、ある乖離許容領域のもとでのリバランス戦略による目的関数 値 (コスト関数) を計算し、DFO 手法を用いて、乖離許容領域を表すパラメータを決定変数の最適解として求 める。本研究で対象とする問題のタイプは変数の数が少なくて済み、問題に要求される解としては十分な精度 で得られることが期待できるため、DFO と相性のよい問題である。本研究では、Leland[5] のタイプの問題に 対して、有限期間・離散時間における DFO を用いた乖離許容領域を求める方法を示す。リスク資産が 1 個と 2 個の場合について、Leland[5] と同じパラメータを用いて、無限期間・連続時間のもとでの解析解と比較し、 DFO によるモデル化の有用性を検証する。DFO 解は、ほぼ解析解と同じ特徴が得られた一方で、離散時間に おける微小時間が長くなるにつれて、乖離許容境界が政策ポートフォリオに近づく (乖離許容領域が小さくな る) ことが分かった。いくつかのパラメータに対する感度分析も行い、DFO によって最適解を導出することが できた。また、2 種類の方法でモデルを簡略化することによって、目的関数値の劣化を避けながら、計算時間 を最大でそれぞれ約 67%と約 27%に高速化することができた。 1. はじめに 資産配分問題におけるコンスタント・リバランス戦略は、時間の経過とともに乖離する政策ポートフォリオ にリバランスする戦略である。しかし、取引コストを考慮した場合、必ずしも政策ポートフォリオに戻すこと が最適な戦略になるとは限らない。このように取引コストを考慮して、リバランスをしない最適な乖離許容領 域の決定とリバランス戦略を求める問題に対し、理論的な研究が様々行われている1 。Leland[4] は 2 つのリス ク資産を対象に、基本ポートフォリオ (政策資産配分) は所与の下で、比例取引コストの場合に連続時間モデ ルによる最適リバランスを決定する問題を特異的確率制御問題として定式化し、数値解を導く方法を示してい る。比例取引コストの場合、乖離許容境界にリバランスすることが最適となる。Leland[5] は無リスク資産を含 む 3 資産以上を対象に定式化し、準解析解を数値的に導く方法を示している。具体的には N = 2(N はリスク 資産数) までの簡単な数値計算のみが示されている。それに対し、Donohue and Yip[3] は Leland[5] のモデル を N = 7 まで実装したプログラムを作成し、N = 2 の場合の感度分析 (取引コスト、リスク回避係数、分散、 相関係数)、N = 3 の場合の様々なリバランス手法 (最適戦略、定期リバランス戦略、レンジ幅リバランス戦 略、買い持ち戦略、等確率戦略、アクティブリスク戦略) を比較している。取引コスト、トラッキングエラー の点で最適解が良いことを示している。Leland[4, 5] で最小化する目的関数はともに、取引コストとトラッキ ング・エラーの定数倍の和である。
Pliska and Suzuki[7] は Leland[5] を拡張し、リスク資産比率過程を厳密に記述するとともに、取引コストと して比例的部分に加えて、固定的部分を追加したモデルを提案している。2 資産を対象としたインパルス制御 問題の定式化を行い、乖離によるリターンからトラッキング・エラーと取引コストを引いた目的関数を最大化 している。固定取引コストを含めると、乖離許容境界と政策ポートフォリオの間にリバランスすることが最適 となる。 1取引コストを考慮した最適資産配分問題には「売買時の実際の取引価格に取引コストを含めて最適資産配分を決定する問題 (購入時 には資産価格に取引コストを追加し、売却時には資産価格から取引コストを除く)」もあるが、本研究で取り扱う問題とは異なる。
これらの研究は特異的確率制御問題に対する HJB 方程式やインパルス制御問題に対する準変分不等式など の無限期間に対する連続時間モデルで問題が取り扱われている。それに対して、実務においては有限期間に対 する離散時間ベースで問題を取り扱う必要がある。そこで、本研究では柔軟に問題を記述できる数理計画アプ ローチの一つである DFO(derivative free optimization) 手法を用いた乖離許容領域の決定方法を提案する。具 体的には、モンテカルロ・シミュレーションで収益率分布を記述し、ある乖離許容領域のもとでのリバランス 戦略による目的関数値 (コスト関数) を計算し、DFO 手法を用いて、乖離許容領域を表すパラメータを決定変 数の最適解として求める方法である。この方法は変数の数は少数に限定され、目的関数が凸関数でないと局所 最適解となる方法で、さらに計算精度をそれほど高く要求することはできない。しかし、本研究で対象とする 問題のタイプは変数の数が少なくて済み、問題で要求される解としては十分な精度で得られることが期待でき るため、DFO と相性のよい問題である。 本研究における貢献は以下の 2 点である。 (1) 有限期間・離散時間問題に対する最適解の導出 基本ポートフォリオ (政策資産配分) は所与の下で、取引コストを考慮した有限期間・離散時間問題に対する 最適解を導出することができる。3 資産以上の複数資産に対しても最適なリバランス乖離許容領域を決定で きるようなモデルを構築する。 (2) 方法論・数値計算的な側面 本研究で対象とする問題に対する解法は、特異的確率制御問題か準変分不等式問題としての定式化に対する 解法のみで、DFO を用いた解法はない。