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金融商品の分類及び測定

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Academic year: 2021

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IFRS 第 9 号フェーズ 1

「金融商品の分類及び測定」の

実務適用における論点

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背景 ... 3 金融資産 ... 4 負債性金融商品 ... 5 「ビジネスモデル」テスト ... 5 「契約上のキャッシュ・フローの特徴」テスト ... 16 ノンリコース・ローン ... 26 分類 – 契約により互いにリンクしている金融商品 ... 28 再分類 ... 35 資本性金融資産 ... 37 発効日及び移行措置 ... 40 発効日及びIFRS初度適用企業に対する移行措置 ... 45 金融負債 ... 46

内容

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背景

2009 年 11 月 12 日、国際会計基準審議会(以下、「IASB」 又は「審議会」)は、IFRS 第 9 号「金融商品」の第 1 フェー ズを公表した。IAS 第 39 号「金融商品:認識及び測定」は 最終的にIFRS 第 9 号に置き換わることとなる。IFRS 第 9 号(以下、「基準」)の第1 フェーズにおいて、IAS 第 39 号 が適用されるすべての金融資産の分類及び測定が取り 扱われた。2010 年 10 月 28 日、審議会は IFRS 第 9 号 を改訂し、金融負債に関する規定を定めた。また、同改訂 ではIAS 第 39 号における認識中止の原則も IFRS 第 9 号に組み込まれた。これらの改訂によりIFRS 第 9 号の第 1 フェーズ「金融商品の分類及び測定」が完了したことに なる。 IFRS 第 9 号は 2013 年 1 月 1 日より強制適用となるが、 各国の規制当局による承認を前提に、早期適用も可能で ある。ただし、IASB により最近完了した、適用日を検討す るプロジェクト中に関係者から受領したフィードバックに対 応する形で、IASB は 2011 年 8 月に、IFRS 第 9 号の強 制適用日を2013 年から 2015 年 1 月 1 日に延期するこ とを提案する公開草案を公表した(コメント期間は 10 月 21 日まで)。 アーンスト・アンド・ヤングは、IFRS outlook 200911 月増刊号 等 1 において、IFRS第 9 号の第 1 フェーズが公 表されたことから生じる金融商品に係る規定の主な変更 点を説明し、またビジネスに与えうる影響について簡潔な 解説を行っている。 新基準は、より原則主義に基づいた会計基準であり、IAS 第 39 号と比較すると、その規定と適用ガイダンスは多く はない。そのため、新基準を適用する際には慎重な判断 が求められる。当ブローシャーは、IFRS 第 9 号の導入に あたり、新基準のすべてが明瞭というわけではないという ことを認識しつつも、寄せられている主な疑問に対する弊 社の考えを示すものである。 IFRS 第 9 号は、公表されてからまだ日が浅く、世界を見渡 しても、すでに当基準を適用している国は限られている。 多くの重要な論点がいまだ議論されており、他の関係者 同様、弊社もアカウンティング・ファームとして、クライアン トにサービスを提供する際、当基準の実務における適用 の難しさを認識することもあった。当ブローシャーにおいて も、これらの疑問のいくつかについては、「明確な」回答は なく、結論を導く際に検討すべき要素を挙げているだけの ものもある。 IFRS 第 9 号を適用するなかで、さらに論点や疑問が出て くる可能性もあるが、時の経過と共に、ある程度のコンセ ンサスとベスト・プラクティスが醸成されることを弊社は期 待している。

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金融資産

IFRS 第 9 号では、金融資産の分類及び測定は、デリバテ ィブ、負債性金融商品、資本性金融商品のいずれである かにより、決定プロセスが異なる。すなわち、すべてのデ リバティブは、ヘッジ会計上、適格であり、かつ、ヘッジ指 定されない限り、純損益を通じて公正価値で測定(Fair Value Through Profit or Loss:FVTPL)される。負債性金 融商品は、一定のテストを充足した場合のみ償却原価で 測定され、それ以外は純損益を通じて公正価値で測定さ れる。なお、償却原価で測定するためのテストを充足する 場合であっても、測定上のミスマッチを回避するために、 公正価値オプション(Fair Value Option:FVO)を使用し、

純損益を通じて公正価値で測定することも可能である。ト レーディング目的で保有される資本性金融商品は、純損 益を通じて公正価値で測定される。その他の資本性商品 は、純損益を通じて公正価値で測定されるか、その他の 包括利益(Other Comprehensive Income:OCI)を通じて 公正価値で測定(Fair Value Through Other Comprehensive Income:FVTOCI)される。FVTOCI が選択された場合には、 後に当該投資が認識中止された場合であっても、公正価 値の変動累積額を OCI から純損益にリサイクルすること はできない。 はい いいえ はい はい はい いいえ いいえ いいえ はい 負債 デリバティブ 資本性投資 「ビジネスモデル・テスト」 を満たすか? 「契約上のキャッシュ・フ ローの特徴テスト」を満た すか? 公正価値オプション (FVO)を適用するか? トレーディング目的保有 か? その他の包括利益(OCI)を 通じて公正価値で測定する オプションを適用するか? OCI を通じて公正価値で 測定 純損益を通じて公正価値 で測定 償却原価 いいえ 概要: 金融資産の分類及び測定フロー・チャート

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負債性金融商品

デリバティブ以外の負債性金融商品であるすべての金融 資産に対して、当初認識後、償却原価での測定が可能か を判定する2 つのテストが適用される。 • 契約上のキャッシュ・フローを回収することを目的とす るビジネスモデルに従って資産は保有されているか (「ビジネスモデル」テスト) • 金融資産の契約条件は、特定の日に、元本及び元本 残高に対する金利のみを表すキャッシュ・フローを生 み出すか(「契約上のキャッシュ・フローの特徴」テスト) 「ビジネスモデル」テスト IFRS 第 9 号は、企業は金融資産の運用に関し、複数のビ ジネスモデルを有することもある点を明確にしている。す なわち、ビジネスモデルの評価は、必ずしも報告企業レベ ルで行う必要はなく、また個別商品ごとのアプローチでも ない。したがって、その評価は、それらの中間のレベルで 行われることになる。くわえて、特定の金融資産に関する 経営者の意図ではなく、経営幹部 2 さらに、IFRS 第 9 号は、ポートフォリオに含まれる一部の 投資が売却されたとしても、企業のビジネスモデルは継続 して契約上のキャッシュ・フローを回収することを目的とし て金融資産を保有することであると主張しうると述べてい る。すなわち、企業は、必ずしもそのすべての金融資産を 満期まで保有しつづける必要はない。IFRS 第 9 号は、金 融資産の売却が、契約上のキャッシュ・フローを回収する ことを目的とした資産の保有と整合する、もしくは整合しな い可能性のある幾つかの状況を例示しているが(図表 1 の要約を参照)、以下の各Q&A からも分かるとおり、その 評価には明らかに判断が求められる。 が定義したビジネスモ デルの目的に基づいて評価を行う必要がある。 2 IAS 第 24 号「関連当事者についての開示」は、経営幹部を「企業の取締役(執行役 図表1:ビジネスモデル・テスト – 要約 企業のビジネスモデルは、金融資産を保有し、その契約上のキャッシュ・フローを回収するものでなければならない。 たとえば、以下の理由で売却が行われる場合には、ビジネスモデルは、引き続き償却原価測定に適格となる可能性 がある。 • 資産がもはや投資方針と合致しない(たとえば、信用格付の低下) • 負債の満期と整合させるために投資ポートフォリオを調整する • 予期せぬ設備投資又は損失が発生し、必要資金を捻出するために資産が売却される 「頻繁でないとはいえない」頻度で売却が行われる場合には、償却原価での測定が適切とはならない可能性がある。 これには、事実及び状況に基づいた判断が必要であるが、その際には、以下を考慮する。

