北海 道 の雪氷
No.17(1998)
勾 配 屋 根 に お け る軒 下 堆 積 雪 形 状 の観 測
長 谷 川 哲 哉
,伊
東 敏 幸,苫
米 地 司 (北 海 道 工 業 大 学)1.は
じめ に積 雪 地 域 に お い て 滑 落 した 屋 根 雪 の 軒 下 堆 積 が 建 築 物 に及 ぼ す 問 題 と して
,軒
下 堆 積 雪 深 の 増 加 に よ る開 口部 の 遮 へ い (写 真1)や
軒 下 堆 積 雪 と外 壁 面 の 接 触 (写 真2)に
よ る 材 料 劣 化 等 が あ る。 これ らの 雪 害 を 防 止 す る に は,屋
根 雪 の 軒 下 堆 積 雪 の 形 状 を適 切 に予 測 す る必 要 が あ る。 既 往 の 研 究1〜4)を
み る と,幾
通 りか の 軒 下 堆 積 雪 形 状 の推 定 手 法 が 提 案 され て い る。しか し,そ
れ らは実 際 の 滑 落 現 象 に対 応 して い な い場 合 が 多 い こ とか ら,筆 者 らは屋 根 雪 の 滑 落 現 象 に 対 応 した 推 定 手 法 を提 案 して き た。 図
1に
実 測 値 の存 在 す る 新 庄 市 に つ い て 気 象 デ ー タ を 基 に 推 定 した 結 果 を示 す 0。 本 推 定 で は 滑 落 す る 外 気 温 を0℃ ,滑
落 した 直 後 に お け る堆 積 雪 の 法 面 勾 配 を45度
と設 定 して い る。 ま た圧 密・ 沈 降 は 地 上 積 雪 と同割 合 で 沈 降 させ て い る。しか し,図
の よ うに実 測 値 と推 定 値 に差 が み られ,この 差 は圧 密・ 沈 降 の推 定 方 法 に 問題 あ る と考 え る。 この こ とか ら本 研 究 で は推 定 に必 要 な圧 密・ 沈 降 の 実 測 デ ー タ を得 る た め の 実 験 を行 つ た 。
写 真
1
軒 下 堆 積 雷 に よ る採光 障害 写 真2
軒 下 堆 積 雷 に よ る外壁材 の 劣化→∞‑200 0 2∞ 400 ∞0 00010∞■2∞ 14∞ 1600 軒先からの距離(crn)
図
1
新 庄 市 に お け る推 定値 と実 測 値―
E楓ホ平長29m ■条件軒萬12. 轟 軒出4m m庫燎籠欧 ″ko.38 粘着抵抗力0句た ●
写 真
3
屋根 と堆積 形状観 測 箱‑34‑
蜘 劃 司
¶
北海 道 の雪氷
No 17(1998)
2.実
験 方 法実 験 は
,写
真3お
よ び 図2の
よ うな 屋 根 と 滑 落 した 屋 根 雪 の 形 状 を観 る た め の 堆 積 形 状 観 測 箱 を 用 い て 行 つ た 。 観 測 箱 の 側 面 は 透 明 な ポ リカ ー ボ で 仕 上 げ,堆
積 雪 の 断 面 形 状 が 観 測 出 来 る よ うに した 。 屋 根 の 寸 法 は,長
さ 360c口,幅
は 堆 積 形 状 観 測 箱 よ り 広 い 120c■,勾
配04と
し,葺
工 法 は横 葺 き と した 。 この よ うな 試 験 体 を 用 い,軒
下 堆積 の 基 本 的 形 状 を 把 握 す る た め
,幅
120cn,長 さ 270cm, 深 さ 10cm, 密 度 150kg/口3の屋 根 雪 を連 続 して 滑 落 させ る 実 験 を
12月
に行 っ た 。 1月 か らは 自然 降 雪 下 で の 堆 積 状 況 を 連 続 的 に 観 察 した 。 ま た,屋
根 雪 が 滑 落 した 翌 日に,写
真4の
よ うに 軒 下 堆 積 雪 の 上 面7ヶ
所 に 圧 密 ・ 沈 降 を 測 定 す る た め の 目印 木 片 を 積 雪 期 間 内 に5回
入 れ,そ
の 区 間 距 離 の 変 化 を 測 定 す る こ と に よ り積 雪 層 別 の 圧 密 に よ る沈 降 量 を評 価 した 。3.実
験の結果および考察3‑1
軒下堆積雪形状図
3は
降雪期 における軒下堆積雷形状の変 化を示す。1月
11日 の落雪時は密度の小 さい図
2
試 験 体 寸 法 図写 真
4
堆 積 雷 断 面 の 沈 降 量 測 定雪 の 上 に落 雪 した の で
,こ
の言 が 落 下 の衝 撃 で圧 密 され,堆
積 形 状 に 変 化 は な く平 坦 な ままで あつた。1月 18日
か ら2月 2日 にか けて,堆
積 高 さが急激 に増加 す るが,こ