この解法を用いることによって、目的関数や制約条件など、比較 的柔軟な問題設定のもとで取り扱うことができる。 本研究では、Leland[5] のタイプの問題に対して、有限期間・離散時間における DFO を用いた乖離許容領域を 求める方法を示す。Leland[5] と同じパラメータを用いて、無限期間・連続時間のもとでの準解析解と比較し、 DFO によるモデル化の有用性を検証する。 本論文の構成は以下の通りである。2節では、取引コストを考慮したリバランス決定問題として、本研究で 対象とする Leland[5] のモデルを簡単に紹介する。さらに、DFO によるモデル化の方法を記述する。3節と 4 節ではリスク資産が 1 個と 2 個の場合について、それぞれ解析解との比較や、離散時間モデルの考察、感度分 析などを行うことにより、DFO の有用性を検証する。5節ではまとめと今後の課題を述べる。 2. 取引コストを考慮したリバランス決定問題 本研究で対象とする先行研究である Leland[5] のモデルを簡単に紹介する。対象資産は N 個のリスク資産と 1 つの無リスク資産である。取引コストとトラッキング・エラーを考慮し、リスク資産の乖離許容領域 (no-trade region) を決定する最適化問題 (特異的確率制御問題) として取り扱われている。 2.1. 基本設定 リスク資産 i の価格過程は (1) 式に示すように、幾何ブラウン運動に従うと仮定している。 dSi Si = ñidt + õidZi (i = 1; . . . ; N ) (1) correl(dZi; dZj) = öijdt ここで、ñi は資産 i の期待収益率、õi は収益率の標準偏差、dZi はウィナー過程の増分、öij は資産 i と j の収益率の相関係数を表す。目的関数は (2) 式のように初期ポートフォリオベクトル x 2 RN、取引戦略 å の もとで、トラッキング・エラーの定数倍 (ï倍) と取引コストの期待割引コストの和を最小化する。 J(x : å) = E îö Z 1 t eÄr(úÄt)ï(w(ú) Ä wÉ)>V (w(ú) Ä wÉ)dú + Z 1 t eÄr(úÄt)k>jéw(ú)jõ åååx;å ï (2) ここで、V 2 RN ÇN は分散・共分散行列、k 2 RN は比例コストベクトル、wÉ2 RN は政策ポートフォリオ ベクトル、w(ú) はú時点のポートフォリオベクトルを表す。投資比率がリバランスの有無の境界となる比率 (境界比率) を越えた場合にリバランスを行う。リバランスをする際の取引コストが投資比率に比例する場合、
境界比率に移動することが最適なリバランス戦略となる2。 境界比率 (乖離許容領域) は、図 1に示すように、リスク資産が 1 つの場合と 2 つ以上の場合で大きく異なる。
w
1w
2 (wÉ 1; wÉ2) 乖離許容領域 ü V (wV 1 ; wV2) X (wX1 ; wX2 ) Y (wY 1 ; w2Y) Z (wZ 1; w2Z)w
1 乖離許容幅リスク資産が 1 個の場合
w
minw
1Éw
maxリスク資産が 2 個の場合
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
図 1: 乖離許容領域 (境界比率) リスク資産が 1 つの場合には図 1(左) に示すように、wmin を下限、wmaxを上限とする幅が乖離許容幅となる。すなわち、乖離許容領域ü は ü = [wmin; wmax] であり、乖離許容領域ü の境界を å(ü) = fwmin; wmaxg
と表す。一方、リスク資産が 2 つの場合には図 1(右) に示すように、各資産ごとの乖離許容幅の組み合わせに よる領域となる。乖離許容領域ü( 5ç の領域) の境界を å(ü) = fwåg と表す。表 1に示すように、乖離許容領 域 ( 5ç ) 以外のリバランス戦略は領域によって異なる。 表 1: リスク資産が 2 個の場合の最適リバランス戦略 領 リバランス 資産 1 資産 2 領 リバランス 資産 1 資産 2 域 位置 (端点) w1 w2 域 位置 (線上の点) w1 w2 1 ç Z(wZ 1; wZ2) 増加 増加 ç2 Y Zの線上 不変 増加 3 ç Y (wY 1; w2Y) 減少 増加 ç4 V Zの線上 増加 不変 7 ç V (wV 1; w2V) 増加 減少 ç6 XY の線上 減少 不変 9 ç X(wX 1 ; w2X) 減少 減少 ç8 V Xの線上 不変 減少 これらの解析解は近似的に求めることができる。リスク資産が 1 個と 2 個の場合の準解析解の計算方法は Leland[5] を参照されたい。 2.2. DFO によるモデル化 リスク資産数が多くなると、解析的な最適解を求めることが難しくなる。近似的に準解析解を求めることは できるものの、収益率分布が正規分布に従わない、ジャンプを含むなど、複雑になった場合や制約条件を含む 場合などには対応することができない。このような場合、モンテカルロ・シミュレーションで収益率分布を記 述し、数理計画により多期間最適化モデルで解くということが考えられる。しかし、その場合でも「投資比率 が乖離許容領域内ではリバランスをせずに、境界 (乖離許容領域) を超えたならばリバランスをするというルー ルのもとで、その境界を決める」という問題を通常の数理計画モデルとして定式化を行い、解くことは難しい。 そこで、本研究ではより柔軟な設定に対してもこのタイプの問題を解くことができる解法である DFO(Derivative Free Optmization) を用いて、このタイプの問題の最適解を求める方法を提案する3。 DFO は目的関数の微分についての情報を用いずに数理計画問題を解く手法の総称である。本研究では、(株) 数理システム社の数理計画法パッケージ NUOPT のアドオンである NUOPT/DFO に実装されている「目的 関数を近似したモデル関数を用いる手法」を利用し、解を求める4。 23節に示す離散時間での数値分析において境界の内側にリバランスする問題設定でも境界比率に移動することが最適となった。数値 結果は同じになるため、論文の中では示していない。