定量的な指標

売却頻度、取引量、売却価額

定性的な指標

金融資産が取得された目的、売却の理由、業績 管理手法、従業員報酬の決定方法、など 及び

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ビジネスモデル・テストを適用するレベル 考察 場合による。金融資産が、市場レートの変動による公正価 値変動を実現するためだけに運用されているわけではな く、契約上のキャッシュ・フローを回収するためだけに保有 されているわけでもないというビジネスモデルはありうる。 このように2 つのビジネスモデルが混在しているケースは IFRS 第 9 号でも検討されている。IFRS 第 9 号の公表以 前は、このようなビジネスモデルの中で保有されている金 融資産は、一般に売却可能(AFS)に分類されていた。この ため、公正価値に基づき運用されているとは限らないが、 満期前に重要な数量の資産を売却するようなビジネスに 対して、IFRS 第 9 号の新たなアプローチをどのように適用 するかは難題となりうる。 たとえば、企業は、満期及びリスクは類似するが、より高 い利回りを持つ他の資産を購入するために資産を売却す る可能性がある(「入替」(“switching”)として知られている プロセス)。この時、企業は、「公正価値変動による利益の 実現」というよりも、より高い長期利回りを確定させるため に、それにより損失が生じる可能性も承知した上で入替を 行っているかもしれない(IFRS 第 9 号 B4.1.5 項)。 IFRS 第 9 号の B4.1.3 項及び B4.1.4 項における適用指 針は、「ポートフォリオの中から頻繁でないとはいえない程 度の売却が行われる場合、企業は、そうした売却が契約 上のキャッシュ・フローを回収するという目的と整合してい るかどうか,また,どのように整合しているかを評価しなけ ればならない」、「一定の売却はこの目的と矛盾しない」と 述べている。ポートフォリオへの組入資産の部分的な変更 又は回転は、必ずしも償却原価測定と矛盾することには ならないものの(以下の設例を参照)、「頻繁でないとはい え な い 」 頻 度 で の 、 又 は 「 い く ら か 以 上 の(more than some)」売却は、そのような評価に疑問を生じさせる。 企業のビジネスモデルの目的が、鞘取りを通じて利益を 得るために定期的に資産を売買することにある場合や、 内部経営管理目的の情報では、業績が公正価値ベース で測定されており、とりわけ、それに基づき従業員に報酬 を与えている場合には、通常、償却原価測定が適切とは ならない。これらの要因、及び、基準の設例で示されてい る指標にくわえ、売却の理由と、投資対象が購入された時 点で売却が生じることが見込まれていたかどうかといった 点を考慮することも重要である。

Q1: 企業は契約上のキャッシュ・フローを回収する目的で金融資産を保有しているが、機会があれば

投資を売却する可能性がある。このような売却により、償却原価の適用は不適格となるか?

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ビジネスモデル・テスト – 設例 A 社は、満期が 3 年から 5 年の債券から構成される負 債性投資を100 億円保有している。IFRS 第 9 号の適 用前は、これらの債券投資は、IAS 第 39 号に基づき、 すべてAFS に分類されていた。通常、ポートフォリオの うち90 億円は満期近くまで保有されるが、残る 10 億 円は、少なくとも年に1回、売却及び再投資が行われ る。このような場合、企業は、ビジネスモデル・テストを 適用するにあたり、以下のいずれに該当するかの判断 が求められる。 (a) 2 つのビジネスモデル:(i) 満期近くまで保有され る負債性金融商品への投資 90 億円、及び (ii) 活発に売買される負債性金融商品 10 億円 (こ れらの資産を別々に識別できることを条件として) (b) 単一のビジネスモデルを 100 億円の負債性金融 商品のポートフォリオ全体に適用する シナリオ(a)が、より適切と考えられる場合には、大部 分の負債性金融商品を償却原価へ分類することがで き、残りはおそらくFVTPL として処理しなければならな い。これに対し、シナリオ(b)が、より適切と考えられる 場合、予想される売却及び再購入の水準が、ポートフ ォリオ全体をFVTPL に分類しなければならないほど重 要かどうかを判断しなければならない。 少なくとも年に1 回発生する、ポートフォリオの 10%の 売却及び再投資は、潜在的には、「頻繁でないとはい えない頻度」、及び/又は、「いくらか以上の」売却と捉 えられる可能性がある。しかし、IFRS 第9号は、頻繁で ない、もしくは、いくらかの売却は、企業のビジネスモ デルが契約上のキャッシュ・フローを回収するために 商品を保有するというものであるかどうかを判定する 際の(要件ではなく)指標であると述べている。考慮す べき他の要因には、売却の理由や、ビジネスの業績が 経営者にどのように報告され、評価されているかといっ た点が含まれる。ゆくゆくは、検討すべき要因につい て、また、公正価値に基づきで運用されていないビジ ネスモデルについて、どの程度の売却であれば、償却 原価測定の要件と矛盾しないといえるか、コンセンサ

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以下では、適用指針における「頻繁でないとはいえない頻 度」及び「いくらか以上の」売却の解釈に関する実務上の 論点について解説する。 追加前提 企業は、100 億円の負債性商品ポートフォリオを保有して いる。そのポートフォリオの運用を担当している従業員は、 ポートフォリオの長期利回りを最適化するよう、権限を与 えられている。したがって、その従業員は、ポートフォリオ 中の資産を定期的に売却し、その売却収入を、類似の満 期及びリスク・プロファイルを有するが、より高い利回りの 新規資産に再投資している。 より高い利回りを確定するために資産の入替を実施する 際には、売買損益が生じるが、その金額は重要ではない。 このようなプロセスは、かなり定期的に行われ、6 ヶ月の 間に、ポートフォリオ資産の約10%は入れ替えられる。た だし、10%の資産が入れ替えられているものの、ポートフ ォリオ全体の規模や構成内容は比較的安定している。当 該従業員は、ポートフォリオの全体的な利回りに基づき報 酬を得ている(すなわち、利回りの最大化が目的となる)。 よって、公正価値の上昇による利益、又は下落による損 失は、報酬を算定する際に考慮されない。経営者の文書 化された戦略及び主要経営指標(KPI)では、公正価値の 上昇による利益ではなく、長期利回りの最適化が強調さ れている。したがって、当該企業の経営報告では、ポート フォリオ中の負債性商品の公正価値ではなく、利回りに焦 点を当てた報告が行われている。当初認識時及びその後 の売却(及び再投資)時に、企業は入替対象資産を明確 に特定することはできない。 考察 特に検討しなければならない点は、企業が契約上のキャ ッシュ・フローを回収することを目的として資産を保有して いるのか否かということである。上述の要因に基づいた場 合、当該企業の目的は、公正価値変動による利益を実現 させることではないと主張できる場合もある。なぜなら、 • 入替時に、稼得した利益又は発生した損失が(稼得し た利息との比較で)重要ではない • 入替後も、ポートフォリオ全体の規模や構成内容は比 較的安定している • ポートフォリオの全体的な利回りに基づいて従業員は 報酬を得ており、公正価値の上昇による利益又は下 落による損失は報酬を算定する際に考慮されない • 経営者の文書化された戦略及び主要経営指標(KPI) では、公正価値の上昇による利益ではなく、長期利回 りの最適化が強調されている • 経営報告では、ポートフォリオ中の負債性商品の公正 価値ではなく、利回りに焦点を当てた報告が行われて いる しかし、アーンスト・アンド・ヤングは、企業の目的が公正 価値変動による利益を実現させることではないという事実 のみでは、償却原価による測定が適切であると結論付け るうえで不十分であると考えている。なぜなら、公正価値 変動による利益を実現させる目的ではないからといって、 必ずしも契約上のキャッシュ・フローを回収するために金 融資産ポートフォリオを保有しているとは限らないためで ある。IFRS 第 9 号には、頻繁ではない回数の売却及び 「いくらかの」売却は、この目的と矛盾するものではないと の記載があるものの、それ以上のガイダンスは示されて いない。今後、IFRS 第9号が適用されるに従って、これら の用語の一般的な解釈が形成されるものと考えられる。 それまでは、各企業は独自に判断を行う必要があるが、 個々の状況において、そのビジネスモデルが償却原価へ の分類に整合したものであると結論付ける前には、その 他の入手可能な情報を検討する必要がある。