れ はこの期 間 の軒 下へ の降 雪 が含 まれ るた めで あ る。 そ の 後 は落 下 と降 雪 が繰 り返 され て, 法 面 勾 配 は徐 々 に大 き くな つて い く。 基 本 的 形 状 の把 握 の た め に行 つ た促 進 実験 の結 果
を図
4に
示 す 。 落 雪3回
目ま で は堆 積 雪 の頂 点 が 軒 先 よ り遠 くに な って い るが,そ
の後 は徐々に軒先へ近づいて行 く。形状 は 自然落雪に比べ る と法面が急勾配 にな るが,こ
れは軒下への降雪や経時的な圧密・沈降が生 じていないためと考 える。
11∞
II]
1∞
■
1011i
∞
∞
● a 0
∞ 0 つ 0
0 日
4
1∞ all m
…
い 連 続 的 に 滑 落 さ せ た と き の 形 状
績=E根(こは ぜ)
‑35‑
m m
欄
… い
北海道 の雪 氷
No.17(1998)
写 真
5に
縦 葺 屋 根 の 体 育 館 に お け る 軒 下 堆 積 雪 形 状 を 示 す 。 縦 葺 き で 緩 勾 配 屋 根 の 場 合,屋
根 雪 が 軒 先 で せ り出 し,細
切 れ に な つ た 雪 が 軒 下 に 落 下 す る こ と に よ り,雪
の 飛 距 離 が 小 さ くな る。 そ の た め に 法 面 勾 配 が
45度
前 後 に な る。 これ に対 し今 回 の 実 験 で 使 用 した 屋 根 は 屋 根 雪 が ス ム ー ズ に 滑 落 す る屋 根 を 採 用 して い る た め,屋
根 雪 の 飛 距 離 も大 き く,そ
の 雪 が 少 し砕 け て 落 雪 す る。 この よ うに 屋 根 葺 工 法 に よ っ て 落 下 時 の 雪 の 状 態 が 異 な る こ とか ら,葺
工 法 に よ る推 定 手 法 の 違 い を考 慮 す る必 要 が あ る と考 え る。3‑2
積 雪 層 内 の圧 密・ 沈 降図
5に
軒 先 か ら50,150お
よび250cmに
お け る積 雪 層 内 の 区 間 距 離 の 変 化 を 示 す 。 地 上 か ら
1段
目の 区 間 距 離 は1月 18日 に お け る 降 雨 の影 響 で 急 激 に減 少 して い る。 こ の 降 雨 とそ の 後 の 外 気 温 変 化 に よ り軒 下 堆 積 雪 の 密 度 が 大 き くな っ て い る た め に,そ
の 後 は緩 や か に 沈 降 す る。
1段
目か ら2段
目は 降 雪 に よ り密 度 の 低 い 雪 が 堆 積 して い るた め
,そ
の 圧 密 の進 行 は急 激 で あ るが (グ ラ フ 内 に 期 間 内 に お け る1日 あ た りの 圧 密 を 示 す 。),そ
の 後 は緩 や か に な り, 3月
に な る と停 止 す る。2段
目か ら3段
日, 3段
目か ら
4段
目 に 関 して も 同 様 に,始
め は 圧密 の 進 行 が 著 しい が 時 間 が 経 つ に つ れ て そ の 変 化 が 緩 慢 に な り
,(1.6%/day→ 0.2%
/day, 2,30/0/day― →0.40/0/day) 晃トリ桂に は 圧 密 が 停 止 す る と い う傾 向 が み られ た 。 観 測 期 間 内 に お け る 軒 先
150cm地
点 で の 区 間 距 離 は 何 れ の 区 間 で も約6.5割
に減 少 して お り,積
雪 層 別 の 違 い は 少 な か つ た 。 ま た,軒 先 か らの 距 離 に お け る圧 密 の 違 い は殆 ど 確 認 され な か つ た。
3‑3
圧 密 に及 ぼす 外 気 温 と降 雪 量 の影 響 図6は
軒 先 か ら150cm地
点 の 堆 積 雪 層 別 の 圧 密 状 態 と堆 積 雪 深 お よび 平 均 温 度 の 変 化 を 示 した も の で あ る。 軒 下 堆 積 雪 深 は2写 真
5
体 育館 の軒 下 堆積 雷 形状・ 軒 先150m地点における瀾定翔固 内の区日巨離童 化
●32cm‑211on
1/5 1/25 2/14 3/6 3/26 4/15
図
5
軒 下 堆積 雷 の層 内圧 密の状 況Ю
∞
∞
∞
10 0
︲ 70
m m 0 3︒ a l︒
︒
︵5
︶善
■ 国
︵5 む 晏 目
ん 庁
= 口 U R
﹂ F L r L F
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L ん
︲ 70
∞
∞
∞
10 0
︲
宅じ書躍E凶
7︒
∞
∞ 節 10 0 1 詈
1段目か ら2段目 ・41cm‑27cm
,… 協
一 い …1輸