3DFO については Conn, Scheinberg and Vicente[2], Nocedal and Wright[6] の第 9 章を参照されたい。
2.3. シミュレーションのアルゴリズム DFO で最適解を求めるために、目的関数を計算するシミュレーションのアルゴリズムを記述する。(1) 式を 離散化し、標準正規分布に従う確率変数 "iに対して、モンテカルロ法を用いて標準正規乱数を生成する。 ÅSi Si = ñiÅt + õi p Åt"i; "iò N(0; 1) (3) correl("i; "j) = öij (4) リスク資産の価格から比率を計算し、リバランス・ルールに基づいて投資を行う。リスク資産が 1 個と 2 個の 場合のアルゴリズムを以下に記述する。ここで、期間数を T 、サンプル数を M とする。 2.3.1. リスク資産が 1 個の場合
wmin と wmax をパラメータとして計算アルゴリズムを記述し、DFO における決定変数として設定するこ
とによって、問題を解く。 (1) t = 0 のとき、投資額を 1 として (W0(m)= 1)、w a(m) 1;0 = x a(m) 1;0 = w1Éとする5 。ここで、x a(m) 1t をリバラ ンス後のリスク資産投資額とする。 (2) t 時点のときのパス m のリバランス前のリスク資産額 xb(m)1t , 富 Wt(m), リスク資産比率 wb(m)1t を逐次的 に計算する (t = 1; . . . ; T ; m = 1; . . . ; M ) 。 xb(m)1t = ê1 + ñ1Åt + õ1 p Åt "(m)1t ëxa(m)1;tÄ1 Wt(m) = x b(m) 1t + (1 Ä w a(m) 1;tÄ1)(1 + r)W (m) tÄ1 w1tb(m) = x b(m) 1t Wt(m) wb(m)1t の値によって以下のようにリバランスを行い、wa(m)1t を計算する。リバランス後の資産額は xa(m)1t = wa(m)1t Wt(m)である。 wa(m)1t = 8 > < > : wmin ; wb(m)1t 2 [0; wmin) wb(m)1t ; wb(m)1t 2 [wmin; wmax] wmax ; wb(m)1t 2 (wmax; 1] (5) (3) 問題は以下のように定式化できる。 最小化 wmin;wmax C ë 1 M M X m=1 T X t=1 eÄ(rÅ t)t ö ïêwa(m)1t Ä wÉ 1 ë2 + kåååwa(m)1t Ä w1tb(m)ååå õ (6) 制約条件 0 î wminî wmaxî 1 (7) 2.3.2. リスク資産が 2 個の場合 図 1(右) の 4 つの点 (wV 1; w2V), (w1X; wX2), (wY1; wY2), (wZ1; w2Z) で囲まれる領域 (四角形) を乖離許容領域と する。これらの値をパラメータとして計算アルゴリズムを記述し、DFO における決定変数として設定するこ とによって、問題を解く。
(1) t = 0 のとき、投資額を 1 として (W0(m)= 1)、wa(m)i;0 = xa(m)i;0 = wÉ
i(i = 1; 2) とする。ここで、x a(m) it を リバランス後のリスク資産 i の投資額とする。 (2) t 時点のときのパス m のリバランス前のリスク資産額 xb(m)it , 富 W (m) t , リスク資産比率 w b(m) it を逐次的 に計算する (t = 1; . . . ; T ; m = 1; . . . ; M ) 。 xb(m)it = ê1 + ñiÅt + õi p Åt "(m)it ëxa(m)i;tÄ1 (i = 1; 2) Wt(m) = 2 X i=1 xb(m)it + † 1 Ä 2 X i=1 wi;tÄ1a(m) ! (1 + r)WtÄ1(m) witb(m) = x b(m) it Wt(m) (i = 1; 2) 50 時点ではパス m に依存しないが、便宜上、m を記述している。