Q2: 資産の入替

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追加前提 ある銀行が、流動性の確保を目的として、高格付であり、 かつプレーン・バニラの有価証券から構成されるポートフ ォリオを保有している。銀行は、ストレス・シナリオの下で 生じる予期せぬキャッシュ・アウトフローに備えるために、 当該ポートフォリオを保有している。この銀行の戦略は、 常にバッファーを確保することにあり、よって、ポートフォリ オの全体的な規模は安定しており、ポートフォリオを構成 する資産の通貨及び満期はあらかじめ定められている。 このポートフォリオの運用を担当する従業員は、あらかじ め定められたクレジット、通貨及び満期の基準を充足した、 バッファーとなる資産から稼得された利回りに基づき評価 される。ポートフォリオの公正価値の変動は、従業員に対 する報酬を決定する際に考慮されることはない。ただし、 従業員は、ポートフォリオの公正価値を把握しており、資 産売却の必要性が生じた際に調達できる金額は知ってい る。ただし、ポートフォリオは、その公正価値を最大化すべ く運用されているわけではない。 しかし、従業員は以下の理由から、ポートフォリオ内の資 産を定期的に売却し、また新たな資産を購入することによ り、ポートフォリオの入替を行なっている。 (i) 資産に流動性があることを確認するために、定期的 な売却を求める監督当局からの要請 (ii) 当銀行に流動性の問題が生じ、資産の売却を行った 場合に、それが強制売却であることが明らかになら ないように、(平時においても一定の売買を行うこと により)市場でのプレゼンスを維持したいと考えている。 毎月約 10%の資産の入替が行われる。ポートフォリオの デュレーションは、おおよそ 1 年であり、ポートフォリオの 入替が実施された際に稼得する利益又は発生する損失 は重要であると予想される。 考察 銀行の戦略及び従業員の業績評価方法は、本質的には トレーディングを志向したものではないが、ポートフォリオ の一部が頻繁に売却されており、ポートフォリオ入替時に は、公正価値変動により多額の利益又は損失が生じるこ とが予想されている。 IFRS 第 9 号では明確にされていないものの、アーンスト・ アンド・ヤングは、金融資産ポートフォリオを償却原価で測 定することが適格とされるような場合には、その銀行が、 公正価値変動により多額の売却損益が計上されることを 想定しているということはないであろうと考えている。この シナリオでは、公正価値変動による損益の発生が当初か らすでに予想されているため、契約上のキャッシュ・フロー を回収する目的で資産を保有しているものとしてビジネス モデルを評価するのは適切でないと思われる。 くわえて、毎月約 10%の資産の入替が行われているとい うことは、11 ヶ月経過した時点では、当初のポートフォリ オの僅かな割合しか引き続き保有されていないということ を意味している。これは、契約上のキャッシュ・フローを回 収する目的で資産を保有するというポートフォリオの目的 と整合していないように見える。よって、毎月ポートフォリ オの 10%を売却した場合、「いくらか以上の」売却とみな され、そのようなビジネスモデルの下では、償却原価で測 定することはできないかもしれない。 流動性確保のために保有するポートフォリオに関する議 論、及びそのようなポートフォリオがIFRS 第 9 号のビジネ スモデル・テストを満たすか否かは、いまだコンセンサス が得られていない分野の 1 つである。くわえて、銀行ごと に事実及び状況が異なり、類似点を比較することは難し いため、結果として基準の適用にバラツキが生じやすいと いえる。 結局、償却原価が、特定のビジネスモデルについて、もっ とも適切な会計処理であると決定するためには、企業固 有の事実及び状況を考慮したうえでの適切な判断が求め

Q3: 流動性確保の目的で保有する有価証券の売却

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売却又はローン・パーティシペーションの対象となるローン

Q4: 組成したローンの一部が売却やローン・パーティシペーションの対象となる場合、どのよう

に会計処理すべきか?

考察 企業は、ポートフォリオの一部を満期まで保有し、近い将 来に他の部分を他の銀行へ売却する、あるいは、ロー ン・パーティシペーションの対象とするためにローンを組 成することがある。この場合、IFRS 第 9 号の適用にあた って、当該企業は単一のビジネスモデル、あるいは 2 つ のビジネスモデルを持つと解されるのかが問題となる。 こうした場合、企業は、保有するためのローンと、売却又 はローン・パーティシペーションを行うためのローンを、異 なるスキル及びプロセスが求められる別個のビジネスモ デルと捉えることができる。前者の金融資産は、通常、償 却原価測定に適格となると思われるが、後者は、おそらく 適格とはならず、FVTPL に分類しなければならないであろう。 ローンの一部が売却又はローン・パーティシペーションの 対象になると評価される場合、単一の金融資産は、2 つの 別々のビジネスモデルに分類されうるのかという論点も生 じるが、すでにIAS 第 39 号においても、ローンの一部をト レーディング目的に分類し、他の部分を償却原価に分類 する実務が一般に行われていることからすれば、IFRS 第 9 号の下でも同様の処理は適用できるものと思われる。

Q5: Q4 で言及された売却又はローン・パーティシペーションが失敗した場合はどうなるか?

考察 一定の場合、従来、処分の意図があることを理由に、 FVTPL に分類していたものの、その後、意図していた売 却に失敗するという場合がある。 IFRS 第 9 号は、資産の当初認識時点におけるビジネスモ デルに従って分類を決定することを求めている。この例に おいて、企業が意図していた売却に失敗するという事実に より、必ずしも基準に従って再分類が要求されることには ならない。したがって、企業が処分に失敗したローン又は ローンの一部分は、引き続き純損益を通じて公正価値で 測定されることになる。

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頻繁でない事象による金融資産の売却

Q6: 頻繁でない事象により金融資産が売却される場合でも、依然、ビジネスモデルは償却原価

の要件を満たすか?

