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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

アーキアと真正細菌に見出された新規DNA修復酵素、

エンドヌクレアーゼQに関する研究

白石, 都

http://hdl.handle.net/2324/1807109

出版情報:Kyushu University, 2016, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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氏 名 :白石 都

論文題名 :Studies on a Novel DNA Repair Enzyme, Endonuclease Q from Archaea and Bacteria

(アーキアと真正細菌に見出された新規 DNA 修復酵素、エンドヌクレアーゼ Q に関する研究)

区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

遺伝情報を担う DNA は細胞内外からのストレスにより、絶えず損傷を生じる。中でも塩基の脱 アミノ化は最も頻発するDNA損傷の一つである。脱アミノ化は生理的条件下でも常に生じており、

とりわけ一本鎖や高温で促進される。シトシン、アデニン、グアニンの脱アミノ化体はそれぞれ、

ウラシル、ヒポキサンチン、グアニンである。脱アミノ化した塩基は正常な塩基対合を形成できな くなり、変異原性を有する。つまり、損傷部位の修復が行われなければ、遺伝情報の変化・損失を 招く。遺伝子の恒常性を保つため、すべての生物は DNA 修復機構を有することが知られている。

ウラシルについては、修復に関与するタンパク質やその修復経路の解明などの詳細な研究が盛んに 行われている。しかし、ヒポキサンチンの修復経路はほとんど研究がされておらず、まだ同定され ていないタンパク質がヒポキサンチン除去修復に関与しているのではないかと推測されていた。

著者はヒポキサンチン修復機構の解明のために、塩基の脱アミノ化が促進される環境下に生息す る超好熱菌アーキア Pyrococcus furiosus を用いて、新規修復タンパク質の同定を試みた。我々の研 究室による予試験において、ヒポキサンチンの5′側を切断する活性がP. furiosus の細胞抽出液に存 在することが分かっていた。そこで、著者は細胞抽出液をクロマトグラフィーによる標的の活性画 分の精製、精製画分の高感度質量分析により候補タンパク質を得た。この内、ホスホエステラーゼ ドメインに類似した配列を有し、アーキアの近縁種でよく保存された機能未知のタンパク質 PF1551 に着目した。PF1551 を組換えタンパク質として精製し、活性を調べたところ、細胞抽出液と同様の ヒポ キサ ンチ ン 5′側 の切 断 活性 を検 出し た。 ま た、P. furiosus の 近縁 種で あ る Thermococcus

kodakarensis にホモログTK0887 を見出し、PF1551 と同様の活性を示すことを明らかにした。さら

なる解析により、これらタンパク質はヒポキサンチンに加え、ウラシル、キサンチンなどの他の脱 アミノ化塩基および脱塩基部位をも切断することを明らかにした。このタンパク質は既知の修復タ ンパク質とは異なる性質を示し、配列上の類似性も有さないことから、Endonuclease Q (EndoQ)と命 名した。

次に、この新しく同定された EndoQの細胞内修復経路を解明するため、相互作用する他のタンパ ク質の探索を行った。EndoQのアミノ酸配列を解析したところ、PCNAとの相互作用アミノ酸モチ ーフ (PIP box) が保存されていることが分かった。生化学的実験により、T. kodakarensis由来のPCNA とEndoQは保存されたPIP boxを介して物理的相互作用を示し、さらにPCNAは濃度依存的にEndoQ のDNA 切断活性を促進することがわかった。これらの知見を以って、我々はPCNA を介したEndoQ の効率的なDNA修復経路モデルを提唱した。

EndoQ はアーキアにおいてThermococcalesとメタン生成菌に保存されているが、一部の真正細菌

にも保存されている。そこで、組換えタンパク質を用いて、アミノ酸配列だけではなく機能的な EndoQが真正細菌にも保存されているかを解析した。Bacillus pumilus由来のEndoQを用いて、切断 活性測定を行ったところ、アーキア由来のEndoQと同様の活性と基質特異性を示すことが明らかと

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なった。つまり、EndoQはアーキアに限らず、一部の真正細菌において実際に損傷塩基の修復を担 っていると考えられる。EndoQが一部のアーキアと真正細菌に保存されていることから、DNA修復 遺伝子の進化的観点からの理解が深まった。

修復タンパク質の遺伝子はほとんどの生物において致死遺伝子ではなく、バックアップ機構の存 在が示唆されている。そこで、細胞内 DNA 損傷修復経路の役割分担を調べた。好熱性アーキア Methanothermobacter thermautotrophicus由来のExonuclease III (ExoIII) がEndoQと一部同様の活性を 示すことが報告されていたので、ExoIII と EndoQ の両方の配列が保存されている常温性アーキア

Methanosarcina acetivoransにおいて両者の解析を行った。アーキアにおける修復遺伝子の分布解析

により、両者は独立した系で修復に関与することが示唆され、さらに活性は一部一致することが分 かった。両者は通常異なる系で修復を行っているものの、条件によっては、相補的な関係になりう ることを示唆する結果と考えられる。

以上の発見により、極限環境下という DNA 損傷が起こりやすい環境で、生物が遺伝情報を保持 するためにどのように特有の機構を獲得してきたかの深い洞察を得られたと共に、EndoQの分子進 化についての理解も深まった。損傷塩基修復に関係する酵素のさらなる解析は DNA 修復研究の新 たな展開と共に、DNA修復機構の進化の理解を深めることが期待される。

参照