wb(m)it の値によって表 1のルールに基づいてリバランスを行い、wa(m)it を計算する。リバランス後の資産 額は xa(m)it = wita(m)Wt(m) である。 (3) 問題は以下のように定式化できる。 最小化 wc j C ë M1 M X m=1 T X t=1 eÄ(rÅ t)t 8 < :ï 2 X i=1 2 X j=1 ê wita(m)Ä wÉi ë ê wjta(m)Ä wÉj ë õij + 2 X i=1 kiåååwa(m)it Ä w b(m) it ååå ) (8) 制約条件 0 î wV 1 î wX1 î 1 (9) 0 î w1Z î wY1 î 1 (10) 0 î wZ 2 î wV2 î 1 (11) 0 î w2Y î wX2 î 1 (12) 2 X j=1 wc j î 1 (c 2 fV; X; Y; Zg) (13) 3. 数値分析 : リスク資産が 1 個の場合 3.1. 設定条件 Leland[5] の設定条件を参考にして、表 2の設定条件のもとで分析を行う。表 2には、4節で分析を行うリス ク資産が 2 個の場合 (N = 2) も含めて記載する。 表 2: パラメータ設定 N = 1 N = 2 期待リターン ñ1= 12:5% ñ1= ñ2= 12:5% 標準偏差 õ1= 20% õ1= õ2= 20% 相関係数 | ö12= 0:2 割引率 r = 7:5% r = 7:5% 比例取引コスト率 k1= 1% k1= k2= 1% 政策ポートフォリオ wÉ 1 = 0:6 wÉ1= wÉ2= 0:4 トラッキング・エラー係数 ï= 1 ï= 1:3
数値分析に用いた計算機は、Lenovo ThinkPad T61(Windows XP, 2.5GHz, 3GB)、ソフトウェアは NUOPT Ver.14.1 (アドオン:NUOPT/DFO) と R Ver.2.10.1 である。
3.2. 予備分析 : 有限・離散時間モデル Leland モデル [5] は無限期間・連続時間モデル (T ! 1, Åt ! 0) を想定しているのに対し、本研究で取り 扱うモデルは有限期間・離散時間モデルである。有限期間が長く、微小時間が小さくなれば、無限期間・連続 時間モデルに近づくことが期待される。そこで、表 2のパラメータのもとで、 (分析 1a) 4 種類のÅt(0.05, 0.1, 0.3, 0.5) に対する 6 種類の期間数 (T =25, 50, 75, 100, 150, 200) (分析 1b) 4 種類の年数 (2 年, 5 年, 10 年, 20 年) に対する 6 種類の期間数 (T =10, 20, 40, 50, 100, 200) に対して、分析を行う。シミュレーション・パス数は 10,000 本である6。解析解は非線形連立方程式を解くこ とができる R 言語の nleqslv 関数で求解し、wSC
min= 0:5126, wmaxSC = 0:6692 である。また、DFO による最
適解 (以降、DFO 解) は NUOPT/DFO を利用して求解する。
wmin と wmaxが政策ポートフォリオ w1Éから離れるほど、取引コストは小さくなり、トラッキング・エラー
が大きくなる。そのトレードオフによって、wmin と wmaxの最適解が得られる。DFO 解を計算する前に、こ
の問題の性質を確認するために予備分析を行う。ここでは、(14), (15) 式のように、解析解と政策ポートフォ
リオの差の倍率 ã をパラメトリックに変化させて下限 wmin と上限 wmax を変え、取引コスト、トラッキン グ・エラー、目的関数値の変化を調べる。 wmin = ã(wminSC Ä w1É) + w1É (14) wmax = ã(wmaxSC Ä wÉ1) + wÉ1 (15) Åt = 0:2(年) で、期間が 20 年と 2 年の場合の取引コスト、トラッキング・エラー、目的関数値の変化を図 2に 示す。 2 0年 0 10 20 30 40 50 60 0.0 0 .5 1.0 1 .5 2.0 2.5 3.0 倍率 目 的 関 数 値 2年 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2 .5 3 .0 倍率 目 的 関 数 値 目的関数値 トラッキング・エラー 取引コスト 目的関数値 トラッキング・エラー 取引コスト 図 2: 取引コスト、トラッキング・エラー、目的関数値の変化 期間が 20 年の場合には、取引コストとトラッキング・エラーのトレードオフにより、目的関数の最小値近 傍で凸性が現れる。しかし、期間が 2 年の場合には、倍率 (ã) が大きくなると、取引コストが 0 のところで目 的関数値が最小になるため、最小値近傍で凸性が現れず、乖離許容幅がある値以上で退化してしまう7 。 表 3に分析を行う微小時間と期間数 (年数) の組み合わせを示し、予備分析で退化が起きた微小時間と期間数 の組み合わせに括弧を付ける。具体的には、分析 1a では Å = 0:05 で 2.5 年 (50 期間) と 1.25 年 (25 期間) の場 合、分析 1b では 2 年の場合のすべてである。 表 3: 分析パラメータ (分析 1a) 年数 (分析 1b) 微小時間 (年) Åt 0:05 0:1 0:3 0:5 年数 2 年 5 年 10 年 20 年 200 10 20 60 100 200 (0.01) 0.025 0.05 0.1 期 150 7.5 15 45 75 期 100 (0.02) 0.05 0.1 0.2 間 100 5 10 30 50 間 50 (0.04) 0.1 0.2 0.4 数 75 3.75 7.5 22.5 37.5 数 40 (0.05) 0.125 0.25 0.5 50 (2.5) 5 15 25 20 (0.1) 0.25 0.5 1 25 (1.25) (2.5) 7.5 12.5 10 (0.2) 0.5 1 2 これらの組み合わせでは図 2の 2 年の場合と同じことが起きており、最適解は退化する。特徴としては年数 が短い場合であることが分かる。 3.3. 基本分析 表 3の組み合わせに対して、DFO で最適解を求める。予備分析で最適解が退化する可能性のある組み合わ せが存在するが、それも含めて分析を行う。DFO で問題を解くときの初期値として、政策ポートフォリオと Ü1% 乖離させた値 (wmin = 0:59, wmax= 0:61) と解析解に近い値 (wmin= 0:5, wmax = 0:65) の場合の 2 種