考察 この疑問は、事象の発生確率は、「頻繁でない」かもしれ ないが、売却された資産の一部は、「いくらか」以上である 可能性があるために生じる。たとえば、企業は、重大な損 失が発生した場合や、予期しない設備投資や事業買収の 資金を手当てする必要がある場合に、金融資産を売却す る必要があるかもしれない。このような場合には、これ以 外の事実や状況と共に、Q1 に対する考察で説明した要因 (特に、当該金融資産が取得された当初の目的)を考慮す る必要がある。 • アーンスト・アンド・ヤングは、取得当初においては、ビ ジネスモデルは償却原価測定に適格であると評価さ れていたが、取得時点では予期されなかった理由によ り、その後、稀に金融資産が売却される場合、ビジネ スモデルは、引き続き、償却原価測定に適格となる可 能性があると考えている。 • しかし、発生することが予想される設備投資や買収の 資金を捻出するために金融資産が保有される場合 に、当該金融資産を償却原価で計上するためには、 当該金融資産の満期に予想される保有期間を反映 する必要があるだろう。たとえば、買収が 6 ヶ月後に 起こると予想される場合、買収資金を手当てするため に用いられる金融資産は、それを償却原価で計上す る上では、通常、その満期は、およそ 6 ヶ月後(数年 後ではなく)としなければならない。 当初認識後の変更

Q7: ポートフォリオ保有の目的は、「ビジネスモデル」テストを満たすものの、後に資産の運用方

法が変更された場合には、どのように (i) 既存の資産と (ii) 新たに取得した資産を測定す

べきか?

考察 ポートフォリオの保有目的が、当初はビジネスモデル・テス ト満たすと判定されたが、その後に資産の運用方法が変 更され(たとえば、頻繁でないとはいえない頻度の売却を 行うことにより)、ビジネスモデルが、もはや償却原価測定 に適格ではなくなった場合、どのように既存の資産と新た に取得した資産を測定すべきかが問題となる。 頻繁でないとはいえない頻度の売却が起きたとしても、企 業のビジネスモデルについて根本的な変更が生じていな い限り、それにより再分類が求められる可能性は低い。 IFRS 第 9 号は、ビジネスモデルの目的が、突然で重大な 状況の変化により変更される場合に、資産を再分類する ことを求めているが、変更が漸進的である場合には、再 分類を要求も許容もしていない。 資産が再分類されないと仮定すれば、企業は、その後、 2 つのビジネスモデル(一方は既存資産について、もう一 方は新たに取得された資産について)を有しているかの ようにポートフォリオを処理することが必要となる。この 場合には、以前から保有されている金融資産は、引き続 き償却原価で測定され、新たに取得された金融資産は FVTPL で計上されることになる。

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法的には売却したものの、会計上の認識中止の要件を満たさない金融資産

Q8: ビジネスモデルを評価する際には、法的な資産の「売却」と、会計上の認識を中止のどちら

に基づき検討しなければならないか?

考察 企業が買戻条件付売却取引(レポ)を行う例を考える。企 業が契約に従って法的に資産を売却し、その後、再購入 するまでの間、金利は物理的に取引相手により回収され るものの、レポの対象資産は貸借対照表に認識され続ける。 さらに、ファクタリング・プログラムの一環として売却する意 図で組成された売掛金の例を考える。キャッシュ・フローを 得る契約上の権利は移転する一方、売却人は(たとえば 保証を行うことにより)信用リスクを保持するため、当該資 産の認識中止は認められない。 ここでの疑問は、償却原価で測定するために、企業は契 約上のキャッシュ・フローを物理的に回収しなければなら ないのか、それとも会計上、資産の認識を中止していな いだけで十分なのか、というものである。 IFRS 第 9 号は、この論点について具体的なガイダンスを 提供していないが、アーンスト・アンド・ヤングは、ビジネ スモデル・テストにおいて、企業が契約上のキャッシュ・ フローを回収するために資産を保有することを中止した かどうかを判定する上では、会計上の認識中止が決定 的に重要であると考えている。このアプローチを適用す ると、上述の両方の例(レポ取引とファクタリング契約。 両者ともその実質は金融取引である)について、償却原 価測定が適格であるという直感的に正しい回答が導か れよう。

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満期構成に基づくビジネスモデル

Q9: 銀行が、負債側のデュレーションと整合するように保有しているポートフォリオは、償却原価

で測定することができるか?

追加前提 ある銀行は、その定期預金勘定の予想デュレーションと整 合するような満期を有する商品に投資を配分している。被 投資資産は、類似の満期を有し、その金額は対応する預 金の金額に達している。それぞれの満期ごとの資産・預金 比率には、あらかじめ最低及び最大レベルが定められて おり、たとえば、予期せぬ預金の引き出しが生じたため、 当該比率が最大レベルを超えた場合、資産を売却するこ とによってこの比率を下げている。売却時には、利益が最 大となる、もしくは損失が最少となるように売却する資産を 選択している。 一方、(資産・預金比率が、あらかじめ定められた最小レ ベルを下回った場合には)必要に応じ、新たに資産を取得 している。預金の返済予想時期は、顧客の行動の変化に 基づき、定期的に見直されている。IAS 第 39 号の下では、 これらの資産は売却可能(AFS)に分類され、積極的にトレ ーディングを行ったという実績はない。 考察 預金の返済予想時期の見直しに伴い、資産の売却によ り資産・預金比率を調整することが、契約上のキャッシ ュ・フローを回収する目的で資産を保有するというビジネ スモデル・テストに抵触してしまうかが問題となるが、こ のような場合には、IFRS 第 9 号の B4.1.3(b)項を類推適 用することができる。そこでは、保険者は、負債の予想デ ュレーション(支払の予想時期)の変化を反映するため に、金融資産を売却することにより、投資ポートフォリオ を調整することがあるとされている。ただし、ガイダンス は、そのポートフォリオから頻繁でないとはいえない売却 が行われた場合には、そのような売却が契約上のキャッ シュ・フローを回収する目的での資産の保有とどのように 整合しているのかを評価する必要がある点を明確にして いる。 仮に、この銀行が、その預金の返済時期を予想するため の適切な過去の実績データを有していたのであれば、資 産の売却はそもそも頻繁に行われないはずであると考え られる。数多くの売却が毎年行われているのであれば、 そのような実務と契約上のキャッシュ・フローを回収する 目的での資産の保有とを合理的に結びつけることは困 難であろう。売却の重要性についても十分な検討を行う 必要があり、また適切な結論を導く上では、「いくらか以 上の」売却が行われた場合には、その売却理由に関して 更に分析することが求められる。

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大規模な多国籍企業に関するビジネスモデル評価

Q10: 大規模な多国籍企業について、ビジネスモデルはどのレベルで決定すべきか?たとえば、

以下のシナリオにおいて、連結財務諸表作成目的上、銀行グループは、いくつのビジネスモ

デルを有していることになるか?

