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小児心房中隔欠損症における超音波検査法の意義をめぐって

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日本小児循環器学会雑誌 14巻5号 603〜606頁(1998年)

<Editorial Comment>

小児心房中隔欠損症における超音波検査法の意義をめぐって

千葉県こども病院循環器科 青墳 裕之  1)心房中隔欠損評価における右室容量負荷程度を評価することの意義

 心房中隔欠損症における超音波検査法においても定量的評価が重要である.肺体血流量比の推測法には,大 動脈および肺動脈径の計測とパルスドプラ法による流速波形の積分から肺動脈および大動脈血流を求めその 比率から計算する方法1),またはその簡易法2),経食道心エコー法を用いて欠損孔の断面積とシャント血流の流 速を求め同様にシャント流量を求める方法3)4)などが従来より知られ,いずれもカテーテル検査等による評価と

よく相関するとの報告である.しかしながら,前者は血管径の計測に起因する誤差が二乗されて大きく影響し,

また後者の方法は円形でなくかつ心周期内においても常に変化する5)心房中隔欠損孔の断面積計測にi無理があ り,大きな誤差が発生する可能性がある.臨床においては右心系の拡大程度を聴診所見,レントゲン,心電図 所見6),超音波断層法などにより判断することによりシャント量の多寡を推測するであろうし,そのほうが大き な誤差の発生する可能性は少ない.さらに心房中隔欠損症では左室容積も正常より小さいことが多い7)ことを 考慮すると,両心室の拡張末期容積の比率はより鋭敏に肺体血流比を反映することが推測される.よってそれ

らを正確に評価できれば,よい肺体血流比の指標となる可能性は高い.高らの論文はこの点に着目し優れたア プローチと言える.

 2)一次元的計測による心室容積評価法の問題点

 しかし高らの論文における左右心室径の比率による肺体血流比の評価方法は,心室サイズ(体格,年齢)に よる補正を必要とせず,典型的な心房中隔欠損に関して非常に簡便に評価しうるという利点がある一方,僧帽 弁閉鎖不全症を合併して左室が拡大していると使えない,また他の心奇形における右室容積特性の評価に応用 できないなどの欠点がある.我々にとっては心房中隔欠損症に限らず各種の心奇形において右室拡張末期容積 拡大の程度および駆出率を評価できる方法も必要である.右室の前後径から拡張末期容積を評価する方法は Mモード法時代からあるがビーム方向の一定化が困難であり,この点断層エコーによる計測は優れている.し かし一方向の径のみの計測による評価の精度に問題点の多いことは否めない.たとえば一般に心室の拡張未期 容積が対正常200%であれば中等度以上の心室拡大といえるが,もし心室の拡大が三次元どの方向にも同等に 起こるとすると長さは2の立方根すなわち126%に延長するのみである.よってわずか26%計測が大きいこと

により容積が倍になっていると判定することとなる.超音波計測における各種誤差を考えると実臨床における 信頼性は低いであろう.また術後例や右室容量負荷群における中隔の奇異性運動を考慮すると前後径のみの計 測は駆出率の評価にもまったく適さない.よって最低限二次元,可能なら三次元的計測による評価法の開発が 必要である.

 このことは左室の場合もまったく同様であり,Mモード法による左室短軸計測や,単にそれを三乗したにす ぎないPombo法などによる評価は心奇形症例においては信頼1生が低い.

 3)左室および右室容積特性の超音波断層法による評価

 左室はその形態をモデル化し易く,断層エコー法を用いた三次元的な方法が多数報告されているが8)9)が,

Mercierらは8種の計算法を比較し左室短軸像を含めた計測法が最もシネアンギオとの相関が良いと結論し ている.筆者ら1°)は左室短軸断面積と左室長軸像により計測した左室長径を用いて簡便に左室容積を計算し,

この方法により作成した正常曲線を基にした対正常%値の算出をルチーンに行っている.たとえば心室中隔欠 損症においては超音波断層法による左室拡張末期容積の対正常%値とカテーテル検査による肺体血流比は良

く相関し11),臨床上高い信頼性をおいている.