― 櫛 ¨
‑36‑
1/25 2/14 3/6 3/26 4/15
1/25 2/14 3/6 3/26 4/15
3段目 か ら4段目 。25cm― :6cm
北 海 道 の雪 氷
No 17(1998)
月 19日に 最 大 に達 して い るが
,そ
の 後 も同 じ よ うに圧 密 は続 い て い る。 これ は 雪 荷 重 と共 に 経 時 的 な 雪 質 変 化 が 関 わ つ て 圧 密 が 進 行 して い る こ と が 判 る。 3月 後 半 に な る と圧 密・ 沈 降 は ほ ぼ 停 止 す るが,こ
の 時 の 密 度 は400〜500k8/国 。とな つ て い る。 な お,落 雪 日に も若 千 な が ら沈 降 して い る こ とか ら
,落
雪 の 衝 撃 に よ る圧 密 も確 認 され た 。3‑4
融 雪 に よ る堆 積 雪 の 減 少3月
後 半 か ら の 堆 積 雪 深 減 少 は 融 雪 に よ る影 響 が 大 き い と考 え られ る。 図7に
最 後 の 滑 落 雪 日の 翌 日で あ る3月17日
を 起 点 として
,外
気 温 に お け る 毎 時 ご と の プ ラ ス 温 度 を 積 算 した 積 算 暖 度 と堆 積 深 減 少 量 と の 関 係 を 示 す 。 積 雪 曖 度 が 同 じ場 合 で も堆 積 雪 減 少 量 に バ ラ ツ キ が み られ る が,こ
れ はそ の 日の 外 気 温 低 下 の 影 響 に よ る も の と考 え る。 図 の よ うに
,積
算 暖 度 と堆 積 雪 深 減 少 量 は 線 形 関 係 に あ る こ と か ら,融
雪 に よ る堆 積 雪 深 の 減 少 は 外 気 温 に よ る 推 定 が 可 能 とい え る。4。 ま と め
本 研 究 で は
,軒
下 堆 積 雪 形 状 を推 定 す る上 で 必 要 な圧 密 に よ る沈 降 の 実測 デ ー タ を得 る こ とを 目的 と した。 屋 根 雪 の飛 距 離 や 砕 け方 は屋 根 葺 工 法 に よ つて 異 な り,こ
の 違 い が軒― GL‑1'日 一 10P
囀 0
0
―│
‑10
‑15 日付
図
6
軒 下 か ら150cln地点 の 区間 距 離 と最 大 堆 積=新
お よび 平 均温度^ εじヽ■麟
■0¨,x'●OIXX 4■ ●
ば =0●307 ̲ ノ ノ
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2¨ 0000 ¨
鰤 薇
"曖=(DD) 図
7
融 雷 期 に お け る堆 積 雷 深 減 少 量と積 算暖度
下 堆 積 言 形 状 に も影 響 す る こ とが 解 つ た。 ま た
,圧
密 は 堆 積 雪深 増 加 に よ る雪 荷 重 と雪 質 変 化 に よ る 影 響 を受 け,そ
の 変 化 は 経 時 的 要 因 に も支 配 され て お り,外
気 温 の 変 動 に よ る影 響 は小 さい もの と考 え られ る。 滑 落 終 了 後 の 軒 下 堆 積 雪 深 は融 雪 に よ る影 響 が 大 き い と考 え る と,そ
の 融 雪 量 は0度
以 上 を積 算 した 積 算 暖 度 に よ る推 定 が 可 能 で あ る。これ らの デ ー タ を基 に精 度 の高 い推 定 手 法 を確 立す る こ とが 今 後 の課 題 で あ る。
【参考文献】
1)大野和男 :軒 下の堆雪量の算定
,北
海道建築技術 セ ンター レポー ト,No ll,pp 3‑4,1975 2)中村秀臣 :滑 落 した屋根雪の堆積形状,言
氷,40巻
1号,pp 37 41,19783)遠藤八十一
,他
6名 :屋 根雪の清落条件 と飛距離,第
4回寒地技術シンポジウム講演論文集,pp 220‑225, 1988 11
4)滝 田貫,渡辺 正 明 :滑 落 した 屋 根 雪 の 堆 積 形 状 算 定 図 表,日本 雪 工 学 会 誌,Vol 14,p,126132,19984
5)阿 部修 :大型 傾 斜 屋 根 の 軒 下 落 言 の 堆 積 形 状 (観測 と予 測),第 13回日本 雪 工 学会 大会 論 文 報 告集,
pp 159‑164, 1996 11
5100
目
1∞■ 口 140
,21 1∞
∞
∞
0
20 0
1/101/25 2/3 2/132/24 ,電 3/153/23 4/4
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