追加前提 グローバルに活動している、ある銀行グループは、2 つの 事業(リテール・バンキング及びインベストメント・バンキン グ)を有している。これらの事業は、いずれも同じ5 箇所の 所在地で運営されているが、運営を行っているのは別個 の子会社である。各子会社には独自の取締役会があり、 グループの取締役会が決定した戦略目的を実行する責任 を有している。 インベストメント・バンキング事業により保有されている金 融資産は、グループの戦略がこれらの金融資産を活発に 売買することにあるため、FVTPL で測定されている。リテ ール・バンキング業務を行っている5 つの子会社のうち、4 つの子会社が保有する金融資産は、その契約上のキャッ シュ・フローを回収するために保有するものとみなされてい る。しかし、残りの 1 つの子会社には、その満期前の売却 が予想される資産が多額に存在する。これらの資産は、ト レーディング目的で保有されているわけではなく、その利 回りを最大化するために保有されている。結果として、この 子会社では頻繁でないとはいえない頻度の売却、及び、 いくらか以上の売却が予想され、この子会社単独で評価し た場合、償却原価で測定するための要件を充足する可能 性は低い。この子会社はグループのリテール・バンキング の10%を占めている。 考察 場合による。この銀行が、そのビジネスモデルをどのレ ベルで評価するかを決定するためには判断が必要とさ れる。したがって、事実及び状況に応じ、複数の結論が 導かれうる。 これは、銀行が会計方針として選択するということを意味 するものではなく、むしろ、企業の組織形態や管理方法 から観察される事実の問題である。多くの企業では、経 営幹部が全体的な戦略を決定し、その戦略を実行する 権限を他に委譲している可能性がある。全体的な戦略 及び委譲された権限の効果は、ともにビジネスモデルを 判断する際の検討要因に含まれる。結果として、どのレ ベルでビジネスモデルの評価を行ったかにより、ビジネ スモデルの数は2 つ(リテール・バンキング及びインベス トメント・バンキング)又は3 つ(インベストメント・バンキン グ、4 つの子会社に関するリテール・バンキング事業及 び5 番目の子会社に関するリテール・バンキング事業)、 もしくはそれ以上にもなりうる。

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ディスカウントで購入したローンに関するビジネスモデル

Q11: ディスカウントで取得したローンのポートフォリオは、償却原価で測定できるビジネスモデル

の範疇で保有しているものとみなすことができるか?

追加前提 ある企業は、不良債権から構成される多額のポートフォリ オを、その額面から大幅にディスカウントされた価格で購 入した。ポートフォリオを構成するローンは、契約上は、元 本及び元本残高に対する金利のみを支払うとされている。 ローンは不良化してはいるものの、購入企業は、契約上の キャッシュ・フローを可能な限り回収する意図を持ってこれ を保有している。 考察 購入企業のビジネスモデルは、取得したローンを契約上 のキャッシュ・フローを回収する目的で保有するというも のであり、市場でのトレーディングを目的としていない。 よって、このような状況において、購入企業は、購入した ポートフォリオを償却原価で事後測定することができる。 ポートフォリオを大幅な割引価格で購入したという事実 は、当該契約上のキャッシュ・フローが、「契約上のキャ ッシュ・フローの特徴」テスト(次のセクション参照)を満た す以上、この評価には関係がない。 この考えは、IFRS 第 9 号 B4.1.4 項の例 2 からも支持さ れる。この設例では、「発生済みの信用損失を伴う金融 資産が含まれている場合もあれば,含まれていない場合 もある」ローンのような金融資産のポートフォリオを購入 する企業のビジネスモデルについて検討しており、そこ では、契約上のキャッシュ・フローのすべてを回収するこ とを企業が予想していなくとも、企業のビジネスモデル は、契約上のキャッシュ・フローを回収することであると 結論付けられている。

(16)

「契約上のキャッシュ・フローの特徴」テスト

資産を保有するビジネスモデルの目的が、契約上のキャッ シュ・フローを回収することであると判定されると、次に、金 融資産の契約条件は、特定日に元本及び元本残高に対 する金利のみを表すキャッシュ・フローを生み出すかどう かを評価しなければならない。ここで、金利とは、一定期 間の元本残高に対する貨幣の時間的価値及び信用リス クへの対価と定義される。以下の図表2 は、償却原価測 定に適格となる場合とならない場合の特徴の例を挙げて いる。 図表2:契約上のキャッシュ・フローの特徴テスト 金融資産の契約条件が、特定日に元本及び元本残高に 対する金利のみを表すキャッシュ・フローを生み出す。 通常、償却原価測定と矛盾しない特徴: • 早期償還オプション、期限延長オプション • 固定/変動金利 • キャップ、フロアー、カラー • レバレッジされていないインフレ・リンク債 矛盾する特徴: • レバレッジ(たとえば、オプション、先物及びスワップ) • 転換オプション(たとえば、転換社債) • クーポンが固定金利マイナス LIBOR(たとえば、イン バース・フローター債) • 定期的に更改されるものの、金融資産の残存期間と 異なる一定の満期を反映して決定される変動金利ク ーポン • 元本又は金利、もしくはそれら両方を大きく減額する トリガー(たとえば、カタストロフィ債) インフレ連動債

Q12: 元本及び金利の両方の支払いがインフレ指数に連動し、元本が保護されていないインフレ

連動債は、償却原価測定が適格とされるか?

考察 IFRS 第 9 号 B4.13 項は、元本が保護されているインフレ 連動債を取り扱っており、そこでは、インフレ連動特性がレ バレッジされていない場合には、償却原価に適格であると 結論付けられている。ここでの疑問は、元本が保護されて いるという点が、この結論にとって決定的な要素か否かと いうことである。 アーンスト・アンド・ヤングは、インフレ連動がレバレッジ されていない限り、元本が保護されていないとしても、償 却原価測定は可能であると考えている。なぜなら、元本 と金利の両方の支払いがインフレに合わせて調整された としても、元本保護型のインフレ連動債と同様に、当該 支払いは元本残高に対する貨幣の時間的価値の対価 である「実質」金利を表すからである。

(17)

Q13: 上記 Q12 と関連し、A 社が、B 社の発行した固定満期のユーロ建債券に投資したとする。こ

こで、当該債券からの金利は、

B 社の主要な営業圏である、ユーロ域内 C 国のインフレ指数

に連動する。すなわち、当該債券のユーロ建金利は、欧州全体のインフレ指数に連動しない

が、この場合であっても償却原価測定が適格とされるか?

考察 適格である。この債券はユーロ建てであり、C 国は欧州域 内諸国の一つである。アーンスト・アンド・ヤングは、このよ うなインフレ連動性は償却原価測定に適格であると考えて いる。インフレ指数は、債券の発行通貨のインフレ率を参 照するが、それは、当該インフレ率がB 社をとりまく経済環 境を反映するものだからである。ここで、ユーロは、B 社 が属する経済環境の通貨である。すなわち、ユーロ域内 C 国のインフレ率を反映したインフレ指数は、B 社が事業 活動を行う経済環境における「実質」金利を反映するも のといえる。したがって、この場合には、A 社は、当該債 券からの金利は、元本残高に対する貨幣の時間的価値 と信用リスクの対価とみなすことができる。 コンスタント・マチュリティ債

Q14: クーポンが 6 ヵ月毎に 10 年物金利を参照して更改される 15 年物の変動利付国債への投

資は償却原価測定に適格となるか?

考察 適格ではない。IFRS 第 9 号 B4.13 項の設例 B は、各期 に支払われる金利が当該商品の残存期間と無関係に決 定される場合、その契約上のキャッシュ・フローは、貨幣の 時間的価値及び信用リスクへの対価のみを反映するもの ではない点を明確にしている。(多くの国において、)クー ポン金利が、定期的に金融商品自体に関連する期間と 無関係な参照レートへと更改されるタイプの金融商品は 数多く存在するが、IFRS 第 9 号の設例を見る限り、このよ うな商品は償却原価が不適格とされる可能性がある。 デュアル・カレンシー債

Q15: 金利が発行通貨と異なる通貨建てで支払われる金融資産は、元本及び金利の支払いのみ

を表す契約上のキャッシュ・フローを生み出すと考えられるか?