7紙面の都合上、省略するが、w
minと wmaxを自由に変化させ、3 次元グラフで目的関数の形状を見ても同様である。期間が 20 年 の場合には (wmin; wmax) の周りの凸性が強く、目的関数の最小値が求まりやすいのに対し、期間が 2 年の場合には目的関数値は鍋底 型になっていて、退化していることを確認している。
類を試みることによって、初期値の影響についても検証する8。ただし、2節でも述べたように、Leland モデル
[5] はリスク資産 i の投資比率過程を近似しているので、解析解にはその誤差が含まれる。それに対し、本研 究では離散時間の枠組みの中では厳密に取り扱っているので、比較の際には注意が必要である。
紙面の都合上、一部のみを掲載するが、分析 1a に対する結果を図 3、分析 1b に対する結果を図 4に示す。解 析解は wmin[SC] と wmax[SC]、DFO で問題を解いたときの最適解は政策ポートフォリオと同じ初期値を使う 場合には wmin[DFO(a)] と wmax[DFO(a)]、解析解に近い値を初期値として使う場合には wmin[DFO(b)] と wmax[DFO(b)] と記載している。 Δt = 0.1 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 0 5 10 15 20 年数 リ ス ク 資 産 ・ 投 資 比 率 wmax[DFO(a)] wmin[DFO(a)] wmax[DFO(b)] wmin[DFO(b)] wmax[SC] wmin[SC] Δt = 0.5 40% 45% 50% 55% 60% 65% 70% 0 20 40 60 80 100 年数 リ ス ク 資 産 ・ 投 資 比 率 wmax[DFO(a)] wmin[DFO(a)] wmax[DFO(b)] wmin[DFO(b)] wmax[SC] wmin[SC] 図 3: 様々な期間数に対する結果の比較 (分析 1a) 10年 40% 45% 50% 55% 60% 65% 70% 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Δt リ ス ク 資 産 ・ 投 資 比 率 wmax[DFO(a)] wmin[DFO(a)] wmax[DFO(b)] wmin[DFO(b)] wmax[SC] wmin[SC] 20年 40% 45% 50% 55% 60% 65% 70% 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 Δt リ ス ク 資 産 ・ 投 資 比 率 wmax[DFO(a)] wmin[DFO(a)] wmax[DFO(b)] wmin[DFO(b)] wmax[SC] wmin[SC] 図 4: 様々な微小時間に対する結果の比較 (分析 1b) 図 3を見ると、Åt = 0:1 の 2.5 年のときに解析解と大きく乖離する。これは予備分析で退化したケースであ り、DFO がうまく機能していないわけではない。他のケースでは年数が長くなると、wminと wmaxの幅 (乖
離許容幅) はある一定値に収まっていく。 一方、図 4を見ると、微小時間が短くなるにつれて、wmin と wmaxの幅 (乖離許容幅) が広くなる。この理 由は微小時間が大きくなると、乖離許容幅を超えてもすぐに取引できないので、乖離許容幅が小さくなりやす いからである。また、取引コストが少なくなるため、相対的にトラッキング・エラーを小さくしようとするこ とも考えられる。解析解は投資比率過程が近似なので、一概には言えないが、微小時間が短くなるにつれて、 解析解に近づく様子が分かる。 初期値による違いは図 3の 1 ケースのみであるが、それは予備分析で退化したケースである。退化していな ければ、初期値に依存せずに最適解に収束することが確認できる。このことから、Leland モデル [5] は退化を していなければ、DFO によってうまく最適解を求めることができる。また、DFO 解は離散時間の最適解であ り、解析解 (連続時間の最適解) よりも目的関数が小さくなることが期待される。確認のため、DFO 解による 目的関数値の解析解による目的関数値に対する倍率を図 5に示す9。1 を下回っていれば、DFO 解の目的関数 8最適解の導出における初期値の影響は、DFO で問題を解くときの問題点だけでなく、R 言語を用いて非線形連立方程式で解析解を 求めるときにも生じる問題である。 9最適解が退化していても目的関数値は同一である。退化している場合を含めても問題ないが、誤解を避けるために図から除いている。 倍率は退化していない場合よりも、1 を大きく下回っている。