 右室に関しても小児を対象としその容積を超音波断層法により求める方法が報告されている12)13).いずれも

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604 (12) 日小循誌 14(5),1998 血管造影により計測した容積と良好に相関することを報告しているが,やや煩雑であり,実臨床における病態 評価に用いられるところまでいっていないのが現状と思われる.一方,より簡便な方法により各種断面の断面 積やその縮小率(fractional area change:FAC)を求め拡張末期容積や駆出率の指標として病態の解明を行っ た報告はいくつかみられる 4) 一 7).特にHopkinsらの論文における方法は左室短軸像における右室断面積,お よびその縮小率により,右室容積特性を評価しており,二次元的な評価ではあるが,断面は設定し易く簡便な どの長所がある.複雑な右室形態を正確に計測することにこだわらず,多くの小児循環器科医が施行しうる簡 便な指標を再度探索し,右室に関しても定量的かつ信頼性のある容積特性評価を行うことが必要であろう.

 4)ASDサイズとシャント量の関係

 成人例では,経胸壁18)または経食道心エコー法3)により計測したASD径またはカラードプラエコーにより 計測したASD通過血流の幅と肺体血流比に相関のあることが報告されている.

 高らの新しい知見は,2歳から15歳までの対象の範囲でASD径と肺体血流比が一定の相関を示し,両者の 関係は体格に関連がないとした点である.彼らは体表面積等によりASD径を補正するとこの相関は逆に低く なることをも示し,年齢による右室コンプライアンスの差がその原因であろうと推測している.しかし一般に 統計では関連のあることは示しやすいが,関連のないことを証明することは非常に難しく,この点にっいては 今後術中計測や経食道心エコー法など他の方法による計測したASD径をも用いて追試が必要であると思わ

れる.

 5)interventionによる経皮的閉鎖術を考慮した超音波検査法の役割

 カテーテルによる心房中隔欠損孔の閉鎖について臨床成績,成功率,合併症などの問題も徐々に明らかとな り19),将来的には50%以上の症例がカテーテル治療の対象となると考えられる.そこで我々は治癒適応のみな らず,個々の症例が今すぐではないにしろ将来のカテーテルによる閉鎖に適しているのか,手術治療が適切で あるかを診断する必要がある.

 Ferreiraら2°)は100例の二次孔型心房中隔欠損のある剖検標本について心房中隔欠損のサイズ,辺縁(rim)

の形態,上下大静脈との位置関係,EustachianおよびThebesian valveの形態等にっいて詳細に検討し,29 例は様々な理由によりカテーテル治療に不適切であったと報告している.詳細は原著を参照されたいが,我々 は超音波検査法によりそれらの要因のひとつひとつについて検討することをめざす必要がある.

 これまでの報告によると,ASD径21)22), ASD径と心房中隔の長さの比, ASD上部のrimとASD径の比な ど22)がカテーテル治療の成功率と関連するとされる.なおこれらの詳細な評価には経食道心エコー法の併用も 考慮すべきである.

 また現在deviceサイズの選択においてカテーテル検査中に計測するballoon stretched diameter(BSD)が 重要視されているが,Raoら23)は経胸壁エコー法により計測したASDサイズとBSDに一次相関のあること を示しており,これらを参考にBSDを推測しておくことも必要かと思われる.

 いずれにしても心房中隔欠損のサイズを正確に計測することは必要であり,高らは計測の方向や時相との関 係についても基礎検討を行っており評価に値するが,今後経胸壁エコー法と術中計測との比較なども行いその 信頼性について確認することが必要である.

 むすび

 超音波検査法においても常に簡便かつ信頼性のある定量評価が必要であり,右室および単心室24)の容積特性 評価法の他,安易に判断しがちな弁逆流など25)についても共通の診断基準の確立が必要である.

      文  献

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平成10年10月1日 605−(13)

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