考察 状況による。IFRS 第 9 号 B4.8 項は、「契約上のキャッシ ュ・フローは、金融資産の発行通貨建ての元本及び元本 残高に対する金利の支払いのみを表すものか」を評価す るよう求めており、これは、満期時の元本への支払いと異 なる金額に基づき金利が計算される商品は、償却原価 測定が適格ではないことを示唆するものである。たとえ ば、元本はポンド建てで返済されるにもかかわらず、支 払われる変動金利が他の通貨建て(たとえば、米ドル) による一定の元本残高に基づいて計算される場合、金 融資産は元本及び金利のみの支払いを有するとはみな されない。

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Q16: 以下の特徴を有するデュアル・カレンシー債は、元本及び金利の支払いのみを表す契約上

のキャッシュ・フローを有するか?

追加前提 • 債券は、元本は、カナダドル建てであり、インドルピー 建て固定金利が支払われる。 • インドルピー建て固定金利は、当初の市場金利と、そ の時点の為替スポット・レートとフォワード・レートに基 づき決定される。 • 元本は満期にカナダドルで償還される。 考察 基準上は明確でないが、アーンスト・アンド・ヤングは、金 融資産が2 つの構成要素に分解でき、それぞれが契約上 のキャッシュ・フローの特徴テストを満たす場合には、金融 資産全体としてもこれを満たすと考えている。言い換えれ ば、この債券を、カナダドル建てのゼロ・クーポン債とイン ドルピー建て固定支払いキャッシュ・フローの組み合わせ とみなすことができ、両者が元本及び金利のキャッシュ・フ ローのみを表すとみなせるのであれば、デュアル・カレンシ ー債全体としても同様に解することができる。 同じ考えは、IFRS 第 9 号 B4.1.13 項の設例における商 品C、すなわちキャップ付変動利付債にもみることができ る。この適用指針は、こうした商品は、固定利付商品と変 動利付商品を組み合わせたものとみることができ、これ ら両方が契約上のキャッシュ・フローの特徴テストを満た すと結論付けられる場合には、キャップ付変動利付債全 体もこれを満たすと説明している。 なお、この結論は、分解された個々の構成要素が、とも にテストを満たすことを前提としているため、転換社債の ように、分解された構成要素のいずれかがこれを満たさ ない場合には、この考えを一部分のみに適用することは できない。 本問の商品と Q15 との違いは、当初に金利が固定さ れ、キャッシュ・フロー変動に対するエクスポージャーが ないという点である。 段階式金利(ステップ・アップ)金利の金融資産

Q17: 段階式金利(ステップ・アップ)金利を生み出す金融資産は、元本及び金利の支払いのみを

表すキャッシュ・フローを生み出すとみなせるか?

考察 契約により、当該資産の全期間にわたる段階式金利が当 初から設定されており、当初時点の正味現在価値が、当 該金融商品を市場レートでの固定金利で発行した場合の 正味現在価値と同額であれば、元本及び金利のみを表 すとみなすことができる。これに対し、段階式金利が、債 権者に対して貨幣の時間的価値と信用リスクの対価を 上回る補償を提供するものである場合には、償却原価 測定は適切とはならないかもしれない。

(19)

Q18: 上記 Q17 に類するケースとして、証券化ビークルが発行した、変動金利が当初期間(以下、

P1)後に段階的に引き上げられる債券への投資を考える。なお、金利引き上げは、発行体

が債券の償還権を可能となるのと同時(以下

P2)に行われる。このような債券への投資は、

元本及び金利の支払いのみを表すキャッシュ・フローを生み出すとみなせるか?

考察 状況による。この金融資産は、条件付でない発行体のコー ル・オプション(行使価格は額面、すなわち、元本及び未払 金利)と、オプションの行使期間の開始時点における金利 の段階的引き上げの組み合わせとみなせるが、期間全体 (P1+P2)にわたる支払金利が当初時点で契約により決定 されており、それが、その条件の下での市場レートである 場合には、償却原価測定への分類には影響しない。 この事実関係の下では、以下の 2 つのシナリオが考えら れる。 シナリオ1 • P1 中の金利マージンに含まれる信用スプレッドは、 P1 末が満期の、早期償還オプションのない比較可能 な金融資産に対する市場における信用スプレッドと等 しい。 かつ、 • 金利の引き上げは、当初時点で決定される、P2 末を 満期とする商品の市場における信用リスク水準への 見直しを表している。 この場合、当該金利は、類似の商品の市場金利を反映し たものであるため、契約上のキャッシュ・フローは、おそら く、元本及び金利の支払いのみを表すものと考えられる。 シナリオ2 次に、シナリオ1 と同様であるが、P2 時点での金利の引 き上げがシナリオ1より大きいケースを考える。このよう な引き上げは、発行体がP2 時点でコール・オプションを 行使し、早期償還を行うことを経済的に強制するために 行われる。この場合でも、オプションが行使されないとい うことは、発行体の信用格付けの引下げなど、市場条件 が当該債券の発行当初からの変化したことを示すもので あり、金利の引き上げも、保有者に対して、その時点に おける貨幣の時間的価値と、その状況に見合った信用リ スクの対価を補償するものであるため、IFRS 第 9 号 B4.1.11 項に合致すると解釈することも可能ではある。 しかし、上記のように、理論的には段階式金利が貨幣の 時間的価値及び信用リスクの対価であることも考えられ るものの、実際には、投資の当初認識時にこの判定を行 うことはできない。IFRS 第 9 号(BC4.117 項を参照)は、 金融資産の分類は、当該資産の残存期間全体にわたる 契約条件に基づき、当初認識時点に行わなければなら ない点を明確にしている。したがって、このシナリオにお いては、投資が償却測定上、適格とされることはないも のと思われる。

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Q19: 特定日までに、借手の利払前・税引前・償却前利益(EBITDA)あるいは、負債・資本比率

(D/E レシオ)が一定水準悪化した場合に、ベンチマーク金利に対するスプレッドが上乗せさ

れる財務制限条項(コベナンツ)が付されたローン契約は、元本及び元本残高に対する金利

の支払いのみを表すキャッシュ・フローであるとみなせるか?

考察 具体的な条件による。IFRS 第 9 号では、金利は、貨幣の 時間的価値及び信用リスクの対価と定義される。よって、 この財務制限条項が、貸手に対し、より高い信用リスクを とることへの対価を提供するものである場合には、当該ロ ーンは償却原価測定が適格とされる。これに対し、財務 制限条項が、単なる信用プロテクションあるいは、信用リ スクの増加分を上回るリターンをもたらすような場合(例: 貸手が、借手の業績に対する持分を得るようなケース) には、償却原価測定は適格とされない。 ベンチマーク金利の倍数として決定される金利

Q20: 金利がベンチマーク金利の倍数(例:3 ヵ月間の金利が 3 ヵ月物 EURIBOR の 2 倍に決定さ

れる)負債性商品は、元本及び金利の支払いのみを表す契約上のキャッシュ・フローを有す

るとみなされるか?