値が小さいことを表す。すべてのケースで 1 を下回っており、離散時間で有限期間においては解析解よりも良 い解が求められていることが確認できる。 分析1a 0.90 0.92 0.94 0.96 0.98 1.00 0 50 100 150 200 期間数 目 的 関 数 の 倍 率 Δt=0.05 Δt=0.1 Δt=0.3 Δt=0.5 分析1b 0.80 0.85 0.90 0.95 1.00 0 50 100 150 200 期間数 目 的 関 数 の 倍 率 5年 10年 20年 図 5: 目的関数の倍率 3.4. 感度分析 以下に示す 4 種類のパラメータに対する感度分析を行い、解析解と比較する。初期値として政策ポートフォ リオとÜ1% 乖離させた値 (wmin = 0:59, wmax= 0:61) を用いる。 è比例取引コスト率 k : 9 種類 (k = 0:1%; 0:3%; 0:5%; 0:7%; 1%; 1:5%; 2%; 2:5%; 3%) èトラッキング・エラー係数 ï : 7 種類 (ï= 0:3; 0:5; 1; 5; 10; 15; 20) è期待収益率 ñ1: 9 種類 (ñ1= 10%; 12:5%; 15%; 17:5%; 20%; 22:5%; 25%; 27:5%; 30%) èボラティリティ õ1 : 8 種類 (õ1= 15%; 20%; 25%; 30%; 35%; 40%; 45%; 50%) 微小時間を Åt = 0:1(年), 期間を 20 年として行った感度分析の結果を図 6に示す。 45% 50% 55% 60% 65% 70% 75% 0 5 10 15 20 トラッキング・エラー係数 λ リ ス ク 資 産 ・ 投 資 比 率 wmax[DFO] wmin[DFO] wmax[SC] wmin[SC] 45% 50% 55% 60% 65% 70% 75% 10% 15% 20% 25% 30% 期待収益 率 μ リ ス ク 資 産 ・ 投 資 比 率 wmax[DFO] wmin[DFO] wmax[SC] wmin[SC] 45% 50% 55% 60% 65% 70% 75% 10% 20% 30% 40% 50% ボラティリティ σ リ ス ク 資 産 ・ 投 資 比 率 wmax[DFO] wmin[DFO] wmax[SC] wmin[SC] 45% 50% 55% 60% 65% 70% 75% 0.0% 0.5% 1.0% 1.5% 2.0% 2.5% 3.0% 取引コスト率 リ ス ク 資 産 ・ 投 資 比 率 wmax[DFO] wmin[DFO] wmax[SC] wmin[SC] 図 6: 感度分析
取引コスト率、トラッキング・エラー、期待収益率はパラメータの変化に対して、解析解と同じように変化 している。ボラティリティwmin は解析解と同じように変化するが、wmaxは異なる。ボラティリティの大き さは資産価値の変化に大きな影響を与えるため、離散時間でのリバランスは (すぐにはできないため)、連続時 間の場合よりも保守的になる可能性がある。ボラティリティが大きい場合、それが乖離許容幅を狭めていると 考えられる。このように離散時間の場合、パラメータの変化に対して、解析解の変化とは多少異なる場合もあ るが、ほぼ水準は同じである。 4. 数値分析 : リスク資産が 2 個の場合 4.1. 基本分析 3.3節のリスク資産が 1 個の場合と同様に、2 個の場合も以下の有限期間と微小時間の組み合わせに対する分 析を行う。表 2のパラメータのもとで、 (分析 2a) 4 種類のÅt(0.05, 0.1, 0.3, 0.5) に対する 6 種類の期間数 (T = 10; 20; 40; 60; 80; 100) (分析 2b) 4 種類の年数 (1 年, 2 年, 5 年, 10 年) に対する 6 種類の期間数 (T = 10; 20; 40; 50; 80; 100) に対して、分析を行う。シミュレーション・パス数は 10,000 本である。リスク資産が 1 個の場合と同様の予備 分析を行う。表 4に分析を行う微小時間と期間数 (年数) の組み合わせを示し、予備分析で退化が起きた微小時 間と期間数の組み合わせに括弧を付ける。 表 4: 分析パラメータ (分析 2a) 年数 (分析 2b) 微小時間 (年) Åt 0:05 0:1 0:3 0:5 年数 1 年 2 年 5 年 10 年 100 5 10 30 50 100 (0.01) (0.02) 0.05 0.1 期 80 4 8 24 40 期 80 (0.0125) (0.025) 0.0625 0.125 間 60 (3) 6 18 30 間 50 (0.02) (0.04) 0.1 0.2 数 40 (2) 4 12 20 数 40 (0.025) (0.05) 0.125 0.25 20 (1) (2) 6 10 20 (0.05) (0.1) 0.25 0.5 10 (0.5) (1) 3 5 10 (0.1) (0.2) 0.5 1 分析 2a、分析 2b ともに 2 年以下のときに最適解は退化していることが分かる10 。 微小時間を固定した場合の結果を図 7、期間数を固定した場合の結果を図 8に示す。退化している場合には 図から除いている。 Δt= 0.1 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 2 5% 3 0% 35% 40% 45 % 50 % 55% 資産1・投資比率 資 産 2 ・ 投 資 比 率 4年 6年 8年 10年 準解析解 Δt=0.5 30 % 35 % 40 % 45 % 50 % 30 % 3 5% 4 0% 45% 50 % 資産1 ・投資比率 資 産 2 ・ 投 資 比 率 5年 10年 20年 30年 40年 50年 準解析解 図 7: 様々な期間数に対する結果の比較 (分析 2a) 10分析 2a の Åt = 0:05 の 3 年の場合もほぼ退化しているため、以降の分析では除いている。