考察 みなされない。このような特徴はレバレッジであり、IFRS 第 9 号 B4.1.9 項は、レバレッジは契約上のキャッシュ・フロ ーの変動を増幅させるものであり、金利の経済的特徴を 有さない点を明確にしている。したがって、このような金 融資産はFVTPL に分類する必要がある。

(21)

入札金利債(オークション・レート・セキュリティーズ)

Q21: 金利が入札によって決まる金融資産の契約上のキャッシュ・フローは、償却原価測定に適格

となるか?

追加前提 入札金利債とは、満期は長期であるが、金利は、より頻繁 に入札によって更改される債券のことをいう。この入札手 続を通じて、金利は短期となり、投資も短期投資であるか のように扱われる。 入札が不成立となった場合(例:買手がおらず、新たな金 利が設定されない)、金利は、一定のペナルティ金利(上 限金利)に更改される。このペナルティ金利は、発行当初 に設定されるため、入札が不成立になった時点の市場金 利を反映するとは限らない。実質的には、ペナルティ金利 は、保有者に対し、入札が不成立に終わったために当該 金利について参照すべき金利がなくなり、流動性が欠乏す ることに対する補償を提供することを意図するものである。 考察 状況による。金融資産は、当該資産の残存期間全体に わたる契約条件に基づき、当初認識時点に 分類される (IFRS 9.BC4.117)。入札が失敗に終わることは、前提と しては見込まれていないとしても、当初認識時における 契約上のキャッシュ・フローの特徴テスト上は、これを考 慮しなければならない。すなわち、ペナルティ金利が、流 動性の低下による入札失敗を反映した当該商品の長期 信用リスクに対する保有者への補償であるとみなせるの であれば、当該ペナルティ金利はIFRS 第 9 号における 金利の定義を満たしうる。なお、こうした商品は、通常、 複数種類が発行されるため、契約上のキャッシュ・フロー の特徴テストを満たすか否かを判定する際には、個々の 商品ごとのペナルティ金利について慎重に検討する必要 がある。 オープン・エンド型のMMF 又は債券ファンドへの投資

Q22: 企業が保有するオープン・エンド型の MMF 又は債券ファンドの投資口は償却原価に分類す

ることができるか?

考察 おそらくできない。 オープン・エンド型ファンドとは、投資家がファンドの当初設 定後、通常はファンド純資産の公正価値で、いつでも投資 口を新期に取得又は既存投資口を解約することができる ものをいう。投資家が公正価値で取得又は解約することが できるということは、投資からのリターンは元本及び金利 の支払いを表さないことを意味する。 さらに、これらの投資は、ファンドの発行体側で資本の定 義を満たさないため、FVTOCI に分類することができず、 結 果 と し て FVTPL に分類されることになる。なお、 FVTOCI に分類される資本性金融商品については、Q40 を参照されたい。

(22)

満期延長条項付預金

Q23: 保有者の観点から、満期延長条項付預金(以下の事実関係を参照)への投資は、元本及び

金利のみの契約上のキャッシュ・フローを有するか?

追加前提 リテール銀行は、銀行側の裁量で満期を延長できる条項 の付いた定期性預金を提供することがある。たとえば、満 期5 年で固定金利が年 5%の定期預金だが、5 年経過時 点で、銀行は、同じ金利で、5 年間満期を延長するかどう か選択できるオプションを有しているとする。この場合、5 年後の市場金利が6%に上昇すれば、当初の 5%の金利 はこの市場金利より低く銀行にとって有利であるため、銀 行は満期を5 年間延長する可能性が高い。 考察 期限延長オプションは、それが、不確実な将来事象を条 件とするものでない限りは、通常は契約上のキャッシュ・ フローの特徴テストに抵触しない。オプションが将来事象 を条件とするものである場合には、IFRS 第 9 号 B4.1.11 項は、その条項が、発行者の信用悪化や発行者に対す る支配の変動、あるいは、関連する税制又は法律の変 更から,保有者又は発行者を保護することを目的として おり、かつ、延長オプションの条件により,延長した期間 中の契約上のキャッシュ・フローが元本及び元本残高に 対する利息の支払のみである場合には、抵触しないと説 明している。 なお、将来事象を条件とする、上記以外のオプションは FVTPL に分類される。

(23)

公正価値で早期償還される債券

Q24: 公正価値で早期償還されるプレーン・バニラ債券(発行体が公正価値を行使価格とするコー

ル・オプションを保有している債券)は、元本及び金利のみを表すキャッシュ・フローを有する

か?

追加前提 発行体は、コール・オプションにより、満期前に債券を買い 戻すことが認められる。オプションの行使価格は公正価値 であり、これは、行使時点における当該債券の未払元本と 金利の市場価格を反映して決定される。たとえば、満期 5 年の債券について、2 年後にオプションが行使されるとす る。この場合、公正価値は、残存期間3 年にわたる元本及 び金利の支払いを、類似の特徴を有する3 年物債券の市 場金利で割り引くことによって計算される。なお、コール・ オプションは、将来事象を条件にしていないものとする。 考察 行使価格が、当初の市場金利ではなく、行使時点におけ る適切な市場金利で割り引かれ決定される公正価値の 場合であったとしても、行使時点における元本及び元本 残高に対する利息の支払いを表すとみなせるであろうか? この点、債券の発行当初から市場金利が低下するケー スにおいては、市場価格による行使は、保有者に対し早 期償還に対する合理的な追加補償を提供するものと捉 えることができる(IFRS 第 9 号 B4.1.10 項)。 これに対し、金利が上昇するケースにおいては、保有者 は、額面を下回る未払元本と金利の公正価値分の金額 しか回収できない。すなわち、この場合、保有者は、早期 償還に対する追加的な補償ではなく、負の補償を受ける ことになるため、債券はFVTPL に分類する必要があると 解されることになる。 以上から、アーンスト・アンド・ヤングは、早期償還金額 のフロアーが額面である場合、すなわち、保有者が少な くとも債券の額面金額を回収できることが契約上明記さ れている場合には、当該早期償還金額は、元本及び金 利の未払残高とみなすことが可能であると考えている。

(24)

IFRS 第 9 号移行前における複合商品の契約条件の見直し

Q25: IFRS 第 9 号への移行前に、主契約の償却原価での測定を可能とするために、複合商品を 2

つの別個の商品として取り決め直すことは可能か?

考察 原則としては可能である。 企業が利益参加の特徴を含むローンを供与する例を考え る。企業は、当該商品を満期まで保有すると見込んでい る。当該商品は元本及び金利のリターンのみならず、借手 の利益に対する持分割合に基づく追加的なリターンをもた らす。 IFRS 第 9 号では、IAS 第 39 号により求められる金融資産 の組込デリバティブの区分処理が禁止されている。IFRS 第9 号の下では、多くの場合、このような商品は、全体とし て純損益を通じて公正価値で測定に分類することが求め られる。しかし、場合によっては、IFRS 第 9 号への移行前 に取引を2 つの商品、すなわち、一方を、償却原価に分類 できる主契約のローン、他方を純損益を通じて公正価値で 測定される利益分配に関するデリバティブ、として取り決 め直す(そして、それに応じてあらためて文書化を行う)こ とができるかもしれない。 アーンスト・アンド・ヤングは、このような処理は、再構築後 の2 つの商品が、実質的に別個の金融商品である場合に のみ行うことができると考えている。これに該当するかどう かを判断する上での指標には以下が含まれる。 i) 各商品を別々に清算又は譲渡できる。なお、これに は法的に可能性であるだけでなく、商業的な実行可 能性の検討も要する。 ii) 典型的なマスター・ネッティング契約を除き、一方の 商品に係るキャッシュ・フローが、他方のキャッシュ・フ ローに影響を及ぼす効果をもたらすような条項がない。 なお、2 つの新たな契約が、市場価格で締結される場合 には、当該商品を2 つの別個の商品として認識する上で のより強い根拠が得られる。 上記の場合には、IAS 第 39 号に基づき、元々の複合商 品の認識を中止するとともに、2 つの新たな商品を公正 価値で認識し、差額を純損益に認識する。

(25)

FVTPL に分類される金融資産に対するキャッシュ・フロー・ヘッジ会計の適用

Q26: IFRS 第 9 号により FVTPL に分類することが求められる金融資産の金利リスクについてキャ

ッシュ・フロー・ヘッジ会計を適用することができるか?