5年 30% 35% 40% 45% 50% 30% 35% 40% 45% 50% 資産1・投資比率 資 産 2 ・ 投 資 比 率 Δt=0.5 Δt=0.25 Δt=0.125 Δt=0.1 Δt=0.0625 Δt=0.05 準解析解 10年 30% 35% 40% 45% 50% 30% 35% 40% 45% 50% 資産1・投資比率 資 産 2 ・ 投 資 比 率 Δt=1 Δt=0.5 Δt=0.25 Δt=0.2 Δt=0.125 Δt=0.1 準解析解 図 8: 様々な微小時間に対する結果の比較 (分析 2b) 図 7を見ると、最適解は準解析解とほぼ同じ乖離許容領域の形となっている。また、期間が長くなるにつれ て、乖離許容領域がほぼ同じ大きさになる。一方、図 8を見ると、微小時間が長くなるにつれて、乖離許容境 界が政策ポートフォリオに近づく (乖離許容領域が小さくなる)。この理由はリスク資産が 1 つの場合と同様で ある。 紙面の都合上、結果は省略するが、リスク資産が 2 個の場合も解析解で計算した目的関数値に対する DFO 解の目的関数値の倍率はすべてのケースで 1 を下回っており、離散時間で有限期間においては解析解よりも良 い解が求められることが確認できる。 4.2. 感度分析 3 種類のパラメータ (比例取引コスト率 ki、トラッキング・エラー係数 ï、相関係数 ö) に対する感度分析を 行い、準解析解と比較する。初期解は基本分析と同じである。 ki : 10 種類 (ki= 0:1%; 0:3%; 0:5%; 0:7%; 1%; 1:5%; 2%; 2:5%; 3%; 3:5%) ï : 10 種類 (ï= 0:5; 1; 1:3; 2; 3; 4; 5; 10; 20; 30) ö : 10 種類 (ö=Ä0:3~0:6(0.1 刻み)) 微小時間を Åt = 0:1(年), 期間を 10 年として行った感度分析の結果をそれぞれ図 9~図 11に示す。 準解析解 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 60% 20 % 25% 30 % 35% 40 % 45% 50% 55% 60% 資産1・投資比率 資 産 2 ・ 投 資 比 率
ki=0.1% ki=0.3% ki=0.5% ki=0.7% ki=1.0% ki=1.5% ki=2.0% ki=2.5% ki=3.0% ki=3.5% DFO解 20 % 25 % 30 % 35 % 40 % 45 % 50 % 55 % 60 % 20% 25 % 30% 35% 40% 45 % 50% 55% 60% 資産1・ 投資比率 資 産 2 ・ 投 資 比 率 ki= 0.1% ki=0.3% ki= 0.5% ki=0.7% ki= 1.0% ki=1.5% ki= 2.0% ki=2.5% ki= 3.0% ki=3.5% 図 9: 感度分析 (1): 比例取引コスト 比例取引コストが大きくなると取引コストを増加させないために乖離許容領域は大きくなる。また、トラッ キング・エラー係数が大きくなると、政策ポートフォリオからの乖離を大きくしないために、乖離許容領域は 小さくなる。これらは Leland モデルの準解析解と DFO 解の両方に見られる特徴であり、DFO 解もきちんと 計算されていることを表している。一方、Leland モデルの準解析解は相関係数が大きくなると、各資産の乖 離許容領域の上限同士、下限同士の端点が徐々に政策ポートフォリオに近づいている (四角形が徐々に小さく
なる)。一方、DFO 解では異なる資産の乖離許容領域の上限と下限を表す端点が政策ポートフォリオから遠く なっている (四角形の形状が変化している)。この特徴は DFO 解が準解析解では近似していた点をうまく表現 できていると考えられる。また、相関係数がÄ0:3 のときに準解析解の上限同士の和は 1 を超えていて、DFO 解とは大きく異なる。これは DFO 解を求めるときに空売りを許していないからである11。 準解析解 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 60% 25% 30% 35% 4 0% 45% 50% 5 5% 資産1・投資比率 資 産 2 ・ 投 資 比 率 λ=0.5 λ=1 λ=1.3 λ=2 λ=3 λ=4 λ=5 λ=10 λ=20 λ=30 DFO解 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 60% 25% 30% 35% 40% 4 5% 50 % 55% 資産1・投資比率 資 産 2 ・ 投 資 比 率 λ=0.5 λ=1 λ=1.3 λ= 2 λ=3 λ=4 λ=5 λ= 10 λ=20 λ=30 図 10: 感度分析 (2): トラッキング・エラー 準解析解 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 60% 資産1・投資比率 資 産 2 ・ 投 資 比 率 ρ=-0.3 ρ=-0.2 ρ=-0.1 ρ=0.0 ρ=0.1 ρ=0.2 ρ=0.3 ρ=0.4 ρ=0.5 ρ=0.6 DFO解 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 60% 資産1・投資比率 資 産 2 ・ 投 資 比 率 ρ=-0.3 ρ=-0.2 ρ=-0.1 ρ=0.0 ρ=0.1 ρ=0.2 ρ=0.3 ρ=0.4 ρ=0.5 ρ=0.6 図 11: 感度分析 (3): 相関係数 4.3. モデルの簡略化と計算時間の高速化 紙面の都合上、省略したが、100 期間の場合の計算時間は最大で 18 分程度かかる。問題の性質上、あまり計 算時間を気にする必要のない問題ではあるが、様々な感度分析を行うためには問題を高速に解く必要も生じ る。そこで、乖離許容領域の特徴を考慮して、決定変数の数を減らして、高速化を試みる。ここでは、乖離許 容領域を「平行四辺形」と仮定して問題を解き、目的関数値と計算時間を比較する。図 1の右図のリスク資産 が 2 個の場合を見てみよう。乖離許容領域を「平行四辺形」とする場合、4 つの端点は (16) 式のような関係に なる。 wX+ wZ = wV + wY (16) したがって、任意の 1 つの端点を除いて、変数を設定すれば、決定変数は 6 個のみとなる。さらに、基本ポー トフォリオが乖離許容領域の中心の場合、4 つの端点は (17) 式のような関係になり、隣り合う 2 つの端点に変 11他の相関係数に対する乖離許容領域の上限同士と下限同士は、政策ポートフォリオに対して対称に近いが、相関係数が Ä0:3 のとき には下限同士の方が政策ポートフォリオから離れる。
数を設定すれば、決定変数は 4 個のみとなる。 wX+ wZ = wV + wY = 2wÉ (17) (16) 式の場合をモデル A、(17) 式の場合をモデル B と呼び、オリジナルモデルと比較する。計算時間と目的関 数値の増加割合を図 12に示す。 計算時間 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000 0 20 40 60 80 100 期間数 計 算 時 間 ( 秒 ) オリジナル モデルA モデルB 目的関数の増加割合 0.0% 0.1% 0.2% 0.3% 0.4% 0.5% 0.6% 0 20 40 60 80 100 期間数 増 加 割 合 モデルA モデルB 図 12: 計算時間と目的関数値の増加割合 オリジナルモデルに対して、モデル A は約 67%、モデル B は約 27%に計算時間は大幅に減少する。それに 対して、目的関数値の増加分はモデル A はほとんど 0、モデル B でも約 0.4%である。目的関数値の増加分に 比べて、計算時間の減少は大きく、モデルの簡略化は極めて効果的である。 5. おわりに 本研究では、有限期間・離散時間の場合の取引コストを考慮した最適資産配分問題を議論した。DFO 手法を 用いた乖離許容領域の決定方法を提案し、リスク資産が 1 個と 2 個の場合の Leland モデル [5] について、それ ぞれ解析解との比較や、離散時間モデルの考察、感度分析などを行った。Leland モデル [5] ではある程度有限 期間が長ければ、微小時間の差が最適化に影響を与えることが分かった。また、有限期間が短い場合でトラッ キング・エラー係数が小さい場合には退化する場合があり、注意が必要である。また、リスク資産が 1 個の場 合には、比例取引コスト率、トラッキング・エラー、期待収益率、ボラティリティ、リスク資産が 2 個の場合 には、比例取引コスト率、トラッキング・エラー、相関係数に対する感度分析を行った結果、有限期間・離散 時間の場合もパラメータの変化に対して、多少異なる部分もあるが、解析解と同じように変化することを示す ことができた。 今後の課題として、リスク資産が 3 個以上の問題へ適用し、DFO 手法の適用可能性を調べる必要がある。 参考文献 [1] 数理システム: NUOPT/DFO 利用ガイド, 2011.
[2] Conn, A.R., K. Scheinberg and L.N. Vicente: Introduction to Derivative-Free Optimization, MPS-SIAM Series on Optimization, 2009.
[3] Donohue, C. and K. Yip: Optimal Portfolio Rebalancing with Transaction Costs, Journal of Portfolio Management, Vol.29, No.4(2003), 49-63
[4] Leland, H. E.: Optimal Asset Rebalancing in the Presence of Transaction Costs, U.C. Berkeley, 1996. [5] Leland, H.E.: Optimal Portfolio Management with Transactions costs and Capital Taxes, U.C. Berkeley,
1999.
[6] Nocedal, J. and S.J. Wright, Numerical Optimization, Second Edition, Springer, 2006.
[7] Pliska, S.R. and K. Suzuki: Optimal tracking for asset allocation with åxed and proportional transaction costs, Quantitative Finance, Vol.4(2004), 223-243.