追加前提 IAS 第 39 号の下で貸付金及び債権に分類されていた変 動金利商品が、IFRS 第 9 号の契約上のキャッシュ・フロー の特徴テストを満たさず、移行後はFVTPL に分類されたと する。たとえば、金融資産からのリターンが、ベンチマーク 金利に、借手の利益に基づき計算されるパフォーマンス・ フィーを加え決定されるとする。これは、IFRS第 9 号の下 では、元本及び金利の支払いのみを表す契約上のキャッ シュ・フローとはみなされない。IAS 第 39 号の下では、こ のパフォーマンス・フィーは、組込デリバティブとして区分 処理され FVTPL として計上される一方、主契約は、貸付 金及び債権に分類されていた。金融資産は公正価値に基 づき運用されておらず、契約上のキャッシュ・フローを回収 するというビジネスモデルに従って保有されているものと する。 考察 原則として適用できる。ただし、この結論は、金融資産が 公正価値に基づき運用されておらず、又は、トレーディン グ目的ではなく、かつ、ヘッジ対象となる予定取引からの 将来キャッシュ・フローの発生可能性が非常に高い場合 にのみ適切となる。 IAS 第 39 号の下では、一般に、FVTPL の金融商品は適 格なヘッジ対象にならないと考えられている。しばしば参 照されるIAS 第 39 号の適用ガイダンス F2.1 は、デリバ ティブは,有効なヘッジ手段として指定されている場合を 除き、常にトレーディング保有の定義に該当し、純損益を 通じて公正価値で測定されると述べている。このガイダ ンスにより、純損益を通じて公正価値で測定される非金 融商品についてもヘッジ会計は適用できないと類推され る。しかし、IFRS第9 号では、償却原価測定が適格とさ れるビジネスモデルに従って保有される金融商品であっ ても、契約上のキャッシュ・フローの特徴テストを満たさな ければ、純損益を通じて公正価値で測定される。したが って、アーンスト・アンド・ヤングは、金融資産が公正価値 に基づき運用されておらず、トレーディング目的でもない 場合には、キャッシュ・フロー・ヘッジ会計の適用が認め られるべきであると考えている。 なお、IASB は、現在、IAS 第 39 号のヘッジ会計規定を 変更するプロジェクトを進めており、2011 年第 4 四半期 に最終基準を公表する予定である。2010 年 12 月に公 表された公開草案「ヘッジ会計」では、この論点は具体 的に取り扱われていないが、我々は、最終基準において は、この点を明確にすることを提案している。

(26)

ノンリコース・ローン

IFRS 第 9 号におけるガイダンスは、一部の金融資産は元 本及び金利と表現されるキャッシュ・フローを有するもの の、実質的にはそのような支払いを表さないことがあると 指摘している。その例として、債権者の請求権が、特定の 資産又はキャッシュ・フローに限定されていて、当該債権 から生ずる契約上のキャッシュ・フローが、たとえば貨幣の 時間的価値及び信用リスク以外の要素についての支払い を含むなど、もっぱら元本及び金利の支払いを表すわけで はないノンリコース・ローンが挙げられている。 しかし、債権がノンリコースであるという事実は、必ずしも 償却原価への分類が不可能であることを意味しない。特 定の資産又はキャッシュ・フローからの返済のみに対し て権利を与えられているノンリコース商品の保有者は、 裏付資産又はキャッシュ・フローをルック・スルーして、契 約から生ずる支払いが、「契約上のキャッシュ・フローの 特徴」テストを満たすか判定しなければならない。当該ロ ーンの条件が、元本及び金利の支払いと整合しない方 法で他のキャッシュ・フローを生じさせるか、キャッシュ・ フローを制限する場合、この要件は満たされない。この 後に続く疑問点に対する回答にみられる通り、基準のこ の分野は、より明確化されることが求められる。 プロジェクト・ファイナンス・ローン

Q27: プロジェクト・ファイナンス・ローンは、償却原価測定に適格となるか?

考察 場合による。貸付人は、IFRS 第 9 号のノン・リコースに関 する規定を適用し、原資産又はキャッシュ・フローを「ルッ ク・スルー」しなければならない。プロジェクト・ファイナンス に係るローンは、そのプロジェクトの業績に関連付けられ ていることがある。たとえば、有料道路の建設と保守管理 のためにローンが供与され、貸付人に対するキャッシュ・フ ローの支払いが、一定数以下の車輛しか当該道路を通 行しなかった場合に減額又はキャンセルされるケースを 考える。そのようなローンは、貸付人にとって、償却原価 測定に適格とはならない可能性が高い。同様に、キャッ シュ・フローが、融資先の事業の業績に明確に連動する ローンの場合も償却原価測定に適格とはならない。一 方、そのような業績連動がなく、プロジェクトにおいて損 失を吸収する十分な資本が存在するケースでは、償却 原価測定は適切となりうる。 特定目的会社(SPE)に対するローン

Q28: 特定の資産取得のために組成された SPE に対するローンは、償却原価測定に適格となる

か?

考察 場合による。もしSPE がローンを、それ自体は償却原価測 定に適格とはならない資産(たとえば、資本性証券、また は非金融資産)への投資に充て、当該ローンが唯一の 資金調達源であることから原資産の損失をすべて吸収 する場合、ローンはおそらく償却原価測定に適格とはな らない。

(27)

住宅ローン

Q29: 貸付人は住宅ローンを償却原価で測定することはできるか?

考察 一部の住宅ローンは、貸付人が、デフォルト時において借 入人に対する法的な遡求権を持たず、不動産担保にのみ 持つようにストラクチャリングされている一方、借入人が、 他に限られた資産しか持たず、(法的にはノン・リコースで はないが)実質的にノン・リコースといえる住宅ローンが存 在するなど、さまざまな種類の住宅ローンがある。一般的 に、アーンスト・アンド・ヤングは、住宅ローンのような通 常の担保付ローンは、IFRS 第 9 号のノン・リコース規定 の対象となることは意図されていなかったと考えている。 したがって、ローンが法的にノン・リコースであるか否か に関わらず、償却原価測定に適格となる。しかし、当初 時点のローンの期待返済額が、主に担保価値の将来に おける変動に左右され、ローンが実質的に不動産市場 への投資と捉えられる場合、償却原価への分類が適切 であるかについて疑念が生じる。

図表 4:設例:ルック・スルー・テストの適用

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